- 913 名前:名も無きAAのようです :2013/10/19(土) 13:11:41 ID:xjlJEWfs0
キーンコーンカーンコーン
('A`)「はぁ……だっりぃなぁ」
近くを通りがかった小学校から、終業の音が聞こえた。
生来の面倒臭がりな性格。
それはいつか変わる時が来るのだろうと、何となく思っていたのだが。
('A`)(高校中退してコンビニバイトの日々ねぇ。いつまで続けられっかな)
人間、そうは変われない。
思っているだけで行動しないのだから、まぁ当然か。
「あれっ、もしかして欝田じゃない?」
('A`)「えっ?」
下を向いて何かいいものでも落ちてないかと探すように歩いていた俺に、声がかけられた。
一瞬どきっとしたのは、それが聞き覚えのある女の声だったから。
- 914 名前:名も無きAAのようです :2013/10/19(土) 13:12:47 ID:xjlJEWfs0
ξ゚听)ξ「久しぶりー、覚えてるぅ?」
('A`)「……お、おぅ」
ξ゚听)ξ「相変わらずテンション低いよね、欝田」
(;'A`)「や、いやいや、んなことないって」
家柄の裕福な美熟人妻から、行きずりの肉欲を求めてお声がかかる事はないだろうか。
常日頃、道行く女どもを脳内で丸裸にしつつ街を練り歩く事が日課の俺に、そんな機会は訪れない。
案の定、今回もそのようなことはなかった。
こいつはたまたま中学、高校とクラスが一緒だった同級生の津出だ。
男女分け隔てなく接するこいつは、物事を歯に衣着せずはきはきと喋り、かわいいから人気もあった。
現に今、風に乗って運ばれてくる津出の髪から漂うフローラルが、俺の本能を刺激してくる。
清潔感に加えて、まだ大人に差し掛かる一歩手前といった段階の若さゆえの瑞々しさ。
出会ってまだ二言しか交わしていないが、自らの男としての証が、熱く波打った感触を憶えた。
- 915 名前:名も無きAAのようです :2013/10/19(土) 13:13:31 ID:xjlJEWfs0
ξ;゚听)ξ「あんたその癖まだ抜けてないの?」
(;'A`)「あ、いやいや、やっぱさ……」
ξ;゚听)ξ「いい加減なおしなよ〜、もう〜」
(;'A`)「ハ、ハハ」
へこへこと頭を下げるように、ついつい後ろ頭を押さえながら人と話す悪癖。
一度クラス中に聞こえる大声で、そんな癖はやめたほうがいいと指摘された事がある。
これは大変に恥ずかしい、媚びへつらうようで許せなかったらしいのだが大きなお世話だ。
可愛いから許すが、今どきツインテールとかマジで俺のツボを狙っているとしか思えない。
「この女、俺に抱かれたいのだろうか」と思った事も、過去に二度や三度ではないのだ。
今も、足元に視線を下ろす振りをしては、生足をつぶさに何度も拝謁している。
同時にそれを機に、股の間にぶら下がる雄としてのシンボルの動きに異変を察した。
更に自己主張を強めようとしていたその動きを、決してメスの嗅覚にだけは気取られぬよう、
何気なさを装って、しかし素早く差し込んだハンドポケットの右手の指先でねじ伏せる。
手綱を握るのは、俺だ。
- 916 名前:名も無きAAのようです :2013/10/19(土) 13:14:26 ID:xjlJEWfs0
ξ゚听)ξ「あ、そういえばあんたも行くんでしょ?」
('A`)「え?」
ξ;゚听)ξ「嘘、もしかして知らなかったの!?」
(;'A`)「は……いや、何が?」
ξ;゚听)ξ「内藤よ! 内藤が帰ってくるのよ、今日!」
(;'A`)「えっ……はぁぁっ!? マジで!? どっから!?」
ξ;゚听)ξ「大マジよ!」
内藤とは中学時代から一緒に3年間を過ごした、気のおけない友達だ。
その頃は親友といえる間柄だったけれど、あいつが俺と同じ高校に上がる事はなかった。
なぜなら中学3年の時、ともに修学旅行先として訪れた北海道で、あいつは行方不明となった。
学校側の責任追及はマスコミの影響で大きく取りざたされ、当時は大問題に発展した。
警察は300人体勢で内藤が消息を絶った地域の捜索をこれまでも続けてきたが、
