- 830 名前:同志名無しさん :2013/02/10(日) 13:38:56 ID:a7PwKI260
-
「あなたは?」
「『拒絶』イチのイキでクールなナイスガイ、モララー様だ」
「……よろしくお願いします」
「モララーにはカラスの死骸でいいですかね」
「お、やったれやったれ。モララーなら喜んで食うぞ」
「食わねーよ! 俺にも食えるものくれよ!」
「………」
「どうした、トソン」
「あ、いや……なんでもないです」
「気になるな。言えよ、聞き流してやる」
「……ちょっと」
「ちょっと?」
「昔のことを、思い出していただけです」
.
- 831 名前:同志名無しさん :2013/02/10(日) 13:39:30 ID:a7PwKI260
-
○登場人物と能力の説明
( ^ω^)
→この世界の『作者』。
/ ,' 3 【則を拒む者《ジェネラル・キャンセラー》】
→あらゆる力及び力の法則を『解除』する《特殊能力》。
从 ゚∀从 【正義の執行《ヒーローズ・ワールド》】
→『英雄』が負けない『世界』を創りだす《特殊能力》。
( <●><●>) 【連鎖する爆撃《チェーン・デストラクション》】
→相手の手負いを『連鎖』させる《特殊能力》。
( ・∀・) 【常識破り《フェイク・シェイク》】
→自然のうちに『嘘』を混ぜる《拒絶能力》。
(゚、゚トソン 【???】
→時や力を『操作』した『拒絶』の少女。
( ´ー`) 【???】
→『拒絶』と関わりの深い男。
_
( ゚∀゚) 【未知なる絶対領域《パンドラズ・ワールド》】
→存在してはならない『領域』を創りだす《特殊能力》。
( ´_ゝ`) 【771《アンラッキー》】
→『不運』を引き起こすが、『能力者』でも『拒絶』でもない男。
(*゚ー゚) 【最期の楽園《ラスト・ガーデン》】
→『楽園』を『保守』し、そちらにワープする《特殊能力》。
.
- 832 名前:同志名無しさん :2013/02/10(日) 13:40:14 ID:a7PwKI260
-
○前回までのアクション
(゚、゚トソン
→『拒絶』化
( ・∀・)
→『異常』が起こる
_
( ゚∀゚)
/ ,' 3
( <●><●>)
→動揺、焦燥
( ^ω^)
(*゚ー゚)
→傍観
( ´_ゝ`)
( ´ー`)
→対峙
.
- 833 名前:同志名無しさん :2013/02/10(日) 13:41:57 ID:a7PwKI260
-
第三十話「vs【常識破り】[」
アニジャは身構えた。
しかし、ネーヨがなにかする、ということはなかった。
ネーヨは、警戒するアニジャにお構いなしで、続けた。
( ´ー`)「おめえは、言っちゃあ、裏切ったんだ」
( ´ー`)「銀行を襲った動機が妹の手術代だったとして、その強盗の事実が消えるわけじゃあ、ねえ」
( ´ー`)「それと、一緒よ」
( ´_ゝ`)「……」
掌から汗が滲んでくるのを、感じる。
気のせいか、軽い眩暈も感じてきた。
深く呼吸をするときにあがる肩が、震えている。
ネーヨが一歩、前に出る。
もう、おしまいか――
そうは思うが、しかし、だからといって自分の計画を投げ出すわけにはいかない。
『不運』には『不運』でしか対抗できないのだ。
オトジャを消し去るには、必ず、自分がいる。ジョルジュだけでは、消し去れやしない。
アニジャは、そう思っている以上、ここで死ぬわけにはいかなかった。
だから、どこまでも、足掻こうと試みる。
( ´_ゝ`)「なぜだ」
( ´ー`)「?」
ネーヨが、三歩目を踏み出した足を止める。
変わったアニジャの声に、止めさせられたのだ。
.
- 834 名前:同志名無しさん :2013/02/10(日) 13:42:28 ID:a7PwKI260
-
( ´_ゝ`)「あんたらを襲った、とかなら、言い訳はしない。だが」
( ´_ゝ`)「『裏切り』が、どうしてそこまで深刻な問題に関わってくる」
( ´ー`)「………」
( ´_ゝ`)「答えろ」
窮地に立たされたからか、アニジャが強気になった。
本来ならここでネーヨにすぐに殺されるのであろうが、ネーヨもネーヨで考えるところがあったので、踏みとどまった。
少し考えてから、ネーヨは口を開いた。
その開き方が、自分を焦らしているようにアニジャは思えた。
( ´ー`)「拒絶ってのは」
( ´_ゝ`)「?」
( ´ー`)「拒絶ってのは、心が引き起こす、最悪な反応だ」
( ´ー`)「物理的な攻撃には、拒絶は起こらない。起こるとしたら、反射だ。中学で習ったろ」
( ´_ゝ`)「……」
( ´ー`)「つまり、拒絶ってのは、精神的問題だ」
. アンチ
( ´ー`)「拒絶が元となって生まれた『拒絶』もまた、言ったら精神の具現化された姿なわけよ」
( ´ー`)「心の中でしか生まれねえ拒絶心が、形を成した、そんな感じだ」
( ´_ゝ`)「…………」
.
