- 301 名前:この物語は :2013/05/20(月) 22:32:49 ID:HQ0V4qbk0
- ( ・∀・)「初めまして」
気がつくと、壁も床も天井も自分の影すらない白い空間にいた。
存在するのは自分と目の前にいる男だけだ。
口は動かず、視線も動かせず、ただただ黙って男を見つめている自分がいる。
そんな自分とは対照的に目の前の男は体を動かし軽やかに喋り始めた。
( ・∀・)「叶わぬ願いを祈り続けるお嬢さん」
( ・∀・)「その叶わぬ願い、叶えて差し上げましょうか?」
…この男は何と言った?
叶わぬ願いを叶える?
( ・∀・)「他の『お姫様』を蹴落として、あなたが唯一の『お姫様』になれたなら、
『王子』の僕が、願いを叶えて差し上げよう」
未だに状況が理解できていない。自分は今混乱しているのだと理解する。
そんな中、動かなかった視線が動く。
移った視線に映るのは自分に向かって差し出された男の手。
体はまだ、動かせない。
- 302 名前:この物語は :2013/05/20(月) 22:33:38 ID:HQ0V4qbk0
- ( ・∀・)「『王子』の手をとるのは『お姫様』だけの権利」
視線は男の手から離せない
( ・∀・)「『お姫様』だけが叶わない願いを叶えられる」
耳は男の声だけしか拾わない
( ・∀・)「手をとった瞬間に、あなたは『お姫様』になる」
だらりと下ろされていた手がピクリと動く。
そのまま上へと持ち上がり、男の手の近くでぴたりと止まる。
状況は未だ理解できない。
男の素性も知れない。
信頼もできない。
何もわからない。
( ・∀・)「さあ…」
しかし、自分はこの手を取るのだろう。
( ・∀・)「お手をどうぞ」
叶わぬ願いを、叶えるために
( ・∀・)「 」
- 303 名前:この物語は :2013/05/20(月) 22:34:21 ID:HQ0V4qbk0
- 静まり返った校舎。
教室内は沈みかけた太陽に照らされてオレンジ色に染まっている。
そのオレンジ色の空間には立ち尽くす自分と、机に軽く座っている彼女。
自分よりも窓側にいる彼女は白い肌を、黒い髪をオレンジ色に染めこちらを見ている。
逆光により表情はよくわからないが、いつもの通り可愛らしい笑顔を向けているのだろう。
教室に物音がひとつ。
彼女は座っていた机から降りて、こちらに少し歩み寄る。
思った通り彼女は笑顔であった。
ただ、いつもの通りの可愛らしい笑顔などではなく、
今までに見たことのない、彼女のキャラにはあまりに似つかない妖艶とでも言うべき笑顔だった。
笑い方ひとつでこうも印象というものはがらりと変わってしまうのか。
自分が彼女に抱いていた昨日までの印象は明日から持てそうにない。
彼女の足音だけが響く。
学校という場所はここまで静かであっただろうか。
そんなことを考えている内にも彼女は自分との距離を一歩また一歩と詰めている。
窓から入る太陽の光がまぶしくて、目を細める。
背後から夕日を浴びている彼女の顔は少し影がかかる。
細めた目には彼女の瞳が赤く光っている様に見えた。
彼女が話しかける。
先ほどまでの笑顔はどこへ消えたのか、いつも通りの笑顔の彼女。
唇から紡がれた鈴が転がるような声もいつも通りだった。
その通りではなかったのは、紡がれた言葉。
(*゚ー゚)「死ねばよかったのに」
毒のような言葉
- 304 名前:この物語は :2013/05/20(月) 22:35:25 ID:HQ0V4qbk0
- 景色は灰色に滲み、曇天が広がっている。
土砂降りの雨が灰色の空から落ちる。
落ちてきた雨はそのまま白波が立つ海へ落ちる。
砂浜には少女が立ち、その少女の表情は雨が隠してしまう。
傘も差さず、雨に濡れることも厭わず少女は立ち尽くしている。
だらんと脱力した彼女の右手には一振りのナイフが握られていた。
彼女が少し顔を上げる。ようやく見えた表情は虚ろ。
しかし眼だけはしっかりと私を見据え、捉え、離さない。
