593 名前:名も無きAAのようです :2016/02/09(火) 04:39:49 ID:NYzjkL4w0



一生懸命受験勉強して、入学したシベリアで私が学んだことといえば、勉強ができれば良いってわけじゃない、ということでした。

『土井貞子、本当頭良いよな。絶対勝てねぇよ』

『なんたって、小学校の時から秀才で有名だった卯速ニュッですら敵わないんだもんな』

『ま、俺らにも一つだけ勝てることあるぜ?あいつに』

『勝てることあんの?俺ら』


『友達がいるっていう点においては、勝ててるさ』

594 名前:名も無きAAのようです :2016/02/09(火) 04:42:38 ID:NYzjkL4w0

川д川『……ない』

( ^ν^)『なんだぁ?土井、お前また教科書隠されたのか。仕方ねぇな、お前がどぉおおおしてもっていうんなら、席が隣の俺様が教科書見せてやってもいいぜ?』

川д川『結構です』

( #^ν^)『人の親切をてめぇ…!』

ヒソヒソ…

『…ニュッの奴、また土井貞子に話しかけてるよ』

『お似合いだろ、冷徹な学年首席様と、嫌われ者の万年二位コンビ』

『確かにな』

( #^ν^)『おい、聞こえてんぞ、てめぇら!誰が万年二位だと?!次のテストこそは、こんな根暗女、負かしてやるっつーの!』

( ・∀・)『朝から威勢がいいなぁ、ニュッ』

( ;^ν^)『…せ、先生、おはようございます』

( ・∀・)『まったく、僕以外の先生だったら怒られてたぞ?』

( ;^ν^)『すいませんでした』

( *^Д^)『ニュッざまああああ!』

( #^ν^)『あの脳筋め…』


川д川『…』

595 名前:名も無きAAのようです :2016/02/09(火) 04:43:46 ID:NYzjkL4w0
憧れていた学校生活は、毎日が退屈でつまらないことの繰り返し。
勉強ができれば学校生活は楽しめるかと思っていたけれど、むしろ、妬まれて教科書を隠されたり、地味な嫌がらせをされる毎日。

川д川(くだらない…つまらない…)


( ・∀・)『さて、今日はこのクラスに新しい仲間が加わることになった』

( *^Д^)『え、何、転校生!?』

( ・∀・)『あぁ。…しかも、みんなも知っている有名人がね』

( ^ν^)『有名人?』

( ・∀・)『入ってきていいよ』


ガラッ
『…ししし失礼します』


ザワッ…!

( ;^Д^)『え、ちょ、ええええ!?』

( ;^ν^)『んな、まさか…!?』



川 ゚ 々゚)『ぼぼぼ僕は狂本クルウですすす。よろろ、よろしくお願いします…』



( ・∀・)『今、世間を騒がせているバッドエンド作家、狂本クルウくんだ。みんな、仲良くするように』


( ;*^Д^)『えええええええ!?』

( ;^ν^)『だ、大ファンなんだけど…』


川д川(天才バッドエンド作家、狂本クルウか。…ま、私には関係ない話ですね)


天才バッドエンド作家の狂本くんは、瞬く間に学校の人気者になりました。私のつまらない学校生活にはまったく無関係な存在…

で、終わるはずだったのに

596 名前:名も無きAAのようです :2016/02/09(火) 04:44:52 ID:NYzjkL4w0



川*ー川『…うまく描けた』

ガラッ!

川 ゚ 々゚)『…』

川д川『…狂本くん?美術部に何か御用ですか?』

川 ゚ 々゚)『こ、こ、この絵』

川д川『これですか?今度開催されるコンクールに出す予定の油絵ですけど…』

川 ゚ 々゚)『…うう、うっ』

川;д川『え?な、なんですか、どうかしましたか?』


川* ゚ 々゚)『ううう美しい、いま、今までみたどんな絵よりも…』


川;*д川『…え?』




これが、中学一年生から同じクラスだった私と狂本くんの、中学三年目にして、初めての会話でした。

597 名前:名も無きAAのようです :2016/02/09(火) 04:45:55 ID:NYzjkL4w0
私たちは瞬く間に仲良くなりました、まるで今までの空白の期間を埋めるかのように。

川д川『…遅いなぁ、狂本くん』

ガラッ

川 ゚ 々゚)『貞子、お、お待たせ!』

川д川『狂本くん、待ってましたよ』

川 ゚ 々゚)『最近仲良くなった隣のクラスの友達と、長話しちゃってたたた』

川д川『そうでしたか』

598 名前:名も無きAAのようです :2016/02/09(火) 04:46:37 ID:NYzjkL4w0

仕事が忙しくて、あまり学校に来れない狂本くんでしたが、学校に来た時は放課後、必ず美術部に来てくれました。その度に、二人でお互いの作品について感想を述べあっていました。

