51 名前:ちょっとだけ投下して寝る... :2012/06/30(土) 00:31:06 ID:Yp0MhzV.0
(#A゚/)「...荒巻。いるか?」


店のなかは静かだった。
ランプを灯してないせいか路地裏にあるこの店は昼間だというのに薄暗い。


(#A゚/)「...いないのか?」


店主である荒巻の名前を何度も呼ぶが返事がなかった。
そもそも店の中から人がいる気配がない。

52 名前:名も無きAAのようです :2012/06/30(土) 00:32:18 ID:Yp0MhzV.0
(;#A゚/)「参ったな...あいつをあてにしてきたんだが...」


とりあえず、傷薬だけでも貰っておこうと考えカウンターの裏へ回る。


...ビチャリ。


(#A゚/)「あ?」


何か踏んだ。
液体状の何かを踏んだ音がした。
ふと、下に目をやる。
...見なければ良かったと素直に後悔する。


(;#A゚/)「荒巻!?」


無惨なまでに血だるまになった荒巻が、そこにいた。

53 名前:名も無きAAのようです :2012/06/30(土) 00:33:22 ID:Yp0MhzV.0



第三話 少年と血




(;#A゚/)「荒巻!!! 大丈夫か!?」


肩を揺らし、大声で叫ぶが反応はない。
首に指を当てるが...脈がなかった。


(;#A゚/)「まさか...なんで...」


死んでいる。
冷たくなった荒巻の体がそれを伝えていた。

55 名前:名も無きAAのようです :2012/06/30(土) 23:43:38 ID:Yp0MhzV.0
(;#A゚/)「チクショウ...教会...はやく、教会の騎士に!!」


慌てて店から飛び出す。
扉を蹴り開けたら腐りかけていたからか、壊れてしまったが気にしてはいられない。
走らなければ。痛みなど気にしてはいられない。


止まるわけにはいかない。父親のような人だった。大切な人だった。
とうにかしなければ。その思いだけがドクオを動かす。

56 名前:名も無きAAのようです :2012/06/30(土) 23:45:50 ID:Yp0MhzV.0
しかし、二つか三つ目の角を曲がると誰かにぶつかってしまった。
思いっきりぶつかってしまったせいか、身体中が悲鳴をあげ、立ち上がるのを拒絶していた。


(#A/)「グオオ...」


(;´・ω・`) 「おっとっと...なんだドクオか。そんなに慌ててどうしたんだい? ...てかその怪我...」


知り合いのショボンがいきなり目の前に現れた。
こんな一大事の時でもこのショボくれ野郎はいつも通り過ぎた。
そのことがドクオを苛立たせ、焦らせる。

57 名前:名も無きAAのようです :2012/06/30(土) 23:48:15 ID:Yp0MhzV.0
(;#A゚/)「そんなことどうでもいいんだよ! 荒巻が...荒巻のやつが死んでるんだよ!」


(´・ω・`) 「荒巻が? 死んでいる?」


(;#A゚/) 「そうだよ!! 血だるまになって倒れてやがった!! 多分賊だ!!... そうだ! ショボン、頼むからお前が騎士のところに...っ!!」


焦りすぎてもはや何を言おうとしてるかドクオは自分でさえあやふやになってきていた。
さらに、立ち上がろうとしてみたが体が言うことを聞かない。
しかも焦りが立ち上がるために支える手を震えさせる。そのせいか、何度も立ち上がろうとするのだが転倒してしまった。

58 名前:名も無きAAのようです :2012/06/30(土) 23:49:08 ID:Yp0MhzV.0
それに対してショボンはあくまで冷静だった。
何かを考えるように顎に手をあて、目を閉じ何かを考えていた。
そして、不意に目を開いたかと思うとポンッと手を叩いた。


(´・ω・`) 「...ああ。そゆことか」


(#A゚/)「ああって...ショボン。お前...」


(´・ω・`) 「うん、ちょっと待っててね...あ、騎士達はいらないから...てか、冷静になってよ。僕たちの店は裏ショップだから騎士呼んだらそれこそ大惨事だって」


(;#A゚/) 「え? ...あ、ああ。すまん...」

59 名前:名も無きAAのようです :2012/06/30(土) 23:49:54 ID:Yp0MhzV.0
ドクオは自分が焦ってるのがおかしく感じるくらいショボンは落ち着いていた。
ショボンはゆっくりとした歩調で店に向かっていく。
ドクオも体が痛むのを我慢し、立ち上がった。


(;´・ω・`)「おー、扉が吹っ飛んでる。爺さん怒るなぁ...」


ショボンは吹っ飛んだ扉の欠片を蹴っ飛ばしながら店の中へと入っていく。
ドクオもそれに続き、欠片を踏みながら入っていく。腐っていても固い木の欠片だった。
今更だがドクオはよくこんな体で扉を壊せたものだと感じた。

