50 名前:同志名無しさん :2014/07/30(水) 23:32:34 ID:oLOWsIoA0

MISSION 3 「トレーニング完了」


( ^ω^)「おっおっ、評判通りの超大作だったおね」ズゾゾッ

('A`)「いやー、なりきっちゃったなーお互い。
    まぁ黒歴史は胸に留めてっつーことで……」ズゾッ

キャンペーン協力プレイを初めてから、まだ映画さながらの興奮が抜けきれずにいた。
そして、ブーンの野郎もまだ家にいた。

腹は減ったが、とりあえずありあわせのヌードルで空腹を一時紛らして、今度はマルチプレイに挑戦するところだ。

('A`)「こういうゲームはやっぱり対人戦でやってナンボだろうからな。
    多分強い奴がいっぱいいるんじゃないか?」

(*^ω^)「フヒヒ……ブーンことマッギャバンの実力を見せる機会が来たおね」

('A`)「なんだ? 自信アリか?」

( ^ω^)「もちのロンだお! CPUの敵兵なんてほとんどヘッショだったし、かなりイイ線行くんじゃないかお?」

('A`)「どうかな……いや、まぁクリアしてちょっと自信はついたかも。
    操作も別に難しいことはねーし」

言いながら、俺は購入前に閲覧していたあのファンサイト「三毛猫ぶろぐ」の一文を思い出していた。

51 名前:同志名無しさん :2014/07/30(水) 23:33:19 ID:oLOWsIoA0

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  だけどそれなりに高度で、まぁまぁに練達したプレイヤーテクニックがあっても、きっとその場所での皆さんは
  そこそこに鍛えたというエイムや、鋭いと自負してきた持ち前の勘などを発揮する前に、呆気無く死ぬでしょうね。
  ゲームをファッションとして着飾るような一過性の、ウジの様に湧き出ては消えていくにわかプレイヤー共と、
  実戦でも通用するかというほどの我々、プロ志向のシューターとはそれほどの開きがあるということですね。

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('A`)(そういえば、このゲームマルチプラットフォームだよな……
    どの機種でやってる人なんだろ)

ブーンにせかされるまま、俺たちはキャンペーンロビーからマルチプレイヤーの大海へとようやく旅立った。
さてさて、この先に潜んでいるのは、蛇か、悪魔か。




〜マルチプレイ 初戦〜


Team Death Match
 <敵を殲滅しろ>


俺は一番人の多そうなルールをとりあえず選んでおいた。
8対8、規定スコアを達成するまでひたすら敵を殺しまくる「TDM(チームデスマッチ)」だ。

52 名前:同志名無しさん :2014/07/30(水) 23:33:47 ID:oLOWsIoA0

どうやら平日の夜だというのに、このゲームにアクセスしているユーザーが25万人もいるらしいので、
オンラインゲームとしては忌避される「過疎」というものに悩まされることはなさそうで一安心だ。

( ^ω^)「おっ、おっ! これ、もしかして好きな武器使えるお?」

('A`)「そうみたいだな……色々と細かく性能カスタマイズできるみたいだ」

(;^ω^)「うわっち。ブーンのよく使ってたスナイパーライフルが使えないお……」

('A`)「ん……あぁ、これはどうやらLv5以上からアンロックされるみたいだな。
   大人しくしばらく試合をこなして、武器が出せるまで待つしかないっぽいぞ」

そこまで言いかけて、そういえば購入店「ぽぽろん」の店員が、わざわざ息を切らしながら
オススメだと熱弁してくれた、おまけ武器の存在に気付く。

本来LV21にならないと使えないサブマシンガンが、どうやら最初から使えるようになっている。
武器のペイントなんかも出来るみたいだが、どうやらこれは金ピカの下品な限定仕様らしい。

