1 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:12:28 ID:BwRLmA9U0


『この町で殺された人間は、死後三か月が経過すると、神の許しを得て、幽霊として現世に戻ってくる』

『そして、生前もっとも憎んでいた相手を呪い殺すと、そいつを道連れにして、地獄へと旅立っていく――』


 ―――っていう言い伝えが、うちの地元にはあるんですが
 みなさん、聞いたことあります?
 違う県の従兄弟には通じなかったんで、たぶん、ほんとにローカルな伝承なんだと思うんですけど


( ,,-Д-) 「……おはよーございまーす……朝ごはん、なんですか?」

('、`*川 「食べる前に顔洗ってきなさい」

( ,,-Д^) 「はーい……」


 そこそこ田舎のこの町の、ど真ん中  そこには、わりと大きめの神社が建っていて
 そこに祭られている神様が、そういう神様なんだそうです  死と、復讐にまつわる神様

2 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:13:08 ID:BwRLmA9U0

 正直言うと、言われてみれば「ああ、そういやそんな話あったな」ってくらいで
 たまに大学の教授だかなんだかがフィールドワークに来てたりはしますけど、民俗学的なアレで来てたりはしますけど
 だからって「地元の人の話を聞きたい」とか、いやそんなこと聞かれてもぶっちゃけ何も考えてないですとしか言えないんですけど


( ,,-Д-) バシャバシャ           |洗面所|


 所詮は、単なる言い伝え 学校の七不思議とか、ああいうのと同じレベルのオカルト
 そう、思ってたんです


( ,,∩Д∩) フキフキ              |鏡|


 思ってたんです、けど……


( ,,∩Д∩) フキフキ              |鏡|


( ,,∩Д∩) 「……」             |鏡|


(^Д^,, ) 「……?」             |鏡|

3 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:13:35 ID:BwRLmA9U0

(#゚;;-゚)


(^Д^,, ) 「……」




     △
    (#゚;;-゚)                     (^Д^,, )
     ( ∪∪
     )ノ



(^Д^,, )


(#゚;;-゚)


( ,,^Д^)     |鏡|


( ,,^Д^)     |鏡|  (映ってない……僕しか映ってない……)

4 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:14:03 ID:BwRLmA9U0


(^Д^,, ) クルリ


(#゚;;-゚)(^Д^,, )


(#゚;;-゚)(^Д^,, )


(#゚;;-゚) (^Д^,, )


(#゚;;-゚)   (^Д^,,;)

5 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:14:24 ID:BwRLmA9U0


「……もしかして、見えてる?」

     △
    (#゚;;-゚)  (^Д^,, )
     ( ∪∪
     )ノ





(^Д^,,; ) 「……………………………………………………」

(#゚;;-゚) 「見えてる?」

(^Д^,,; ) 「…………まあ……ええ……」




 所詮は、単なる言い伝え 単なるオカルト、そう思ってたんですけど
 ……どうも、これ、マジ……な、話、だった……みたい…でして……

6 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:15:21 ID:BwRLmA9U0






         彼には見えているようです (^Д^,, )

7 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:15:55 ID:BwRLmA9U0

〜〜〜〜〜


( ´∀`) ジロジロ

(#゚;;-゚) 

( ´∀`) 「……ん〜………」  

( ;´∀`) 「……う"〜〜〜〜〜〜〜〜ん……」

(;#゚;;-゚)

( ;-∀-) 「……やはり、ダメだ。微妙すぎる!」

(#゚;;-゚)

(゚;;-゚#) 三 (#゚;;-゚) キョロキョロ

(;#゚;;-゚) 「……あの」

|゚ノ ^∀^) 「どうしたの?」

(#゚;;-゚) 「えっと、……ここ、どこなんですか? 私は……確か、橋の上にいて……」

(#゚;;-゚) 「あと、あなたたちはいったい……」

8 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:16:26 ID:BwRLmA9U0


( ´∀`) 「……ここはあの世で僕は神様だが。それがどうかしたか」

|゚ノ ^∀^) 「あ、私は天使みたいなものだと思ってね」

(#゚;;-゚)

