- 15 名前:為人しぃは此処にいる。 :2011/09/01(木) 06:16:31 ID:.0MVdegcO
- 僕の妹が自殺した。
為人しぃ、享年14歳。
いじめを苦に、在学していた全寮制の女子校の屋上から飛び降りたそうだ。
山奥にあるその学校は、非常に排他的で。
例え保護者であろうと、年に数度しか立ち入りを許されていなかった。
けれど、理想的な淑女へと生育させるその環境に不満を抱く保護者はいなかった。
今回の件があっても、だ。
僕の妹は、いわゆる落ちこぼれであり、大多数の生徒には無関係な話だから、だそうだ。
そんな妹から最後に届いたメールには、ただ一言。
謝罪の言葉だけが、あった。
- 16 名前:29日・30日「納涼夏祭り」 :2011/09/01(木) 06:17:05 ID:.0MVdegcO
為人しぃは此処にいる。
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- 17 名前:29日・30日「納涼夏祭り」 :2011/09/01(木) 06:17:35 ID:.0MVdegcO
- ( ・∀・)「ふはっ」
思わず、溜め息がこぼれた。
今年から、赴任することになった山奥の女子校。
写真でしかみた事がなかったけれど、実際に見れば、そりゃ溜め息くらいでる。
( ・∀・)「ホントに学校か、これ?」
思わず、呟いてしまうくらいには僕の学校に対するイメージとは異なっていた。
一言でいえば。
まるで、中世のヨーロッパのような古城。
山奥には不釣り合いなくらいに、荘厳な作り。
( ・∀・)「ここで、教えていけるかな」
早くもそんな愚痴が飛び出る。
しかし、それがただの杞憂であると知るのは、まだ先の話。
- 18 名前:29日・30日「納涼夏祭り」 :2011/09/01(木) 06:18:21 ID:.0MVdegcO
- 始業式やら、赴任式などの行事を終えて、僕が担当するクラスに向かうと。
何やら、こちらを伺うかのような視線が僕に突き刺さった。
まあ、当たり前ではあろう。
いきなりクラスを持たされる事になり、些か面を喰らっているのは僕も同じだから。
( ・∀・)「どうも、新任の偽入モララーです」
簡単な自己紹介。
( ・∀・)「これから一年間、よろしく」
こうして、僕の教師生活が幕を開けた。
- 19 名前:29日・30日「納涼夏祭り」 :2011/09/01(木) 06:19:06 ID:.0MVdegcO
- 四月、五月は雑務に忙殺されあっという間に過ぎ去っていた。
そして、仕事に慣れはじめた六月。
僕はとある噂を耳にする。
「保健室で、教師を相手に売春が頻繁に行われている」
そう言った根も葉も無い噂だ。
厳格な教師陣には、売春などするような者は見受けられず。
新任の僕がしているのではないか、と言われたが僕は赴任以来、保健室に訪れた事は数える程度しかない。
この噂は、すぐに収束するはずだった。
- 20 名前:29日・30日「納涼夏祭り」 :2011/09/01(木) 06:19:52 ID:.0MVdegcO
- だが、しかし。
とある日の放課後。
部活動中に体調を崩した生徒が、保健室を訪ねたら。
それが、行われていたそうだ。
関係していた教師は懲戒免職。
生徒数人が三ヶ月の停学。
そう、決まった。
そして、もう一つ、事件が起こる。
この売春行為、計画の発案者がいるらしいのだが誰だかは分かっていないのが問題視されていた。
関係した生徒は口をつぐんだまま停学していったが、一人だけ。
「為人しぃは悪くない」
その言葉を残して、自殺を図った。
幸いにも、彼女はすぐに発見され病院に搬送されたが意識不明の状態が続いている。
- 21 名前:29日・30日「納涼夏祭り」 :2011/09/01(木) 06:20:23 ID:.0MVdegcO
- ( ・∀・)「為人しぃ、ね」
その名前は一つの禁忌であった。
十数年前に自殺した、生徒の名。
それを知るのは、当時から在籍している教師と校長のみであるはずなのだ。
しかし、為人しぃ自身は既に故人である。
故に、ただのいたずらであると、そう思われている。
生徒の意識が戻り次第、話を聞きこの件は終り、そうなった。
皆、誰もかれも厄介事は嫌いなんだ。
- 22 名前:29日・30日「納涼夏祭り」 :2011/09/01(木) 06:21:18 ID:.0MVdegcO
- そして、昏睡状態に陥っていた生徒が意識を取り戻すのに、春を三度跨いだ。
彼女以外の生徒は卒業し、既にかの事件は風化。
無かったことになっている。
けれど、この一連の事件は終わらない。
為人しぃは、此処にいるのだから。
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