138 名前: ◆N91v81g8eE :2014/06/02(月) 19:49:13 ID:mlhLzJx.0
( `ー´)「……よばれた理由はわかってるんじゃネーノ? 長岡」
  _
( ゚∀゚)「なんのことッスか? 屋上の件なら、ちょっとブレイクダンスの練習してたらぶつけちまっただけッスよ」

(;`ー´)「いや、ぶつかっただけならあんな風にはならないんじゃネーノ?」
  _
( ゚∀゚)「と言われたってさぁ、センセ。実際そうで、そうなっちまったんだから、それ以外言いようがねーんスよぉ〜」

( `ー´)「だから、こうして問い質してるんじゃネーノ?」

( `ー´)「お前が、嘘をついているってことを」
  _
( ゚∀゚)「……」
  _
( ゚∀゚) ・∀・)つ スッ


ガチャーン! ビチャビチャー


(;`ー´)「ああっ!? お、俺のコーヒーが!? なんだ、突然!?」
  _
( ゚∀゚)「あちゃー。これは困ったスねぇ。
     片づけして、その濡れちまった資料をもっかい出してたら時間かかりますよねぇ?」

  _
( -∀゚) ・∀・)9m「ってわけで、オレもう戻ってもいいッスか〜〜〜? センセェ!」

139 名前: ◆N91v81g8eE :2014/06/02(月) 19:51:02 ID:mlhLzJx.0







第五話「グリーン・ベイビィ・ドールズ」



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.

140 名前: ◆N91v81g8eE :2014/06/02(月) 19:53:01 ID:mlhLzJx.0
それから数日後。

ジョルジュは、先生からのお叱りをなんだかんだでのらりくらり交わし続けた。

自分自身は、どーにかして授業に出ながら、なおかつ傷を癒すために。


そして、あの日、モナーに聞いた『現実』を少しでも整理するために。



――――。


(#)´∀`)「……」
  _
( ゚∀゚)「なぁ、オレは別に拷問趣味もドSな趣味もあるわけじゃあないんだぜ。
     そりゃ、昔はよく昆虫を実験とかいって残酷な末路に貶めたことはあるがよぉ〜〜。
     そんな幼稚で浅はかな行動を、いま、この年で、人間に対してするか? しねーよな、フツー。
     だから安心しろよ。ほれ。簡単な質問に答えてくれるだけでいーんだ」

  _
( ゚∀゚)「お前らの『ボス』って誰なんだ? なにが『目的』なんだよ?」


吹き飛ばしたモナーの重しを剥ぎ、校舎の裏に縄で縛りつけておいた。
放課後、時間の空いたジョルジュはそこへ向かい、反抗的な目をするモナーへ質問を投げかける。

しかし、彼の返答は沈黙ばかり。話す気なんて、さらさらないようだ。

もちろんだが、足が浮いて能力が発動しないようにしてある。
ピストルズを出してきたところで、この距離ならキャッチ・ザ・ハンドの拳の方が早いだろう。

それは、モナーにもわかっているらしい。

話す気はないが、かといって反抗する様子もなかった。

142 名前: ◆N91v81g8eE :2014/06/02(月) 19:56:37 ID:mlhLzJx.0
(#)´∀`)「……お前は、例えば仲の良い友達が万引きをしていると知ったとして
        それを言いふらしたりするモナ?」
  _
( ゚∀゚)「は?」

(#)´∀`)「悪いことは悪いことわかっているし、いけない事だから罰せられるべき。
        それぐらいは当然理解しているモナ。怒ったりもするモナ。
        でも、だからって、わざわざ言いふらして回る真似はしないモナ」
  _
( ゚∀゚)「……何が言いたいんだ、テメー?」

(#)´∀`)「『折り合い』のことモナ。
        良いも悪いも含めて、つるんでいける人がこの世にはいる。
        モナにとって、『ボス』はそういう人間モナ」

(#)´∀`)「とんでもなくドス黒くて、怖くて、卑しい。
        真っ当な人間なんて口が裂けても言えないし、誰も認めないはずモナ。
        けれど、とてつもない『力』がある。そこにモナは惹かれたモナ」

(#)´∀`)「もっとも、七天柱のくせに、お前のような奴に敗れた時点で……
        モナはもう、呟影団にいられないモナ……」

(#)´∀`)「だからと言って、ボスのことを教えてやるつもりもないモナ。
        そんな敬意を抱くに値する人の仲間であった以上、義理は通すモナ」

  _
( ゚∀゚)「…………勝っちまって悪いとは、思ってねえぜ」

(#)´∀`)「だろうね」
  _
( ゚∀゚)「テメーらのような奴らがいるから、この街の人たちが安心できねえんだ。
     オレは、それを放っておけないし、放っておくつもりだってねえ」