- 835 名前:同志名無しさん :2013/02/10(日) 13:42:58 ID:a7PwKI260
-
( ´ー`)「一方で、『裏切り』。裏切りってのは、物理的な攻撃じゃ、ねえ。心理的、精神的な攻撃だ。
仲間を裏切ってそいつを殴ったとしても、物理的な意味で言えばそれはただの『殴打』で、
精神的要素を除けば『裏切り』なんて概念はそもそも存在しなくなる。
つまり、裏切るってのは、精神を攻撃する行為なんだよ」
( ´ー`)「存在が精神体の『拒絶』に、精神面での攻撃を図って、それが深刻な問題に発展しねえってハラか?」
( ´_ゝ`)「………………」
長い説明ではあったが、それで、アニジャはわかった。
事情を理解したと同時に、『拒絶』の実態にもまた一歩、近づけた。
そう考えると、確かに、自分のとった行動が深刻だな、と思った。
続けて、ネーヨが説明をする。
アニジャには、納得した上で、死んでもらいたいのだろうか。
ネーヨの、中途半端な人間味が顔を出したときだった。
( ´ー`)「それに。理屈だけじゃなくて、ちゃんと証拠もあるんだ」
( ´_ゝ`)「証拠?」
( ´ー`)「モララーよ」
( ´_ゝ`)「?」
アニジャは首を傾げた。
どうして、ここにモララーが出てきたのだ、と。
.
- 836 名前:同志名無しさん :2013/02/10(日) 13:43:32 ID:a7PwKI260
-
( ´ー`)「強え。確かに、強えわな、【常識破り】。【ご都合主義】のパワーアップ版みてえなもんなんだから」
( ´_ゝ`)「……?」
( ´ー`)「だけどよ。むろん、モララーのほうが劣ってる点もある。
そのうちの一つが、小回り効かねえんだよ。アレだと」
( ´_ゝ`)「…あ、ああ……」
( ´ー`)「だが、んなもん、ちっせェ。
そんな点なんかよりも、もっとでけえ、致命的な弱点があんだ、モララーには」
( ´_ゝ`)「致命的、だと?」
( ´ー`)「そうよ。簡単だ」
( ´ー`)「モララーは、裏切りに弱えんだ」
.
- 837 名前:同志名無しさん :2013/02/10(日) 13:44:05 ID:a7PwKI260
-
◆
( メ∀・)「……ど……うなって…んだ………」
/;,' 3「【常識破り】が……」
从;゚∀从「使えない=I?」
モララーが、右手にこべりついた血を拭いもせず、ただ震える両手を見て、呟いた。
涙は流れてこない。が、号泣でもしているかのような、そんな心境だった。
【常識破り】は、嘗て、ハインリッヒにもアラマキにも、ゼウスにもその脅威を見せつけた。
スキルを使えば相手を即死させることもできるし、瞬間移動や復活もお手の物。
【ご都合主義】と違い、何度殺しても、モララーの重ねてきた『嘘』が尽きない限り、彼は何度でも蘇る。
そしてその『嘘』の数は、数時間前にモララーが言ったように、極めて非現実的な量が告げられている。
加え、『嘘』とは思考相当で『混ぜ』られるため、たとえ残りひとつにまで『嘘』を減らしたとしても、
次の瞬間にはまたありったけの『嘘』を補充することができるのだ。
彼ら三人の、打倒『拒絶』を掲げる上でのもっとも厄介な存在。
それが、モララー=ラビッシュだった。
しかし。
そんな彼が。
【常識破り】な彼が。
明らかに、崩壊した。
『嘘』が吐けない、と言うのだ。
.
- 838 名前:同志名無しさん :2013/02/10(日) 13:44:43 ID:a7PwKI260
-
いくら相手が敵だとは言え、このことに驚愕を隠せるはずもない。
ハインリッヒたちは、まるでそれが自分の身に起きたことであるかのように、動揺した。
そしてそれは、彼女たちだけではなかった。
/;,' 3「ブーン君! きゃつに、いったい何が、起こっ……た………?」
アラマキが振り返る。
内藤の、信憑性のある見解を訊こうとしたのだ。
しかし、そう訊こうとする前に、その言葉は自然と止まった。
内藤も、同じく動揺していたのだ。
( ;゚ω゚)「………ばか、な……っ!」
从;゚∀从「ッ! おいデブ、こりゃーいったいどういうことなんだ!」
内藤の異変にハインリッヒも気づくが、落ち着いていられない事態なので、問う。
しかし、彼女の求める答えが返ってくることは、なかった。
( ;゚ω゚)「知るかお! 【常識破り】に吐けない『嘘』はないんだからな!」
( <●><●>)「なに……?」
内藤のその言葉を訊いて、ゼウスもいよいよ事の重大さを実感することができた。
内藤がそう言う以上は、モララーがこのように【常識破り】を使えなくなるという事態など、本来はありえないのだろう。
しかし、実際に起こってしまった以上、なんらかの要因が絡んでくるのだろう。
内藤の知らないような、『異常』が。
そこでゼウスもなるべく、考えられるケースを思い浮かべていった。
網膜を、数多くのデータと経験則が埋め尽くす。
.
