- 900 名前:名も無きAAのようです :2013/10/16(水) 22:45:55 ID:UhAbeAZw0
- 庭の片隅、植木鉢の陰、一匹の猫が息絶えていた。
お墓に埋めてあげよう、と言ったのはどちらだったか。
二十数年の月日に埋もれた記憶はところどころが抜け落ちて、曖昧で、
夢のような色合いをしている。
だから、もしかしたら本当に夢だったのかもしれないと弟者は今でも思うことがある。
(´<_` )「あにじゃ、おれ、すこっぷをもってくる」
あにじゃはねこさんをみていて。
二つのスコップを手に戻ったとき、猫の姿はそこになかった。
時間にして、せいぜい三分のことだった。
- 901 名前:名も無きAAのようです :2013/10/16(水) 22:46:50 ID:UhAbeAZw0
- (,,゚Д゚)「じゃ、これ、頼むわ」
( ´_ゝ`)「はーい……」
兄者は男の手から放られた封筒の中身を確認しなかったし、
男も三分かからずに終わる兄者の仕事を見届けずにその場を去った。
兄者の前に置かれた、ぐったりと重そうな寝袋。
外国製だというそれは日本人なら成人男性でも楽々、収納することができる。
男――名をギコという――は、金と共にこれを置いていく。
週に一度、持ってくるときもあれば、一年間音沙汰がなかったこともあった。
( ´_ゝ`)「頭部が無事だといいけどなあ」
一人ごちて、寝袋のジッパーを少しだけ、下げた。
おそるおそる、そこから手を差し入れる。
さわった感触は、冷たい。
ところどころ、ざらざらとしたものが付着している。
思うよりも早く兄者の経験はそれが固まった血であることを彼に教えた。
脳や飛び出した眼球にふれなかったことに、安堵した。
兄者はこの仕事を始めて長いけれど、適職だと思ったことは一度たりともなかった。
( ´_ゝ`)「早く成仏してくれよー」
そのまま、一分。
二分。
三分……
- 902 名前:名も無きAAのようです :2013/10/16(水) 22:47:52 ID:UhAbeAZw0
- ……十分が経過。
寝袋の中身は依然として、そこにあった。
(;´_ゝ`)「あっれ、なんで消えないんだろ?」
予想外の事態に焦って、寝袋の中の手をめちゃくちゃに動かす。
兄者の顔色はみるみるうちに青くなっていた。たぶん、寝袋の中身に勝らずとも劣らない。
混乱寸前の頭で考えた、中身が消えない理由は二つ。
一つ、自分が能力を失ったから。
そして、もう一つは。
( )「だって、俺、まだ死んでないし」
( ´_ゝ`)
(;゜_ゝ゜)「GYAAAAAAAAAA!!!」
反射で手を引っ込めた。
下げられたジッパーの間から汚れた手がにょっきりと出てきて、
寝袋の中身は自ら寝袋を脱ぎ去った。
息が、止まる。
- 903 名前:名も無きAAのようです :2013/10/16(水) 22:48:36 ID:UhAbeAZw0
- さっきまで死体として扱われていたとは思えないほどにぴんと立った彼は、
そういえば人並み以上の生命力を誇っていた。兄者はそのことをよく知っている。
だって、幼い頃、崖から転がり落ちたくせに軽い打撲と擦り傷ですみ、
車にぶつかられたときも入院することなく、一週間後には平然と体育に参加していた。
兄者はそれらを、いちばん近くで見ていたのだから。
(´<_` )
十年前、行方不明になって、今度こそ死んだのかと思っていた。
目の前で呼吸をしている彼は、まぎれもなく、兄者の弟だった。
(´<_` )「よお」
(;´_ゝ`)「よ、よお……? えっ何これ夢?」
(;´_ゝ`)絶対に捕まらない殺し屋のようです(´<_` )
触れた死体を消滅させる能力をもつ兄と、
殺人で生計を立てる弟のお話。
(´<_` )「死にそうに寒いんだけど」
(;´_ゝ`)「あ、死体みたいに冷たかったもんな、おまえ」
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