494 名前:同志名無しさん :2013/01/27(日) 10:51:23 ID:wcqMe8nU0
 
 
○登場人物と能力の説明
 
( ^ω^)
→この世界の『作者』。
 
/ ,' 3 【則を拒む者《ジェネラル・キャンセラー》】
→あらゆる力及び力の法則を『解除』する《特殊能力》。
 
从 ゚∀从 【正義の執行《ヒーローズ・ワールド》】
→『英雄』が負けない『世界』を創りだす《特殊能力》。
 
( <●><●>) 【連鎖する爆撃《チェーン・デストラクション》】
→相手の手負いを『連鎖』させる《特殊能力》。
 
( ・∀・) 【常識破り《フェイク・シェイク》】
→自然のうちに『嘘』を混ぜる《拒絶能力》。
 
(゚、゚トソン 【???】
→時や力を『操作』した『拒絶』の少女。
 
( ´ー`) 【???】
→『拒絶』と関わりの深い男。
  _
( ゚∀゚) 【???】
→『拒絶』に関わりを持つ科学者。
 
( ´_ゝ`) 【771《アンラッキー》】
→『不運』を引き起こすが、『能力者』でも『拒絶』でもない男。
 
(´<_` ) 【運の憑き《インフェルノ》】
→「神の失敗作」「世界の規律を乱す男」などと称される男。
 
.

495 名前:同志名無しさん :2013/01/27(日) 10:53:15 ID:wcqMe8nU0
 
 
○前回までのアクション
  _
( ゚∀゚)
( ´_ゝ`)
(*゚ー゚)
→撤退
 
(´<_` )
(・∀ ・)
→戦闘終了
 
/ ,' 3
( <●><●>)
从 ゚∀从
→会議
 
( ^ω^)
( ´ー`)
(゚、゚トソン
→バーボンハウス
 
 
.

496 名前:同志名無しさん :2013/01/27(日) 10:54:26 ID:wcqMe8nU0
 
 
 
  第二十二話「vs【771】V」
 
 
 
 内藤がまず最初に驚いたのは、動く筈はないだろうと思っていた扉が、いとも容易く開かれたことだ。
 手を押すだけで、すッとその扉は開いた。
 訪れるつもりだったのにそのことに驚いたところに、逆説的なものを感じる。
 
 だが、開いたことに驚いては、およそ一種の本末転倒だろう。
 なんのためにきたのだ、と笑われるに違いない。
 内藤は平生を装って、顔を覗き込んだ。
 
 第二の驚きが
 
 
(゚、゚トソン
 
(;^ω^)「!」
 
 バーテンが、依然無心のままグラスを磨いていたことだ。
 それも、カウンター奥と云うバーテン専用の定位置に就いて。
 揺れる後頭部の橙がかった髪が、淡いライトに反映されて煌びやかに見える。
 寡黙さが好まれるバーテンとしては、加えてより美しい人物であった。
 
 まだ、立て続けに内藤は驚くことになる。
 そのカウンターの手前――つまり客席に、男が座っていたからだ。
 呑気に、ビールなんかも呑んでいる。
 
( ´ー`)
 
(;^ω^)「!!」
 
 呑んでいる――つまり、営業中だ。
 しかし表の表示からすると、営業時間は一般的なバーと同じく夜のみだ。
 それなのに営業しているところを見て、驚かない者がいるだろうか。
 内藤はわけがわからなくなった。
 
 
(゚、゚トソン「すみませんが」
 
 バーテン――トソンが、声をかける。
 
(゚、゚トソン「只今、営業時間外となっておりまして、御来店はご遠慮させて――」
 
(;^ω^)「……お?」
 
.

497 名前:同志名無しさん :2013/01/27(日) 10:55:35 ID:wcqMe8nU0
 
 
 内藤は、途中で「ん?」と思った。
 彼女の言うことは至極当然ではある。
 確かに、営業時間外であることには違いない。
 
 しかし
 
( ´ー`)
 
 目の前に、酒を呑んでいる客がいる――営業をしている、ではないか。
 営業時間外ではあれ、こうして客が酒を呑んでいるのはどう云うことなのか。
 
 内藤の、そう言いたげな心境を察したのか、客――ネーヨは、コト、とジョッキを置いた。
 上唇に残った白い泡を、舌で絡めとる。
 
(゚、゚トソン「――と云うわけなので」
 
( ´ー`)「おいおい、来たまともな°qを追い返すのかよ」
 
( ^ω^)「(まとも……?)」
 
(゚、゚トソン「いや、しかし」
 
 トソンが言い返そうとする。
 しかしネーヨはそれを許さなかった。
 
( ´ー`)「わざわざ、こんな辺鄙な立地のここに来るってこたあ、よっぽど酒が呑みたかったんだろうよ。
      常識知らずだろうが、酒を愛する奴は俺の仲間だ。……入れてやんな」
 
( ^ω^)「……お?」
 
.

498 名前:同志名無しさん :2013/01/27(日) 10:56:27 ID:wcqMe8nU0
 
 
 ネーヨが流暢にそう説得する。
 彼は静かなのも好きだが、同じ酒を好む者と何気ない話をするのも好きなのだ。
 相手がバーテン、それも身内の者となると面白味などない。
 無関係な赤の他人と、名も知らないのに話を交わすことに趣があるのだ――ネーヨは、そう考える。
 
 内藤がそのとき思ったのは、どこか今の言葉のなかに、威圧に似たなにかが感じ取れたと云うことだ。
 直接的に威圧したわけではないし、本人としても威圧しようなどと考えていないとは思うのだが、どこかに、威圧が感じられた。
 
 内藤は、そのどこかを、またなぜかを探そうと思った。
 しかしそれより前に、彼らが動いた。
 
(゚、゚トソン「あなたが常識知らず≠ネんて仰っても説得力が……まあ、別に困りはしませんが。あなたの奢りはだめですよ」
 
( ´ー`)「わかってら」
 
 トソンが落ちたのだ。
 無表情のまま内藤の顔を見て、席に就くよう暗に促した。
 状況を掴めないまま、とりあえずお許しがでたことだけは理解して、慌てて店内に入ってはチェアーに就いた。
 
 非常に落ち着いた、ゆったりとした空間だった。
 並ぶワインがインテリアなのかと思わせるほど、配置も美しくボトルそのものも美しい。
 バーテンが良いとバーも良い、というだけに、内藤としてもここの居心地は良さそうだった。
 妙な胸騒ぎこそするが――
 
 オーダーは、おまかせと言いたかった。
 だが、委せるのはいいが図々しくも押し掛けてきてオーダーまで委任するとは、厚かましくはないのか。
 そうありもしない懸念を抱いたため、内藤はネーヨと同じビールをいただくことにした。
 
 ジョッキになみなみと注がれたビールを見て、バーにジョッキなどあるのか――と疑問を抱きはしたが、他のバーはどうかさておき、トソンは、もはやネーヨのためだけにそれを用意しているようなものなのだ。
 内藤が抱く疑問は、あらゆる意味で意味のないものなのであった。
 
.