- 839 名前:同志名無しさん :2013/02/10(日) 13:45:25 ID:a7PwKI260
-
( <●><●>)「……っ」
すると、人外の頭脳を誇るゼウスは、ひとつのデータを見つけた。
思いのほか、すぐにそれは見つかった。
少し前、モララーと交わしていた会話から、それを見つけ出した。
一方の内藤も、考えられるこケースを、記憶の引き出を次々に引っ張り出す。
『作者』だからこそできる、荒業だ。
モララーと云う男、【常識破り】と云うスキルを生み出していたときに、記憶を遡らせる。
『拒絶』という、この世界のさきがけとなった作品での、内藤の自信作だ。
ショボンは、『現実』の醜さ、理不尽さに。
ワタナベは、些細なことから繋がってゆく『因果』の恐怖に、拒絶を感じた。
そして、モララーは―――
( ;゚ω゚)「………っ!」
(;^ω^)「ま、待てお! ひょっとすると――」
そこで、ひとつの可能性を、引っ張り出した。
『拒絶』になるためには――そもそも、『拒絶の精神』を手に入れるためには、
狂気に満ちたり状態異常を引き起こすほどに、特定のなにかを拒絶しないといけないのだ。
ショボンにおける『現実』、ワタナベにおける『因果』がそれにあたる。
モララーにおけるそれは、確か、『拒絶』との戦いが幕を開けたときに、ゼウスに言った記憶がある。
――そんな遠まわしでないと思い出せないというのはおかしいのだが――内藤は、それを思い出した。
(;^ω^)「モララーは――」
( <●><●>)「――同志だと信じていた彼女に、攻撃された」
( ^ω^)「!」
内藤が思わず口を閉じる。
.
- 840 名前:同志名無しさん :2013/02/10(日) 13:46:56 ID:a7PwKI260
-
( <●><●>)「そして、過去のトラウマ――モララーが死んだ日≠フことを思い出してしまい、
自らの《拒絶能力》がうまく使えなくなった」
( <●><●>)「そういうところでしょうか」
( ^ω^)「……なんで、それを――」
( <●><●>)「そんなことはどうでもいい」
ゼウスは、説明する時間も惜しいため、強引に話を続けた。
その声には、珍しく、焦燥が感じられた。
( <●><●>)「彼を――モララーを殺すには、いましかない」
( <●><●>)「となれば……すべきことは、ひとつ」
ゼウスの言葉を、アラマキ、ハインリッヒ、ジョルジュが、聞き取る。
その瞬間、だ。
从;゚∀从「チクショウ!」
/;,' 3「こうなったら一か八かじゃ! おっぱじめるぞ!」
_
( ;゚∀゚)「クソッ!」
――合図をしたわけでもないのに、その三人は一斉に、飛び出した。
ゼウスも遅れずに、彼らを追って飛び出す。
言うまでもないだろう。
モララーの身に『異常』が起こっている今しか、勝機はないのだ。
であるならば、いまのうちに、一気に畳み掛ける。
.
- 841 名前:同志名無しさん :2013/02/10(日) 13:47:32 ID:a7PwKI260
-
. モララー
『 拒 絶 』を拒絶するのは、いましか、ない。
【常識破り】と同盟四人との、己をかけた全面戦争が、幕を切った。
.
- 842 名前:同志名無しさん :2013/02/10(日) 13:48:08 ID:a7PwKI260
-
◆
( ´ー`)「わかったか?」
( ´_ゝ`)「……む」
言われても、自分が実際にその様子を見たことはない。
モララーが誰かに裏切られて、それが原因で奴が崩壊する、などというような。
いまの話に根拠はあろうと証拠はなく、事実を見せ付けられたわけでもないので、
アニジャはただ返答を濁らせる程度でしかできなかった。
一歩、ネーヨが近寄る。
一歩、アニジャが退く。
胸がきゅうきゅうと音をあげて締め付けられる。
ネーヨの語調から、殺気は感じられない。
しかしアニジャは、それを信用しようとは思わなかった。
なんたって、相手は人間ではない。
「拒絶」の具現化された、人間の皮をかぶった化け物――なのだから。
きっと、毎朝にパンを食べるのと同じような様子で、自分を殺すだろう。
そして、その罪悪感や背徳感には、決して縛られないのだろう。
それが、己の知っているネーヨ=プロメテウスなのだ。
アニジャは、必死に、活路を見出す。
不意を衝いて逃げることが、不可能なわけではない。
ここらは木々が生い茂っており、視界からはずれる程度なら容易なのである。
.
