- 125 名前:同志名無しさん :2012/12/13(木) 13:37:13 ID:4Ozh1CRYO
-
○登場人物と能力の説明
( ^ω^)
→この世界の『作者』。
/ ,' 3 【則を拒む者《ジェネラル・キャンセラー》】
→あらゆる力及び力の法則を『解除』する《特殊能力》。
从 ゚∀从 【正義の執行《ヒーローズ・ワールド》】
→『英雄』が負けない『世界』を創りだす《特殊能力》。
( <●><●>) 【連鎖する爆撃《チェーン・デストラクション》】
→相手の手負いを『連鎖』させる《特殊能力》。
( ・∀・) 【常識破り《フェイク・シェイク》】
→自然のうちに『嘘』を混ぜる《拒絶能力》。
从'ー'从 【手のひら還し《イレギュラー・バウンド》】
→『因果』を『反転』させる《拒絶能力》。
( ´ー`) 【???】
→『拒絶』と関わりの深い男。
.
- 126 名前:同志名無しさん :2012/12/13(木) 13:37:43 ID:4Ozh1CRYO
-
○前回までのアクション
/ ,' 3
从'ー'从
→戦闘中
从 ゚∀从
→気絶
( <●><●>)
→戦闘不能
( ´ー`)
→散策中
( ・∀・)
( ^Д^)
→戦闘終了
.
- 127 名前:同志名無しさん :2012/12/13(木) 13:38:59 ID:4Ozh1CRYO
-
第十三話「vs【手のひら還し】X」
必死の抵抗だった。
ワタナベから、マシンガンのように飛んでくるありと
あらゆる攻撃をアラマキが避けられる術も本来はあったのだ。
右から、上から、下から、左から、不可思議な方面から。
奥から、手前から、斜めから、観測不可能な方面から。
飛んでくる攻撃は、その一撃が即死に値する。
そんななか、アラマキの方針は「とにかく時間を稼ぐ」なのだ。
だから、多少は手加減をしてでも、防御や回避に
徹するに越したことはなかったはずだった。
だが、相手が『拒絶』のワタナベであった場合、
アラマキとて本気で撃ち合わなければ、
その方針を徹することはまず不可能となるのだ。
相手の命を、一瞬後には奪ってやるという心構え。
それがなければ、文字通りあっという間にアラマキの心臓はもぎ取られてしまう。
ワタナベは、もうとっととこの戦いを終わらせようとしているからだ。
ここで、仕上げとしてアラマキを完膚なきまでに打ちのめす。
あらゆる『因果』を悉く『反転』させて、アラマキに『拒絶』を植え付ける。
そうすることではじめて、ワタナベは目的を達したことになるのだ。
その目的には、少なからず必要なものがある。
「相手の必死の抵抗」と「相手の生への執着心」、この二つだ。
アラマキは、その両方を持て余すほどに持っている。
だから、ワタナベは他の二人とは違って
このように真っ向から戦いを挑んでいるのだろう。
アラマキに言わせてみれば、それはとんだ迷惑な話だった。
.
- 128 名前:同志名無しさん :2012/12/13(木) 13:40:25 ID:4Ozh1CRYO
-
(;^ω^)「よせ、アラマキッ!」
屋敷の陰に身を寄せながら、内藤は叫ぶ。
たとえその言葉に意味がないものだ、とはじめから
わかっていたとしても、内藤は叫ばざるを得なかった。
勝つ『因果』は、存在しないのだ。
全てが全て、『反転』させられるから。
【手のひら還し】という『拒絶』が、それを拒むから。
ワタナベが、『拒絶』だから。
なおも戦闘は続く。
内藤の必死の声は、その戦闘で発せられる
様々な音によって、きれいにかき消されていた。
(;^ω^)「そいつ、ワタナベに――」
ワタナベが、回転しながら裏拳を三連続で水平に放った。
さながら駒のような動きで、残像が消える前に新たな残像を
重ねていたので、比喩ではなく本当に駒のような動きだと言えた。
アラマキがその回転にかかる慣性を『解除』しようとすると、
ワタナベはそれを『反転』させ『入力』された状態に戻す。
アラマキも内藤がなにか言っているのには気がついていたのだが、
とてもその声を認識しようという気にはなれなかった。
(;^ω^)「通じる『因果』なんて、なにもないんだおッ!」
駒の一回転半の終わりに、ワタナベは回し蹴りを放った。
拳の攻撃から急に足が入ったが、アラマキは動じることはない。
.
- 129 名前:同志名無しさん :2012/12/13(木) 13:41:39 ID:4Ozh1CRYO
-
ワタナベの動きから力を『解除』させ、一瞬動きを止める。
『解除』が『入力』に『反転』されるその一瞬の隙を衝いて、
右腕に全体重を載せてアラマキは殴りかかった。
だが、ワタナベが能力を発動させるのにかかる時間と
アラマキが全力で「破壊」をぶつけるのにかかる時間とで
圧倒的に前者が速かったというのは、言うまでもない。
アラマキの拳の軌道が『反転』させられ、
拳はワタナベから遠ざかるように弾き返された。
アラマキはその軌道を利用した。
躯を拳より速く右に捻っては、時計回りに一回転した。
慣性と速度の恩威を充分に受けた裏拳は、『拒絶』とは
言えど、「当たれば」即死に値する破壊力を生み出す。
瞬きをしていたうちに反対方向から飛んできた裏拳。
ワタナベは「のわっ」と呟いてはその軌道も『反転』させた。
それすらをも読んでいたようで、アラマキは
今度は躯を左に捻って、正拳突きの構えを一瞬でとった。
慣性という名の力は『反転』させられたことで
既についているため、拳に力を籠める必要はない。
溜めなしから、突如として放たれる正拳の軌道を、
ワタナベが『反転』させることはできなかった。
能力とは、基本的に発動速度は思考相当なのだ。
己の思考がついてこなければ、どんな力もうまく使いこなせない。
そして、アラマキのこの攻撃は、
その能力そのものにおける弱点を衝いたものだった。
.
