- 42 名前:名も無きAAのようです :2015/12/24(木) 23:05:04 ID:yn3mi1F60
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lw´‐ _‐ノv「……なんで聖夜に顔面崩壊男と勉強やらなきゃいけないんだ」
('A`)「お前が再々々々々試に落ちたからだな」
lw´‐ _‐ノv「全ては赤点が、赤点が悪いのです! ヨヨヨ」
('A`)「いや、悪いのはお前の頭だろ。ほらそこケアレスミスしてる」
lw´‐ _‐ノv「うおーわけわかんねー! なんで点Pさん動くんだよおとなしくしてろよ!」
('A`)「大人しくされたら日本教育が崩壊するんだよなぁ」
カリカリとシャーペンの芯が紙に後を残していく。それを脇目に俺は漫画の世界に戻った。
時計のカチリカチリという機械音と、安い石油ファンヒーターの唸り声だけが、耳に残る。
それだけの音が支配する空間。きっとそれが隣の少女の認識。俺の激しい心音はきっと聞こえていない。
自分の部屋に好きな女子がいるんだ。心臓ががなりたてたってしょうがないさ。
これは普通のこと、相手には聴こえているはずがない、落ち着け。落ち着け俺の心臓とマイサン。
起立はちょっと早すぎるぜジョニーボーイ。
しかし本当に静かだ。無言の空間。でも、気まずくはない。
部屋が既定の温度に到達し、ファンヒーターは排気音をゆっくりと静かに変えていく。
俺の心臓が目立ちそうで少し慌てる。大丈夫。聞こえるのは、時計の秒針と僅かな寝息……
lw´‐ _‐ノvぐおー
('A`)「勉強教わりに来て寝るなバカ」
- 43 名前:名も無きAAのようです :2015/12/24(木) 23:05:46 ID:yn3mi1F60
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lw´‐ _‐ノv「いやね、だってね。そもそも再々々々々試っておかしくないですか?」
('A`)「受かるまで何度も再試食らうシステムだからね。毎回問題同じだしね。むしろそんなに受けて問題覚えないほうがおかしいね」
lw´‐ _‐ノv「記憶力はコメの品種と味を覚えるのに使い切ってしまったゆえ……」
('A`)「お前、なんで進学校のうちにきたの?」
lw´‐ _‐ノv「VIP高の制服ええやん。可愛いやん」
('A`)「制服が可愛いからかよ」
lw´‐ _‐ノv「決して短くはないスカートから覗く太もも! 僅かに乱れたリボンタイ! そそる! ご飯3杯いけますわ!」
('A`)「惜しい。制服着た女子が可愛いからだった」
lw´‐ _‐ノv「そりゃあもう視姦に忙しくて授業なんか耳に入りませんわ、コメかっくらいますわ」
('A`)「さり気なく早弁してんじゃねえよ」
lw´‐ _‐ノv「早弁は置いといてさ。ここ教えて下さいよ兄貴へへっ」
('A`)「なんで急に三下なの? どれどれ……」
lw´‐ _‐ノv「ちょっとこの問題の漢字が読めなくて」
('A`)「数学だぞこれ。お前の頭ってマジで致命的なのな……」
ふざけながら、声が震えていない自信が正直なかった。
「ほら、この問題」と言いながら肩を寄せてくる少女を、長い髪越しに盗み見る。
肩と肩が触れ合う。柔らかな感触を二の腕に感じる。
掻き上げた前髪からシャンプーと何かが合わさった、女の子の匂いがかすかに鼻腔をくすぐる。
('A`)「これは「擦れ違う」だな。なんで読めねえんだよ」
lw´‐ _‐ノv「やだな、それくらい読めますよ」
(;'A`)「なんで聞いたのお前!?」