川д川『新刊読みましたよ。主人公が死ぬシーン、まさか前半に出てきた喘息を患っている設定がラストで関わってくるとは…いい伏線でしたね』

川* ゚ 々゚)『あ、ああありがとう。コンクールに出てた貞子の作品も、よかった。夕陽の風景画が、特に…』

川д川『…夕陽好きなんですよ、私。なんか寂しい感じがして』

川 ゚ 々゚)『さ、寂しい感じがするのに、好きなの?』

川ー川『寂しそうな夕陽を見ていると、私なんかでも受け入れてくれそうな気がして。まぁ、思い上がりかもしれませんけどね』

川 ゚ 々゚)『…夕陽が受け入れなかったとしても、僕が君を受け入れるよ』

川д川『あのー、前々から思ってましたけど、狂本くんって、実は普通に喋れますよね?』

川; ゚ 々゚)『そそそそんなことない!』

川д川『ま、狂本くんがそういうならそれでも構いませんけどね』

599 名前:名も無きAAのようです :2016/02/09(火) 04:47:20 ID:NYzjkL4w0

川 ゚ 々゚)『と、ところで、僕も前から聞きたかったんだけど』

川д川『なんですか?』

川 ゚ 々゚)『どうして、美術部以外で貞子に話しかけちゃいけないのの?』

川д川『…ほら、狂本くん人気者ですから、いつも周りに大勢の人がいるじゃないですか。教室で話してたら、みんなとも話さなきゃいけなくなるのが嫌なんです。私、あんまり騒がしいの好きじゃないですので』

川 ゚ 々゚)『あ、そ、そうかぁー。確かに、大勢いるから、うるさいよね。静かなのが好きな貞子には』

川д川『はい、だから美術部だけでお話しましょうね』

川 ゚ 々゚)『うん、わ、わかったぁ』


とびっきりの嘘でした。
ただ私は、学校で嫌われ者の私と、学校で人気者の狂本くんが関わっていることをバレるのが嫌だったのです。

600 名前:名も無きAAのようです :2016/02/09(火) 04:48:11 ID:NYzjkL4w0




从 ;∀从「貞子おぉおおお!」

川д川「…そんな泣かないでくださいよ、狂本くん」

从 ;∀从「だって、貞子が教科書隠されたりしてるのも知らなかったし、嫌われてるのも気付かないで僕はのうのうと生きてたなんて…ああああ!」

川д川「別に他の人たちに嫌われてたの、私、一ミクロンも気にしてなかったですけどね。教科書も隠されたって、内容覚えてたから平気でしたし」

(-_-)「…じゃあ、貞子さんはどうして二人が関わっているのがバレるのが嫌だったの?他の人なんて眼中になかったみたいなのに」

川д川「私はただ狂本くんに嫌われたくなかったんです。もし、狂本くんと私が関わっているのがバレたら、私に関する良くない噂を狂本くんに知られることになったでしょうから」

从; ゚∀从「そんな…僕はどんな噂を聞かされたとしても、絶対に気にせず君と一緒にいたよ!」

川д川「…まぁ、その噂がデマなら私も気にしなかったでしょう。でも、その噂は事実だったから知られたくなかったんですよ」

(-_-)「それはどんな噂だったんだい?」

601 名前:名も無きAAのようです :2016/02/09(火) 04:49:02 ID:NYzjkL4w0


川д川「…私に関わると不幸になるという噂です」


从; ゚∀从「…え?」

川д川「くだらない噂だと思うでしょうけど、実際に私と仲良くして下さった方々は、成績や部活の功績などが下がってしまいました。妬みもありましたけど、その噂もあって私は嫌われるようになったんです」

