275 名前:名も無きAAのようです :2013/11/03(日) 02:31:07 ID:sEagCD7E0
お題出来たんで、投下するね
数レス程度の短いやつ


('A`)ドクオは眠るようです

276 名前:名も無きAAのようです :2013/11/03(日) 02:32:46 ID:sEagCD7E0

('A`)「…………」

 私は、ベッドから窓の外を見つめていた。
 何が見える、という訳でもない。ただの退屈しのぎだ。

ξ゚听)ξ「もう、お爺さんったら。また外なんか眺めて」

 妻、ツンの声に、私は振り向く。
 実に半世紀以上の時を過ごし、苦楽を共にしたの彼女の姿。

('A`)「することが無くてね」

 少し、むくれているようだ。
ひょっとしたら、私がツンではなく、窓の外を見ていた事が気に触ったのかも知れない。

 昔から、少し嫉妬深い所があった。
その上、素直な感情表現とは無縁の人であったから、いつも私がその心情を汲み取って、フォローしなければならなかった。

ξ゚听)ξ「寒くありませんか?」

('A`)「大丈夫ですよ。今日は少し、調子がいいんだ」

 それでも、最近は随分と優しくなったと思う。
 いや、もともと温かい所があった人だから、優しさを表に出す術を身に着けた、と言うことだろうか。

ξ゚ー゚)ξ「良かった」

 そう言いながら、ツンは私に寄り添う。

277 名前:名も無きAAのようです :2013/11/03(日) 02:33:34 ID:sEagCD7E0

 私達は、しばらくそうしていた。
 病気も悪くない、と思う。こうして、優しくしてくれる妻がいるのだから。

 私の先は、そう長くないらしい。
 息子ほどの歳の医者から、そう告げられた。

 聞かされても、別に何とも思わなかった。
 あぁ、そうかと思っただけ。

 人間、いつかは死ぬ。
五年ほど前から、そう考える事が多くなったからかも知れない。

ξ゚听)ξ「あら、外を学生さんが歩いてますよ」

('A`)「もう、卒業式の季節だもんねぇ」

 暦は、三月。
 孫のブーンも、そろそろ小学校を卒業する頃だ。

('A`)「ツンと初めて会ったのも、こんな時期だったかねぇ」

ξ゚听)ξ「そうですねぇ。あの頃のあなたは」

278 名前:名も無きAAのようです :2013/11/03(日) 02:34:30 ID:sEagCD7E0

ξ#゚听)ξ「私というものがありながら、他の女に目移りしたり」

('A`)「…………」

ξ#゚听)ξ「そうそう。会社勤めの時、若い娘に鼻の下を伸ばしてたりした事もありましたねぇ」

(;'A`)「つ、ツンさんや。その話は勘弁して貰えんかの」

ξ゚听)ξ「それでも」

('A`)「ん?」

ξ゚ー゚)ξ「私を怒らせる事はあっても、悲しませる事は一度もありませんでしたね」

('A`)「…………」

 あぁ、悲しむ事は、無かったのか。
 自分で言うのも何だけど、良き夫であれたと思う。

 それでも、こうして改めて妻の口から聞かされると、嬉しいと思った。

279 名前:名も無きAAのようです :2013/11/03(日) 02:35:26 ID:sEagCD7E0

(-A-)「あぁ、ツン。私は少し、眠くなってきたよ」

 私は目を閉じる。

ξ゚ー゚)ξ「近頃、あんまり眠れませんでしたものね」

 体が痛くて、すぐに目覚めてしまうのだ。
 そんな時、ツンが傍にきてくれた。

 五年前に亡くなった筈の、最愛の妻が。

(-A-)「今日は、ゆっくりと眠れそうだよ」

ξ゚ー゚)ξ「そうなさいませ」

(-A-)「ツン」

ξ゚ー゚)ξ「何ですか、あなた」

(-A-)「君が先に逝ってから、私は淋しかったよ」

ξ゚ー゚)ξ「私は、あなたに最期を看取っていただいて、嬉しかったですよ」

(-A-)「私より先に逝くとは、何て事だと思ったよ」

ξ゚听)ξ「…………ごめんなさい」

280 名前:名も無きAAのようです :2013/11/03(日) 02:37:09 ID:sEagCD7E0

(-A-)「良いさ。代わりにブーンと、いっぱい遊んでやったからね。君の分まで」

ξ゚ー゚)ξ「それは、悔しいですねぇ」

(-A-)「だろう?」

 私達は、笑い合う。
 ツンの質量の無い手が、私の頬に触れた気がした。

ξ゚ー゚)ξ「一緒に、行きましょうか」

(-A-)「あぁ。わざわざ迎えに来て貰って、すまないね」

ξ゚ー゚)ξ「ドクオ。今まで、お疲れ様」

 あぁ。
 名前で呼ばれるのは、久し振りだ。

 妻の声を最後に、私の意識は次第に遠のいていく。

 このまま、静かに眠りたいと思う。
 ツンに手を引かれる光景を見ながら、私は意識を手放した。

281 名前:名も無きAAのようです :2013/11/03(日) 02:39:30 ID:sEagCD7E0
終わり。

引きを残した終わりって難しいね

お題
卒業
このまま静かに眠らせて

完了


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