- 52 名前:名も無きAAのようです :2013/10/30(水) 01:29:25 ID:.5/zROtg0
- ひゅう、と冷たい夜風が吹き抜く家で、温もりを持たないこたつに縮こまりながら。
二人の男女が、なにをするでもなくただ向かい合って座っていた。
ζ(゚ー゚*ζ「…もう深夜ですね」
( ^ν^)「そうだな」
ζ(゚ー゚*ζ「眠らないのですか?」
( ^ν^)「眠くねえな」
ζ(゚ー゚*ζ「…そうですか。ならば、私の話をきいて頂けませんか
?」
- 53 名前:名も無きAAのようです :2013/10/30(水) 01:30:20 ID:.5/zROtg0
ζ(゚ー゚*ζ 人生オワタ症候群のようです( ^ν^)
.
- 54 名前:名も無きAAのようです :2013/10/30(水) 01:32:19 ID:.5/zROtg0
男の沈黙を了解と受け取ったのか、女は静かに語りだした。
ζ(゚ー゚*ζ「…もうすぐ冬がきますね」
ζ(゚ー゚*ζ「いままで凍えを和らげてくれたこたつも、寿命が来てしまいました。電気も止められました。支えてくれていたおじは、死んでしまいました。もはやこの何もない私達じゃ、とても冬なんて越せません」
ζ(゚ー゚*ζ「今までその日その日で生きてきました、なんとか今日まで生きてこれました」
ζ(゚ー゚*ζ「でも、今年こそはもう、ダメです。私たちは、新年すら迎えることは出来ないでしょう」
男は表情ひとつ変えずにそれを聴いていた。
女が、こたつの薄っぺらい布団に手を差し込んで、懐から金貨をとりだす。
それを見て初めて、男の表情が歪んだ。
( ^ν^)「…デレ、お前」
ζ(゚ー゚*ζ「ニュッのために稼いだの」
デレ、と呼ばれた少女が、笑みを浮かべて金貨に優しく頬ずりをする。
ニュッ、と呼ばれた男が、訝しげにそれを見つめた。
- 55 名前:名も無きAAのようです :2013/10/30(水) 01:33:08 ID:.5/zROtg0
- ( ^ν^)「…なにしたんだ」
ζ(゚ー゚*ζ「勘付いているのに、お聞きになるのね。」
( ^ν^)「体、売ったのか」
ζ(゚ー゚*ζ「…そうかもしれない、そうじゃないかもしれない、私の口から言うことはありません」
デレが立ち上がり、ニュッの隣に腰掛けた。
ζ(゚ー゚*ζ「私達、別れましょう」
( ^"ν^)
( ^"ν^)「…それは手切れ金とでも言うつもりか?」
ζ(゚ー゚*ζ「…どうでしょうか」
デレがニュッの手に、ねじ込むように金貨を握らせる。
彼は顔をしかめてそれを見ていた。
- 56 名前:名も無きAAのようです :2013/10/30(水) 01:35:30 ID:.5/zROtg0
- ζ(゚ー゚*ζ「このお金で、服も、ご飯も、寝床も揃えることができます。どうか生きてください」
ζ(゚ー゚*ζ「…そうして、私を嫌いになっては下さいませんか」
( ^ν^)「おい、デレ」
ひゅう。冷たい風は、温もりをもたない二人にも容赦がない。
デレは、ニュッと目を合わせなかった。
ずっと遠くにある三日月を、ひたすらに見つめていた。
( ^ν^)「なにいってんだ馬鹿が」
ζ(゚ー゚*ζ「私は死にます。ニュッは優しいからきっと悲しむでしょう、ならばいっそ嫌いになって。私を忘れてしまって下さい」
ζ(゚ー゚*ζ「デレは幸せです、とても幸せですから」
( ^ν^)
- 57 名前:名も無きAAのようです :2013/10/30(水) 01:36:13 ID:.5/zROtg0
ニュッが不意に、金貨を握る手から力を抜く。金貨は音をたてて、粗末な床に落ちた。
( ^ν^)「こんなのいらねぇよ」
( ^ν^)「なに勝手なこと言ってんだボケ」
ζ(゚ー゚*ζ
( ^ν^)「もう、潮時だってのは俺が一番よくわかってる」