(#゚;;-゚) キョトン

(#゚;;-゚) 「神様」 パチクリ

|゚ノ ^∀^) 「そう、神様」

(#゚;;-゚) 「……じゃあ、私は、死んだんですか」

( ´∀`) 「ああ、おまえは死んだ。だから今僕がこうして頭を抱えている」

(#゚;;-゚) 「……?」

( ;´∀`) 「……自分でわかっていないのが、余計にややこしい……」

|゚ノ ^∀^) 「……」

(#゚;;-゚) 「……? あの、どういう……」

( ´∀`) 「……ざっくり説明しよう」

9 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:17:09 ID:BwRLmA9U0


( ´∀`) 「自殺なら、そいつは地獄行き。僕がくれてやった命を自分から捨てる不届き者。論外」

( ´∀`) 「他殺であれば、殺したやつは問答無用で地獄行き。論外。マジ論外。
       殺されたやつは霊体で現世に送り返して復讐させてやる。よっぽど自業自得でない限り、その後は天国に行かせてやれる」

( ´∀`) 「どちらでもない、事故死や病死なら、死んだそいつに罪が無ければ、基本的には天国に送ってやれる」

( ´∀`) 「それが、基本的なルールだ。が……」

(#゚;;-゚) 「……」

( ;´∀`)  「……が、おまえの死は、そのどれにも当てはまるような気がするし、どれにも当てはまらない、そんな気もする」

(#゚;;-゚) 「どれにも……?」

|゚ノ;^∀^) 「このままだと、あなたを天国に送ってあげられるかどうかわからないの……」

(#゚;;-゚) 「……そうなんですか」

|゚ノ ^∀^) 「ごめんなさいね。死後の魂の行き先については、本当に厳しいルールが決められてて。私たちにも、あんまり勝手なことはできないの」

( ´∀`) 「……」

10 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:17:53 ID:BwRLmA9U0

(#゚;;-゚)

(#゚;;-゚) 「いいですよ、私は別に。天国でも、地獄でも、どこでm」

( #´∀`) 「ダメだ!」

(#゚;;-゚) そ  ビクッ

( #´∀`) 「……ちっ」

|゚ノ ^∀^) 「……ダメよ。そんな若い姿でここに来ておいて、そんな寂しいことを言っちゃダメ」

(#゚;;-゚) 「……」

(#-;;--) 「私、は……」

(#-;;--) 

(#-;;--) 「……あれ」

(#゚;;-゚) 「私、どうやって死んだんでしたっけ……」

( ´∀`) 「待ちなさい。無理に思い出してはいけない」

(#゚;;-゚) 「?」

11 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:18:27 ID:BwRLmA9U0


( ´∀`) 「死の記憶というのは、人間にくれてやったものの中で、最も辛く苦しいもの。無理に、一気に思い出そうとしてはいけない」

(#゚;;-゚) 「……はあ、そうなんですか」

( ;´∀`) 「……しかし……ううむ……」

( ; ∀ ) 「……この子が……この子だけが地獄に行くなど……断じて……!」

(#゚;;-゚) 

(#゚;;-゚) 「……よく、思い出せません、けど」

(#゚;;-゚) 「とりあえず、私は……別に、誰かに殺されたりしたわけでは、なかったような……」

( # ∀ ) 「殺されたようなものだ!」

(#゚;;-゚)  ビクッ

( #´∀`) 「……直接手を下した者がいるわけじゃない。だから殺人ではない。そんな理屈が通っていいものか……本当にこの愚か者共は……」

|゚ノ ^∀^) 「……」

12 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:18:58 ID:BwRLmA9U0


( ´∀`) 「……決めた」

(#゚;;-゚)  ?