(#)´∀`)「……」

143 名前: ◆N91v81g8eE :2014/06/02(月) 19:59:17 ID:mlhLzJx.0
  _
( -∀-)「いいよ。オレだって、ハナからすんなり聞き出せるとは思えなかったし。
     なんにせよ、幹部の一人をぶっ倒せたことがオレは嬉しいんだからな」
  _
( ゚∀゚)「縄は離れたら、キャッチ・ザ・ハンドの能力で解いてやるよ。
     呟影団じゃねーなら、もうオレを付け狙ったりする必要もねーだろ?
     ボコボコにしちまって悪かったな。そんじゃーよ」


(#)´∀`)「…………」

(#)´∀`)「……一つだけ、言っておくことがあるモナ」
  _
( ゚∀゚)「ん?」

(#)´∀`)「確かに、モナはもうお前なんてどーでもいいけど……
        他の団員はどうだか知らないモナ。
        七天柱を倒したスタンド使い……ボスの性格なら、きっと必ず」

(#)´∀`)「お前を『餌』にするに決まってるモナ」
  _
( ゚∀゚)「……なんじゃそりゃ」

(#)´∀`)「つまりは、『夜道の一人歩きには気をつけな』ってことモナ」
  _
( -∀゚)「……ご忠告、ドーモ」


――――。


その言葉を聞き、夜道の一人歩きは確かに気を付けるようにした。
いくらスタンドがあったところで、夜目が効くわけでもない。

144 名前: ◆N91v81g8eE :2014/06/02(月) 20:02:19 ID:mlhLzJx.0
しかし、だからといって。

彼はコソコソと隠れて生きる性分でもなかった。


なにより、自分で売った喧嘩。
自分の意志で、突っ込んだ地雷原。


危ないことがわかっていて、それでもなお進むと決めた。


ならば、最後まで意地は通す。

そんなつもりで、生きていく。


  _
( ゚∀゚)(なぁんて、カッコつく状態じゃないのも確かなんだよなー)


夜は気を付けるが、昼間は隠れる必要もなかろう。

むしろ変におどおどしている方がかえって怪しい。

休日の昼下がり

ジョルジュは普段の制服を纏い、学校から出てくるところだった。

145 名前: ◆N91v81g8eE :2014/06/02(月) 20:06:19 ID:mlhLzJx.0
  _
( ゚∀゚)(もっと頭使ってサボるならサボらねえとなぁ……。
     まさか、毎回英語の授業で小テストやるなんて聞いてねーよ)

どうにかして授業に出てはいたが、やはり傷の痛みに勝てず休息を選んでしまうこともある。

その結果、しわ寄せにより彼は補修を余儀なくされていたのだ。
大型連休にでもやればいいのだが、先生側が「面倒だから今やるぞ」という一声で決めてしまったためでもある。

  _
( -∀-)(まー、家でゴロゴロしてるよりは有意義だけどよ)


ボストンバックの持ち手を両肩にかけたスタイルのジョルジュは、ボタン全開の制服を揺らめかせて歩いていく。
青い色に刻まれた白い星型のマークのシャツは、彼のお気に入りである。

呟影団に目をつけられてから、部活の助っ人も勉強のお誘いもめっきり減った。
正直言えば寂しいことこの上ないが、仕方のないこと割り切っている。

唯一、図書委員のツン(ξ゚听)ξ)だけは普段通りに話してくれるのだけが救いだろうか。
怖がって話さない者が多い中で、そういういい意味でも悪い意味でも物おじしない人間は貴重だ。
だからこそ、大事にしなくてはならない。かけがえのない友人も、守るべき対象なのだから。


  _
( ゚∀゚)(あー腹減った……オーソンでも寄って帰るか)

チラリと財布の中身を確認し、お小遣いとたまーにやっていた日雇いバイトのお金が入っていることを確認する。

『OWSON』の看板が掲げられたコンビニエンスストア自動ドアを通り
コーヒーの香りが充満するレジ前を歩き、食品の陳列する棚へジョルジュは向かった。

146 名前: ◆N91v81g8eE :2014/06/02(月) 20:09:31 ID:mlhLzJx.0
冷房の効いている弁当置場や惣菜類のスペースを流し目で見送っていく。
気にはなるけれど、家に帰れば昼食の準備はできている。
しかし、そこに辿りつくまでの場つなぎとして今、コンビニに立ち寄ったのだ。