- 130 名前:同志名無しさん :2012/12/13(木) 13:43:12 ID:4Ozh1CRYO
-
(;^ω^)「――おっ!?」
これには思わず内藤も声をあげた。
アラマキの拳が、ワタナベの顔に触れたのだ。
だが、打撃音はしない。
これはなにを表すのか。
アラマキの打撃による負荷を一時的に『解除』したのだ。
そうすることで、アラマキの拳ではワタナベに負荷は
かからなかった≠ニいうひとつの『因果』が生まれる。
のちにこの発生していた力を『入力』すれば、
嘗ての因果関係はそのままで、突如として現れた
発生源不明の負荷がワタナベを襲うのだ。
ワタナベの顔の左半分を奪った攻撃は、これを用いていた。
因果関係をリセットすることで、『因果』の『反転』を受け付けないように。
/ ,' 3
アラマキは、声にこそしなかったものの、確かな手応えを感じたようだった。
ここで『入力』すれば、ワタナベの顔にかかった負荷を
首が支えきれず、胴体から引きちぎれることになる。
そうなることを祈って、アラマキは胸中で『入力』を念じようとした。
从'ー'从「ばーか」
/ ,' 3「……?」
だが。
ワタナベは、にやにやとしていた。
どこか不審に思ったアラマキは、力を『入力』するのをとめた。
妙な胸騒ぎがしたのだ。
.
- 131 名前:同志名無しさん :2012/12/13(木) 13:45:26 ID:4Ozh1CRYO
-
从'ー'从「おんなじ手が二度通じる、って思ってた?
ばっかじゃねーの?」
/ ,' 3「どうした、怖じ気づいたか」
アラマキは口ではこう言っていたが、内心では不安を感じていた。
ワタナベのこれが、不意打ちを狙うための戯言や虚勢ではないことを察していたのだ。
それは、つまり何かの『因果』を『反転』させたことにつながる。
ワタナベは鼻でアラマキを笑った。
見下すような視線で、アラマキを見つめた。
从'ー'从「因果関係は、何も負荷に関するものだけにあるんじゃねえんだよ」
/ ,' 3「……?」
从'ー'从「拳が肌に触れた瞬間、その接触に関する因果関係を『反転』させました」
从'ー'从「いま『入力』すると、おめーの顔が吹き飛ぶんだよっ」
从'ー'从「拳が触れられたのは、おめーなんだからな!」
/ ,' 3「……なに……?」
アラマキは、少し考えてから、小さく声を発した。
てっきり、隙を衝いて殴りさえすれば勝てる、と思っていたのだ。
だが、接触という観点から『因果』を『反転』させることが
できるなら、それこそ勝つことができなくなってしまう。
そして、同時に別のことも思い出した。
いや、ずっと心に留めていたことではあったが、
自然と強く意識させられてしまうようになった。
ワタナベは、自身の時間の進行をも『反転』させることができるのだ。
そして、実際にそれで吹き飛んだはずの左目が元に戻っていた。
.
- 132 名前:同志名無しさん :2012/12/13(木) 13:46:10 ID:4Ozh1CRYO
-
もしワタナベが接触における因果関係を『反転』させなくても、
時間の進行を『反転』させればすぐに元のワタナベに戻ってしまう。
それも、殴られる前のワタナベであるため、再度
『解除』された力を『入力』して――などということもできなくなるのだ。
アラマキは、更に時間を稼ごうと思った。
語調も選ぶ言葉も、やけに辿々しくなってきていた。
/ ,' 3「のぅ」
从'ー'从「死ねえええええっ!」
从'ー'从「なぁに〜?」
/ ,' 3「……、……」
.
- 133 名前:同志名無しさん :2012/12/13(木) 13:47:03 ID:4Ozh1CRYO
-
/ ,' 3「是非聞かせてほしいことなんじゃが、
おぬしは、どうして『拒絶』になったんじゃ?」
从'ー'从「なにコイツ、少しでも長生きしたいってハラ?」
/ ,' 3「うぬ……冥土のみやげに、のぅ」
从'ー'从「ふーん」
/ ,' 3「……少しでいいんじゃ、聞いても良いかの」
从'ー'从「ヤ」
/ ,' 3「良くなかったか」
从'ー'从「なに急に。命が惜しいの?」
/ ,' 3「うむ。
逝く前に、な」
从'ー'从「へぇ〜。で?」
/ ,' 3「死ぬんなら、せめて穏やかに死にたいんじゃ」
/ ,' 3「ろくでもない死に様ほど、軍人にとって情けない最期はなかろうて」
从'ー'从「そうなんだ〜。ボク軍人じゃないけど、わかるよ〜。嘘だけど」
.
