4 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 14:56:29 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
○登場人物と能力の説明
 
( ^ω^)
→この世界の『作者』。
 
/ ,' 3 【則を拒む者《ジェネラル・キャンセラー》】
→あらゆる力及び力の法則を『解除』する《特殊能力》。
 
从 ゚∀从 【正義の執行《ヒーローズ・ワールド》】
→『英雄』が負けない『世界』を創りだす《特殊能力》。
 
( <●><●>) 【連鎖する爆撃《チェーン・デストラクション》】
→相手の手負いを『連鎖』させる《特殊能力》。
 
( ´ー`) 【全否定《オールアンチ》】
→なにも受け付けない《拒絶能力》。
 
( ・∀・) 【常識破り《フェイク・シェイク》】
→自然のうちに『嘘』を混ぜる《拒絶能力》。
 
(゚、゚トソン 【暴君の掟《ワールド・パラメーター》】
→『拒絶』化してしまった、それまでは『拒絶』ではなかった少女。
  _
( ゚∀゚) 【未知なる絶対領域《パンドラズ・ワールド》】
→存在してはならない『領域』を創りだす《特殊能力》。
 
( ´_ゝ`) 【771《アンラッキー》】
→『不運』を引き起こすが、『能力者』でも『拒絶』でもない男。
 
(*゚ー゚) 【最期の楽園《ラスト・ガーデン》】
→『楽園』を『保守』し、そちらにワープする《特殊能力》。
 
 
.

5 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 14:57:31 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
○前回までのアクション
 
( ´ー`)
→襲来
  _
( ゚∀゚)
/ ,' 3
从 ゚∀从
→応戦
 
( ・∀・)
(゚、゚トソン
→戦線離脱
 
 
.

6 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 14:58:13 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
 
从 ゚∀从「う……らぎられ…?」
  _
( ゚∀゚)「……。」
 
 
 ハインリッヒはそこで、ジョルジュのほうを見た。
 彼は険しい顔こそしているものの、言葉を発そうとか、そんな様子は見られなかった。
 そのため、その事実はどうであれ、ハインリッヒは少し訝しい気持ちになった。
 
 
( ´ー`)「『開闢』の専属ドクター、ジョルジュ=パンドラ」
            キリヒラ
( ´ー`)「未来を『開闢』くことができなくなったから、次は『革命』にまわったってか。ケッサクだねぇ」
  _
( ゚∀゚)「『拒絶』のお前は、感情なんか籠めてしゃべらねえ。そんな挑発に乗ると思うか?」
 
( ´ー`)「おーおー怖い怖い。もう解析されちまったか」
 
 
 ネーヨが、嘲るような様子でジョルジュに言った。
 だが彼の言葉は正しかったようで、ジョルジュはまるで涼しい顔をしていた。
 
 
 ――ジョルジュは。
 
 
 
.

7 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 14:58:50 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
从;゚∀从「え、いや、同僚=c…ちが…、……裏切り……?」
 
( ´ー`)「へッ」
 
/;,' 3「は、ハイン―――!」
 
从;゚∀从「なんだ、クソジ」
 
 
 
 
从 ゚∀从「―――――え」
 
 
 
 
 ――ハインリッヒは、さっきの今だからだろうか
 二人のやり取りを見ていて、すっかり動揺してしまっていた。
 
 それを見て、ネーヨがにんまりと笑う。
 その笑みは、視覚的に見ればなんてことのないふつうの笑みであったが
 どこか、限りなく邪悪なそれのように見えた。
 
 そのことが、その場にいる彼ら―― 『革命』の者に、戦慄を与えた。
 そして、ネーヨは鼻で笑ったかと思うと、動いた=B
 
 先ほど見せたような瞬間移動でもなければ、のしのしと歩いてくるわけでもない。
 言い換えるならば、ネーヨは、走った=B
 
 
.

8 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 14:59:25 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
( ´ー`)「……肩」
 
从;゚∀从「イ゙っ――」
 
 
 
 ネーヨは、涼しい顔のまま、走った。
 そのときの、脚が地を蹴る――砕く=\―音は、やはり彼らにも威圧感を与えるものだった。
 
 ハインリッヒに迫ると同時に、ネーヨがつぶやく。
 直後、ハインリッヒは、ネーヨにそのとき咄に向けた左肩に、異変を感じた。
 
 
 
 ごりっ――と云う音が鳴った。
 
 
 
 
 
从; ∀从「―――ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙アアアッ!!」
 
 
 
( ´ー`)「……膝」
 
从;゚∀从「ッ!!」
 
 
.

9 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 14:59:59 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
 ネーヨのつぶやき≠ヘ止まらない。
 次にそう言ったのを聞いた瞬間、ハインリッヒは全身の肌が冷たくなった。
 
 
从; ∀从「―――ギッ……――――!!」
 
 
 ネーヨは、ハインリッヒの左足の膝を、
 膝から先が本来曲がるべきでない方向に向くように蹴った。
 
 今度は、めり、と云う音が聞こえた。
 大きな木材が、重量に耐えかねて折れてしまったときのような音だった。
 
 
 
/;。゚ 3「は、ハインリッヒ――」
 
 アラマキが、己にかかっている負荷をも忘れて、半ば枯れた声で呼びかける。
 だが、声量的に大きいその声よりも、ネーヨの声は重くのしかかってきた。
 
 
 
 
( ´ー`)「……心臓」
 
从; ∀从「――ッ!」
 
 
 
.

10 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:00:32 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
 思わずハインリッヒはちいさく悲鳴をあげた。
 あげずには、いられなかった。
 
 膝を折られ――いや、骨折ではない。症状的には、脱臼が近い。
 そうして立っていられないようになったハインリッヒは、思わず地に倒れこむ。
 
 その姿を真上から見下ろしたネーヨは、次にそうつぶやいてから、足を、彼女の躯の上にあげた。
 つまさきが空に向けられている。かかとで、「それ」を踏み潰すつもりなのだろう。
 
 
 そうわかると、ハインリッヒは泣きそうになった。
 
 
 
从; ∀从「あッ……―――ァァアアアああああああああああああ!!」
 
( ´ー`)「うるせーよ」
 
 
 
 そして、そのままかかとでハインリッヒの
 
 
 
.

11 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:01:07 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
从; ∀从「――ガ……。」
 
 
 
 
 ――心臓を踏み潰そうとするのを、ゼウスが妨げた。
 持ち前の初速で二人のもとに向かったかと思えば、その勢いを以てハインリッヒを横から蹴り飛ばした。
 
 
 
( ´ー`)「……なんだ、ゼウス」
 
( <●><●>)「……」
 
 
 
 

 
 
 
/;,' 3「け……蹴り飛ばした=H」
  _
( ゚∀゚)「最善手だ。……さすがは、ゼウス。もう【全否定】を理解しやがった」
 
/;,' 3「なに?」
 
 
 
.