  _
( ゚∀゚)(んー、甘いものでも食おうかと思ったが……やっぱ、こうガツンと油もの食いてえな)

ゴマ蜜団子のパッケージを取って吟味しながら、ふとジョルジュの胃袋が指示を出してきた。
そっと陳列棚に商品を戻すと、レジに向かう。

一瞬店員が会計かと勘違いして身構えるが、手に何も持っていないことと視線を察知してすぐ業務に戻る。

 _
( ゚∀゚)(お、アレにしよ)

ヒーターに照らされるソレを発見した彼は、すかさず財布を取り出してレジの前に立った。

店員が無愛想に「いらっしゃいませ」と言うのを聞き流しながらジョルジュは注文をする。

  _
( ゚∀゚)(これウメーんだよなぁ)

外に出てホクホクとした薄紙の袋を開ける。
収まる温かな食べ物は、赤いフライドチキンだ。

147 名前: ◆N91v81g8eE :2014/06/02(月) 20:13:17 ID:mlhLzJx.0
揚げたてではなく少々時間を置いたせいか、皮は既に柔らかくなっている。
同時に真っ赤な香辛料を塗してフライにしているので、非常に辛い。

だが、それがいい。

ジョルジュは涎を我慢できず、口を大きく開けて齧りついた。

肉を歯に食い込ませ、衣を引きちぎる。
じわっと肌色の筋繊維から、透明な油汁があふれ出てきた。
零さないように、下品と思いながらも啜りつつ咀嚼をしていく。

熱さとは違う、舌を、頬内を刺激するスパイスを感じながら、堪能していく。
  _
(*゚∀゚)「はふっ! ほふっ!」

夢中で食べる。
辛さが痛みに変わるけれど、それでも旨味の誘惑に負けられない。
身を舌で転がし、皮を喉で感じ、味を脳で受け取る。

唇がヒリヒリしたのを感じるころには、袋の中は少しの脂が残っているだけとなった。
  _
( ゚∀゚)=3(はー、最高の時間だったぜ)

口をティッシュで拭い、残滓の袋に包んでゴミ箱へ投げ入れる。

それから背にかけたバッグをおろし、チャックを開けた。

  _
( ゚∀゚)(あれ?)

148 名前: ◆N91v81g8eE :2014/06/02(月) 20:17:27 ID:mlhLzJx.0
中に入れておいたはずの、ペットボトル飲料が見当たらない。

最後に出したのはいつだったか……。
教室を出る前に飲んで……それからトイレ行って……

  _
( ゚∀゚)(置きっぱなしにしちまったか)

自らの失態を恥じながらも、けれど今いる場所がコンビニの前であることに安堵する。
無ければ買えばいいのだ。それだけのこと。少しもったいないが、渇きに勝つことはできない。

振り返り、再び自動ドアへ向かおうとした時だった。


(,,゚Д゚)「あのー、すいませェん」


声をかけられた。
容貌は至って普通。大学生ぐらいの年齢だろうか、ジョルジュよりは年上だが、若い。
シャツとチノパン姿で、小さなショルダーバッグ姿の青年は、両手に缶コーラを持っている。

  _
( ゚∀゚)「なんスか?」

(,,゚Д゚)「あの、もし。もしも、だったらで良いんですが……あなた、喉乾いてません?」
  _
( ゚∀゚)「……確かに、オレは今ちょうど飲み物を買うためにコンビニへ戻る途中だったけど……それが?」

(,,゚Д゚)「いえ。余計なお世話だったらいいんですけど……いや、単なる好意的な……気まぐれに近い意志なんですが」

(,,゚Д゚)「これ、一本いりませんか?」

149 名前: ◆N91v81g8eE :2014/06/02(月) 20:20:46 ID:mlhLzJx.0
  _
( ゚∀゚)「……」


別に怪しげな様子はない。
卑屈っぽい性格が出ている会話の仕方だが、それでも特に裏は感じない。

こんな人間が、自分に危害を加えるのだろうか?
けれど、しかし。今のジョルジュの状況を考えると、疑わざるを得なかった。

(,,゚Д゚)「あ、やっぱ突然だと怖いですよね。では、失礼して」
  _
( ゚∀゚)「? なにを……」

プシュッという音が鳴り、プルタブが開かれた。
泡の弾ける音が聞こえると、青年はそれを口に向けてひっくり返した。

(,,゚Д゚)「ング……ング……」

口をつけないよう、間を置いて、尚且つ零さないように。
中のコーラを投入していく。

ジョボジョボという音が鳴らない程度に、口に含んでそれから思い切り喉音立てて飲み込んだ。

(,,゚Д゚)「大丈夫でしょ? 安心してください。間違えて買ってしまっただけなんです。
     二本も飲むと太っちゃうし、時間を置くと炭酸が抜けてしまう……
     そんなものにするぐらいなら、今ここでこれを求めている人に渡す方が得。そう思っただけなんです」
  _
(;゚∀゚)「……」