- 134 名前:同志名無しさん :2012/12/13(木) 13:48:10 ID:4Ozh1CRYO
-
/ ,' 3「……、……」
从'ー'从「ん〜?」
意味がありそうでなかった会話は、アラマキのいきなりの沈黙で終わった。
状況が掴めず、ワタナベは少し妙な心地になった。
笑顔のまま、首を傾げてはいるものの、アラマキの考えが読めなかったのだ。
アラマキは、心の中で「気づけ」と言っていたのだから。
/ ,' 3「……ふむ」
从'ー'从「なによさっきから〜。
『気づけ』なんて言っちゃってさ〜」
从'ー'从「はッ! まさかボクのこと好きなの!?
や〜ん、戦渦の告白〜!」
ワタナベの推理が追いつく前に、アラマキは少し後退した。
結局アラマキの考えは読めなかったが、それを悟らせないように
ワタナベも得意の戯言と不気味な動きでアラマキを牽制した。
アラマキは聞く耳こそ持たないが、少なくとも
ワタナベが大して賢くなかったことには感謝していた=B
胸の高鳴りを抑え、真意を悟られないよう最大限の注意を払って、アラマキは言った。
.
- 135 名前:同志名無しさん :2012/12/13(木) 13:49:30 ID:4Ozh1CRYO
-
/ ,' 3「おぬしの最大の過ちは、トドメを刺さなかったことと、思いこみが過ぎたところじゃ」
从'ー'从「ハ? ボクが言うのも何だけど、
きみ様子がコロコロ変わってなくね?」
/ ,' 3「儂は確かに言ったぞ」
/ ,' 3「『儂の宿敵にの、おぬしなんかの数百倍は不意打ちのうまいきゃつがいてのぅ』
『そのフリがフェイクであること自体、むしろお約束なんじゃよ』……とな」
从'ー'从「?」
/ ,' 3「……こっからは、連携が物を言う」
/ ,' 3「委せたぞ」
从'ー'从「だから、ナ――」
――いよいよ、ワタナベもわけがわからなくなってきた頃。
少し離れたところから、聞こえるはずのなかった声が聞こえた=B
その声は、凛々しく、太く、大きく
そして、誰よりも
「恐怖」を植え付けるものだった。
.
- 136 名前:同志名無しさん :2012/12/13(木) 13:51:09 ID:4Ozh1CRYO
-
「『爆撃』ッ!!」
从'ー゚从「――ッッ!?」
その怒号に近い声が聞こえた瞬間、ワタナベの
足下から地雷の何倍も強い威力の爆発が起こった。
その轟音、熱風、破壊力はどれも凄まじく、
予想だにしていなかったものだったため、
ワタナベはわけもわからず爆発に呑まれる他なかった。
服が焦げ、皮や肉が溶け、どうしようもない痛みが緊急信号を送る。
だが、これだけでは終わらなかった。
その爆発を――いや、あの声を聞いたと同時に。
アラマキもまた、怒号に近い声を発していたのだ。
/ ,' 3「『入力』ッ!!」
.
- 137 名前:同志名無しさん :2012/12/13(木) 13:52:19 ID:4Ozh1CRYO
-
瞬間。
从'ー゚从
ワタナベの胴体が、粉々になった。
.
- 138 名前:同志名無しさん :2012/12/13(木) 13:53:16 ID:4Ozh1CRYO
-
◆
『拒絶』でも、人間らしい一面を持っていることはある。
そもそも、『拒絶』しているのは特定のあることに関してのみであり、
内藤は「すべてを拒絶した」と言っているが、意外と受け入れるものは多いのだ。
日頃は、一般人である。
が、誰も、その無表情の裏に《拒絶能力》が潜んでいることを知らない。
【常識破り】然り。
【ご都合主義】然り。
【手のひら還し】然り。
社会の歯車となって、のうのうと生きている人のなかに、
『拒絶』が紛れ込んでいるとしれば、一般人はどうなるだろうか。
逃げ惑い、命が惜しいばかりに泣きわめくだろうか。
男なら土下座、女なら裸になって『拒絶』にすがりつくだろうか。
正解は、「なにもしない」だ。
実際にそのようなことが判明したところで、
『拒絶』は一般人に手を出すことはないのだから。
『拒絶』のオーラも抑えることができるようで、
『能力者』や敵と対峙する時以外は、
その『拒絶』のオーラは鳴りをひそめられているのだ。
.
- 139 名前:同志名無しさん :2012/12/13(木) 13:54:48 ID:4Ozh1CRYO
-
朝、十時を過ぎるとスーパーは開店し、瞬く間に人また人で埋め尽くされる。
目玉商品は飛ぶように売れ、今日もにぎわいを見せるのだ。
そのスーパーは、川沿いに建っている。
その川は公園から流れてきており、自然に溢れている。
緑の向こうには、内藤武運が住人だった家が建っているが、それを知るものは今はいない。
そして、トソンと呼ばれる少女は、そこを歩いていた。
公園を川沿いに進んでは、木の上から降り注ぐ朝の日射しを身体全体で受け止める。
俗にいう木漏れ日にこうも風流を感じるとは、トソンは思ってもみなかっただろう。
風もどことなく心地よく思える。
髪を風に預けては、さらっと右の髪を耳の後ろにかけた。
どこか肌寒くも思えるなかで、ぼうっとしながらスーパーへの道のりを歩む。
(゚、゚トソン
その容貌だけを見れば、決して彼女を『拒絶』とは思えないだろう。
ワタナベ以上に美しい少女で、顔立ちが整っているのだ。
淑やかな性格も相俟って、『拒絶』になるまでは彼女を好く思う男性は多かったとされる。
舞う木の葉を見て、またも風流を感じた。
この世界が、この朝の公園のように爽やかなものだったら『拒絶』の精神など生まれなかったろうに。
ふと、トソンはそんなことを思った。
すると、隣の茂みから音が鳴った気がした。
その音が、トソンの歩みを止めさせた。
トソンが何だと思うと、また茂みが揺れた。
風の音ではない、人為的なもののように思えた。
.
