133 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/29(金) 20:09:23 ID:wMcRYge.0
人に見下されるのが嫌いでした。
他人に笑われるのが嫌で嫌でたまりませんでした。
同情されると怖気がしました。
底辺にいることに恐怖を感じました。
見下す人間のいないことに敗北を知りました。
嘲笑う他人がいないことに驚愕しました。
だから人の不幸を見ると口元が緩みました。
だから人のどん底を覗くと笑が漏れました。
だから他人の闇を知ると狂喜乱舞しました。
だから人の不幸は全てに勝る蜜の味でした。
だから、僕は。
僕は――。

134 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/29(金) 20:10:14 ID:wMcRYge.0

――ああ進まねえ。
遅々として進まないタクシーの中、こちらと対照的に静かな対向車線が恨めしい。
確か、目的地の近くには最近建ったばかりの大型デパートがあるはずだ。休日であることもその要因か。

横に座る後輩はクソ真面目がゆえ話がつまらん、こちらから話を持ちかけるにはめんどくさい。
美容院の店員が垂れ流す自分語りを「フンw」の一言で凍結させる俺に、タクシーの運転手との会話なんてもっての外。他人は敵。
結論:暇だ。店に客の来ない能無し魔法使いの気持ちが分かる。

( ,,^Д^) 「進みませんねぇ……」

貧乏ゆすりの止まらない後輩、タカラ君はさっきから腕時計ばっか見ている。つか車内で貧乏ゆすりはやめなさい。
ただこいつの焦りは理解できないわけでもない。というか、俺でさえさっきから冷汗がやまない止まらない。
「ラウンジ」、この国のみならず世界の大会社に宣戦布告した新進気鋭の会社に俺たちはアポイントメントを取っている。

この会社の主要ジャンルは「IC」、飛躍的な人工知能の軽量化による成功で注目された。
だからアポの内容も必然的に堅苦しいものとなっている。俺はこういうの大嫌いな性質だが、仕事が仕事だ。仕方ない。
社長の経歴から現在の新作のマンネリ化、株の動向まで情報は全て頭に叩き込んである。

で、肝心の問題っていうのが――待ち合わせは午後一時、現在午後零時四十七分。大渋滞。死亡フラグ立ちすぎ。
結局会社の元までクーラーの聞いた車内で過ごすこと諦め、歩いていくことを決心する。タクシーよさよなライオン。
ドアを開けて外界に降り立つ(笑)と、蒸し暑い空気が即座に体を包み込む。まるで――、あの家みたいに。暑いのは嫌いだ、もちろん寒いのも。

( ,,^Д^) 「なにヌボーッとしてんですか……、行きますよ」

( ^ν^ ) 「あぁ……スマン、考え事」

そして俺達は走り出す。

135 名前:以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします :2011/04/29(金) 20:11:15 ID:wMcRYge.0

猛ダッシュをしている最中。俺は今幸せなのだろうか、ふとしたときにその疑問は頭をよぎって行く。暑さのせいで頭の調子がおかしい。
子供の頃を思うとどうも感傷的になってしまう。あんな世界の中に自分も没落していくと思うと、吐き気がした。
だからここまで登ってきた、体中を血みどろにして。勝者を恨み、敗者を嗤い。ずっとずっと、乾き続けていた。

「何考えてるんスか」

( ^ν^ ) 「負け犬について」

いやそう言う意味じゃなくて、後輩は苦笑いする。嫌味ですよ嫌味、と。
今、俺には多少の地位と、両手両足の指でギリギリ数えれられるほどの仲間がいる。
ここは頂点なのだろうか、俺の求めた。一人自問する、多分そうじゃないのだろう。

ハイジ(お爺さんに聞くほうではなく駅伝する方だ)も驚愕するほどの速度で走った末、思ったほど大きくはない目的地、ラウンジにたどり着く。

( ^ν^ ) 「じゃあ行くか。ラウンジ十二階の個別面談室、都村だっけ?」

( ,,^Д^) 「あと二分ですよ――、急ぎましょう」

俺達は自動ドアを潜り抜け、クーラーの洗礼を再び受ける。全力疾走後の汗による気化は辛いが、それは仕方がない。
さあ、どんな人が待っているのだろう。俺に面白いものを見せてくれよ。暗く澱んだ醜悪が見たい。
日本人の4割が取っている大手新聞、「VIP」の名詞を武器にして。





( ^ν^ )は暗闇を覗きこむようです


公開未定


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