150 名前: ◆N91v81g8eE :2014/06/02(月) 20:27:10 ID:mlhLzJx.0
奇妙な行動と誠意を見せたい気持ちは伝わった。
未開封だったし、自分で飲んだ以上は毒もないだろう。
  _
(;゚∀゚)「じゃ、じゃあ遠慮なく……いただきます」

開封済みのそれをおずおずと貰って、口をつけた。
匂いも甘ったるい。問題はない。

ゴクゴクと、辛さでダメージを負い水分を失った口と喉へ命が染み渡る。

鋭い炭酸が舌を、喉を刺激していき、胃をビックリさせるかのように弾けていき
ほどよい、とは程遠い甘味が更に口腔内に広がり、身体を癒す。
  _
( ゚∀゚)=3「ぷはー」

一息つき、数瞬置いてせり上がる、確実に起こる生理現象を最小限に抑えて放出する。

少しの暑さと、口の熱さが緩和された。

満足だ。満足のいく間食だった。


(,,゚Д゚)「あ、とと。いいッスよ。僕が捨てておきます」
  _
( ゚∀゚)「あぁ、どうも……」

空になったコーラ缶をゴミ箱へ捨てようと動き出す前に、青年がそそくさと近づき物を受け取る。

すぐに捨てるのかと思いきや、ふと動きを止めた。

151 名前: ◆N91v81g8eE :2014/06/02(月) 20:29:07 ID:mlhLzJx.0
  _
( ゚∀゚)「?」

(,,゚Д゚)「……あぁ。いえ。今日も良い天気ですねぇ、と思いまして」


確かに、快晴だった。
突き抜けるような蒼さの空がどこまでも広がっていて、纏っている雲の衣が更に深みを演出している。

春から夏へ移り変わる季節。
風は温くもなければ冷たくもない。何も感じない、ただの動く空気のよう。


(,,゚Д゚)「……のどかな風景だと思いません?」
  _
( ゚∀゚)「……」


ジョルジュは素直に頷けなかった。

平穏に見えるこの風景だけれど、その裏には間違いなく悪がある。

ドス黒い邪悪のような……吐き気すら催すような陰湿さが間違いなく隠れている。


  _
( -∀-)「……そッスね」


だからこそ、ジョルジュは肯定した。

  _
( ゚∀゚)「こんな穏やかな街を……景色を。オレはずっと見ていたいんスよ」

(,,゚Д゚)「へえ……」

152 名前: ◆N91v81g8eE :2014/06/02(月) 20:30:23 ID:mlhLzJx.0
  _
( ゚∀゚)「だから街に巣食っている『邪悪』が……オレは許せない」

(,,-Д-)「……立派なお人だ」


(,,゚Д゚)「『呟影団』を『邪悪』とわかりながらも立ち向かう」
  _
( ゚∀゚)(ん……?)

(,,゚Д゚)「相手がどれだけ大きいか、どれだけ巨悪なのか碌に知りもしないで……」


(,,-Д-)「そういうの、僕は嫌いではないですがね」

  _
( ゚∀゚)「おい……オメー……?」


青年の雰囲気が変わる。
ゆらりとした立ち姿のまま、手に持った空き缶を握りしめつつ……威圧的な目を……!!

(,,-Д゚);:::「でも、だからって! 赤の他人に対して、迂闊に気を許しすぎなんだぜッ!!」

   
(,,゚Д゚)(*゚ー゚)「『長岡ジョルジュ』さんよぉッ!!!」
    メギャンッ!

153 名前: ◆N91v81g8eE :2014/06/02(月) 20:32:37 ID:mlhLzJx.0
      _
(*゚ー゚)(;゚∀゚)「テメッ!? スタンドつか……」
  ヴォン!