- 140 名前:同志名無しさん :2012/12/13(木) 13:56:12 ID:4Ozh1CRYO
-
だから、トソンは無意識のうちに《拒絶能力》を発動させた。
途端に、トソンの聴覚は通常の何十倍にも発達した。
いや、発達したのはトソンの聴覚ではない。
茂み一帯の音が、何十倍にも大きくなったのだ。
トソンはじっとそこを見つめ、音にも集中する。
草や枝がこすれあう音、何かが地を踏みしめる音。
トソンは、必ずそこに誰かがいるという確信を持った。
だから、トソンは足音を《拒絶能力》で消して、歩み寄った。
(゚、゚トソン「……」
茂みまで、あと一メートル。
トソンは、茂みを取り払おうとした。
強化された掌で茂みを払えば、一瞬でそこら一帯を野原にすることができるのだ。
だが。
それより先に、向こうが動いた。
向こうは、茂みから飛び出した。
▼・ェ・▼「あんっ!」
(゚、゚トソン「!」
予想だにしなかった展開だったため、トソンは思わず顔を腕で覆った。
だが、飛び出したそれはトソンの想定していたものではなかった。
あっけらかんとした顔でそれを見つめると、それは再び鳴いた。
▼・ェ・▼「あんっ!」
(゚、゚トソン「……い、いぬ?」
.
- 141 名前:同志名無しさん :2012/12/13(木) 13:57:48 ID:4Ozh1CRYO
-
発動していた《拒絶能力》は自然のうちに消えていた。
唖然としたトソンは、構えも解いて、その犬をじっと見つめた。
ビーグルか、若しくはその雑種だろうか。
垂れた大きな耳と茶褐色の毛皮が、愛らしい。
ビーグルはちぎれそうなほど尻尾を振って、舌を出しては声を発していた。
トソンに好感を抱いているようで、透き通った瞳でトソンを見つめる。
トソンは、知らずのうちにしゃがみ込んで、両手を差し出していた。
その動作の意味を理解したビーグルは、トソンの胸に飛び込んだ。
トソンの頬を何度も舐め、尻尾を振り続けた。
(゚、゚トソン「く、くすぐった……」
▼・ェ・▼「ハッハッ……」
(゚、゚トソン「……」
ビーグルの抱き心地はよかった。
全身ふさふさで、温もりも感じる。
確かな体重も感じ、そのビーグルが確かに生きていることを知った。
自然のうちにビーグルの頭や背中を撫でた。
それに反応してか、ビーグルもトソンの頬や鼻を舐める。
得たことのない感触をくすぐったく感じ、思わず頬がゆるむ。
(゚、゚トソン「……首輪がない」
撫でていると、ふとそのことに気がついた。
野良犬か、捨て犬だろうか。
飼い主がいないことに気づいて、トソンは撫でるのをやめた。
ビーグルはもっと撫でてくれと言わんばかりに鳴く。
そんなビーグルも、トソンと同じで孤独な存在なのだ
とわかり、トソンには親近感に近い感情がわいてきた。
.
- 142 名前:同志名無しさん :2012/12/13(木) 13:59:13 ID:4Ozh1CRYO
-
(゚、゚トソン「捨てられるなんて……」
▼・ェ・▼「クーんっ」
(゚、゚トソン「わかったからねだらないの」
ビーグルが催促するので、再びトソンは撫でた。
するとやはりビーグルは尻尾を振る。
実に人懐っこい犬らしく、もうすっかりトソンに懐いていた。
思わず、トソンからも笑みがこぼれた。
柄でもない声も発し、ビーグルとじゃれる。
平生ではクールなトソンも、このビーグルに対しては形無しだったのだ。
(゚、゚トソン「ちょ……」
▼・ェ・▼「ハッハッハッ……あんっ!」
(゚ー゚トソン「………ふふっ」
( ・∀・)「ずぅ〜いぶんと楽しそうじゃねーか。俺も混ぜてくれ」
(゚、゚トソン「っ!」
――トソンがビーグルのことを愛らしく思っていると、
急に背後から音もなくモララーが現れた。
現れると同時にそう声を発したので、トソンは咄嗟にビーグルを抱きながら立ち上がった。
モララーはけらけら笑って、トソンを見る。
一方のトソンは、訝しげな顔をしてモララーを睨んだ。
モララーはその鋭い視線に耐えかね、両手をちいさく挙げた。
( ・∀・)「おお怖い怖い。なんだよ」
(゚、゚トソン「背後に急に現れる癖、なおした方がいいですよ」
( ・∀・)「そうかいそうかい。冗談の通じねえ女だな」
(゚、゚トソン「それほどでも」
( ・∀・)「へっ」
.
