- 163 名前:名も無きAAのようです :2014/08/28(木) 00:04:37 ID:4PtBFm7A0
- 百物語に間に合わなかったんでこっちに投下させてもらいます
怪談のようです「腹」
- 164 名前:名も無きAAのようです :2014/08/28(木) 00:06:03 ID:4PtBFm7A0
- アタシの友人に……、えぇ、 まあこの方、仮に「Nさん」とでもしておきましょうか。
そのNさんが、ちょっと困ったことになったって相談しにきたことがあったんですよ……。
Nさんは文房具メーカーの営業マンで、少し抜けたとこもありますが、愛想のいい好青年。
で、彼の奥さんは、明るい色の巻髪を二つ結いにしている可愛らしい髪型の女性なんですが、
Nさんとは正反対といっていいほど気が強い、姉さん女房なんですよ、ええ。
まぁ、夫婦仲はよかったです。
Nさんは奥さんの話になるとなんだかんだいいながらいつものろけてましたから。
周りが冷やかす気にならないぐらいの惚れ込みようでしたよ、ええ。
でもある日、Nさんは奥さんを見て、おや?って思ったそうなんです。
なーんか奥さんの雰囲気がいつもと違う。
どこかはわからないけど、なーんか、どーうも様子がおかしいなあって見ていたら、ハッ!と気がついた。
こいつ、腹が膨らんでるぞって。
- 165 名前:名も無きAAのようです :2014/08/28(木) 00:07:46 ID:4PtBFm7A0
- 最初はNさんだって呑気にしてました。
ふぅん、膨らんだんだ、便秘か脂肪かなぁって思ってたんですよ、ええ。
でもね、……おかしい。なーんかおかしい。
やたらと酸っぱいものを欲しがったり、いきなりオエーッっと吐いたりするところを何度も見たもんだから、
うーん、こいつはおかしいなぁって思うようになったんです。
それに日を追う事にどんどんどんどんお腹は膨らんでいく一方でしたので、
やっぱりなぁんかおかしいなあってだんだん心配になってきた。
奥さんに聞いても、うん、すっかり大きくなったね、と言って笑うだけ。
お医者さんに相談しても、経過は良好です、なんておかしなことを言う。
で、すっかり困り果てたNさんは、アタシに相談しにきたんです。
話しを聞いたアタシは、ピーンときた。ああ、これは霊の仕業だ。霊の仕業に違いないって。
- 166 名前:名も無きAAのようです :2014/08/28(木) 00:10:09 ID:4PtBFm7A0
- アタシはNさんに言ったんですよ。
このままだと奥さんが大変なことになる、早く奥さんのところへ行きましょう!って。
で、真っ青になったNさんと一緒に急いで奥さんのいるNさんの自宅に行ったんですよ。
Nさんの家は一見普通の家に見えたんですが、 なーんかおかしい、どうも様子が変なんだ。
家中、嫌な雰囲気が漂っている。
Nさんに中へ案内されると、その感じはどんどんどんどん強まっていく。変な空気が漂っているんです。
やだなぁ〜怖いなぁ〜なんて考えてるうちに、とうとう奥さんにお会いした。
奥さんはおだやか〜な顔をしていたけど、アタシは驚いた。
あっちゃいけない、あっちゃいけないんだ、そんなこと。
でもどう見ても……奥さんの腹が……腹が……
パンパンに膨れてたんだ!
- 167 名前:名も無きAAのようです :2014/08/28(木) 00:12:25 ID:4PtBFm7A0
- 奥さんは、5、60センチぐらいの、とても人間のものとは思えないほど小さなサイズの洋服を手にしていたんです。
これを着させるのってそれはそれは嬉しそうにしてました。
「稲川さん!僕あんなの着れないお!」Nさんは半狂乱になってそう言いました。
ええ、そりゃ無理ないよ、あんな服、小人ぐらいしか着れないからね。
でも奥さんは、ただただ笑ってた。お腹を、こう、やさしーく撫でながら。
そこで突然、ウッ!奥さんが痛がり出した!痛いよー!痛いよーって唸り出したんだ!
アタシは、 これは間違いなく自縛霊の仕業だと確信した。
急いで塩をかけてやりましたが、奥さんがあんまり痛がるもんだから、救急車を呼んで病院に連れていきました。
- 168 名前:名も無きAAのようです :2014/08/28(木) 00:14:10 ID:4PtBFm7A0
- 手術室に入ると、そりゃあバタバタしてました。
アタシは事情の知らないお医者さんから入室を断られたんですが、
こっちはそれどころじゃない、ひと一人の命がかかってるんだって強引に押し入ったんです。
病室はいやぁな感じがしましたよ。 これはおかしい、なにかやばいのがいるな、と。
気配はあるのに、「見えない」んですよぉ……。
怖いな怖いな怖いなって思っていたらオペが始まったんですよ。
- 169 名前:名も無きAAのようです :2014/08/28(木) 00:16:11 ID:4PtBFm7A0
- 愛する奥さんの窮地にNさんは泣きながら小さく体を丸めて震えていました。
すると看護婦さんが、奥さんは頑張ってます、ご主人様も声をかけてあげてくださいって言ったんだ。
でもNさんすっかり参っちゃってたからアタシがかわりに言ったんだ。
「ナンマイダー!ナンマイダー!」
奥さんに向かってそう言った!手を合わせてそう言ったんだ!
しばらくそうやってるとNさんも勇気を振り絞って参加した!
二人でぶるぶる震えながらご開帳されている奥さんの股に向かって念仏をあげたんだ!
すると、奥さんの足の付け根からじわじわぁ、じわじわぁとなにかが這い出てきたんです。
アタシとNさん固唾を飲んで見守っていると、奥さんの股間から、
「オギャアアアアアア!!!!」
……その瞬間、アタシの意識、スゥーっとなくなったんですよ。
- 170 名前:名も無きAAのようです :2014/08/28(木) 00:18:14 ID:4PtBFm7A0
- それから、目が覚めた時にはNさんの子供が生まれておりました。
Nさんは、アタシにあやかってお子さんの名前を「淳三」にするらしいです。
でも奥さんが猛反対しているんだそうです。
奥さんは、昨今流行りのDQNネームってやつをつけたいんですかねぇ。
いやぁ、不思議ですよねぇ。
ええ。こういう事って、あるんですよ、ええ……。
- 171 名前:名も無きAAのようです :2014/08/28(木) 00:20:14 ID:4PtBFm7A0
- 完。
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