从# ゚∀从「…く、くだらない!そんなの、貞子のせいでもなんでもないじゃないか!そいつらが努力不足だっただけで貞子は何も悪くないのに!」

川д川「…いえ、本当に私と関わったことが原因なんです」

从# ゚∀从「貞子、君は優しすぎるぞ!」

川д川「狂本くん…」

(-_-)「…そこまで言うってことは、本当に貞子さんと関わったことで、他の人たちは成績が下がったのかい?」

从# ゚∀从「ヒッキー先生、何をバカなことを!」

川д川「はい、そのとおりです」

从# ゚∀从「貞子!」

(-_-)「高岡くん、とりあえず今は貞子さんの話を聞こう。きっと、納得いく答えが聞けるはずさ」

从# ゚∀从「………わかりましたよ」

川д川「ありがとうございます。…では、話を続けますね」

602 名前:名も無きAAのようです :2016/02/09(火) 04:50:24 ID:NYzjkL4w0

中高一貫クラスだった私たちは、難なく高校一年生になり、ある課題が出されました。

川д川『…進路希望調査ですか』

川 ゚ 々゚)『おおおかしいよねぇ。シベリア大学附属校なんだから、進路希望調査しなくてもいいのにね』

川д川『シベリア大学にそのまま上がらない人もいますからね』

川 ゚ 々゚)『ふーん、そ、そうなんだ。貞子は大学受験するの?』

川д川『さぁ、どうしましょう。将来の夢もないですしね』

川 ゚ 々゚)『貞子は絵が上手いから、美大とか受験するのも良さそうだよねねね』

川*ー川『…美大、ですか。そうですね、それも良いかもしれませんね』

川* ゚ 々゚)『う、うん、合ってると思うよ!』

603 名前:名も無きAAのようです :2016/02/09(火) 04:51:04 ID:NYzjkL4w0


川д川『狂本くんはどうするんですか?進路』

川 ゚ 々゚)『ううーん、悩んでるんだよね』

川д川『そうなんですか?狂本くんはシベリア大学にそのままいくと思ってましたが、行きたい大学でもあるんですか?』

川 ゚ 々゚)『いや、悩んでるのは、大学とかじゃなくて…』

川д川『じゃあ何を悩んでるんですか?』



川 ゚ 々゚)『さ、作家、やめようか悩んでるんだ』


川д川『へー、作家を…』


川д川



『って、ええええええええええ!?』


.

604 名前:名も無きAAのようです :2016/02/09(火) 04:51:45 ID:NYzjkL4w0

川;д川『作家やめちゃうんですか!?』

川 ゚ 々゚)『ななな悩んでるんだよね』

川;д川『売れっ子なのに、どうして!普通の男の子になりたいってことですか?』

川 ゚ 々゚)『…まぁ、貞子にだからいうけど、僕、実は嫌いなんだ』

川;д川『嫌いって何を?』



川 ゚ 々゚)『バットエンド書くの、嫌いなんだ』


.

605 名前:名も無きAAのようです :2016/02/09(火) 04:52:50 ID:NYzjkL4w0

川д川『…バットエンドが、嫌い?』

川 ゚ 々゚)『うん、嫌いなの、バットエンド。書くのも読むのも好きじゃないんだ』

川;д川『バ、バットエンド作家なのにですか?』

川 ゚ 々゚)『本当はシリアスやホラー的なのも書くの好きじゃないし、バットエンドなんて、もっての外って感じだよ。本当は童話とか絵本とか、ハッピーエンドで終わる作品が好きだし書きたいんだ』

川;д川『じゃあ、何でバットエンドなんて書いてるんですか?』

川 ゚ 々゚)『ずっとハッピーエンドでデビューしようと努力してたけど、ダメだったんだ。そんな時、息抜きで書いたバットエンド作品を雑誌に送ったらあれよあれよとデビューが決まって、気付いたらバットエンド作家になってた…』

川д川『息抜きで書いた作品でデビューしちゃうなんて天才ですね…』

川 ゚ 々゚)『よくわからないけど、バットエンドを書く才能はあるみたい。でも、得意なこととやりたいことって違うからね』

川д川『でも、作家をやめなくてもハッピーエンドを書けばいいじゃないですか』

606 名前:名も無きAAのようです :2016/02/09(火) 04:54:02 ID:NYzjkL4w0


川 ゚ 々゚)『バットエンド作家の僕がハッピーエンドを書くことは許されないんだよ、貞子。バットエンド作家の僕がハッピーエンドを書いてしまったら、評判ガタ落ちさ』

川;д川『そうなんですか…』

川 ゚ 々゚)『…実はというと、今まで出版してきた作品たちには、本当は続きがあるんだ』

川;д川『え、バットエンドに続きが?』

川 ゚ 々゚)『うん。出版してもらえないから、誰にも読んでもらえないけどね』

川д川『それなのに何で書くんですか?』

川 ゚ 々゚)『…だって可哀想じゃないか、バットエンドのまま終わってしまうなんて。だから、ハッピーエンドをいつも書くんだ。きっと蛇足で、お話的には台無しなんだろうけど』