(*゚ー゚)「ダッコ♪」



      _
(*゚ー゚)(゚∀゚ )「え?」



(,,゚Д゚)9m「くっつけ、『グリーン・ベイビィ・ドールズ』!」



          _
(*つ^ー^)つ(;゚∀゚)「どぉわあああああ!?」

154 名前: ◆N91v81g8eE :2014/06/02(月) 20:34:16 ID:mlhLzJx.0
転がる。
懸命に、必死に。

突如、青年が生み出したのは紛れもなく『スタンド』だった。

赤子のような、純粋無垢な小さな少女のビジョンが猛烈なスピードでジョルジュの身体に張り付く。


咄嗟に、何かヤバイと感じていた彼は瞬間的にキャッチ・ザ・ハンドを使って距離を稼いでいた。
それでも、少女は身体にくっついてしまった。
ズシリとした重量もない、けれど確かに張り付いている感覚だけはある。

幸い、ダメージはないようだ。判断が済んだと同時に、ジョルジュは戦闘態勢に入る。
       _
(*゚ー゚)( ゚∀゚)「ったくよぉ〜〜ッ! ホント、気が抜けねぇなあオイ!」

     _
(*゚o゚)(;゚∀゚)「おあっ!?」 

と、転がったままの勢いを使って立ち上がろうとした時だった。


何故か制服ズボンの裾を踏んでしまったのだ。
それが摩擦を生み出してくれず、つるりと足を滑らせてしまう。

      _
(*゚ー゚)(;゚∀゚)「な、なんだ?」

慌てて体勢を戻して、前に立ち尽くす青年を見据えた時だった。


       _
(*゚ー゚)( ゚∀゚)(…………あれ? こいつ、こんな大きかったか……?)


遠近法にしてはおかしい。
先ほど隣にいた時に比べ、自分の背丈に対する青年の身長が明らかに増大していた。

155 名前: ◆N91v81g8eE :2014/06/02(月) 20:36:50 ID:mlhLzJx.0
      _
(*゚ー゚)( ゚∀゚)(まさか……身体を大きくしたりするスタンド……?)


(,,゚Д゚)「……へっ!」


ジョルジュが困惑しているのを見て、青年は笑った。
不敵な笑みを浮かべ、手に持っていた空き缶を放り投げる。
      _
(*゚ー゚)( ゚∀゚) ・∀・)「キャッチ・ザ・ハンド!」


攻撃かと思い、ジョルジュはスタンドを出した。
そして飛んできた空き缶を……

      _
(*゚ー゚)(;゚∀゚) ( ・∀・)つ「!?」


掴んだ。
左手を使い、引き寄せて握る。

スタンドに持たせたそれを、今度は自身で握った。


      _
(*゚ー゚)(;゚∀゚)(あれ……あれ?)

156 名前: ◆N91v81g8eE :2014/06/02(月) 20:38:39 ID:mlhLzJx.0
奇妙だった。

数分前まで、それは間違いなくコーラ缶だったはず。
手で握れば、簡単に握りつぶせる程度に弱いアルミ製。
手には決して余らない、手ごろなサイズ。


なのに。


      _
(*゚ー゚)(;゚∀゚)(片手じゃ持ちにくい……というか)



      _
(*゚ー゚)(;゚∀゚)(これもデカくなっているッ!?)



ここまでくれば、大体察しはついた。

理解したのだ。


何が起こっているか。何をされたのか。何が現実か!


        _
(*^ー^)(゚∀゚;)「ま、まさか……こいつ……!」



(,,゚Д゚)「そ。これが俺のスタンド……『グリーン・ベイビィ・ドールズ』
     対象の『年齢を引き下げる』こわーーい、スタンドなんだよん♪
     射程距離もなげーから、簡単に逃げられると思うなよ? 長岡ジョルジュさんよぉ〜〜!!」

157 名前: ◆N91v81g8eE :2014/06/02(月) 20:40:52 ID:mlhLzJx.0
      _
(*゚ー゚)(;゚∀゚)「ちっ……けどなぁ。オレは昔っから『スタンド使い』なんだぜッ!?」

          _
(*゚o゚)   三(;゚∀゚)・∀・)つ「いくぜ! キャッチ・ザ・ハンド!!」
       ギュン!

『何かヤバイ』 

直感は、ずんずんと迫ってくる敵を見れば明白だった。

そして、それは間違いなく事実として顕現する!

 _
(;゚∀゚) ・∀・)「!?」


先手必勝。距離を掴んだならばあとはスピードで押し切る。

ジョルジュのスタンド、キャッチ・ザ・ハンドは発現した当初から速さを持っていた。

身体を小さくするのではなく、年齢を引き下げるとあっても
彼の自信は揺らがない。攻撃さえ入ればいける!