499 名前:同志名無しさん :2013/01/27(日) 10:57:49 ID:wcqMe8nU0
 
 
 内藤は、浮かんだ疑問を押し隠し、それを一緒に流すかのようにビールを呷った。
 喉ごしの時点で、内藤はそれが元いた世界でいう日本のものではなく、ベルギーのものだ、とわかった。
 ビールに関しては「通」程度の知識は持っているのだ。
 それも、内藤が例の作品で一発当てた当初、調子に乗ってビールというビールを呑みまくった産物であるだけなのだが。
 
 この世界において、ベルギーなどと云う実在する国は存在しないだろう。
 だとすると、西端あたりに位置する土地から仕入れたビールなのであろうか。
 少なくとも、それを旨いと味わうことは十二分にできた。
 
( ´ー`)「隣、いいか?」
 
( ^ω^)「お?」
 
 静かに、感動を噛みしめて呑んでいると、ネーヨが横から話しかけてきた。
 彼はカウンターの上に両肘をついて手を組み、上体は屈むようにして顔だけを内藤の方に向けている。
 社交性のない内藤としてはよもや話しかけられるとは、と思ったため、
 一瞬動揺してしまった――理由は、なにも社交性の有無だけではないのだが――。
 
 断る道理もなく、逆に断ると空気が一転して悪くなるのでは、と思ったため、内藤は二つ返事で受け入れた。
 するとネーヨが席をたち、内藤の隣に座った。
 しかし、ネーヨの方はいつも通りの流れなのだろうが、内藤にとってはその場には緊張しかないのだ。
 畢竟するに、内藤はどう対応すればいいかわからなくなってしまっていた。
 
 交流したい側がバーテンに言って相手にワインの一本を奢り、
 そこから隣に座って――となるのが有名だが、ネーヨはそうはしなかった。
 しかし特に深い理由はなく、ただトソンに釘を刺されていたからと云うだけだ。
 
 隣に座ったネーヨは、内藤に緊張させる暇を与えるつもりはなかったようで、早速話しかけてきた。
 このようなバーでは一般的な交流の仕方で、それを見るにネーヨは余程この場に慣れていると思われる。
 だが、内藤が極端に慣れていないので、二人が噛み合いそうには全くなかった。
 
 ネーヨは予てより抱いていた疑問をぶつける。
 
( ´ー`)「ところでよ、こんな時間帯に、どーしたんだい? リストラか?」
 
(;^ω^)「ににッ、ニートじゃないですお……ただの休暇ですお」
 
 いきなり重い話題を振るなあ、と内藤は思った。
  
.

500 名前:同志名無しさん :2013/01/27(日) 10:58:38 ID:wcqMe8nU0
 
 
( ´ー`)「休暇……サラリーを貰ってそうには見えないけどな」
 
( ^ω^)「まあ、サラリーマン……だと語弊が生じそうですお」
 
( ´ー`)「ほう……じゃあ、なにやって――いや」
 
( ´ー`)「当ててやるよ、おめえさんの職業」
 
( ^ω^)「お、ほんとですかお。楽しみですお」
 
 すると、ネーヨはじろじろ内藤を見た。
 上から下から、細かなところまでじっくりと観察する。
 内藤は、どこか自分が動物園のコアラになったような気がして、くすぐったい感じがした。
 
 少しすると、ネーヨは「はーん」と言った。
 内藤が、お、と思うと、ネーヨは続けた。
 
 
( ´ー`)「なにかは知らねえが……物書きだな? それも会社の事務や経理じゃねえ、小説や脚本だ」
 
( ^ω^)「おっその通りですお。凄いで――」
 
( ;゚ω゚)「――ええッ!? なんでわかったんですかお!」
 
 
.

501 名前:同志名無しさん :2013/01/27(日) 11:01:27 ID:wcqMe8nU0
 
 
 まさか本当に当てられるとは――
 内藤が魔物を見るような眼でネーヨを見ると、彼はビールを呷って、それを咀嚼した。
 ビールをのみ下し、息を吐くと、にたあと笑んだ。
 
( ´ー`)「まず手だ。だいぶタコができてんな。
      んで、右腕の筋肉――指伸筋の発達のし具合が、左腕との比較の上でもだいぶ差がある。
      指伸筋が膨れてるってのは、長時間ペン握ることで、硬直しちまった状態で慣れてるってこった。
      その証拠に、小指が薬指の内側に入り込むように曲がってる。
      ま、これはパソコンのマウスを始終握ってる奴にも言えることだが、な」
 
( ´ー`)「んでもって、気づいてねえだろうがおめえさん、だいぶ猫背なんだぜ。
      ドライアイなのか、瞬きの回数も多い。
      それほど目を疲れさせ右手を頻繁に使い、まして屈む――つまり机と向かい合う仕事ってこった」
 
( ´ー`)「指伸筋が膨れる仕事は数あれど、それで机に向かい合って
      ドライアイでサラリーを貰わねえとなると、物書きが真っ先に浮かぶんだよ」
 
( ;゚ω゚)「お、おお……おおおおっ…!」
 
 一気に言い終えて、ネーヨはまたビールを口に含んだ。
 内藤はその推理力に感服して、思わず拍手をしていた。
 冷や汗を垂らし、真顔で、ぎこちない動作でするその拍手は、どこか不気味で、どこか滑稽だった。
 
 
( ´ー`)「これでも、今まで何人もニンゲンを見てきた。人を見る目だけは自信があんだ」
 
(;^ω^)「お見逸れしましたお。ご職業はスカウトか何かですかお?」
 
 ネーヨが得意気な様子だったので、内藤もそれを助長するかのようにそう訊いた。
 だが、内藤の予想とは一転、ネーヨはその質問にはあまり良い反応を見せなかった。
 内藤が「おや」と思ったのも、その所為だ。
 
( ´ー`)「いや、全く関係ねえんだな、これが」
 
( ^ω^)「?」
 
( ´ー`)「あまりかっこよかあねえが……」
 
 
 少し、ネーヨは間を挟んだ。
 
 
( ´ー`)「自警団、の一員だったぜ」
 
( ^ω^)「自警団……?」
 
.

502 名前:同志名無しさん :2013/01/27(日) 11:04:11 ID:wcqMe8nU0
 
 
( ´ー`)「おめえさん、今のこの王国をどう思う」
 
( ^ω^)「!」
 
 内藤は、知らぬうちに話がシリアスさを帯びたものになっていることに気がついた。
 真面目な――それこそ酒の場にあわないような――空気を携えて、ネーヨは続けた。
 
( ´ー`)「街は荒れに荒れ、治安を守るべき警察もいわば国家が先だって在るもの。
      その国家がムチャクチャだ。守るもんも守れてねえよ」
 
( ^ω^)「はあ」
 
 内藤は、この世界を創りこそしたが、いざその世界観で一定期間を過ごした、なんて経験はない。
 むしろ、創ったとは言えど感情移入させることはなかったので、全くの無知と言っても良いレベルであった。
 このような世界観にさせられた側にしてみれば内藤は無責任の固まりではあるが、それをこちら側の住人が知る由もない。
 
 詰まるところ、内藤には興味がなかった。
 ――いや、自分の創った世界観がどのような現状を生み出しているのか、に興味はあったが。
 
( ´ー`)「政治家なんてもん、良い奴がひょっこり出たと思ったら、買収されるか裏の連中に消される。
      その裏の連中潰そうと必死な国家は、表の連中に治安を与えようとはしない。
      あの荒れた環境じゃ、表の連中から裏に変わる奴もそりゃ出てくるな。つまり、悪循環だ」
 
( ´ー`)「俺は、ツレと小規模な自警団を組んで、そんな悪循環を生む元凶を潰してたんだ。
      この目は、そんな元凶や被害者を見てくうちに自然と育っただけなんだぜ」
 
( ^ω^)「……」
 
 
 この時、内藤は二つの疑問を抱いた。
 一つは、言葉がいちいち過去形であったことだ。
 つまりいまは違う≠ニ云うことなのだろうが、なぜそれを語り出すのか。
 
 
.