- 843 名前:同志名無しさん :2013/02/10(日) 13:48:41 ID:a7PwKI260
-
しかし問題があったとすれば、それはネーヨから逃げても無駄、ということだった。
アニジャが逃走を開始したときに抱いた懸念も、それに当たる。
物理的に逃げられた、その『現実』を『拒絶』する。
奴が自分から逃げた、その『真実』を『拒絶』する。
逃げられてしまった自分の『運命』を『拒絶』する。
奴の持つ事情の成すあらゆる『因果』を『拒絶』する。
つまり、どこに逃げようがいかなる心的要因があろうが、アニジャは逃げられないのだ。
一瞬後には、あっさりと首を胴体から引きちぎられるだろう。
ネーヨは、相手をこの世界から「拒絶」という大義名分をかかげて消す、ということはできない。
文字通りそれは「拒絶」であるため、己に関係することしかスキルを発動できないのだ。
もっとも、そうだとしても、それこそ彼にとっては「知らない」ことなのだが。
( ´ー`)「……話は、こんくらいでいいだろ」
( ´_ゝ`)「………っ」
アニジャが露骨に後退する。
視線はネーヨのそれとかち合わせたまま、しかし逃げ腰になる。
アニジャは、とたんに走り出そう、とはしない。
そうすると、向こうは遠慮なしで自分を殺しにかかるからだ。
ならば、こうして話の利く状態のまま逃げ出そうとするほうが、はるかに合理的だった。
アニジャはやはり逃走の活路を見出せない。
目的は、逃げること。現実は、逃げても無駄。
つまり、完全な「詰み」、もしくは「必至」。
――だが、あるいは。
アニジャは、己の可能性――いや、『運命』に身を委ねようとした。
天命に結果を預けるなど、本来ならばありえないことだが、アニジャにとってはそれしか方法がなかった。
つまり、【771】による、避けようのない『不運』がネーヨに降りかかることを、祈るのだ。
当然、それは所詮「運」。狙って発動できるものではない。
奇跡、偶然、まぐれ。そう云ったものに、アニジャは賭けた。
今後の『命運』を。
.
- 844 名前:同志名無しさん :2013/02/10(日) 13:49:27 ID:a7PwKI260
-
( ´ー`)「おっと、ひとつだけ言っておく」
( ´_ゝ`)「…な、なんだ」
すると、アニジャの考えを見透かしたのか、ネーヨが口を開いた。
嫌な予感しかしない。だが、甘受する腹構えで聞く。
( ´ー`)「おおかた、おめえは『不運』が起こることを期待してるんだろうが、よ。そいつはできねえ」
( ´_ゝ`)「……なに?」
アンラッキー ム シ
( ´ー`)「俺は、己に降りかかる『 不 運 』を『拒絶』することにした」
( ´ー`)「急に腹を壊すとか、転ぶとか、『拒絶』し損ねるとか――
んな『不運』は、ねえと思え」
( ´_ゝ`)「ッ!!」
最初は、「それはできない」という言葉は、ただのハッタリだと思った。
そう言って相手を不安がらせることで、へたな抵抗をさせないようにするためだ。
しかし、当然というべきか、それはただのハッタリではなかった。
ネーヨはたった今、スキルを発動したのだ。
『オール・アンチ』。
内藤が言っていた、言葉。おそらくは、これが能力名。つまり、ネーヨの真名。
全てを拒絶する者につける名としては、相応しいものだ。
だからこその畏怖、現実味、絶望を、押し付けられてしまう。
.
- 845 名前:同志名無しさん :2013/02/10(日) 13:50:16 ID:a7PwKI260
-
スキルを発動――いや、装備して、アニジャに歩み寄る。
その歩幅や速度は依然変わらないのに、アニジャにとっては先ほどよりもかなり速くなっているように思えた。
その一歩一歩が、己の命を削る鉋のように思える。
あまりの恐怖と拒絶に、アニジャは歯をがちがちと奮わせるようになった。
だが、そうしていると、あっさり殺されてしまう。
歯を食いしばって、ネーヨに背を向け、転びそうになりながらも全力疾走をはじめた。
禁じ手だ、と自分でわかっていた、最悪の方法だ。
だが、それしか現状、方法はなかった。
足が疲労でまいっていたはずなのに、その痛みすら発しないで、足は動いた。
重さも、地を蹴る感触も、感じない。
だが、そのことにすら気づかないで、顔をぐにゃぐにゃに歪め、アニジャは駆ける。
ネーヨが、それを追わないはずはない。
十メートルほど差を空けられてから、ネーヨは大きな息と同時に、「うしっ」と声を発した。
ただでさえ膨れている筋肉が、更にもう一回り膨れ上がった。
( ´ー`)「いいぞ、いいぞ。もっと足掻け、もっと俺を拒絶してくれや」
( ´ー`)「その足掻きを『拒絶』してこっちの力を見せ付けるほうが、気持ちいいんだからよ」
( ´ー`)「しかも、ある意味じゃあモララーでさえ適わねえ人材だしな、おめえは」
( ´ー`)「……そうだな。なんつーか、ひっさびさに……」
「満たされそうだ」。
その一言を残して、ネーヨは、体躯を低くしては駆け出した。
スタートダッシュを決める際に蹴った地が、砕けた。
同時に、風を切る、轟音のようなものも断続的に鳴るようになった。
.