12 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:01:40 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
 ハインリッヒは、トップスピードに乗ったゼウスに横から蹴られたことで、十メートルほど飛ばされた。
 彼が本気で蹴っていれば、骨が砕けていただろう。
 そのことを踏まえると、彼は彼女を攻撃するつもりで蹴ったわけではなさそうだった。
 
 その一連の動きを見届けて、ネーヨは、目の前に立っているゼウスをにらみつけた。
 ゼウスの表情は、いつもと寸分も違っていなかった。
 
  _
( ゚∀゚)「もしあそこでプロメテウスの足を押さえようとしていたら、一緒にぺちゃんこになってたぜ」
 
/ ,' 3「………?」
 
 
 二人が膠着状態に入ったのを見て、ジョルジュは言い始めた。
 距離こそ空いているが、耳を澄ませば、彼らには互いの声が聞こえた。
 
 二人のもとに向かおうとして、そしてゼウスの動きを見てぴたりと止まったアラマキ。
 ジョルジュは、彼に歩み寄りながらそれを続けた。
 
  _
( ゚∀゚)「『英雄』の蹴りは『拒絶』しなかったようだが……おそらく、もう元に戻してやがる」
  _
( ゚∀゚)「だとすると、だ。もし今、あいつがプロメテウスの足を押さえにかかってたら――」
 
 
 
 
  _
( ゚∀゚)「そのゼウスの力をも『拒絶』して、『英雄』もろとも、踏み潰してた……ってところだな」
 
 
 
 
.

13 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:02:12 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
 

 
 
 
( ´ー`)「今の俺に敵うやつはいねぇ。おめえの今の行動がそれを証明している」
 
( ´ー`)「……だってのによ」
 
( ´ー`)「どーして、ジャマすんだ?」
 
( <●><●>)「……」
 
 
 ネーヨが、単刀直入に訊いた。
 決して嘘を言っているわけではない――
 どれも真実だらけの言葉を前に、ゼウスは黙るしかなかった。
 
 
( ´ー`)「それか、あれか」
 
( ´ー`)「『同盟だから』……とか、ぬかすつもりか?」
 
( <●><●>)「………フン」
 
( ´ー`)「フン、じゃねえよ。答えろ」
 
( <●><●>)「逆に、こちらが問いたいものだ」
 
( ´ー`)「なに?
 
 
.

14 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:02:43 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
 ネーヨが目を細める。
 一方のゼウスの顔は、依然けわしかった。
 
 
( <●><●>)「なぜ……」
 
( <●><●>)「なぜだ、プロメテウス」
 
 
 
 
 
 
( <●><●>)「どうして、よりにもよって貴様が……『拒絶』になったのだ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
.

15 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:03:20 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
( ´ー`)「……」
 
( <●><●>)「……」
 
 
 ネーヨはそう問われて、開きかけだった口が、きゅっと閉まってしまった。
 口角は――伸びている。気を悪くしたとか、そういうわけではなさそうだ。
 
 しかしそれでも、あきらかに、
 その瞬間、ネーヨは、さきほどまでとは違う雰囲気を漂わせた。
 
 
 
( <●><●>)「『拒絶』にボスたる存在がいることは、わかっていた」
 
( <●><●>)「だが、あらゆる意味において、貴様だけはその候補にはあたっていなかったのだ」
 
( <●><●>)「ネーヨ=プロメテウス……、貴様は―――」
 
 
 
.

16 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:03:52 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
( ´ー`)「やめようぜ、そういうの」
 
( <●><●>)「!」
 
 
 ゼウスが続けて言葉を紡ごうとしたのを、
 ようやく開いた口で、ネーヨは妨げてきた。
 
 同時に、一歩前に踏み出していた足を元に戻す。
 完全に、体の向きをゼウスのほうに向けた。
 
 
 
( ´ー`)「おめえの言いたいこたぁ、手にとるようにわから」
 
( ´ー`)「……だけどよ、『開闢』が動いてたのは、もうずっと前の話」
 
( ´ー`)「……いま、俺たちは、互いに別の人間となってんだよ」
 
 
 
( ´ー`)「『拒絶』のプロメテウスに、『革命』のゼウス」
 
( ´ー`)「……そして俺は、おめえの知っているプロメテウスでは、」
 
 
 
 
.

17 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:04:28 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
 
 
 「ない」。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 その瞬間、ゼウスの胴体が引きちぎられた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
.

18 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:05:01 ID:HP9PWHYU0
 
 
  _
( ;゚∀゚)「ぜッ――ゼウス!!」
 
 
( <○><○>)「ッ………!」
 
 
 
(   ー )「いいか、よく聞け、おめえらァ!」
 
  _
( ゚∀゚)「!」
 
 
 
 ゼウスは、下半身は五メートルほど離れた場所に、
 上半身はその場に横たわるかのように、落ちた。
 
 どさっ、という音を残して。
 
 
 
 続けて、ネーヨは大きな声を出した。
 彼が大きな声を出すなど、ジョルジュにとっては考えられないような出来事だった。
 
 同時に、ネーヨは地面を思いっきり右脚で踏む。
 直後、その場で交通事故でも起こったかのような轟音が響いた。
 
 踏み込んだ場所が砕かれ、岩石の集合体のようになった土が盛り上がる。
 それに右脚を呑まれたままの状態で、ネーヨは続けた。
 
 
 声の相手は、『革命』の皆だ。
 
 
 
.

19 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:05:38 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
            アンチ
(   ー )「俺は、『拒絶』 ッ!」
 
 
(   ー )「ただ、能力者を嫌う!
       世界を嫌う!
       運命を嫌う!
       自分を嫌う!
       なにもかもを嫌う!」
 
 
(   ー )「憎悪、殺意、怠惰、腐敗、幻滅、落胆、狂気、恐怖、絶望、そして―― 拒絶!」
 
 
(   ー )「人間の持つ、あらゆる負の感情の、集合体!」
 
 
(   ー )「そんな最悪の精神体の具現化=I そいつが、俺だッ!!」
 
 
 
 
(   ー )「すなわち――」
 
 
(   ー )「 『オールアンチ』!!」
 
 
 
 
.

20 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:06:13 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
(   ー )「理性、感情、抑制――その、全てを捨てた男!」
 
 
(   ー )「ただの生物と成り下がった男の、望むことはたった一つ!」
 
 
 
 
(   ー )「満たされる≠アと!」
 
 
 
 
 ――― その瞬間
 
  『革命』 の皆は、背筋がぞわり、とした。
 
 
 
 
 
( ´ー`)「【ご都合主義】も、【手のひら還し】も、【常識破り】も」
 
( ´ー`)「その、全てを駆逐したおめえたちに、俺が挑む!」
 
( ´ー`)「俺がいま望むことは―――」
 
 
 
.

21 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:06:45 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
   おめえたちの心を、 『 拒
.                  絶 』 で、すべて埋め尽くすことだ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
.

22 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:07:19 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
 
 
 
    ブーンは自らのパラレルワールドに迷いこんだようです
 
 
 
 
 
                第二部 : 拒絶
 
 
 
            第三十四話 : vs【全否定】U
 
 
 
 
 
 
 
.

23 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:07:57 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
 

 
 
 
( ;゚ω゚)「……ッ…!」
 
 
 その瞬間、内藤武運は身震いした。
 
 自分が戦うわけではないとわかっているのに。
 ネーヨの声を聞いて、心の底から、恐怖を感じた。
 
 
 
 ――また、一方で
 
 
 
( ;゚ω゚)「………つ、ついに……」
 
( ;゚ω゚)「ついに……はじまってしまったのか、お……っ!」
 
 
 
.