503 名前:同志名無しさん :2013/01/27(日) 11:09:29 ID:wcqMe8nU0
 
 こちらは内藤にとってはどうでもよかった。
 別にバーでそう云ったことを語るのも一興だろう。
 一夜――まだ昼ではあるが――限りの交流である以上、特に気に留めることも通常ならあるまい。
 
 だが、この時に限っては、通常ではなかった。
 
 
 ――自警団?
 
 ――それって……
 
 
 「自警団」に、聞き覚えがあったのだ。
 否、これも、嘗てドクオと対面した時の状況に似ていた。
 聞き覚え、ではない。
 
 
( ^ω^)「(……創り覚え≠チ!!)」
 
 
 自警団など、いわば自治組織のようなもので、いつの時代の背景にもそう云った集団は現れてくるものなのだ。
 だから、単に自警団、と言っただけでは内藤も疑いはしない。
 だが、そこに
 
 
( ^ω^)「(ツレ≠ニ組んだだけの小規模≠ネ自警団なのに元凶を潰せた=c…っ!)」
 
 
 その要素を踏まえると、内藤としては別の疑惑が浮かんでくるのだ――といっても、
 その疑惑は霞がかっていて、手で払っても払ってもその奥にあるものは見えないのだが――。
 
 ここまでくると、言うまでもない。
 内藤の小説――の、原案に、登場したのだ。つまり、『拒絶』と同じ類、として。
 それも、強敵として、である。
 
 むろん、ただの勘に過ぎない。
 だが、鍵の少女の件も踏まえると、内藤は疑わずにはいられなかった。
 
 
(;^ω^)「恐縮ですが……」
 
( ´ー`)「ん」
 
 内藤が訊いた。
 
.

504 名前:同志名無しさん :2013/01/27(日) 11:10:44 ID:wcqMe8nU0
 
 
(;^ω^)「その自警団って、どんな組織なんですかお?
      そんな大層な自警団なら、僕も小耳には挟む筈なのに……」
 
( ´ー`)「……」
 
 ネーヨは少し黙る。
 正面を向いて、腕を組み顎をひく。
 無表情のまま、少し目の前のビールの、無尽蔵にあがってくる気泡を見つめた。
 
( ´ー`)「酒の場に緊張はいらねえよ。敬語もやめな」
 
( ^ω^)「お?」
 
 すると、ネーヨは続けた。
 
( ´ー`)「そら、おめえさんが知らねえのも当然だ。俺らが潰してたっつーのは、あくまで『裏』だからな」
 
( ^ω^)「……!」
 
 
( ´ー`)「腕っ節一本で、のし上がる。俺は正義なんて関係なく、暴れたいがためだけに拳を振るったもんなんだぜ。楽しかったねえ」
 
( ^ω^)「………」
 
 今度は、内藤がビールを呑んだ。
 当初とは違い、落ち着いた振る舞いだった。
 
( ^ω^)「……それも、どうやら昔の話みたいだけど、なにがあったんだお?」
 
( ´ー`)「男にはいろいろ事情があるってもんだ」
 
( ^ω^)「……」
 
 
(;^ω^)「は、はあ」
 
 ネーヨはさらッと言った。
 つまり、深いことは詮索するな、と云うことだろう。
 本人が望まないことを、無理に訊くわけにもいかない。
 それが酒を呑む場なら、尚更だろう。
 
 まして、自警団を組み、腕っ節だけでのし上がってきたとなると、相当な遣い手と見える。
 内藤は、これ以上訊くわけにはいかなかった。
 
 
.

505 名前:同志名無しさん :2013/01/27(日) 11:11:38 ID:wcqMe8nU0
 
 
 その代わりと言うつもりなのか、ネーヨは「うし」と声を漏らした。
 顔を内藤に向け、先程までのシリアスな空気は吹き飛ばし、元のオーラに戻った。
 平凡な、しかし圧倒されるなにかを感じるオーラだ。
 
( ´ー`)「辛気くせえ話はここまでだ。で、こんなとこに来てまでビールを頼むたあ、相当の酒豪だろ?」
 
( ^ω^)「お! ビールは好きだお」
 
( ´ー`)「いいねえ。おい」
 
 ネーヨはちらっとトソンを見て、呼んだ。
 グラスを磨いていた手を止めて、トソンは閉じていた目を細め、ネーヨを見た。
 
( ´ー`)「なんかアテくれや。何かあんだろ?」
 
(゚、゚トソン「……居酒屋にいけばいいのに……」
 
( ´ー`)「かてえこたナシだ。頼むぜ」
 
(゚、゚トソン「………まったく」
 
(;^ω^)「おおぅ……」
 
( ´ー`)「そう云うこった」
 
 ネーヨがそう言うと、トソンの垂れた眉も見ずに、二人は世間話をはじめた。
 最初はやはり緊張していた内藤だったが、数分すれば、すっかり饒舌になっていた。
 それは、ネーヨの話術の巧みさと大らかな性格のためだろう。
 トソンはすっかり呆れていた。
 
 
 
 
 
.

506 名前:同志名無しさん :2013/01/27(日) 11:13:17 ID:wcqMe8nU0
 
 
 
 

 
 
 
 目を開くと、暗く闇のような天井が奥の方に見えた。
 後頭部に痛みを感じる。
 同時に、平衡感覚が、いま自分が立っていないことを告げている。
 
 アニジャは、今自分が仰向けに倒れていることに気づいた。
 頭を打ったのだろうか、その後頭部をさすりながら、アニジャは上体を起こした。
 鼻をつく医薬品の香り――や、目を覆いたくなる標本やホルマリン漬け――
 なんてものはないが、そこが何らかの研究所であることだけはわかった。
 
 特に何らかの手がかりを得た、などと云うわけではない。
 ただ、そこが通い慣れた¥齒鰍セったから、なにを考えずともそこが研究所だ、とわかっただけなのだ。
 と云うことは、隣には彼≠ェいるだろう。
 そっと、細い眼でチラッとそちらを見た。
 
  _
( ;゚∀-)「ツツツ……」
 
( ´_ゝ`)「(やっぱり……)」
 
 すると、ここがどこか特定できたようなものだ。
 ここは、マッドサイエンティスト、ジョルジュ=パンドラの研究所である、と。
 
 ジョルジュも目が覚めたようで、額をさすりながら背を反るように上体を起こした。
 床に片手をついて、きょろきょろと周囲を見渡す。
 すると彼は、少し離れたところに、少女がいることに気がついた。
 
 アニジャもあわせてその視線を辿る。
 四つん這いになって、頬骨の辺りをさすっている。
 やはり、彼女もか――と、アニジャは少し嫌味に笑った。
 
 なにも、『不運』が起こったからこのような事態になったのではない。
 理由は、もっと単純だった。
 
.

