1 名前:名も無きAAのようです :2013/01/01(火) 21:09:52 ID:U.slNhCs0





お前が死にたいと無駄に生きた今日は、昨日死んだやつが一生懸命生きたかった明日なんだ

2 名前:名も無きAAのようです :2013/01/01(火) 21:17:26 ID:U.slNhCs0
コレ、2chで一時期よく見たよなあ。自殺スレとか、大量殺人スレとかで。

でもこの元ネタって、韓国のベストセラー小説らしいぜ。
2chは基本的に韓国嫌いな奴多いのに、これがやたら流行ったのは不思議だよな。
ま……そもそも肯定的な意味で書き込まれてないのかもしれねーが。

ζ(゚ー゚*ζ「そうかな。書き込んでる人は本当にそう思って、書き込んでいるのかも知れないよ」

('A`)「だとしたらとんでもない馬鹿野郎だぜ。死ぬ気の奴がこんな言葉ぐらいで死ぬのやめるかよ」

ζ(゚ー゚*ζ「死ぬ気なんて無いんじゃない?
       だって、掲示板で他人となれ合いたいっていうのは、そういうことでしょ?」

('A`)「かもねえ……」

死ぬ奴は誰にも悟られないようにコッソリ死ぬ。電車を止めたりする奴なんてのはごく少数だ。
恥を忍んでってやつか? つまんねえの。死ぬ時ぐらいパァっと死ねねえもんかね。

ζ(゚ー゚*ζ「パァっとやる元気あるなら、死なないよ」

('A`)「うーん、難しいな」

4 名前:名も無きAAのようです :2013/01/01(火) 21:28:36 ID:U.slNhCs0
さっきからの会話相手……デレについて、紹介しておこう。
こいつは俺の思念だ。三次元でも無ければ、二次元の存在でも無い。
彼女はあくまで俺の作りだした人格に過ぎない。

だから俺が知っていることは何でも知っているし、俺の知らないことは何も知らない。
いわば脳内彼女ってやつだ。いや、俺はこいつに性欲を持ったりしねーが。
まあ、例えるなら、そうだな。自分が描いた漫画の登場人物……って感じか?

ζ(゚ー゚*ζ「そういうわけだから、よろしくね!」

('A`)「うるせえよ。すっこんでろ」

俺は顔面至上主義者じゃない。この顔見てもらえりゃ分かるだろうが。
こんなツラで『イケメンこそ至高』なんてお笑いぐさだろ? ただの敗北宣言だ。

まー、しかし、自分はそんな不細工面を含めて、彼女が出来るタチじゃないことを、思春期ぐらいに自覚した。
そりゃ俺にも思い人はいたさ。あの子、今頃何やってんだろうなあ。

ζ(゚ー゚*ζ「少なくとも、ここにはいないみたいだね」

('A`)「あぁ、まったく幸いだ」

別にこっぴどくフられたりしたわけじゃない。
でも、分かるだろ? 何かこう、「無理だ」って悟る瞬間。
思い人が高嶺の花なんじゃない。俺だけが谷底に置いてかれてる感じ。

中学校の長距離走で、ま、俺は想像通りのビリッケツだったわけだが。
でも、そんな結末って最初に、ピストルが鳴る瞬間に分かってるじゃねえか。
俺より泥亀がいるなんて、ハナから期待しちゃいねえよ。俺にゃビリが似合ってる。

7 名前:名も無きAAのようです :2013/01/01(火) 21:41:07 ID:U.slNhCs0
おっと、話がそれたな。デレのことだった。

デレは、俺が突き詰めて考えた末の、一種の結論だ。
つまり、俺には脳内彼女がお似合いだろうって話。
生身の彼女なんざ永遠に手に入らねえし手に入れる努力もめんどくせえ。ならつくっちまおうってわけ。

ζ(゚ー゚*ζ「そういうわけだからさ、最初はそりゃあ、オナペットみたいなものだったよ。
       私だけがドクオの唯一の性欲の捌け口で、行き場のない恋慕の対象だった。
       そういう方面での想像力はあったみたいだね。まるで本物の恋人みたいに扱ってくれたよ」

けどよ、さんざんセックスして(ズリセンこいて)、残るのは虚しさ以外何もない。
普通の中高生がどういう恋愛してんのかしらねーけど、結局はおべんちゃらとセックスだろ?
そういうのって飽きるんだよね。いや、普通の場合をしらねーけど、俺は少なくとも、脳内彼女に飽きた。

三ヶ月ぐらいはもったかな。それでも割と快適な日々だったよ。悪くはなかった。
……で、いよいよおさらばでもしてみようか、それとも別の彼女に作り替えようか、と思ったら。

ζ(゚ー゚*ζ「離れなくなっちゃってた」

こいつはいつの間にか俺の脳味噌の中に自分の家を建ててやがったんだ。
ただのオナペットがよ、頭に寄生してやがるんだ。俺は思ったね、ああ、これが性病かって。

仕方ねーから俺はその女に『デレ』って名前をつけた。
文字通り、俺に対してデレデレだったからだ。

ζ(゚ー゚*ζ「そう、それまでドクオは、私に名前もつけてなかったんだよ」

当たり前だろうが。いくら寂しさあまって作ったからって、お前が俺の一部であることには変わりねえ。
お前は俺でしかない。そんなやつに名前をつけてどうするんだ?
今だって、こいつをデレって呼ぶ気はあんまり無い。こいつ、で十分だ。

さもなきゃ、俺、でもかまわん。

8 名前:名も無きAAのようです :2013/01/01(火) 21:52:02 ID:U.slNhCs0
あれから……何年経った? 十年ぐらいか。
今でも俺の頭にデレが住み着いたままだ。これじゃただの目出度いカップルだ。

ζ(゚ー゚*ζ「でも、それも悪くないっちゃ悪くないんだよね」

('A`)「……」

ζ(゚ー゚*ζ「こうやって、ドクオはいつも自分の本音を私に喋らせようとするんだ。
       自分で言うのが恥ずかしいから。それとも、めんどくさいからかな?
       まあでも、私みたいな代弁者がいて本当によかったと思うよ。でなきゃ……」

('A`)「もういい、自分で喋る」

……でなきゃ、俺はとっくに死んでいただろう。いや、死ぬってのはどうかな。
正しくねえかも。だって、死ぬのと死にたいのとじゃ、多分相当違いがあるぜ。
まあどちらにせよ、俺は死にたさを拗らせて頭がおかしくなってたに違いない。

ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫だよ、私は死ぬまでドクオから離れないから」

どうかな? 俺がボケたじーさんになっちまったら流石にお前の記憶も消去されるんじゃないか?
ま、そこまでボケた人間が元の人間と同じかどうかってーと、色々ややこしそうだが。

ζ(゚ー゚*ζ「……ところでさ、ドクオ」

('A`)「あ?」

ζ(゚ー゚*ζ「私たち、どうして話し始めたんだっけ?」

あー……そうだ。そうそう、色々思い出すためだったろ。確か。
じゃあ、さっさとやっちまおうぜ。あんまり、時間はなさそうだからな。

9 名前:名も無きAAのようです :2013/01/01(火) 22:05:39 ID:U.slNhCs0
奇跡は起きない。

こいつは断言出来る。学生時代から今まで常にカーストの底辺を這いずり回ってた俺の結論だ。
よくさー、あるだろ? 漫画やラノベでさー、何の特徴もない主人公がなんとかーっての。
わけわかんね−超能力美少女に見出されたりさ、そういうのって、その展開自体奇跡じゃん?

で、現実世界を見るわけじゃん? そんな奇跡、起きる隙間もないわけじゃん?

今この瞬間にも俺のしらねー上層部で偉いセンセー共がわけわかんねー知識振りかざして、
この世界の謎を解き明かそうとしてるわけじゃん? 奇跡が、次々なくなっていくわけじゃん?

そうそう、この前のマヤ暦も結局当たらなかったしな。なんだあれ、さんざ期待させといて、馬鹿みてえ。

美少女に惚れられるってのも、まあ、無い話だわ。金がありゃ別かもしれねーけど。
でもそこまでの金を手に入れること自体、一種の奇跡じゃねーか?
どっちにせよ、俺みたいな一般的底辺にゃ勿体ない話だよ。

ζ(゚ー゚*ζ「漫画やライトノベルのストーリーで野暮ったい主人公が出て来るのは、
       読者に感情移入を促すためだよね。だから出来るだけ、無個性がいいんだ。
       でもそれは、物語性と大きく矛盾してるんだよ。簡単に言えば、そういう主人公と超能力は住む世界が違うんだ」

俺たち日本人が軍人と触れあう機会なんざそうそうないだろ?
健全な生活を送ってりゃ警察の厄介になることも殆ど無い。免許更新ぐらいか?
それと同じだ。無個性には無個性なりの居場所ってのがあって、そっから逸脱すんのは死ぬほどムズいんだ。

それを可能にするのが奇跡であり、魔法だとするなら、世の中には奇跡も、魔法も、存在しない。

10 名前:名も無きAAのようです :2013/01/01(火) 22:28:34 ID:U.slNhCs0
('A`)「ルパン三世の愛銃は?」

ζ(゚ー゚*ζ「ワルサーP38」

('A`)「銭形警部」

ζ(゚ー゚*ζ「コルトガバメント」

……銃を欲しくなったのって、いつからだったっけなあ。
奇跡も魔法もないこの世界で唯一俺に扱えそうな『世の中への毒薬』。そいつが銃だった。

しかしこの日本じゃモノホンの銃を手にすることすら難しい。
警官にでもなりゃ政府からありがたく頂戴できるんだろうが、生憎そいつは毒薬にならねえ。
せいぜい蚊が刺した程度の痛みだ。ハンター? あれもなあ、ちとロマンに欠ける。

やっぱりさあ、こう、連射出来る銃がいいよな。
その場にいる奴を全員、いっぺんに粉々に出来るようなの。
ま、どうせ俺には扱えないんだろうけどな。反動すごいんだろ? そういうのって。

そんなこと考えながら教室の角でぼんやり過ごしてて、時にはクラスメイトに小突かれたりして。

('A`)「……ああ、何すか」

(,,゚Д゚)「臭ぇよ、お前」

('A`)「……」

(,,゚Д゚)「明日から来んなよ、臭い移るから」

うるせえな。来なくていいならそうしてやるよ。いくらでもな。

11 名前:名も無きAAのようです :2013/01/01(火) 22:43:38 ID:U.slNhCs0
まあ、結局、ブタだったんだよ。俺の手札もな。

生まれ落ちた時からそうだったんだろう。母親は病気持ち。父親は新興宗教の信者。
兄弟姉妹はいなかった。いたらどうなってただろうな? 俺の扱いがより悪くなってたか?

母親は俺のことよりも自分の病気を治すことが重要だった。
父親は俺のことよりも信仰してる神様の機嫌を伺うことが重要だった。
俺は常に独りだった。別に悪い話じゃなかったよ、独りは嫌いじゃない。

ζ(゚ー゚*ζ「でも、そういう育ちだから、嫌いじゃ無くなったという可能性も捨てきれないよね」

因果なもんだよ。結局俺らはいつまでもいつまでも親のことを考えて生きなきゃならねえ。
何かありゃ親のせいか、親のおかげか、とりあえず頭に浮べなきゃならねえんだ。
そいつらなんて、どうでもいいかもしれないのに、あいつらの精子と卵子が混ざったってだけで、このザマだ。

それからどういう風に生きてきたんだっけか。とりあえず、死んだことは一度も無い。
底辺を這いずり回っていたって、一言で片付けりゃ楽だよな。

でも報道されるとしたらこんな具合か。
鬱田ドクオは内向的な性格で小学校時代からよくいじめの標的にされてきました。
高校、大学と順調に進学したものの卒業後に就職した鉄鋼商社を半年で退職……。

ζ(゚ー゚*ζ「普通だね」

普通だとも。だって、そういう世界じゃねえか。

12 名前:名も無きAAのようです :2013/01/01(火) 22:58:55 ID:U.slNhCs0
('A`)「……」

なあ、一つ教えてくれ。
年越しって、なんだ?

年越したら人間に何か変化でも起きるのか?
地球の回転が逆回りにでもなるのか?
死んだ恋人が蘇ったりするのか?

大体、一年ってなんだよ。

365日で一年? それが地球が太陽の周りを廻る日数?
大体の人間がそんなもん直視したわけでも無いのに、なんで当たり前のように信じてるんだ?

結局、何か区切りが無いと何も出来ないんだろう、俺らは?
やれクリスマスだ、正月だ、こどもの日だ、体育の日だ……。
そうやって一律されたイベントに雁首揃えて右に左に、うろつきまわらないと不安なんだろ?

