615 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 19:53:18 ID:.txmPNuY0
 
 
 
 
 ○登場人物と能力の説明
 
 
 ( ^ω^)
 →この世界の 『作者』 。
 
 (゚、゚トソン 【暴君の掟 《ワールド・パラメーター》 】
 → 『選択』 を自称する少女。
 
 
.

616 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 19:53:50 ID:.txmPNuY0
 
 
 
 
 
     ◆  第四十二話  「vs【暴君の掟】U」
 
 
 
 
( <●><●>)「お断りします」
 
( ;^ω^)「ど、どーしてだお!」
 
( <●><●>)「私にそのようなことをするメリットがない」
 
(゚、゚トソン「……」
 
 
 この世に、完全だの、絶対だのといった言葉は存在しないそうだ。
 昔から教訓めいた事としてそれは語り継がれてきた。
 実際に、完全だの、絶対だのといった存在はこの世にないのかもしれない。
 
 だが、あえてこの世にそういったものが存在していたとするなら。
 おそらくは、この男にそのうちの大半が当てはまるのだろう。
 それほど、目の前にいる男は、完全で、絶対という言葉が似合う男だった。
 
 
 その名をゼウス、裏社会を統べる全知全能のこの男は。
 
 
.

617 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 19:54:22 ID:.txmPNuY0
 
 
 
  「人外」 という言葉がもっともよく似合う男だった。
 その体型からは物理的に放つことのできないであろう力を放出し、
 およそ人間とは思えない頭脳を有しては、人間にはできない動きを見せる。
 
 また、人間とは感情を有することが一番の特徴であった筈なのに、
 この男は、人間のなかでももっとも有する感情が少ないであろうとすら思われるほど
 非情で、非道で、冷酷で、冷淡で、無情で、無慈悲で、仏心の持てない男なのだ。
 
 動けば、物理法則を無視するが如き瞬間移動を見せる。
 そのまま、鋭利な刃物と貸した手を相手の急所に食い込ませ、即座に勝負を決める。
 それは瞬殺ではなく、もはや 「即殺」 。
 これは、彼の化け物じみた才能と能力だからこそ成すことのできる動きであった。
 
 出会えば、一撃を喰らうことは避けられない。
 その一撃を喰らえば、一般人や特に抜きん出た力を持たない 『能力者』 程度なら即死になる。
 もし、辛うじて生き長らえたとしても、彼の追撃と有する 《特殊能力》 が、それを許さないだろう。
 
 誰が呼んだか、【連鎖する爆撃 《チェーン・デストラクション》 】。
 多少でも負傷を与えることができたならば、その相手に無限に 『爆撃』 を見舞うことができる、
  「即殺」 を旨とするゼウスに似合った、まさに超高速戦に適したとも呼べる能力で、
 彼がその戦闘力とこの能力を持っている限り、五分、三分と戦いを長引かせることは普通ならば不可能なのだ。
 
 加えて感情がない。
  「殺す」 ということに関しては、この上ない人材だ。
 それが、ゼウスという男であった。
 
 
( <●><●>)「世界の崩壊…… 『選択』 ……」
 
( <●><●>)「そんなものを私が相手取る必要など、ない」
 
 
.

618 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 19:54:59 ID:.txmPNuY0
 
 
 
( ;^ω^)「世界が崩壊するってことは、つまり自分の命が奪われるってことだお!」
 
( <●><●>)「この星が崩壊を迎えるということは、即ち己の死を迎えるということ。
          『選択』 の存在に関係なく、それは甘受しなければならないものでしょう」
 
( ;^ω^)「それは自然的に起こるなら、の話だお。
.       『選択』 が、意図的に世界を壊そうとしていたなら――」
 
( <●><●>)「そもそも、私が嘗て、 『拒絶』 と戦うために彼らと手を組んだ理由、わかっているのです?」
 
( ;^ω^)「………え?」
 
 
 突如として放たれた質問。
 予想していなかったため、思わず内藤は黙った。
 
 
( <●><●>)「私が、直接的に狙われたから」
 
(゚、゚トソン「…」
 
( <●><●>)「 『能力者』 狩りの一環だろうと、私は彼らに直々に命を狙われた」
 
( <●><●>)「また、相手は私一人では到底敵うことのない規格外たち」
 
( <●><●>)「このような状況だったからこそ、私は手を組まざるを得なかったのです」
 
 
                   ワルキューレ
( <●><●>)「……しかし、 『 選 択 』 など、私にはなんの関係もありませんね」
 
 
.

619 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 19:55:38 ID:.txmPNuY0
 
 
 
( ;^ω^)「間接的だろうと直接的だろうと、 『選択』 によって世界が崩壊する!」
 
( ;^ω^)「つまり、彼女たちが、間接的にあんたをも殺そうとしてるんだお!」
 
( <●><●>)「私を狙うならいいでしょう。 しかし、相手方の標的が世界、だとしたら。
         やはり、私がメリットもなく戦う意味はない」
 
( ;^ω^)「でも――」
 
( <●><●>)「それに」
 
( ;^ω^)「ッ!」
 
 
( <●><●>)「星ひとつを壊すなど、並大抵の者にはできない」
 
( <●><●>)「もし、仮にその 『選択』 たちが世界を壊すことに成功する、とするなら」
 
( <●><●>)「どの道、私が相手になったところで、まるで歯が立たないでしょう」
 
( <●><●>)「星に勝つということは、星以上の力をその単身に宿していることになるのだから」
 
 
.

