- 280 名前:雑談スレでのお題「別離」 若干閲覧注意 :2015/12/02(水) 00:04:36 ID:hzGvsOpA0
- (*゚ー゚)「ね、恋のABCって知ってる?」
川д川「……へ?」
得意げに言うしぃちゃんに対して、わたしは間抜けな声をあげた。
隠葬のようです
(*゚ー゚)「……もしかして、意味知らないの?」
その言葉はわたしをちょっと馬鹿にするような響きを持っていて、だけど照れたようにしぃちゃんははにかんでいた。
川д川(かわいい)
だけどその先に続く言葉に、わたしは思わず悲鳴をあげそうになった。
(*゚ー゚)「あのね、Aはキス、Bは……ペッティング、Cは本番なんだって!」
ひそひそと、しかし自慢げに言われたその言葉は氷のようにわたしの背中を滑っていきました。
川д川「そ、そうなんだ……」
きっとわたしの顔は真っ赤になっていて、そのくせ冷や汗がだらだらと流れているでしょう。
しぃちゃんはそんなわたしの様子に気付いていないのか、それともどうでもいいと思っているのか、気にもとめずに話を続けます。
- 281 名前:雑談スレでのお題「別離」 若干閲覧注意 :2015/12/02(水) 00:07:18 ID:hzGvsOpA0
- (*゚ー゚)「昨日ねー……シちゃったの」
川д川「……何を?」
(*゚ー゚)「えー?えへへ…………Cまで」
川д川「…………」
しぃちゃんの目は、縁のかけたコップのように弧を描いていました。
その細い目の中には、きっと想いを果たした相手が写っているのでしょう。
わたしはやけに左手首がかゆく感じて、そっとシャツの袖口を撫でました。
川д川「どこで、したの?だってわたしたちまだ中学生じゃん……?」
(*゚ー゚)「ギコ先輩の家で。昨日初めて誘われたんだけど、まさかあんなことになっちゃうなんてねーえへへ」
あんなこと、なんて言ってるけど、しぃちゃんはとっても嬉しそうでした。
そりゃそうでしょう、だって好きな相手と出来たのだから。
川д川「痛くなかったの?」
(*゚ー゚)「んー、そりゃ痛いけど。でも頑張ったらいーっぱいチューしてくれてー」
昨日の出来事を思い出したのか、しぃちゃんは少し俯いて、だけどその�がさくらんぼのように染まっているのが見えました。
- 282 名前:雑談スレでのお題「別離」 若干閲覧注意 :2015/12/02(水) 00:08:55 ID:hzGvsOpA0
- わたしはただ、
川д川(ああ、本当にその人のことが好きなんだなぁ)
と思い知らされて。
(*゚ー゚)「あ、ちょっとお手洗い行ってくるね」
しぃちゃんはそう言って席を外したけど、その手にはハンカチではなく携帯電話が握り締められていました。
メールか、電話をするのかもしれません。
もちろん相手は、きっと、ギコ先輩とやらなのでしょう。
川д川「…………」
一人、ファミレスの片隅の席に取り残されたわたしは、ぼんやりと袖を握りしめていました。
川д川(しぃちゃん、)
わたしは、恐る恐るテーブルの下を見ました。
右手に捉えられた左袖は、まるで手錠を掛けられた罪人のようで。
それをそうっと退かしてみると、茶色くぼやけた線が幾つか連なっていました。
川д川(わたし、)
左手首にゆぅらりと、彼女の顔。
その顔は得意げに言い放ちます。
(*゚ー゚)『ね、恋のABCって知ってる?』
彼女に気付かれないよう、そっと爪を立てて。
(*゚ー゚)『あのね、Aはキス、Bは……ペッティング、Cは本番なんだって!』
川д川(しぃちゃんが、)
- 283 名前:雑談スレでのお題「別離」 若干閲覧注意 :2015/12/02(水) 00:09:54 ID:hzGvsOpA0
- (*゚ー゚)『昨日ねー……シちゃったの』
川д川(にくい)
ばりり、と縦線が生まれる音。
じんじんと熱が染みて、赤い筋がぷつぷつと。
それでもなお、彼女は喋ります。
(*゚ー゚)『…………Cまで』
川д川(うるさい)
ばりり。
(*゚;ー゚)『ギコ先輩の家で』
ばりばり、ざりざり。
(*゚;;ー゚)『昨日初めて誘われたんだけど』
しぎゃしぎゃ。
(#゚;;ー゚)『まさかあんなことになっちゃうなんてねー』
川д川(死んでしまえ)
赤い線を連ねて、何度も塗りつぶして。
なのに、
(#゚;;-゚)『えへへ』
彼女は幸せそうに、笑っていて。
川д川「…………」
いつか、
川д川(いつか、こんな日が来るって)
分かっていた、のに。
川д川(わたしがしぃちゃんのハジメテをもらえなかったとしても、それでも好きでいられたらって、ずっと思ってた)
これまでも。
今までも。
川д川(……これから先も、)
- 284 名前:雑談スレでのお題「別離」 若干閲覧注意 :2015/12/02(水) 00:13:05 ID:hzGvsOpA0
- (*゚ー゚)「ただいまー」
川д川「!」
わたしは、慌てて袖を元に戻しました。
(*゚ー゚)「どーしたの、貞子ちゃん」
川д川「え、なにが?」
(*゚ー゚)「ずーっと俯いてたから」
なんにも知らないしぃちゃんは、心配そうに、そしてあざとく首を傾げて言いました。
(*゚ー゚)「なんか元気ないなぁって……」
川д川「…………」
少しの沈黙のあと。
川ー川「……ううん、なんでもない」
とだけ、わたしは返しました。
しぃちゃんは、その単純な一言を聞いてすぐに花が咲いたように笑みを浮かべました。
(*゚ー゚)「ならよかった!」
川ー川「うん、気にしないで」
そっと左手首を握りしめ、わたしはそう返しました。
白いシャツと紺色のブレザーの下に埋葬されたあなたを隠すように。
了
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