24 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:08:28 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
 それまでは、『現実』を知っておきながらも、どこかしら現実逃避していたふしが見られた。
 確かに、いま、我々は『拒絶』と戦っているのだ、という実感こそしていたものの
 それでもどこか、「こうなること」に対しての現実味をもてないでいた。
 
 それは、内藤がこの世界の人間ではないこと。
 この世界は、自分が創りだした世界であること。
 その世界に住まうのは、同じく創作上の存在であること。
 
 
 それらの要因すべてが、彼から現実味をある程度奪い上げていたのだ。
 しかし。
 
 
 
( ´ー`)「次は……じーさんにすっか」
 
/;,' 3「っ! ……ほう」
 
( ´ー`)「安心してくれ。今すぐ殺そうってハラじゃ、ねえからな
 
/;,' 3「その慢心が、いつまで続くかわかればい」
 
 
 
( ´ー`)「ん?」
 
/ 。゚ 3「イ゛ッ」
 
 
 
( ; ω )「ッ!」
 
 
 
.

25 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:08:58 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
 いま、目の前に広がっているのは、あきらかに戦いだ。
 物語のボスに、力としては心もとない主人公サイドの登場人物たちが戦いを挑む、無謀な地獄絵図だ。
 
 いままで、幾度となく、「このこと」は危惧してきた。
 【全否定】にだけは、絶対に、相手をしてはいけないのだ。
 
 
 
 【ご都合主義】も、その「絶対に相手をしてはいけない人物」だった。
 『現実』――つまり、いま自分がこうして生きている概念的フィールドを掌握していた男なのだから。
 
 【手のひら還し】も同様である。
 『因果』――事象として自分たちをつないでいる連続的反応を、狂わせるのだから。あの少女は。
 
 【常識破り】に至っては、その最たるものだ。
 『真実』――『現実』や『因果』がどうであれ、概念的に存在するそのコタエをも一蹴される以上は。
 
 
 
.

26 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:09:35 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
 だが。
 それでも、【全否定】だけは。
 ネーヨ=プロメテウスという男だけは、相手取ってはならない。
 いままで――パラレルワールドに迷いこんでから、内藤はずっとそう思ってきた。
 
 
 それを、防げなかった。
 
 
 
/;,' 3「がああああああああああああああッ!!!」
 
( ´ー`)「あれ。そーいやおめえ、はなから左腕ねえんだな」
 
( *´ー`)「おお。ってことは、もう両腕が使えなくなった≠フか!」
  _
( ;゚∀゚)「……、………ッ!!」
 
/;,' 3「―――ア゙ア゙ア゙ア゙アアアアアアッッ!!」
 
 
 
( ;^ω^)「………な、…んだって……?」
 
 
 
.

27 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:10:08 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
 いま、ネーヨの口から、あまりにも残酷な声が聞こえたような気がした。
 それは決して、アラマキの放っている絶叫に掻き消されることはなかったものだ。
 
 心臓が、硬くなったような感じがする。
 ポンプの作用がうまく働いていない、というほうがいいかもしれない。
 硬直寸前の心臓が、なんとか血液を送ろうとして、結果、内藤は息苦しさなどを覚えた。
 
 ――目は、背けたい。
 だが、背けてはならない。
 
 それが「現実」を甘受すること――では、ない。
 目を背けてしまっては、『拒絶』を甘受することにつながってしまうから――
 
 
 
( ;゚ω゚)「 ッ ! ! 」
 
 
 
 直後、内藤は、この拒絶を甘受したくなった。
 胃の底から、酸の強い液体を吐き出した。
 
 
 
.

28 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:10:47 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
( *´ー`)「こーいつが噂のだるま≠ゥ! こりゃーいい眺めだ!」
 
( ; ω )「―――ゲ――……」
 
 
 ネーヨのそのラフな服装には、派手な色がついていた。
 単色でもっとも人間に吐き気を促す、どす黒い赤色が。
 それも、一目見ればそれが飛沫であったことがわかるような模様で、だ。
 
 ネーヨは、右手に何か、太いものを持っている。
 太い、棒状の、ごつごつとした表面のものだ。
 
 それがなにかは、情景を見るまでもなくわかった。
 その棒の断面は、ネーヨの服にある模様と同じ色をしている。
 断面の中央には、白い円形のものが。
 
 
 
 
 アラマキの右腕が      
 
 
 
 
.

29 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:11:24 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
/ 。゚ 3「          」
 
 
 
 その瞬間、アラマキはこの上ないほど、目を見開いた。
 
 それまでは開いているのかすらわかりづらかった眼が、完全に開ききっている。
 眼球の成す円形が窺えるほどだ。
 眼球に張り巡らされた血管が浮き出ており、その焦点はあってない。
 
 口も、同様に、完全に開ききっていた。
 張った顎骨から、彼の顎の形状が肉眼でもよく窺える。
 詩的な表現をするなら、それはその口から魂が抜けていくような情景であった。
 
 
 それを見て、ネーヨはけらけらと笑った。
 普段寡言で笑うことも少ないネーヨが、見るからに満面の笑みをこぼしている。
 その光景が、彼をよく知るジョルジュとモララーにとっては、あまりにも異様な光景に見えた。
 
 
 
 
 いや、実際にこれは、異様だった。
 
 あまりにも異様すぎる、光景だった。
 
 
 
.

30 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:11:59 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
从 ;∀从「わあああアアアアアアアアアアッ!!」
 
 
 ハインリッヒは、ゼウスに助けてもらった=B
 
 少し遅れつつも上体を起こしたのだが
 そのときに見た光景が
 
 
 
 
/ 。゚ 3
 
 
( <  ><○>)
 
 
 
 
从 ;Д从「―――アアアアアアアアアアアアアアアアア!!! アアアアアッ!!」
 
 
 
 両腕をまるまる失ったアラマキ。
 
 下半身をまるまる失ったゼウス。
 
 
 
 
 同志の、異型だった。
 
 
 
.

31 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:12:33 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
( *´ー`)「お、まだまだ」
 
/ 。゚ 3「      力゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙アッ!!!」
 
 
 
 ――続けてネーヨは、アラマキの脚に着目した。
 アラマキの右腕を捨てて、そのまま己の右手を振りかざした。
 
 
 照準は――アラマキの左足の、付け根。
 アラマキが抵抗をする間もなく、狙ったどおりの場所に、ネーヨの拳が入った。
 
 
 瞬間、めり、という音が聞こえた。
 しかし、ネーヨの腕は、なんの抵抗も受けなかったかのごとく、するりと通った=B
 彼の拳の勢いにあわせて、アラマキの左足付け根から下はあさっての方向に飛んでいった。
 
 
 何が起こったのか把握できないまま。
 アラマキの視界は、ぐらり、と動いた。
 
 ――いや、「視界」としては既に、その機能を失っていたのかもしれない。
 とにかく、片足を失った≠アとでバランスを崩したアラマキは、そのまま地に倒れこんだ。
 依然、眼も口も開かれたまま。
 
 
.