620 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 19:56:10 ID:.txmPNuY0
 
 
 
(゚、゚トソン「それは違いますよ」
 
( <●><●>)「………」
 
 
 それまで黙っていた元 『拒絶』 のトソンが、口を挟む。
 いきなりの干渉だったため、ゼウスもすぐに反応は見せず、出方を窺った。
 
 見て呉れに限って言えばただの少女に過ぎない。
 だが、その内側には、眠った狂気と醒めたスキルが宿されている。
 ゼウスとて侮ることのできない相手だったため、ゼウスは様子を窺ったのだ。
 
 
(゚、゚トソン「第一、説明がいちいち粗いです」
 
( ;^ω^)「ぼ、僕が悪いのかお?」
 
(゚、゚トソン「当然。 そもそも、 『選択』 の目的はこの星を破壊することではありません」
 
( ^ω^)「え……?」
 
( <●><●>)「……」
 
 
.

621 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 19:56:41 ID:.txmPNuY0
 
 
 
 内藤の反応を見て、今までずっと勘違いしていたのか、とトソンは呆れた。
 焦っていたこと、加えてトソンの話によってパニックを引き起こしているだろう
 ということくらいははじめから予想できていたのだが、実際にそうだったとなると扱いに困ったのだ。
 
 
(゚、゚トソン「 『選択』 、ワルキューレ」
 
(゚、゚トソン「私も、一応それに属するのですが……彼女たちには、ある共通点があります」
 
( ^ω^)「……共通、点。」
 
(゚、゚トソン「簡単です」
 
 
 
                ワルキューレ
(゚、゚トソン「彼女たち、 『 選 択 』 は選ばれている=v
 
(゚、゚トソン「あらゆる点において、 『運命』 を味方につけているのです」
 
 
 
.

622 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 19:57:13 ID:.txmPNuY0
 
 
 
( ^ω^)「…… 『運命』 」
 
 ぽつり、と内藤が言葉をこぼす。
 このとき網膜に浮かんでいたのは、少女、ですらない。
 ある一人の男だった
 
 とにかく、運命に見放されたとしか言えない男。
 周囲に無差別に無意識に運の歪みをもたらす、 『能力者』 でも 『拒絶』 でもない男。
  『拒絶』 との戦いが終わってから、彼はどこに行ったのだろう。
 ふと、内藤はそんなことを思っていた。
 
 
(゚、゚トソン「―――同じ運命ではありますが、違います」
 
( ^ω^)「…?」
 
 
 網膜に浮かべていた人物像が見られたのだろうか、トソンが否定した。
 
 
(゚、゚トソン「とにかく、優遇されている≠フです。 それも、目に見えないなにかによって」
 
(゚、゚トソン「例の 『英雄』 のように意識して優遇されている≠フではなく、
.       時の流れが目に見えないように、同じく存在の時点で既に優遇されている」
 
(゚、゚トソン「言い換えれば、 『運命』 を自分に引き寄せるだけの力が、彼女たちには、ある」
 
 
.

623 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 19:57:45 ID:.txmPNuY0
 
 
 
( ^ω^)「………??」
 
(゚、゚トソン「……」
 
 
(゚、゚トソン「べ、別にここはどうでもいいのです。 問題は……」
 
 
 
 
 
      ワルキューレ
(゚、゚トソン「 『 選 択 』 の皆が集うと、 『運命』 の歪みが発生する」
 
                ラグナロク
(゚、゚トソン「それが……… 『 崩 壊 』 。」
 
 
 
 
 
 
 
 
.

624 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 19:58:23 ID:.txmPNuY0
 
 
 
( <●><●>)「―――成る程」
 
( ^ω^)「! わかったのかお?」
 
( <●><●>)「自然の法則をみだりに乱したりしては、異常が起こる。 わかりますよね?」
 
( ^ω^)「…? ま、まあ」
 
( <●><●>)「たとえば、外来魚なんかがそれです。
         本来の食物連鎖の環境が、たった一匹の魚によって乱され、法則が変わる」
 
( <●><●>)「 『選択』 とやらが、すなわちその 『運命』 における外来魚なのです」
 
( ^ω^)「???」
 
( <●><●>)「………」
 
 
         ワルキューレ
( <●><●>)「 『選択』 は、 『運命』 を自分に引き寄せる体質的な力を持っている」
 
( <●><●>)「つまり、不当に、 『運命』 を改竄する力を持っているというのです」
 
( <●><●>)「不当に 『運命』 の形が歪められる、ということ」
 
 
(゚、゚トソン「そして、単体だったり数人が並んだところではその歪みは小さいものの……」
 
(゚、゚トソン「もし、皆が集ってしまえば、まず間違いなく、 『運命』 は崩壊する」
 
(゚、゚トソン「その瞬間、世界の規律が崩れてしまい、そのまま破滅への一途を辿るのみ、となってしまうわけです」
 
 
.