( ´∀`) 「今から、お前を霊体として現世に戻す。だから、そこでひとり、道連れを見つけろ」

(#゚;;-゚) 「道連れ……」

( ´∀`) 「幽霊は普通人間には見えない。それを利用してひとり見つけろ。そいつだけはこの僕が地獄に落としてやる」

( ´∀`) 「……それでも、おまえを天国に送ってやれるかはわからんが……」

(#゚;;-゚) 「……」



〜〜〜〜

13 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:19:21 ID:BwRLmA9U0



(#゚;;-゚) 「……って、言ってた」


( ,,^Д^)


( ,,-Д-) 「……」


(;,,-Д-) 「…………神様って、どんな顔してました?」

(#゚;;-゚) 「おじいちゃんだった。怖そうな」

(;,,^Д^) (……あ、マジでいるんだ神様……へえ……へ、へえ……)


 平日の朝っぱらから、幽霊と自宅の洗面所で出くわす、このシチュエーション
 いい加減家出ないと遅刻、って時間ではあるんですけど、とりあえず
 とりあえず僕は、冷静に、冷静に 幽霊を、2階の自分の部屋へと冷静に案内し、冷静な対話を試みていました

14 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:20:01 ID:BwRLmA9U0

( ,,^Д^) 「……えっと、……」

( ,,^Д^) 「……どうして、僕のところに来たんですか?」

(#゚;;-゚) 「……私も、何すればいいのかわからなくて。いろんな人のところに、行ってみてたんだけど」

(#゚;;-゚) 「ほんとに、誰も、私のことが、見えてないみたいだったから……」

( ,,^Д^)

( ,,^Д^) 「……つまり、でぃさんの姿は僕にしか見えていない?」

(#゚;;-゚) 「今のところは。きみが初めて」

( ,,^Д^) 「……」

 ……僕、実は霊感とかあるほうだったんでしょうか
 そんなの、今までまったく考えたことなかったんですけど

15 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:20:25 ID:BwRLmA9U0


( ,,^Д^) 「……なんで僕には見えるんでしょう。普通の人には見えないんですよね?」

(#゚;;-゚) 「それは……」

(#゚;;-゚) 

(#゚;;-゚) 「言っちゃダメって言われてた」

( ,,^Д^) 「ダメって……」

(#゚;;-゚) 「私のことが見える人間を探せって言われたけど、なんで見えるかの理由は教えるなって、神様が」

( ,,^Д^) 「神様が」

(#゚;;-゚) 「うん」

( ,,^Д^)

( ,,^Д^) (え、それもしかしてヤバイやつなんじゃ……?)


 ……えっと、現状を整理しましょうか

16 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:20:58 ID:BwRLmA9U0


 僕の名前はタカラギコ、この街のソーサク高校に通う3年生です
 で、彼女の名前はでぃ 僕と同じクラスの女子……でした

 過去形、です


( ,,^Д^) 「……ええっと……聞くかぎり」

( ,,^Д^) 「でぃさんは、自分が死んだときのことを……覚えていないんですか?」

(゚;;-゚#) 「……ぼんやりとしか」

( ,,^Д^) 「……」


■     (゚;;-゚#)

 話している間、でぃさんがどこを見ていたかというと
 僕の、勉強机の上に置いてあった、卓上カレンダー

17 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:21:28 ID:BwRLmA9U0


■    (゚;;-゚#) ))))             (^Д^,, )

 ふと、でぃさんは するりと滑るように移動すると、カレンダーを手に取ろうとして……

□⊂(゚;;-゚#)  スカッ           (^Д^,, )

⊂(゚;;-゚#)                 (^Д^,, )

⊂(#゚;;-゚)                  (^Д^,,;)

 すり抜けていました
 どうも、ものに触ることはできないみたいです 
 そりゃまあ、そうですよね

(^Д^,, ) 「……たしか、6月の……14日、だったと思います」

(#゚;;-゚)

 仕方がないので、僕がやることにしました
 9月になっていたカレンダーを、パラパラとめくり直して
 およそ、3か月前の日付を出します

18 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:21:56 ID:BwRLmA9U0


(^Д^,, ) 「ちょうど、梅雨の時期で。台風かなんかも、来てたんでしたかね」



(^Д^,, ) 「ファイナル橋から足を滑らせたあなたは、雨続きで増水したソーサク川に転落して、そして亡くなった」



(#゚;;-゚)



