- 724 名前:名も無きAAのようです :2015/07/17(金) 09:29:51 ID:3jNUR/VEO
- ―――――――――――――――
【ドクオはだっせー服屋さんのようです】
―――――――――――――――
- 725 名前:名も無きAAのようです :2015/07/17(金) 09:31:04 ID:3jNUR/VEO
- 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
| |
|その結果、残念ながら |
|貴殿のご希望に |
|そいかねることと |
|なりました。 |
| |
|あしからず、 |
|ご了承いただきますよう |
|お願い申し上げます。 |
| |
|末筆ながら、 |
|貴殿の今後のご検討を |
|お祈り申し上げます。 |
|_____________|
( ´ω`)「……」
⊃□⊂
( ‐ω‐)「はぁー……」
( ^ω^)「これで10回目かお。二ケタに達したお」
( ^ω^)「だいたいだお、なんで僕が就活なんてしないといけないんだお」
( ^ω^)「この、僕がッ、天下のVIPコーポレーションの御曹司たる僕がッ!」
( ^ω^)「それもこれも親父のせいだお」
- 726 名前:名も無きAAのようです :2015/07/17(金) 09:34:34 ID:3jNUR/VEO
- 〜〜〜
VIPコーポレーション
社長室
( ФωФ)「さて、来月は久しぶりあいつのところに行くか……」
ガチャ
( ^ω^)「おいすー!親父ー、僕、大学卒業したらどのポストについたらいいかお?」
( ФωФ)「は?いきなりなにを」
( ^ω^)「営業部長かお?副社長かお?」
(´ФωФ)
(* ^ω^)「おや、もしかしてCEOかお!」
( ФωФ)「何を言っているのである」
( ^ω^)「お?」
( ФωФ)「お前が通っている大学から採用する予定は一切ないぞ?」
( ^ω^)
( ^ω^)「ははは、冗談だおね」
( ФωФ)「マジで」
- 727 名前:名も無きAAのようです :2015/07/17(金) 09:35:29 ID:3jNUR/VEO
- ( ^ω^)「……ああ、そういう。僕の聞き方が間違っていたおね」
(* ^ω^)「僕がコネで入ったらどこのポジションにつかせてくれるんだお?年収は五千万くらいでいいお!」
( ФωФ)「いや、だから。お前を採るつもりはこれっぽっちもないのである」
( ^ω^)
( ^ω^)「……は?いや、ちょ、冗談しょ?」
( ФωФ)「ふむ。便りがないのはいい知らせかと思えば、なるほど縁故採用を期待していたのか」
(; ^ω^)「いやいやいや、無理だって。僕バイトもサークルもなんもやってないし、今から就活とかの準備とか……え、ちょ、嘘だろお」
( ФωФ)「甘えるな、文太郎。うちの会社にそう簡単に入ることができるなどと思うなよ」
(; ^ω^)「あ、跡継ぎとかどうすんだお!?」
( ФωФ)「同族経営でやっていくつもりは毛頭ない。優秀な人材ならばいくらでも揃えられるからな。わざわざお前を跡継ぎにする必要もないだろう」
- 728 名前:名も無きAAのようです :2015/07/17(金) 09:36:38 ID:3jNUR/VEO
- (; ゚ω゚)「い、いいのかお!?実の息子が無様に就活するなんて!しゃ、社交界で晒し上げになるお!いいから僕を会社に入れるお!」
( ФωФ)「そんなことはお前のあずかり知るところではないのである。心配しなくてもどうとでもなる」
( ФωФ)「むしろ、甘い汁だけを吸おうとして何の苦労もしていないボンクラ二世のほうが、会社の、ひいては我輩の恥になることは自明の理」
( ФωФ)「まずは己自身の力をつけることが、お前のやるべきことである」
( ;ω;)「おおおおおんっ!!殺生だお!ふざけんじゃねぇお!!せっかくこの地位を利用してあんなことやこんなことをしようと思っていたのに!」
( ФωФ)「あんなことやこんなこととは?」
(* ^ω^)「えー、朝はリムジンに乗って出勤だおー?昼は高級レストランでランチだおー?夜は秘書としっぽりだおー!」
( ФωФ)「……」
( ^ω^)「ね、親父!バリバリ働くからお願いだお!」
( ФωФ)≡⊃ )ω゚)ブホッ!