( ^ω^)「おっ! 最初からスコーピオン使えるのかお? ブーンもそれ使いたいお」

('A`)「ん〜、画面分割プレイヤーにまでは行き渡らない仕様みたいだな。
   俺の方でしかアンロックされてないけど、使いたいならあとで1コン代わってやるよ」

( ^ω^)「そうなのかお。
       よし……それなら、敵兵倒しまくってレベルあげまくるだけだお! がんばるお!」

('A`)「おっ、マップ決まったみたいだぞ」

そして、和気あいあいの雰囲気のまま、俺達は初めての戦場に降り立つ―――

53 名前:同志名無しさん :2014/07/30(水) 23:34:10 ID:oLOWsIoA0


<敵兵を殲滅しろ>


待機ロビーから戦闘マップに画面が移り変わると、目の前には仲間たちが次々と降り立っていく。
カウントダウンがされているのは、戦闘開始までの時間を表しているのだろう。

('A`)「おっと、この間にクラスってのを選択するのか」

( ^ω^)「ふんふん。
       クラスによって使える武器、キャラクターのPark(能力)が違うおね」

('A`)「ま、狙撃兵は狙撃に適した隠密行動、工作兵なら敵の乗り物を落としたりしやすいってとこか」


( ^ω^)「……うーむ。
       使いたい武器がないおねぇ……とりあえず、ブーンはこのマシンガンで行くお」

('A`)「うし、とりあえず緒戦だ。頑張ろうぜ」


そして、試合が始まった。

一斉に駈け出していく仲間たちについて、画面を上下に2分割して参戦している俺とブーンもまた、
それに付き従って走りだした。俺が手にするのは金色のスコーピオン。
確かキャンペーンでは射程が短いながらも、その連射力の速さに助けられた覚えがある。

54 名前:同志名無しさん :2014/07/30(水) 23:34:32 ID:oLOWsIoA0

('A`)「敵はどこだ、敵は」

チュインッ

(;^ω^)「おぅふッ!? どっかから撃たれたお!」

('A`)「そっちか?」

突如ブーンのキャラを掠めた銃弾。
ダメージを受けると画面が赤くなる仕様なのですぐに分かる。
近くに行こうと走りだした瞬間、勢いよく俺のプレイヤーキャラクターが仰け反った。

パァン・・・!

(;'A`)「ほげぇっ」

ワンショット。
スナイパーの放った銃弾が、的確に頭部を撃ちぬいた。

画面が赤く染まった次の瞬間、無様な俺の死に姿がリプレイとして映し出される。

(;'A`)「なるほど・・・岩の上に寝そべってるスナイパーがいるな」

(;^ω^)「おぅふ!味方さんも一人やられちまったお!」

55 名前:同志名無しさん :2014/07/30(水) 23:35:27 ID:oLOWsIoA0

(;'A`)「隠れた方がいい。気付くのが遅かったぜ」

これは「キルカメラ」といって、オンラインマルチプレイモードのみに搭載されたシステムのようだ。
敵がこちらを倒す瞬間のシーンが再生され、腹立たしい思いをさせられるだけじゃない。
隠れている敵の位置も確認できるので、次からはその場所を通る時に気をつける事が出来るというわけだ。


やはり人間、たやすくやられてくれるBOTなどとは一味違うということか。


('A`)「だけどな……」


一度やられてリスポーンし直した俺は、運よく狙撃された地点に復活した。
相手がスナイパーなら、俺も負けちゃいられない。


( ^ω^)「おっおっ。ゲーム中はブーンよりもスゴかったグリニッジ中尉の狙撃の腕前、見せてやれおっ」

('A`)「おうよ!ここだ!」


スコーーーーン

56 名前:同志名無しさん :2014/07/30(水) 23:35:53 ID:oLOWsIoA0

木々の隙間から気づかれないようにゆっくりと狙いを定め、見事にリベンジを果たした。


('A`)「よし!」

( *^ω^)「さっすが中尉!」

(*'∀`)「へへ、おうよ。マッギャバン軍曹、俺に続け!」


協力プレイでともに戦場を駆け巡った俺たちは、初心者にしてはなかなかにやれているようだった。
階級は新兵そのものの二人だが、巧みなコンビネーションで付近の敵を次々とキルし、次第に調子付いていく。