625 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 19:59:00 ID:.txmPNuY0
 
 
 
( ^ω^)「…………なんとなく、わかった」
 
 なんとなく、とは言ったが、いまの説明で、内藤はその全貌を理解した。
 もともと自分が練った設定というだけあって、このことを理解するのにはさして苦労しなかった。
 
 だが、それでも声が落ち込んでいて、 「なんとなく」 だのと言った理由は、
  『拒絶』 との戦いを控えていたときと同様で、とにかく気が気でなかったためである。
 
 前回はゼウスたちが殺されることが一番の懸念だったのだが、
 今回は、この星が破壊されることが、一番の懸念となる。
 
 数人の命と、一つの星。
 思いいれなどがあったとしても、やはり後者のほうが圧倒的に懸念にしては重すぎた。
 だからこそ、認めたくない一心で、しかし認めなければならないその現状を受け入れるがために、
 そんな、晴れやかでない調子で応えるしかなかったのだ。
 
 
 
( <●><●>)「………そして」
 
( ^ω^)「なんだお?」
 
( <●><●>)「今の説明を聞けば、おわかりいただけたと思います」
 
( ^ω^)「なにが?」
 
( <●><●>)「私が手を貸すメリットが、まるでないということですよ」
 
 
.

626 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 19:59:33 ID:.txmPNuY0
 
 
 
(゚、゚トソン「……」
 
( ;^ω^)「だから、え、ええと……!」
 
 
 それでも内藤は、説得をやめようとしない。
 戦うということにおいて、ゼウス以上の心強い味方は存在しない。
 前述のとおり、純粋な戦いならば、ゼウスの上を行くものは存在しないためである。
 
 ゼウスを圧倒的に上回るスキルを持つ 『拒絶』 も、ただ戦うことに関しては上につくことはできないだろう。
 彼らの場合、必ず、戦いのどこかに手加減が必要となるからだ。
 圧倒的過ぎる力の代償に、満たされることが必要となっていた。
 
 そういった意味で、感情を制御できるゼウスは、なんとしてでも味方にしておきたかったのだ。
 自分が直々にこうして頼めば、あるいは手を貸してくれる、と内藤は思っていた。
 思っていた、だけに、内藤は、退くに退けない状況にあった。
 
 
 しかし、トソンは違った。
 内藤がゼウスに対して持っている信頼を、トソンはまるで持っていないのだ。
 どうしても共闘を好ましく思えないのなら、そこまで強要する必要もない、と。
 
 
(゚、゚トソン「そうですか」
 
( ;^ω^)「と、トソン!?」
 
 
.

627 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 20:00:03 ID:.txmPNuY0
 
 
 
( ;^ω^)「そうですか、って、こいつがいなかったらたぶん 『選択』 は止められないお!」
 
(゚、゚トソン「止める気がなければ、どれだけ力があろうと一緒。
.       むしろ、ただの足手まといになるだけの、お荷物です」
 
( <●><●>)「私がお荷物、か」
 
(゚、゚トソン「? 事実を言ったまでですが」
 
( <●><●>)「事実とは、なにをも」
 
 
 直後、ゼウスが動いた。
 
  「不意打ち」 だ。
 ゼウスの常套パターンにして、 「即殺」 に繋がる必勝パターン。
 ゼウスを前にしている場合、一瞬の気の許しが死に直結する。
 その理由が、この不意打ちに集約されていた。
 
 人間でありながら、小型の虫を彷彿とさせる初速。
 停止させておいた、新幹線を映してあるビデオをいきなり再生させたような。
 物理法則を完全に凌駕しかねないその動きで、トソンの胸、心臓の部位を抉りにかかった。
 
 
.

628 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 20:00:41 ID:.txmPNuY0
 
 
 
 だが。
 
                 ワルキューレ
(゚、゚トソン「一応、私も 『 選 択 』 なのです」
 
( <●><●>)「   ……。」
 
 
 
 
(゚、゚トソン「散々隙を見せてやっているのに傷ひとつつけられないようでは、
.       『選択』 と戦うにおいて、全くのお荷物としか表現のしようがありませんね」
 
(゚、゚トソン「こんな攻撃……避けるまでも、ない」
 
 
 
 
( ;゚ω゚)「  ―――…ッ!?」
 
( ;゚ω゚)「ゼウスの手刀を……受けて無傷≠セと!?」
 
 
 トソンは、避けるどころか、胸を張って、その攻撃を受け止めた。
 心臓が抉られるかと思いきや、それ以前にゼウスの手刀は食い込みすらしていなかった。
 
 
.

629 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 20:01:13 ID:.txmPNuY0
 
 
 
( <●><●>)「……」
 
( <●><●>)「なんだ、この能力……スキルは」
 
( ;^ω^)「ど、どうしたんだお?」
 
 
 負け惜しみでもなく、言い訳でもなく。
 ただ純粋にゼウスは、彼女の躯に、違和感を感じていた。
 
 自分の攻撃が全く効かなかったことが恥ずかしかったのではない。
 それは、確かな違和感だったのだ。
 
 
( <●><●>)「この世に存在する硬度ではない=v
 
( <●><●>)「貴様、なにをした」
 
 
 そう言いながら、ゼウスは手を退く。
 手が形成していた刃物は、若干曲がっていた。
 
 
.