- 729 名前:名も無きAAのようです :2015/07/17(金) 09:37:58 ID:3jNUR/VEO
- 〜〜〜
(∩^ω^)「あのクソ親父、真顔で殴りやがって……」
( ^ω^)「とはいえ、就活しないとダメだおね……家も追い出されたらかなわんお」
( ‐ω‐)「はぁー……そもそもなんで落ちるんだお?僕は面接でのやり取りだって完璧だし、ハッタリだってできるお」
( ^ω^)「それなのにどうして……」
Ω「なぁなぁ、次の面接、私服で来いって書いてあったんだけどお前どーする?」
Ω「んあ?んなもんスーツで行くに決まってんじゃん」
Ω「えー、でも私服って書いて」
Ω「バッカ、そんなもんは建前だっつーの。社会人としての暗黙の了解だぜ?」
Ω「そんなもんかなぁ」
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「な、なるほどお。そういえば僕、面接にハイブランドばっかり着て行ったんだったお」
( ^ω^)「きっと、面接官が嫉妬したんだお。そうと決まれば服屋さんにいくお!」
- 730 名前:名も無きAAのようです :2015/07/17(金) 09:38:55 ID:3jNUR/VEO
- 〜〜〜
紳士服したらば
( ^ω^)(とりあえず業界最大手の店に来たお)
( ^ω^)(……そういえばこういう庶民の紳士服量販店なんて入ったことなかったお)
( ^ω^)(パーティー用の衣装も、専属のコーディネーターが勝手に用意するからなんも考えてなかったし……礼服一着あれば済むしお)
(‘_L’)「いらっしゃいませ」
( ^ω^)「お……!」
- 731 名前:名も無きAAのようです :2015/07/17(金) 09:39:57 ID:3jNUR/VEO
- ( ^ω^)(で、出たお!こいつは僕の財布にたかるハイエナ!)
( ^ω^)(リロード知らずのマシンガントークに、有無を言わせぬ試着推奨!着たら最後、地獄の底まで買わせる悪しき存在!!)
( ^ω^)(ここは僕が社交界で身に着けた華麗なるスルーテクニックで──)
(^_L^)「わからないことがあったら聞いてくださいね。どうぞ、ごゆっくりご覧ください」
( ^ω^)「お……あ、ありがとうだお」
(‐_L‐)「失礼します」
サササッ
( ^ω^)(な、なんだお……?意外とすんなり引き下がったお)
( ^ω^)(も、もしかして僕を貧乏人と思ったのかお?ふふん、やっぱり庶民の店は見る目がないお)
( ^ω^)(よし、こうなったらこの店で一番高い物を買ってやるお。探すお!)
- 732 名前:名も無きAAのようです :2015/07/17(金) 09:41:09 ID:3jNUR/VEO
- 〜〜〜
( ^ω^)(……)
( ^ω^)(た、高くね?)
( ^ω^)(布じゃん、なんで10万超えてるの。え、いやまぁ余裕で払えるけど高くね?)