はずだった。


 _
(;゚∀゚) ・∀・)(ま、また身体が小さく……!?
        『スタンドには触れてない』ぞ!?)

背中に張り付いていた、幼女は吸引能力による移動で振り切った。
追従するように、結局はくっつかれてしまうが……触れている時間外であっても、効果は変わってなかった。

158 名前: ◆N91v81g8eE :2014/06/02(月) 20:44:05 ID:mlhLzJx.0
 _
(;゚∀゚) ・∀・)「……! ま、まさか!」

(,,゚Д゚)「へー、もう気づくんだ。意外と冷静に物事が見えているんだねェあんた」

(,,゚Д゚)「けど、気づくのがちょっぴり遅かったな」


小気味良い音を立てて、青年の袖から三段ロッドが飛び出した。
そして、推進力たっぷりのジョルジュが眼前まで近づくと

(,,゚Д゚)「そーれ、ホームラン!」

思い切りふりかぶり、顔面へと叩きつけた!

  _
( ∀ ) ∀・)「ッン!」

 _
(;゚Д゚) ・∀・)「ゴッハァ!?」


小さな声を漏らした数瞬後、ジョルジュは呻いた。
考える余裕もなく、ガードをする意識すらなく。

ただ、彼はなすがままに強烈な一撃を受けたのだ。

スタンドも出ているのに、あの程度のスピードなら能力差では勝っているのに何故?
      _
(*゚ー゚)(;゚∀゚) ・∀・)(ちげえ。油断とかそんなじゃあない。
             意識がなかったんじゃなくて、そもそも『意識出来なかった』んだ!)

159 名前: ◆N91v81g8eE :2014/06/02(月) 20:47:35 ID:mlhLzJx.0
噴き出る鼻血を袖で拭いながら、ジョルジュは体勢を立て直す。
目の前にいる青年は、不敵な笑みを絶やさないままじっくりと、ゆっくりとなぶるかのように歩き続ける。

      _
(*゚ー゚)(;゚∀゚) ・∀・)「!?」

違和感が生じた。
一歩、砂利の音と共に青年が近づいた時だった。

身体にガクッと負担がかかったのだ。

      _
(*゚ー゚)(;゚∀゚) ・∀・)(これは……)

手を見る。一回り小さい。
景色を見る。先ほどより低い。
制服を見る。やけに大きい。

発動している……スタンド能力が!

スタンド自体は相変わらず背中に張り付いたまま。
何かしたわけじゃあない。

何かをした様子もない。

けれど、あいつは『歩いてきた』

      _
(*゚ー゚)(;゚∀゚) ・∀・)(わかりかけてきた……そうか、何か仕掛けるのはトリガーじゃあねえ。
             能力発現のきっかけは……)

(,,゚Д゚)「!」

160 名前: ◆N91v81g8eE :2014/06/02(月) 20:49:31 ID:mlhLzJx.0
ジョルジュは、青年が走り出したと同時に背中を向けた。
そしてキャッチ・ザ・ハンドの能力を使い、全力で逃げ去っていく。

同時に、身体のサイズが元に戻っていっていた。

      _
(*゚ー゚)(;゚∀゚) ・∀・)(やっぱり……本体との『距離』か!)


コンビニから離れ、角を曲がり、路地裏を抜けていく。

追ってくる気配はないけれど、相手がどのような素性かはまったくわからない。
足がめちゃくちゃ速いかもしれない。土地に精通していて、先回りされているかもしれない。

考えている暇はない。
発現の条件は、暫定だがまず間違いなく『距離』であるとわかったならば

適した場所で優位に戦えばいいだけ。

      _
(*゚ー゚)( ゚∀゚)(確かこの先に……)

一般人ともすれ違うので、流石に奇妙な軌道を描くスタンド能力による移動は制限せざるを得ない。
ジョルジュは、人目を気にしながら偶にキャッチ・ザ・ハンドを使って、推進力を高めつつ走っていたのだ。

そしてたどり着く。

障害物が見られない、大きな広場のある公園へと。

161 名前: ◆N91v81g8eE :2014/06/02(月) 20:51:11 ID:mlhLzJx.0
      _
(*゚ー゚)( ゚∀゚)(……しっかし……)

       _
(*゚ー゚)(゚∀゚ )(これ、スタンドじゃなかったら幼女を背負って汗だくで走る不審者だよなぁ)
      _
(*^ー^)( ゚∀゚)(うっかり誘拐犯にされねーためにも、さっさとケリをつけねーとな)


