- 385 名前:1 :2014/07/03(木) 17:59:33 ID:2V.Din8.0
第九話「水面下の戦い」
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- 386 名前:1 :2014/07/03(木) 18:00:24 ID:2V.Din8.0
◇◇◇◇
元々しぃという子供は主体性がなかったと記憶している。
何をするにも両親がいなければ泣いていたし、友達と遊ぶのも周りの意見に合わせ、けして自分の心の内を他人に明かすことはなかった。
恥ずかしかったのとは少し違うし、自分が何かを言えば周りは少なからずそれを尊重してくれたんだろうとは思う。
けれどしぃがそれをしなかったのは何か考えがあったわけではない。ただ何を言えばいいか、自分が何を考えているのかという根本的な部分を理解していなかったに過ぎなかった。
例えば亡くなった母が好きなものを作ってくれると言ったときも、しぃは何が好きなのかを答えることが出来なかった。だって母が作ってくれるものはどれも美味しくて嫌いなものなんて一つもなかったから。
例えば友達と遊ぶときも、何をしようかと迷った時しぃは何をしても構わないと思っていた。かくれんぼでも鬼ごっこでも、要はみんなで遊べるのであれば何であろうと構わなかったから。
数え上げればきりがないこんな昔話は自分の中ではごくありふれたもので、今日に至るまでしぃはそれでいいと信じてやまなかった。
両親が魔物に殺され、教会に預けられたのは自分の人生の大きな分岐点ではあった。
そこで彼女はがらりと変わってしまった生活に、両親が目の前で残虐に殺されるという場面に恐れを抱いたのはまぎれもない事実であるが、心を閉ざした理由はそれではなかったのである。
しぃの過去の中では自分が困っていた時に必ず、両親であったり友達であったり、果ては見ず知らずの他人であったりが手を差し伸べてくれたのだ。だから、両親が亡くなる間際もそれを信じてやまなかった。もしかしたらしぃが自らの意思で誰かに助けを求めることをすれば助かったかもしれない。
- 387 名前:1 :2014/07/03(木) 18:01:15 ID:2V.Din8.0
その後悔が彼女の中で大きくのしかかり、ついには彼女の感情を凍てつかせたのだ。
だからといってそれを省みて行動に移せるほど彼女の心は成長しきっていなかったし、ましてや自分の立場や境遇はすぐにでもどうにかなるものでもなかったから、結局のところ彼女は自分の殻に閉じ籠るしか方法はなかった。
一人になれば生きるために行動できるかもしれない。
孤独であれば立ち上がることができるかもしれない。
そんな浅薄な考えで、子供ならではの想像が、その時は通用するのだと本気で信じていた。
しかし、その考えはすぐに消し去らざるを得なくなる。
両親を失った彼女を憐れんだのか、それとも単に仕事を全うしようとしたのか、預けられた教会の神父はしぃを気にかけてくれた。
何度もくだらない話をしてくれた。ためになる話もしてくれた。しぃが口を開かなくても彼は毎日のように、暇を見つけてはしぃとコミュニケーションをとってくれたのだ。
- 388 名前:1 :2014/07/03(木) 18:01:56 ID:2V.Din8.0
何度も煩わしいと思ったが、次第に彼女の心は昔のような子供としては正しいであろう本来の形へと戻っていく。
友達ができた。好きな人だってできた。笑うことが増えたし、時に泣くこともあった。
そこに足りないものは、亡くなった両親だけだったが、神父はそんなことを忘れさせてくれるくらいに子供たちを愛してくれたし、しぃも彼を本当の親のように愛してしまったのだ。
故に彼女は大きくなるにつれ、あの日の後悔を忘れていく。自分に足りないものが何かに気づくこともなく、幸せな日々が、昨日と同じ今日、今日と同じ明日がずっと続いていくのだと信じてしまったから。
そんな保証はどこにもないのに。
- 389 名前:1 :2014/07/03(木) 18:02:40 ID:2V.Din8.0
◇◇◇◇
(うA-)「ん……」
ドクオが目を覚ますとベッドの上だった。体中に包帯が巻かれており、自分が何故こんな状態になったのかを思い返してみる。
('A`)(そういや昨日、魔物に襲われたんだっけ)
そして攻撃を受けきれず、怪我を負ったものの倒すことには成功した。あのあとすぐに意識をなくしたはずだから、しぃがここまで運んでくれたのだろうか。
そこまで考え、ふと足の辺りに何かが乗っているような感覚があることに気付いた。
(*-_-)zzz
そこにはしぃが寝ていた。手にステッキを持っているところを見るに、一晩中回復魔法をかけてくれたのだろう。完治こそしていないが、傷は大分塞がっている。
しぃの頭を軽く撫でてやると、心地よさそうな声が聞こえた。布団に丸まって寝ている子猫とはこのような感じなのかもしれない。