507 名前:同志名無しさん :2013/01/27(日) 11:15:59 ID:wcqMe8nU0
 
  _
( ;゚∀゚)「……まだ、能力は未完成か」
 
(;*゚ー゚)「ご、ごめんなさい……」
 
 少女が、尻すぼみになる言葉で謝った。
 ジョルジュは、額をさするのをやめ、立ち上がっては白衣をはたいた。
 アニジャもそれを見て、のっそりと立ち上がる。
 少女はまだ起きれそうになかったので、ジョルジュが手をさしのべる。
 礼を言いながらその手を受け取り、よいしょ、と声をあげて少女は立ち上がった。
  _
( ゚∀゚)「心配すんな。成功例に一番近いんだぜ、シィは」
 
(*゚ー゚)「そう言ってくれるとありがたいけど……」
 
 
 ジョルジュの助手、ファミリーネーム不詳のシィは、そう言うと頬を掻いた。
 
 
( ´_ゝ`)「【最期の楽園】……ねえ」
  _
( ゚∀゚)「いまの俺には、この程度の能力しか創れねぇ≠だ。いまは……な」
 
( ´_ゝ`)「まあ、不時着は技量の問題として、目的地には狂いなく移動できるんだから、能力としては完成だろう」
  _
( ゚∀゚)「いや……違うんだ」
 
( ´_ゝ`)「ん?」
 
 ジョルジュは、手帳を取り出しペンにいろいろ書きながら、そう言った。
 手を止め、ページをはらりとめくってジョルジュは続ける。
  _
( ゚∀゚)「移動先の緯度、経度、高度を演算してロケーション――ポイントを特定するのは成功だとしても、
      その移動対象の体躯をポイントとして演算し、その値のまま移すのはまだ完成してない、ってことなんだ」
  _
( ゚∀゚)「能力としては、移動先と移動対象両方のポイントを固定させたまま移さねえと、完成とは言えねぇ」
  _
( ゚∀゚)「移動先の意識的演算は能力として組み込めたが、
      移動対象のポイント固定の無意識的演算はまだ組み込めてない……それが、今後の課題だな」
 
( ;´_ゝ`)「? ……? すまん、俺はこう見えて馬鹿なんだ。授業なら今度にしてくれ」
  _
( ;゚∀゚)「……つ、つまり、不時着するようじゃだめってこと」
 
( ;´_ゝ`)「オーケー、把握した」
 
.

508 名前:同志名無しさん :2013/01/27(日) 11:19:12 ID:wcqMe8nU0
 
 
 アニジャは、それ以上首を突っ込むと脳が捻れそうな世界になってしまうと察し、その一言で無理矢理脳を納得させた。
 ジョルジュは、自分の頭脳が明晰すぎるだけに、そうでない者に簡潔になるよう説明するのはできないのだ。
 凡人ならある程度は噛み砕いて説明ができるのを踏まえると、天才が凡人に負けると云う、皮肉な逆説である。
 
  _     エデン.   ガード.             ラスト・ガーデン
( ゚∀゚)「『楽園』を『保守』し、移動する能力、【最期の楽園】……使い勝手はどうだ、シィ」
 
(*゚ー゚)「問題ないわ、パンドラ。ただ、移動先を選べるようになった分、
     私が知らない土地に移動できなくなった、って云うデメリットも大きいわね」
  _
( ゚∀゚)「移動対象のポイント固定ができるようになれば、その点も直すさ」
 
( ´_ゝ`)「……この理系オタクらめ」
 
 
 嫌味を言って、アニジャは周囲をざっと見渡す。
 訪れ慣れている研究所とはいえ、ここはあのジョルジュの研究所だ。
 訪れる度に新しいものが増えている、若しくは古いものが消えている、そんな場所なのである。
 頻繁に訪れているといっても最後に訪れたのは昨日や一昨日ではない。
 
 つい先程まで無人だったためか、明かりは点いてない。
 シィがそれを察して小走りでスイッチを押しにいった。
 一、二回点滅してから、閃光が走ったかのように明かりが点いた。
 廃墟といいこの明かりのない研究所といい、
 ずっと暗い場所にいたため、若干その明かりを眩しく感じ、元々細い眼を更に細める。
 
 徐々に光に慣れてきた。
 そっと瞼を開くと、やはりいつもの研究所だった。
 観葉植物や色鮮やかなものの一つはあってもいいと思うのに、
 そのようなものは一切なく、代わりに不気味な装置が大量に並べられている。
 
 クレーンゲーム機のような箱のなかに、碧色の液体が満ちており、
 コードで手足を繋がれた何者かがそのなかでぷかぷかと浮かんでいた。
 ある者は頭蓋骨を貫通され、脳の中にも管を通されている。
 
 これを不気味と言わず、なんと呼べば良いのだろうか。
 どこまでもマッドサイエンティストが似合う男だ――アニジャは呆れた様子で溜息を吐いた。
 
.

509 名前:同志名無しさん :2013/01/27(日) 11:21:39 ID:wcqMe8nU0
 
 
 そこで、めぼしい変化はあるのか――と思った矢先。
 今まで空きだった水槽に、一人。被験者≠ェ追加されていたことに気がついた。
 アニジャは「おや」と思い、おもむろに歩み寄った。
 ジョルジュとシィもそれに気づき、彼を目で追った。
 
 その水槽のなかに眠るのは、碧色の液体のせいで断言こそできないが、毛先がウェーブがかった赤い髪の少女だった。
 様々なところにチューブが繋がれており、生きているのか、と疑わざるを得なかった。
 だが、口元から漏れる気泡が、彼女に生きていると云う証拠を与えていた。
 
 アニジャも、最初は「またか、可哀想に」としか思わなかった。
 だが、踵を返そうとした時、はッとして、振り返りもう一度その少女を見た。
 徐々に顔が嶮しくなる。眉間にひびができる。
 口を半開きにし、疑り深い表情でジョルジュの方を見た。
 ジョルジュは彼の言いたいことがわかり、そしてそれが正しいと言いたいのか、軽く口角を吊り上げていた。
 
( ´_ゝ`)「……こいつ」
 
 アニジャがジョルジュにゆっくり近寄る。
 
 
( ´_ゝ`)「『英雄』の妹、とやらじゃないのか」
  _
( ゚∀゚)「知ってたのか。そうだよ」
 
 アニジャは、嘗てモララーと一緒に、アラマキたちの同士討ち≠防ぐために彼らのもとに出向いたことがある。
 モララーが『俺たちはここにいない』と云う『嘘』を混ぜ、姿を消して彼らを制止すると同時に、偵察もしていた。
 元帥の【則を拒む者】、英雄の【劇の幕開け】、魔王の【連鎖する爆撃】。
 どれも、並の『能力者』にはそう易々と負けないだろう程度の能力だった。
 
 そんな偵察の際、アニジャは彼女≠フことも見ていたのだ。
 『脚本』を『脚色』る能力、脚色家の【大団円】。
 単体では無力であるにせよ、能力としてはこの上なく厄介なものだった。
 『拒絶』の一人に、あらゆる『現実』を操作する【ご都合主義】たる能力を持つ者がいたが、
 【大団円】とは、いわば対象が『英雄』に限定された【ご都合主義】と呼べるものなのだから。
 
.