- 846 名前:同志名無しさん :2013/02/10(日) 13:50:52 ID:a7PwKI260
-
(;´_ゝ`)「―――ッ!!」
その音は、全力疾走しているアニジャのもとにも、心なしか届いたようだ。
同時に湧き上がってくる、更なる恐怖と拒絶。
だが、目を背けたり足を休めたりなんてことは、いっさいできない。
ただがむしゃらに、走るだけだ。
ネーヨが足を地につけ蹴り離すたびに、地のその箇所が砕ける。
速度こそゼウスやハインリッヒには劣るが、その分威圧感は段違いだった。
後ろから迫ってくる恐怖――に関しては、ネーヨの走りに適うものはいないだろう、それほどのものだった
(;´_ゝ`)「(………こうなったら!)」
おそらく、ネーヨは、いまは自分を殺すことよりも、満たされること≠ノ重点を置こうとしている。
それも、自分の意思にかかわらず発動してしまう【771】があるから、だろう。
なにもしていなくても自分に刃向かってきてくれる、この能力に、ネーヨは惹かれている。
だったら。
惨めでも、無様でも、滑稽だと笑われてもいい。
ネーヨ=プロメテウスと、戦う。
.
- 847 名前:同志名無しさん :2013/02/10(日) 13:51:45 ID:a7PwKI260
-
逃げを選んだら、捕まることが『運の憑き』をあらわす。
しかし、拳を見せたら、どうなるだろうか。
きっと、ネーヨは、どこまで足掻こうとするのか見たさに、加減をしてくるだろう。
すると、その分【771】が発動する機会は多くなる。
つまりその分だけ、チャンスが生まれるということだ。
だから。
アニジャは立ち止まり、振り返った。
ネーヨも、慣性を押し殺さないように減速する。
そして、先ほどまでとなんら変わらない距離を保って、アニジャが、構えた。
両足を大きく広げ、腰を低くし、上体を前に倒す。
両手を握りしめ、不恰好ながらも、攻撃の姿勢を見せる。
それは、誰が見ても、攻撃態勢と認めざるを得ない構えだった。
( ´ー`)「………くッ」
(;´_ゝ`)「……?」
( ´ー`)「く……くくククク……っ」
( ー )「ぐくククククくくァ………っ……、…ッ!」
それを見て、ネーヨが、不敵に笑む。
どころにとどまらず、前かがみになっては、溢れてくる笑い声を噛み殺そうとした。
アニジャのその決断に、思いのほか、満たされたのだ。
「これは、いい」。
「こいつぁ、いい」。
「これだ、こういうのを俺は待っていた」。
――そう、ネーヨは感じた。
.
- 848 名前:同志名無しさん :2013/02/10(日) 13:52:25 ID:a7PwKI260
-
同時に、全身の筋肉を、本来在るべき姿にまで膨らませた。
体長二メートル、を疑わざるを得ないほど、その姿は巨大化≠オた。
そして、いままでの姿は、いわば「手加減」だったのだろう、ともわかった。
(;´_ゝ`)「ッ!?」
( ー )「イーイことを教えてやるぜ……」
(;´_ゝ`)「…な、なん……」
( ー )「俺ぁ……ゼウス相手にゃ、喧嘩で勝つこたァねえんだが……」
( ー )「単純な破壊≠フ力なら……」
ネーヨの笑みが、嘗てワタナベ、ショボンの見せていた「拒絶の笑み」に豹変った。
( ー )「圧勝するぜ」
―――直後、その場で地割れが起こった。
.
- 849 名前:同志名無しさん :2013/02/10(日) 13:53:08 ID:a7PwKI260
-
◆
从#゚∀从「だアッ!!」
まず最初にモララーに飛び掛ったのは、ハインリッヒだった。
ゼウスは初速こそ四人のなかで最速だ。
しかし、『英雄』となったハインリッヒの脚力には、劣る。
地面を砕かず、その分の力を前に向かわせる。
そうして、ハインリッヒは俊足に似合う動きを見せながら、モララーに襲い掛かった。
躊躇いなく、最初から大技を見せる。
軽く跳ねて、上体を左に捻ってはその弾みをつけて右脚を蹴り放った。
アラマキの「破壊」に並ぶであろう、人間が叩き出してはならない威力を生む蹴りだった。
しかし。
(# メ∀ )「嘗めるなアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」
从;゚∀从「…ッ!」
.