- 390 名前:1 :2014/07/03(木) 18:03:24 ID:2V.Din8.0
しばらくしぃを撫でていると、扉を開く音が聞こえた。顔を出したのはショボンだった。手には治療に使う道具なのか箱を抱えている。
(´・ω・`)「目が覚めたようだな」
('A`)「おかげさまで」
(´・ω・`)「あとでしぃにお礼を言うといい。一晩中治癒魔法をかけていた」
('A`)「はい」
ショボンはベッドの端にある簡易椅子に腰かけると、ドクオの包帯をてきぱきと変えていく。騎士ともなればこういったことも日常茶飯事なのだろうか。
(´・ω・`)「話はしぃから聞かせてもらったよ。災難だったな」
手を動かしながらショボンが話を続ける。
(´・ω・`)「一応周辺を調べてみたが痕跡すらなかった。どうにも厄介な敵だ」
('A`)「悪魔と何か関係があるんでしょうか」
(´・ω・`)「無関係ではないだろう。我々がこの街に滞在していたからこそ襲ってきたわけだしな。ましてや魔法を使っている」
- 391 名前:1 :2014/07/03(木) 18:04:17 ID:2V.Din8.0
魔法を使ったということは明確な敵意を持っていたということ。そしてドクオが狙われた以上、目的は明らかだろう。
(´・ω・`)「早めにモ・トコに向かった方がいいかもしれん。街に被害が飛び火する可能性もある」
('A`)「悪魔の情報もめぼしいものはありませんでしたしね」
(´・ω・`)「……問題はそこだ」
ショボンの動きが止まる。気付けばドクオの瞳をじっと見つめていた。
(´・ω・`)「目的地まで目と鼻の先まで迫っているにも関わらず、何故こうも情報が得られない。あるのは目撃情報のみで、相手の特徴すら浮かんでこないのは異常だろう」
('A`)「人がいなかったところもありますしね」
徹底して情報を隠蔽されている状況はこちらとしてはかなり不気味だ。何の意図があるかも分からない以上、下手に他の街に居続けるのはやはり得策とはいえない。
ドクオとしても出来れば他の人間に被害が出るような行動は避けたいし、誰かが傷つく場面を見たくはない。そう考えれば、やはりショボンの意見は妥当と言える。
(´・ω・`)「君の容態も思っていたほど深刻ではなさそうだし、昼にはこの街を出よう。街の住民に被害が及ばぬ前に」
('A`)「分かりました」
(´・ω・`)「世話をかける」
('A`)「気にしないでください」
- 392 名前:1 :2014/07/03(木) 18:05:02 ID:2V.Din8.0
包帯を変え終わったショボンは立ち上がり、申し訳なさそうな顔でそう言うと踵を返す。街を出る準備をするのだろう。
しぃは相変わらず気持ち良さそうに寝息を立てている。ドクオは起こさないように気を付けながらベッドから出ると、布団をかけてやった。
('A`)(しかし、昨夜のあれは何が目的だったんだ? 黒の魔術団にしては回りくどいやり方をしてる気がする)
貞子は王都の結界を利用し、騎士団を撹乱する大胆な計画でドクオや渡辺を追い詰めた。本人の戦闘能力もさることながらそういった作戦を考案、実行に至ったのは始めから明確な目的があったからだ。渡辺が何故狙われたのかは本人がいない以上定かではないが、彼女なりに強い意思があったのは想像に固くない。
それに対し、今回の騒動は目的が不明瞭である。村の人間を消したことは目的を隠蔽するためなのかもしれないが、大本にある悪魔という存在にどう関係しているのかが全く掴めていない。
加えて破壊と絶望を司るほどの存在を魔法使いが呼び出したとしてどう使役できるというのか。伝説や伝承の中にしか確認されていないものが本当にいるのかすら信憑性に欠けるが、それでも目撃情報がある以上それに酷似した何かがいるのは確実ではある。
黒の魔術団の目的がドクオの持つ魔剣である以上、悪魔がどれだけ有益に働くのかすら分からないのだからこの時点で敵の狙いがどこにあるのか見当がつかない。
ここまで考えれば今回の件に黒の魔術団が絡んでいるとはどうも言いづらい状況だ。昨晩の出来事は悪魔騒動と別のものではないか、とドクオには思えてならない。
もちろん完璧に無関係だとは言いづらいが、それでもその背景が見えてこないのだから判断は難しいところである。
('A`)(考えが纏まらん。煙草でも吸って落ち着くか)
- 393 名前:1 :2014/07/03(木) 18:06:21 ID:2V.Din8.0
頭をがしがしと掻いて、ドクオはドアノブに手をかけた。すると、しぃがゆっくりと顔をあげて辺りを見回していた。どうやらお目覚めらしい。
(*うー゚)「ん……具合はどうですか?」
目元を擦りながらしぃが尋ねてくる。顔色がよくないのは寝起きだからだろうか。
('A`)「ん、ああ。特に問題はないよ。夜通し治癒魔法をかけてくれたんだって? ありがとうな」