(^Д^,, ) 「……事故、だったと。そんなふうに、僕は聞いています」



(#゚;;-゚)


(#゚;;-゚) 「事故……うん」

(#゚;;-゚) 「私も……たしか、死ぬとき、他の人は見なかった気がする」

( ,,^Д^) 「……やはり、はっきりとは思い出せない?」

(#゚;;-゚) 「うん……」

19 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:22:33 ID:BwRLmA9U0


( ,,^Д^) 「……」

 自分の死んだ日がいつだったか、死因がなんだったか それを聞かされるのは、どんな気分なんだろうと 
 いまいち、でぃさんの目を直視できなかったのですが 本人には、気にした様子もなくて 

(#゚;;-゚)

( ,,^Д^)

 しばしの沈黙
 誰かが階段を昇ってくる足音だけが、部屋に響いていました

 階段?


('、`*川 「ほんとにもーあの子は、ほっとくと部屋の掃除をしないから……」ガチャッ

( ,,^Д^)

(#゚;;-゚)

('、`*川

20 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:23:07 ID:BwRLmA9U0


('、`#川 「アンタなんでまだ出てないの!? 何時だと思ってるの今! 9時半!!」

(;,,^Д^) 「くじはっ……!? そんな!?」

('、`#川 「しかも着替えてすらいない!」

(;,,^Д^) 「あわたたたた、え、いつの間にそんな―――」

(^Д^,,;) 「――って!」

('、`#川 「立ち止まってる暇があるか―――ッ!! いいから急……」

(#゚;;-゚)

('、`*川 「……あ、ちょっと待った。ちょうどいいから言っとくわ、お母さん今晩は町内会の寄り合いで遅くなるから」

( ,,^Д^) (……見えてない……?)

 僕の部屋に踏み込んできた母は、でぃさんに何の反応も示さず
 とりあえず、('、`*川『黙ってたけど実はうち陰陽師の一族だったんだ』とか
 そんな可能性は消えたと思っていいのかな、なんて考えつつ 制服と鞄をひっつかみ、食パンをくわえて家を出ました

21 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:23:39 ID:BwRLmA9U0


( ,,^Д^) 「とはいえ、もう一時間目どころか二時間目すら間に合うか怪しいんですよね」 テクテク

(#゚;;-゚) フワフワ

( ,,^Д^) テクテク

(#゚;;-゚) フワフワ


( ,,^Д^) 「……えっと、学校まで来るんですか?」

(#゚;;-゚) 「……あ」

(#゚;;-゚) 「ごめんなさい。迷惑だった」

( ,,^Д^) 「ああ、いや、迷惑というか……」

( ,,^Д^) 「……っと」

 いつも通りの登校ルートを、どうせ遅刻確定だからと、ゆっくり歩いていたら
 ふと、思い出しました

(#゚;;-゚) 「あ」

( ,,^Д^) 「……」

 今、ファイナル橋は、柵の修繕のため工事中だってことと
 普段意識していないけど、この橋は、僕の登下校ルートの途中にあるんだってこと

22 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:24:13 ID:BwRLmA9U0


 ……ファイナル橋を目の前にして、でぃさんは、少しの間 立ち止まっていました

(#゚;;-゚) 「……ここで、私は……」

( ,,^Д^) 

( ,,^Д^) 「……あの、えっと、ですね」

(#゚;;-゚) 「……学校、先に行ってきて。私は、あとで行くから」

( ,,^Д^) 「へ?」

(#゚;;-゚) 「……私は、しばらくここにいるから」

( ,,^Д^) 「……」

 振り返ると、でぃさんは 工事中の橋の上で、ふわふわと浮かびながら
 広いソーサク川の、今は穏やかな川面を、眺めていました

23 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:24:45 ID:BwRLmA9U0




 二時間目終わりの休憩時間
 そのタイミングをばっちり見計らって、僕は教室に入りました

( ,,^Д^) 「おはようございまーす……」 コソコソ

(-_-) 「あれ、タカラだ」

<_プー゚)フ 「おー。今日はもうこねーと思ってた」

( ,,^Д^) 「来ないと思ってたって……。ちょっと寝坊しただけですよ」

<_プー゚)フ 「や、朝起きて二度寝して家出て一限間に合わないって思ったらめんどくせーしそのままバックれるのが普通じゃん?」

(-_-) 「学校サボんのを普通って言う受験生、普通に考えて終わりだよね」

<_プー゚)フ 「んでしゃーねーから今日は一日学校じゃなくて図書館で勉強しよーと思って図書館行ってー、
          漫画でわかる日本史みたいなの読み始めて、いつのまにか完全な漫画にシフトしてる系の」