32 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:13:15 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
( *´ー`)「右脚だけ置いといてやろうかなァ?」
 
/ 。゜3
 
( *´ー`)「でも、人を正味のだるま≠ノするなんて、滅多にねえことだかんな」
 
( *´ー`)「記念だ、右脚ももらうか」
 
/ 。゜3
 
 
 地に倒れこんだアラマキの、右脚付け根。
 ネーヨはそこに標的を絞り、かかとを振り下ろした。
 
 ネーヨは、己の『拒絶』――【全否定】で
 物理的に発生する力の抵抗を『拒絶』しているため、アラマキの右脚はすっ≠ニもげた。
 
 
( *´ー`)「ぶゎっはははははは!! だるま≠セだるま=I」
 
从 ;Д从「―――ヤアアアアアアアアアアアああああああああああああああ!!!」
 
 
 
 アラマキは、四肢を失った。
 
 
.

33 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:13:48 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
  _
( ;゚∀゚)「……プロメ、テウス………?」
 
 
 ジョルジュは一応、彼がやってきた時点で距離はある程度とっていたが、
 その行動と光景、そして彼の態度を見て、更に数歩、じりじりと後退した。
 
 
 あまりにも、異様すぎたのだ。
 
 
 自分も「マッド・サイエンティスト」の揶揄に恥じぬ、狂った研究を続けてきたが
 そんな過去を持つ彼にしてみても、この光景は異常としか思えなかった。
 人の腕や脚をもぐ、まではあったとしても、自分は決してそれで笑う≠アとはない。
 
 
 だが。
 
 
 
( *´ー`)「あーっはっはっはっはっはっはっは!!
.       すげえ、サッカーボールじゃねえか! ぶっはははは!!」
 
 
 
 ネーヨは笑っている≠フだ。
 それが、狂人が前提の『拒絶』だとわかっていても、おかしいとしか思えなかった。
 狂気を目の当たりにして吐き気を覚えることは、過去にそうそうなかったというのに、だ。
 
 
.

34 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:14:20 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
从 ;Д从「――――アアアアアア―――ッ!!」
 
( *´ー`)「……次は、おめえだな」
 
从 ;Д从「 ッ!!?」
 
 
 ジョルジュでさえ吐き気を覚えるほどの光景を見て、
 ハインリッヒは発狂寸前となっていた。
 
 
 アラマキの恐ろしさは知っている。
 【則を拒む者】として、嘗て、今のように痛めつけられたことがある。
 
 ゼウスの恐ろしさも知っている。
 【連鎖する爆撃】を前に、てんで歯が立たず、一方的な『恐怖』を植えつけられた。
 
 
 だが。
 その二人が、あっという間に、ヒトの原型を壊された。
 
 
 
 目の前に瞬間移動≠オてきた、この男に。
 
 
 
.

35 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:14:51 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
( *´ー`)「どう可愛がってやろうかなァ」
 
从 ;∀从「    ヵ゛ 」
 
 
 ハインリッヒに逃げる隙も与えず、ネーヨはすぐさま彼女の首根っこを捕らえ、持ち上げた。
 体躯のちいさなハインリッヒが、体躯の大きなネーヨに軽々と持ち上げられる。
 
 先ほどまで適応させていた『拒絶』は解除しているのだろう、
 ハインリッヒは首をきりきりと痛めてくるネーヨの握力を、この上なく恐ろしく思えた。
 
 
从 ;Д从「あああああああああああ! あああああッ!!
.      あああああああああああああああああああああっ!!!」
 
( *´ー`)「おーおー、安心しろ。スグに殺しやしねーっての」
 
 
 ハインリッヒはがむしゃらに四肢をじたばたさせる。
 それはまるで、子供が必死に足掻いているような光景にも見えた。
 それが滑稽に思えて、ネーヨはまだ何もしていないのに、笑った。
 
 
.

36 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:15:26 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
 
从 ;Д从
 
 
 どうせなら、モララーに殺されるほうがよかった。
 あのときワタナベに素直に殺されるべきだった。
 ショボンに成す術がないまま朽ちていきたかった。
 
 仲間割れのときに殺されたかった。
 ゼウスの放つ爆撃のなかで焦げ死んでおくべきだった。
 アラマキを前にヒートの助力を頼まないほうがよかった。
 
 
 
 
 生まれてこなければよかった。
 
 
 
 
 ――ハインリッヒが突如としてそう思った理由は、実に簡単だった。
 ネーヨに殺すつもりはない≠ゥらだ
 
 
 
.

37 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:15:59 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
( *´ー`)「情にゃあ興味ねえしよ。どうしてくれようか」
 
从 ;Д从「八゙アアアアアアァァぜえええええええええええええ!!!」
 
( ´ー`)「うるせえよ」
 
从 ;%,;从「  ッ ! !  」
 
 
 ハインリッヒが「離せ」と泣き喚く。
 それを鬱陶しく思ったネーヨは、空いている左手、親指以外四本を
 開きっぱなしの彼女の口の中に突っ込んだ。
 
 そして、ハインリッヒの顎を掴み、思いっきり下に引っ張った。
 ゴリ、という音が、骨を伝って自分の耳にはっきりと届いた。
 直後にやってくる、電気が走ったかのような痺れと痛み。
 
 
 ハインリッヒは、顎をもがれた。
 だが、これだけではなかった。
 ネーヨは、もいだ顎を、ハインリッヒの目の前に突きつけてきた。
 
 
.

38 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:16:44 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
从 ;%,;从「!!!」
 
( *´ー`)「おっほ! クチから下がねえっつー顔もなかなか見ごたえあるな!」
 
 
 ハインリッヒは、目を瞑っておくべきだった、と後悔した。
 ――いや、後悔する精神的余裕すら、なかった。
 
 目の前に突きつけられた顎が、グロテスクすぎたためだ。
 耳のほうに伸びていた顎骨の両端、はがされた肉、皮。
 滴り落ちる血の雫に、むき出しとなった歯の並び。
 
 しかも、それが自分のものだ、とわかっているのだ。
 彼女にとっては、死を自ら選びたくなるほど、その苦痛はひどいものだった。
 
 
( *´ー`)「オンナは顔が命、ってムカシよく聞かされてよォ」
 
( *´ー`)「そのたびに言ってやったんだ、『ツラの皮が厚い奴が』ってなァ」
 
( *´ー`)「……おめえも、ツラの皮、厚いのか?」
 
从 ;%,;从「!?!!」
 
 
 
 今度は、顔面を覆っている皮に手を出した。
 
 
 
.

39 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:17:18 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
 
 
 
                                びりっ
 
 
 
 
 
 
( *´ー`)「おお! こりゃーいい眺めだ!!」
 
 
从;:。,ァ'i;゙*リ
 
 
 
 皮膚、として顔面を覆っているそれは、
 もがれた顎の部分から額にいたるまで、きれいにちぎられた。
 
 赤黒として、湿っぽさが感じられる、肉。
 筋肉、その筋が編み物のように張り巡らされている。
 
 上唇に隠れていた歯はくっきりと見えていたが、その白はやがて赤に侵されていった。
 瞼が消えたため、ハインリッヒのぱっちりとした目、瞳――は、もはやただの眼球となった。
 
 
从;:。,ァ'i;゙*リ
 
 童顔だったハインリッヒは一転
 ただの人体模型のようにグロテスクな女へと変わった。
 このときになって、ハインリッヒは抵抗するのをやめた。
 
 
.