お礼を言うと、しぃは少々恥ずかしそうにそわそわと体を揺らして、
(*゚ー゚)「お荷物を抱えての名誉の負傷ですから、それくらいは当然です」
とだけ答えた。照れているのか頬が紅く染まっている。
('A`)「そういやさ、ずっと疑問だったんだが魔法使いってのは杖とか棒みたいなのがないと戦えないのか?」
ふと気になっていたことを聞いてみる。渡辺やしぃが魔法を使っているのはいつも箒やステッキを持っていた。モララーにしても多節棍を持っている時にしか魔法を使用していなかった。
(*゚ー゚)「いえ、そんなことはありません。ただ、媒体があるほうが素早く魔法を出せるんです」
('A`)「どういうことだ?」
(*゚ー゚)「簡単に言えば、ステッキや箒などに魔法陣を登録し、それを呼び出すことで詠唱を短縮しているんです。本来魔法を使う際は、魔力に適切な命令を下す術式、つまり魔法陣が必要です。ですが戦闘中や怪我人にいちいち魔法陣を描いていたのでは間に合いません」
(*゚ー゚)「魔法陣とはすなわち魔力への命令ですから言葉としても口に出すことができます。ですが当然それを口にして形にするのも時間がかかります。ですから私達は物に魔法陣をある程度登録して詠唱を短くしているということです」
- 394 名前:1 :2014/07/03(木) 18:07:23 ID:2V.Din8.0
('A`)「へぇ、よく考えられてるな」
(*゚ー゚)「もちろんそれ以外にも魔法を使う方法はありますが、基本的なことはこんな感じです。魔法というのは様々な応用がききますから」
きっと本来であれば専門的な話になるのだろうが、しぃはドクオにも分かるように言葉を選んでくれたのだろう。まだまだ子供だというのに頭の回転が速いとつくづく思う。勉強が得意ではないドクオにとって大変羨ましい限りだ。
とは言っても理解したところでドクオには魔法を使えそうにもないが。
('A`)「さてと、俺は少し散歩にでも行くが、しぃはどうするんだ?」
(*゚ー゚)「怪我人に一人歩きをされて倒れられても困りますし、私も付き合いますよ。昨晩のようなことがありましたし」
('A`)「それもそうか。なら俺は外で煙草でも吸って待ってるよ」
ドクオはそれだけ行って部屋を出る。小さな宿なので玄関はすぐそこだ。
ドクオが玄関を開けると、朝特有の清々しい空気がドクオを出迎えてくれた。
('A`)(いい朝だ。本調子なら陽気に口笛でも吹いて走り回りたいところだな)
煙草を取りだし、火を点けようとしたところで向かいの通りからモララーとショボンが歩いてくるのが見えた。
近くまで来ると相手もドクオに気づいたらしく、小走りでやってくる。
- 395 名前:1 :2014/07/03(木) 18:08:08 ID:2V.Din8.0
( ・∀・)「よう、包帯男」
('A`)y━・~~「名誉の負傷だろ。馬鹿にすんな」
( ・∀・)「油断するからそうなるんだよ。俺なら指先一つでダウンだっての」
('A`)y━・~~「よく言うぜ。最近の模擬戦じゃ俺に何回負けてんだよ」
( ・∀・)「たまには華を持たせてモチベーション保たせてやってんだ。言わせんな恥ずかしい」
すっかり気心の知れたモララーと軽口を叩きあっていると、ショボンが割って入ってきた。
(´・ω・`)「確か、一度本気でやって負けたとか愚痴をこぼしていたが、そういうことだったのか。いやはやモララーさんのサービス精神には頭が上がらないね」
( ;・∀・)「副団長! それは言わない約束では!?」
('A`)y━・~~「モララーさんの優しさは五臓六腑に染み渡るわー」
( ・∀・)「……この野郎、あとで覚えてろよ」
そこまで話したところでドクオの後ろからしぃがひょこりと顔を出した。
(*゚ー゚)「おや、モララー隊長に副団長、おはようございます」
- 396 名前:1 :2014/07/03(木) 18:08:59 ID:2V.Din8.0
( ・∀・)「おお。救世主登場だ」
(´・ω・`)「うむ。おはよう」
(*゚ー゚)「救世主?」
何のことだか分からないといった風に小首を傾げるしぃだったが、ドクオはあえてそこには突っ込まなかった。多分突っ込んだら負けだろう。
('A`)y━・~~「それじゃあ俺達は軽く散歩でもしてきます」
(´・ω・`)「なるべく早く戻るようにな」
('A`)y━・~~「ええ」
(*゚ー゚)「はい」
煙草を消して携帯灰皿に入れるとドクオは歩き出す。モララーの横を通り過ぎた際、後ろには気を付けろよ、と囁かれたが自業自得だ。
それから二人はのんびりと朝の散歩を楽しみ、次の街へと向かうこととなった。
- 397 名前:1 :2014/07/03(木) 18:09:43 ID:2V.Din8.0
◇◇◇◇
ξ#゚听)ξ「だぁかぁらぁ、ちょっと近くまで行くだけだって言ってるじゃない!! はぁ? んなこと知らないわよ、こっちは客よきゃぁぁくぅぅ」