彼女の口が動く。
しかし雨の音と海の音の二つの水音で彼女の声は聞こえない。
彼女の足が動く。
水を吸った砂が形を歪め彼女の足を埋める。
彼女の目は動かない。
彼女の目は私から動かない。
彼女の口は動いている
私の耳には水の音しか聞こえない。
彼女は私に近づく。
お互い手を伸ばせば触れる距離まで彼女は来た。
彼女の口は動いている。
(*゚∀゚)「………」
彼女の声は、聞こえない。
- 305 名前:この物語は :2013/05/20(月) 22:36:10 ID:HQ0V4qbk0
- もう時計の針も頂上を刺そうという時間に何でこんな
高層マンションの屋上に女と二人っきりにならなきゃいけないんだ。
いくら最近暖かくなってきたからと言って真夜中に風を叩きつけられるのは
すこし厳しいものがある。寒い。
というか目の前の女だ問題は。
こんなクソ寒い所にご案内しやがって頭おかしいんじゃねえのか。
学校じゃ成績いいみてえだけど、気配りとか心配りとか出来ねえんじゃダメだな。
いるんだよな、たまに。こういう頭のいいバカって。
んでもってこのバカは屋上に来てからずっと背を向けっぱなしで
こちらを振り向こうという気配もなければ喋ってくるような雰囲気でもねえし。
なんだコイツ。照れ屋さんなのか?
誘ったは良いけど顔も見れないし何喋っていいのかもわからないシャイガールなのか?きめえ
月がキレイですねとか言うのか?知らねえし、月出てねえし。
頭のいいバカ面倒くせえな。
最初は強い風で長い黒髪がばっさばっさになってんの見て面白かったが
長い間見てたら飽きたし、寒いし、暇だし、進展ないし、暇だし、暇だし。
これはもう襲っていいレベル。
だって結構待ったし、超イイ子で待ってたし。静かに大人しく待ってたし。
誘われたってことは向こうも了承してるってことだもんな。
って思った途端にこっち向いたよ。
空気読めバカ。頭のいいバカ
川 ゚ -゚)「さて、君は私の出す五つの問題が解けるかな」
うっせぇバーカ
- 306 名前:この物語は :2013/05/20(月) 22:37:02 ID:HQ0V4qbk0
- 隣に座るふわふわとした、かわいらしい女の子がアタシの手を握ってきた。
いきなりの行動に彼女の顔を見るが、ニコニコと可憐な笑顔がそこにあるだけだった。
平日なだけあって、公園は閑散としている。聞こえるのは風によって揺らされた木の葉の音。
そしてたまに聞こえる鳥の鳴き声くらいだ。
遠くにある噴水が視界の端を掠めるくらいで近くを歩く人もいない。
普通の光景だ。
少女が二人で見つめ合い、手を取り合っている姿を除けばどこにでもある風景だったのだ。
それが突然終わってしまった。
静寂ではなく無音。今まで聞こえていた音は一切聞こえなくなった。
シンとする世界に彼女から目を離し辺りを見回す。
アタシ以外何も動いてはいなかった。
空を舞っていた木の葉の一枚も、落ちるはずだった噴水の一滴も、
何も
ピタリと、止まった世界。
動いているのはアタシと目の前のニコニコしている彼女だけ。
笑顔が可愛くて、か弱くて、優しい彼女。
ずっと羨ましかった。アタシも、そうなりたかった。
貴女みたいになりたかった。
ζ(゚ー゚*ζ「ずっと、一緒にいましょう?」
思考も、止まってしまいそうだった。
- 307 名前:この物語は :2013/05/20(月) 22:37:46 ID:HQ0V4qbk0
- いきなりだった。
前も、後ろも、下も上もすべてが茨に囲まれた。
何処からか出てきた茨に彼女は飲み込まれていった。
私は茨によって吹き飛ばされたせいで肌に傷がついてしまった。
彼に褒められた自慢の肌なのに。
絆創膏でも貼っておいたら心配してもらえるかしら。
いえ、そのまま何もしないでいたら彼に絆創膏を貼ってもらえるかもしれない。
優しい彼の事だ。すぐに気づいてくれるだろう。
それにしても、どうすればいい?