川д川『狂本くん…』

川 ゚ 々゚)『つまんない話しちゃってごめんね。…やっぱり作家やめちゃダメだよね、これからもバットエンド作家として頑張るよ。ハッピーエンドは僕だけが知っていればいいんだし、みんなが望んでいるものを書かなきゃね』

607 名前:名も無きAAのようです :2016/02/09(火) 04:54:49 ID:NYzjkL4w0

川д川『…私、読みたいです。狂本くんが書くハッピーエンドで終わる物語』

川 ゚ 々゚)『本当?じゃあ、今度書いたハッピーエンド持ってくるね』

川д川『そうじゃなくて』

川 ゚ 々゚)『ん?』

川д川『本として出版された作品として、ですよ』

川; ゚ 々゚)『…でも、狂本クルウはバットエンド作家だし』

川д川『狂本クルウは確かにバットエンド作家かもしれませんが、別名義でやればいいじゃないですか』

川 ゚ 々゚)『別名義…』

川д川『ハッピーエンド作家として売れっ子になって、サイン会とかあっても、そのマスク外して、喋り方も普通にすれば狂本くんだってばれないですよ、きっと!』

川* ゚ 々゚)『そ、そうだね。名前も服装も喋り方も全部変えちゃえばバレないよね…!』

川д川『私ですら気付かないと思いますよ』

川 ゚ 々゚)『えー、貞子は気付いてよ』

川д川『努力はします』

608 名前:名も無きAAのようです :2016/02/09(火) 04:55:42 ID:NYzjkL4w0

川* ゚ 々゚)『でも、そう考えたら楽しみになってきたなぁ。どんな話書こうかな』

川д川『どんな作品書きたいんですか?』

川* ゚ 々゚)『童話形式とか、児童文学的なのが書きたいんだよね』

川д川『いいじゃないですか、ハッピーエンドが似合うジャンルですし』

川* ゚ 々゚)『そう、それと絵本の文章書く作家にも憧れ…』


川; ゚ 々゚)『…って、あー!!!!』


川;д川『え!?な、何ですか?!』

609 名前:名も無きAAのようです :2016/02/09(火) 04:56:22 ID:NYzjkL4w0

川;* ゚ 々゚)『めめめめちゃくちゃ良いこと思いついた!!むしろ、何で今まで思いつかなかったんだろ!』

川д川『何を思いついたんですか?お話のネタですか?』

川* ゚ 々゚)『違うよ、貞子!もっと良いこと!』

川д川『なんですか?』

川* ゚ 々゚)『僕はお話を書くのが好き、貞子は絵を描くことが好きだよね!』

川д川『えぇ、まぁ、そうですね』



川* ゚ 々゚)『だからさ!僕たち、二人で絵本作家になればいいんだよ!』



川;д川『…え?』

610 名前:名も無きAAのようです :2016/02/09(火) 04:57:08 ID:NYzjkL4w0


川* ゚ 々゚)『僕たち、前々からナイスコンビだとは思ってたけど、まさか人生のパートナーとしてもナイスコンビだとは思わなかったよ!』

川;д川『ちょ、ちょっと待ってください!私は絵本作家になんてなれるほど、ちゃんとした絵描けないですよ!?』

川 ゚ 々゚)『貞子の絵、素敵だよ。貰った絵、全部画集にしたいくらい』

川;д川『でも、私の絵は基礎だってなってませんし…絵本作家になるならちゃんと絵の勉強しなきゃいけません。色彩についても詳しくありませんし…』

川* ゚ 々゚)『…あはは』

川;д川『な、何がおかしいんですか?』

川* ゚ 々゚)『嬉しくて、思わずね。貞子、絵本作家になってくれる気満々じゃない』

川;д川『あ』

611 名前:名も無きAAのようです :2016/02/09(火) 04:58:00 ID:NYzjkL4w0