(‘_L’)テクテクテク
( ^ω^)(あ、さっきのフシアナさんだお。よーし、ここはリベンジでこれを包んでもらうお!サイズは礼服と同じっぽいからこれを──)
(^_L^)「どうぞ、羽織ってみてください」
( ^ω^)「え、あ、はいお」
ササッ
( ^ω^)(おー……これが10万の重みかお。普通のスーツと変わんないお)
- 733 名前:名も無きAAのようです :2015/07/17(金) 09:42:07 ID:3jNUR/VEO
- (‘_L’)「肩周りはどうですか?」
( ^ω^)「おん、ちょっと苦しいかお……?」
( ‘_L’)⊃ガサゴソ「お手持ちのスーツと比べるとやや細見な作りになっているかもしれません」
⊂(‘L_’ )「こちらをどうぞ」
( ^ω^)⊃「お、ありがとうだお」
ササッ
( ^ω^)「お!ぴったりだお!これにするお!」
(^_L^)「ハハハ、ありがとうございます。ですが、お客様。このスーツはどのような場面でお使いになりますか?」
( ^ω^)「お?場面?」
(‘_L’)「そちら、ショート丈の黒スーツですが、ストライプの薄い折柄が入っております。冠婚葬祭にお使いでしたら他にもお勧めがございますので」
( ^ω^)(ホントだお。よく見たら薄く縦模様が入ってるお。でも別にどうってことないお)
- 734 名前:名も無きAAのようです :2015/07/17(金) 09:43:56 ID:3jNUR/VEO
- (‘_L’)「ビジネスにお使いでしょうか?」
(* ^ω^)「ビジネスッ!そうだお!僕はビジネスに使うお!」
(^_L^)「かしこまりました。では……」
〜〜〜
(^_L^)「ありがとうございました。ぜひまたお越しくださいね」
( ^ω^)/「おっ、また来るお!ばいぶー!」
...( ^ω^)
(‘_L’)「……ふぅ」
爪'ー`)「先輩すごいっすね!あれ一番高いスーツじゃないっすか!」
(‘_L’)「ん、ああ、ありがとう」
爪'ー`)「でも今のお客さん、なんか大学生っぽかったっすね」
(‘_L’)「そうか?本人はビジネスに使うって言ってたけど」
爪'ー`)「あー、なら大丈夫っすね。まさか就活にあれ着ていくわけじゃないだろうし」
(^_L^)「ハハハ、それはないだろうさ」
爪'ー`) ハハハハハ (^_L^)
- 735 名前:名も無きAAのようです :2015/07/17(金) 09:44:48 ID:3jNUR/VEO
- 〜〜〜
後日
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
| |
|その結果、残念ながら |
|貴殿のご希望に |
|そいかねることと |
|なりました。 |
| |
|あしからず、 |
|ご了承いただきますよう |
|お願い申し上げます。 |
| |
|末筆ながら、 |
|貴殿の今後のご検討を |
|お祈り申し上げます。 |
|_____________|
( ゚ω゚)「11回目ぇ!!」
- 736 名前:名も無きAAのようです :2015/07/17(金) 09:46:01 ID:3jNUR/VEO
- ( ゚ω゚)「あー、失恋して槍でも投げたい気分だお。なんなんだお、くそっ!」
( ^ω^)「だいたいなんだお。確かに今回の面接だって、自由な服装で来いって書いてあったけどそういうのって暗黙の了解じゃないのかお!?」
( ^ω^)「いや、服のせいじゃないのかもしれないけどさ、もうやだお!どっちなんだおちくしょう!」
( ^ω^)「……ん?」
________
\\\\\\\\\
∪∪∪∪∪∪∪∪∪
服屋 どくお |/
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
─┰───┐ |
┃// //│[ ]|.
=┃===ロ│ |::.
//┃ // │□□|:::.
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~
( ^ω^)「あれ、こんなところに店ってあったっけお?」
( ^ω^)「『服屋どくお』……?個人がやってる服屋さんかお。しみったれた小さな店だお」
( ^ω^)「……」
(* ^ω^)「よし、腹いせにこの店の商品全部買って崇めさせてやるお!」
ガラララ
- 737 名前:名も無きAAのようです :2015/07/17(金) 09:47:33 ID:3jNUR/VEO
- o川*^ヮ^)o「いらっしゃいませ!」
( ゚ω゚)
( ゚ω゚)(か)
(* ^ω^)(かわいい)
o川*^ー^)o「こんにちは!」
( ^ω^)+「お、おっおっお!今日はちょっと入用でね。少し見繕ってもらおうかな?」
o川*゚ー゚)o「わかりました!えっと、どういうのがいいです?」
( ‐ω^)+「お、君に任せるお」キラッ
o川*^ー^)o「え、いいんですかぁ!やったぁ!」
( ^ω^)「おっおっ、好きな物を買いなさい」
( A )「おい、キュート」
o川*゚ー゚)o「あ」
( ^ω^)「おん?」
- 738 名前:名も無きAAのようです :2015/07/17(金) 09:48:45 ID:3jNUR/VEO
- o川;゚ο゚)o⊃〇「お、お客さん!えっと、はい!」
( ^ω^)⊃〇「お、なんだおこれ。ビニール袋?これに服を入れろって……」
('A`)「客の話もろくに聞かずに接客するんじゃねぇよ」
( ゚ω゚)
('A`)
( ゚ω゚)(ぶ)
('A`)
( ゚ω゚)(ぶさいくすぎるお!!)