40 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:18:04 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
( *´ー`)「ぶはは……、…。」
 
( *´ー`)「おい、なんか反応しろよ」
 
( *´ー`)「鏡見るか? 目をつぶそうか? 今度は肉をはがそうか?」
 
 
 
从;:。,ァ'i;゙*リ
 
 
 
( ´ー`)「……ああ。顎がねえから、クチ利けねえのか。トチったな」
 
( ´ー`)「おもしろくねえじゃねーか」
 
 
 
从;:。,ァ'i;゙*リ
 
 
 
( ´ー`)「……抵抗しろよ」
 
从;:。,ァ'i;゙*リ
 
 
.

41 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:18:36 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
 ハインリッヒは、気絶したのか、脳が生命活動を停止させたのか。
 それこそわからないが、とにかく、ハインリッヒは動かなくなった。
 それを、ネーヨは、この上なくつまらなく思った。
 
 いわば、ハインリッヒはヒーローでもなければ、能力者でも、まして人間でもない。
 ネーヨにとっての、使い捨ての玩具となっていたのだ。
 
 肉を、剥ぐ。
 皮を、剥ぐ。
 骨を、剥ぐ。
 気を、剥ぐ。
 命を、剥ぐ。
 
 本人に拒絶心を植え付けることで、自分の心に潜む拒絶を押し付けることができて
 それによる拒絶で顔を歪ませる相手を見て、自分は心から満悦に浸ることができる。
 
 相手に異様すぎる暴力を振るうことは、間接的に自分を満たすことになるのだ。
 つまり、自分を満たすために食糧となる牛や魚を殺すのと同義である。
 
 違うところは、牛や魚は食という生理的欲求であるのに対して、
 こちらは拒絶、満悦という心理的欲求であるという点だ。
 
 
 
 言い換えれば、形として残らない欲求なのである。
 食欲は一時的であるとは言えゴールがあるのだが、
 快楽にゴールは―――
 
 
 
.

42 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:19:07 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
 
从;:。,ァ'i;゙*リ
 
( ´ー`)「萎えちまった」
 
( ´ー`)「あとは……」
 
 
  _
( ;゚∀゚)「……」
 
 
 
( ´ー`)「………お。」
 
 
 ネーヨは、壊れた玩具をその場に落とした。
 四肢のうち半分壊れた二つが、歪な形になる。
 顔は地面についたせいで、砂が顔に張り付き、更にグロテスクな様となった。
 
 だが、それはもうハインリッヒではない、ただの「ゴミ」だ。
 ネーヨが彼女――いや、「それ」に気を払うことはさっぱりなくなっていた。
 同僚の娘だから、という感慨も、この時は既に消えうせていた。
 
 
 次の標的は――ジョルジュ=パンドラ。
 白衣を風にはためかせ、ネーヨからは距離をとっており、顔はもう歪ませている。
 
 ネーヨは、笑った。
 
 
.

43 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:19:45 ID:HP9PWHYU0
 
 
  _
( ;゚∀゚)「チッ!」
 
( ´ー`)「やっぱ、メインディッシュはこうでねえとな」
 
 
 ネーヨと目があった瞬間、ジョルジュは逃げた。
 ジョルジュの足は、速い。
 いや、動作の一つひとつが、速いのだ。
 少なくとも、ハインリッヒの首元を一瞬で締め上げられるほどには。
 
 そんなジョルジュは、一目散に駆けた。
 逃げた。
 目の前の「拒絶」を、拒絶しようとした。
 
 その様――「拒絶」を拒絶しようとする様――を見て、ネーヨは震え上がった。
 気持ちよかったのだ。自分に抗ってみようとしてくれる、彼が。
 だから、彼はその行動に最大限の感謝を示すべく、瞬間移動した。
 
            ム シ
 物理法則を、『拒絶』。
 
 
.

44 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:20:19 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
( ´ー`)「よう、パンドラ。しばらく」
  _
( ;゚∀゚)「て、手品みてーなコトに使いやがって……!」
 
        コ  レ
( ´ー`)「【全否定】のこッか?
      んな、大それたことにしか使っちゃいけねえって制約はねぜ」
 
( ´ー`)「むしろ、俺の『拒絶』から逃げようとすんだから、それを防ぐって意味じゃあ最大の使い方だ」
 
  _
( ;゚∀゚)「そりゃーどうも…。」
 
 
 ジョルジュはそこで、逃げるのをやめた。
 まだ、広場内から抜け出せていない。
 ふと首を回せば、そこには異型と化した三人の同志を見ることができる。
 それをしなかったのは、拒絶を目の当たりにしたくなかったからだ。
 
 諦めて、ネーヨと対峙した。
 が、構えをとり、臨戦態勢に入っているところが、彼らしくないと言えた。
 平生の彼ならば、ポケットにでも手をつっこみ、不敵な笑みをこぼすところだ。
 
 いかにも警戒している、というのが伝わり、更にネーヨは快楽を感じた。
 こうして、抗ってくれようとしてくれるだけで、快楽を感じるのである。
 
 そして、ジョルジュ――玩具が、快楽を与えてくれないほど壊れてしまったら、捨てる。
 心が拒絶で埋め尽くされた末に、殺す。もしくは、物としてそこらに放置する。
 それが『拒絶』としての、欲求の満たし方だった。
 
 
.

45 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:20:49 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
( ´ー`)「どーだぁパンドラ、この眺めは。最高だと思わねえか」
  _
( ;゚∀゚)「最近、俺ぁ近視でよ。よく見えねーや」
 
( ´ー`)「じゃあ目の前に突きつけてやろうか?」
  _              ウチケ
( ;゚∀゚)「フン。冗談でさえ『拒絶』しちまうってわけか」
 
( ´ー`)「おめえも味わえよ。この、絶景を」
 
 
 そう言って、ネーヨは再び、瞬間移動。ジョルジュの背後についた。
 そしてジョルジュが反応しきれないうちに、彼の首根っこを捉える。
 殺しはしない。ハインリッヒのときと同様、持ち上げるのだ。
 
 が、ジョルジュの背は、平均的とは言えハインリッヒよりは高い。
 結果、背伸びせざるを得ない状況になった、といったところで済んだ。
 
 なにをされているのかわからないジョルジュは、抵抗しようとした。
 が、それよりも、ネーヨのほうがはやかった。
 空いている左手で、ジョルジュの頭を鷲づかみにし、無理やり視線を広場のほうに向けた。
 
 
 ジョルジュは、いま自分が何をされようとしているのか、がわかった。
 
 異型と化した同志たちを、無理やり網膜に焼き付けさせようという考えなのだ。
 
 
.

46 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:21:38 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
 
  _
( ;゚∀゚)
 
 
 
 
( <  ><○>)
 
 「魔王」「全知全能」のはずのゼウスが、下半身を引き裂かれ、地に突っ伏す様。
 
 
 
/ 。゜ 3
 
 「武神」「国軍最強の戦士」のはずのアラマキが、四肢をもがれ、だるま≠ニ化した様。
 
 
 
从;:。ァ'i;゙*リ
 
 「英雄」「レジスタンス」のはずのハインリッヒが、顔を文字通り壊され、人外になった様。
 
 
 
 
 
 ――― どれもが、拒絶に満ち溢れていた ―――
 
 
 
.

