80 名前:また少しだけ投下して寝る... :2012/07/08(日) 01:33:48 ID:M7/BLDwc0
日が暮れだし、虫が五月蝿いほど鳴き始めた。
日が暮れるのにあわせて、見回りの兵がかがり火に火を灯す。
ここはヴィップ王国の外れにあるとある大富豪の家。ロマネスクがいなくなったことにより悪事で急成長したとある貴族の家である。


(兵1゚ V゚)「なあ...本当に来るのか?」

82 名前:また少しだけ投下して寝る... :2012/07/08(日) 01:37:11 ID:M7/BLDwc0
つい先日、この家にある宝石『月の涙』を盗むという予告状が届いていた。
この家の家宝とも呼べる青く光るその宝石。それだけあれば一生遊んで暮らせるとも言われるほどである。
なので、見回りの兵はいつもにまして警戒...している様子もなく、ただいつも通り立っているだけであった。


(兵2゚ V゚)「さあなぁ...だが、あの『怪物』ヒートの娘だ...油断はできんぞ」


(兵3゚ V゚) 「だなぁ...俺嫌だぜ? 噂に聞いたがヒートにやられた人は未だに障害があるらしいぜ...腕がなくなったとか足がなくなったとかは普通とかいう噂まであるし...」


(;兵2゚ V゚) 「マジかよ...まさに怪物じゃねぇか...ああ、マジで来ないでくれよ...」

83 名前:名も無きAAのようです :2012/07/08(日) 01:38:16 ID:M7/BLDwc0
(兵1゚ V゚)「...ん? なんだ? これは...霧?」


気がつくと辺りは深い霧に包まれていた。
異常なほどに濃い霧。なのになぜ今の今まで気づけなかったのか。
理由は簡単。


(;兵2゚ V゚)「...魔術か?...霧を作る魔術って...これってまさか!!」


「フワーハッハッハッハッハッハッハッ!!!!」

84 名前:名も無きAAのようです :2012/07/08(日) 01:39:19 ID:M7/BLDwc0
(;兵1゚ V゚)「!?」


辺りにいきなり笑い声が響き渡った。
そして、彼らは気がついた。
屋敷の屋根の上に何者かの人影があることに。


(;兵1゚ V゚) 「誰だ!!」


川::::::)「ほう...私の名を尋ねるか...よかろう。さあ、名乗らせてもらおうか!!」


その人影はバッと屋根から跳び、地面に降りてくる。
高さ20mはありそうなとこから降りたというのに痛がる素振りなどはなにもなかった。
まさに、怪物。
その言葉が見回りの兵の頭によぎった。

85 名前:名も無きAAのようです :2012/07/08(日) 01:40:10 ID:M7/BLDwc0
川 ゚ -゚)「我が名はクー!! 火炎の怪盗、ヒートの娘。さあ、我が灼熱の前にひれ伏し、我が烈火の........ん?」


(;兵1゚ V゚) 「...?」


川;゚ -゚)「...烈火の......あれ? ちょっとタンマ...あれ? 烈火だから早い感じの...あれー?」


(兵3゚ V゚) 「......」

86 名前:名も無きAAのようです :2012/07/08(日) 01:41:17 ID:M7/BLDwc0
川;゚ -゚)「...ああ、そうだ。我が烈火の如く疾風迅雷の...」


(#兵1゚ V゚)「引っ捕らえろおおおおおおおお!!」


川;゚ -゚)「せめて最後まで言わせてくれ!!」


彼女も彼女でまた、違ったタイプのダメダメ怪盗だったりする。

87 名前:名も無きAAのようです :2012/07/08(日) 01:43:13 ID:M7/BLDwc0


第四話 少女と宝石



川;' -`)「ただいまー...」


仕事を終えてクーは家に帰る。
少しヘマしたため体はもうクタクタだった。さっきからあくびが止まらない。
ああ、もう寝たい。湯あみして髪をとかして寝たい。いや、もういいや。もう寝よう。
そんなことばかり考えていた。

88 名前:名も無きAAのようです :2012/07/08(日) 01:44:23 ID:M7/BLDwc0
ノパ�゚)「あ、おかえり。クー。お腹すいたでしょ? 準備できてるよ」


この人はクーの母、ヒート。
もうすぐ60代も終わるというのに体力も見た目も未だに衰えを見せない。
未だに現役の怪盗。
まさに、肩書き通りの『怪物』である。


川 ' -`)「疲れたからいらない...」


正直、お腹はあまり減ってはいなかった。
疲れすぎて体が少し、バカになっているようだ。

91 名前:おはようございます... :2012/07/08(日) 14:09:27 ID:M7/BLDwc0
ノパ�゚)「あらあら...また、失敗したの?」


川 ' -`)「盗むのは出来たけど...やっぱりあの口上はいらない...」


あの口上、つまりはあの我が灼熱のナンチャラとかいうあれだ。
なんでもヒートが盗むときからやっていたらしく、クーが怪盗になると決まった瞬間、これを継がせることを決定してたとかなんとか。


ノハ#゚�゚) 「何言ってるの!? あれがなくちゃ盗むことすら出来ないわよ!?」


川#゚ -゚)「はあ!? 私が霧の魔術が得意なの知ってて言ってんの!? 普通、霧だしたらそのまま気づかれないように盗むのが怪盗ってもんでしょ!?」

92 名前:名も無きAAのようです :2012/07/08(日) 14:11:22 ID:M7/BLDwc0
ノハ#゚�゚)「堂々と予告状叩きつけて真っ正面から突っ込むのが怪物流なの!! 私が作り上げた怪物一家を崩壊させる気!?」