いきなり標的が引き篭もりになってしまった。
外に出してあげたいが、場所すらもわからない。
目の前の茨で出来た壁を壊そうと手をかけたが
複雑に絡み合っていて通れるほどの穴を開けられそうにもなかった。
それ以上は彼に褒められた自慢の肌が痛みそうだったので試していない。
茨の迷路を歩いてもよかったが、周りは全て茨という風景でゴールまで辿り着けそうになかったし
歩きにくく、それだけでも体力を消耗しそうだった。
体力には自信がなかった。
こんな事なら彼と一緒にジョギングをしておくべきだった。
後悔しても遅いので何とか彼女を引きずり出す方法を考える。
そんな中、どこからともなく彼女の飄々とした余裕そうな声が響く。
lw´‐ _‐ノv「諦めて私を探しなさいよ。なに、見つけて1回針を刺せば一発コロリよ」
1回と言わず何回でも刺してあげる
- 308 名前:この物語は :2013/05/20(月) 22:38:35 ID:HQ0V4qbk0
- 廃ビルに響いているのは狂った女の笑い声。
さっきすれ違った時に見た彼女の顔を思い出す。
何て楽しそうに人に凶器を向けるのだろう。
まるで子供のおもちゃの様に振り回す。
新しいおもちゃを手に入れた子供は実に嬉しそうだ。
しかし、振り回しているものは新しいおもちゃではなく
切れ味抜群の刃物だ。遊びでは済まされないのだ。
彼女の声が響く。楽しそうに歌まで歌っている。
恐らく彼女がジョーカーなのだろう。
この戦いで、唯一願い事を持たない女の子。
『お姫様』じゃない人。
負けるわけにはいかない。
けれども足が動かない。体の震えが止まらない。
悪い人は今まで見たことがある。
けれども彼女は悪い人ではない。
怖い人なのだ。
彼女が怖くて仕方がない。
初めて見る本当に怖い人…
おもちゃを振り回しながら彼女は私を探している
从 ゚∀从「早く出てこねえと腹引き裂いちまうぞ〜。いや、皮を剥ぐのもいいかもな〜」
もしかして、新しいおもちゃは私なの?
- 309 名前:この物語は :2013/05/20(月) 22:39:34 ID:HQ0V4qbk0
- 走り回る彼女を追う。
彼女が使える攻撃はもうすべて見た。
落ち着いていれば避けられない攻撃はない。
始まってからかなりの時間が経ってしまった。
体力も精神も底を尽きかけているのではないか。
あとは恐らく根性だけで体を動かしているのだろう。
彼女が逃げた先は学校だ。校門を抜け校庭を走る。
隠れるところもないトラックを突っ切る。
すっかり暗くなってしまったが彼女の明るい金髪が
私に居場所を教えてくれている。
懸命に揺れる髪を追って私も走る。
体力にまだ余裕はある。学校に逃げて、どうするつもりなのか。
恐らくどこかに身を潜めるのだろう。そして体力の回復を待つ。
実につまらない戦法だが間違ってはいない。
個人的な願望を言ってしまえばそういった延命処置は暇でしかないので止めていただきたいが。
そう考えていると彼女は玄関の手前、校舎時計の真下で足を止めた。
肩で息をしながらくるりとこちらに振り替える。
どこからか鐘の音が聞こえる。
時計に目を向けると二つの針が頂点を指していた。
ξ゚听)ξ「12時の、鐘が鳴った」
魔法は、解ける時間だろう?
- 310 名前:この物語は :2013/05/20(月) 22:40:22 ID:HQ0V4qbk0
主人公を、選択してください
ξ )ξ (* ー ) 川 - ) (* ∀ ) ζ( ー *ζ lw´ _ ノv 从 ∀从
- 312 名前:この物語は浦島太郎のようです :2013/05/20(月) 22:57:11 ID:HQ0V4qbk0
- 主人公が決定しました
ξ )ξ (* ー ) 川 - ) (* ∀ ) ζ(゚ー゚*ζ lw´ _ ノv 从 ∀从
タイトルが、決定しました。
この物語は、浦島太郎のようです。
まあ書かないけどね
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