630 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 20:01:47 ID:.txmPNuY0
 
 
 
 それに対してトソンは、
 自慢するでも卑下するでもなく、
 ただそれが当たり前であるかのように、言った。
 
 
(゚、゚トソン「いまのあなたの手刀……
.       ざっと、真空を作り出しかねない程の威力と速さがありましたね」
 
 
 
 
 
 
 
 
           ワールド・パラメーター
(゚、゚トソン「だから、 【 暴 君 の 掟 】。」
 
 
(゚、゚トソン「私の躯、今はダイヤモンドの百七十倍は硬い≠ナすよ」
 
 
 
 
 
 
 
.

631 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 20:02:25 ID:.txmPNuY0
 
 
 
( ^ω^)「―――ッ!」
 
( <●><●>)「意味が、わからないな」
 
( ^ω^)「いや、待て!」
 
( <●><●>)「……もしかして、ご存じがありましたか」
 
( ^ω^)「違う! 思い出した=I」
 
 
( <●><●>)「…?」
 
(゚、゚トソン「……思い出した?」
 
 
 
 
( ^ω^)「【暴君の掟】!」
 
( ;^ω^)「拒絶するものは――忘れた!」
 
( ^ω^)「でも、いい! 概要は、たった今、思い出した!」
 
 
 
 
( ^ω^)「つまりは単位操作=I」
 
( ^ω^)「トソンはたった今、衝撃を受ける部分の硬度の単位≠、改竄したんだお!」
 
 
 
.

632 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 20:03:01 ID:.txmPNuY0
 
 
 
( <●><●>)「単位……」
 
(゚、゚トソン「………。」
 
 
 久々に見られた、内藤の解析。
 それまで忘れていたものを、実物を見ることで思い出したのだ。
 その言葉から、あやふやで確信の持てなさそうな不安は見出せなかった。
 
 つまり、これでこその 『作者』 なのだ。
 トソンは肯定も否定もしないが、内藤の発言の様子を見る限り、おそらくは、正しい。
 だからこそ、トソンも、する意味のない肯定はするだけ無駄、と考えたのだろう。
 
 
( ^ω^)「たとえば、パスカルっていう、圧力を現す単位がある」
 
( ^ω^)「十パスカルの圧力を相手に与えてもどうにもならないけど、
      このとき、トソンは……パスカルを別の単位にする≠だお」
 
( ^ω^)「別の単位、って言うけど、その参照先の単位は、自分で適当にでっち上げる。
      たとえば、 『トソン』 という新しい単位をつくって、一トソンで五十七万八千パスカルと定義したりして……だ」
 
( <●><●>)「!」
 
 
 
 
( ^ω^)「そうすれば、あら不思議!」
 
( ^ω^)「軽く突き飛ばしただけなのに、
      ダンプカーが突っ込んでくるよりもとんでもない圧力が、
      相手にとたんに襲いかかってくるわけだお!」
 
 
 
(  ゚ω゚)「究極の恣意性を持つスキル!
        ……それが、ワールド・パラメーターッ!」
 
 
 
.

633 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 20:03:37 ID:.txmPNuY0
 
 
 
 
 
(-、-トソン「………合格。」
 
( ;^ω^)「トソン?」
 
( <●><●>)「…」
 
 
 内藤が言い終えると、トソンは踵を返して、帰路の方角に向かった。
 風に、後ろで束ねた髪を委ねる。
 目を閉じ、静かにクールに去っていく様を見て、内藤は急にどうした、と思った。
 
 ゼウスは屋敷の入り口に立っているままだ。
 内藤が、その手前で、あたふたとしている。
 
 が、トソンは、もう先に帰ろうとしていた。
 ゼウスに対する用が、全てなくなったからだろう。
 内藤とて彼女をほうっておくわけにはいかないため、否応なく彼女の後を追いかけるしかなかった。
 
 残されたゼウスは、二人の後ろ姿を見送った。
 特になにか、これといった感情があったわけではない。
 ただぼうっと、意味もなく、背中を見送っていた。
 
 揺れる後ろの髪まで見えなくなったときに、ゼウスは屋敷に引き返した。
 そのまま、若干顔を俯けて、ちいさく口を開いた。
 
 
 
 
( <●><●>)「………」
 
( <●><●>)「ワルキューレ……か」
 
 
.

634 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 20:04:26 ID:.txmPNuY0
 
 
 
 

 
 
 
( ;^ω^)「―――ケーッキョク、ゼウスは諦めたのかお!」
 
(゚、゚トソン「そもそも、たまたまこの前まで関係があったから頼ってみただけだろうに」
 
( ;^ω^)「じゃあ、どうするってんだお!  『選択』 の件は!」
 
(゚、゚トソン「………そもそも、逆にあなたがそこまで 『選択』 のことを気にかけるのが気がかりなのですが」
 
( ^ω^)「えっ……?」
 
 
 唐突に言われ、内藤は一瞬どきっとした。
 彼が直接戦うわけではないとはいえ、本来ならばゼウスのように全くの他人、部外者であるのだ、内藤は。
 だが、それでもこうしてトソンに付き添って、 『選択』 との戦いを想定してくるというのは、理由なしにしては奇妙なことだった。
 
 しかし、だからといって、これといった事情があるわけではないのだ。
 そもそも、トソンが 『選択』 を止めたがる理由もわからないのだが、
 内藤は内藤で、この件に付き合いたい理由は、たった一つの些細な点しかなかった。
 
 今まで、幾度となく考えてきたこと。
  『選択』 は、 『拒絶』 と一緒で、避けては通れない関門であるのだ。
 パラレルワールドから抜け出すには、これらの関門を潜り抜けなければならない。
 これらを放置してこの世界から脱出するのは、不可能ではないにせよ、内藤個人としては、できなかった。
 だからこそ、先にこういった要素を全て取り去らなければならなかったのだ。
 
 
.