こいつはとんだプロパガンダだぜ。カレンダー原理主義者の良い餌だ。
そうやって俺らはガキの頃から洗脳されていったんだよな。
だから年の瀬とかいう分けのわからんイベントに、妙な胸騒ぎを起こしたりするんだ。

あーあー、もういい。お前の一年の総括なんて聞き飽きたんだよ。
お前の一年に何があったかなんて興味ねーよ。
お前の一年がどうだったかなんて知ったこっちゃねーよ。

そうやって、お前は一年の総括なんて言葉を使って自分語りしたいだけなんだろ?
ただの普通の一日に過ぎない大晦日や元日を使って、自己満足に浸りたいんだろ?

13 名前:名も無きAAのようです :2013/01/01(火) 23:00:23 ID:U.slNhCs0

ζ(゚ー゚*ζ「そんなこと言ってるから、彼女出来なかったんだよ」

('A`)「うるせえな」

16 名前:名も無きAAのようです :2013/01/01(火) 23:12:27 ID:U.slNhCs0
そうだなあ、例えば俺に彼女が出来てたら、どうなってただろう。
こんなクソみたいなツラでクソみたいな性格の俺に、彼女、ねえ。

('A`)「まず、お前をどうにかしなきゃな」

ζ(゚ー゚*ζ「そうだねえ」

この脳内会話の癖、治るのか? いや、別に治さなくても良いのか。
でも、なんつーか、浮気っぽいよな、それ……。
自分の力じゃどうしようもねーんだから仕方ねーにしても、なあ……。

ζ(゚ー゚*ζ「でも、ドクオは私を『結論』として作ったんでしょ?
       だったら彼女なんて出来ないよ。出来るわけが、無いよ」

はっきり言いやがる。でもその通りなんだよな。
俺はある意味で俺自身に諦めをつけたから、デレという存在を作り上げた。
それも一種の現実逃避の手段だ。生きていくために最低限必要な、な。

17 名前:名も無きAAのようです :2013/01/01(火) 23:16:40 ID:U.slNhCs0
だからよお、本当なら、お前と同じ空間に過ごすっつーのが、一番幸せなのかもしれねえなあ。

俺とお前だけで、いいだろ、もう。
他に誰かいるか? 俺はいいや。めんどくせーもん。

ζ(゚ー゚*ζ「ドクオがそう思ってるなら、私の答えは決まってるよ」

こりゃ泣き言なのかね。
なんかでも、こうやって愚痴るってことは、まだ未練っつーのが、残ってるのかもな。

('A`)「なあ、一つ教えてくれ。もしも俺とお前だけの空間が完成した場合……。
    そこにいる俺は、生きてるってことになるのか?
    俺と、俺自身の生みだした人格だけしかいない場所の俺は、生きているのか?」

ζ(゚ー゚*ζ「……」

俺は前々から一つだけこいつに不満がある。
大事なことには、何一つ答えてくれねえんだ。
俺が本当に答えを欲しているような問題には、口を開いてさえ……。

ま、当たり前だ。当たり前なんだよ。こいつは俺の作りものだ。

18 名前:名も無きAAのようです :2013/01/01(火) 23:27:11 ID:U.slNhCs0
あの日、俺が仕事やめて実家に戻った日。

俺を蔑んだ両親の眼。
俺は生まれて初めて、父親の暴力を受けた。
意味不明なこと叫んでたよ。縁故がどうの、体面がどうの……。

よくわかんなかった。一つ分かったのは、俺が就職出来たのは実力じゃ無くコネだったってこと。
まあ、そりゃそうだ。末端にも潰れそうなのが分かるぐらい場末の零細企業が、
クズ野郎を引き取る余地なんて、普通に考えりゃあるはずもねえんだ。

すげえよ、新興宗教。俺も入信しようかな。ああでも、お布施に出来る金がねえや。

……ヒキニート? 何だそれ、天国か?

俺もなりたかったよ、ヒキニート。すばらしい響きじゃねえか。
誰にも邪魔されねーって、俺には過ぎた話だよ。

家に戻った俺は毎日機械のように「働け」と怒鳴る母親から逃げ回る日々を送ることになった。
父親が帰ってくる夜はもっと悲惨だ。おちおちネットでバイト探しもできやしねえ。

どうも父親は俺が辞めちまった会社にさんざん平謝りしたらしい。
表向き俺の雇用に父親は関与してなかったはずなんだが、いや、現実ってこんなもんなんだな。

次の就職先は自分で探そう。そんな気持ちもあったよ。
でも無理だった。バイトの面接さえロクに受けられなかった。

( ФωФ)「貴方、普段からそんな感じなの?」

('A`)「はい……?」

( ФωФ)「やる気なさそうに見えるんだけど。背筋ぐらい伸ばしたら?」

……伸ばしてたんだぜ? 俺。
要はさ、実際にどうやってるかより、雰囲気が大事なんだなって話。
小学校のセンセー共、どーかその辺、子ども達に教えてやってくんねーかな?

大事なのは個性じゃなく、身に纏う雰囲気ですよーって。

19 名前:名も無きAAのようです :2013/01/01(火) 23:39:04 ID:U.slNhCs0
ζ(゚ー゚*ζ「ドクオくん、発達障害なんじゃない?」

発達障害。適応障害。社交不安障害。回避性パーソナリティ障害。
パニック障害。アスペルガー症候群。躁鬱病……。
そういった言葉は常に頭の中にあったよ。

サヴァン症候群、なんてのは憧れですらあったね。
でも流石に、大学まで何の能力も発揮しなかったのに、今更サヴァンもねーよな。
一度すげー絵を描いてみようと思ってあっさり挫折したし。自腹で画材買ったなあ。

結局そういうのも奇跡の一つにすぎやしない。そして奇跡は、起きない。

何だか上手く出来てるみたいで、俺は随分人間としてまずい人生を送った割には、
そういう精神的な病気には罹らないんだよな。

いや、心療内科にでも行けばあっさり診断されるんだろうけど、
今になってそんな免罪符を手に入れて何の役に立つ? 
それで誰が俺を養ってくれるんだ? それでうちの両親が納得すんのか?