- 143 名前:同志名無しさん :2012/12/13(木) 14:00:54 ID:4Ozh1CRYO
-
モララーは、【無私の報せ《アクシデント》】と呼ばれる男と戦ったばかりだった。
疲れや負傷など全く見られないが、どこか興奮しているのがわかった。
だから、トソンが警戒するのも致し方なかった。
モララーは手を下ろすと、にやにやと笑った。
トソンは嫌な気分になって、少し後退りした。
(゚、゚トソン「なんなんですか」
( ・∀・)「え? いやぁ」
( ・∀・)「いぬっころ、ずっと抱いてんだなってよ」
(゚、゚トソン「いぬ?」
(゚、゚トソン
▼・ェ・▼「クぅん……」
(゚、゚トソン
(゚、゚トソン「わわっ!」
言われてトソンが視線を下ろすと、未だに胸に抱かれているビーグルと目があった。
はッとして、トソンは半ば投げ捨てるようにビーグルを下ろした。
向こうの茂みに隠れるように、ハンドサインを送って。
だが、ビーグルは帰ろうとしない。
尻尾を振って、トソンをじっと見上げる。
愛らしい顔で見つめてくるため、トソンは困った。
その様子を見て、モララーはまた笑った。
( ・∀・)「好かれてんだな。よかったじゃねーか」
(゚、゚トソン「別にそういうわけじゃ……
ほら、帰りなさいって」
▼・ェ・▼「ハッハッ……」
(゚、゚トソン「もう……」
それを見て、またモララーは笑った。
トソンは、仕方がなかったためビーグルを追い返すのをやめた。
溜息を吐いて、トソンは再び歩き出した。
ビーグルがそれに必死について行く。
モララーも、彼女にあわせて歩き始めた。
.
- 144 名前:同志名無しさん :2012/12/13(木) 14:02:56 ID:4Ozh1CRYO
-
( ・∀・)「今からどこに行くんだ?」
(゚、゚トソン「スーパーに、食材を」
( ・∀・)「へえ、意外だな」
口角を少し吊り上げて、モララーが返した。
その意味ありげな笑みに、トソンは少しムキになった。
(゚、゚トソン「どういう意味ですか」
( ・∀・)「意外に人間らしくてよ」
(゚、゚トソン「意味が分からない」
( ・∀・)「別にいいけどな」
(゚、゚トソン「もう……」
そう言って、モララーはフードをかぶった。
少し風が冷たかったからだ。
しかし、トソンが「似合ってない」というと、
モララーは渋々フードを脱いだ。
どこか、不満げな顔をしていた。
( ・∀・)「………ところでよ」
(゚、゚トソン「なに」
モララーの顔が、急に真剣なものになったので、トソンも畏まった。
ポケットに手を突っ込んだまま、モララーは前だけを見て、トソンに言う。
( ・∀・)「実際、どうなんだ。満たされてっか?」
(゚、゚トソン「……そんなこと」
トソンの視線が若干下がった。
.
- 145 名前:同志名無しさん :2012/12/13(木) 14:05:17 ID:4Ozh1CRYO
-
(゚、゚トソン「私はショボンさんやワタナベさんほど、飢えてるわけじゃないので」
( ・∀・)「へえ、そうか。まあそうだわな」
ノウリョク
(゚、゚トソン「この『拒絶』がある限り、進んで満たされようとは別に思いませんね」
( ・∀・)「おまえらしいわ、ったくよ」
(゚、゚トソン「……ムぅ」
トソンは足下に視線を遣った。
ビーグルは短い足で懸命にトソンに遅れないように動いている。
トソンの歩幅は少し狭くなった。
(゚、゚トソン「あなたはどうなのですか」
( ・∀・)「ん? 俺?」
唐突に訊かれたので、モララーは少し驚いた。
トソンが肯いたので、モララーは小さく唸った。
考えてなかった質問なので、答えを用意するのに時間がかかった。
漸く出た答えを、それとなくで答えた。
( ・∀・)「さっきも一人潰してきたけど、大して気持ちよくねえや」
(゚、゚トソン「弱かったから?」
( ・∀・)「いや、弱かなかったけどな。
なんでも、『事故』を操るんだってよ。それも因果律からだ」
(゚、゚トソン「因果律……」
.
- 146 名前:同志名無しさん :2012/12/13(木) 14:08:27 ID:4Ozh1CRYO
-
( ・∀・)「俺らの間でさえ、おまえやワタナベやアイツ≠ヘ操れねえんだ。
普通の『能力者』とヤれば、たぶんイイ線いくぜ。
ただ、相手が悪かっただけだ」
モララーがあっけらかんとした様子で言うと、
トソンは自分が低く見られたのをよく思わなかったのか、ムキになって言い返した。
(゚、゚トソン「尤も、ただの『事故』じゃあその三人にすら効きませんがね」
( ・∀・)「そう言うと思ったぜ、意地っ張りさん」
(゚、゚トソン「……む」
トソンが少し、眉間にしわを寄せた。
それを見て気まずく思ったモララーは、語調をほんの少しだけ速めて
( ・∀・)「――まあ、確かにそうだわな」
(゚、゚トソン「?」
( ・∀・)「いくら衝突事故が起こってもだ。
おまえならその威力が最低レベルまで落ちる。
ワタナベなら、トラックが潰れるか跳ね返されるか、
とりあえずなんかが『異常(くるわせ)』られちまう」
( ・∀・)「で、アイツ≠ネら、そもそも『事故』の対象そのものがおかしくなるな。
それか、『事故』が更に事故って、当人が死ぬか」
(゚、゚トソン「……」
( ・∀・)「俺も『拒絶』だけどよ、さすがにああはなりたかないぜ。
狂ってるなんてレベルじゃないしな。
人間らしさなんか『絶望的(ゼロ)』だ」
(゚、゚トソン「私、彼のことはそれほど存じてないのですが――」
.