走る最中にわかったことがある。
この背中の緑色の赤ん坊は、何をするわけでもない。

多分、単なるマーキングなのだ。能力が付いた、というただそれだけの目印。

       _
(*゚ー゚)( ゚∀゚)(けど、スタンドである以上……それは大きな意味を持つ)

効果範囲がある、ということは、スタンドの位置もわかるということ。
マーキングであり、GPSのようなものなのだ。
どこへ行こうと、時間差はあれ必ず特定に至る。

      _
(*゚ー゚)( ゚∀゚)「……!」


休日の午後なのに、子どもが居ないことは幸いだった。
みんなゲームでもやって籠ってるのか、それとも何かイベントがあるのか。
とにかく、運の良いことに人気はほとんどなかった。

しかし、ゼロではない。


年季の入っているわりには、綺麗に補修されている遊具の群れ。

には誰もいない。

居るのはただ一人。

162 名前: ◆N91v81g8eE :2014/06/02(月) 20:53:32 ID:mlhLzJx.0
砂の敷き詰められた、ジョルジュがこれから戦いのフィールドへと変えようとしていたグラウンドの方だ。

日影になるわけでもなく、単に親御さんが子どもを見守るためだけにあるであろうベンチ。

そこに、女子高生が一人、座ってスマートフォンを弄っていたのである。

      _
(*゚ー゚)( ゚∀゚)(ちっ、メンドくせぇ!)


離れているならまだしも、これからスタンドバトルを繰り広げる場所だ。
無事でいられるかどうか。また、不審者扱いされないか。
とにかく、良い事なんて一つもない。

      _
(*゚ー゚)( ゚∀゚)「おい、そこのアンタ!」


ノパ听)「……!」



(゚听ノハ三ノパ听)


ノパ听)


σノパ听) ?

      _
(*゚ー゚)(;゚∀゚)「周りにゃ誰もいねーだろーが! あんただよ、あんた!」


ノパ听)「あっはっは。初対面の人に向かって、随分なツッコミと態度だねアンタ」

163 名前: ◆N91v81g8eE :2014/06/02(月) 20:55:54 ID:mlhLzJx.0
多機能携帯を指定鞄にしまうと、女子高生はゆっくりと立ち上がった。

休日なのに、制服姿。ジョルジュと同じ第二チャンネル高等学校の校章が付いている。
『A∀』と銀縁で象られているそれは、学年によって色が異なる。
1年生は青、2年生は赤、3年生は緑。彼女のは緑色。つまり、ジョルジュの先輩というわけだ。

ブレザータイプの制服だが、若干普通の物とは違っていた。
ジャケットの袖をループ返しにし、丸い玉のボタンで留めている。
手首にはダイヤチェックのリストバンドが両方に装着されており
腰には、短いプリーツスカートを押さえるかのように、革のベルトが交差して巻かれていた。


何より、既に冬は終えているのに首には薄いストールを巻いているのが異様であろう。
校則を無視している風貌だが、ジョルジュも人のことを言えたものではない。

      _
(*゚ー゚)(;゚∀゚)「それはすんません! でも、とにかく今急いでいるんスよ!
          事情はいつか説明するんで、こっから離れて……いや、帰ってください!」

先輩と今更気づいたジョルジュは慌てて敬語を使おうとするが、大して敬意を払っているようには聞こえなかった。

ノパ听)「そんなこといきなり言われてもねぇ。
      公共の場で、一市民が何してても勝手だと思うけど?」


腕を組み、やや不審げに、そして若干挑発的に彼女は睨む。

      _
(*゚ー゚)(;゚∀゚)(!! くそっ……説明している暇がねえ!)

164 名前: ◆N91v81g8eE :2014/06/02(月) 20:57:31 ID:mlhLzJx.0
何か適当な言い訳を考える余裕はなかった。

ドクン、と体に違和感が走る。

身体が縮んだ。敵が近づいてきているらしい。

まだ年齢的には大丈夫だろう。
しかし、当然低年齢化すれば思考能力も下がってしまう。

だから、先ほどジョルジュは接近しすぎた際、ガードを取れなかったのだ。

      _
(*゚ー゚)(;゚∀゚)「……と。いま、ちょっとトラブルに巻き込まれちゃってて!
         だから、迷惑かけたくねーんス!」

ノパ听)「ふぅ〜〜ん……」

焦っているのはわかってるはず。
何か事情があるのも理解できているだろう。

それでも、彼女はひかなかった。

何かを察知したかのように、じろじろとジョルジュの顔を見て……。

手を叩いた。

ノパ听)「あぁ。どっかで見たと思ったら、あんたが噂の『長岡ジョルジュ』か!」
      _
(*゚ー゚)(;゚∀゚)「え?」

165 名前: ◆N91v81g8eE :2014/06/02(月) 21:00:19 ID:mlhLzJx.0
ノパ听)「呟影団に喧嘩ふっかけたバカだろ? 知ってる知ってる
      いやー、いつか話をしに行こうと思ってたのに、こんな偶然あんのねー」
      _
(*゚ー゚)(;゚∀゚)(なんだコイツ……ま、まさか……『敵』か!?)