オロロロロロロロ
〃 (|i´ω`)
/ つ ィ;゚;δ゚,
⊂こ_)_);:゚。o;:゚。
,;;。:;゚。o,
ビチョビチョ
- 740 名前:名も無きAAのようです :2015/07/17(金) 09:50:07 ID:3jNUR/VEO
- 〜〜〜
(; ω )「す、すみませんお……その、吐いちゃって……」
('A`)「気にするな。そのためのビニール袋だ」
o川*^ー^)o「ジャストミートでしたね。間に合ってよかったです!」
(; ^ω^)(入店したら嘔吐すること前提なのかお……!?)
o川*゚、゚)o「もう、いきなり出てくるからダメなんですよぅ」
(;'A`)「そりゃお前がテキトーな仕事しそうだったからだな……」
( ^ω^)「おっ、店長さんですかお?ひどい顔──じゃなくて初めましてだお」
('A`)「ああ。俺がここのオーナー、宇都宮ドクオだ」
( ^ω^)「ドクオってひどい名前──じゃなくて、この店の名前ですかお」
('A`)「まぁな。断っておくが、本名だぞ」
( ^ω^)(この顔とこの名前……寂れるのもうなずけるお。でも……)
- 741 名前:名も無きAAのようです :2015/07/17(金) 09:51:31 ID:3jNUR/VEO
- o川*゚ー゚)o「あ!私は販売員のキュートです!」
( ^ω^)(この、109に居そうな可愛らしい店員さんはなんなんだお……!?)
o川*^ヮ^)o「キュートっていうのは、前に勤めてた服屋さんで使ってたニックネームですっ!えへへ、かわいいでしょ!」
( ^ω^)「何か弱みでも握られているのかお」
o川*゚ー゚)o「??」
(-A-;)「ゴホンッ……まぁ、なんだ。うちに来たってことは入用なんだろ」
('A`)「よければ相談に乗るぜ。言ってみな」
( ^ω^)(えー……キュートちゃんならともかく、こんな顔面災害兵器に相談してもどうしようもないし……)
('A`)「見たとこ就活生っぽいが、リクルートスーツでもお探しかね」
( ^ω^)ムッ「失礼な。僕はビジネスの高級なスーツを探しているんだお!え、エグゼクティブだお!」
- 742 名前:名も無きAAのようです :2015/07/17(金) 09:53:08 ID:3jNUR/VEO
- ('A`)「ふーん、高級スーツを探すビジネスマンにしちゃ、シャツの胸ポケットにペンの一本も刺さってねぇが」
(; ^ω^)「お……か、カバンの中に入ってるんだお!」
('A`)「……ナイロン製か。確かに機能性には優れているが、ビジネスに使う、しかも高級スーツと合わせるにはちょっとコツがいるだろうな」
( ^ω^)「え、そうなのかお?」
('A`)「カジュアルにもビジネスにも使えるっていうのが昨今のナイロン製バッグの特徴だが、高級感って意味に限ると革には勝てんさ」
( ^ω^)「お……」
('A`)「ま、他にもいろいろあるが、なんだ。然るにあんたの今の格好は」
('∀`)「だっせーな」
- 743 名前:名も無きAAのようです :2015/07/17(金) 09:54:00 ID:3jNUR/VEO
- ( ^ω^)「な」
(# ^ω^)「なんだとお!客に向かってなんていう口の利き方だお!」
('A`)「わりぃわりぃ、つい口が滑った。でもどう考えても高級なビジネススーツを探しているようには見えなかったんでな」
('A`)「わび代わりに俺が見繕うよ。就活に使える服装をな」
(^ω^ #)≡「ふざけるなお!」
('A`;)「あ……」