635 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 20:05:02 ID:.txmPNuY0
 
 
 
 ――それを理由として言うと、トソンは微かに口角を吊り上げた。
 トソンが笑う姿は想像だにしていなかったため、内藤は少し奇妙な気持ちになった。
 風に髪を流させる麗しい横顔を見せたまま、トソンは言った。
 
 
(゚、゚トソン「……変に責任感があるのね」
 
( ;^ω^)「………責任感、かお……?」
 
(゚、゚トソン「もしほんとうに帰られる、脱出できるなら、さっさとそうすればいい」
 
(゚、゚トソン「もっとも、そのパラレルワールド云々の話がもはやおとぎ話ですが、ね」
 
( ;^ω^)「パラレルワールドの話はほんとうだお。 それはそうと……」
 
( ;^ω^)「目の前の問題は、ほうっておくわけにはいかないお」
 
(゚、゚トソン「ほんとうにそれが、理由かしら」
 
( ;^ω^)「………え?」
 
 
 
(゚、゚トソン「あなたは、この世界から抜け出さない理由をこじつけたいだけじゃないの?」
 
 
.

636 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 20:05:40 ID:.txmPNuY0
 
 
 
( ;^ω^)「……え?」
 
(゚、゚トソン「………なんでも、ありません。 次に行きましょう」
 
( ;^ω^)「つ、次、って……?」
 
(゚、゚トソン「言うまでもありません。 『英雄』 ですよ」
 
( ;^ω^)「あいつがどこにいるのか、知ってんのかお?」
 
(゚、゚トソン「これでも、バーテンです。 情報通なのですよ」
 
( ;^ω^)「客、 『拒絶』 の面々しかいなかったのに?」
 
(゚、゚トソン「…… 『レジスタンス』 くらい、私だって知ってます」
 
( ;^ω^)「あ、ああ……」
 
 
 トソンが少しふくれっ面を見せながら言った、 「レジスタンス」 。
 そういえば、ハインリッヒは 『英雄』 である以前に第三勢力の長でもあったな、と内藤は思い出した。
 彼女と話がしたいのであれば、まずレジスタンス本部に向かえばいいのだ。
 
 そんな簡単なことに気づかなかった自分が鈍感なのか、トソンの機転が利いたのか。
 わからないが、とにかくは行き先が決まっただけでよし、とした内藤だった。
 
 
.

637 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 20:06:25 ID:.txmPNuY0
 
 
 
 

 
 
 
(゚、゚トソン「……なんだと?」
 
   「お、お許しください!」
 
 
 ハインリッヒは、戦闘狂である以前に、一人の政治家――的存在である。
 この悪政を正すために結成された 『正義』 の集団、 「レジスタンス」 。
 その頂点に 『英雄』 として位置し、今もなお悪政に立ち向かう――裏でクーデターを狙っているのだ。
 
 表向きには市民の強い味方ということになっているため、その窓口はゼウスの統べるそれとは違ってひどく広い。
 ホームページなんかが掲載されているほどで、 『英雄』 に会えるかどうかは別として、コンタクトを取るだけなら簡単なのだ。
 トソンも当然そのことを知っていたようで、ゼウスの協力が期待できなくなった今、こうしてレジスタンス本部へと足を運んでいた。
 
 焦り制止を促す内藤を無視し、トソンは建前上の本部に入るやいなや 「ハインリッヒを出せ」 の一点張りを見せた。
 最初は愉快犯かただの熱狂的なファンだろうと思ったのだろう、受付係は優しく引取りを促した。
 
 しかし、トソンとてこう扱われることはわかっていた。
 そのため、ハインリッヒに会わせることができないと聞いた瞬間、トソンは隣にあった壁を粉砕した。
 嘗てのゼウスやネーヨがしたそれとは違う、まさに 「爆散」 。
 鼓膜が吹き飛びかねないような爆音とともに、そこにあった壁は消えて≠オまった。
 
 
 【暴君の掟】によって、トソンの放った拳の威力が数千倍に跳ね上がったのだ。
 ポップコーンでも弾けたかのように、殴られた箇所は砕かれた。
 
 
.

638 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 20:07:17 ID:.txmPNuY0
 
 
 
 トソンのその動きを見てテロリストか何かだと判断した受付は緊急ベルを鳴らした。
 騒ぎを聞きつけた警備員や戦闘員らしき人物もわいてくる。
 それを煩わしく思ったトソンは、時間も 『操作』 して、その場にいた敵≠蹴散らした。
 
 ここで皆を爆殺≠オなかったのは、トソンのせめてもの仏心だろう。
 皆、重い一撃をもらったことで気絶し、地に倒れていっただけだ。
 騒がしいのを嫌うトソンは、あくまで 「彼女の思う」 穏便なかたちで話を進めようとしたのだ。
 