結局有力な情報を得ることが出来ないまま、その後3年の月日が流れた。
- 917 名前:名も無きAAのようです :2013/10/19(土) 13:15:58 ID:xjlJEWfs0
俺が高校を中退したのは、内藤という近しい友達がいなくなってしまった事も影響している。
だけど、当時はそんなことになったのは自分のせいなのだと、俺は自殺まで考えた。
('A`)『どうせあいつ津出とセックスしてんだろうな……死んじまえばいいのに』
スコスコ
ある日俺が日課をこなしながら呟いた、そんな悪意に満ちたひと言が原因だったのではないかと。
津出は恐らくあの時内藤と密かに付き合っていた。公言こそしていなかったが、二人は下校時、
よく並んで歩いて帰っていたのが目撃されている。
内藤が行方不明になって、クラスにお通夜のようなムードがしばらく続いていたのは、
泣きはらした表情で毎朝登校してきては、食事も喉を通らないほどに激ヤセしていたツンが、
クラスの全員にとってはいたたまれなかったからだ。やはり両思いだったのだ、今でも死ねばいいのにと思う。
そのツンから、聞かされたのは―――
/ jjjj _
/ タ {!!! _ ヽ、
,/ ノ ~ `、 \
`、 `ヽ. , ‐'` ノ 「おおおぉぉぉいっ!」
\ `ヽ( ^ω^) .ノ/
`、ヽ. |``Y" | r '
i. 、| ¥ | ノ
`、.` -‐´;`ー イ
- 918 名前:名も無きAAのようです :2013/10/19(土) 13:17:18 ID:xjlJEWfs0
函館でロシア人に拉致され、そのまま北朝鮮へと連れ去られるさなかで船が難破。
救命胴衣も無しに船外へと放り出された後に、たまたまTVで備えていた救命知識を用いて、
ジーンズに上手く空気を取り入れて浮力を得ることに成功する。
冷たい海水に低体温症を起こしながらも、命からがら流れ着いた先がロシアのナホトカ。
漁師に発見されて救助された後、コニャックを振る舞われ賑やかな酒宴の中で現地のロシア人と意気投合。
「養子にならないか」と強引に引き留められ、それでも日本に帰りたいと言ってみた所、大喧嘩に。
娘の通報により現地警察が駆けつけると、すぐさま留置場へと放り込まれた。
「タイシカンニツナイデクレオ」の一点張りで押し通そうとするも、身分証明書を一切持たず、
血まみれの小汚い風貌。運び屋か何かと間違われてしまい、全身をX線で検査される始末。
不当な扱いに腹を立て警官ともみ合いになった際、居合わせた一人がやむなく発砲。
運悪くそれは同僚警官の脇腹に命中し、「シラナイオ、ブーンジャナイオ」などと絶叫しながら
裸足で警察署から逃走を図る。
- 919 名前:名も無きAAのようです :2013/10/19(土) 13:18:20 ID:xjlJEWfs0
背に腹は代えられず、乗り込んだタクシー運転手の喉元に、自分の足裏に刺さっていたガラス片を突きつけ、
およそ2時間にも及び走らせ続けた。最終的には建造中のバイパスから仮組みの鉄骨を足場にジャンプ。
歯噛みする警官らをよそに、タクシー運転手と「こんな熱いチェイスは久しぶりだった」と感謝されつつ
固く握手を交わした後に名残惜しくも別れ、別行動を取ることに。
たまたまそれを見ていた中国系マフィアのボスからスカウトされ、一時的に隠れ家へと案内される。
軽い気持ちで「イエス、イエス」と答えていたら、なぜかリアルな重量感のトカレフを手渡され、
いつの間にやら敵対組織のボスを殺るヒットマンへと仕立てあげられていた事に気付く。
決行当日、震える手でトカレフの銃身を眺めていると、ふと部下の一人がすすめてくれたコニャックに
故郷の味を思い出し――――いや、ここは故郷ではない、俺の故郷は日本だという決意を新たにし、
「この仕事が終わったら、日本に帰ろう」と固く心に刻み込んだ。
そして、人気が無いのを確認して、馴染みのクラブに入っていく敵対組織のボスに向けて引き金を引いた。
その瞬間、大きな風圧が発生して思わず狙いが逸れてしまう。
突風をを巻き起こしながら上空から降下してきたのは、ガトリングを装備した武装ヘリコプターだった。