ζ(゚ー゚*ζ「結局アレだよね。お金だけ手に入れて何もしない生活を送りたいだけだよね」

そう、それ。それが言いたかった。

20 名前:名も無きAAのようです :2013/01/01(火) 23:53:46 ID:U.slNhCs0
なんか、いるじゃん? すんげーやる気のある奴。
ああいうのって頭の中どうなってんだろうと思うね。俺にはさっぱりだ。
そうやって頑張った自分に満足出来るんだろうか? それだけで、生きていけるのか。

いやまあ、やる気が無くとも頑張れる奴はすげーと思うよ。
それだけの地力があるってことだもんな。土壇場で力出せるのはすげーよ。

でも、それって普通の人間には普通に出来ることなんだよな。
だから評価されない。「ああはい、そうですか」で終わり。お褒めの言葉も授かれねえ。

俺なんかさ、そうやって普通に振る舞うこと自体に精一杯だからさ。
胃がキリキリするほど頑張って踏ん張って、ようやく出せた結果に「そうですか」。
これじゃ生きていけねえよ。何でそうまでして生きていかなきゃならないんだ。

ζ(゚ー゚*ζ「それでも、どこかに未練がある」

何なんだろうな、これ。本当に、何なんだろう。
自分の人生を箱ごとひっくり返してまさぐってみると、死ぬ理由しか見つからねえ。
なのに死ねない。どこかでまだ生きようと思ってる。こいつは一体、何の冗談なんだ?

21 名前:名も無きAAのようです :2013/01/02(水) 00:11:45 ID:YePGUL3Y0
ζ(゚ー゚*ζ「私のこと、守ろうとしてるんだったりして」

('A`)「そうだな、そういや俺が死んだらお前もお陀仏か」

ζ(゚ー゚*ζ「うん。ドクオが死にたくないのと同じだけ、私だって死にたくないよ」

('A`)「違いない。それも含めて、俺は考えているわけか」

女の子一人守るために生きてるって言や聞こえはいいがね。
こいつは俺なんだ。だから俺は俺のためだけに生きてるということになる。

いや、今までだって一回でも、自分以外のために生きたことがあったか?
俺は周りに拒絶され続けて生きてきた。だが、俺だって周りを拒絶し続けていたんだ。

それでも生きてきた。生きてこられたんだ。なんでだろうな?
そもそも誰かがいないと生きられないっていうこと自体が間違ってんのか?

ζ(゚ー゚*ζ「やっぱり私のおかげだよ」

勿論、それもあるだろうな。俺の妄想力が俺を生かしたんだ。
でもそれだけじゃないだろ。

27 名前:名も無きAAのようです :2013/01/02(水) 22:53:51 ID:YePGUL3Y0
思うに、自殺衝動と破壊衝動は上下関係にあると思うんだよな。
破壊衝動ってのは外部に向けた敵意だ。何かを壊してスッキリしようって気持ち。
自殺衝動はその逆で、内部に向かってる敵意だよ。自分自身を壊そうとしてる。

叫びって、難しいよな。
まー一人カラオケっていう手段があるっちゃあるんだが、何か違うんだよ。
俺が叫びたいのはそんな閉塞した空間じゃなくて、広々とした世界に向かってなんだ。

ζ(゚ー゚*ζ「厨二病っぽい」

そう言うけどな、やっぱ人間の感情なんざ適当なところでグルリと一周するもんだと思うよ。
左腕が疼いていた時代が俺にもあったさ。恥ずかしいことも考えてた。
デレはその残滓と言っても良い。十年前の、俺の黒歴史。

ζ(゚ー゚*ζ「黒歴史って言えるだけ安いもんだよね。トラウマとはわけが違う」

で、今俺はその頃の気持ちに戻ろうとしてるんだ。
どうしようもない、ただひたすらに追い詰められた心境に至りながらも、な。

俺は世界に向かって叫びたい。それが破壊衝動と言われようとも。

でもさ、街中で叫んでたらキチガイ扱いされるだろ?
わざわざそのために完璧に人目の届かない場所へ行くのもめんどくせーし。
だから叫ばないわけ。そういうもんだろ、人の理性ってのは。

28 名前:名も無きAAのようです :2013/01/02(水) 22:57:18 ID:YePGUL3Y0
とは言え、叫びたい気持ちは変わらんのだよ。
もう何か言葉にするのもまどろっこしい、屑みたいな俺のこの気持ちをさ。
世間とかいう正体不明のデカい壁に向かってぶつけたいわけよ。

そうしたらさ、少しはスッとするような気がするじゃん?
少しは、胸の中の空っぽな感じが埋められていくような気がするじゃん?

少しは、救われるような気がするじゃん?

でもそれが無理。もう無理。全力で無理。そりゃ大勢の道行く人の耳には届くだろうぜ。
雑音としてな。それでも構わずに喉がちぎれるぐらい叫び倒してたら、そのうち通報されっだろ。
そんなことで警察の世話になりたくねーよな。犯罪予告で捕まるのと同じぐらい馬鹿らしい。

だからこの衝動は段々と内側に向こうとしているんだよ。
結局さ、自殺するってのはそういうもんじゃないのかね。何も壊せないから、自分を壊す。
ま、本当は何かを壊す勇気なんて最初から無いだけなのかもしれねーけど。

ζ(゚ー゚*ζ「統計的に見てもこの国の殺人者は自殺者に比べても圧倒的に少ないよね。
       それだけ、自分の命を軽く見てるってことなのかな。それとも、相手を尊重してるのかな」

不安とか不満を溜め込みつつも何とか生き存えているのが現代社会ってもんらしい。
まーちょっと数百年前の、国民の大多数が土掘ってた時代に比べりゃよ、マシなのかもしれんが。

しかし何が一体マシなんだろうな? 
平均寿命が延びたり科学技術が発展するのはそんなに偉いか?

29 名前:名も無きAAのようです :2013/01/02(水) 23:03:05 ID:YePGUL3Y0
実家に帰った俺には何よりもまず金がなかった。
だから当然親にメシをねだらなくちゃならねえ。
そりゃあ視線も罵詈雑言もコタエたよ。脳味噌を鷲づかみにされてる気分だった。

どうせならそのまま餓死させてくれりゃよかったんだけどな。
こう言うわけだ。「好きで食わせてるわけじゃない。さっさと働け」って。
ありがたいお言葉だよ。涙が出てくる。俺には生き地獄がお似合いってことさ。

ζ(゚ー゚*ζ「本当は、自分で死のうと思えばできるんだよ。
       首を吊ってもいい、カッターで頸動脈を裂いてもいい。
       でもさ、それが出来ないんだ。出来ないってことを、両親もわかってるんだよ」

俺の自殺衝動はいつまで経っても出来上がらない。
あれだ、タチの悪いかまってちゃん。ゴミクズの典型例ってやつ。

俺ってば無駄に賢いからな―。色々わかってるわけ。想像も出来るの。
睡眠薬大量に飲んでも死ねないし、手首をカッターで死ぬぐらいヤるのは相当力が要る。
首を吊ってももがき苦しむだけだし、飛び降りや電車飛び込みは死ねるかいまいちわかんねえ。