(# ^ω^)「覚えてろお!親父に言ってこの店潰してや」
o川* ‐ )o⊃(^ω^ #)ガシッ
o川* ― )o(^ω^ )
o川*。'―`)o「行かないで……」
(* ^ω^)「よし話だけでも聞こうか」
- 745 名前:名も無きAAのようです :2015/07/17(金) 09:55:12 ID:3jNUR/VEO
- 〜〜〜
('A`)「どんな格好で面接を受けにいけばいいかわからない、か」
( ^ω^)「そうだお。私服でー、ってところに行ったらスーツで来るのが常識。自由な服装ー、ってスーツで行ったらなんで私服で来なかったって突っ込まれるんだお」
o川*゚ー゚)o「わー、流行りの圧迫面接ですねっ!」
( ^ω^)「うん。キュートちゃん、たぶんそれ違うお……」
('A`)「なるほど。TPOの問題もあるだろうが、ようは相手側の意図を探ればいいわけだ」
( ^ω^)「相手側の意図?」
('A`)「スーツなんてもんは身分証明だ。基本的に人と会うときに着るためのもの。遊びに行くのに着ていくものにしちゃ堅苦しいし、パジャマ代わりにもならない」
o川*^ー^)o「ドクオさんはパジャマみたいに着てましたけどねー」
( ^ω^)「ハハハ、スーツで寝るのかおーずぼらだおー」
( ^ω^)(ん?気のせいか何か違和感が――)
- 746 名前:名も無きAAのようです :2015/07/17(金) 09:56:07 ID:3jNUR/VEO
- (-A-)「うるせぇな。続けるぞ。それを踏まえて、会う人間はどんな奴なのか。自分はどういう立場で、何をするためにわざわざめんどくさい格好をしていくのか」
( ^ω^)「え、そりゃ、就職したいから会いに行くんだお」
('A`)「相手から自分を見られた時の印象は?」
( ^ω^)「おっ?そんなの人それぞれだお」
('A`)「うんにゃ、ある程度決まってくる。ネクタイの色やシャツの襟、靴の形──些細なところだが見る人間は見るもんだ」
('A`)「そして考える。なぜその色なのか、なぜそんな恰好なのかってな」
( ^ω^)「お……」
ガサゴソ⊂('A` )「今日日、没個性のリクルートスーツばっかだ。それに目立ってもいけない」
('∀`)「これでも着ていきな。それとナイロンバッグちょっと貸せ。ちっとはマシになるだろうよ」
- 748 名前:名も無きAAのようです :2015/07/17(金) 09:58:40 ID:3jNUR/VEO
- 〜〜〜
後日
内藤文太郎 12回目の挑戦日
(´・ω・`)(さて、服装自由って書いてメール送ったけど)
(´・ω・`)(おお、おお。来てる来てる。やっぱみんなスーツだわなぁ)
(´・ω・`)(ん……?私服の子がいるな)
(^ω^ )≡( ^ω^)キョロキョロ
(´・ω・`)(ふふふ、周りがスーツで私服姿の就活生がいないのに焦っているのかな。きょろきょろしてる。かわいい)
≡( ^ω^)
(´・ω・`)(あ、トイレに行った)
- 749 名前:名も無きAAのようです :2015/07/17(金) 09:59:35 ID:3jNUR/VEO
- (´・ω・`)(ふむ、白シャツにダークネイビーの無地ジャケット、生地はフランネルかな?大きめのナイロンバッグも若々しくていいじゃないか)
(´・ω・`)(それにライトグレーのスラックスと……靴は内羽式の黒ストレートチップか……典型的なジャケパンスタイルだな。うん、清潔感があっていい)
(´-ω-`)(――よし)
(´^ω^`)(落とそう!)
