104 名前:名も無きAAのようです :2012/07/11(水) 00:08:00 ID:mptUATSQ0
( ・∀・)「...ここか」


荒巻堂。古ぼけた店が裏路地の奥の奥にあった。
店の壁の木材は腐っているのか今にも崩れ落ちそうなその外観。一目でまともな商売をやってはいないことがよくわかった。

...てか、なんで扉がないんだ?
情報屋だというのになんか吹きっさらしになってるんだが...まあ、気にすることはないか。

105 名前:名も無きAAのようです :2012/07/11(水) 00:08:46 ID:mptUATSQ0
( ・∀・)「邪魔するぜ」


中に入るとムワッとした熱気が襲いかかってきて思わず眉をひそめる。扉はないがどうやら窓は締め切っているらしい。そのせいか薄暗くて足元がよく見えない。
そして熱気と共に、薬独特の臭いと...ん? これは...


( ・∀・) 「......あ?」


びちゃりと何かを踏む音が聞こえた。
そして、じわりと靴のなかに何かが染み込んでくる。
...そしてこの、嗅ぎなれた鉄の臭い。


( ・∀・)「...遅かったか」


舌打ちをしながら足元を見つめる。
そこには、荒巻の死体があった。

106 名前:名も無きAAのようです :2012/07/11(水) 00:11:19 ID:mptUATSQ0


第五話 騎士と魔法




( ・∀・)「脈は...ないな。まぁ、首にナイフ刺さってて生きてる方がおかしいか」


未だに血が流れてるのを見るとまだ死んだばかりなのかもしれない。自分でナイフを握っているのを見ると自殺のようだ。
手を合わせ、曖昧な記憶の中から教会の聖典の祈りのやり方をおぼろげに思いだし、ほんの少しだけ祈りを捧げる。

107 名前:名も無きAAのようです :2012/07/11(水) 00:12:34 ID:mptUATSQ0
( ・∀・)「...ふう」


祈りをやめて、あらためて辺りを見渡してみる。
どうやらほとんど商品は取り払ったあとらしい。
どこかで情報が流れてしまっていたようだ。さすがといったところか。


( ・∀・)「さてさて、こうなるとやることはなさそうだな...」


残されていたいろんな物を手にとって見てみる。
よくわからないものだらけだが、精密に作られていることだけはよくわかった。
少しだけ心が引かれた。

108 名前:名も無きAAのようです :2012/07/11(水) 00:13:23 ID:mptUATSQ0
( ・∀・)「...帰るか」


まあ、すぐに飽きた。
よくわからんものを見ていてもやっぱりよくわからん。教会には荒巻が死んでいたと報告すれば何とでもなるだろう。
そう思い、帰ろうとしたその時。


ガタリ...


( ・∀・)「ん?」

109 名前:名も無きAAのようです :2012/07/11(水) 00:14:19 ID:mptUATSQ0
奥の部屋から何かが動く音がする。
えーと、ショボンのハッテン場?
ここからか?
少しだけ、扉を見つめ待っていると中から人が出てきた。


(´・ω・`)「じいさん、いるか?」


( ・∀・)「あ」


(´・ω・`)「え?」

110 名前:名も無きAAのようです :2012/07/11(水) 00:15:55 ID:mptUATSQ0
ショボくれた男...いやブーンと同じ位であろう少年が現れた。
不味い。まだ、人がいやがった。
バッチリ目まであっちまった。
これ一応、極秘任務だったけか...めんどくせぇ...
まあ、まだ小さいようだし口封じしなくていいかな...?


(´・ω・`)「どちら様? お客さん...てわけでは無さそうだし...ん?」


( ・∀・)「...しくった」


少年の視線はモララーの足元、荒巻に向いていた。
死体を隠しておけばよかったと本気で後悔する。
恐らく、こいつはこの荒巻の息子か何かなのだろう。そしてこの状況、勘違いされてもおかしくない。

111 名前:名も無きAAのようです :2012/07/11(水) 00:16:41 ID:mptUATSQ0
( ・∀・)「(ガキを相手にすんの、疲れんだよな...)」


ブーンのことを思い出しながらそんなことを考える。
ほんの、それくらいにしか考えていなかった。


(´・ω・`)「...じいさん?」


少年の表情から感情が消えるのがわかった。
無表情のまま、死体を見つめている。
一瞬にして、少年の空気が変わった。

112 名前:名も無きAAのようです :2012/07/11(水) 00:18:05 ID:mptUATSQ0
(; ・∀・)「...(なんだこれ)」


肌がピリピリする。目の前にいるのは単なる少年のはず。
なのになんだ? この、化け物と対峙したときのような威圧感は?