(,,゚Д゚)「見ィつけたよぉ〜〜〜〜ん。長岡く〜〜〜ん!」


遠くで、大きな声で、これみよがしに呼びつけられた。
スタンド使いが、公園の入り口に立ってにやけ笑いを浮かべて立っている。

      _
(*゚ー゚)(;゚∀゚)「やべえ……もうきやがった! おい、あんた! 早くこっから」

振り返ろうとした時だった。

ポンっと肩を叩かれる。

ノパ听)「なるほどね。あれが『敵』か」
      _
(*゚ー゚)(;゚∀゚)「ちょっ……あんた何を……」

ノパ听)「あんたじゃない、あたしには素直ヒートって名前があんの」
      _
(*゚ー゚)(;゚∀゚)「そうじゃなくて! あいつはスタン……」

ノパ听)「察するに、さっきから、あんたの背中にチラチラ見えてる『ソレ』が『スタンド』だね?」



       _
(*゚ー゚)( ゚∀゚)「えっ……」

166 名前: ◆N91v81g8eE :2014/06/02(月) 21:02:00 ID:mlhLzJx.0
ノパ听)「随分気色悪いガキんちょだねェ。大体、本体と像が違いすぎでしょ」


この言葉。
この感じ。

そして、間違いなく見えている……ヴィジョン。


まさか


      _
(*゚ー゚)(;゚∀゚)「あんたも……スタンド使い……?」


ノパ听)「ぶー、外れ〜〜」
      _
(*゚ー゚)(;゚∀゚)「は?」

肩をぐるんと回し、まるでウォームアップするかのように全身の固さを取りながら
青年の方へ歩いていくヒートと言う名の女生徒。


ノパ听)「あたしは……」


(,,゚Д゚)「あん? なんだい姉ちゃん。俺の邪魔しようってのかい?」


      _
(*゚ー゚)(;゚∀゚)「おい、危ねえ! それ以上近づくな!」

167 名前: ◆N91v81g8eE :2014/06/02(月) 21:03:37 ID:mlhLzJx.0





ノパ听)





ノハ--) フー……





ノパ听) コォォオオ……

169 名前: ◆N91v81g8eE :2014/06/02(月) 21:05:28 ID:mlhLzJx.0
奇妙な音だった。
やけに響いたその音は、どこから漏れたのかわからないほど異常。

でも、確実にわかったのは

      _
(*゚ー゚)(;゚∀゚)(呼吸……?)


(,,゚Д゚)「なんだかしらんが、邪魔すんなら容赦はしねえぞ姉ちゃん!!」


三段ロッドを振りかぶる青年。

対するヒートは


ノパ听)「鈍いよ」


手のひらをそっと差し出していた。


ぶつかる!


そう思う前に、事実は異なる結果を導き出していた。

受けるように、ではなく。

撫でるように、横向きに添えられた手のひら。


そこに、ロッドがくっついていたのだ。

170 名前: ◆N91v81g8eE :2014/06/02(月) 21:06:49 ID:mlhLzJx.0
(,,゚Д゚)「…………は?」


ノパ听)「ばいばーい」


(;゚Д゚)「!?」

指先が、青年の胸元に触れる。

次の瞬間、バチィっという稲妻のような音が鳴ると青年は弾かれたように飛んで行った。

      _
(*゚ー゚)(;゚∀゚)「えええ!?」


驚きつつも聞き逃さなかった。
聞こえたのは稲妻のような音と……何かが広がる様な反響音。

まるで、水面に広がる波のような……。


ノパ听)「あたしはね、長岡。『スタンド使い』じゃあないよ……」

171 名前: ◆N91v81g8eE :2014/06/02(月) 21:08:19 ID:mlhLzJx.0



ノパ听)9m「あたしは、『波紋使い』さ」






指先を見せつけるかのようにジョルジュへと振り返るヒート。


黄金色に輝く、波紋の光がそこには灯っていた。




つづく


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