川 ゚ 々゚)『ねぇ、貞子。嫌なら断ってくれてもいい』

川д川『…』

川 ゚ 々゚)『だから、良かったら…』



川 ゚ 々゚)『僕と絵本作家、目指さない?』


つまらない学校生活を送る中で、将来の夢なんて、持ったこともありませんでした。勉強して、適度に部活で絵を描ければいいやと思ってました。


だから、高校一年生になって、私は初めて



川ー川『…絵の勉強、沢山しないとですね』


将来の夢を持ちました。



こうして、私は進路希望調査表の第一志望に、美大受験と書きました。

それが間違いだったのです。

612 名前:名も無きAAのようです :2016/02/09(火) 04:58:42 ID:NYzjkL4w0


( ・∀・)『…土井、なんで呼び出されたかわかる?』

川д川『いえ、分かりません』

( ・∀・)『進路希望調査のことなんだけど』

川д川『あぁ、なるほど。すいません、どこの美大を受けるかとか、まだ具体的なこと書けなくて…』

( ・∀・)『いやいやいや、そーいうことじゃなくて』



( ・∀・)『何ふざけたこと言ってんの、ってこと』


川д川『…』

613 名前:名も無きAAのようです :2016/02/09(火) 04:59:46 ID:NYzjkL4w0

( ・∀・)『美大なんて行けるわけないでしょ?』

川д川『確かに今の実力では、そう言われても仕方ないです。ちゃんと予備校に通うつもりです』

( ・∀・)『画力とかの問題じゃなくて』

川д川『じゃあ何ですか?』

( ・∀・)『名門大学に行ってもらわなきゃ困るんだよ。学年首席なんだからさぁ』

川д川『私には関係ないことです』

( ・∀・)『僕が担当する生徒なんだから大アリだよ。名門大学に行ってもらわないと困るんだよ』

川д川『…知りません』

614 名前:名も無きAAのようです :2016/02/09(火) 05:00:28 ID:NYzjkL4w0

( ・∀・)『いやだなぁ、勉強できるくせに物分りが悪い奴って。ってかさ、中学の時に君の勉強の邪魔にならないように周りに集ってた奴ら蹴散らしてやった恩忘れたわけ?』

川д川『そんなこと頼んでません』

( ・∀・)『あれ?そうだったっけ?でも、良かったじゃん。くだらない噂で離れていくような奴らと縁切れて』

川д川『…そもそも噂流したのも先生だし、実際に先生がみんなの成績とか下げたじゃないですか』

( ・∀・)『やめてよ、そんな言いがかりは。僕は不正なんて行ってないよ?』



( ・∀・)『…ただ、見込みがないと思って、「期待」しなかっただけさ』


.

615 名前:名も無きAAのようです :2016/02/09(火) 05:01:14 ID:NYzjkL4w0

川д川『…じゃあ、私にも期待しないでください』

( ・∀・)『してないよ、元から。俺、昔から頭いい奴嫌いだし』

川д川『でも成績とか下がってませんけど?』

( ・∀・)『なんか知らないけど、君には効かない。だから余計腹が立つ』

川д川『そんなこといわれても…』

( ・∀・)『そもそも何で美大なんて行きたいわけ?』

川д川『…将来の夢、的な』

( ・∀・)『もしかして、将来の夢は絵本作家とかほざくんじゃないだろうね?』

川;д川『…え』

616 名前:名も無きAAのようです :2016/02/09(火) 05:02:01 ID:NYzjkL4w0


( ・∀・)『お前以外の生徒は僕のこと、優しくて話しやすい先生だと思ってるからね。例に漏れず、狂本もその一人だったわけよ。別名義でお前と絵本作家になるとか言ってたよ』