- 750 名前:名も無きAAのようです :2015/07/17(金) 10:01:41 ID:3jNUR/VEO
- 〜〜〜
面接室
(´・ω・`)(ふふふ、ようやくさっきの彼か。緊張からトイレにいくなんてやっぱりかわいいな)
(´^ω^`)(さぁて!どんなこと言ってやろうかな!私服着てきた若造の、根拠のない自信をぼろぼろにしてやろう!)
(´・ω・`)(ふはははは)
コンコンコンッ
(´・ω・`)「どうぞ」
ガチャ
スッ( ^ω^)
(´・ω・`)(あれ!?)
( ^ω^)「失礼しますお!」
(´・ω・`)(あれ!?なんでリクルートスーツ着てるの!?)
(´・ω・`)「ちょ、ちょ、君!さっき私服だったよね!?」
( ^ω^)「え、は、はい」
(´・ω・`)「なんでリクルートスーツ着てるの!?」
- 751 名前:名も無きAAのようです :2015/07/17(金) 10:02:49 ID:3jNUR/VEO
- ( ^ω^)「それは場面を考えたからですお」
(´・ω・`)「……場面?」
( ^ω^)「はいですお。今回の面接では服装自由だったということで、失礼にならない清潔感のある服装を心がけましたお」
(´・ω・`)「うん」
( ^ω^)⊃「ですが、他の学生たちはちゃんとスーツを着てきましたお。だから──」
ジィー
(´・ω・`)「そ、それはさっきまで着ていた……まさかカバンの中に」
( ^ω^)「はいですお。トイレで着替えましたお」
(´・ω・`)「……」
( ‐ω‐)「確かに服装自由という名目で私服を着てくることは間違っていないかもしれませんお。しかし、かといってこれだけちゃんとした格好をした人たちがいるのに自分だけ私服で面接をしていただくというのは」
( ^ω^)「担当者様にあまり良い印象を与えないと判断しましたお」
(´・ω・`)「……僕のことを思って、服装を替えたというのかい」
- 752 名前:名も無きAAのようです :2015/07/17(金) 10:03:33 ID:3jNUR/VEO
- ( ^ω^)「私は就活生ですお。なんの根拠もない自信よりも」
( ^ω^)「恐縮ですが、会って話をする相手のことを考えた結果ですお」
(´・ω・`)「……」
(; ^ω^)「……」
(´-ω-`)「フッ……君さ」
(; ^ω^)「お……?」
(´^ω^`)「かっこいいね」
- 753 名前:名も無きAAのようです :2015/07/17(金) 10:04:46 ID:3jNUR/VEO
- 〜〜〜
後日
服屋 どくお
('A`)「あー、美味い。昼間から飲む日本酒は最高だ」
('A`)「っと、キュートに見つかるとうるさいからな。そろそろしまって……」
ガラララ
o川*゚ー゚)o「おはようございまーす!」
('A`;)「やべっ」
o川*゚ο゚)o「あー!!また昼間からお酒飲んでる!」
( -A-)「うっせぇな、いいじゃねぇか別に」
o川*゚ぺ)o「ダメだよぅ!お客さん来たらどうするのー!?」
('∀`)「来ない来ない!一見なんてそうめったに来るもんじゃねぇって」
o川*゚―゚)o「もう……」
o川*^ー^)o「空酒は体に毒だよ!つまみ作るね!」
('A`)「そ、そういうのいいから──」
ガラララ
('A`)「あ」o川*゚ー゚)o
( ^ω^)「お」
- 754 名前:名も無きAAのようです :2015/07/17(金) 10:06:02 ID:3jNUR/VEO
- o川;゚ー゚)o⊃〇サササッ
( ^ω^)「キュートちゃん、ビニール袋はいいから。もう慣れたお」
('A`)「あんた、こないだの」
( ^ω^)「おいすー」
('A`)「どうだったんだ、就活は。うまくいったのか?」
( ^ω^)「……落ちたお」
o川*゚ο゚)o アリャリャ
('A`)「んだそりゃ。まさかとは思うが服のせいにするつも──」
