570 名前:名も無きAAのようです :2013/11/11(月) 05:32:21 ID:XlGEnIOk0
 
 同級生の彼女はどこかずれていた。
 顔の半分以上を覆う、オニキスを練り込んだかのような艶やかな黒髪に、その下から覗く真っ白な肌、物静かな雰囲気は一種のホラーかもしれない。そして突然、不思議な発言をするせいで人と少しずれている、なんて評価を下されている。
 しかも外見も手伝い、もはや奇異の目、と言っても差し支えの無い視線を向けられている。

 隣の席だけれど、面倒ごとは嫌いだから彼女とは絶対に関わってやるものか。そう決めていたのだが。

川д川「ね、流石さん、ポッキーゲームしませんか」

(´<_`;)「は?」

 下校を知らせるチャイムが鳴り、帰ろうとした時だった。彼女、山村さんに呼ばれ、告げられたゲームの誘い。
 確かに俺には彼女とか居ないし、今日と言う日には無縁な人間であることは確かだけれども。だからと言ってろくに話したこともない同級生とポッキーゲームをするのは話が別と言うものだ。

(´<_` )「……そういうのは好きな人とやるものじゃないか?」

 我ながらずれた答えを出したものだと、溜め息を吐いた。

川д川「私は好きですよ、流石さん。ですからポッキーゲームしませんか」

(´<_`;)「は!?」

 落ち着け、こういうときは自然数を数えれば、って違う、素数だ。
 教室にはまだ人がいくらか残っている。その中で山村さんは恥ずかしげもなく……あー、ええと、その、ともかく! まるで友人に伝えるかのように、口にするものだから、慌てているだけ。問題ない。

 俺がこう慌てているというのに山村さんは鞄に手を入れ、がさごそとポッキーを取り出した。ビニール袋ごと、雑に入れられただろうポッキーの赤がやけに眩しい。

571 名前:名も無きAAのようです :2013/11/11(月) 05:33:26 ID:d07wiIVM0

川д川「チョコ掛かってるところの方がいいですよね」

 取っての部分を少しくわえ、チョコ部分を軽く左手で支える山村さん。くわえる際に艶やかな前髪は耳に掛けられ、使い古されているだろうが、陶器のような白い肌と、見たことの無いくらいきらきらした黒目が目の前に現れた。
 些細な動作と、予想以上の素材に見惚れてしまっている自分が居て、頭を振る。

(´<_`;)「え、あ、や、ちょ、ちょっと待ってくれ。俺はポッキーゲームやらないぞ?」

川д川「えっ」

 宇宙の一部を切り取って、瞳に閉じ込めたような、そんなきらきらした目を俺に向けないでくれ。

川д川「どうしてですか?」

(´<_`;)「どうしてって、俺は山村さんのこと、あんまり知らないし」

川д川「じゃあこれから知ってください」

(´<_`;)「好きな人居るし」

川д川「画面を見つめるだけじゃ出てきませんよ?」

(´<_`;)「うぐ……や、山村さんのこと、嫌いじゃないけど好きでもないし」

川д川「…………」

 山村さんの言葉が止まった。きらきらした目は僅かに下を向き、くわえたポッキーをかりかりと短くして、飲み込んでいる。何かを考えているのか、何も考えていないのか、わからない。
 この隙に帰ってしまおうかと、ゆっくり後ろへ後ずさってみる。すると、胸ぐらを掴まれ、前へ引き寄せられた。

 きらきらした黒目と、長い睫毛が目の前にある。
 蜂蜜とチョコを混ぜたような、甘い匂いがする。
 かなり遠くから、誰かの声がする。
 ふにふにとした柔らかい、女の子の唇の感触がする。

 ――甘いチョコの味がする。

 
 つまり、は。

(´<_` )「……あ、え?」

「じゃあ私のこと、好きになってください。だから、」

 俺の耳元に口を寄せて、山村さんは囁いた。それから悪戯っぽく笑い、山村さんは繰り返す。

「ポッキーゲームしませんか」

 ……なるほど、最初から拒否権なんて俺には用意されてなかったか。

572 名前:名も無きAAのようです :2013/11/11(月) 05:35:35 ID:2K.jQTx20
三レスも要らなかった。

夜中にこんなネタを受信させた木星辺りが悪い。お粗末。


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