- 147 名前:同志名無しさん :2012/12/13(木) 14:09:59 ID:4Ozh1CRYO
-
そこまで言うと、モララーは肯いた。
それを踏まえた上で、モララーは続けた。
( ・∀・)「能力名なんざ知らねーが、とにかくアイツの近くに居ちゃやばいことが起こるんだ。
運が憑(つ)きる≠オ、
運が凶(わる)くなる≠オ、
運が亡(な)くなる≠だぜ」
(゚、゚トソン「……」
( ・∀・)「トソンはまだ遭(あ)ってないだろうが、むしろ遭うなよ。
ネーヨの旦那じゃなきゃ、あんなのの相手なんか到底できん」
(゚、゚トソン「……会わない方がよさそうですね」
( ・∀・)「ああ、遭わない方がいい」
そう言うと、トソンは少し頬を膨らませた。
自分と住む次元の違う男が同じ『拒絶』に
いると知って、つまらなく思えてきたのだ。
モララーも嫌な話題を出したせいか、少し気怠そうに見えた。
モララーは『拒絶』のオーラこそ凄まじいが、人間的な一面は持っているのだ。
だから、『拒絶』の精神と関係なく、苦手なものは苦手で嫌いなものは嫌いである。
まして、アイツ≠フことを考えたせいで、吐き気が催されもしたのだ。
決して、いい気分ではないだろう。
気分を晴らそうと、モララーは話題をかえた。
今交戦しているであろう、ショボンのことだ。
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- 148 名前:同志名無しさん :2012/12/13(木) 14:12:19 ID:4Ozh1CRYO
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( ・∀・)「ショボン、どうなってると思う?」
(゚、゚トソン「彼……ですか?」
トソンも、急に話題がかわったせいで少しどきっとした。
後味の悪い話から、急に普通の話になったからである。
内容がショボンだったため、トソンは少しは落ち着けそうだった。
モララーもワタナベもショボンも、皆性格はかなりひねくれているのだが、
ショボンに関してはまだ他よりも交流はあるのだ。
( ・∀・)「いきなりゼウスん家に突っ込んでよ。今頃圧勝してるんじゃねえか?」
(゚、゚トソン「でも、話を聞いている感じでは『能力者』の中でも
相当な遣い手の三人が相手なんでしょ? いくら彼でも……」
( ・∀・)「いやいや。【ご都合主義】だっけか、アレは正直言ってやべぇよ。
マジで闘り合えば、この俺でも負けるかもしれんからな」
(゚、゚トソン「と言うと?」
( ・∀・)「出会い頭で、いきなり『俺なんか存在していなかった』
っつーな『現実』にされちまうと、もう即死さ。
俺がその時『俺はここに存在している』っつー『嘘』を
吐いてなきゃ、抗いようなく消えちまうんだからよ。
……ま、実際はそうはなんねーけど」
(゚、゚トソン「確かに、そんな用途もある、と自慢されました」
( ・∀・)「ただ、だ。懸念事項があるとすれば」
(゚、゚トソン「なんですか?」
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- 149 名前:同志名無しさん :2012/12/13(木) 14:14:32 ID:4Ozh1CRYO
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モララーが少し勿体ぶったので、すかさずトソンは訊いた。
モララーも別に隠すつもりはなかったので、素直に答えた。
彼がゼウスたちに宣戦布告しに行った際、彼は
『俺はここにいない』という『嘘』を吐いて、存在を消して偵察をしていたのだ。
アラマキやゼウス、ハインリッヒ。
更に言えばヒートの戦いも見ていた。
だからこそ感じた、懸念事項があった。
( ・∀・)「ジジイの能力は大したことねえんだけど、あいつは面倒臭そうだったな」
(゚、゚トソン「どなたですか?」
( ・∀・)「『英雄』だよ」
( )「…」
モララーが『英雄』という単語を言ったとき。
どこか近いところで、その人は反応をした。
モララーがそのことに気づくはずもなく、
『英雄』について感じたことを告げていく。
( ・∀・)「話によれば、なにもかもから『優先』されるんだってな。
ショボンが本気を出してなかったら、ひょっとすると
『現実』に『優先』されて負けるんじゃねえかな、って」
(゚、゚トソン「ゆうせん……」
( ・∀・)「『英雄だから許される』とか言って、物理法則とか概念論まで無視し出すんだぜ。
やってることはネーヨの旦那と全然変わってねえよ」
( )「…」
(゚、゚トソン「それは面倒そうですね」
( ・∀・)「まあ、仮定だけど――」
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- 150 名前:同志名無しさん :2012/12/13(木) 14:16:04 ID:4Ozh1CRYO
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(゚、゚トソン「!」
( ・∀・)「!」
モララーとトソンは、その異変に気がついた。
いま、一瞬で、風景が変わった≠フだ。
いや、変わっただけなら彼らは違った反応を見せただろう。
実際は、変わったわけではない。
( ・∀・)「……おい」
(゚、゚トソン「なに」
( ・∀・)「あの看板、さっき通り過ぎたよな……?」
モララーは、右手にあるドラッグストアを指さして言った。
それは数十秒前、モララーとトソンが会話をしている最中に通り過ぎた店だった。
その店が、いま右手の方に建っている。
とてもチェーン店だとは思えない。
ドラッグストア以外にも、コンビニや駐車場など、建物や風景が悉く一緒なのだ。
つまり、これは変わった≠ニいうよりは
戻った≠ニいう方が語弊は生まれないだろう。
自分たちの立っている場所が、
少し前の位置に戻されている=B