- 44 名前:名も無きAAのようです :2015/12/24(木) 23:06:28 ID:yn3mi1F60
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顔が火照っているのが、自分でもわかった。
至近距離にいた彼女の顔が、香りが幻覚となって離れない。
思わず俺は窓を開けて、「暖房利きすぎてない?」と誤魔化す。
lw´‐ _‐ノv「そう? 寒いから窓閉めて隣に戻ってこい」
('A`)「俺が暑いの。家主に文句いうんじゃありません」
lw´‐ _‐ノvノシ:;.:...「独裁だー。ヒトラーだー! 一揆起こすぞーおらー!」
('A`)「おらあじゃねえよいてえな、どっから出してるんだその米」
lw´‐ _‐ノv「目」
('A`)「オオゲツヒメかよ」
lw´‐ _‐ノv「それより休憩しない?」
('A`)「お前まだ2問しか解いてないからね? 明日再試だからね? 自覚ある?」
lw´‐ _‐ノv「おいおい兄貴。世の学生達は今冬休みだぜ? 学生の自覚があるのに、なんで学校行かなきゃいけないんだい?」
('A`)「てめえがまだ1学期の期末問題に躓いてるからだよ」
lw´‐ _‐ノv「あ、これ1学期の問題なんだ」
(;'A`)「今知ったのかよおせえよ。なんで入学できたんだお前」
lw´‐ _‐ノv「裏口、かな。……あ、待って今のマジっぽく聞こえるからナシ!」
('A`)「次の問題解いたら嘘だって信じてやる」
lw´‐ _‐ノv「ひでえ無理難題いいやがる!」
('A`)「これが無理なら、また再試だからな」
- 45 名前:名も無きAAのようです :2015/12/24(木) 23:07:10 ID:yn3mi1F60
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また、沈黙。今度は寝ないでカリカリと音が響いている。
なんつーか、自由奔放すぎるんだこいつは。時折、猛烈に無防備で、誘っているのかと血迷いそうになる。
いや、こいつに限ってそれはない。はずだ……。
lw´‐ _‐ノv「なー、ドクオってさー」
('A`)「んー?」
lw´‐ _‐ノv「童貞ー?」
('A`)「おう」
(;'A`)「……じゃねえよ! いきなりなんだよ!」
lw´‐ _‐ノv「いやほら、性なる夜にこんな色気のないのの面倒みてるって、よほど暇なのかと」
('A`)「るっせーな。ホントは忙しいんだっつーの。バイトからの応援要請蹴ってんだけど?」
lw´‐ _‐ノv「あ、マジ? 本気でごめんだわそれ」
('A`)「そう思うなら次で受かってくれー」
lw´‐ _‐ノv「次で受かっても2学期期末の再試がまたあるけどね」
('A`)「そっちはもう冬休み中になんとかしてくれ」
lw´‐ _‐ノv「っていうか、バイト大丈夫?」
('A`)「ああ、そっちは平気。ブーンが出るって言ってたし」
lw´‐ _‐ノv「ほーん……で、童貞?」
('A`)「まだ聞くかなこいつ。ここで漫画読みながらお前の相手してる時点で察してくれよ」
- 46 名前:名も無きAAのようです :2015/12/24(木) 23:07:52 ID:yn3mi1F60
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lw´*‐ _‐ノv「へー! ほー! ……まあ、知ってたけどね。ご立派なのにもったいない」
(;'A`)「えっなんで知ってんのお前。えっいつ見たの」
lw´*‐ _‐ノv「ないしょ」
なんだ、ブーンから聞いたのか? いや、男連中に見せるような趣味もねえぞ?