 唯一残しておいた受付係に、トソンが視線を遣る。
 一瞬のうちに味方が倒れてしまった現状を見て、これはただ事ではない、と判断した。
 つか、つか、とトソンが歩いてくるのを見て、その顔が露骨に歪み、涙も情けなく流す。
 それを好機と見たトソンが、 「これが最大の譲歩だ」 と言ってから、もう一度ハインリッヒとの面会を要求した。
 
 しかし、好機には違いなかったのだが、そう都合よく事は運ばなかった。
 受付係はトソンに刃向かう気力などまるであらず、このまま押せば無理やりにでも面会が叶いそうな雰囲気でこそあったが、
 そもそも、受付係とて、席を外しているハインリッヒ≠ノ客人を通すわけにもいかなかったのだ。
 
 
   「だから、 『英雄』 は只今、席を外しておりまして!」
 
(゚、゚トソン「……なるほど、こういう時はそう言うように、とマニュアルに書かれてあったか」
 
   「ほッ――ほんとうです!! あ、あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」
 
 
 受付係が言うのを聞いて、トソンは相手の首を優しく″iめる。
 アヒルが喉を絞められたときのような声を出して、受付嬢はもがいた。
 
 辛うじて息ができるように加減してはいるが、それでも苦痛は続く。
 ただ隠しているだけなら、十秒もすればじきに吐くだろう、そう思った上での交渉≠セった。
 
 
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639 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 20:07:56 ID:.txmPNuY0
 
 
 
 だが、十秒経っても二十秒経っても、吐こうとしない。
 それどころか、意識が遠退いてきたのか、受付係は声すら出さなくなりつつあった。
 
 ――ほんとうに出ていってるのか。
 そう信じて、トソンはとりあえず、首を離した。
 解放されたとたん、受付係は床にくずおれては大きく息を吸って、自分が今生きていることを確かめた。
 
 その動きを見届けた上で、トソンが彼を見下ろした。
 受付係は身体を震わせた。
 
 
(゚、゚トソン「……窒息死がいいか?」
 
   「ほ、トうに、イナいん……です! 」
 
(゚、゚トソン「肺にちいさな穴を空けたら、気持ちいい窒息死が体験できるが」
 
   「ゆ、るし―――」
 
 
 
 
   「なにしてるの?」
 
 
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640 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 20:08:30 ID:.txmPNuY0
 
 
 
( ;^ω^)「……?」
 
(゚、゚トソン「誰だ」
 
 
 内藤も、トソンも、受付係も、声のした方向を見た。
 向こうのほうから、騒ぎを聞きつけたようで、また誰かがやってきたのだ。
 
 だが、結果論的に言えば、彼女≠ヘ内藤もトソンもよく知る人物だった。
 低い背に合わないぶかぶかのセーター、そして今は大きい兎のぬいぐるみなんかも引きずって持っている。
 彼女の姿を見納めたとたん、受付係は叫んだ。
 
 
   「――ッ!! お嬢さ――」
 
(゚、゚トソン
 
( ;^ω^)
 
 
 
 
 
(#゚;;-゚)「…?」
 
 
 
 
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641 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 20:09:08 ID:.txmPNuY0
 
 
 
(゚、゚;トソン「―――ッ!」
 
(  ゚ω゚)「……でぃ?!」
 
(#゚;;-゚)「………あ。」
 
 
 ―――ディ=カゲキも、こちらに気づいた。
 
 
 
 
   「逃げなさい! はやく!」
 
(#゚;;-゚)「しりあいだよ、この人ら」
 
   「………え?」
 
 
 避難を促す受付係を、ディはその一言で黙らせた。
 受付係にとっては、予想外以外のなにものでもなかっただろう。
 
 突如として本部にやってきた謎の少女が、いきなり 『英雄』 との面会を望む。
 追い返そうとすると破壊活動がはじまり、戦闘員たちは一瞬で皆倒された。
 その上、残虐性を胸に抱いているようでもあるのだ。
 そんな、テロリスト同然の少女――と付き添い――と 『英雄』 の幼い妹が知り合いと、どうして予想できようか。
 
 
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642 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 20:09:40 ID:.txmPNuY0
 
 
 
(#゚;;-゚)「……どうしたの? あそびにきたの?」
 
( ;^ω^)「あ、遊びにきたわけじゃなくて、その……」
 
(゚、゚トソン「……あんた、あの時の……?」
 
(#゚;;-゚)「こわいおねえさんとは、あそびたくない」
 
(゚、゚トソン「………、……ッ」
 
( ^ω^)
 
 
 ディに言われたとき、トソンは多少動揺した。
 内藤が知る由はないのだが、トソンは当時のことを思い出したのだ。
 
 モララーと公園の道を歩いていたところ、ディがやってくる。
 短気なモララーはあっさりと彼女を殺したのだが、 『異常』 なことが起こった。
 それまで経過していった時間が、巻き戻されてしまったのだ。
 
 これは、のちの最大の 『拒絶』 との戦いで、存分に使われた。
 内藤曰く 「原作最強」 の 《特殊能力》 、【夢幻の被写体 《エン・ドレッサー》 】。
 
 その 「最強」 を胸に宿すディが、目の前にいる。
 トソンの動揺はおかしくないものなのだが、しかし彼女が動揺を禁じ得なかったのはそれだけではなかった。
 ただ、 「怖いお姉さん」 と称されたのが胸に刺さったのだ。
 