47 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:22:17 ID:HP9PWHYU0
 
 
  _
( ; ∀ )「………ッ…。」
 
( ´ー`)「目に焼き付けろ。そんために、おめえは最後まで残しといてやったんだ」
  _
( ;゚∀゚)「……!」
 
 
 瞼の上から皮膚を引っ張られているため、目を閉じることはできない。
 それでもその異様すぎる光景は見たくないがため、
 ジョルジュはなんとか、眼球だけでもあさっての方向に向けて、目をそらそうとした。
 
 それを見たネーヨは、苛立った。
 すぐさま、左目を潰した。
 
  _
( ; ∀゙)「――ッ!!」
 
( ´ー`)「目ェ背けてんじゃねえよ。甘受しやがれ、クソが」
 
 
 眼球は、一般人が思っているよりも、ずっと硬い。
 少なくとも、俗にいう「目潰し」で目を潰せないほどには硬いのだ。
 かなり強い弾力で、だからこそ、転んだりして目を打っても、潰れたりなどはしない。
 
                ム シ
 だが、ネーヨはそれを『拒絶』した。
 ジョルジュの眼球は、まるでそれが豆腐であるかのように、あっさり潰された。
 
 
.

48 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:23:04 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
 『拒絶』しないで――力ずくで眼球を潰すこともできたが、ネーヨはそうはしなかった。
 そうすると、目の反対側にある骨が砕けるからである。
 へたに衝撃を与えて気絶、死亡などされては困るのだ。
 
 片目になったジョルジュの、躯の向きを四十五度変える。
 その眼球ひとつで広場全てを納められるように、だ。
 そうすれば、どこに眼球を向けても、視界のどこかには同志の様が見受けられるようになる。
 
 
( ´ー`)「どうだ。これが、『拒絶』だ」
  _
( ;゚∀゙)「―――ッ……。…!」
 
 
 再び、その光景――地獄絵図を見せ付けられる。
 目を背けたくても、やり場がない。
 目を閉じたくても、閉じる猶予がない。
 
 そして徐々に、ジョルジュは震えるようになった。
 その光景があまりにも異様すぎたから、だけではない。
 
 
                                    カ ワ
 嘗ての同志であったネーヨ=プロメテウスが、ここまで豹変ってしまったから、である。
 
 
.

49 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:23:54 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
( ´ー`)「苦しいか。死にてえか。拒絶してえか」
  _
( ;゚∀゙)
 
( ´ー`)「どれもこれも、原因はおめえにあんだ」
  _
( ;゚∀゙)
 
 
 
( ´ー`)「そうだろ? ……パンドラ」
 
( ´ー`)「あんとき……おめえは、裏切った」
 
( ´ー`)「ヘーラーも、カゲキも、ゼウスも……おめえのせいで、消えちまった」
 
 
 
( ´ー`)「そして……俺もだ」
 
 
.

50 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:24:53 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
( ´ー`)「もはや人間じゃーありえねえチカラを持った、ゼウス」
 
 
( ´ー`)「今の俺を……も、超える、最強の『能力者』、ヘーラー」
 
 
( ´ー`)「国軍を動かす地位と権力を持った、カゲキ」
 
 
( ´ー`)「それに、俺とおめえ」
 
 
( ´ー`)「……考えうる限り、最強の面子がそろった、自警団『開闢』」
 
 
 
 
   「それを、おめえは………潰したんだ。」
 
 
 
.

51 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:25:30 ID:HP9PWHYU0
 
 
  _
( ; ∀゙)「……………ッ…!!」
 
 ネーヨが、淡々と、声を潜ませて、言う。
 それが、今までの奇行のどれよりも、ジョルジュにとっては恐ろしかった。
 なによりも拒絶したいもの――だった、のだから。
 
 
( ´ー`)「……で、この絶景」
 
( ´ー`)「こいつを引き起こしたンも、おめえだ」
 
( ´ー`)「そうだろ?」
 
( ´ー`)「おめえが俺たちを裏切ったりしなけりゃ」
 
( ´ー`)「俺がこーなることも」
 
( ´ー`)「『拒絶』どもが動くことも」
 
( ´ー`)「『革命』が生まれることも、なかった」
 
 
( ´ー`)「おめえが、全ての惨劇を招いたんだ」
 
 
.

52 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:26:18 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
  _
( ; ∀゙)「      ……、……‥‥ ‥ 。 」
 
 
 
( ´ー`)「よく考えたら、おめえは害悪もイイとこだな」
 
( ´ー`)「『開闢』っつー、サイコーの自警団を一晩にして潰すし」
 
( ´ー`)「『拒絶』っつー、サイアクの連中を面白半分で生み出すし」
 
( ´ー`)「アニジャを、利害一致を掲げて利用するしな」
 
( ´ー`)「俺は、あいつは言うほどきれーでなかった。口数の少ねえ男は、きれーじゃねえぜ」
 
( ´ー`)「……でも。あいつは、おめえと『拒絶』の両方に関わっちまったから、殺すしかねえ」
 
( ´ー`)「どれも、おめえの勝手な興味、好奇、娯楽、趣味、生業で、メチャクチャにされたんだ」
 
 
  _
( ; д゙)「  ・ ・ ・   ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・    、        」
 
 
 
( ´ー`)「答えろよ、パンドラ。」
 
( ´ー`)「どうなんだ、おい。」
 
 
.

53 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:26:50 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
 ただでさえ、ゼウス、アラマキ、ハインリッヒの皆が異様なまでに
 いたぶられているのを見て、精神体はぼろぼろになっていたのだ。
 加え、内藤と同様、【全否定】だけは相手してはならない、とわかっていた。
 
 その【全否定】は嘗ての同志で、また今ネーヨが列挙したことはどれも『真実』だ。
 モララーにしかごまかすことができない、『真実』。
 つまり、ジョルジュはそれを甘受するしかない。
 
 一方で、【未知なる絶対領域】では、どう足掻いても、【全否定】に勝つことはできない。
 防御として使う以外には、相手を『パンドラの箱』に閉じ込めて殺す――と
 およそ能動的には使うことのできない《特殊能力》であるのだから。
 そしてネーヨは、その『パンドラの箱』をこじ開けることができる。
 
         ゼ ロ
 勝機は『絶望的』。
 物理的にも、精神的にも、勝機は『絶望的』だ。
 
 
 戦闘という面において、自分がネーヨに勝つことはありえない。
 また、様々な『真実』が、目を閉じても耳を塞いでも、己を攻撃してくる。
 ここでネーヨが口を閉ざしても、ジョルジュの体力は一方的に削られていく。
 「絶望的」以外に相応しい言葉が見つからないほど、まさに「絶望的」だった。
 
 
 
.