(´・ω・`)「...あんたか?」


(; ・∀・)「...何がだ」


(´ ω `)「荒巻はあんたが殺したのか?」


(; ・∀・)「っ!?」ゾワリ

113 名前:名も無きAAのようです :2012/07/11(水) 00:18:45 ID:mptUATSQ0
体に冷水を浴びせられたかのような感覚が襲いかかる。
目の前にいる少年は単に呟いただけのはずだ。だというのに思わず剣に手が伸びてしまった。
戦わなくてもわかる。
この少年には、勝てない。


(´・ω・`)「...いや、これは自殺か?」


(; ・∀・)「ハッ...ハッ...ハッ...」


少年はしゃがみこみ、荒巻の死体の観察を始める。
息が苦しい。この場に立っているのも嫌になってきた。
少年がこっちを見てないのにこの感覚。
化け物としか言いようがない。

114 名前:名も無きAAのようです :2012/07/11(水) 00:19:51 ID:mptUATSQ0
(; ・∀・)「あんた...何者だ?」


(´・ω・`)「...ん? 僕かい? 僕はね、単なる少年だよ」


そういいながら、店の裏へと歩いていく。
改めて少年の姿をよく見てみる。
武器は持っていない。それどころか見た目は華奢な男。
先ほどの威圧感が嘘のような風貌である。

115 名前:名も無きAAのようです :2012/07/11(水) 00:20:53 ID:mptUATSQ0
(; ・∀・)「あ、おい!!」


(   )「ついてくるなよ」


少年は少しだけ振り返り、ポツリと呟いた。



「ぶち殺すぞ」


(; ・∀・)「...」


ショボンが暗い奥へと歩いていき、見えなくなったところでようやく自分が固まっていたことに気がついた。
本物だ。あいつは。
足がすくんで動けないというのはこういうことか。
顔すら直視できなかった。
ただただモララーはショボンが消えていった薄暗い店の裏への廊下を見つめることしかできなかった。

116 名前:名も無きAAのようです :2012/07/11(水) 00:25:33 ID:mptUATSQ0
(´・ω・`)「...騙しきれたか」


裏口から外に出たショボンは少しだけ息を吐く。魔力をごっそりと失ったせいか少しだけめまいがした。
しかも緊張していたせいか、身体中の筋肉が強ばっているのを感じた。


(;´・ω・`)「道具屋の知識もあってホンとよかったよ...」


手に巻き付けている青いブレスレット。
『偽りの強者』
自分の魔力を拡散させて敵を威圧する便利な魔法の小道具である。
何かに襲われたときように護身用として身に付けていたがまさかこんなところで役に立つとは思わなかった。

117 名前:名も無きAAのようです :2012/07/11(水) 00:26:57 ID:mptUATSQ0
(;´・ω・`)「てか爺さん...死ぬの言いたくないからって少しも事情を話さないなんて...まったく...」


文句をぶつくさいいながらも時間がないことはわかっているので早歩きで通りの奥へと向かっていく。
少し行くと店の余り物を置いておく木箱置き場がある。
そこには、想像通り見覚えのない箱がいくつかあった。荒巻がなにか隠すとしたらここだろう。
ショボンは記憶を辿りながら前までなかった箱を探す。

118 名前:名も無きAAのようです :2012/07/11(水) 00:28:03 ID:mptUATSQ0
(´・ω・`)「...っと、これかな?」


奥の方にあった古ぼけた小箱を取り出す。
開けてみると中から手帳が一冊出てきた。
どうやら、当たりのようだ。
古ぼけた手帳にはご丁寧にショボンへ、とまで書いてある。


(´・ω・`)「さてさて、荒巻は僕たちに何をさせたいのかね...」


荒巻が死んでまで守りたかったその情報。それが、ドクオがどこにすんでいるか、等ではないはず。
開いてみると中にはドクオが殺人犯にされていることや逃亡用の馬車の在処、自分が死んで情報を守ることにした経緯などが載っていた。

119 名前:名も無きAAのようです :2012/07/11(水) 00:30:17 ID:mptUATSQ0
(´・ω・`)「...」


黙々とページをめくっていく。
...
......
.........
...............ん?


(´・ω・`)「このページ...」


何かおかしい。
他のページと違い、まともな情報が書かれていなかった。
となると、考えられる可能性は。


(´・ω・`)「...暗号?」


しかし、何度考えてもまったく意味がわからなかった。思わず首を捻ってしまう。
だが、問題なのは暗号だけではない。
むしろ問題なのは、このページの締めくくり。
なんだ、これは。


(;´・ω・`)「意味がわからないね...まったく...」


このページはこう締め括られていた。


『ドクオの母親、そんな存在はこの世にいなかった』

120 名前:名も無きAAのようです :2012/07/11(水) 00:42:39 ID:mptUATSQ0
ー道具説明ー


『偽りの強者』


腕輪につける魔法道具。
魔力を溜め込み一気に放出することにより相手に圧倒的な威圧感を与える。
ただし、使用時に一気に使用者の魔力を取り込むため、長時間の使用は不可能。
さらに、使用しながらの戦闘はほぼ不可能のため実用性はほぼ皆無。



『荒巻の手帳』


荒巻が最後に残した情報をまとめた手帳。
ただし、暗号化されている部分があるため専門家がいないと解読は不可能。


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