255 名前:【幕間:Maidenly Makeup】 :2013/12/17(火) 17:38:03 ID:pge1lf7A0

 いい加減に僕も我慢の限界というやつだった。

 この記憶喪失の少女、ミィと同じ時間を過ごすようになって数日経ったが、彼女には相変わらず淑女らしさというものが欠片も伺えない。
 オブラートに包まず言えば彼女には羞恥心がほとんどないらしく、それが僕を悩ませている。


( ^ω^)「(とりあえず風呂上りに全裸でいることはなくなったが、服は脱ぎ散らかしたままのことが多いから僕が片付ける羽目になるし)」


 ついでに彼女の衣服を畳んでいる際に驚くべきことに気付いてしまった。
 脱がれた物の中にブラがなかった。
 どうやらミィは下着を身に付けずにそのままシャツを着ているらしい。

 当然、彼女がニップレスのようなアイテムを知っているはずもない。
 先日は気持ちの良い秋晴れで気温も高く、ミィの服装も胸元が緩いシャツにジャケットを羽織っただけだったが、あの下に何も身に着けてなかったと思うとゾッとする。
 というか普通に馬鹿じゃないのかと思った。
 コイツ、本当に何処かの裸族の出身じゃないだろうなと。

 まあ実際、彼女の慎ましやかな胸に下着が必要かと言えば微妙なところなのだろうが。


( ^ω^)「(支える必要はなくとも隠す必要はあるだろうに)」

256 名前:【幕間:Maidenly Makeup】 :2013/12/17(火) 17:39:15 ID:pge1lf7A0

 そういうわけなので言った。
 下着を身に着けろと。


マト゚ー゚)メ「パンツは履いていますよ?」

(;^ω^)「当たり前だろ、馬鹿かお前は。上の下着の話だ。下すらなかったらスカート履けないだろうが」

マト-ー-)メ「私はあまりスカートが好きではありません。ブーンさんも私のスカート姿は見たことがないでしょう?」

( ^ω^)「そう言えば見たことないな……って、それはどうでもいいんだお。お前のファッションはお前の自由だ」

マト゚ー゚)メ「では下着を身に着けるかどうかも私の自由ではないですか?」

( ^ω^)「そこは自由じゃねえお。常識だ」


 痴女かコイツ。


マト゚ー゚)メ「そうは言いましても、私はブラジャーのことはよく分かりません。それに下着を身に着けていると血管が圧迫され、ストレスになります」

( ^ω^)「なんでブラのこと知らないのにそんな知識を持ってるんだ」

257 名前:【幕間:Maidenly Makeup】 :2013/12/17(火) 17:40:13 ID:pge1lf7A0

 その目か?
 その両目は下着が人体に及ぼす影響まで知覚できるのか?

 とにかく、と彼女は言って一歩僕に近付く。
 ミィが纏っているのはシャツ一枚。
 知ってしまった今では、そんな姿を見る度に心臓の鼓動が早くなる。


マト-ー-)メ「見られることが恥ずかしいことだと言うのなら、私は特に気にしません。それ以前に『未来予測』を用い本当に見えそうな時はちゃんと隠しています」

(;^ω^)「……なんて無駄な能力の使い方をしてるんだ」


 つくづく馬鹿じゃないのか、コイツは。


マト゚ー゚)メ「そういうわけですが、何か問題がありますか?」

(;^ω^)「いやでも、万が一……」

マト-ー-)メ「数秒以内の未来ならば『未来予測』に万が一はありえません」

( ^ω^)「それでもだ。それでも万が一、お前が下着を身に着けていないと誰かに知られたら、どうなる?」

258 名前:【幕間:Maidenly Makeup】 :2013/12/17(火) 17:41:11 ID:pge1lf7A0

 僕は言った。


(;^ω^)「お前の隣にいる僕は、まず間違いなく『彼女に羞恥プレイさせてる鬼畜彼氏』というレッテル貼られることになるんだお……?」


 ……最悪過ぎるだろ、それ。
 そんな性癖は僕にはない。

 僕の言葉に彼女は心底驚いたようで、オレンジに近い色合いの目をまんまるにしたまま黙った。
 そうして直後に顔を伏せてばつが悪そうに視線を落とす。
 反省してくれたのだろうか?


マト* ー)メ「……そうですね。恋人同士に見られると、困ってしまいます」

( ^ω^)「(あ、コイツ反省してねえな。口元笑ってる)」


 遂に僕は諦めて、この話題を打ち行った。

 ……なのだが、どうやら少しは反省してくれたのか、ミィは下着を身に着けるようになった。
 それは重畳であるはずなのに、やはり何処か惜しいことをした気分になってしまうのは、まだまだ幼い男の悲しい性だった。


←第五話 / 戻る / 第六話→




inserted by FC2 system