( ^ω^)「おりゃっおりゃっ!」

('A`)「後ろからもう一人――っと、仕留めたぜ!」


キャンペーンのドラマチックな演出とはまた違う、対人戦ならではの興奮が、そこにはあった。
倒し倒され、一喜一憂。
負けてたまるかなにくそと、無意識にコントローラを握る手にも力が込められていた事に気づく。

そして、「W.F.R」オンライン対戦の初陣は、見事ブーンと俺のワンツートップにて決着した。
これはチーム対抗でキル数を競うルールであるが、その中で、俺とブーンがもっとも敵兵を倒したということだ。

57 名前:同志名無しさん :2014/07/30(水) 23:36:26 ID:oLOWsIoA0

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    -War is Over-

Red team

17K/11D DOQ'N(1)
14K/15D DoQ'N
13K/ 2D juan dobson
12K/14D MURAHATA_JP
8K/ 8D xkurenaix
8K/16D dartyhally37564
7K/10D LOVE DELICA
4K/ 3D kibayashi01

------------------------------


( *^ω^)「おっおっ、勝ったおっ!ブーンがトップスコアだお!」

('∀`)「ハハ、チクショウ。俺も地味に狙ってたんだけどな」


ブーンは17キルの11デス。
文句なしにチームの勝利に貢献したが、俺は一つ多く死んでしまった。
この場合、3着につけたjuanとかいう外人が影の立役者ということなのだろう。

58 名前:同志名無しさん :2014/07/30(水) 23:37:14 ID:oLOWsIoA0

勝利の喜びと、連携プレーで敵を倒していく爽快感。
これは確かに、日本産の大作RPGなんかじゃ味わうことのできない面白さの質だ。

かくして、白熱のオンライン第一線は大興奮に始まり、朝までコースは確定――


( *^ω^)「よっし、今夜は朝までやるお!寝かさないからおねっ!」

('∀`)「へへ、完徹でゲームとか超久々だけどな。まぁいいぜ」


そう思っていた俺たち二人のニヤついた表情が、次の試合で歪むことになろうとは……
この時は知らなかった。

FPSとは、かくも厳しい世界なのだと。
そして――世の中、”上には上がいるものなのだ”と。



( ^ω^)「おっおっ、ここは狭いマップでいいおねぇ」

59 名前:同志名無しさん :2014/07/30(水) 23:37:52 ID:oLOWsIoA0

('A`)「あぁ、マクマホンがリトルバードで援護に来てくれたシーンの場所だな。
    こいつぁ激しい銃撃戦になりそうだぞ?」


ロビーでのマッチング。
次々とプレイヤーが参加してくる中で、敵チームはなかなか揃わない。
だが、味方のある一人のプレイヤーが参加決定した瞬間、誰かがオープンにボイスチャットを飛ばした。

------------------------------

    -Player Lobby-

Red team

 DOQ'N
 DOQ'N(1)
 [RIP]bisket
 Totalchimpos
 FPS-No1_Player
 CHLOE_CHAN
 MURAHATA_JP
 [MGM]MANjuKOwai

------------------------------

<……オイ>


<エムジーエムじゃん>

<おわっ、マジだ!>


('A`)「?」

60 名前:同志名無しさん :2014/07/30(水) 23:38:29 ID:oLOWsIoA0

( ^ω^)「はて?」


俺たち二人はボイスコミュニケーターをつけていないので会話には参加できないが、にわかに場がさざめきだったのを感じた。
名前欄を見てみると、そこには確かに「MGM」のクランタグを付けたプレイヤーが入室してきている。