- 920 名前:名も無きAAのようです :2013/10/19(土) 13:19:05 ID:xjlJEWfs0
「しまった、ここまでの手はずを整えているとは」
舌打ちし、3秒後に訪れるであろう人生最期の瞬間に向けて祈った―――
だが、偶然にも狙いの逸れた弾丸は操縦席のパイロットの眉間に叩きこまれており、
激しい爆音と共に武装ヘリは墜落、炎上した。
それに驚いたのはブーンよりも、ターゲットであったはずの麻薬組織のボスであった。
武装ヘリによる襲撃もまた、この男を狙った別の敵対組織によるものだったのだ。
命の恩人だといたく感謝され、自分が実はヒットマンだと明かしてさえ、力になれる、と言ってくれた。
その言葉を信じて、ヒットマンとしての役目を果たすこと無く、そのまま敵対組織のマフィアへと寝返った。
そこのボスは昔気質のえらく情に厚い男であり、数日待ってくれれば日本への密航便を手配出来るという
その言葉を信じ、仲良くなったボスと夜ごと隠れ家で酒を酌み交わしながら、約束の時を待っていた。
数日後、別れは突然に訪れる。
あと2時間後に船が到着するという段になってから、業を煮やした元の組織が更なるヒットマンを送ってきた。
トラックで隠れ家を襲撃してきた人数は14人、全員が自動小銃や手榴弾で武装しており、護衛であった
3人の部下は瞬く間にやられてしまった。
- 921 名前:名も無きAAのようです :2013/10/19(土) 13:19:53 ID:xjlJEWfs0
「このままではお前もやられる、逃げろ」
口の端から血を流しながら、それを最期の言葉に逝ったボスの想いに報いるべく、残されたトカレフ一丁で
どうにか連中とやりあう腹づもりを決める。左肩と右腹部に銃弾を受け、満身創痍になりながらも
一弾一殺で14名の敵全てを冥土へと送ってやったという。
トラックを運転していた筋肉モリモリマッチョメンの変態が、そこで満を持して登場する。
最後の相手という訳だ。「こいよ、銃なんて捨ててかかってこい」
その言葉に、満身創痍ながらもプライドを逆撫でられて受けて立つ事に。
武装トラック突入時の火災が徐々に拡大し、燃え落ちていくあばら屋で最後の戦いが始まった。
軍人くずれの黒人が放つボクシング仕込みのパンチは鋭く、殴られる一方。
顔に大きな青あざが増え続け、このまま気を失うかと思ったその時、走馬灯の様に母国の日の丸が思い浮かんだ。
日本が世界に誇るものはなんだ、空手の大山倍達か、合気の塩田剛三か。
いいや、こいつはボクシングで向かってきている、ならば俺もボクシングで応えよう。
日本には、あの伝説のチャンプ、輪島功一の技がある。
- 922 名前:名も無きAAのようです :2013/10/19(土) 13:22:27 ID:xjlJEWfs0
突然頭を振って脇へと視線を送ったブーンに、黒人もまたそれにならった。
一瞬の隙を見逃さず、次の瞬間正面へと向き直った黒人の鼻っ柱に、ストレート一閃。
ただ一発、ワン・パンチにて失神KOを勝ち取ると、一足先にあの世に逝ってしまったボスにも聞こえる程の、
勝利の雄叫びを放ち続けるブーンの影が、いつまでも、いつまでも炎の中で揺らめいていたという。
その後、紆余曲折を経て―――メキシコへと辿り着く。
麻薬組織に魂を売った汚職警官の罠にハメられ、そこでもブーンには試練が待ち受けていたらしいが……
修学旅行中に行方不明となった同級生との、3年の時を経た再会。
京都の舞鶴からフェリーでやってきたという彼の肉体は、ウェポンXと呼ぶに相応しい完成度に高められていた。
(メ^ω^)「オイーッス、ドクオー。ひっさしぶりだおねぇ!
なんだかんだで13ヶ国旅してきたお。日本は平和でいいおー!」
('A`)「この、筋肉達磨の御仁は?」
ξ゚听)ξ「ここ2年ばかしは、中東で”クリシュナ”とまで讃えられるようになった、内藤よ」
( ^ω^)とことんTOUGH!のようです
供養させてもらった。長々ごめんなさい
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