 
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643 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 20:10:10 ID:.txmPNuY0
 
 
 
(゚、゚トソン「………、……内藤!」
 
( ;^ω^)「わァーったお! ちょっと、ディ!」
 
(#゚;;-゚)「なに?」
 
 内藤が言われるがまま前に出て、しゃがみこみディと視線を合わせる。
 ディは、内藤に対しては、まったく恐怖だとかそういったものを抱いていないようで、すぐに話に応じた。
 
 
( ;^ω^)「僕たち、ハインリ…… 『英雄』 に、会いたいんだよねー」
 
(#゚;;-゚)「 『英雄』 ?」
 
( ;^ω^)「そ、 『英雄』 。 ヒーロー。 」
 
 
 内藤が、ディをぐずらせないように細心の注意を払うのには理由があった。
 彼らは確かに面識こそあるが、それは最後の戦いにて場をともにしていた程度。
 ディのほうは彼はハインリッヒの知り合い、ということでもう打ち解けているようだが、
 しかし彼女のあらゆる面における恐ろしさのせいで、内藤のほうが打ち解けられずにいた。
 
 打ち解けていない内藤からのぎこちない言葉に、
 打ち解けたディは無垢な意識のまま、即答した。
 
 
(#゚;;-゚)「 『英雄』 なら、いまはいないよ」
 
(#゚;;-゚)「いま、でかけてる」
 
 
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644 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 20:10:41 ID:.txmPNuY0
 
 
 
(゚、゚トソン「…!」
 
   「――ほら! 言ったとおり!」
 
(#゚;;-゚)「うるさい」
 
   「ご……メ、ンナサイ」
 
 
(゚、゚トソン「……ほんとうに、いなかったのか」
 
( ;^ω^)「じゃあ、どこに行ってるかわかる?」
 
(#゚;;-゚)「うん」
 
( ;^ω^)「よかったお。 お兄さんに言ってほしいお」
 
(#゚;;-゚)「おじさんになら、いいよ」
 
 
(゚、゚トソン「………ム。」
 
( ^ω^)「お……オジサン…?」
 
 
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645 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 20:11:29 ID:.txmPNuY0
 
 
 
(#゚;;-゚)「 『英雄』 なら、たぶん、あのひと≠ニいるの」
 
( ^ω^)「あの人=H」
 
(#゚;;-゚)「おいしゃさん」
 
(゚、゚トソン「……医者?」
 
( ^ω^)「なにか、あいつ病気でもしてたのか?」
 
(゚、゚トソン「……」
 
 
 
(゚、゚トソン「どんな医者だった?」
 
(#゚;;-゚)
 
 
( ^ω^)「どんな医者だった?」
 
(#゚;;-゚)「おとこのひと」
 
( ^ω^)「男……ほかには?」
 
(#゚;;-゚)「かっこよかった」
 
( ^ω^)「イケメン……いや、そうじゃなくって…」
 
(゚、゚トソン
 
 
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646 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 20:12:01 ID:.txmPNuY0
 
 
 
(#゚;;-゚)「……あ!」
 
( ;^ω^)「思い出したかお!?」
 
(#゚;;-゚)「おやつたべるの」
 
( ^ω^)「おやつ……」
 
 
 時計を見ると、時刻は十五時になろうとしていた。
 毎日の楽しみなのだろう、ディは来た方角へ帰ろうとした。
 
 
( ^ω^)
 
( ^ω^)
 
( ^ω^)
 
 
 
 
( ;^ω^)「待った待った! ディ! でぃーちゃーん!!」
 
 
.

647 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 20:12:35 ID:.txmPNuY0
 
 
 
(#゚;;-゚)「……なに」
 
( ;^ω^)「オジサンに、そのお医者さんのこと、もっと詳しく言ってほしいなあ…?」
 
(#゚;;-゚)「だから、せがたかくって、かっこいい」
 
( ;^ω^)「そんな視覚的なことじゃなくて、えっと…」
 
(#゚;;-゚)「しかくてき?」
 
( ;^ω^)「あ、えっと……」
 
(#゚;;-゚)「とにかく、ばいばい。 そっちのこわいおねえさんも、ばいばい」
 
(゚、゚トソン「!」
 
 
.

648 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 20:13:08 ID:.txmPNuY0
 
 
 
 ディはちいさく手を振ると、今度は制止にも応じずに奥のほうへと消えていった。
 残されたトソンと内藤はしかたなく、受付係の怯えた視線を気にも留めず、このレジスタンス本部から出て行った。
 これ以上あの場に留まっていては、向こうの戦闘員などを蹴散らした以上、やがて面倒なことになりかねない。
 
 また、ディの機嫌を損ねると、能力が発動されて時間を巻き戻されかねない。
 数分前などであればともかく、数時間、数日前――最悪の場合、一週間前の戦いの時間にまで戻されると、たまったものではない。
 両者一致のもと、内藤もトソンもその場から去り、歩きながらこれからどうするかを考えようとした。
 
 
(゚、゚トソン「……」
 
( ^ω^)「ハインリッヒも、諦めるかお?」
 
(゚、゚トソン「 『拒絶』 の皆とあなたたち以外で私より強い人は知らない」
 
( ^ω^)「で、でも、だからといって……」
 
(゚、゚トソン「ほかに、心当たりがあれば別だけど」
 
( ;^ω^)「じっ、自慢じゃないけど僕顔狭いお!」
 
(゚、゚トソン「……」
 
( ;゚ω゚)「――ほんとだって! あと、パンドラくらいしか知らないお!」
 
 
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649 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 20:13:46 ID:.txmPNuY0
 
 
 
 
( ;゚ω゚)
 
(゚、゚トソン
 
 
( ;^ω^)
 
(゚、゚トソン
 
 
( ^ω^)
 
(゚、゚トソン
 
 
 
 
 
( ^ω^)「……もしかして、おいしゃさん≠チて―――」
 
(゚、゚トソン「………ジョルジュ=パンドラ……?」
 
 
 
 
.