- 850 名前:同志名無しさん :2013/02/10(日) 13:53:41 ID:a7PwKI260
-
怒号を発したかと思うと、モララーは右の裏拳でハインリッヒの蹴りを止めていた。
威力がかち合ったようで、一瞬二人とも制止した。
ハインリッヒがその反動を利用して後ろに退こうとする。
入れ替わりでモララーに飛びかかったのは、ゼウスだった。
彼がハインリッヒに気をひかれているうちに、背中から心臓を貫こうと手刀を突きつけた。
だが、それも無駄だった。
(# メ∀ )「―――ッ!!」
( <●><●>)「!」
モララーが声にならない声を発したかと思うと、彼はゼウスの後ろに立っていた=B
その、なんの前兆も見せずに魅せる、『常識破り』なワザ。
それに見覚えがあったゼウスは、一瞬気が散ってしまった。
それを見定めて、モララーが、後ろに引いていた拳をゼウスに突きつける。
ゼウスの背中を思いっきり殴りつけ、ゼウスを仰け反らせた。
その動きを見て、遠くから彼らを見ていた内藤は驚愕した。
( ;゚ω゚)「―――ッ!!」
( ;゚ω゚)「………ど…どういうこと……だ……?」
内藤の驚愕を、ハインリッヒとアラマキとジョルジュも感じていた。
それもそうだろう、今しがた彼が見せたワザは―――
从;゚∀从「【常識破り】ッ……!?」
_
( ;゚∀゚)「使えなくなったんじゃ……ないってか!?」
.
- 851 名前:同志名無しさん :2013/02/10(日) 13:54:19 ID:a7PwKI260
-
(# メ∀ )「……………。」
( 、 トソン
モララーは、トソンから裏切り≠フ一発をもらった。
そんな彼女は、その一発で気力を使い果たしたのか、地に倒れている。
そして、その一発が、モララーの創りあげた「モララー」を、砕いた。
つまり――【常識破り】を、使用不可にした。
四人と内藤はそう思ったがゆえに、モララーから勝機を見出し、飛び掛ったのだ。
しかし、『真実』は、外見と中身とが正反対だったようだ。
体勢を取り戻しつつ、ハインリッヒとゼウスは後退する。
モララーの北東にハインリッヒ、北西にゼウス、真南にアラマキとジョルジュが位置する情勢となった。
中心部にいるモララーが、情勢で言えば一番不利であった。
しかし、少なくとも彼を囲んでいる四人が、優勢を感じることはなかった。
皆等しく、ひどい動揺と、ひどい拒絶を感じていた。
_
( ;゚∀゚)「まさか……」
从;゚∀从「な、なんだよ」
モララーは冷静を失ったからか、彼らに襲い掛かろうとはしないで、
ただ立ち尽くし、ひたすら深呼吸を続けていた。
その隙に、ジョルジュが冷静に分析をする。
_
( ;゚∀゚)「奴が、【常識破り】を失ったんじゃなく……」
_
( ;゚∀゚)「傷のほうが【常識破り】を打ち消した=c…?」
.
- 852 名前:同志名無しさん :2013/02/10(日) 13:54:56 ID:a7PwKI260
-
从;゚∀从「!? ど、どういう意味だッ!」
_
( ;゚∀゚)「奴が『嘘』を吐けないのは、あの女が創った傷に対してだけだっつー話だ!
つまり、その他のことに対する『嘘』はなんら変わってねえってことよ!」
从;゚∀从「………ッ! じゃあなんも変わんねーじゃねーか!!」
/ ,' 3「…いや。変わったこと、はあるぞ」
从;゚∀从「………な、なんだ?」
/ ,' 3「きゃつめを見てみぃ」
从 ゚∀从「……なに?」
言われて、ハインリッヒが、モララーを直視する。
気のせいか、彼のまわりを、黒い靄のようなものが渦巻いているように見えた。
顔を俯かせ、肩をゆっくり上下させ、右手は顔の例の傷に当てている。
そのモララーの様子を見て、ハインリッヒは、どうしようもない恐怖を感じた。
見ただけで精神を壊されてしまいそうな、それほどまでの畏怖を、受け取ってしまった。
/ ,' 3「モララーを……」
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- 853 名前:同志名無しさん :2013/02/10(日) 13:55:40 ID:a7PwKI260
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(# メ∀ )
「……ついに、モララーを怒らしてしまった、っちゅーことじゃ」
―――常識破り、始動。
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- 854 名前:同志名無しさん :2013/02/10(日) 13:56:24 ID:a7PwKI260
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◆
地殻変動か、大規模な地震が起こったのか。
アニジャとネーヨの間を引き裂くかのように、プレートがずれてしまった。
刹那、その場――ネーヨ側の向かいに、断層がむき出しにされた。
断続的に響く轟音とともに、その断層は、ネーヨの視界を完全に遮ってしまった。
――ネーヨの周囲の大地が、徐々に下に落ちつつあったのだ。
(;´_ゝ`)「ッ!」
( ー )「……なんだァ? こいつァ……」
アニジャもネーヨも、その突如として起こった『異常』を不審に思った。
一歩、二歩と後退をした上で、アニジャは現状を把握しようと努める。
しかし、わからない。
もともとのパニックも相俟って、アニジャは冷静な思考をすることができなかった。
それはネーヨもだった。