54 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:27:21 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
( ´ー`)「……」
  _
( ; д゙)      
 
( ´ー`)「………」
  _
( ; д゙)        
 
( ´ー`)「…………イった、か。」
 
 
 
 ――ジョルジュは、気絶していた。
 とうとう、精神体が、耐え切れなくなったのだ。
 
 
 そうとわかったネーヨは、ハインリッヒのときと同様、彼をその場に捨てた。
 もう使い道がなくなったのだから。
 玩具で遊ぶ人が、使えなくなった玩具を捨てるのは、当然だ。
 それに、思いいれがない限りは。
 
 そして、ネーヨに、「思いいれ」 なんてものはこれっぽっちもなかった。
 過去のネーヨは死んだ≠フだから。
 
 
.

55 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:27:53 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
 ゼウス。
 アラマキ。
 ハインリッヒ。
 ジョルジュ。
 
 『革命』の面々は、ものの一瞬で、みごとに全滅してしまった。
 それも、物理的に痛めつけられて、ではない。
 皆、精神的に痛めつけられ、再起不能となっていたのだ。
 
 ゼウスが、その好例だ。
 彼の場合、あわよくば、上半身だけでも動くことくらいはできたはずである。
 
 だが、そうしない。
 できない≠フだ。
 
 
( ´ー`)「……さあて」
 
 
 ネーヨは、ぐるり、と躯の向きを変えた。
 遠くのほうに隠れている、二人≠フほうに目を向ける。
 そのうちの一人――は、震え上がった。
 
 
 
( ´ー`)「……これも、おめえが描いてたシナリオだった、ってか?」
 
 
 
 
 
( ´ー`)「『作者』……さんよ」
 
( ; ω )「………ッ。」
 
 
 
 
.

56 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:28:28 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
 ネーヨの涼やかな眼が、しっかりと内藤を捉える。
 内藤は逃げ出したりはせず、彼の視界に刻まれるがまま、となった。
 
 
 『作者』だからこそ
 設定≠ノ関しては、ほかの誰よりも知り尽くしているのだ。
 
 
 その設定≠ゥら推測すれば
 今ここで内藤が逃げ出すと、ネーヨは、いくら内藤が相手でも、躊躇いなく攻撃する。
 
 
 そのため、内藤は、「動かないこと」が最善だ、という考えに至った。
 
 
 
( ´ー`)「……不思議な気持ちだ」
 
( ´ー`)「ほんとうなら、おめえにも拒絶を味わってもらうところなんだけど、よ」
 
( ´ー`)「なんでか、そんな気分にはなんねえんだわ」
 
 
.

57 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:29:05 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
( ´ー`)「おめえは、『能力者』じゃねえどころか、抗う術すら持っちゃいねえ」
 
( ´ー`)「つまり、おめえに何かしても、満たされるこたァねえ」
 
( ´ー`)「だから、気がノらねえのか」
 
 
( ´ー`)「久々に、うめえ酒を呑ませてもらった」
 
( ´ー`)「『開闢』のとき以来だわ。いい酒飲み、会ったことなかったからな」
 
( ´ー`)「そんな情が、未だに俺んなかに巣食っていやがんのか」
 
 
 
( ´ー`)「それとも、だ」
 
 
 
 
 
( ´ー`)「おめえが『作者』だから=A俺はおめえをいたぶろうと思えねえのぁ」
 
 
 
 
.

58 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:29:37 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
( ; ω )「……?」
 
( ´ー`)「ま、んなもん、知らねえ。どうでもいいんだけど、よ」
 
 
( ; ω )「……」
 
( ;^ω^)「………。」
 
 
 内藤が、顔をあげる。
 ネーヨは、こっちに近寄ってこようとはしない。
 それは、内藤にとって幸福だったのか、不幸だったのか――
 
 
 ネーヨは、閑話休題とばかりに、俯いてかぶりを振った。
 そして、もう一度顔をあげ、内藤に話しかける。
 距離はあるが、しかし声はしっかりと耳に届いていた。
 
 
 
.

59 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:30:10 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
( ´ー`)「……もう、満たされる術はなくなった」
 
( ´ー`)「はえーよな。つい少し前に、動いたばっかだってのによ」
 
( ´ー`)「モララーやワタナベらと違って、俺はカンペキな『拒絶』を手に入れちまった」
 
( ´ー`)「だから……その分、味気なくなっちまうんよ」
 
( ´ー`)「わかるだろ。ゲームとかで、敵のレベルを低くしても、楽しいンは最初だけってヤツだ」
 
( ;^ω^)「……。」
 
               コイツ
( ´ー`)「最初は……【全否定】さえあれば、毎日が快楽で満たされるって思ってた」
 
( ´ー`)「けどよ。そんなのは、ほんの数日だけだ」
 
( ´ー`)「毎日、さまよったぜ。満たされるモンはねえかな、ってな」
 
( ´ー`)「で、『パンドラの箱』に閉じ込められてたショボンと出会った。ありゃーいつだっけな。忘れちまった」
 
( ´ー`)「そこからは、四人の――いや、三人の『拒絶』と行動をともにした」
 
 
( ´ー`)「同志や仲間、なんてモンじゃねえ」
 
( ´ー`)「ただ、そうしときゃあ、いつか満たされる日がくるんじゃねえか、って」
 
( ´ー`)「非論理的じゃああるが、そう思ってたんよ」
 
 
( ´ー`)「そんな日が続いたが、だからといって俺を心の底から満たしてくれるやつァいたか」
 
( ´ー`)「結論から言うと、さっぱりだった」
 
 
.

60 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:30:47 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
( ´ー`)「ほかの『拒絶』をものの見事に駆逐したんだ」
 
( ´ー`)「ちったァ、俺を楽しませてくれる、満たしてくれる――そう、期待したんだがよ」
 
( ´ー`)「結局、このザマだ」
 
( ;^ω^)「…。」
 
 
( ´ー`)「余計に『拒絶の精神』が膨れ上がっただけで終わっちまった」
 
( ´ー`)「……ここまで全て、おめえの書いたシナリオだった、ってか?」
 
( ;^ω^)「………」
 
 
 内藤が、重い口を、開く。
 
 
( ;^ω^)「……いや」
 
( ´ー`)「!」
 
 
( ;^ω^)「確かに、僕は……『作者』だ」
 
( ;^ω^)「でも……この世界を動かしてるのは、僕じゃないお」
 
 
.

61 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:31:17 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
( ´ー`)「……ほう」
 
( ´ー`)「そう言えるだけン根拠、あんのか?」
 
( ;^ω^)「当然」
 
 
 
( ;^ω^)「僕の創った『世界』」
 
( ;^ω^)「それに、あんたはおろか、『拒絶』すらいなかったんだから」
 
 
 
( ´ー`)「…!」
 
 ネーヨは、眉をぴくりと動かした。
 少なからず動揺した――ところだったのだろう。
 
 しかし、彼が動揺を表にするなど、平生ではまず考えられないことであった。
 そう考えると、内藤の今の言葉は、ネーヨの想像を大きく上回っていたものだったようだ。
 
 
.