650 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 20:14:24 ID:.txmPNuY0
 
 
 
 
 ―――瞬間、二人は顔を見合わせた。
 
 
(  ゚ω゚)「ま――まっちがいない!!」
 
(  ゚ω゚)「奴しかいねーお! ハインリッヒが個人的に会いそーな医者=I」
 
(゚、゚トソン「まあ、白衣は確かに医者っぽいけど……それだけであいつになるのか?」
                                               アンタラ
( ;^ω^)「いいか? ハインリッヒはなにからも 『優先』 される、言ったら 『選択』 みたいな存在だ!
.      病気になんざかかるわけねーお! たぶん!」
 
( ;^ω^)「それに、そもそも、第三勢力のボスが医者にかかってるだなんて、トップシークレットだお!
.      いくらディが幼くとも、そんなダイジなことをそう簡単にばらすハズもない!」
 
 
(゚、゚トソン「………」
 
( ;^ω^)「…………た、試してみる価値はある、……と、思うお」
 
(゚、゚トソン「試す?」
 
( ;^ω^)「だから―――」
 
 
 
 
 
          「ほんとうに、ハインリッヒがパンドラと会ってるのかどうか―――」
 
 
 
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651 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 20:14:59 ID:.txmPNuY0
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
   「………」
 
   「確かに、妹は預かった」
 
   「………」
 
   「ほんとうなら、私たちはここでおさらばするところなのだが……」
 
   「………」
 
 
 
   「どうしたい、お前たち」
 
   「シュール……トール。」
 
 
 
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652 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 20:15:35 ID:.txmPNuY0
 
 
 
 
   「 『目』 を 『芽』 に換えるとかおもしろくね?」
 
   「神経を疑うな。 気味が悪くて見てられるか」
 
   「芽に換えたあと、引っこ抜くのさ。 きっと、本来の痛さ相当のかゆさに見舞われるぜ」
 
   「ああ、悪寒が走る。 やるんなら私と姉貴抜きでやってくれ」
 
   「……私は、わりと興味があるけどな」
 
   「あ、姉貴」
 
   「じゃー、きっまりー!」
 
   「いやあ、楽しみだねえ、白衣クン?」
 
   「………」
 
   「なあに、ちょちょいのちょいでおちゃのこさいさいのさいさ」
 
   「………」
 
   「ああ、この怯えに怯えてる顔。 たまンねえ、濡れるわ」
 
   「やるんならやるでさっさとしろ」
 
   「せっかちはモテませんぜトールさん」
 
   「……」
 
 
.

653 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 20:16:09 ID:.txmPNuY0
 
 
 
 
   「………」
 
 
   「悪く思わないことだ」
 
   「この、私から、妹を………何年間も。 何十年間も、ずっと奪ってきた神罰だと思え」
 
   「―――といっても、口も利けないだろうがな、そんな状態じゃ」
 
   「………」
 
 
   「ヒートは……まだ目覚めないか?」
 
   「あー、ムリムリ。 脳にチューブつけられてたんだぜ、それも頭蓋骨に穴開けて」
 
   「むしろ、目覚められたほうが厄介よ。 ぎゃああああ!ってなるんだろうから、さ」
 
   「そうか。 じゃあ、こいつら殺して……帰るか」
 
   「よし、じゃあ………」
 
 
 
   「………待て」
 
 
 
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654 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 20:16:52 ID:.txmPNuY0
 
 
 
 
   「? どしたの」
 
   「誰か、来る」
 
   「???」
 
   「………確かに。 誰か、来るな」
 
   「それはいいんだけど……な、なんだ、この禍々しい空気」
 
   「確か、前にも似たようなオーラ感じたよな。 それも、ちょうどここらへんで」
 
   「そ、そうそう、それそれ! いやあ、あちきもそれが言いたかった」
 
   「御託はいいが……さて、どうしようか」
 
   「どうするって?」
 
   「迎え撃つ?」
 
   「いや……私は、この感じ、嫌だな」
 
   「さんせーい。 あちきもさっさと帰ってごはん食べたい」
 
   「そうだな。 せっかく、十数年ぶりに妹と再会したんだ。 そうするか」
 
   「こいつらどーする?」
 
   「歓迎会に血の臭いを持ち込むのは嫌だな」
 
   「じゃ、そーするか」
 
   「さんせーい」
 
 
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655 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 20:17:45 ID:.txmPNuY0
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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656 名前:同志名無しさん :2014/01/05(日) 20:18:16 ID:.txmPNuY0
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
              運 命 が 狂 い 始 め て い た 。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
                                           To be continued ...
 
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