そもそも、死んだらおしまいって恐怖がどうしようもなく根元に噛みついてるんだよ。

30 名前:名も無きAAのようです :2013/01/02(水) 23:17:35 ID:YePGUL3Y0
ζ(゚ー゚*ζ「おかしいよね。死ぬための理由なんていくらでもあるし、そのための準備も容易いのに。
       それなのに死ぬのが怖いってことは、やっぱり遺伝子とかの本能が働いてんだろうね」

でもよ、DNAは想像してたんだろうかね?
この世の中が一部の人間によって編み出されたシステムで回ってるってこと。
社会全体がある種の適用が可能な人間以外を弾き出してるってこと。

('A`)「何より、俺みたいな奴の遺伝子を後世に残してもしゃーないってこと」

ζ(゚ー゚*ζ「脳内のセックスじゃ出来なかったもんねえ、子ども」

しかしこんなよ、野性味なんてちっとも残ってませんよ―みたいなツラしたよ、
男と女が足繁く歩き回ってるこの時代によ、生存本能もクソもねーよな。
第一、この国の人口は減退傾向にあるんじゃなかったか?

ζ(゚ー゚*ζ「ピークは過ぎちゃったみたいだね。
       あと数十年後には一億人切るって言われてる」

そもそも社会全体が人口を増やそうとしてねーんだよ。
なーにが十八歳以上と十八歳以上しかセックスしちゃいけません、だ。
なーにが男女共同参画だ、なーにがコンカツだ。なーにが。

ζ(゚ー゚*ζ「ねえ、ドクオ」

('A`)「なんだよ」

ζ(゚ー゚*ζ「社会の片隅にも置いて貰えなかったのに社会批判って、虚しくならない?」

('A`)「うるせえな、そんなことする奴、ネットにゃ山ほどいるよ」

ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ別にドクオがやらなくてもいいじゃん」

('A`)「……そりゃそうだな」

31 名前:名も無きAAのようです :2013/01/02(水) 23:29:29 ID:YePGUL3Y0
でもな、自分じゃ無くても出来ること、ってのを除いていくとな、
結構何も残らないもんなんだぜ。

ζ(゚ー゚*ζ「今まで人と関わらずに生きてきたからね。
       誰かのために、なんてのも出来そうもない」

人と関わったところで……どーだったろうな? 
そりゃ偏見で物言うのは間違ってるだろうけど。
何も変わらなかったと思うよ。性根がこんななんだもん。

ζ(゚ー゚*ζ「誰かのために生きるっていうのも、ファンタジーじゃなきゃ嘘くさいよね。
       それって、結局自分が生きるための最後の言い訳のような気がする。
       よく父親が子どものために働くとか言うじゃん。あれってその典型だよね」

自分が精子を放出した時点で、もう人生における大体の役目は終わっちまってるんだよな。
金が必要な社会システム上何とか生きて金稼がなきゃならねえが、
それだって本当は定年まででいいはずなんだぜ。それをのらりくらり生きてるんだからな。

ζ(゚ー゚*ζ「そんな不謹慎なこと、自分の親とか祖父母にも言えるの?」

('A`)「言えるよ」

ζ(゚ー゚*ζ「言っても死なないこと分かってるもんね」

勿論それもある。無意味な咎は背負いたくないからな。
ただ、もし俺に言霊とかそういう能力が備わっていても、やはり平然と言ってたんじゃないか?
別に気が狂ってるとは思わない。普通だろ。死んだところで、何とも。

ζ(゚ー゚*ζ「じゃあ、私が死んだら?」

('A`)「……俺は脳味噌をフル活用出来るようになって、覚醒する」

デレが邪魔だと思ったことは無い。俺の頭は平常運転だ。
それがいなくなったところで何も変わらないだろう。

34 名前:名も無きAAのようです :2013/01/02(水) 23:55:41 ID:YePGUL3Y0
……いやー、くだらねえこと随分駄弁っちまったなあ。
これが独壇場ってやつか。どうしてこう、頭ってのは余計な事ばかり考えるのかね。

ζ(゚ー゚*ζ「今まで話し相手が誰もいなかったからかな? 頭の中じゃ無駄に饒舌だよね」

まったくだ。口頭でこれ喋ってみろって言われても絶対無理だもんな。
聞き手だって飽き飽きするだろうぜ。誰も身の上話なんかに興味を持たない。
ましてや俺みたいな愚図クズの人生にはな。

そうだ、カウンセラーって手があったな。でもあれもどうかと思うぜ。
だってそうやって人の悩み事聴いて金取ってんだろ? そりゃそれで病みそうな仕事だがな。
でも「あー、こいつこれで金貰ってんだ」って思うと、それだけで一歩引くんじゃね?

ζ(゚ー゚*ζ「カウンセラーは何もしてくれないしね」

まったくだ。カウンセラーは肯定こそしてくれるだろうが、何の介助にもならん。

正味の話、俺の言葉で世の中が変わるならいくらでも喋ってやるよ。
いいや世の中ってほどデカくなくたって構わない。俺一人の人生が変わるだけで十分だ。

実際にゃ何も変わらんだろ? 俺が何を言ったところで、世の中は。
行動で示せとか抜かすんだろ。あーはいはい。凄いですね、行動行動。
世の中には二種類の人間がいる。行動できる奴とできない奴。俺は後者なの。

ζ(゚ー゚*ζ「そうやって、何もしない言い訳を積み重ねるんだよね」

否定する気にもならねえよ。多分正しいんだろ。

36 名前:名も無きAAのようです :2013/01/03(木) 00:17:03 ID:nmn.g.uI0
でも思わないか。行動するにもある程度保証が必要だって。
一世一代の大ばくち、清水の舞台から飛び降りれる奴なんてそうそういねえよ。
大抵の奴はまだどん底に落ちてないって感覚があるから跳ぼうと思えるんだ。

後ろ盾って必要だろ。それが家族でも、金でも、プライドでもなんでもいい。
でも、実際のところ俺に何がある? そんな後ろ盾、どこにもねえじゃねえか。
なのに跳べってか? 命綱のないバンジージャンプ? 拘束具のないジェットコースター?