明らかな『能力者』の匂いを感じ取ったモララーは、
即座に『俺はここにいる』という『嘘』を吐いた。
トソンも、やはり目つきが『拒絶』のものになった。
途端に静かになった。
事情を知らないビーグルの愛らしい鳴き声くらいしか、聞こえるものはなかった。
少し経っただろうか。
モララーのでもトソンのでもない声が、した。
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- 151 名前:同志名無しさん :2012/12/13(木) 14:17:02 ID:4Ozh1CRYO
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「『英雄』は、どこ」
( ・∀・)「!」
(゚、゚トソン「…ッ」
( ・∀・)「『隠れんな、もう見つかってるぜ!』」
モララーは、そう吠えた。
『嘘』を『混ぜ』て、その声の主を見つけだすために。
すると、モララーの言った通り、その姿は見えていた=B
二人と十数メートルほどの距離を空け、立っている。
その少女は、無垢な瞳でモララーを見つめていた。
(#゚;;-゚)「『英雄』は、どこ」
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- 152 名前:同志名無しさん :2012/12/13(木) 14:18:12 ID:4Ozh1CRYO
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( ・∀・)「……」
(゚、゚トソン「なんですか、いきなり」
ぼろぼろのセーターはサイズは大きいのか、少女の胴や腕をすっかり包み込んでいた。
ショートパンツが少ししか見えず、そこからすらっと伸びる白い脚にも絆創膏や傷跡があった。
右の足首の方は、包帯までもが巻かれている。
栗色と黒の入り交じったショートヘアーがその白い肌と相俟ってよく栄えているが、
顔には傷や絆創膏が多く残っており、二人に不気味な印象を持たせた。
小さく枯れそうな声も、トソンが《拒絶能力》を
発動していなければ、彼らに聞こえることはなかっただろう。
それほど、ひ弱そうな少女だった。
トソンの言葉を無視して、少女は続ける。
(#゚;;-゚)「わたしの『英雄』、どこ?」
(゚、゚トソン「……」
(#゚;;-゚)「ねえ」
( ・∀・)「答えてやるよ」
トソンが押し黙ると、少女をじっと見つめていたモララーが口を開いた。
少女は動じることなく、右拳を顎にちょこんと当て、再度訊いた。
モララーの顔つきは、【無私の報せ】を倒した時と同じようなものになっていた。
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- 153 名前:同志名無しさん :2012/12/13(木) 14:20:31 ID:4Ozh1CRYO
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(#゚;;-゚)「おしえて」
( ・∀・)「じゃあ、説明をしろ」
(#゚;;-゚)「へ?」
( ・∀・)「おまえ、今『時を巻き戻した』だろ」
(゚、゚トソン「……え?」
少女ではなく、トソンが聞き返した。
少女は、ぽかんとした表情のまま、首を傾げていた。
モララーはなおも強い語調で続ける。
( ・∀・)「おまえ、『能力者』だな?
その全貌を教えてくれたら、こっちも教えてやるよ」
(#゚;;-゚)「ぜんぼう?」
( ・∀・)「答えろ」
小学生のようにも見える少女は、また首を傾げた。
モララーはその姿を見て、舌打ちをした。
少し少女の様子を見つめてから、モララーはきッと言った。
( ・∀・)「……ったく」
(#゚;;-゚)「おしえてくれる?」
( ・∀・)「しゃーねえから――」
( ・∀・)「死ね」
(# ;;- )「っ……!」
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- 154 名前:同志名無しさん :2012/12/13(木) 14:23:05 ID:4Ozh1CRYO
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モララーは少女の後ろに立っていた=B
【常識破り】を使ったのだが、少女は初めてそれを見るのだ。
いきなり背後から現れたモララーに、少女は怯えた。
だが、決して手加減はしないモララーだった。
現れたと同時に、手刀を少女の腹に突き刺した。
鮮血が噴き出し、地面のキャンバスに赤い色を塗った。
( ・∀・)「……ふん」
大したことはなかった、そう思ってモララーは唾を吐き捨てた。
地面にくずおれる少女に向けて、だ。
不気味な少女ではあったが、やはり『拒絶』にとっては取るに足りない存在だ、と。
だが。
少女は、口を開いた。
カ ッ ト
(# ;;- )「『撮りなおし』」
( ・∀・)「?」
(゚、゚;トソン「……モララー」
( ・∀・)「なんだ?」
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- 155 名前:同志名無しさん :2012/12/13(木) 14:24:38 ID:4Ozh1CRYO
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(;・∀・)「――って……ッ!?」
少女が呟いた瞬間、トソンは驚愕した。
少女の後ろにいたモララーは元いたようにトソンの隣にいて、
鮮血を噴き出したはずの少女の腹には何も異変がない。
そして、同じ『拒絶』だからなんとなく分かる。
――いまのモララーは、『俺はここにいる』という『嘘』を吐いてない。
モララーもそのことに気づき、当惑した。
滅多に取り乱さない二人だが、このときは動揺してしまった。
すぐさまモララーは『嘘』を吐く。
だが、胸の高鳴りはやまない。