川;д川『…狂本くん』

( ・∀・)『狂本の戯言かと思ったら、進路希望調査にお前が美大とか書いてきたから俺もビックリしたよ』

川д川『そうでしょうね…』

( ・∀・)『土井、狂本みたいな小説書くしか能が無い馬鹿と関わると大変だろ?お前は一人でいる方がお似合いだぞ。人を不快にするほど頭のいい奴は孤独でいるべきだ』

川д川『…いい加減、パワハラで訴えますよ』

( ・∀・)『学年で嫌われ者のお前と、教師からも生徒からも人気のある俺。どっちが信頼あるかなぁ?』

川д川『……ともかく、私は美大を受験させていただきますので』

( ・∀・)『そんなことしてみろ、期待するのやめるぞ』

川д川『元から期待されてませんので構いません』

( ・∀・)『勿論、お前じゃない。狂本クルウをだ』

川;д川『は…?』

617 名前:名も無きAAのようです :2016/02/09(火) 05:02:51 ID:NYzjkL4w0

( ・∀・)『実はというと、最近狂本に期待するのやめてるんだ。売れっ子作家だから特待生としてシベリアにいれてるけど、もし、売れっ子作家じゃなくなったら…』

川;д川『や、やめてください!』

( ・∀・)『なんだよ、お前らしくないな。人のことで動揺するなんて』

川;д川『お願いします、狂本くんには、狂本くんだけには何もしないでください…!』

( ・∀・)『じゃあ狂本クルウと関わるな。それと、美大を諦めて名門大学に行け』

川;д川『そんな…』

( ・∀・)『まぁ、簡単には返事できないよな。わかる、わかるよ。初めて出来たまともな友達だもんなぁ、中学三年の頃から仲良くしてたんだもんなぁ』

川д川『…先生、私と狂本くんが仲良くしてたの知ってたんですか』

( ・∀・)『当たり前だろ。担任だぞ、俺は』

川д川『気付いていたなら、どうして何時もみたいにすぐに引き離さなかったんですか…?』

( ・∀・)『夢を見させてからの方が、失った時のショックも大きいかなぁとおもって』

川д川『…先生は、なんでそんなに私に辛く当たるんですか』

( ・∀・)『言っただろ?俺、頭いい奴が嫌いなんだよ。特に、お前みたいな奴』

川д川『たったそれだけの理由で?』

( ・∀・)『たったそれだけの理由だよ?』

川д川『…もう帰ります、失礼しました』

( ・∀・)『狂本と関わるのやめる気になったら教えてくれなー』

618 名前:名も無きAAのようです :2016/02/09(火) 05:04:21 ID:NYzjkL4w0

川д川(…よくよく考えてみたら、馬鹿らしい。先生が期待しないだけで狂本くんの作家人生がどうにかなるわけないのに。学校の成績とかは小細工できても、学外のことは先生がどうこうできるわけない)

( *^ν^)『土井貞子。モララー先生になんで呼び出されてたんだ?成績下がったのか?』

川д川『違います』

( ^ν^)『じゃあ、何で呼び出されたんだよ。教えろよ』

( ^Д^)『おい、学年首席に絡んでるそこの万年二位!』

( #^ν^)『万年二位って呼ぶんじゃねーよ!』

( ^Д^)『まぁまぁ、それよりさ、クルウの新刊読んだか?』

( ^ν^)『あ?読んだけど?』

( ^Д^)『今回のバットエンド、どう思う?』

( ^ν^)『んー…なんていうか、悪くはないけど、生ぬるかったな』

( ^Д^)『だよなー。クルウの作品は、バットエンドだから面白いのに』

( ^ν^)『そうだな。今回の作品は、取りようによっては…そうだな、まるで』





( ^ν^)『ハッピーエンド、のようだったからな』




川;д川『…!』

619 名前:名も無きAAのようです :2016/02/09(火) 05:05:42 ID:NYzjkL4w0



ガラッ!

( ・∀・)『おかえり、帰ってくると思ってたよ』

川;д川『狂本くんのバットエンド作家としての人生を台無しにする気ですか!?』

( ・∀・)『新刊の話?バットエンド作家がハッピーエンドまがいのもん書いちゃダメだよなぁ。これからもこんなことが続いたら、売れっ子じゃなくなっちゃうよな』

川;д川『そしたら、狂本くんはシベリアにいれなくなってしまうじゃないですか』

( ・∀・)『それだけじゃないぞー?バットエンド作家としてハッピーエンド書いて、名声を失ったら、作家としても終わりだ。最悪、絵本作家にもなれないだろうな』

川;д川『そんなことは…!』

( ・∀・)『ないって言い切れるのか?』

川;д川『それは…』

( ・∀・)『これでわかっただろ?君の軽はずみな行動で、狂本の作家人生を殺してしまうかもしれないってこと』

川;д川『私のせいって…先生のせいじゃないですか!』

( ・∀・)『お前が狂本に関わらなければ、俺もこんなことしなかったよ』

川;д川『私は、私は…!ただ、狂本くんと友達でいたいだけです!』

( ・∀・)『高校生になったんだからさ、いい加減にごっこ遊びなんて卒業しなよ。もう充分夢見れただろ?世間の人気者と友達ごっこできたんだしさ』

川;д川『友達ごっこなんかじゃ…』

( ・∀・)『ごっこじゃないなら、友達のために尽くせるよな?友達のために行動できるよな?』

川д川『…』

( ・∀・)『で、どうすんの?狂本とまだ関わるの?』


川д川『私と狂本くんはナイスコンビです、だから…』

( ・∀・)『だから?』

620 名前:名も無きAAのようです :2016/02/09(火) 05:06:23 ID:NYzjkL4w0




川д川『…もう、狂本くんとは関わりません。美大も受けませんし、絵本作家も諦めます』




.