なんで、急に地割れが起こって――そのうえ、自分が大地のなかに埋められそうになっているのだ。
アニジャのことはあとにするとして、まずはせめて脱出し、地上に戻らないと、生き埋めになってしまう。
仮に生き埋めになってしまったとしても、彼なら無傷で生還できるのだが、今は事情が違った。
戦闘態勢を完全に解いたアニジャは、なにはともあれ
今が好機だと見て、ネーヨとは反対の方向に向かって走り出した。
轟音はなおも鳴り響く。次第に、その音が大きくなっていった。
地面の崩れる音、地中にあった岩がこぼれ落ちる音、地表が割れる音――
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- 855 名前:同志名無しさん :2013/02/10(日) 13:57:18 ID:a7PwKI260
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ネーヨは必死に、自分の頭上を塞ごうとして落ちてくる岩やら土やらを次々に破壊していった。
一発拳を振るうたびに、その岩々は粉々に粉砕されていく。
が、それが却って自分を埋める要因となってしまったようで、徐々に身動きが取れなくなってきた。
自然の力とは想像以上に強力なもので、たとえば台風なんかの力は、人間一人では決して適うことはないとされる。
それと同様に、ネーヨを地中に埋めようとするその断層の力に、ネーヨは簡単に抗うことはできなかった。
四肢を中央に折りたたんで寄せ、まるくなる。
そして、ひとまずこの『異常』が収まるのを待つことにした。
(;´_ゝ`)「これは……」
(;´_ゝ`)「……考えてる暇は、ない。…行くか」
アニジャがそう独り言をこぼして、そのまま逃げるように研究所のほうへと向かう。
足取りは、先ほどよりは若干重かった。
あのネーヨであろうと、このように地に呑まれてしまっては、そう簡単に抜け出すことはできないだろう。
当然、この程度で死ぬ男ではない。それは自分がよくわかっていた。
が、それでも、逃げきれるほどの時間的猶予は与えてくれるだろう―――
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- 856 名前:同志名無しさん :2013/02/10(日) 13:57:53 ID:a7PwKI260
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そして、アニジャが去ったあと。
その場に、数人の存在を示唆する足音と、それに伴って声が聞こえてきた。
発せられた声のどれもが、女性的なものだった。
「地割れ……?」
「おっかしいなー。誰か、ここで殺りあってたのかなー?」
「今はどうでもいいだろう。それよりも」
「ああ、わかってる。わかっているのだが……」
「どーしたの、ねーちゃん」
「ここらへんに気配こそ感じるのだが、どうも、曖昧になってるんだ」
「なんだ、それ」
「知らない……が、何者かの作為は感じるな」
「ひぇー。怖ーい」
「……」
「ム? どうした」
――赤い髪を風に流して、少女はたった今『異常』の起こった大地に目を遣った。
つられるようにそちらに目を向けつつ、黒髪の少女が訊く。
なにを感じたのか、もともと無愛想な彼女は、更に無愛想になって答えた。
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- 857 名前:同志名無しさん :2013/02/10(日) 13:58:32 ID:a7PwKI260
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「……おい。あそこから、とんでもないものを感じるぞ」
「トンデモ? あらら、ひょっとしてバクダ――んんっ」
「……確かに。何か、感じ……イヤ。なんだこれ。なんかヤバい感じがするよ」
「本当だな……」
紫か、藍か、群青か――
寒色系の色がうっすらと混じった少女が、一瞬おどけたかと思えば真剣な顔に戻った。
そんな彼女を見て、黒髪も肯く。
その大地から、どこか、とんでもない狂気に満ちたオーラを感じとれたのだ。
――彼女たちは、ネーヨ=プロメテウスの存在を、知らない。だから、そう呑気に話すことができた。
しかしそれでも、胸を巣くう黒いオーラを、無視しておくことはできなかった。
「ひとまずコレ中断して、もう帰らね? アイス食べたい」
「ここまできて、かよ」
「フン……私は別に、構わんが、な」
すると、その大地が、少し盛り上がってきた。
その内側で、ネーヨが、少しずつ土を掘って、地表にでようとしていたのだ。
徐々に、その土を殴る音が鮮明に聞こえてくる。
彼女たちの心臓の鼓動は、若干速くなった。
また、それを見て、いよいよおぞましい感情が強まった。
三人は、踵を返し、その大地の位置にとって死角となるであろう方角に、足先を向けた。
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- 858 名前:同志名無しさん :2013/02/10(日) 13:59:21 ID:a7PwKI260
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風が吹きぬけ、彼女たちの髪をさらう。
そのとき、ようやく三人は顔を見合わせた。
川 ゚ -゚)「目印は、この赤い石でいいだろう」