ξ#゚听)ξ「金だってきっちり払うって言ってるじゃない!! 通常料金に上乗せ、はいこれで問題なし!!」
ξ#゚听)ξ「私達は魔法使い、騎士の卵よ? んなもん三角帽子で分かるでしょうが!!」
飛行馬車を借りに交渉すると言っていたツンは先程からあんな調子だった。怒鳴り、喚きまた怒鳴る。どうにも業者側が飛行馬車の運行を渋っているらしく、いくら言っても聞いてくれないようで、ツンはそれに腹を立てているようだ。
受付からは大分距離が空いているはずなのにここまではっきりも聞こえているということは、それだけ周りの注目を集めているのだが当のツンはお構い無しである。
从'ー'从(やっぱり難しいかなぁ)
現在モ・トコ周辺は厳戒体制を敷いているようで一般人の立ち入りを制限している、と渡辺は聞いた。原因はやはり悪魔騒動で近くの村では住民丸ごと行方不明になっているそうだ。
そのため業者もみすみす危険をおかしてまで北へ飛行馬車を動かすのはごめんだということで頓着状態になっているのだった。
- 398 名前:1 :2014/07/03(木) 18:10:28 ID:2V.Din8.0
ξ#゚听)ξ「だぁぁぁぁぁ、もう埒が明かないわ!! どうしても出さないならここら一帯まとめて吹き飛ばすわよ!?」
从;'ー'从「ツンちゃんそれは脅迫……」
あまりにも物騒なことを言い出すツンに、傍観を決め込んでいた渡辺もさすがに宥めることにする。下手をすれば役人に連行されかねない。
ξ#゚听)ξ「だっていつまでたっても首を縦に振らないんだもの。私は気が長い方じゃないの」
从'ー'从「でもでもぉ、受付の人も困ってるよぉ」
引きつった笑みを浮かべてこくこくと頷く受付の女性に、渡辺はごめんなさいと謝って妥協案を持ちかけた。
从'ー'从「あの、せめて近くまでは行けませんか? 私達モ・トコにどうしても行かなければならないんです」
受付の女は確認するとだけ言って奥に引っ込む。上の者に確認しに行ったのだろう。時折あーだこーだと話し声が聞こえた。
ξ゚听)ξ「近くまでって、あんたそれでいいの?」
从'ー'从「うん。あとは飛んで行けばいいかなって」
実際時間はかかるが行けない距離ではないのだから、無理を言って飛行馬車を飛ばしてもらう必要はないのだ。それにお金だって持ち合わせがないわけではないが、節約するに越したことはない。
問題は荷物だが、それも休み休み行けばさしたる問題にはならないだろう。
- 399 名前:1 :2014/07/03(木) 18:11:28 ID:2V.Din8.0
それらをツンに説明すると、あっちは仕事なんだからと言っていたが彼女もそれなりに納得はしたらしくこれ以上の文句は言ってこなかった。
しばらくすると受付の女が戻ってきて、二つほど手前の街までなら馬車を飛ばしてくれるという旨を伝えてきた。かなり離れたところだが二、三時間もあれば到着するはずだ。
从'ー'从「無理を言ってすいません」
運転手に礼を言うと、逆に謝られてしまった。本当ならば彼らも目的地まで送り届けたいのだが命には代えられないのだと苦虫を噛み潰したような顔で返される。
それは仕方のないことだ。彼らはあくまで運転技術があるだけの一般人、万が一魔物や悪魔に襲われでもしたら抵抗する術がない。本来であればこんな騒動の中で馬車を飛ばすのだって相当な無理をしているのだと渡辺は思う。せめて彼の身の安全だけは守らねばなるまい。
ξ゚听)ξ「これじゃああそこでごねてた私が悪者みたいじゃない」
从'ー'从「ツンちゃんすごい顔だったよぉ」
こんな感じ〜と手で目を吊り上げる渡辺の顔を見ると、ツンはそこまで変な顔してないわよ、と憤怒の表情を見せる。
从;'ー'从「今してるよぉ〜」
運転手がはははと笑い声をあげたのを聞いてさらに腹を立てたツンは渡辺のほっぺたを両手で挟みうりうりと八つ当たりをしてきた。
从')、('从「らんれわらひにゃろぉ〜」
ξ#゚听)ξ「うっさい!! あんたが余計なこと言うからでしょうが」
从')、('从「にゃ〜へ〜れ〜」
時間はゆっくりと過ぎていく。この先に何が待っているのか渡辺には予想もつかないが、せめてツンと運転手さんだけは守ろうと誓う渡辺だった。
- 400 名前:1 :2014/07/03(木) 18:12:23 ID:2V.Din8.0
◇◇◇◇
ドクオ達がモ・トコに着いたのは夕方を回っていた。道中立ち寄った街の様子を伺ったのだが、二つ前と同じで藻抜けの空。人が生活していた痕跡があるだけの作り物のような街があるだけだった。
中を丁寧に調査するも結果は変わらず不自然なほどに何も見つからない。建物が破壊されたり物が盗られた形跡もなく、人がいないだけ。まるで絵画のように静かなワンシーンに、ドクオはうすら寒くなった。
('A`)(敵がいるのはわかっても正体不明、さらに目的も不明ときたもんだ。こりゃ今回の仕事は長引きそうだな)