無駄だろ、そもそも跳ぶ意味がわからねーじゃん。

ζ(゚ー゚*ζ「でも、最初に行動した人には後ろ盾なんてなかったんだよ」

だから、最初に行動した奴ってのは頭がおかしかったんだろう。

37 名前:名も無きAAのようです :2013/01/03(木) 00:23:37 ID:nmn.g.uI0
まあでも、俺の中にこんだけ自分語りのネタがあるとはな。

ζ(゚ー゚*ζ「誰だって自分のことを話したいんだよ。でもね、生きてる間にそれを吐き出すって難しい。
       現代人が抱えてるストレスの大半ってそれじゃないかな。
       誰か、話し相手が欲しいんだよ。そして、自分のこととか、悩み事を話したいんだよ」

('A`)「なら彼女でも作ればいいんだな」

ζ(゚ー゚*ζ「でも、そういう人って本当の意味で聞き手として相応しいのかな?
       自分の、どうしようもない問題や課題をさ、大切な人に突きつけてもどうしようもないじゃん。
       その人だって困っちゃうよ。今度はその人が、変に悩んじゃうかもしれないし」

そうやってみんな無口になっていく。いや、どうでもいいことばかり喋るようになるのか。
ま、幸せなんだろうな、その方が。現実から目を背けられる。

みんな、死ぬことをどう思ってるんだろう。
有り体な答えを見つけて満足してるんだろうか。
もしも世界中が俺みたいな性格で溢れてたら、毎夜死に震えて泣いてるこったろーぜ。

('A`)「……つまり、最終的には脳内で葛藤するしかないわけだな。
    お前みたいなのを作って」

ζ(゚ー゚*ζ「ドクオは珍しいことのように言うけどさ、私みたいな存在をつくってる人、
       世の中ではそこまでレアなケースじゃないとおもうんだ。
       ま、私ほどカッチリ設定されてなくても、もっと漠然とした存在に喋ってる人……」

('A`)「それも一つの生き方なのかね」

ζ(゚ー゚*ζ「むしろ、最終手段だよ」

38 名前:名も無きAAのようです :2013/01/03(木) 00:27:09 ID:nmn.g.uI0
ζ(゚ー゚*ζ「ねえドクオ、忘れてるかも知れないけど、私たちの目的は回想だからね」

分かってる分かってる。けど、回想出来るほどの記憶なんて、持ち合わせてもいねえよ。
何しろ記憶力が無いもんだからな。昔のこととか、どうでもいいからすぐ忘却の彼方。
思い出、なんつって過去を後生大事に抱え込んでる奴らの気が知れねえよ、まったく。

ζ(゚ー゚*ζ「でも、自殺する理由とかは結局過去から掘り返してるわけだよね?
       覚えてないとか言ってるけど、本当は思い出したくないだけだったり」

そうかもな。本当のところは分からん。俺の無意識にでも訊いてくれ。
そもそもどうして回想なんてしようと考え始めたんだっけか?

ζ(゚ー゚*ζ「……」

何だ、こいつも忘れてやがる。あー、なんだっけなあ。

39 名前:名も無きAAのようです :2013/01/03(木) 00:30:08 ID:nmn.g.uI0

('A`)ζ(゚ー゚*ζ『あ、そうだ』

('A`)ζ(゚ー゚*ζ『自分が弱いことを証明するためだった』:

('A`)ζ(゚ー゚*ζ『目の前の奇跡を、自分なりに解明するためだった』

40 名前:名も無きAAのようです :2013/01/03(木) 00:36:41 ID:nmn.g.uI0
結局、俺は死にたかったのか、殺したかったのかって話だよ。
つまり俺の中に潜んでいたものは破壊衝動なのか、自殺衝動なのか。
そんなこと解明しても本当はどうしようもない筈なんだけどな。でもちょっと興味深い。

何せ俺には、奇跡や魔法があったんだから。

無いと思っていたことが起きた。いやあ、世界は広いね。
偉いセンセーどもにも、どうやったって解決出来ないだろうさ。

これでひとまず、俺は落ち着いたというわけだ。少なくとも懊悩からは抜け出せた。
それだけで十分だ。だから別のことを考えてみることにした。

ζ(゚ー゚*ζ「記憶を振り返ったところで、奇跡の手がかりは見つかるのかな?」

さあね、多分見つからない。俺の人生にそんな洒落込んだ伏線は張られてなかった。
でもな、分かってたよ。本当のところ、自分がどっちに立ってるのか、なんて。

っていうか、一つしか、有り得ないだろ。

41 名前:名も無きAAのようです :2013/01/03(木) 00:41:21 ID:nmn.g.uI0
ζ(゚ー゚*ζ「じゃあもういいかな」

俺が幼稚園でイジメに遭ってたとき、センセーが助けてくれたらしい。覚えてないが。
俺が小学校でイジメに遭ってたとき、センセーが助けてくれたらしい。これは覚えてる。
俺が中学校でハブられてたとき、センセーは特に何もしてくれなかった。

俺が高校でボッチだったとき、センセーはどうでもよかった。独りを満喫し始めた。
俺が大学で積極的にボッチだった。それしか生きる道が無かったからだ。
それまでの期間、母親はずっと薬の副作用と戦っていた。父親は信仰に忙しかった。

そして俺は社会に放逐された。持ち込んだスキルは何もなし。
ただ労働の義務だけが課せられていた。
得体の知れない巨大な何かに立ち向かわなければならなくなった。

腐った毎日だった。自分が何をしているかも分からない、何で生きてるのかも分からない。
今まで俺を拒絶してた世間が突然俺にコミュニケーションを求め始めた。
出来るのが当たり前だと言って。俺はひたすらパニクった。そして毎日説教された。

ゴミみたいな年月がゴミみたいに過ぎていく。ただそれだけだ。
得られるものは雀の涙ほどの給料。使うあてもない。父親がお布施しないかと言ってきた。

実家からさんざ電話が鳴った。薬でわけのわからなくなってる母親だ。
なんだかよくわからねーが、馬鹿みたいに怒鳴られた。慣れてはいた。慣れては。

43 名前:名も無きAAのようです :2013/01/03(木) 00:54:10 ID:nmn.g.uI0
俺はひたすらデレと話していた。デレで満足出来ないことを分かっていながら。
クソみたいな毎日を延命させていた。そのうち延命させる意味がわからなくなった。
だから死のうと思った。会社の帰りに騒がしいドラッグストアで剃刀を買った。

('A`)「なあ、デレ」

ζ(゚ー゚*ζ「なに?」

('A`)「死ねるかな、俺」

デレは迷わず即答したんだ。

ζ(゚ー゚*ζ「死ねないと思うよ、だってそんな度胸、ドクオにはないもの」

その通りだった。
俺の手首にほんのささやかな傷を付けただけで、剃刀の役目は終わった。
あんなに指先が震えたの、初めてだったな。

('A`)「なあ、デレ」

ζ(゚ー゚*ζ「なに?」

('A`)「だったら、俺には何ができると思う?」

ζ(゚ー゚*ζ「うーん……とりあえず、仕事やめるぐらいじゃないかな」

そういうわけで、俺は仕事をやめた。

44 名前:名も無きAAのようです :2013/01/03(木) 01:03:33 ID:nmn.g.uI0
結局、なんのための人生でもなかったわけだ。尾を引いたわりに、出来の悪い人生。
仕事をやめて実家に帰り、ひたすら父母の悪罵を聞きながら。
俺はもう、このままでもいいかなと思った。別にもう、積極的に生きなくても大丈夫だろ。

ζ(゚ー゚*ζ「いわゆる、寄生虫ニートになろうとしてたんだよね」

どうも父母にはまだ俺を殺すつもりはないらしい。
ならばいい。メシが食えて、屋根と壁があるなら。
もうそれで十分じゃないか。別にいいよ。クズの末路にはふさわしい。

そのうち殺されるなら、ま、それもアリじゃないか?

