603 名前:名も無きAAのようです :2015/12/12(土) 02:43:07 ID:kuLRMUeY0


あれは確か6年生の夏休み、真夏の暑い日だったことだけは覚えている。

('A`)「ツンちゃん、今日は何して遊ぶ?」

ξ゚听)ξ「んー、じゃあ昇竜拳の練習は?」

(;'A`)「また?もう飽きたよ」

ξ゚听)ξ「ちぇっ、ドクオは付き合い悪いわね」

(;'A`)「付き合い悪いとか言わないでよ、傷付くから。それに、もう僕たち6年生なんだからさ、昇竜拳の練習はそろそろ…」

ξ゚听)ξ「あ、それなら、したらば森に冒険に行きましょうよ!なんだかんだ奥までは行ったことないじゃない?」

('A`)「…それだけはダメ」

ξ゚听)ξ「え?」

('A`)「昇竜拳の練習ならいくらでも付き合うけど、それはダメ」

ξ゚听)ξ「なんでよ、大して深い森でもないでしょ?あ、もしかして怖いの?本当に怖がりねー、アンタ」

('A`)「怖がりで結構」

ξ゚听)ξ「つーか、なんでそんな嫌がるのよ」

604 名前:名も無きAAのようです :2015/12/12(土) 02:43:53 ID:kuLRMUeY0
('A`)「怖がりで結構」

ξ゚听)ξ「つーか、なんでそんな嫌がるのよ」

('A`)「…いいかい、ツンちゃん。したらば森の奥には行っちゃあいけないよ、なにしろ彼処には、寂しがり屋のお兄さんがいるからね」

そう、いつもなら私の言いなりで文句も言わず遊びに付き合ってくれる幼馴染が珍しく強い口調で、真面目な顔して、そんなことを言ったから


ξ゚听)ξ(ドクオのくせに生意気)

そんな馬鹿げた考えで、次の日、一人でしたらば森の奥に冒険をしに行ったのだ。
寂しがり屋のお兄さんなんていなかったわよ、ってドクオに言ってやろうと思って。

605 名前:名も無きAAのようです :2015/12/12(土) 02:44:35 ID:kuLRMUeY0
だけど

ξ゚听)ξ「ほーら、やっぱり誰もいやしないじゃない、ドクオったら本当怖がりなんだから」

( ^ω^)「お?久々のお客さんかお?」

ξ゚听)ξ


「きゃあああああああ!!!!」

「おおおぉん!?」


ドクオの言う通り、森の奥にはお兄さんが住んでいた。

606 名前:名も無きAAのようです :2015/12/12(土) 02:45:16 ID:kuLRMUeY0



したらば森のお兄さんのようです


.

607 名前:名も無きAAのようです :2015/12/12(土) 02:46:05 ID:kuLRMUeY0

ξ゚听)ξ「驚かせちゃってごめんなさい…」

( ;^ω^)「いいお、いきなり叫ばれるとは思わなかったけど…」

ξ゚听)ξ 「…」

( ;*^ω^)「な、なんだお?そんなに見つめられると照れるお」

ξ゚听)ξ「いや、笑顔で明るそうなお兄さんだなぁと思って」

( *^ω^)「おっおっ、それは嬉しいこといってくれてありがとだお」

確かにドクオの言う通り、森の奥にはお兄さんが居たが、寂しがり屋には到底思えなかった。

608 名前:名も無きAAのようです :2015/12/12(土) 02:46:58 ID:kuLRMUeY0

ξ゚听)ξ(そもそも寂しがり屋のお兄さんが居たからといって、なんであんなに森に入るのを嫌がるのか分からないわ)

( ^ω^)「可愛いお客さん、君のお名前はなんて言うんだお?」

ξ゚听)ξ「ツン。小学6年生で、夢は昇竜拳ができるようになること。毎日練習してるの」

( *^ω^)「おお、ツンちゃんの夢、かっこいいお!僕も一緒に練習したいお!」

小学6年生にもなって、とドクオに断られたばっかりだった私にとって、お兄さんの対応はとても嬉しかった。

ξ゚听)ξ「じゃあさ、一緒に練習しようよ。それで、2人で昇竜拳習得しようね!」

( ^ω^)「いいのかお?練習に付き合っても」

ξ゚听)ξ「うん、勿論」

( ^ω^)「嬉しいお、ありがとだお。じゃあ練習場所はここにしようお、広いし」

ξ゚听)ξ「分かった!いつ暇なの?」


( ^ω^)「いつでも平気だお、ツンちゃんが来たい時に来てくれれば」

ξ゚听)ξ「へぇ、ニートなんだね、お兄さん」

( ;^ω^)「おぉん…手厳しいお。まぁ、そんなもんだお」

ξ゚听)ξ「じゃあ明日も来ると思うから、練習しようね」

( ^ω^)「おっ、気をつけて帰るんだおー」


こうして、私とお兄さんの昇竜拳取得のための練習は始まった。

609 名前:名も無きAAのようです :2015/12/12(土) 02:47:38 ID:kuLRMUeY0


ξ゚听)ξ「しょーりゅーけんっ!」

( ^ω^)「おっおっ、ツンちゃん、中々フォームが良くなって来たお」

ξ゚听)ξ「本当!?明日ドクオにやってみようかな」

( ;^ω^)「それはやめた方がいいお」

ξ゚听)ξ「じゃあ、お兄さんに!しょーりゅーけんっ!」

( ^ω^)「ぐほぁ!やられたー!」

ξ゚听)ξ「KOはまだできないか…」

( ;^ω^)「KOは勘弁したいお…」

610 名前:名も無きAAのようです :2015/12/12(土) 02:48:18 ID:kuLRMUeY0
お兄さんは本当に優しくて、お菓子やジュースやお茶などもよく持って来てくれて、一緒にオヤツタイムも過ごしたものだ。