510 名前:同志名無しさん :2013/01/27(日) 11:22:57 ID:wcqMe8nU0
 
                フィナーレ
( ´_ゝ`)「有する能力は【大団円】……名は確か、ヒート=カゲキ」
 
( ´_ゝ`)「どうして捕まえたんだ……いや、そもそもどうやって捕まえたんだ、こんな厄介者」
  _
( ゚∀゚)「どうって、お前も知ってるだろ、ゼウスの『爆撃』をもらって倒れてたのを。そこを攫ったんだよ」
 
 アニジャは「ほう」と声を発した。
 偵察もしていたとは言えど、アニジャの目的はあくまであの三人なのだ。
 外野の行く末など、いちいち覚えてはいなかった。
 
 ジョルジュは、アニジャのしたもう一つの質問にも答えた。
 
  _
( ゚∀゚)「……もっとも、『どうして』には答えられんがな」
 
( ´_ゝ`)「? 隠し事か?」
  _
( ゚∀゚)「いいや、違う」
 
 
  _
( ゚∀゚)「……人違い≠セったんだよ」
 
( ´_ゝ`)「人違い……?」
  _
( ゚∀゚)「ああ。情けねぇがな」
 
(*゚ー゚)「彼女のDNAとかを検査したところ、パンドラが捜してた人と違うんだ、って気づいたみたいよ」
 
( ´_ゝ`)「……なるほど、人捜し≠ヒ」
  _
( ゚∀゚)「ああ、人捜し≠セ」
 
 
.

511 名前:同志名無しさん :2013/01/27(日) 11:25:45 ID:wcqMe8nU0
 
 
 アニジャは合点がいった。
 「誰を捜しているのか」。
 「どうして人捜しをするのか」。
 と、気になる点こそあったが、別段訊こうとはしなかった。
 別に誰であってもいいし、どんな理由であってもアニジャとは関係ないのだ。
 
 アニジャの何気ない疑問に答えたところで、ジョルジュは話を本筋に戻した。
 
  _
( ゚∀゚)「……で、『拒絶』はどうなんだ」
 
( ´_ゝ`)「ショボンとワタナベが先陣きって奴らに襲いかかってるところ――らしい」
  _
( ゚∀゚)「らしい、って……。
.     まあ、別に伝聞だろうとなんだっていいんだがな」
 
( ´_ゝ`)「すまない。俺だって、常に『拒絶』といるわけじゃないんだ」
  _
( ゚∀゚)「それはいい。……で、どうだった」
                                  フェイク・シェイク
( ´_ゝ`)「まだ全ては把握してないが……モララーの【 常 識 破 り 】は、上物だ。
      俺も実際に使われてみてわかったのだが、《拒絶能力》としては――」
  _
( ゚∀゚)「《拒絶能力》の話じゃねえよ」
 
 
  _
( ゚∀゚)「『拒絶』の一番の武器は、その『拒絶のオーラ』なんだぞ」
 
( ´_ゝ`)「……なに?」
 
 
 アニジャは眼を丸くした。
 初耳のことで、その事実はあまりにも意外だったのだ。
 
 
.

512 名前:同志名無しさん :2013/01/27(日) 11:28:01 ID:wcqMe8nU0
 
  _
( ゚∀゚)「なんのために、この俺が『拒絶』に成り得る人材を『パンドラの箱』に詰めてやったと思ってんだ」
 
( ´_ゝ`)「そりゃあんた、《拒絶能力》を形成させるため――」
 
 ジョルジュは彼の言葉を遮るように「違う」と言った。
 アニジャは思わず黙り込む。
  _
( ゚∀゚)「《拒絶能力》ってのは、『拒絶の精神』が上限に達した時点で創られんだ。
      いわば、上限に達することが覚醒条件≠セからな」
 
( ´_ゝ`)「じゃあ、なんで――」
  _
( ゚∀゚)「いいから聞け。
      『拒絶の精神』が上限に達すれば、次に形成されんのは『拒絶のオーラ』だ。
      それを長い時間――それこそ一年や二年費やして、その体臭じみたオーラを熟成させてやれば……」
 
 
  _
( ゚∀゚)「その『拒絶のオーラ』は、特殊性こそないが《異常体質》と同等のものになる」
 
( ´_ゝ`)「……!」
 
 
 アニジャは、はッとした。
 ジョルジュの言いたいことがわかったのだ。
 
  _
( ゚∀゚)「今のあまちゃんな奴らでさえ、近づいたり声を聞けば吐きそうになるレベルなんだ。
      体質化したら、近づいたり声を聞いたりするだけで卒倒する――筈だった、のによォ!」
 
 
  _
( ゚∀゚)「名付けて――《拒絶体質》は」
 
 
.

513 名前:同志名無しさん :2013/01/27(日) 11:30:02 ID:wcqMe8nU0
 
 語調を強め、荒い口調でそう言い放った。
 気泡の浮かぶ音だけが聞こえる研究所に、彼のその声が響きわたった。
 それにあわせて壁がメシ、と軋むような音をたてた。
 
 少し静寂が生まれた。
 ジョルジュの怒りは、アニジャにも助手のシィにも止められない。
 だからこうして、静寂を以て鎮める他ないのだ。
 
 ジョルジュもそれに気づいたのか、数秒して、嶮しかった表情をなんとか平生のそれに戻した。
 頬をぽりぽりと掻いて、恥ずかしそうにそっぽを向いた。
 
( ´_ゝ`)「……まあ、《異常体質》の本質すら知らない俺に言われても、仕方がないんだけどな」
  _
( ゚∀゚)「そのうちに説明するさ」
 
 ジョルジュは彼らに背を向け、ポケットに手を突っ込んで歩き出した。
 向かう先には冷たく白い金属でできた扉があり、それを抜けた先には
 ジョルジュにしか解読できないであろう書類が山積みとなっているのだ。
 
 とてもアニジャはその部屋に入りたいとは思えない。
 入ったところで、忌々しい頭痛を抱えるだけで終わるのだから。
 
 そのため、彼についていくことはないが、訊くべきことはあった。
 ジョルジュの背中に向かって、アニジャは声を発した。
 
( ´_ゝ`)「そのうち……って、いつだよ」
  _
( ゚∀゚)「『拒絶』が一掃されて、平穏が戻ってきたらだよ」
 
( ´_ゝ`)「へェ―――え?」
 
 アニジャは肯こうとしたが、一瞬、その言葉が引っかかった。
 だから、意図していなかった声も発してしまった。
 聞き違いではないのか――いや、しかし確実にジョルジュは言っていた。
 
 「『拒絶』が一掃されて」、と。
 どう云うことだ――アニジャは彼を追いかけて、肩に手をかけた。
 
 
.

514 名前:同志名無しさん :2013/01/27(日) 11:30:43 ID:wcqMe8nU0
 
 
 
( ´_ゝ`)「お、おい、今なんて言った?」
  _
( ゚∀゚)「『拒絶』が全滅したら、だ」
 
( ;´_ゝ`)「いやいや……嘘だろ! それって、あんた……」
 
 
 
( ;´_ゝ`)「自分の計画が潰れるのを、みすみす見届けてるようなもんじゃねえか!」
 
 
 
.

