106 名前:名も無きAAのようです :2015/12/26(土) 00:11:50 ID:k4NuZngk0

 ジングルベル。ジングルベル。鈴が鳴る。今日は楽しーーー

ハハ ロ -ロ)ハ 「ーーーくないわね。一体私は何をしているのかしら?」

 そうボヤく私は寒い冬の夜の街でクリスマスケーキを売っていた。ミニスカサンタコスなんて正気とは思えない格好をして。

ハハ ロ -ロ)ハ「寒いわね。折角のクリスマスなのに今日はバイト。本当にやるせないわね」

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107 名前:名も無きAAのようです :2015/12/26(土) 00:13:14 ID:k4NuZngk0

 鬱屈した私のボヤキは雑踏に掻き消され、胡乱な目つきで夜の街を歩く人たちを見ていた。
 投げやりに私は店の前を横切るカップルに「ケーキ入りませんか?」と呼び込みをかけるが、カップルは私に朗らかに微笑み、見せつけるように腕を組んで雑踏の中に消えていく。

ハハ ロ -ロ)ハ「――y」

 カップルの姿が見えなくなると私は雑踏に紛れ込ませるように小声でボヤいた。

('、`*川「ん? 生牡蠣デー? ハロー。私、仕事が終わったら生牡蠣食べたい」

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108 名前:名も無きAAのようです :2015/12/26(土) 00:14:50 ID:k4NuZngk0

 私のぼやきをペニサスが耳ざとく拾う。
 私をクリスマスケーキの売り子のバイトに誘った張本人だ。
 均整のとれた体に二つ山をこれでもかと強調するようなミニスカサンタコスのペニサスは否が応でも客の目を引く。
 そんな格好で寒くないのだろうか?

ハハ ロ -ロ)ハ「違う。生牡蠣デーじゃなくて、私が喋ったのは―――Not my lucky dayだよ。意味はついてない。簡単に言えば厄日だな、になるわ」

(′、`*川「薬味? 生牡蠣の薬味ならレモン汁かける」

 とんちんかんな返答と一々ボヤキを説明するのかというやるせなさに頭が痛くなる。

ハハ;ロ -ロ)ハ「厄日って言葉知らないの貴女? この国に来て長くはないけど……ああ、ペニサスに説明しようとした私が馬鹿だったわ」

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109 名前:名も無きAAのようです :2015/12/26(土) 00:16:37 ID:k4NuZngk0

 説明を放棄した私は客を呼び込む。やる気を微塵も感じさせない無気力な声で。
 その姿にペニサスは酷いわね、とそれ以上私を構うことなく、ケーキを客に売っていった。
 因みに客の比率は9割が男だった。通りすがりのカップルが彼女からケーキを買っていたが男の眼はケーキよりも胸に目が行っていた。
 終始胸をガン見していた男に女が頬を千切り取らんばかりに捻りあげらていた。痛みに男が悲鳴を上げていた。
 内心でざまぁ、とほくそ笑む。

* * *

('、`*川「終わったわね。ああ、何から食べようかしら……」

 バイト終わりの帰り道。何気なく見上げた夜空には星と満月が輝いていた。
 3つケーキ箱に恍惚の笑みを浮かべるペニサスは今日の売上の4割を一人で売り上げた。
 好奇心から私が頑張った理由を聞くと。

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110 名前:名も無きAAのようです :2015/12/26(土) 00:17:59 ID:k4NuZngk0

('、`*川「ああ、それはね。私が店長に売り上げ一位を取ったら店長に給与のアップかケーキを3種類無料にするかをどっちか選んでとお願いしたの」

 見えないところでそんなことをやっていた知るのと同時にペニサスの交渉力の高さを垣間見たのと、実際に売上一位をとってしまうバイタリティに驚くべきか悩む。
 実際のところはペニサスの食欲の強さによるものだろう。色気よりも食い気な彼女らしい。
 言うなればーーー。

ハハ ロ -ロ)ハ 「ーー Bread is better than the songs of birds 」

('、`*川「えっ? 何か言った?」

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111 名前:名も無きAAのようです :2015/12/26(土) 00:21:25 ID:k4NuZngk0

ハハ ロ -ロ)ハ 「何でもないわ。お休みなさいペニサス」

 早く家に帰ってラーメンが食べたい。冷え切った体を芯から温める熱々のラーメンを。逸るものを抑えられない私は家路を急ぐがーーー

('、`*川つハハ ロ -ロ)ハ ゛

 誰かに襟首を捕まれ、私はされるがままに引きずられていた。

ハハ ロ -ロ)ハ「……離してくれないペニサス?」

('、`*川「こっちの台詞よ。パーティー前なのにいきなり帰るな」

ハハ;ロ -ロ)ハ「パーティー? 一人でパーティーでも何でも楽しめば? もう用事は済んだでしょう。家で私の塩ラーメンが待ってるのよ」

 抵抗虚しくペニサスに連行される。それから何度も家に帰りたい理由を幾つも並べても無視された。
 理不尽だ。しかめっ面雲一つ無い夜空を睨みつけていた。
 首を向けたペニサスは私を諭すようにーーー。

('、`*川「ムスッとしなさんな。子供じゃないんだから。ちゃんと塩ラーメンは用意してあるわよ」

ハハ ロ -ロ)ハ「……本当に?」

('、`*川「しかも限定の塩ラーメンを用意してあるわ」

ハハ ロ -ロ)ハ「行く……」

 物に釣られた気がしないでもないが、好きな食べ物の魅力には逆らえない。

('、`*川「ところでハローはさっき英語で何て言ったの?」

ハハ ロ -ロ)ハ「あぁ、アレの意味は『 鳥の歌よりパンの方がよい 』。言い換えるとーーー」

 ゛花より団子゛って言ったのよ。
 説明を聞いてあぁ、と納得する彼女を見て改めて思う。色気よりも食い気なペニサスらしいことわざだと。

         【ー了ー】


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