( ⊃ω⊂)「おおおおおおんっ!!おんおんおんおおおおおんっ!!」
o川*>ー<)o「キャッ!」
(;゚A゚)「うわっ!どうしたんだよ!?」
( ´ω`)「うぐ、うぐぅ……聞いてくれお……面接の後、面接官の人が喫茶店で話があるってことで、会ったんだお」
- 755 名前:名も無きAAのようです :2015/07/17(金) 10:06:51 ID:3jNUR/VEO
- 〜〜〜
( ^ω^)「あ、諸本さん!先日はありがとうございましたお!」
(´・ω・`)「やぁ、内藤君。すまないね、呼び出してしまって」
( ^ω^)「とんでもないですお!こうやって、面接官の人とお茶ができるなんて思ってもみませんでしたお!」
(´・ω・`)「うん。君、かっこよかったからね」
( ^ω^)「嬉しいですお!」
(* ^ω^)(え、来たんじゃね、これ受かったんじゃね)
(´^ω^`)「そうそう、話というのは他でもないんだけどね」
(; ^ω^)「は、ははは、はいですお!?」
(´・ω・`)「君、落としたから」
( ^ω^)「は」
- 756 名前:名も無きAAのようです :2015/07/17(金) 10:07:46 ID:3jNUR/VEO
- (´・ω・`)「いやぁ、残念だわ。うん。ほんと残念。一緒に仕事したかったんだけどな」
( ^ω^)「え、いやいやいや。いいましたやん。かっこよかったとかいいましたやん」
(´-ω-`)「うん。面接での受け答えもスムーズだったし、服装も態度もいい。それに相手のことを考えて自分を飾る姿勢も、僕は好きだよ」
( ´ω`)「じゃあなんで……落ちたんですかお……」
(´・ω・`)「ん、語尾」
( ^ω^)「え」
(´・ω・`)「その語尾さ、ふざけてるんだよね。なにが『お』だよ。バカにしてるのか」
( ^ω^)「こ、これは僕のアイデンティティ……」
(´・ω・`)「たぶん、その語尾直さない限り一生どこの会社にも受からないと思うよ」
(; ^ω^)「……」
(´・ω・`)「個人的にすごくいい学生さんだったから、普段じゃ絶対こういう風にダメなところ教えないけど……君は特別だよ。じゃ、そういうことだから。頑張ってね就活。あ、払っとくね」
( ^ω^)「……」
- 757 名前:名も無きAAのようです :2015/07/17(金) 10:08:43 ID:3jNUR/VEO
- 〜〜〜
o川;゚ー゚)o「……」
(;'A`)「……」
( ´ω`)「この癖は絶対に直せないお。もう僕はどこにも働くことができないんだお……」
o川;^ー^)o(いや……)
('A`)(知ったこっちゃないんだが……)
( ^ω^)「というわけで雇ってくれお」
(;゚A`)「は!?」
o川*゚ー゚)o「えっ、お客さんがうちで働くんですか!?」
( ^ω^)「そうだお。見た感じ、寂れてはいるけど店は回ってるみたいだしお?一人くらい増えても大丈夫だろうお!」
o川*^ー^)o「わー!嬉しい!仲間ができましたねドクオさん!」
(#'A`)「ざけんな!誰が雇うつった!こんな語尾ついた従業員、ごめんだ!」
( ^ω^)「私は内藤文太郎。学歴は──」
('A`)「面接はじめんな──ん……内藤……!?」
( ^ω^)ゞ「お、そうですお。僕は内藤文太郎。あのVIPコーポレーションの御曹司ですお!」
o川*゚‐゚)o「え、VIPコーポレーションって……うちのお得意さんの……」
- 758 名前:名も無きAAのようです :2015/07/17(金) 10:10:03 ID:3jNUR/VEO
- ('A`;)≡ダッ
o川*゚ο゚)o「あ、ドクオさん!?」
ピポパ
プルルルル
( ФωФ)】「はい」
('A`)】「おい、社長!どういうことだ!?」
( ФωФ)】「なにがであるか、騒々しい……ん、その声は服屋どくおの。直接かけてくるのは珍しいな」
('A`)】「宇都宮だ。なんであんたの息子が就職活動なんてやってる!?」