515 名前:同志名無しさん :2013/01/27(日) 11:32:34 ID:wcqMe8nU0
 
 
  _
( ゚∀゚)「見届ける≠じゃねぇよ」
 
( ;´_ゝ`)「じゃ、じゃあ――」
  _
( ゚∀゚)「見届けた≠だ、もうな」
 
( ;´_ゝ`)「……は?」
 
 ジョルジュがアニジャの手を払い、扉のノブに右手を置く。
 背中にいるアニジャに嘆きかけるように、ぼそっと呟いた。
 そのときの声には、研究者としての儚さが感じられた。
 
  _
( ゚∀゚)「奴が……」
 
  _
( ゚∀゚)「プロメテウスが動いた時点で、この計画は潰れてたんだよ、既にな」
 
( ´_ゝ`)「ネーヨの旦那が……潰した=H」
  _
( ゚∀゚)「俺の『パンドラの箱』は、本来じゃあ誰も開けられねェ。
      概念論と因果律、物理法則の全てから矛盾し独立させた『箱』だからな。
     だが、それを開けられる奴が、一人だけいたんだよ」
 
( ´_ゝ`)「それが……ネーヨの旦那か?」
  _
( ゚∀゚)「ああ。俺も聞いたときはびっくりしたぜ。まあ、すぐに調査して能力は解析したが――」
 
       スベテ   ム シ.   ウチケ
( ´_ゝ`)「『拒絶』を『拒絶』し『拒絶』してしまう《拒絶能力》……」
  _
( ゚∀゚)「そう……その、能力≠フ時点で、俺はびっくりしたんだよ」
 
( ´_ゝ`)「……え?」
  _
( ゚∀゚)「え? って……そりゃ、そうだろ」
 
 
  _
( ゚∀゚)「あいつは、元々能力なんて持ってなかった≠だからな」
 
( ´_ゝ`)「ッ!! それは本当か!」
 
 
.

516 名前:同志名無しさん :2013/01/27(日) 11:34:17 ID:wcqMe8nU0
 
 
 アニジャが身を乗り出した。
 今までのなかで、一番信じられないことだったからだ。
 彼の能力は、とんでもないものだ。
 それが、もし――
  _
( ゚∀゚)「『拒絶』化によって能力を得た、天然の拒絶≠ネんだ」
  _
( ゚∀゚)「俺が手を貸さなきゃ成れない『拒絶』、それでさえ『能力者』は適わないレベルなのに、それの天然≠セぞ」
  _
( ゚∀゚)「同じ『拒絶』の連中でさえ、プロメテウスには歯が立たん。
      そんな奴に、俺の小手先は通用する筈もなかったんだ」
 
 
 ――そうだとしたら、なぜ、自分や同胞たちを殺さないのだ。
 全身が『拒絶』の塊である彼なら、そんなこともしてしまいそうなのに。
 
  _
( ゚∀゚)「昔から言うだろ。策士策に溺れる――ってな」
 
( ´_ゝ`)「しかし――」
 
 ジョルジュは、アニジャの追究を拒もうとしたのか、扉の向こうに足を踏み入れた。
 半身が扉の向こうへと向かう。
 これでは追究しても無駄だな、と察したアニジャは、別の質問を浮かべた。
 そして、それをすぐに投げかける。
 
 
( ´_ゝ`)「……俺は、なにをしたらいい」
  _
(  ∀ )「………」
 
 ジョルジュが、黙る。
 答えられない――のではなく、答える気力がもう既になかったのだ。
 だが、答えない限りは、アニジャはおそらくずっと粘るだろう。
 ジョルジュは、なけなしの気力を使い果たして、言った。
 
.

517 名前:同志名無しさん :2013/01/27(日) 11:35:05 ID:wcqMe8nU0
 
  _
( ゚∀゚)「……引き続き、プロメテウスのそばについて、『拒絶』を観察してくれ」
 
( ´_ゝ`)「オーケー、把握した」
 
 アニジャが、ぐッと親指を立てた。
 同時に発した声は、力強いものとなっていた。
 自然のうちに、ジョルジュに元気を与えようと思ったのだろうか。
 
 ジョルジュは歯の隙間から息を漏らした。
 そして、彼もアニジャにあわせて親指を突き立てた。
 お互いににッとはにかんでから、二人はそこで別れた。
 金属製の扉が、アニジャの視線を遮る。
 
 扉が閉まってから、アニジャは突き立てた親指を、儚げに見つめた。
 嘗て、このように親指を見せ合っていた肉親のことを、思っていたのだ。
 そのときのアニジャの顔は、哀愁に満ちていた。
 
 後ろから、シィが駆けてくる。
 足音に気づいて、アニジャは指を戻して、何気なく振り向いた。
 セミロングヘアーの少女が、零れんばかりの笑みを浮かべていた。
 首を数度右に傾け、手は後ろで組んでいた。
 
 
(*゚ー゚)「難しい話は終わったかしら?」
 
( ´_ゝ`)「あ、ああ……まあ」
 
 シィの屈託のない笑みに、アニジャは救われたような気がした。
 思わず、アニジャも苦笑を浮かべる。
 シィはいつだって、良くも悪くも無邪気なのだ。
 
(*゚ー゚)「――で、どうする?」
 
( ´_ゝ`)「ん」
 
 アニジャは首を傾げる。
 
(*゚ー゚)「私の能力――不完全だけど、それで送ろっか?」
 
( ´_ゝ`)「……え?」
 
( ´_ゝ`)「あ、えっと……」
 
 
 アニジャは返答に窮した。
 
.

518 名前:同志名無しさん :2013/01/27(日) 11:36:33 ID:wcqMe8nU0
 
 
 

 
 
 
( ´_ゝ`)「まあこうなるわけだがな」
 
(;*゚ー゚)「ご、ごめんなさい……」
 
 アニジャが少しの間葛藤に悩まされるも、渋々肯いた直後。
 アニジャとシィは、裏通りと思われる閑散とした場所に横たわっていた。
 横たわっていたといっても眠るつもりで――などと云ったものでは断じてない。
 やはり、彼女の能力を利用するには、どこかしらに軽い打撲は負うことを覚悟しなければならないようだ。
 
 起きあがって付着した砂を払うと、アニジャは周囲を見渡した。
 身にぴりぴりとくるこの独特の雰囲気は裏通りのもので間違いないのだが、この場所に見覚えはなかったのだ。
 
 これでも裏通りを走ってもハイエナに喰われることはないアニジャだ、
 だいたいの場所は一目見ただけでそこかどこかある程度までは把握できる。
 それができないから、ここはどこだ、と思った。
 
 近くに、地震の際やられたのか、太い柱や骨格が見事に粉々になり、傾いている建物がある。
 半壊もいいところで、もはや廃墟としか思えない佇まいだった。
 近隣の建物はそうでもないのに、その建物だけが見事に潰れている。
 
 奇妙なものだ、とアニジャが思ったところで、シィも起きあがっては、周囲の景色に目を遣った。
 じろじろと見てから、はて、と言っては顎に手をつけ首を傾けた。
 その仕草を見て、アニジャは「まさか」と思った。
 
( ´_ゝ`)「あんた……ここがどこだか知らないで、ワープしたのか?」
 
(*゚ー゚)「えっと……」
 
 
.