川#゚ -゚) 「そんなもん作ろうとするな!!」


ノパ�゚) 「いいじゃない、別に。私の趣味だし」


ヒートは開き直ったかなようにあっけらかんといいのけた。
その言葉に少しだけクーは目眩がしてくる。どうやら疲れがピークに達してしまったようだ。


川;゚ -゚)「趣味を娘に強要させんなっていってんの...ああ、もう、疲れてるのに...」

93 名前:名も無きAAのようです :2012/07/08(日) 14:12:05 ID:M7/BLDwc0
駄目だ、もう寝たい。素直にクーはそう思った。
今にも瞼が閉じそうになるのを必死にこらえる。


川 ' -`)「ああ、もういい...寝る...」


ノパ�゚)「あら? 本当に寝るの? せっかく大怪盗につながるヒントを見つけてあげたのに...」


川;゚ -゚)「本当に!?」


驚きすぎて転びそうになるくらい、体を乗り出す。
ついに、ついにか。
怪盗なら誰もが憧れるその夢。
大怪盗に会うこと。
それが、それがついに。


川*゚ -゚)「夢が叶う!! ありがとう母さん!! 愛してる!!」


ノパ�゚)「あらあら...変わり身が早いわね...」

94 名前:名も無きAAのようです :2012/07/08(日) 14:13:48 ID:M7/BLDwc0
川*゚ -゚)「どこ!? どこにいるの!?」


ノパ�゚)「落ち着いて...まずはこれを見て」


川 ゚ -゚)「? ...これは...魂の契約書?」


古い紙に金の文字が書かれたその紙。
魂の契約書。
一度この紙に書かれた契約はその魂が朽ちるまで守らなくてはならなくなる呪いの一種がかかるという、王宮の大事な契約などで用いられている魔法道具の一つである。

95 名前:名も無きAAのようです :2012/07/08(日) 14:14:33 ID:M7/BLDwc0
川;゚ -゚)「初めて見たぞ...こんな大層なもの...」


ノパ�゚)「さ、ここに名前書いて」


川;゚ -゚)「まてまて...まだ内容を読んでない...んん、『ドクオと三年間、行動を共にすることをここに誓う』? ...こんなんでいいのか?」


ノパ�゚)「そうみたいね。それくれたの荒巻って人なんだけどかなり信用していいみたいよ」

96 名前:名も無きAAのようです :2012/07/08(日) 14:15:15 ID:M7/BLDwc0
川 ゚ -゚)「ふうん...まあ、いいか。どうせドクオさんと会うためなら三年くらい...」


ノパ�゚)「(ニヤリ)」


クーはヒートが口の端を歪めたのに気がつかないまま、契約書に名前を書き込んでいく。
書き終えると同時に淡い光がクーを包み込んだ。


川;゚ -゚)「うおっ...なんだこれ......? これは...情報?」


頭の中に直接、ドクオに関する情報が流れ込んでくる。
混乱する頭を整理しながらクーは必要な情報だけを取り出していく。

97 名前:名も無きAAのようです :2012/07/08(日) 14:16:08 ID:M7/BLDwc0
川 ゚ -゚)「...なるほど。ヴィップの中心の丘に隠れ家があるのか...」


ノパ�゚)「満足した?」


川*゚ -゚)「ああ、もちろん!! よーし、これからドクオさんに会いに行ってくる!! いざ! 大怪盗の技術を学びに!!」


ノハ;゚�゚)「ちょっとクー!! ごはんが...ああ、いっちゃった」

98 名前:名も無きAAのようです :2012/07/08(日) 14:17:19 ID:M7/BLDwc0
ヒートは開けっ放しの扉を見つめながら少しだけため息をついた。
また、今日も一人で食事を始める。
もう、何年間、一人で食事をしてるのだろうか?
指をおり、三本おったところでため息をつきながらやめた。


ノパ�゚)「たく...クーはいなくなっちゃうし...あんたもあんたでいつになったら用事を終えて帰ってくるんだい?」


左手にはめられた指輪をさすりながらヒートは一人寂しく呟いた。





ノパ�゚)「ねぇ? ロマネスク?」


その呟きは誰にも聞かれないまま、むなしく消えていった。

99 名前:名も無きAAのようです :2012/07/08(日) 14:25:01 ID:M7/BLDwc0
ー人物紹介ー


川 ゚ -゚) 『怪物』クー


霧の魔術を得意とした怪盗。
盗みの技術はかなりのものだがどこか抜けている。
昔からロマネスクに憧れており、その息子のドクオに会ってみたいとずっと考えていた。
ちなみに今まで盗んだ総額は神殿を三つほど買えるレベル。


ノパ�゚)『怪物』ヒート


クーの母親。ロマネスクと並ぶ大怪盗だったが、その盗みの荒さから怪物等と呼ばれている。ちなみに、ロマネスクが出てくるより前から怪盗だった珍しい人物でもある。
今でも現役だが、昔ほど熱が入らないらしい。
全盛期の時は騎士団に囲まれても一人で全滅させた。
左手の薬指にはいつも指輪がはめられており、指輪の内側には『ロマネスク』と掘られている。


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