依然進展しない問題はショボンやモララーにも焦りを生んでいるようで、モ・トコに着くなりドクオとしぃに荷下ろしを命じると、現地に派遣されている騎士団の詰め所に情報の交換に行ってしまった。
(*゚ー゚)「珍しいですね、副団長が冷静じゃないなんて」
('A`)「あの人はいつも落ち着いてるからな。悪魔なんて話を聞けばいてもたってもいられないんだろうけどさ」
四人分の荷物はさして多くはない。着替えといくつかのアメニティが入っているだけで、消耗品などは現地調達という手筈だ。とはいえ、モ・トコ周辺はすでに危険区域として制限を設けていると聞いているのでお店が通常営業をしているのかは甚だ疑問だったのでドクオは部屋にあるものをいくつか持ってきている。
('A`)「えっと、今日から宿泊するのは騎士団の駐屯所か。なんか肩身が狭いな」
(*゚ー゚)「遠征する際はこんなものですし、慣れるしかないでしょう」
('A`;)「俺は今後も駆り出されるの確定なのかよ」
(*゚ー゚)「……」
いや、そこは何か言ってほしい。というか、言ってもらわないと不安になる。
- 402 名前:1 :2014/07/03(木) 18:13:24 ID:2V.Din8.0
('A`)「はぁ、まぁいいけどさ。とりあえず、荷物置いたらショボンさん達待ち?」
自分達が泊まる手筈になっている部屋に荷物を置くと、早速煙草に手をかけた。しぃが顔をしかめてこちらを見てきた。部屋では吸うなということか、自分の近くで吸うなということかは判断できなかったが、とりあえず煙草は戻しておく。
(*゚ー゚)「そうですね、私達は特にすることもありません」
駐屯所を出ると、目の前には高くそびえ立つ鉱山が広がっていた。よく見ると細い糸のようなものが鉱山と街を繋いでいる。あれはなんだろうか。
('A`)「なぁ、あれってなんだ?」
しぃはドクオが指を差した方をじっと見つめると、小さく声をあげた。
(*゚ー゚)「ああ、あれは鉱石や人を運ぶための荷車ですよ。魔力で動きます」
ロープウェイのようなものだろうか。異世界と言えど人が生活を便利にしようと考え付く先は似たようなものなのかとドクオは感心してしまう。
折角だからとドクオとしぃはモ・トコを少し歩くことにする。鉱山都市として名高い街は現在閑散としており、人々は家からあまり出ようとしていないようだ。店などはちらほらシャッターが閉まっているし、ドクオも事の重大さを再確認させられる。
もし、何事もない時に訪れれば筋骨粒々の男達が街を練り歩き、取れた鉱石や資源を巡って様々な人が行き交っていたのだろう。それを思うとドクオは早急に問題を解決しなければと奔走するショボンの気持ちが手に取るように分かった。
- 403 名前:1 :2014/07/03(木) 18:14:13 ID:2V.Din8.0
('A`)「鉱山都市っていうからてっきり高所に街があるのかと思ったんだけど、麓に作ってあるんだな」
(*゚ー゚)「一応中腹にも小さな街は在りますが、そこはあくまで中継点です。そこからいくつかの採掘場に分かれて仕事を分担しているようですね。中は鉱山やポイントによってもまちまちですが、どこも迷路のように広いので迂闊に近付かないようにこんな立地になったのでしょう」
('A`)「ふーん。確か、魔導鉱石だっけ? 錬金術に使うって聞いたけど、こんだけでかい街に発展するってことは日常的に使用されるくらい需要が高いのか?」
(*゚ー゚)「基本的にどんな場所でも使われていますよ。家の灯りだったり、調理器具だったり、用途は様々です」
('A`)「儲かるんだろうな」
(*゚ー゚)「意外に俗物なんですね」
('A`)「そういう生活してたから余計にな」
人の出歩いていない街をぶらぶらするのは正直なところあまり面白いとは言えなかった。偶然開いている店を覗いても売っているものはほとんどなく、この街に物資が流れてきていないのだろう。
メインで物資を届ける役目を担っている飛行馬車もまともに運行していない状況なのだから仕方がないとも言えるが、それにしたってこの広い街に自分達しか歩いていない状況はどうにも不気味だ。
('A`)「暇だなぁ。早くショボンさん達戻ってこないかな。活気のない街なんか面白くもないぞ」
宿舎まで戻ってきたドクオは煙草を取りだし火を点ける。人がいるのであればおすすめの観光スポットでも見てうまいものでも食べて暇を潰せたのだろうが。
(*゚ー゚)「こういう状況ですし仕方ありませんよ」
煙を吐き出しながら空を見上げる。元の世界と何も変わらない綺麗な夕焼け。一番星が輝き、月が顔を出し始めていた。
- 404 名前:1 :2014/07/03(木) 18:15:21 ID:2V.Din8.0
('A`)y━・~~「……聞きたいことがある」
静寂の中、ぽつりとドクオが呟いた。
(*゚ー゚)「はい?」
('A`)y━・~~「今回の件でいくつか疑問に思うことがあるんだ」