( ФωФ)】「……なるほどな、君の店に来たか……ふむ」
( 'A`)】「おまけに雇えってうるさいんだ。ひいきにしてもらってる手前、門前払いってわけにもいかんだろうと思って電話した」
( ФωФ)】「そうか、それは面倒をかけたな……」
(-A-)】「全くだ。いいな、追い返すぞ?」
( ФωФ)】「雇ってやってくれんか」
(゚A゚)】「はぁ!?」
- 759 名前:名も無きAAのようです :2015/07/17(金) 10:11:01 ID:3jNUR/VEO
- ( ФωФ)】「ボンクラだが、口はうまい。邪魔にはならんだろう」
('A`)】「おいおい……いくらあんたでもそりゃねぇぜ……」
( ФωФ)】「一年だ」
('A`)】「えっ?」
( ФωФ)】「一年間、そこで勤めさせてやってくれれば、うちの会社に入れることも検討する」
(;'A`)】「いや、だから」
( ФωФ)】「その間、君の店に対してはできる限りの協力をしよう。どうかね」
(;-A-)】「……」
('A`)】「ちっ……いいな、一年だぞ」
( ФωФ)】「ありがとう。今度、お店にお邪魔するよ」
ガチャ
- 760 名前:名も無きAAのようです :2015/07/17(金) 10:12:00 ID:3jNUR/VEO
- ('A`)(ったく、足元見やがる狸爺が……)
( 'A`)(……はぁ)
o川*`ー´)o「それじゃ、いらっしゃいませの練習だよー!せーの!」
o川*^ー^)o「いらっしゃいませ!」
( ^ω^)「いらっしゃいませお!」
o川*^ー^)o「上手上手!」
( ^ω^)「えへへ……あ、オーナー!」
(-A-)「……お前ら」
o川*^ヮ^)o「ドクオさんっ!内藤さん、元気があっていいと思います!」
o川*-ー-)o「……私だって、最初はダメダメだったけど」
o川*^ー^)o「でも、ここで働いたら良くなるって、そう思います!」
('A`)「……はぁ……」
( ^ω^)「オーナー」
( ‐ω‐)「就活に失敗したのは確かですお。でも、面接官がわざわざ喫茶店で僕の欠点を教えてくれたのはきっと、それだけ印象が良かったからだと思うんですお」
( ^ω^)「それは見繕ってくれた、オーナーのおかげですお。だから……」
( ´ω`)「精一杯働くから雇ってくださいお!このままじゃ家も追い出されうわぁん!」
('A`)「……」
- 761 名前:名も無きAAのようです :2015/07/17(金) 10:14:10 ID:3jNUR/VEO
- ('A`)「内藤、お前」
( ´ω`)「おっ」
('∀`)「だっせーな」
( ^ω^)「なん……」
('A`)「一年だ」
( ^ω^)「お?」
('A` )「一年で俺がお前のことを『かっこいい』と思うまで働いてみろ」
( ^ω^)「!」
o川*゚、゚)o「もう!素直じゃないですっ!」
('A`)「うっせぇ!ほら、だべってる暇があったら倉庫の商品片づけてこい!」
o川*^ー^)o「はーいっ」
( ω )「お、おお……」
( ^ω^)「絶対言わせて見せるお!かっけーなって、言わせて見せるんだお!」
('A`)「フン……やれるもんならやって」
ガララ
( )「あのぅ、ここは服屋さ」
( )ウプッ
- 762 名前:名も無きAAのようです :2015/07/17(金) 10:14:58 ID:3jNUR/VEO
- (;゚A゚)「キュート!しまった、あいつ倉庫に――」
( ゚ω゚)「見ちゃダメだおぉ!」
(; )「っ!!」
オロロロロロロ!!
(.A`;.)「……」ビチャビチャ
ビチャビチャ(;..^ω^.)「……」
(.A`;.)「……」(;..^ω^.)
(.A`;.)(だっせーなぁ……)(;..^ω^.)
おわり
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