519 名前:同志名無しさん :2013/01/27(日) 11:37:25 ID:wcqMe8nU0
 
 
 シィは言葉を濁らせる。
 アニジャは、事前にジョルジュから聞いていたことを思い出して、先程とは違う奇妙なものを感じた。
 恐る恐る、訊いてみる。
 
( ´_ゝ`)「確か、自分の知ってる土地でないとワープできない筈だが……」
 
(*゚ー゚)「それなんだけどね」
 
 シィが早口になって返した。
 
(*゚ー゚)「『とにかくダークそうなところ』ってことでイメージした場所が、ここだったの」
 
( ´_ゝ`)「? じゃああんたはここを知っていることになるのだが……」
 
(*゚ー゚)「……いいえ、知らないわ。でも――」
 
( ´_ゝ`)「ん?」
 
 
 
(*゚ー゚)「昔、ここに来たことがある気がする」
 
 
 

.

520 名前:同志名無しさん :2013/01/27(日) 11:38:24 ID:wcqMe8nU0
 
 
( ´_ゝ`)「どういうことだ?」
 
(*゚ー゚)「記憶こそ曖昧なんだけど、過去に来たことがあったからワープできた……ってことだと思うの」
 
 アニジャは、「フーン」と相槌を打った。
 そして腕を組み、彼なりに考察の一つ、してみようと思ったのだろうか。
 さながらジョルジュのような語調で、彼はシィに訊いた。
 
( ´_ゝ`)「思考依存な能力かと思えば、思考を凌駕した本能の領域からも干渉可能、と……」
 
( ´_ゝ`)「本当は、『不運』が起こっただけじゃないのか?」
 
(*゚ー゚)「まさか」
 
 しかし。
 ジョルジュに関して言えば、より詳しいのは長らく助手を務めているシィだ。
 ジョルジュに対して言い返すかのように、彼女は不敵に笑んだ。
 
(*゚ー゚)「ワープして景色を見たと同時に、『来たことがある』って思ったもの。偶然や『不運』じゃあないわ」
 
( ´_ゝ`)「そ、そうか」
 
(*゚ー゚)「まあ、来たことあるかどうかはどうでもいいけどね」
 
( ´_ゝ`)「全くだ。とても科学者の助手の言いそうなこととは思えない」
 
(*゚ー゚)「うるさい」
 
 そう言って、二人は小さく笑った。
 同じジョルジュに一枚噛んでいる者同士として、どこか馬が合うのだ。
 上司の悪口を言うことで盛り上がるサラリーマンやOLのようなものなのだろうか。
 奇妙な連帯感というか、共同体として感覚を分けあえることができるのが楽しかったようだ。
 
 
.

521 名前:同志名無しさん :2013/01/27(日) 11:39:19 ID:wcqMe8nU0
 
 
 しかし、笑いも少しすれば止む。
 裏通りに似つかわしい、元在ったのような静寂が彼らを包む。
 それはアニジャもシィも好きな空気ではあるが、他人が目の前にいて、その空気を味わうことはできない。
 
 これが俗にいう気まずい空気とやらか――
 アニジャは、困ったような笑顔を浮かべながら思った。
 
 特になにをするでもないため、二人は黙る。
 ああ、気まずい。
 早くこの均衡を破らなければ。
 そう思いはするが、彼らは自分から先に動こうとはしなかった。
 相手から沈黙を破ってくれるのを待っているのだ。
 
 
( ´_ゝ`)「………」
 
(*゚ー゚)「………」
 
 
 お互いが同じ思考に至ったようで、痛い静寂が耳を突くようになる。
 アニジャは徐々に冷や汗をかき始めてきた。
 いくら年下で見慣れているとはいえ、女性に見つめられることには慣れていないのだ。
 シィもそれに気づいたようで、にやにやしながら無垢な眼差しでじっと見つめてくる。
 
 アニジャが折れそうになった時だ。
 その静寂は、沈黙から十秒して漸く破られることになった。
 
 
 
 
 
 ―――アニジャではない男の声を伴って。
 
 
.

522 名前:同志名無しさん :2013/01/27(日) 11:40:15 ID:wcqMe8nU0
 
 
( ・∀・)「ん? アニジャじゃねーか」
 
( ´_ゝ`)「へ」
 
(;*゚ー゚)「あっ、ヤバ!」
 
 フードはかぶらないのにパーカーを着た男、モララー=ラビッシュが後ろから声をかけてきた。
 あまりに唐突な訪問者だったため、アニジャは少し動揺した。
 他に誰もいないであろう空間に、その予期していなかった誰かがやってきたからだ。
 だがモララーはそのようなことはつゆ知らず、呑気にアニジャに話しかけてきた。
 
( ・∀・)「おまえ、こんなところでどーしたんだよ。それも一人で」
 
( ´_ゝ`)「どうもなにも……って、一人じゃないぞ」
 
( ・∀・)「は? 一人だろーが。なに言ってんだ」
 
( ´_ゝ`)「ハ? あんたこそなに言って――」
 
 シィがすぐ後ろにいる筈なのにモララーがそう言ったことに、アニジャは怪訝な顔をした。
 最初はそれが冗談か何かだと思ったのだが、とてもそうとは思えない。
 アニジャは「なに言ってんだ」と思いつつも、後ろに振り返った。
 先程まで、シィはここで無垢な笑みをアニジャに向けていたのだ。
 
 
 ――向けていた≠フだ。
 
 
( ´_ゝ`)「あ、あれ?」
 
( ・∀・)「なに寝言言ってんだと思えば……」
 
 後ろに、シィはいなかった。
 一瞬なにがあったのだと混乱してしまったが、その答えは存外早くに出てきた。
 
 
( ´_ゝ`)「(あんにゃろ……俺がモララーの方を見た隙に逃げやがったな……)」
 
 
.

523 名前:同志名無しさん :2013/01/27(日) 11:41:09 ID:wcqMe8nU0
 
 
( ・∀・)「なあ、こんなとこで売れない油売んのもアレだろ。早く帰ろうぜ」
 
( ´_ゝ`)「あ、ああ……え?」
 
( ・∀・)「どした」
 
( ´_ゝ`)「帰るって? 俺はネーヨの旦那を捜してるんだが……」
 
( ・∀・)「うーん、二つの質問を同時に答えてやるよ」
 
 モララーは指を二本立て、見せつけるように掲げた。
 一本を折り曲げ、続けて二本目も折り曲げつつ言った。
 
 
( ・∀・)「帰る先はバーボンハウスで、旦那がいんのもそこだ」
 
( ´_ゝ`)「!」
 
( ・∀・)「…どした」
 
( ´_ゝ`)「(くそ……酒、だったか……。不覚………)」
 
 
.

524 名前:同志名無しさん :2013/01/27(日) 11:42:18 ID:wcqMe8nU0
 
 
 アニジャは、ネーヨは出て行く際満たされる云々言っていたため、
 てっきり廃墟などで『能力者』を狩っているのではと思ったのだ。
 
 だが、このときに言っていた満たされる云々のことが、
 よもや一般人の持つ酒に対するそのような気持ちだったとは、アニジャには見当もつかなかっただろう。
 半ば自己嫌悪――自分を情けなく感じ、額に手をあて俯いた。
 
 モララーは疑問符こそ浮かべるものの、話を続けた。
 
( ・∀・)「なんかさっきから変だな。とりあえず帰ろうぜ、俺も酒が呑みたいんだ」
 
( ´_ゝ`)「あ……あ、ああ……うん。そうだな、帰ろう」
 
 アニジャがいつもの無表情に戻り、モララーの提案に肯いた。
 
 
( ・∀・)「たまには歩いて移動するのも風情があるさ」
 
( ´_ゝ`)「『嘘』吐いて一気に運んでくれよ……」
 
( ・∀・)「なんのためのあんよだと思ってんだ。たまには歩こうぜ」
 
( ´_ゝ`)「……『不運』だ」
 
 
 アニジャ=フーンは、身体を使うことが苦手だった。
 
 
 
.