62 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:31:50 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
( ´ー`)「……そか」
 
( ;^ω^)「?」
 
 
 ――が、眉はすぐ元に戻った。
 いつも通りの涼しい顔つきで、ちいさく、ぽつりと呟く。
 その姿がどこか、哀愁で満ちていたように思われた。
 
 
 
 
( ´ー`)「……じゃあ。ハナシは、ここまででいいか」
 
( ^ω^)「!」
 
 
 
 内藤は、背筋がぞわりとした。
 
 
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63 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:33:01 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
( ´ー`)「いっぺん、試してみたかったんよ」
 
 
( ´ー`)「俺は、ほんとうに全てを否定できるのか=v
 
 
( ´ー`)「……ほんとうに『全否定』なんざしたら、世界の規律が崩壊しちまう」
 
 
( ´ー`)「だから今まではセーブしてたんだけどよ……」
 
 
 ネーヨが、ポケットに手を突っ込む。
 少々前かがみになったせいで、顔に影ができた。
 
 
 
(   ー )「満たされることのない『世界』」
 
 
(   ー )「はたして俺は、そんなもんまで、『拒絶』できンのか」
 
 
(   ー )「俺の『拒絶』と、おめえの『世界』」
 
 
 
 
 
 
(   ー )「勝負といこうぜ……『作者』。」
 
 
 
.

64 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:33:53 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
 
( ;^ω^)「……、……?」
 
 
 
 内藤は当初、彼の言わんとする意味がわからなかった。
 一瞬、やはり自分も殺されるのか、と思ったのだが
 どうやら、それはただの杞憂に過ぎなかったようなのだから。
 
 
 しかし、そんな疑問も、結果論的に言えば、
 誰に言われるでもなく、解決されることとなった。
 
 
 
 ネーヨは、とんでもないものを『拒絶』したのだ。
 
 
 
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65 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:34:23 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
 
 
(   ー )「『拒絶』は、自分の内的干渉にしか発動できねえ」
 
 
(   ー )「だが……」
 
 
(   ー )「広義的に捉えりゃあ、『拒絶』のハバは広がるんじゃねえか?」
 
 
 
 
.

66 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:35:00 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
 
(   ー )「『いっぺん死んだら、生き返らねえ』」
 
 
 
(   ー )「『いっぺん四肢を失ったら、戻らねえ』」
 
 
 
(   ー )「『いっぺん胴体を引き裂かれたら、戻らねえ』」
 
 
 
(   ー )「『いっぺん顔を壊されたら、戻らねえ』」
 
 
 
(   ー )「『いっぺんめんたま潰されたら、戻らねえ』」
 
 
 
 
 
(   ー )「んなもん―――」
 
 
 
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67 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:35:41 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
( ´ー`)「……知らねえよ。」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
.

68 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:36:23 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 直後。
 
 
 
 
 血が大量に流れ
 
 胴体から引きちぎられた四肢や下半身
 
 顎や顔の皮などで溢れていた広場が
 
 元に戻った=B
 
 
 
 
.

69 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:36:53 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
 
( ;^ω^)「……。」
 
( ;^ω^)
 
( ^ω^)
 
 
 
 
( ;゚ω゚)「―――ナアアアアああああああああっ!!?」
 
 
 
 
 
从 Д从
 
 
( <  ><  >)
 
 
/  3
 
  _
(  д )
 
 
 
.

70 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:37:30 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
 
从 Д从
 
从 Д从「……」
 
从 ゚Д从「………?」
 
 
 
( <  ><  >)
 
( <●><●>)
 
( <●><●>)「…?」
 
 
 
/  3
 
/ 。' 3「!」
 
/ ,' 3「……?」
 
 
  _
(  д )
  _
(  ∀ )「……ン…。」
  _
( ゚∀゚)「………!?」
 
 
 
.

71 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:38:20 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
 
 【全否定】。
 己を満たしてくれないこの『世界』を―――『全否定』した。
 
 
 
( ;゚ω゚)「(―――戻した!!!)」
 
 
 
 ――内藤がそのことに驚いたのには、理由があった。
 大きく分けて、二つ。
 
 うち、一つ。
 
 
( ;゚ω゚)「(負傷――完治!)」
 
( ;゚ω゚)「(百歩譲って、それはいいとしても、だ!)」
 
 
 
 
 
( ;゚ω゚)「………なんで……位置関係まで、戻ってるんだお……?」
 
 
 
.

72 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:39:03 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
 
 ゼウス、ハインリッヒ、アラマキ、ジョルジュ。
 『革命』の面々の立ち位置は、彼らが攻撃を受ける前。
 元の場所に、立っていた。
 
 
 それは、「戻った」とは少し違った。
 言うなれば、「時を巻き戻した」――だった。
 一戦を交える前の状態に、戻ってしまっていたのだ。
 
 
 そしてそれが、内藤が驚いた、第二の点。
 ネーヨが、時の流れを拒絶した≠ニいうこと。
 
 
 それもそうだろう。
 【全否定】であろうと―――『時』には、決して抗えないのだ。
 嘗て、アニジャに対し、ネーヨ本人が言ったように。
 
 
 
.

73 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:39:50 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
(   ー )「…………成功、だ。」
 
( ;^ω^)「ッ!! ま、まさか、あんた―――ッ!!」
 
 
 
 「復活した」四人はきょろきょろして、現状を把握しようとしている。
 その間に、内藤は声を張り上げて、訊いた。
 
 
 ――そして、帰ってきた答えに、なにより「拒絶」を抱いた。
 
 
 
 
(   ー )「この『世界』は、おめえがつくったわけじゃねえ」
 
 
(   ー )「となると、ひょっとすると――って、思ったわけよ」
 
 
(   ー )「『たとえ世紀の喧嘩師でも、時には抗えない』――。」
 
 
 
 
 
( ´ー`)「――……抗って、やったぜ。 ………『作者』」
 
 
 
.

74 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:40:21 ID:HP9PWHYU0
 
 
  _
( ;゚∀゚)「ッ! お、おい内藤!!」
 
 
( ;゚ω゚)
 
( ;^ω^)「――! なんだお!」
 
 
 現状を真っ先に把握したジョルジュが、慌てた様子で内藤を呼びかけた。
 我を失っていた内藤であったが、すぐに還ってきては、応じる。
 
 
  _
( ;゚∀゚)「ぷ、プロメテウスのやつ、なにをしやがった!!」
 
 
 落ち着いて、冷静に、落ち着いて―――
 そうして答えようと思っていた内藤であったが、このときばかりは、落ち着いてなど、いられなかった。
 
 自然と、声が、速く、大きく、荒くなる。
 頭が沸騰しそうなほど、思考回路はいま、オーバーヒートを起こしていた。
 そう考えると、声を発せただけまだよかった、と言えた。
 
 
.

75 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:40:53 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
( ;゚ω゚)「や――やりやがった!」
  _
( ;゚∀゚)「や……りやが、った…?」
 
 
 
 
( ;゚ω゚)「進化<b!」
 
 
( ;゚ω゚)「『拒絶』できないはずの『時間軸』まで、『拒絶』しやがった!」
 
 
 
  _
( ;゚∀゚)「時間……だと……?」
 
( ;゚ω゚)「つまり―――」
 
 
 
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76 名前:同志名無しさん :2013/04/02(火) 15:41:39 ID:HP9PWHYU0
 
 
 
 
 
 終わらない。
 
 永久に続く、拒絶。
 
 悪夢、絶望を軽く凌駕した――拒絶。
 
 
 
 終わることのない『世界』で
 
 これから、絶え間なく続く 「拒絶」 が、幕を開けようとしていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 今からはじまる 「拒絶」 に、終わりなど―――ないのだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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