(*゚ー゚)「疑問、ですか」
('A`)y━・~~「ここに来るまでいくつかの街を見てきたが、人が消えていたとこもある。それはまぁ、悪魔がなんかやったってことで一応の説明はつく」
(*゚ー゚)「そうですね」
('A`)y━・~~「けど、その他の街、例えば人がいた場所では一切悪魔の話は聞かなかった。どころか目撃情報すらなかったよな」
ショボンの説明ではモ・トコを中心にしてその周辺で目撃されているとのことだが、ここまで悪魔による被害は住民の消失以外皆無なのである。
加えて人の消えた街ですら暴れた形跡がないということがドクオの疑問を冗長していた。
(*゚ー゚)「……つまり?」
('A`)y━・~~「何故悪魔の姿が見えない?」
王都から大々的に勅命を受けて騒動の原因を探っているはずなのに、肝心の目標がここまで話にすら上がってきていない。
悪魔なんてこの世界の誰もが怖れる存在だということは渡辺が証明している。ならば、もっと事態は深刻になっているのではないか。
('A`)y━・~~「昨晩のことを考えれば、悪魔ってのが第三者によって隠蔽されている可能性もある。その場合、悪魔を呼び出した理由があるはずだが、その背景すら見えてこないってのはどういうことだ?」
(*゚ー゚)「……確かに、言われてみればおかしいですね」
('A`)y━・~~「さて、それを念頭に置いてもう一度状況を整理してみようか」
ドクオ達は王都から悪魔の討伐を依頼され、ここまで来ている。悪魔はモ・トコを中心に目撃されており、いくつかの被害届も出ている。
- 405 名前:1 :2014/07/03(木) 18:16:22 ID:2V.Din8.0
そしてドクオ達は王都を出発、いくつかの街を経由してここまで来たのだが、悪魔の話も、どこで被害があったのか、そういった話を全く聞いていない。
(;*゚ー゚)「……おかしい。何故悪魔が暴れている状況だけがはっきりしていて、ここまで誰一人悪魔の話題を口にしないんですか?」
('A`)「可能性はいくつかある。一つ、悪魔は始めから存在しない。二つ、住民消失が起こった場所でだけ悪魔が現れた。三つ」
ドクオは一拍の間を置いて、それを口にした。
('A`)「この件に他の住民達が協力しているか」
しぃは何も答えない。ドクオが出した三つの考察があまりの衝撃だったのか、顔面蒼白で目を見開いている。
(;*゚ー゚)「そんな、馬鹿なことがあるわけ……」
ようやく絞り出した声もどこか力がない。信じたくはないのだろうが、認めざるを得ない、といった感じだろう。
('A`)「確実ではない。が、可能性がないとは言えないだろう。俺的にも信じたくはない。けど、状況を鑑みるとそう考えるのがしっくりくる」
真相はまだ分からないし、もしかしたら操られているという線もあるかもしれない。
('A`)(さすがに、騎士団が一枚噛んでるってのはないだろうけど)
と、その時だった。
街の入り口辺りから爆発と爆発音が響き渡る。同時に誰かの叫び声。どこかで聞いたことがあるようなないような。
(*゚ー゚)「ドクオさん」
('A`)「あいよ」
しぃが走りだし、そのあとを追う。そこには━━
- 406 名前:1 :2014/07/03(木) 18:19:00 ID:2V.Din8.0
从;'ー'从
ξ;゚听)ξ
大量の魔物相手に応戦している見知った顔が二つあった。纏っている服もぼろぼろで、相当な距離を魔物と戦いながらここまで来たのだろう。
('A`;)「渡辺と、ツン? なんでこんなとこにいるんだよ!?」
(*゚ー゚)「問答はあとです。助太刀しましょう」
二人はそれぞれ得物を握りしめると魔物の群れに突撃する。
渡辺とツンが一度こちらを見たが、声をかける余裕はないだろう。
ドクオは二人の前に躍り出ると、魔物達をまとめて薙ぎ払った。
それからしばらく四人は乱戦を繰り広げたが、全ての魔物を蹴散らすまでそう時間はかからなかった。
- 407 名前:1 :2014/07/03(木) 18:19:55 ID:2V.Din8.0
( ・∀・)「どうにも今回の件違和感があるな」
現地の騎士と情報の交換を行ったあと、確認することがあるというショボンと別れ、モララーは一人ドクオとしぃを探して街を歩いていた。
得られた情報はほとんどない。モ・トコを中心に目撃されているはずなのに、現地の騎士ですら悪魔と交戦もなく、見たことすらないのだという。しかも挙げられているはずの被害もほとんどないというのだから、王都から遠路はるばるやって来た自分達の立場がない。
これではなんのためにモ・トコまで来たのか分からなくなってしまった。
( ・∀・)「悪魔、悪魔ねぇ」
モララーは悪魔をこの目で確認したことがない。知っているのは十五年前の戦争で生き残った極僅かな人間だけだ。
どんな存在か分かっているからこそショボンとドクオが派遣されたのだろうが、それにしたってまるで先が見えないこの状況はどういうことなのだろう。