トル゚〜゚)「よし、とっととヤってくれ」
lw´‐ _‐ノv「はいはいーと。じゃ、いっくよー」
寒色がかった髪の少女が両手を広げると、
その場から三人は消えて、かわりにフォークが三本現れた。
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- 859 名前:同志名無しさん :2013/02/10(日) 14:00:39 ID:a7PwKI260
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◆
「おらアアアアアアアッッ!!」
少女たちが消えた直後、タイミングを見計らったかのように、地中からネーヨが飛び出した。
地雷でも爆発したかのように、真上五メートルほどにいたるまでの高さを、土や泥が舞う。
跳躍して、そのまま少し前に着地する。
体中泥まみれであったが、一瞬するとそれらは全部消えて、元の姿に戻った。
ネーヨが険しい顔をして、四方八方を、ゆっくり、首の向きを変えて見遣る。
そのどこにも、人影や気配らしきものは見受けられない。
そうとわかって、ネーヨは眉間にしわを寄せた。
( ´ー`)「……チッ。なんだったんだ、今のは」
腕を組み、独りごちる。
そして、唾を吐いた。
( ´ー`)「………待てよ。まさか……」
ひとつ心当たりが浮かび、眉間のしわを消した。
代わりに、彼の肺が一回り大きくなった。
( ´ー`)「今のは………『不運』だった……ってのか?」
それが、一番わかりやすい、且つ真っ先に浮かぶ、『異常』の原因だった。
「しかし」と挟んで彼は続ける。
ム シ
( ´ー`)「『不運』は『拒絶』したんだがなあ……―――いや、待て」
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- 860 名前:同志名無しさん :2013/02/10(日) 14:01:33 ID:a7PwKI260
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( ´ー`)「よく考えたら、俺は俺にかかる『不運』しか=w拒絶』してなかったな」
( ´ー`)「いまのが『不運』だとすっと、その対象は俺やあいつじゃなくて、この地面……もっと言うなら、この星、か」
( ´ー`)「………そうか。まんまとやられちまったぜ」
納得のできる理由を見つけ、ネーヨは肺の中の空気を、一気に吐き出す。
だんだん、自分の境遇が情けなく思えてきたときだった。
腕組みを解いて、両手をジーパンのポケットに突っ込んだ。
アニジャを追う気力もなくなり、ただその場に立ち尽くす。
だんだんと、ネーヨの思考に「面倒」の二文字が浮かんできた。
( ´ー`)「ったくよォ……兄といい、弟といい、面倒な奴らだ」
( ´ー`)「確かに、『運命』を『全否定』すれば、この世界は崩壊する」
( ´ー`)「ある程度までなら『拒絶』できっが……それでこのザマか、クソ」
( ´ー`)「【771】に【運の憑き】……」
( ´ー`)「アイツは、よくまあ、こんなとんでもねえバケモン二人を産んだもんよ」
フン、と鼻を鳴らし、嘗ての同輩を思い浮かべる。
あいつといい、こいつといい、どうして嘗ての同輩たちが、己の願望を妨害しあうのだろうか。
ネーヨは、ふと、そう思った。
自分は、もう、何もかもを投げ捨てたいだけなのに―――
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- 861 名前:同志名無しさん :2013/02/10(日) 14:02:06 ID:a7PwKI260
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( ´ー`)「…ッ」
するとネーヨは、肌に、電磁波に近い痺れを感じた。
髪の毛や鳥肌が逆立つような錯覚に見舞われる。
心が侵食されることはない。
途方にくれた絶望を味わうこともない。
しかし、味わい慣れたはずの、このオーラ。
それがどこかいつもと違って、不純物を取り払った、いわば完成品のように思えた。
―――『拒絶』。
それがたった今、この星を呑み込んだ。
それも、これほどすさまじいオーラを自分以外の人間から感じられるとは、久しぶりだ。
ネーヨはそう思ったうえで、今の『拒絶のオーラ』の発信源を、直感で探った。
直感、とは言うが、ネーヨの直感には、結果論ながら信憑性があった。
それも、そうだろう。
続けざまに放ったその答えが、みごとに合っていたからだ。
( ´ー`)「……トソン」
( ´ー`)「あいつ、やっと『拒絶』化したのか」
( ´ー`)「ヘッ……見せ付けてくれんじゃねーか。今のは、びびッとキたぜ―――」
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- 862 名前:同志名無しさん :2013/02/10(日) 14:02:54 ID:a7PwKI260
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. ワールド・パラメーター
「……【 暴 君 の 掟 】。
――― トソン=ヴァルキリア」
――ネーヨはそう言って、決戦の地へと向かうことを決意した。
なんてことはない。
この「『拒絶』を拒絶する戦い」を、見納めるためである。
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