525 名前:同志名無しさん :2013/01/27(日) 11:43:06 ID:wcqMe8nU0
 
 
 

 
 
 
(*^ω^)「そこで僕は言ってやったんだお!」
 
(  ゚ω゚)「おーん!ぷてらのどーん!」
 
(*´ー`)「ぶっははははは!! わっけわかんねえよ!」
 
(*^ω^)「そして、締めの一言ッ!」
 
(  ゚ω゚)「一番偉いのは、この武運様さ!」
 
(*´ー`)「ぶはッははははは! は、ハラいてえ!」
 
(-、-;トソン
 
 
 
.

526 名前:同志名無しさん :2013/01/27(日) 11:44:36 ID:wcqMe8nU0
 
 
 トソンは、グラスを磨きながら、半ば呆れかえっていた。
 というのも、日頃はこの静かな空気漂う「筈」のバーボンハウスが、笑いの渦に呑まれていたからだ。
 決して似つかわしくない、取り除きたい雰囲気だ。
 
 日頃から酒、酒とうるさいネーヨもこの有り様なのだから、トソンには止めようがない。
 内藤のくだらない洒落にネーヨが冷静にツッコめばいいのだが、
 酒が回り本調子となっている彼にそのようなことができる筈もなかったのだ。
 
 最初はただの話だったのだが、内藤が昔話をすると、ネーヨが食いついた。
 内藤は過去に様々なことを経験してきたようで、その昔話そのものは確かに中身の詰まった面白いものとなっていた。
 
 アルファベットを武器に見立てて三国の戦記物を考えたり、
 指輪をはめれば得ることができるこの世界の『能力者』の持つそれのような能力をつくってみたり、
 「もし自分が千年後の世界にタイムワープしてしまったら」と云うテーマで現地の状況をまじめに考察してみたり――
 
 とにかく、内藤の想像力は垢抜けていた。
 そして、ネーヨはそれがきっかけで小説家になったと云うのを聞いて、なるほどと思った。
 内藤の想像力は、一つの世界を創り変えるほどのものを持っていたのだ。
 
 そんな小説家になるためのプロセスから、今度は体験談へと変わった。
 その内容が、トソンが真偽を疑いかねないほどに実に可笑しいものばかりだったので、
 平生では大笑いしない筈のネーヨも、このときばかりは笑わずにはいられなかった、と云うことだ。
 
 自分がまんじゅうになった夢を見たとか、
 学生時代にした草野球で光る魔球を投げられたとか、
 コンビニでアルバイトをしていた時、鉄砲に「見立てた」指を突きつけられ胸を見せろ、と言われたとか――
 
 
.

527 名前:同志名無しさん :2013/01/27(日) 11:45:58 ID:wcqMe8nU0
 
 
(-、-;トソン
 
(゚、゚トソン「……あの」
 
(*´ー`)「なんだ」
 
 上機嫌なネーヨが応える。
 トソンは、そろそろ我慢できなくなったようだ。
 
 ネーヨの気には障らぬように、控えめな語調で話す。
 
(゚、゚トソン「さすがに、『ふつうは』客が来ないとは言え、もう少し店の空気を読んでほしいのですが……」
 
(*`ω´)「まるで僕が『ふつうの』客じゃないかのような言いぐさだお!」
 
(゚、゚トソン「それはそうでしょう。営業時間外上等で乗り込んでくる、なんて」
 
(*^ω^)「こりゃ一本とられた」
 
(*´ー`)「とられすぎってもんじゃねえぞ」
 
 そして、笑い。
 泥酔状態の二人に、もはやマスターとしての忠告は通じないのだろう。
 まして、その泥酔した二人が意気投合していたら尚更だ。
 酒を客に与える者として、それは当たり前のように知っていた。
 
 知っていた、が。
 その酔っている相手が、あの『拒絶』の代名詞、ネーヨであるため、
 威厳を保つ意味でも、こんな姿を自分に見せてほしくはなかったのだ。
 店の空気を守る、ためではなく、自分の尊敬を守るために、トソンは忠告したのである。
 
 
.

528 名前:同志名無しさん :2013/01/27(日) 11:47:07 ID:wcqMe8nU0
 
 
 トソンは別の方面から忠告をすることにした。
 外部からの体面を気にしないなら、内部からの体面を気にさせるのだ、と。
 
(゚、゚トソン「客は来ないとしても、『拒絶』のみんなが帰ってくるでしょ。恥ずかしくないのですか」
 
(*^ω^)「言われてるお、あんた」
 
(*´ー`)「恥ずかしいことがあっか!」
 
(*^ω^)「だお、だお! 男なら、それで―――」
 
 
 
( ^ω^)「――ッ?」
 
( ^ω^)「(あ、あれ……?)」
 
 
 内藤が、泥酔しているにも関わらずその言葉を聞き取れ、咀嚼できる程度の
 余裕を持っていたのが、彼に冷静な判断を下させた要因だった。
 今し方マスターが発した言葉のうちのどこかに、引っかかる部分が見えたのである。
 泥酔していたためその視界が霞かかっていてよく見えないのだが、確かに違和感の正体はそこに潜んでいた。
 
 『作者』だからわかる、違和感。
 『作者』だからできる、推測。
 
 
( ^ω^)「………『拒絶』?」
 
( ´ー`)「?」
 
 
.

529 名前:同志名無しさん :2013/01/27(日) 11:48:03 ID:wcqMe8nU0
 
 
 内藤の内に広がっていた霧が、違和感と云う団扇で扇がれ払われていった。
 なぜか、羞恥心を捨てるほどの泥酔状態だったのに、自然と酔いが醒めてきたように思える。
 
 すぅ、と何かが引く。
 それが血の気であることに気づいたのは、直後にここ、バーボンハウスの扉が開かれた時だ。
 
 その場にいた三人は、何となしに振り向いた。
 いや、内藤だけは、がばッと覆い被さるように振り返った。
 そこには、長身で痩身な男と、灰色のパーカーを着た男が立っていた。
 
 
 彼らを見た瞬間、内藤の酔いは完全に醒めた。
 
( ・∀・)「旦那、いま帰った―――」
 
 
 
( ・∀・)「―――ぜ――……?」
 
(*´ー`)「どうした、モララー」
 
( ・∀・)
 
 
 モララーと内藤の視線が、互いにぶつかり合う。
 そして、二人とも別の感情により、かたかたと、躯がふるわせられることになった。
 
 
 
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530 名前:同志名無しさん :2013/01/27(日) 11:48:43 ID:wcqMe8nU0
 
 
 
( ・∀・)
 
( ^ω^)
 
 
 
( ・∀・)「……あ」
 
 
 
 
(;・∀・)「ああああああああああああああああああッ!!」
 
( ;゚ω゚)「あッあんたは―――!!」
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
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