( ,,^Д^) 「君も一応受験生ですよね?」

<_プー゚)フ 「夢は大きく東京大学」

(-_-) 「模試の判定は」

<_プー゚)フ 「EZ DO DANCE」

щ(-_-щ) 「Foo!」

( ,,^Д^) 「いい加減第一志望にネタ枠入れていい時期じゃないと思いますよ……」

24 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:25:27 ID:BwRLmA9U0

 ……なんていう、くだらない話を 体操服に着替える途中の、半裸の友人たちとしていると
 朝の一件が、全部僕の見た幻覚だったような そんな気さえしてきますね……

 ……ところで、半裸?

( ,,^Д^) 「次の授業なんでしたっけ?」

<_プー゚)フ 「体育。サッカー。疲れた受験生たちのオアシス」

(-_-) 「そして文科系学生たちの砂漠」

(;,,^Д^) 「体操服! やっ、忘れ……」

( ,,^Д^) 「……て、ませんでしたね。セーフ! いっそ四限までまるごとボイコットするとこでしたよ」

(-_-) 「……いやさ、タカラも結構マジメみたいなツラしといてサボるときサボるよね……?」

<_プー゚)フ 「なんせぼくの親友だからね!」

( ,,^Д^) 「ははッ。死ね」

<_プー;)フ 「しんゆー……」

 ……こんなバカをやっていると、本当に、朝のことを、忘れてしまいそうで
 もしかするとあれは、僕が見た、ただの幻だったのかもしれないと そう思ってしまいそうで

25 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:26:03 ID:BwRLmA9U0

 「後で来る」と言っていたでぃさんは、いったい、いつごろ来るんでしょうね
 教室をぐるりと見回してみても、どこにも見つかりませんでした



………





ミ,,゚Д゚彡 「キックオーフ!」 ピピッ


<_プー゚)フ 「おっしゃ行くぞー!」

( ,,^Д^) 「ヘイパース! ヘイパスパス! パ……ナイッシュー!」


ミ,,゚Д゚彡 「キックオーフ!」 ピピッ


<_プー゚)フ 「おっしゃ行くぞー!!」

( ,,^Д^) 「ヘイパース! ヘイパスパスパ……ナイッシュー!」

26 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:26:39 ID:BwRLmA9U0


ミ,,゚Д゚彡 「キックオーフ!」 ピピッ


<_プー゚)フ 「おっしゃ行くぞー!!!」

(#,,^Д^) 「ヘイパース! ヘイパ……たまにはこっちにボールをよこせ!!!」


「了解!」
     _人_ ,∵
  ∧_  Y,'_ (ヽ
 < ゚^)/) /(  )
 と と / /し VV  「え、ちょっ」
  〉 / (/(ノ
  (_/
)\,'