何が起こっているのか、把握できなかったのだ。
少女は、モララーを見て、再び言った。
(#゚;;-゚)「『英雄』のばしょ、おしえて?」
( ・∀・)「……なんだコイツぁ……」
(#゚;;-゚)「わたし? わたしは、でぃだよ」
(゚、゚トソン「ディー?」
少女は肯かず、自らの主張だけを続けた。
(#゚;;-゚)「わたしは、なのったよ。
だから、『英雄』が、どこにいるか、おしえて?」
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- 156 名前:同志名無しさん :2012/12/13(木) 14:25:47 ID:4Ozh1CRYO
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気味が悪くなってきたトソンは、モララーに代わって前に出た。
『英雄』の場所を教えるためではない。
《拒絶能力》を使って、彼女を殺すためである。
(゚、゚トソン「『一秒が、一btcmになります』」
( ・∀・)「! お、おい――」
モララーが止めようとした直後、
少女はトソンの拳によって心臓を貫かれた。
文字通り、「一瞬」。
一瞬のうちに、トソンは少女の前に移動した。、
そして、非力そうなトソンが軽く少女の胸を
つついただけで、その心臓の部分は吹き飛ばされた。
あえなく倒れた少女を見て、トソンは呟いた。
(゚、゚トソン「『一グラムも、一アルファになりました』」
(゚、゚トソン「尤も、もう解除していますが」
( ・∀・)「急に本気出すなよ、びっくりすらぁ……」
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- 157 名前:同志名無しさん :2012/12/13(木) 14:26:45 ID:4Ozh1CRYO
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( ・∀・)
(゚、゚トソン
モララーは、自分の手を見た。
すると、またしても自分の『嘘』が打ち消されていることに気がついた。
いや、打ち消されたのではない。
これも、やはり戻っていた≠ニ言うべきなのだ。
その根拠も、ある。
なぜなら
(#゚;;-゚)「おねーちゃんも、ひどい」
(#゚;;-゚)「わたし、かえるね」
(゚、゚;トソン「―――ッ!?」
少女は、何事もなかったかのように立っていたからだ。
そして、モララーの『嘘』が解けたのを見ると、ある一つの仮定が浮かぶ。
モララーが『嘘』を『混ぜる』前の時間に戻された≠ニ。
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- 158 名前:同志名無しさん :2012/12/13(木) 14:27:49 ID:4Ozh1CRYO
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少女が帰ろうとしたので、モララーは当然それを制する。
能力を使って踵を返した少女の正面に立ち、胸倉を掴みあげた。
泣きそうな顔をする少女を揺すって、訊いた。
( ・∀・)「おまえの、能力は、なんだ?」
(#゚;;-゚)「……ひ…」
( ・∀・)「答えろ――」
(#゚;;-゚)「『撮りなおし』……っ」
( ・∀・)「ちょ……――」
(;・∀・)「――ナァァ!?」
(#゚;;-゚)「おにぃちゃんも、こわい……ばいばい……っ」
(゚、゚トソン「待て――」
(;・∀・)「追うなっ!」
(゚、゚トソン「え?」
トソンが再び少女に向かおうとすると、モララーが制した。
予想外の一言だったので、トソンは驚いて足を止めた。
不思議そうな顔をしてモララーを見つめると、
モララーは少し深呼吸をしてから、口を開いた。
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- 159 名前:同志名無しさん :2012/12/13(木) 14:28:49 ID:4Ozh1CRYO
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( ・∀・)「……『作者』っつーやつが言ってたんだけど」
(゚、゚トソン「はい」
( ・∀・)「まず『英雄』には、【大団円《フィナーレ》】っつーな
言ったらショボンみたいなバックがいるんだよ」
(゚、゚トソン「【ご都合主義】みたいな……?」
( ・∀・)「それだけで面倒なんだが、『作者』曰く、
更にバックがいるらしいんだよ。
それが、俺が『英雄』を懸念する理由のひとつだ」
( ・∀・)「……どういう意味かっつーとだな……」
(゚、゚トソン「……?」
モララーは、最後に一度、深呼吸をした。
そして眼を見開いて、言った。
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- 160 名前:同志名無しさん :2012/12/13(木) 14:30:59 ID:4Ozh1CRYO
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( ・∀・)「アイツ……ひょっとすると、カゲキの娘かもしれないぞ」
(゚、゚;トソン「か――カゲキ!?」
( ・∀・)「おい、買い物は終了だ。
ネーヨの旦那に会いにいくぞ。
……作戦会議だ」
(゚、゚;トソン「っ! ちょっと、まだ何も買ってな――」
( ・∀・)「喚くな!
『俺らはバーボンハウスにいるんだ!』」
(゚、゚;トソン「あああ! モララーのばか!」
エンドレス
『夢幻』に繰り返された公園における時の流れは、
いま、平穏を以て漸くいつも通りに戻ることができた。
だが、モララーの胸中では、『嘘』のような不安が渦を巻いていた。
『拒絶』すべき対象が、増えたのだ。
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