( ^ν^)「…デレだけで死ぬとか、ないから」
ニュッの一言に、デレは少しだけ睫毛を揺らした。
ζ(゚ー゚*ζ「…それって」
( ^ν^)「あーあー黙れ、黙っとけ。俺生きるのめんどくなったんだよ、それだけだ」
( ^ν^)「そうだな、一緒に死ぬか。金貨は無駄になっちまうけど、そうしたら誰も悲しくない」
- 58 名前:名も無きAAのようです :2013/10/30(水) 01:37:00 ID:.5/zROtg0
名案だろう?とでもいいたげに口角をあげるニュッに、デレは少しだけ涙を浮かべて、そのあとに少しだけ、笑った。
ζ(゚ー゚*ζ「…ああ、ダメだなぁ。ニュッに生きて欲しいから頑張ったのに」
( ^ν^)「…」
ζ( 、*ζ「…なのに、とても嬉しい。一緒に死にたいって思ってしまいます。きっと、貴方がそう言うってわかってたの、期待してたの」
ζ( 、*ζ「それで、こんなこと。結局私、貴方と離れたくないだけなのよ。なんて最低な女なのでしょう」
デレはポロリと一粒だけ零すと、切なく笑った。ニュッはそれを見るや否や、俯いてしまう。
ζ(゚ー゚*ζ「…一緒に、死んでくれますか」
( ^ν^)「ああ。」
- 59 名前:名も無きAAのようです :2013/10/30(水) 01:37:45 ID:.5/zROtg0
- ζ(゚ー゚*ζ「…私、一度ここを出たかったなぁ」
( ^ν^)「…死ぬ前にその金、パーっと使っちまえばいい。旅行でもなんでもできるぞ」
ζ(゚ー゚*ζ「一人じゃ無理ですよ」
( ^ν^)「るるぶ買えるるぶ」
ζ(゚ー゚*ζ「そうじゃなくて。ニュッと一緒に行きたいの」
ζ(゚ー゚*ζ「…南に、とても綺麗な海があるそうです。二人で海辺に暮らせたら、きっと温かくて素敵」
ζ(゚ー゚*ζ「ああ、あなたと冬を過ごせたら、雪でめいいっぱい遊んだのに、年明けをあなたと共に祝えたのに」
ζ(゚ー゚*ζ「春にはまた花が芽吹いて、雪が融けて、お水に困りません。なにより桜が咲きます、あの美しい風景、とても好きです」
( ^ν^)「…」
ζ(゚ー゚*ζ「でもニュッと一緒じゃないと、何も意味がないの。どうせ冬は越せない、いつかは離れてしまう。それに怯える毎日は苦しいだけ」
- 60 名前:名も無きAAのようです :2013/10/30(水) 01:38:33 ID:.5/zROtg0
- ニュッが、呆然とデレの視線の先をおった。そこには、オレンジ色の大きすぎる三日月があった。
ζ(゚ー゚*ζ「…ニュッ、なにか未練は?」
( ^ν^)「ねーよ、んなもん」
ζ(゚ー゚*ζ「そうですか。貴方がないなら、私もなにもありません」
デレは、床の金貨をピンとはじいて遠くにやると、ニュッに寄り添った。
( ν )「…俺もすぐ行くから、本当に、…」
首に、温かい手が絡む。迷いなんてもう、なかった。
ぽたりぽたり。デレの頬に熱い水滴が落ちては流れた。
ζ(゚ー゚*ζ「大好き」
デレは彼の目を見据えた。
人生で一番の幸福に包まれながら、デレは目を閉じた。
- 61 名前:名も無きAAのようです :2013/10/30(水) 01:39:39 ID:.5/zROtg0
- 以上です。ありがとうございました
- 65 名前:名も無きAAのようです :2013/10/30(水) 01:56:26 ID:.5/zROtg0
- 最初に書いたと思ったら書いてなかったなんてこったい
前スレの>>977です
さくら、深夜、三日月、こたつ、るるぶ
をお題に書きました
こんな夜中なのにレスありがとう( ;ν;)ブワッ
良ければ悪い所とかも教えてくれたら助かる
▼イラスト
└ ζ(゚ー゚*ζ( ^ν^)
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