621 名前:名も無きAAのようです :2016/02/09(火) 05:07:50 ID:NYzjkL4w0

こうして私は、狂本くんと関わること、美大に行くこと、絵本作家になるという将来の夢も諦めることになりました。

唯一の救いは、狂本くんも仕事が忙しかったので、狂本くんに冷たい態度をとらなくて済んだということだけです。

こうして、またつまらない学校生活に逆戻りしました。一瞬でも楽しい思いをしてしまった私は、その学校生活に耐えられなくなり、不登校に…

学校に行くのは、テストを受ける時だけでした。

622 名前:名も無きAAのようです :2016/02/09(火) 05:08:51 ID:NYzjkL4w0

川д川(やっとテスト最終日終わった…さっさと帰ろう)

ヒソヒソ…

『…土井の奴、不登校だった癖にテスト簡単に解いてるらしいぜ。職員室で聞いちゃった』

『化け物かよ』

『いくらシベリアが進学校だからって、アイツ桁違いすぎるだろ…』

『シベリアの授業なんてアイツにはレベル低いんだろうな』

『なんだかなぁ、あーいう天才が身近にいると努力する気失せるよな』

『そうだよな。俺たち凡人がいくら努力したって、天才には勝てないんだからな…』

『きっとアイツからみたら俺らなんか虫ケラみたいに見えるんだろうな』

『そりゃそうだろ。だから何時も一人だし。俺たちと関わることなんてアイツにとっては無意味なことなんだろうからさ』

『先生たちも持て余してるみたいだぜ?』

『自分より勉強できる生徒なんか邪魔でしかないだろうしな』



『あーあ、どっか行ってくんないかなぁ』


川д川


川д川(…あぁ、そうか。その点がありましたか)

623 名前:名も無きAAのようです :2016/02/09(火) 05:10:20 ID:NYzjkL4w0



川д川『お久しぶりです、モララー先生。この度、転校することにしました』

( ・∀・)『へぇ、逃げるんだ』

川д川『何とでも言ってください。次に行く学校も、すでに決まってますので』

( ・∀・)『あっそう。じゃあ、書類とかは事務の人に頼んで用意しといてあげるよ。君と関わるのも最後だし、それくらいはちゃんとやってあげる』

川д川『ありがとうございます』

( ・∀・)『こちらこそ、いなくなってくれてありがとう。みんなも喜ぶよ』

川д川『…そうですね』

( ・∀・)『狂本に別れの言葉は伝えたのか?』

川д川『いえ、関わらない約束ですので』

( ・∀・)『ならよし。用がないならもう行っていいよ』

川д川『…はい』

624 名前:名も無きAAのようです :2016/02/09(火) 05:11:03 ID:NYzjkL4w0

川д川『失礼しました』ガラッ

(; ^ν^)『おい、土井!お前、転校するって本当か!?』

川д川『…えぇ、まあ』

( #^ν^)『ふざけんな!お前、不登校になってやっと帰ってきたと思ったら転校だと!?俺はずっとお前を負かすために努力してきたんだぞ!勝ち逃げする気かよ!』

川д川『勝ち逃げ…?何の話か分かりませんが、私に関わらない方がいいかと思いますが』

( ^ν^)『…ってか、何で転校するんだよ、この学校のレベルが低いからか?』

川д川『貴方に教える義理はありません』

( #^ν^)『なんだと!』

川д川『…それにしてもビックリしました。この学校にまだ私に話し掛けてくる人がいるなんて』ボソッ

( ^ν^)『あ?』

川д川『…何の話かまったく分かりませんでしたが、これからも努力し続けて頑張ってくださいね』

( ^ν^)『…お前が居ないなら、努力しなくても俺がこの学校のトップに決まってんだろ、くそが』

625 名前:名も無きAAのようです :2016/02/09(火) 05:12:07 ID:NYzjkL4w0



川д川『…今日でこの学校ともお別れですね。憧れて勉強して入ったのに、どうしてこんなことになったんですかねぇ』

川д川『…まぁ、どうでもいいですけどね。もう来ることもないでしょう』


川д川『さようなら、大嫌いだった学校生活。さよなら、大嫌いだったモララー先生』


川д川『あぁ、それと』




川ー川『…さよなら、私の唯一のお友達』


.