( ^ω^)「はい、リンゴジュースだお」

ξ゚听)ξ「ありがと!」

( ^ω^)「どういたしましてだお」

ξ゚听)ξ「お兄さんは何飲んでるの?」

( ^ω^)「紅茶だお」

ξ゚听)ξ「いいなー、私、紅茶苦手なんだよね」

( ^ω^)「苦手なのに紅茶が羨ましいのかお?」

ξ゚听)ξ「飲めるようになりたいんだけど、飲めないから羨ましいってこと。クラスの女子たちがさ、紙パックのリプトン飲んでるんだけど、可愛いんだよね」

( ^ω^)「僕は紅茶飲める系女子より、リンゴジュース飲んでる系女子の方が好きだお」

ξ゚听)ξ「お兄さんに好かれてもなぁ…」

( ;^ω^)「おっおっ、ツンちゃんは手厳しいおー」

611 名前:名も無きAAのようです :2015/12/12(土) 02:49:02 ID:kuLRMUeY0

私は、夏休みが終わって、学校が始まるようになってからも、放課後は毎日お兄さんのいるしたらば森に通っていた。


ξ゚听)ξ(やっと学校終わった、早くお兄さんに会いに行こっと)

('A`)「ツンちゃん」

ξ゚听)ξ「何よ、ドクオ。私急いでるんだけど」

('A`)「毎日何処行ってるの?」

ξ゚听)ξ「ドクオには関係ないでしょ?」

('A`)「……まさか、したらば森?」

ξ゚听)ξ「だったら何よ」

(#'A`)「あんなに言ったのにどうして行っちゃったの!?」

お菓子を勝手に食べたり、新品の消しゴムの角を勝手に使っても怒らないドクオが、怒ったのは後にも先にもこの時だけだ。

612 名前:起こらない→怒らない :2015/12/12(土) 02:49:47 ID:kuLRMUeY0

ξ;゚听)ξ「だ、大丈夫よ。アンタの言ってたようなお兄さんはいなかったから。まぁ、笑顔で明るくて優しいお兄さんならいるけど」

('A`)「その人だよ、僕が言ってた寂しがり屋のお兄さんは」

ξ゚听)ξ「いやいや、別人だってば」

(#'A`)「とにかく!!二度と行っちゃダメだからね!?」

ξ;゚听)ξ「わ、わかったわよ…」


と、ドクオの剣幕におされて返事をしたものの、私は何日かしてから、お兄さんに会いに行った。

613 名前:名も無きAAのようです :2015/12/12(土) 02:50:27 ID:kuLRMUeY0

ξ゚听)ξ「お兄さん」

( ^ω^)「おー、ツンちゃん。久々だお」

ξ゚听)ξ「ちょっと忙しくて…」

( ^ω^)「小学生も大変だおね」

ξ゚听)ξ(しかしドクオの奴、なんでこんな優しいお兄さんに会っちゃいけないなんて言うのかしら)

( ^ω^)「ツンちゃん、お菓子食べるかお?」

ξ゚听)ξ「うん、食べる」


いつもニコニコしてるお兄さん、優しい優しいお兄さん

614 名前:名も無きAAのようです :2015/12/12(土) 02:51:09 ID:kuLRMUeY0

ξ゚听)ξ「お兄さんはいつもどうしてそんなにニコニコ笑顔なの?」

ふと、心に思った言葉が口にでた。たいした意味もない、ちょっとした質問だった。

( ^ω^)「んー、いつも笑顔なら、それはきっと笑顔じゃないと思うお」

でも、返って来た言葉は想像してたようなものとは違った。

ξ゚听)ξ「え?でも、ニコニコしてるじゃない」

( ^ω^)「そうなのかお?気付かなかったお」

ξ゚听)ξ「何それ、変なの。笑顔の理由が知りたかったのに」

( ^ω^)「んー…、そうだなぁ、僕がいつもニコニコ笑顔な理由はきっと」


うーんうーんと考えてから、お兄さんは、ポンと手を叩いてこう答えた。

615 名前:名も無きAAのようです :2015/12/12(土) 02:53:03 ID:kuLRMUeY0


( *^ω^)「わかったお!その方が都合が良いからだお」

ξ゚听)ξ「都合がいい?」

( *^ω^)「そうだおー。世界の全てを愛しているのにも関わらず、僕を除け者として扱うこの世界を滅ぼしたいと思う程の寂しさを埋めるには、笑ってるような顔の方がいいんだお!」

私はなんて返事を返していいかわからず、ポカンとしてしまった。

( *^ω^)「あ、それだけじゃなくて、ツンちゃんとも仲良くなれたし、この表情がきっと一番都合がいいからこの顔なんだと思うお」

ξ;゚听)ξ「そ、そうだね。笑顔が一番いいと思うよ。友達作りは笑顔からっていうし」

苦し紛れに私はお兄さんに返事をした

( *^ω^)「おー、そうなのかお!じゃあ、ツンちゃん」

616 名前:名も無きAAのようです :2015/12/12(土) 02:53:46 ID:kuLRMUeY0





「そんな怯えた顔しないで、笑顔になってお」

617 名前:名も無きAAのようです :2015/12/12(土) 02:54:26 ID:kuLRMUeY0

その後の記憶は曖昧だ、ただ、ドクオの家に駆け込んで、泣きじゃくりながらドクオに抱き付いて、謝ったのだけは覚えている。
ドクオは呆れた顔をしながら、「だからいったのに」とだけ言って、私の頭を撫でてくれた。

それ以来、私はしたらば森には行っていない。


だって、したらば森の奥には


今でもきっと、ニコニコ笑顔な寂しがり屋のお兄さんがいるのだろうから。


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