色々と焦りながら心当たりを探っていると、何かを少女がつぶやく。
lw´‐ _‐ノv「あ、じゃあそっか……」
('A`)「ん?」
lw´;‐ _‐ノv「あ、いやえっと、この問題教えて」
('A`)「ああ、何がわかんねえの?」
lw´‐ _‐ノv「なにがわからないのか? ……哲学だな」
('A`)「何がわからないのかわからないのね。哲学じゃねえよ重症だ」
問題の解き方を何度も教えて、数十度目にやっと理解されて、また漫画に戻る。
さっきから開いたページは佐藤が自分の腕を切り落とすシーンのまま、一時間以上経過している。
ページの上を目が滑って、中身が全然入ってこないのだ。
- 47 名前:名も無きAAのようです :2015/12/24(木) 23:08:34 ID:yn3mi1F60
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lw´‐ _‐ノv「……ドクオさ」カリカリ
('A`)「……んー?」ぱらっ
lw´‐ _‐ノv「せっかく勉強教えてくれてるし、ご褒美とかほしい?」
('A`)「ろくでもないもんだと思うからいらねー」
lw´‐ _‐ノv「そんなこと言わずにいじらしい」
('A`)「まず、ご褒美の内容を言えよ! 生命の危機とか発生しうるもんじゃねえよな?」
lw´‐ _‐ノv「うわっわっちの評価そんな低いのかよ」
('A`)「自覚しろよ」
lw´‐ _‐ノv「んーじゃあ例えば……」
そういった彼女はシャーペンのノックを唇の下に当てて、動きが止まる。
髪の毛の隙間から、白い首筋が僅かに覗く。
柔らかそうなピンクの唇は、リップグロスだろうか、光を虹色に反射していた。
lw´‐ _‐ノv「……」
('A`)「……」
ご褒美のキス、なんて言葉が、頭をよぎった。
唇を見つめている目線を慌てて離そうとするが、釘付けになって離れない。
彼女の目線が、こちらを捉える
lw´‐ _‐ノv「……」
('A`)「……」サッ
慌てて目線を外すが遅い。たぶん、気づかれた。
彼女が僅かに微笑んだ気がした。並んだ肩が、ゆっくりと近づく。
こそばゆい沈黙が、俺の腹の奥底をグリグリと抉る。
- 48 名前:名も無きAAのようです :2015/12/24(木) 23:09:16 ID:yn3mi1F60
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('A`)「あーそうだ、喉乾かねえ? ココアでいいなら入れてくるよ」
lw´‐ _‐ノv「えっあっ! じゃあ甘酒を!」
('A`)「あるかバカ。ココアだって言ってんだろ」
lw´‐ _‐ノv「ふん。甘酒も用意できないとは、愚民が」
(;'A`)「えーせっかく飲み物出すって言ったのに、なんでなじられてんの俺……」
部屋を出て、ドアを閉めて、一息つく。
脂汗が凄い。今の雰囲気、なんだ? まるで、まるで……いや多分童貞の勘違いだ。
仮に正解でも、勢いに任せてキスでもしたら通報されかねん。冷静になれ、どうせからかわれてるだけだ。
マグカップにココアの粉末を投げ入れてからミルクを注ぐ。
表面に浮かぶ粉末をスプーンで丁寧に沈めてから、レンジに入れて1分半。丁寧に沈めないと爆発するらしい。
手間はかかるが、ミルク100%が俺のジャスティスだ。
そんな作業に没頭してさきほどの妙な雰囲気を吹き飛ばすと、部屋に戻る。
すると、なぜか彼女は俺のベッドで丸まっていた。
('A`)「は?」
えっ? なんで寝てんのこいつ? 勉強は? 再試やばいんじゃないの?
机の上のノートには丸っこい字で
lw´‐ _‐ノv「明日の徹夜に備えて寝るから一時間したら起こしてヘタレ」
と、書かれていた。明日の徹夜って今日で受かれよ。明日も一夜漬けする気かよ。
('A`)「はあ……」
まあ、なんだ。せっかく入れたココアはもったいないけれど、あの雰囲気が続いたら心がどうにかしてしまいそうだった。
いい機会だと思うことにしよう。
サンタクロースも、嬉しいけれど妙に心労の溜まるプレゼントをしてくれたものだと、小さくため息をついた。
まあ、一緒に話して笑っているだけで、馬鹿みたいに幸せだからいいんだけれど……
('A`)「っていうか、なんでヘタレなんだよ……」
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