626 名前:名も無きAAのようです :2016/02/09(火) 05:15:16 ID:NYzjkL4w0


川д川「…こういうわけで、私は転校を決め、自分の家に一番近い聖vipへ来たわけです」

(-_-)「…それが貞子さんの転校してきた理由だったんだね」

川д川「はい。転校すれば狂本くんに迷惑かけることもありませんし、皆もそれを望んでいましたからね」

从 ;∀从「全ての元をただせば、僕が貞子を苦しめていたんだね…」

川д川「狂本くんがいなければ、私は将来の夢を持てることもありませんでしたよ。それに悪いのはモララー先生ですし、狂本くんが気にすることありません」

从 ;∀从「でも、僕が絵本作家を目指そうだなんて言わなければ…僕がモララー先生に自慢しなければ、こんなことには…!」

川д川「どうせあの先生のことです。狂本くんが言ってなかったとしても、いつかはこうなっていましたよ」

从 ;∀从「でも、僕が貞子の人生を台無しに…」

川ー川「そんなことないですよ。私、転校したこと後悔していませんから。転校しなければシベリアでずっとつまらない学校生活を送っていたでしょうけど、今はとても楽しい学校生活を送れていますし」

从 ;∀从「でも、絵を描くことを嫌いになってしまったのは僕のせいだよ!」

川д川「…私が絵を描くのを避けるようになったのは、狂本くんと絵本作家になる約束をしたのにも関わらず、狂本くんに理由も言わず逃げてしまった自分が許せなくてですよ。自業自得です。本当の友達なら、理由くらい伝えるべきでした。黙って去ってしまったら、狂本くんが悲しむこと、分かってたのに」

627 名前:名も無きAAのようです :2016/02/09(火) 05:16:12 ID:NYzjkL4w0

从 ;∀从「…やっぱり、僕にはバットエンドがお似合いなんだね。自分自身が大切な友達を苦しめていた元凶だったなんてね。こんな僕が、ハッピーエンド作家になんてなれるわけないんだ」

(;-_-)「高岡くん、そんなことないよ」

川д川「そうかもしれませんね」

(;-_-)「貞子さん!?」

从 ;∀从「いいんです、ヒッキー先生。事実ですから」

川д川「…確かに『狂本クルウ』はハッピーエンドは作れないかもしれません。でも、別名義ならハッピーエンド作家になれるはずですよ」



川ー川「…でしょ?『高岡ハインリッヒ』くん」


从 ;∀从「!!」

628 名前:名も無きAAのようです :2016/02/09(火) 05:17:32 ID:NYzjkL4w0


川д川「だから、狂本くん…いえ、高岡くん。もし、良かったら…」


从 ;∀从「あ…」




川;ー;川「私と絵本作家、目指してくれませんか?」




从 ;∀从「…貞子、それじゃあ」




「絵本作家になるために、僕たち沢山勉強しなきゃだね」






637 名前:名も無きAAのようです :2016/02/11(木) 02:39:18 ID:PTVd0Jgw0

今日でちょうど三年目だったので、本来なら描くつもりなかったシベリア大学付属キャラを成績順で(高校一年春時点)



ついでにキャラ紹介。

川д川
土井 貞子
(シベリア大学付属在学時点)
夕陽が好きで、絵を描くことと、勉強することだけが楽しみ。シベリアに憧れて入学したけど、狂本が来るまではつまらない学校生活を送っていた。狂本とはナイスコンビ。

( ^ν^)
卯速 ニュッ
小学生の頃は秀才で有名。シベリア入学後は貞子のせいで影が薄くなった。貞子とはずっと同じクラスで、席も隣で良くちょっかいをかけていたが、覚えてもらえていなかった。
万年二位があだ名だったが、貞子がいなくなってからは皮肉を込めて学年首席様に。

(´<_` )
流石 弟者
貞子たちとは隣のクラス。いつもやる気がないが、友達はいる。
兄者と良く入れ替わっているが、兄者よりイケメン、そして兄者とは違い言葉数が少ない。狂本の正体をシベリアの生徒で唯一知っている。狂本の親友。

川 ゚ 々゚)
狂本 クルウ
売れっ子バットエンド作家。
特徴的な喋り方をしているが、実は普通にしゃべれる。
特待生でシベリアに在学している。ほとんどの成績には問題ないが、苦手な教科の成績と、売れっ子故の悩みとして、出席日数に問題アリ。シベリアの生徒は、親友の弟者以外は狂本クルウを本名だと思っている。

( ^Д^)
指差氏 プギャー
シベリアの番長。学業はすこぶる悪いが、スポーツ特待生なので、体育はかなり優秀。レスリング部。番長だけど、動物好き。

( ・∀・)
茂羅 モララー
貞子の中学から持ち上がり担任。同僚や生徒たちからは、優しくて話しやすくて、頼り甲斐のある先生として大人気。生徒が教師からの「期待」にどれだけ影響されるか、良く理解している。


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