60 名前:名も無きAAのようです :2012/06/30(土) 23:50:57 ID:Yp0MhzV.0
(;#A゚/)「怒るも何も...死んでるだろ」


(´・ω・`)「まあ、見てなって...これとこれを混ぜて...っと」


手慣れた手つきでいくつもの薬を混ぜ合わせ、飲み薬...なのか?ドロドロしたなにかを作っていた。
出来上がった薄緑のドロドロした薬の入った器を荒巻の口につけ、流し込む。


/ , 3 「...」






/ ,゚ 3「...プルグアアアアアアア!!!」


(;#A゚/)「うおおお!?」

61 名前:名も無きAAのようです :2012/06/30(土) 23:52:08 ID:Yp0MhzV.0
死んでいたはずの荒巻の体が飛びはね、打ち上げられた魚のように暴れだす。
というか、体を床に打ち付けているようにも見える。
そのたびに血の池がバチャリバチャリと跳ね、辺りをさらに赤く染めていく。


(´・ω・`)「おはよう、荒巻。体は大丈夫かい?」


/ ,゚ 3「か...か...か...だいじょ...ぶ」


(;#A゚/)「大丈夫なのか!? おい!?」

62 名前:名も無きAAのようです :2012/06/30(土) 23:52:54 ID:Yp0MhzV.0
/ ,' 3「ううーむ...あ、あ、ドクオ、か...」


(´・ω・`)「まだ、無理しない方がいいよ。死後硬直がまだとけきれてないだろうし」


荒巻は立ち上がる。体が動かしにくいのか、よろよろと震えると壁へともたれ掛かった。
その姿はいくら老人とはいえ、弱々しすぎた。膝はガタガタと震え、目の焦点はあっていないのか手を壁に伸ばしても届いてはいなかった。

63 名前:名も無きAAのようです :2012/06/30(土) 23:53:48 ID:Yp0MhzV.0
(;#A゚/)「何がどうなって...」


(´・ω・`)「まあ...簡単に言えば...」





/ *,' 3 「ドッキリ大成功!!! うっほほーい!!!」





(#A゚/)「」


いきなり、元気になりやがった。
餓鬼のように跳ね回りながらよろこんでいた。
さっきの死にかけていたあの弱々しい姿はなんだったのか。
ドクオの目は本当に点になっていたのはいうまでもない。

64 名前:名も無きAAのようです :2012/06/30(土) 23:54:40 ID:Yp0MhzV.0
(;´・ω・`)「ま、そゆこと」


/ *,' 3「儂凄くね!? まるで本当に死んでるかのようだったしょ? この血糊もなかなかだと思うんだけど...」


(;#A`/)「焦った俺がバカだった...本当に死んでるのかと...」


この爺は荒巻。
物から情報までなんでも売り買いしている男。誰かが欲しがれば武器でも薬でも果てには魔導書も作るとんでもない男だったりもする。

65 名前:名も無きAAのようです :2012/06/30(土) 23:55:33 ID:Yp0MhzV.0
(#A゚/)「つまりは...今のは新薬の効果かか何かか?」


/ ,' 3「ま、そういうわけじゃな...使うと一時的に人を仮死状態にすることができるんだが...まあ、この薬なくてもなんかお前さん、死にそうじゃないかの?」


(#A゚/)「へ?」


(#A゚/)


(#A;/)「メチャクチャイテエエエエエ!!!」

66 名前:名も無きAAのようです :2012/06/30(土) 23:56:36 ID:Yp0MhzV.0
慌てて忘れていた痛みが一気に蘇ってくる。
足元を見ると荒巻の血糊のほかにも自分の血の池が出来上がっていた。
爛れた皮膚は転んだときに破けてしまったのか赤いプルプルとした筋肉がはっきりと肉眼で見えた。


(#A;/) 「イテエエェ...イテエヨオオオオ...死んじまうよおおお...」


/ ,' 3「お前は死なないから安心しろ。あー、ショボン。いつもの頼む」


(´・ω・`)「はいはい...ほら、ドクオ。僕の部屋に来な」


(;#A;/)「あ、ああ...頼むわ...」

68 名前:名も無きAAのようです :2012/06/30(土) 23:58:04 ID:Yp0MhzV.0
/ ,' 3「...」


カウンターの裏にある部屋。
ショボンと書かれたプレートが掛けられていた。
正確にはショボンのハッテン場と書かれたプレートだが。


/ ,' 3「...そうして、ドクオはホイホイと部屋の奥に...」


「アーッ!!!」


野太い断末魔。
もう、これはあれだ。あれしかない。
漢、荒巻78歳。これまでの知識を総動員して得られた答えはただひとつ。

69 名前:名も無きAAのようです :2012/06/30(土) 23:59:05 ID:Yp0MhzV.0
/ ,' 3


/; ,' 3 「え? マジで?」


「ダメだって...もう少し優しく...」


「大丈夫大丈夫。意外といけるもんだよ」


/*,' З「ハァハァ...ウッ....そうじゃ...そこでドクオが受けで...」


息を荒げる爺。
見ていて気持ち悪いことこの上ない。
数分後、部屋から声がやんだかと思うと、ショボンの部屋の扉が開かれた。

70 名前:名も無きAAのようです :2012/07/01(日) 00:00:24 ID:fJPG8ChM0
(´・ω・`)「はい、終わったよ。荒巻、僕は疲れたから少し休ませてもらうよ」


