125 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/25(月) 13:07:00 ID:oYOb9L9o0
ネオンが煌々と灯る。
ビルの外壁に所狭しと並ぶ色とりどりの看板が路地を行き交う人々を出迎えていた。
90年代の香港を彷彿とさせる。まさに記号の海に溺れたこの国らしい街並みだ。
俺は深夜の繁華街を疾走している。

事は十数分前、飲み屋から出てすぐの路上で始まった。

薄汚れた裏路地の暗がりから、一人の男が俺に向かって歩み出てきた。

|  ^o^ |「あなたの からだを ちょうだいしに きました」

('A`)「何いってんだコイツ…」

男が暗がりから歩み寄るにつれて、徐々にその姿があらわになっていく。
およそ場違いな黒の燕尾服に身を包み、ホワイトタイのドレスコードを着こなしている。
ご丁寧に右手にはこれまた黒のシルクハットを持ち、左手にはステッキが握られているという念の入れようだ。
一体どこの伯爵様だ。ハロインは半年も先だろうが、はやまりやがって。

|  ^o^ |「そのからだを かえして もらいたい のです」

('A`)「……」

|  ^o^ |「わたしは そのために あなたとは ちがう せかいから きました」

126 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/25(月) 13:08:32 ID:oYOb9L9o0
こいつはいけねえ。完全にイッてやがる。質の悪いクスリでもキメたのか。
アポロの月面着陸は無かっただとか言ってるヤツらが微笑ましく思えてくる。
まともに相手をするべき手合いじゃない。

('A`)「クスリでトリップでもしてんのかい? 布教とか勧誘なら他を当たってくれ。生憎、無神論者でね」

|  ^o^ |「ははは わろす かっこ つけた つもりでも あなた ださいです」

(;'A`)「てめえ…」

|  ^o^ |「うふふ うふふ」


そして今に至る。
後ろを振り返ると変態伯爵の姿はもうなかった。

('A`)「やっとまいたか……」

どこぞの小汚い雑居ビルの外壁にもたれ掛かり、タバコに火をつけた。煙を燻らせ一息つく。

('A`)「あいつ、なんだったんだろうな。あの感じ…あの冷たさは一体…?」

ともすると本当に他の世界とやらからきたヤツなのだろうか。不意に背後の壁から声がした。

|  ^o^ |「ゆだん たいてき いいことばです」

(;'A`)「!」

127 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/25(月) 13:09:27 ID:oYOb9L9o0

声の方を見やると、窓ガラス越しに伯爵と目が合う。
次いで甲高い破壊音。
伯爵の野郎が窓ガラスをぶち破って、雑居ビルから躍り出て来た。

|  ^o^ |「ははは どこへ いこうと いうのかね?」

|  ^o^ |「まちなさい そうすれば らくに いけますよ」

('A`)「まてと言われて止まるヤツがいたらそいつはバカの王様だ! 王様なんて俺には過ぎた地位だ、遠慮しとくよ!」

|  ^o^ |「あつくて たいへん よいです おいかける かいが あります」

刹那、口元にうっすらと笑みが浮かんだように見えた。心なしか声も弾んでいる気がする。
こいつ、もしや楽しんでいやしないか。

(;'A`)「何をニヤニヤしてやがる。 そんなにこの追いかけっこが楽しいのか?」

|  ^o^ |「とうぜんでしょう このために わざわざ とくだん くるひつようも ない このせかいに きているのですから」

|  ^o^ |「こうして たまに ひとりを おいかけまわして そのさまを みるのは とても ゆかいです」

|  ^o^ |「はずれを ひくと むこうから わたしの ほうに きたりして きょうざめ ですがね」

(;'A`)「ゲス野郎が…!」

128 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/25(月) 13:10:02 ID:oYOb9L9o0

俺は頭のいかれたヤツと深夜の繁華街でおいかけっこをしている。
あいつはまともじゃない。いつかは追いつかれてしまうだろう。
でもその時が来るまでは、逃げて逃げて逃げまくってやるさ。ひょっとしたら逃げ切れるかもしれないしな。

空がうっすらと白みはじめていた。夜明けは近い。

あいつの名前は死。恐らくは。

人のあがきを見に来た性悪な異形。

勝ち目のないおいかけっこを今日も始めよう。悔いのないように。
何時か来るその時に、あのイカレ野郎と笑って握手できるように。

今日も俺は走る。
生の衝動が俺を突き動かす。俺はまだ満足しちゃあいない。


('A`) 走れドクオ SAVE・THE・BODY 近日公開(嘘)


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