いわば俺は囚人みたいなもんだ。甘えと罵倒に囲まれた牢に監禁された囚人。
もう、父母の罵倒なんて右から左に流せばいい。そう思ってた。

しかしそんな日々も長くは続かなかった。
父親が知り合いの派遣会社に俺を突っ込むと言い出した。
どうせまた宗教関係のコネだろう。どうも父親にとって、俺は働かなければならない存在らしかった。

ζ(゚ー゚*ζ「まあ、普通の価値観でもあるよね。社会に出て働くのは。
       その意味で父親の行動は正しかったんだと思う。
       問題は、その行動を受け入れる姿勢がドクオにはまったくできてなかったってことだよね」

45 名前:名も無きAAのようです :2013/01/03(木) 01:07:54 ID:nmn.g.uI0
ああ、クソ甘えた野郎だよ、俺は。
ともかく派遣会社で働くのは嫌だった。
無駄な知識が、今までより更にキツい労働を強いられると警鐘を鳴らしていた。

ともかく逃げるために、バイトでも何でもいいから見つけようとした。
そうしたら、あのザマだ。半端な空白のある履歴書。挙動不審な面接。
妙に高い倍率。通るはずが無い。一週間に五つ落ちた。

ζ(゚ー゚*ζ「まあそのうち四つぐらいは、受かってても働かなかっただろうけどね」

ともかく俺は派遣会社に入らないための逃げ口上が欲しかった。それだけだった。
しかし状況は完全に詰んでいた。俺に出来ることは何も無い。
また説教の日々が始まると思うと、寒気と動悸で呼吸が出来なかった。

ζ(゚ー゚*ζ「でも食欲はあるし睡眠も十分、バッチリ健康な生活を送ってた」

底辺には底辺らしい仕事が似合ってるってことなんだろう。
でも俺には無理だ。いや、一流会社に就職しても俺には社会が無理だ。
それでも死にたくないから。ただそれだけの理由で俺は生きなきゃならない。

誰もいないのに。何もないのに。俺は、生きるために生きなければならない。
前向きな感情なんて一つもない。薄ぼんやりとした余白のような人生。

47 名前:名も無きAAのようです :2013/01/03(木) 01:19:46 ID:nmn.g.uI0
今朝、俺はいつも通り家に居づらいという理由で外出した。
小金を投じて環状線の切符を買った。ぐるぐると、ひたすら同じ路線を回り続けた。
どうやら世の中では仕事が始まっているらしく、スーツ姿の連中が多く目につく。

それだけで絶望できた。

なんでこいつら、こんなことが出来るんだ?
意味がわからん。俺もこうなればよかったんだろうな。
いや、今からでもなれるもんならなりたいよ。

ちょっとした憂鬱だけで自分に課せられてる義務を果たせるなら。
それを糧にして毎日を前向きに生きられるだけの生命力があるのなら。

いつの間にか昼を過ぎて、夕暮れになっていた。
俺は最寄り駅で降り、家に帰ることにした。
帰宅途中のリーマンの群れに紛れて帰る自分は泣きたくなるほど惨めだった。

もうすぐ俺は派遣会社で働くことになる。そのことだけが頭の中を巡っていた。
出来ることなら叫びちらしたかった。間違ってるんだ。俺なんかが生まれてくるなんて。
甘えたくて甘えてるんじゃない。俺には、甘えるしか方法が見つからないんだ。

しかし声は出なかった。
かわりに腹が鳴った。母親の買う出来合いの惣菜を、胃が求めていた。
ゴミみたいな日常が、ただ続くんだろうと思った。それしかない。生まれてしまった以上。

叫んでもどうにもならない。何も変わらない。
どうしたって変えられないのだ。その波に乗ろうが乗るまいが、必ず流される羽目になる。
諦観にも至らない懊悩。死ねない苦痛。生きていたい本能。抗う理性。

そして、奇跡が起きた。

48 名前:名も無きAAのようです :2013/01/03(木) 01:30:22 ID:nmn.g.uI0
時間が止まったような気がした。
目の前に居るリーマンや学生が俺の方を振り向いた。
それと同時に両手にひどい重量感を覚えた。

俺の両手に、ゴツいマシンガンが握られていた。

俺は前を見た。状況が把握できなかった。
しかし把握できていないのは俺だけじゃなかったらしい。
目の前の人間がみんな、馬鹿みたいに呆けて突っ立っていた。

俺は、笑った。

その瞬間に理解した。やはり俺はまだ死にたいわけじゃない。
殺したいんだ。破壊してしまいたいんだ。何もかもを、全て。
自分の人生ごとぶっ壊せたらそれ以上幸せなことはない。

('A`)「デレ」

ζ(゚ー゚*ζ「なに?」

('A`)「奇跡も魔法も、あるんだな」

ζ(゚ー゚*ζ「みたいだね」

俺には後ろ盾が出来たんだ。銃と言う名の、世の中への毒薬。
迷わず二丁のマシンガンを群衆に向けた。反動なんて気にしなかった。
たぶん、それも含めて、奇跡なんだろう?