('A`)「有名人なんかな」

俺の問いかけに答えるように、誰かがまたその名を口にした。


<おー、MGM初めて見たw 有名なソロクランの人だよね?>


<”マスター・ガン・マスター”>


クランタグ名の意味を、誰かが口にした瞬間、俺は思わず吹き出した。


('∀`)「ぷふっ」

( *^ω^)「厨二くせぇネーミングだおねぇw」


当のマスター・ガン・なんちゃらはボイチャを使っていないようだ。
ソロクランということは、わざわざ一人でクランを立ち上げているのだろうか。

友達、いないのかなと思った。
程なくして、敵チームのプレイヤー欄は一瞬で埋まった。

全て、同時に。

61 名前:同志名無しさん :2014/07/30(水) 23:38:55 ID:oLOWsIoA0

------------------------------

    -Player Lobby-

Blue team

 [MKNK]mikeneko
 [MKNK]STRONG_SIDE
 [MKNK]ahoahounchikun
 [MKNK]+CLOZE+
 [MKNK]soul_army
 [MKNK]MAGATAMA
 [MKNK]ReOnaLdDavInCh
 [MKNK]hell's kitchen

------------------------------

('A`)「……あ」

( ^ω^)「あれ?敵さん、みんなタグ統一されてるおね」


見覚えのある名前が、そしておそらくはそうなのだろうというクランタグが、敵チームのリストに羅列していた。

62 名前:同志名無しさん :2014/07/30(水) 23:39:33 ID:oLOWsIoA0


<ありゃ、向こうMGMいるじゃんとか思ったら……新兵ばっかじゃん>

<一人分割居るし、あ、こらお察しですわ!>

<俺らのレイプは手際がいいからな。特に、野良レイプは>



( ^ω^)「なんだおなんだお、騒がしい連中が入ってきたおねぇ」

('A`)「こりゃあ”パーティー”ってやつだ……それに――」

同じクラン同士で、味方と離れ離れにならないようにパーティーを組んでいる。
こうすれば、俺とブーンのようにお互い連携を取り合うため、一緒にプレイが可能だ。

バラバラの寄せ集めと、日ごろから一緒にプレイしている仲間同士。
どちらが有利かと言えば、むろんの事よほどのへたくそでもなければ後者だろう。

ちょうど俺があるブログで目にした名前が、そこにあった。
声を聞いただけで、なんだかあの顔文字が頭に浮かんだ。


(=^3^=)<……ったく、またジャップか>

63 名前:同志名無しさん :2014/07/30(水) 23:40:26 ID:oLOWsIoA0

(=^3^=)<……うわっ!キルレ1以下じゃんほとんど>

(=^3^=)<雑魚狩るのもいい加減飽き飽きだっつーの>

(#^ω^)「は?」

出会い頭の暴言を聞いてか、はたまた相手が誰かわかってか。
味方チームの何人かがすぐさま無言のまま退室した。

あのブログの主と思しきプレイヤーは、それを茶化すようにしてまた口汚い言葉を吐き捨てる。

(=^3^=)<抜けやがったぞオイ……ったく、やる気ねぇなら最初からやるんじゃねぇよカスが>


<ほんまやわぁ……マジ萎えるんやけど>

<まぁまぁ、チキン野郎どもの分までたっぷり可愛がってあげましょうよwww>

(=^3^=)<あ、マ○コ野郎は俺がやるわ。こいつ結構やるから>

64 名前:同志名無しさん :2014/07/30(水) 23:40:49 ID:oLOWsIoA0

(=^3^=)<新兵くんたちは適当にみんなで掃除しちゃって〜>

<うーっす>

<ほなやりまひょか〜、やる気も出ぇひんけども>


一連のやり取りを聞いていたブーンは、憤る。


(#^ω^)「ドクオ、こいつら何様なんだお!」

(;'A`)「たぶん……”名人サマ”なんだろうぜ」


この試合、俺はズタボロに負けるという確信があった。

そして、この試合を境に――

グリニッジとマッギャバンの二人が。
あんなに戦場を共にした二人が道を違えてゆこうなどとは。

この時は、まだ――


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