ショボンが部屋から少しだけ顔を出してそういった。
開けられた扉の奥から薬独特の匂いが溢れていた。
少しイカ臭かったのは目をつぶっておこう。


/ ,' З「お、早かったな。調子はどうじゃ?」


('A`)「ああ、大丈夫だ。相変わらずショボンの回復魔法と薬には驚かされるよ」


/ ,' З「ほほ、まあ、そうじゃろうな。回復魔法を使えるのはここらではあやつくらいだしの」

71 名前:名も無きAAのようです :2012/07/01(日) 00:02:28 ID:fJPG8ChM0
('A`)「もったいねぇよな...騎士になればいいのに...だって...さ......」


/ ,' З「...」


騎士。この言葉を聞いた瞬間、荒巻の様子が変わった。
表情は変わらないが、纏う空気が変わった。
無言でドクオの言葉を拒絶しているようにも見えた。


('A`)「(聞くなってことね...)」


/ ,' З「ほほっ...まあ、用事は済んだじゃろ? さっさと帰んなさい」


('A`) 「え? 別に急ぐ用事もないし...すこしゆっくりしていきたいんだが...」


/ ,' З「かえれ」


(;'A`) 「え?」

73 名前:名も無きAAのようです :2012/07/01(日) 00:03:35 ID:fJPG8ChM0
/ ,' З「かーえーれ! かーえーれ! かーえーれ! かーえーれ!」


(;'A`)「いや、だからさ...」


/# ,' З「かーえーれ! かーえーれ! かーえーれ! かーえーれ!」


(;'A`) 「わかったよ!! 帰ればいいんだろ、帰れば!!」


/ ,' З 「わかればよろしい...あ、そうそう。裏口から帰れ。そこにワシからの贈り物もあるから」


なんなんだよもー、と文句を言いながらドクオが外へ出ていった。
それを確認した荒巻は顔をほころばせる。

74 名前:名も無きAAのようです :2012/07/01(日) 00:08:03 ID:fJPG8ChM0
/ ,' З「...間に合ったか」


昨日得たばかりの情報だったが、なんとか間に合わせることができた。


/ ,' З「教会のドクオ暗殺命令...か。まったく、物騒な世の中じゃの...」


出来る限りのことはした。
ドクオの傷を回復させ、持たすものは持たしそして、秘密に仲間を彼につけることにも成功していた。

75 名前:名も無きAAのようです :2012/07/01(日) 00:09:07 ID:fJPG8ChM0
/ ,' З 「...ワシにできる限界まではやったぞドクオ」


震える手で棚に陳列されていたナイフを取り出す。
さあ、やろう。
この老いぼれにできる最後の仕事。


/ , З 「君の情報は死んででも守ってやろう」


ナイフを喉元に当てる。
呼吸が乱れ、そこでやっと死を恐れているのだと気がついた。
しかし、止まるわけにはいかない。

76 名前:名も無きAAのようです :2012/07/01(日) 00:10:36 ID:fJPG8ChM0
/ , З「...あとは頼んだぞ」


手に力をいれ深く、突き刺した。
視界が赤く染まり、そして暗くなっていく。
完全な暗闇に包まれるその直前、誰かの声を聞いた。
誰かに死ぬのを止めろと言われている気がした。
その声はドクオの声にも、ショボンの声にも聞こえた。
だが、不思議と生きたいとは思わなかった。

77 名前:名も無きAAのようです :2012/07/01(日) 00:11:43 ID:fJPG8ChM0
ー人物紹介ー


/ ,' З 『情報屋』荒巻


名前は偽名らしいが誰も彼の本名を知らない。
また、情報屋を名乗っているが錬金術の知識が豊富で薬や魔法の道具などの製造もしている。
ロマネスクとは古くからの友人だったことからよくドクオの面倒を見ていた。


(´・ω・`) 『情報屋』ショボン


荒巻の弟子。荒巻とは血縁はなく孤児だったのを拾われた。
なぜか回復魔法を使えるが騎士団には入らず、表沙汰にできないことなどで傷ついた人達の回復をしたりしている。
ドクオとはあらゆる方面で繋がっている人物。


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