( _ ) 「ぶげェっ」

<_;プー゚)フ 「ヒッキィ―――z_____ッ!!! オメーなんつーとこ突っ立ってんだ真後ろって!! 真後ろっておまえ!!」

( _ ) 「ち、ちが……おまえが、おまえがちょろまか早いから……どこへ逃げればいいか……」

<_プー゚)フ 「逃げてんじゃねェーよサッカーで!!」

27 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:27:05 ID:BwRLmA9U0

  _
( ゚∀゚) 「せんせェ――! ヒッキーがエクスト必殺の飛び蹴りの餌食に!!」

( ^ω^) 「エクストが無駄にアクロバティックなパス出そうとしたばっかりに!!」

( ´_ゝ`) 「たまたま近くにいたヒッキーのフナムシのような身体が真っ二つにィ―――ー!!!」

ミ,,;゚Д゚彡 「なんと!! しかし選手がひとりふたり死のうとシュートが入らん限りホイッスルは鳴らせん決まりなのだ!!」

( ゚ω゚) 「うわァァァァ修羅ルールゥ―――――ッ!!!」

<_プー゚)フ 「うるせェ――――パス出せっつったのはタカラだよ!! 慰謝料はあいつ宛て!! 訴訟!!!」

(#,,^Д^) 「おい飛び火ィ!!」

 ……と、まあ、サッカーは その、エネルギーの有り余ってるバカどもの独壇場って感じでして
 クールに真面目な感じのキャラで売ってる僕としては、ちょっとついていくのが厳しい感じですね、ええ ええ
 
 前線は熱狂するバカどもに任せて、僕はテキトーにゴール前で待機しておきましょう……
 と、小走りにコートの中を移動していると、蘇生したヒッキーが体操服の砂を払いながら近づいてきました

28 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:27:53 ID:BwRLmA9U0


(-_-) 「ひどい目に遭った」

( ,,^Д^) 「わりと余裕ですね君」

(-_-) 「まあ、ぶっちゃけエクストそんなに足上がってなかったし。ネタで済む範囲」

( ,,^Д^) 「受験生の運動不足ですねー……」

 一応同じチームなので 3人に囲まれて袋叩きにされているエクストを遠目に眺めつつ
 僕たちは、雑談に興じることに……

( ,,^Д^) (……ネタで済む範囲。ネタで済む範囲……)

(-_-) 「すごい。なんて言うんだっけあれ、四の字固め? じゃなくて……バックブリーカー?」

( ,,^Д^) (……なんか、前にもありましたね、こーいうの)

(-_-) 「あ、すごい。エクスト抜けた」

29 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:28:19 ID:BwRLmA9U0


<_プーメ)フ 「た、タカラ……おいタカラぁ! パスだ! パース!!」
  _
( ;゚∀゚) 「あっクソっ! ボール逃がした!!」

( #^ω^) 「だがこいつの背骨ももう限界よォ!!」

<_;プーメ)フ 「あががががががががが、た、タカラ、ボール、行ったぞ」


( ,,^Д^)     ○ 三  (あのときは確か、サッカーじゃなくて、っていうか体育でもなくて……)


(-_-) 「あ。タカラ、ボール来て……タカラ?」

(´<_` ) 「タカラ行ったー……タカラ? おいタカラー!?」

( ,,^Д^) ○ 三 (……っていうか、たしかあれ、2年のときの話だったよう――)

( ,,^Д^(○ 三 




―――――――――――

30 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:28:58 ID:BwRLmA9U0


 あれは確か、2年の……5月? 6月? いつでしたっけ……
 ……ともかく、掃除当番とか、委員会とか、そういうものを軒並み決めてしまった後で

ミ,,゚Д゚彡 「ットラーイッ! バッターアウッ!」

(^Д^,,;) 「……」 スゴスゴ

<_プー゚)フ 「テメ―――アウトはいいけど三振はねーだろ三振は! 出塁は期待してねーけどさあ! 三振! 恥! 昼飯奢れ!!」

 週に一度のロングホームルームの時間、やることがなくなってしまったので じゃあテキトーにレクリエーションでもするかと
 体育じゃないので格好も制服、ガチでやるわけじゃないので、男女も混合
 グラウンドが空いていたからという理由で、そんな、テキトーな野球をやってたときのことでした

<_プー゚)フ 「しょ―――がねえよなまったくよぉ。こうなったら俺が本物のバッティングっつーもんを見せてやるしかないじゃんか」

(`・ω・´) 「なるほど、現役野球部ピッチャーの前で本物のバッティングを名乗るか。つまり遠慮は要らんということだな」

<_プー゚)フ 「ごめんシャキン。ほどほどに加減して」

 ――そう、たしか、エクストの打席でした
 ほんとに手加減してくれたらしい、でも結構速度のある一球目を、いきなり打ったんです
 いまいちスッキリしない打撃音がして、ライナー気味の打球が――

