357 名前:名も無きAAのようです :2012/07/02(月) 00:56:05 ID:DwpRWPz.0

その男は自分のことを「つなぐ者」だといった。
関わり合いになるのはどうかと思ったが、特に用事もないのでとりあえず話しぐらいはと、それが失敗だった。

ξ゚听)ξ「じゃあアンタ、何でもくっつけられるっていうの?」

('A`)「へい、左様でございまする」


道端で行き倒れてた男は奇妙な話を始める。

曰く、自分はなんでもくっつけられる、その力で異世界とこの場所を繋げて、どこか彼方の方角からここへやってきた。
だが、その時空間連結に力を使いすぎ腹減りで倒れてしまった、と。

ξ゚听)ξ「……」

('A`)「およよ、その猜疑の眼差し。信じておられぬるご様子。なんなら、あなたと自分を恋の赤い糸で繋――グハッ」

空腹の腹に平手で軽く一発。
男が、見るからに胡散臭い、話もきな臭い、さえない顔の男が、路肩で悶えている。


ξ゚听)ξ「あーあ、時間を無駄にしちゃったわ」

('A`)「お、お待ちくだされ……」

ξ゚听)ξ「……なによ、しつこいわね」

('A`)「実際に見てもらえればわかってもらえるかと」

ξ゚听)ξ「それなら、あれ繋げてみせてよ」


手近にある電信柱に貼られた選挙立候補者のポスター。
見るからに悪そうな人相が頭のてっぺんから顎の下にかけて二つに分かたれ、左半分が垂れ下がっている。

358 名前:名も無きAAのようです :2012/07/02(月) 00:57:27 ID:DwpRWPz.0

('A`)「へへっ、お安いご用で」

ξ゚听)ξ「その笑い方、悪党ぽいわよ……」

男が電柱に歩み寄りポスターに手をかざす。
その口からは聞いたこともない文言が流れでて、それっぽい感じを出している。
完全に危ない人のそれだ。

すると、その手から光があふれることはなく、大気は微動だにせず、ポスターが繋がらない。
男は小首を傾げながら、破れたままのポスターを眺めている。

('A`)「はて……」


ξ゚听)ξ「はて……、じゃないわよ!」

('A`)「うむむ……相性が悪いのかもしれませぬ」

そういって男は抗弁をはじめる。
何でもくっつけられるっていうのは性質の話で定性的なものだー、とか。
しかるに量的な問題の前には無力化されるー、だとか。いまいちよくわからない。

ξ゚听)ξ「何でもくっつけられるってあなたが言ったのよ」

('A`)「むうー。おや、肩のところほつれていますぞ。どれ――」

ξ゚听)ξ「ちょ、やめ……!」

男が手を伸ばして肩口をつかもうとする、反射的に身体がこわばった。
けれど、もそれは意外にも柔かなタッチだった。

相変わらずその手からは光はあふれないし、大気も微動だにしなかったけど、
男が手をどけると、ほつれたブラウスの糸がみるみる内によりあつまって、生地の裂け目を飲み込んでいった。
ものの数秒で生地は元あったであろう形に整えられた。

359 名前:名も無きAAのようです :2012/07/02(月) 00:58:37 ID:DwpRWPz.0

ξ゚听)ξ「驚いたわ、まさか本当に……」

('A`)「へへへっ、あっしにかかればちょろいもんですよ」

ξ゚听)ξ「あんたねぇ……」

('A`)「おっと惚れるなよ、俺に惚れたら火傷じゃ――」

男がまた路肩で悶える。


ξ゚听)ξ「ころころ口調が変わるのはなんなのよ」

('A`)「いやあ、この世界の言葉に馴染みが薄いもんで適応過程なんスよ!」

ξ゚听)ξ「あ、そう……。それと、ポスターはどうしてくっつかないの?」

('A`)「先ほどの説明の通りだ。この能力は確かになんでもくっつけられる。だが……」

ξ゚听)ξ「だが?」

('A`)「それはあくまで性質の話だ。一般に糊は紙をくっつけられる、だがここに途方も無い大きさの紙があったのなら…」

ξ゚听)ξ「なら?」

('A`)「チンケな糊では時間がものすごくかかってしまう、イメージとしてはそういう感じだ」

ξ゚听)ξ「何よそれ、全然わからないわ」

360 名前:名も無きAAのようです :2012/07/02(月) 00:59:31 ID:DwpRWPz.0

('A`)「ようするに、なんでもくっつけられるが、繋ぎやすいものと繋ぎにくいものがある。
   繋ぎにくさも極まれば無限に近い時間と労力の果ての先でしかくっつかないこともある、ということだ」

ξ゚听)ξ「なんだ、くっつかないものもあるんじゃない」

('A`)「現実問題として考えれば時間も労力も限界があるのでそう言えなくもない……」

('A`)「「だがしかし!最終的にくっつかないものはないのだ!」

男は胸を反り返らせ、語気を強めて高らかに言い放つ。その宣言は人気の全くない通りを力強く駆け抜けた。
空はすっかり朱く染まり、遠くの方でカラスがなく声が聞こえる。

ξ゚听)ξ「……」

('A`)「遺憾ながら、相性が重要であるとはいっておこう……」


('A`)「そういえば、君とは相性がいいよね、お嬢さん」

ξ゚听)ξ「いきなり、お嬢さんって……」

('A`)「ブラウスを難なく直せたし、そもそもこの出会いからしてそうだ」

('A`)「出会いと言う名の繋がりこそ君と僕との相性の証しさ……」

何処か明後日の方向へ走りはじめた男を他所に、男の正体とこの現象について興味が湧いている自分に気がつく。
もともと好奇心は強いほうだし、目の前であれを見せられてはしかたがないのだけど、少し危ないかもしれないとも思う。
控えめに言ってもこの男は怪しい。

('A`)「……だから、綺麗な夜景の見えるホテルで体の相性――」

男は二メートルほど転がったあと悪人面のポスターが貼ってある電柱とめでたく再会し、
それを喜んだのか勢いそのままに電信柱に熱烈なハグをした。

ξ゚听)ξ「はあ……」

一つため息を付いてから、
ハグを終えて地面に倒れ伏した男の顔を覗きこむ。

ξ゚听)ξ「それで、どこからどこまでが本当の話なのよ」

361 名前:名も無きAAのようです :2012/07/02(月) 01:05:08 ID:DwpRWPz.0

そのようにして、二人は出会った。
ここから先はまだ語りえぬお話に属する。

なんといってもこれは現在進行中の事象を取り扱っているお話なので、ここからさきはまだ彼ら次第としか言えない。
二人でドタバタする日常が過ぎていくのか、はたまた巨悪を暴くのか、それともやはり何事もなかったようにお話はここで終わりなのか。


('A`)彼らは接続するようです

現在進行中(嘘)


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