名前だけが一人歩きして実害がないなんて、これでは話が根本から覆されてしまうではないか。
( ・∀・)「どこの誰がやってるのかは知らないが、悪魔の名を語って好き勝手してる馬鹿がいるのは確定だろうな」
となれば、モララーは騎士として動かなければならない。悪魔だなんていたずらに恐怖心を煽っておいて人の生活を脅かす悪党だ、容赦なくこてんぱんにのしてやろう。
だがそれには敵の目的や正体を暴かねばならない。そのためにも最低ドクオの協力は得たいところだ。
( ・∀・)(どこほっつき歩いてんだか)
- 408 名前:1 :2014/07/03(木) 18:21:13 ID:2V.Din8.0
ふとモララーは立ち止まる。人のいない道の真ん中に異彩を放つ人間が立っていた。
【+ 】ゞ゚)
棺桶のような物の隙間から覗く顔。そもそも何故棺桶が道の真ん中に立っているのかが疑問だが、怪しい人間であることに違いはない。
( ・∀・)「おい、こんなとこでなにやってんだ」
一瞬声をかけるべきか迷ったが、話は聞かなければならない。それが騎士というものだ。
男から返事はない。じろりと一瞥をくれただけで、すぐに明後日の方を向いてしまった。
( #・∀・)「おい、てめえ、質問に━━」
相手の反応に語気を強くしたモララーが近付いた時だった。
( ;・∀・)(体が……動かない……)
【+ 】ゞ゚)「ずいぶんといい素体だ。ぜひとも使わせていただこう」
男が何事かを呟くと、棺桶から黒い人形のようなものが何体か歩いてきた。ような、というのはここまで近くにいながら靄がかったようにそれの正体を認識できないからだ。
( ;・∀・)(くそっ、動け動け動け!!)
何かの魔法なのか、モララーはスペルキャンセラーを発動させる。体は動かずとも口は動くようで、すぐさまモララーは後方に距離をとって体制を立て直す。
黒い人形の動きはそれほど早くない。棺桶男もその場から動こうとせず、こちらの動きを観察しているように見えた。
( ・∀・)「先手必勝ってな!」
素早く得物を組み立て、モララーは疾風の如く駆ける。左右から襲ってくる人形に、槍を大きく横に薙ぐとそれだけでごみくずのようにバラバラになった。
弱い。これならば問題なく男を捕縛できそうだ。
- 409 名前:1 :2014/07/03(木) 18:22:13 ID:2V.Din8.0
【+ 】ゞ゚)「まだまだ人形はある。君はどこまで耐えられるかな」
モララーが槍を構え直すとそこかしこから魔法陣が現れ、先程と同じ黒い人形が周囲を埋め尽くす。それらは一斉にモララーの方へと頭を向けると、ぎこちない動きでこちらへ攻撃を繰り出してきた。
飛び道具は持たないらしく、全て近接攻撃だけ。ならばとモララーは中空に手をかざし、詠唱。巨大な魔法陣を作り出し、この周辺を吹き飛ばす光の魔法を繰り出した。
光はモララーの目の前一帯を飲み込み、地を剥がし建物を粉砕し、ありとあらゆる物質を破壊していく。人形達は声をあげることなく消滅していったが、棺桶の男には通用していないように見えた。
さらにもう一撃大きな魔法。今度は範囲魔法ではなく、目標を定めた強力な一点突破の魔法だ。棺桶男の周辺の光を圧縮圧縮圧縮。物体の許容量を越えて内包された光の魔力が内部から爆発を起こした。
砂煙が巻き起こり視界を奪う。しかし、モララーは動かない。
ここまでやったが、あの男は生きているという確信がモララーの中にはあった。この視界の中、何かをしているかもしれない。しかし、魔力の変動が感じられない以上、下手に動くよりは様子を見るべきだ。
念のため防御系の魔法を準備しつつ、モララーは周辺を警戒する。
煙が晴れると、男は同じ場所に立ったままだった。魔法陣を発動させた形跡もない。
( ・∀・)「こんな雑魚ばっかいくら呼び出しても意味ないぜ。やるならてめえでかかってきな」
あからさまな挑発だが、敵はそれでも動かない。何を考えているのか、表情はびくりともせず、こちらを見ているだけ。
もう一度周辺を確認し、モララーは自身の身体能力を強化する魔法を発動させ、棺桶男に向かう。
殺しはしない。しかし、痛い目にあってはもらおう。何かしらの情報を持っているかもしれない。
モララーが槍を中段に据え、溜めを作った瞬間だった。
- 410 名前:1 :2014/07/03(木) 18:22:57 ID:2V.Din8.0
( ;・∀・)「は?」
男の姿が消え、街中にいたはずなのに深い闇が一面に広がっていた。
( ;・∀・)「くそ、どうなって……」
言い終わる前に後方から何者かの気配。すぐに振り向こうとする。が、
( ;・∀・)「力……が……」
何故か力が抜けていく。モララーは為す術なく膝を折ってしまう。
敵の攻撃を避けることも出来ず、鋭く尖った何かがモララーの体を貫く。
