123 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/25(月) 12:43:17 ID:oYOb9L9o0

かつてこの世界には魔法使いがいた。というより今もいるのだけれども、彼らはいながらにして絶滅していた。

彼らは象牙の塔に籠り、入り組んだ迷宮の奥でひたすらに自身と魔法を先鋭化させていた。
そのねじ曲がり複雑に絡み合った狂気にも似たそれ、正直ぼくは嫌いじゃない。
だけどそれが、彼らが絶滅した原因であり結果なんだ。

ΑにしてΩ―。

ぼくは問う。
「何故以前のように塔から出てこないのですか」

塔が返す。
「古今変わらず。吾等、己が欲望の奴隷なり」

多分彼らは正しいのだろう。『オリジナルでありたいのなら、自分に忠実であれ』

真実の中にある虚構。世界にあまねく欺瞞。
虚構の中にある真実。お話の中にある真理。

存在の中にある無。ここには何も無いという状態
無の中にある存在。何も無いという状態の存在

無。それは不思議な概念。何も無い筈なのに、「無」という状態が「存在」している。
「無」という概念すら消し去った先。「無」さえ存在しない無。知覚者の消滅。

誰にも知覚されない、存在。あるのに存在しないもの、矛盾したそれ。
存在という概念は知覚を超えられない故のパラドックス。

124 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/25(月) 12:43:38 ID:oYOb9L9o0

そういった意味で、この世界で彼らはすでに絶滅している。
彼らを知覚しているのは、ぼくだけなのだから。

そして
これを読む君は、ぼくの世界にはいないのだから。

ぼくの世界の魔法使いは、残念ながら滅んでしまったけれど
もし君の世界に、こうなりかけている物事があるのなら事態が悪くなる前に手をうって欲しい。

そう思ってこの手紙を書いたんだ。

では、ごきげんよう。


PS.
ぼくは今日も彼らが塔から出てくるのを待っている。
ありもしない幻想だと頭のどこかで分かっていながら、狂騒に駆られている。抑えがたく。


    (´・ω・`)は塔の中の魔法使いを待つようです 近日公開(嘘)


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