49 名前:名も無きAAのようです :2013/01/03(木) 01:32:19 ID:nmn.g.uI0
「だから何回も言ってるじゃない、きいてないの?」

「声小さくてきこえないんだけど。やる気ないの?」

「お前明日から来るなよ、くせぇんだよ」

「ああ……いたっけ、そんなやつ?」

「大学まで出させてもらっといて、これか。恥ずかしくないのか?」

「お前それで本気でやってるつもり? 眼が死んでるからすぐ分かるよ」

「その大学行ってもいいけど、ちゃんと就職できるの?」

「なんであいつ生きてるんだろう」

「勝手にやめるってどういうことなのかちょっと説明してみろよ、おい」

「おい!」

「挨拶ぐらいちゃんとしろよ、マナーだろ」

「お前のこと、先輩が怒ってたぞ……なんでかわからねーけど」

「背筋ぐらい伸ばしたら?」

「なんでそうなるのか、ちゃんと考えたの?」

「きこえてもいいよ、どうせこいつ、何もできないんだから」

51 名前:名も無きAAのようです :2013/01/03(木) 01:33:26 ID:nmn.g.uI0
('A`)「だからよお! 何度だって今まで言ってきただろうが!
    俺は社会に向いてないんだよ、人生にも向いてないんだよ!
    何回何回何回何回言えば分かるんだ、クソッタレどもが!

    俺がこんなに言ってきたのによ、それをお前らは鼻で笑って片付けたよな。
    言い訳だ? 負け犬だ? 泣き言だ? 逃げだ? 甘えだ?
    ああそうだろうな、言い訳だよ負け犬だよ泣き言だよ逃げだよ甘えだよ。

    けどな、だったらお前らの言ってることも結局詭弁に過ぎねえだろうが!
    この社会とか人間の人生に合わせた、無理矢理の理屈じゃねえか!
    それに従わないからってどうしてお前らは俺を拘束するんだ!?

    もうな、こちとら生きてることにも疲れてるんだよ、めんどくせーんだよ。
    にも関わらず何のかんの言って生かしてるのはなんでだ?
    これは生き地獄か? 解脱してねえ俺が悪いのか? なあ、教えてくれよ!

    そうだな、奇跡は起きないよな、魔法なんてあるわけないよな。
    だからお前らが殺されるのも、ありえないことだったんだよな、わかるぜ。
    俺みたいなクズは絶対反抗できないと思ってたんだよな、だからあのザマだ!

    でも忘れんな、こうやって一度でも奇跡が起きりゃ、お前らなんざ蜂の巣なんだよ!
    俺みたいな腐乱死体が世の中にゃゴロゴロいるだろうよ、なあ? お前らが生かしてきた被験者だ。
    そう言う奴らにも奇跡が起きるかもな! そうしたら、どうなると思うんだ!?

    お前らがクズだと区分してる連中は確かにクズだろうよ、この社会じゃな!
    ああ、甘えてるんだろうさ、自分で死ぬ勇気もないんだからな。
    そういうクズの、この社会に対する適切な対応のしかただ、覚えとけ!

    消えろ、消えちまえ。この社会丸ごと、消えちまえよ……」

52 名前:名も無きAAのようです :2013/01/03(木) 01:37:43 ID:nmn.g.uI0
('A`)「……で、今に至る、と」

ζ(゚ー゚*ζ「うん」

いつの間にか俺の周りから人が消えていた。
或いは死んでいた。或いは苦痛に呻いていた。
マシンガンはもう役割を果たさなくなった。引き金を引いても何も出ない。奇跡はここまでだ。

ζ(゚ー゚*ζ「あ、警察官」

俺は抵抗する意志がないことを示すために銃を捨てて両手を挙げた。
死刑は免れないだろうな。まあでも、それでもいいか。

ζ(゚ー゚*ζ「でもやっぱり、実際に死刑宣告されたらドクオはビビると思うよ」

だろうなあ。『ダンサー・イン・ザ・ダーク』みたいな感じかな。
あれも最後、主人公が情けないぐらいにわめいてたもんなあ。

ζ(゚ー゚*ζ「でも破壊衝動ってそんなものだよね。自分の身を呈さないと破壊なんて、できないよ」

('A`)「そうだな」

でも俺も、デレも分かっている。

('A`)「デレ」

ζ(゚ー゚*ζ「なに?」

('A`)「この中の何人が、明日を生きたかっただろうなあ」

俺はどこまでも甘え続ける。そしてどこまでも逃げ続けてやる。
死にたくも生きたくもない人間の末期をよくよく見届けるがいいさ。

53 名前:名も無きAAのようです :2013/01/03(木) 01:38:50 ID:nmn.g.uI0
(ニュース速報/2013/1/4)

午後六時二十分頃、H県S駅の構内で、
男が携行していた銃器で発砲し、少なくとも五名が死亡、十名が重軽傷を負った。
男は現在警察によって身柄を確保されている。

なおこの影響によりK線には一時間以上の遅れが出ている模様。

54 名前:名も無きAAのようです :2013/01/03(木) 01:39:42 ID:nmn.g.uI0
(詳報)

S駅構内における無差別殺人事件は死者12名、重軽傷者16名を出す大惨事となった。
犯人は無職の鬱田ドクオ(24)。精神病院などへの既往歴は無し。
銃器を手にして構内へ持ち込んだと思われるがその方法、また入手経路は不明。

動機に関して鬱田容疑者は一貫して黙秘している。

55 名前:名も無きAAのようです :2013/01/03(木) 01:40:48 ID:nmn.g.uI0
(ニュース速報/2014/8/13)

2013年1月4日に起きた無差別殺人事件について、地方裁判所は、
鬱田ドクオ被告(犯行当時24歳)に対して、検察側の求刑通り死刑を言い渡した。

弁護側は、即日控訴する方針。

56 名前:名も無きAAのようです :2013/01/03(木) 01:42:03 ID:nmn.g.uI0
(ニュース速報/2015/12/19)

2013年1月4日に起きた無差別殺人事件について、高等裁判所は、
鬱田ドクオ被告(犯行当時24歳)に対して、弁護側の控訴を棄却し、
一審の判決を支持。被告に死刑を言い渡した。

弁護側は、上告する方針。

57 名前:名も無きAAのようです :2013/01/03(木) 01:44:17 ID:nmn.g.uI0
『鬱田ドクオの手記』(民明書房刊/1200円(税抜))54pより。

「勝ち目が無いのに、何故上告するかって?
 お前が死にたいと無駄に生きた今日は、昨日死んだやつが一生懸命生きたかった明日なんだ、っていうだろ?
 だから俺は一生懸命に明日を生きてるだけだぜ。何か文句でもあるのか?」

<了>

60 名前: ◆xh7i0CWaMo :2013/01/03(木) 01:48:38 ID:nmn.g.uI0
以上。思ってたより長くなってしまった。

書いてて思ったのは、
奇跡が起こった('A`)が羨ましいという、ただそれだけ。

自分より幸せな主人公は基本的に許されない。

以前投下したものよりは読みやすくなった、はず。
まあ、多分もう一度か二度くらいお目見えする、かも。

では。


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