そのまま、モララーの意識はぷつりと途切れた。
- 411 名前:1 :2014/07/03(木) 18:24:10 ID:2V.Din8.0
◇◇◇◇
大量の魔物を殲滅した四人は、傷だらけの渡辺とツンの治療のために宿舎へと足を運んでいた。随分と長い間追われていたのか魔法使いのトレードマークとも言えるマントや三角帽子は汚れ、破け若干卑猥な具合になっていてドクオは目のやり場に困ってしまう。
('A`)「しかしツンさんの体はひんs」
ξ#゚听)ξつ三○A`)「メメタァ」
ξ#゚听)ξ「乙女の体を貶すなんていい度胸ね」
(*)A`)「サーセン」
(;*゚ー゚)「あの、そんなことよりもどうしてお二人がこんな場所まで? 一応モ・トコ周辺は立ち入り禁止のはずですが」
ξ#゚听)ξ「あ? 今そんなことって言ったか? 私の胸はそんなこと程度だよぷすすーって言ってんのか? あ?」
(;*゚ー゚)「わ、私よりは全然大きいじゃないですか!」
ξ゚听)ξ
ξ゚听)ξ チラッ
(*゚ー゚)←つるぺた
从'ー'从←美乳
ξ゚听)ξ←微乳
('A`)←まな板
ξ゚听)ξ「まぁ、私だってこの中なら上から数えた方が早いし、別に巨乳になる必要もないっていうか」
('A`)「お前のコンプレックスがなにかは分かったけどさ、いい加減落ち着こうぜ。まだ慌てる時間じゃない」
- 412 名前:1 :2014/07/03(木) 18:25:03 ID:2V.Din8.0
自分の発言が原因だったことを申し訳なく思いながらも、ドクオは脱線した話を元に戻すことにする。このままではツンの胸の話で一日が終わってしまいかねない。
('A`)「んで、二人はこんなとこまで何しに来たんだ? 悪魔の話は王都でも噂になってただろ?」
从'ー'从「えぇっと、実はねぇ」
ドクオが尋ねると渡辺は、課題で魔導鉱石の原石が必要になったこと、それを入手するためにここまで来たことを話してくれた。
从'ー'从「それでね、モ・トコまでは行けないから二つ前の街で降ろしてくれたんだよぉ」
ξ゚?゚)ξ「そうしたら街には人っ子一人いないし、いきなり魔物がわんさか現れるしで参っちゃったわ」
ドクオとしぃは思わず顔を見合わせた。
ツンは今、街に人がいなかったと言った。ツン達が降ろしてもらった街は間違いなくドクオ達が一泊したところだが、お昼の時点では人がいないなんてことはなかったはずだ。
('A`)「どういうことだ、これ」
(*゚ー゚)「……私達が出てから夕方までの短い時間で人が消えたということでしょうか?」
順序を考えればそうなのだろうが、街中の住民全てを消すなんて芸当がこの短い時間で可能なのだろうか。王都ほどではないが、モ・トコから王都までの中継地点であるあの街は宿舎町としてそれなりに栄えていた。人の数も少なくはない。
- 413 名前:1 :2014/07/03(木) 18:25:58 ID:2V.Din8.0
('A`)「それと、魔物が街に現れたって言ったが、結界はどうなってたんだ?」
ξ゚听)ξ「結界? んなもんなかったわ。あったのは魔法陣くらいよ」
从'ー'从「広場の中心に大きいのがあってぇ、そこから魔物が一杯出てきたよぉ」
ドクオは考える。他に立ち寄った街でも魔法陣が設置されていたような形跡があったはずだ。そこに街の住民の集団失踪。
未だ正体を現さない第三者に、昨晩の襲撃。
そして、悪魔。誰も姿を見ておらず話題にすらあがらない異常とさえ言えるこの状況。
何かが繋がりそうで繋がらないもどかしさがドクオをさらに焦らせていく。
(*゚ー゚)「ドクオさん。少し落ち着きましょう。ツンさんや渡辺さんも今日はお疲れでしょうし、副団長からの指示を待つのが得策かと」
('A`)「……そう、だな」
そういえば、ショボン達は何をしているのだろうか。ツンや渡辺が合流したことは先程報告したはずだが、それにしても顔すら見せないというのは少し変ではないか。
ましてや魔物が街のすぐそばまで来ていたのだから、何かしら伝令があってもおかしくはないのだが……。
- 414 名前:1 :2014/07/03(木) 18:26:43 ID:2V.Din8.0
('A`)「……ちょっとショボンさんのとこ行ってくる。しぃは二人の手当てを頼んだ」
(*゚ー゚)「分かりました」
部屋を出て会議室へと向かう途中、数人の騎士と自警団の連中とすれ違った。皆一様に緊迫した顔で何事かを話している。
何かあったのだろうかと、ドクオは声をかけてみた。
('A`)「なんかあったのか?」
「えっと、あなたは確か……」
('A`)「今回の騒動で同行している騎士のドクオだ」
「騎士の方でしたか。実は、その……」
口ごもり、目を逸らす男にただ事ではない雰囲気を感じた。
「モララー隊長と、ショボン副団長が行方不明なのです」
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