31 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:29:22 ID:BwRLmA9U0


ミ,,゚Д゚彡 「ファー……る、ッ……!」

<_;プー゚)フ 「あ……っ!」




(# ;;- ) 「つ……っ」




 ……フェンスのそばで、ひとり、突っ立っていたでぃさんの、ちょうど脛のあたりに
 おもいっきり、ぶつかったんです


<_;プー゚)フ 

(;`・ω・´) 「あ……で、でぃさん大丈夫!?」

<_;プー゚)フ 「! ご、ごめん! でぃさん大丈夫!?」

(#゚;;-゚) 「……大丈夫です。ほんとに、大丈夫です」

32 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:29:53 ID:BwRLmA9U0

ミ,,゚Д゚彡 「……本当に大丈夫か? 保健室とか……」

(#゚;;-゚) 「はい。ほんとに、大丈夫なんで」

(`・ω・´) 「……まあ、エクストの打球だからな。大したことないといえばそうか」

<_;プー゚)フ 「お、俺のせいかよ!? テメーの球が遅いせいってのもあるんじゃねーの?」

ミ,,゚Д゚彡 「俺のせいってなんだ俺のせいって。エクストの打球が貧弱だったから大事に至らなかったんだ、むしろ誇っていい」

<_;プー゚)フ 「先生までぇ!?」

 あははははは……、と そこで、見ていたみんなの笑いが起きて
 それで、一応の決着は、一応のオチは、ついたような感じでした、けど……



从 ゚∀从 「……もっとネタになるやつに当たれよって話だよな」 ボソッ

(´・_ゝ・`) 「やめてやれ」



 ……誰かが、ぼそりと呟いた、そんな言葉が
 妙に、記憶に残っています

33 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:30:38 ID:BwRLmA9U0

(^Д^,, ) 「……」

 うちの高校は、一クラスがだいたい36人で 野球の守備は、9人ですから 18:18で分けても余るわけで
 攻撃のときは、一応全員打つことにしてましたけど 守備のときは、暇そうに見てる人も何人かいました


(#゚;;-゚) 


 でぃさんは、攻撃の間も守備の間も、ずっとひとりで フェンスのそばに、ひとり、ぼーっと立っていて
 50分間の授業中、1度だけ打席が回ってきたときは 
 それまで、ギャーギャーと騒がしかった周りの連中が ほんの少し、微妙に、声量を落としたことも 妙に、覚えています



    … … …


<_プー゚)フ 「なー三振王、おまえ今日弁当? 学食?」

( ,,^Д^) 「学食ですけど」

<_プー゚)フ 「ならよかった。俺今月厳しいんだ」

( ,,^Д^) 「何もよくないですね……」

34 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:31:11 ID:BwRLmA9U0

 二年と三年のときは、一応、でぃさんと僕は同じクラスでした
 だから、一年のときどうだったかは知らないんですけど それ以降同じクラスにいた身として
 少なくとも、二年の……二年の、一学期の間は いじめられてるとか、そんなことはなかったように思います

(^Д^,, ) チラッ


(#゚;;-゚)  モグモグ

(^Д^,, ) 「……」


 いじめられては、いませんでした
 ただ、孤立していただけで


<_プー゚)フ 「おらタカラはよはよ。おまえが来ないと俺今日昼飯食えねえんだよ」

( ,,^Д^) 「あ、はい。……いやはいじゃない。初手からたかりに来るのやめましょうよ」

<_プー゚)フ 「今日からおまえはタカリギコ」

( ,,^Д^) 「この上なく不名誉」

35 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:31:45 ID:BwRLmA9U0


 お昼は、いつもひとりでお弁当を食べていて
 クラス行事では、それこそあの野球みたいに、いまひとつ馴染めていない
 「活気ある、楽しそうなクラス」に、ぽつりと浮かび上がった、腫れ物のような――



――――――――



( ,,-Д-)

(;,,-Д-) 「う、うーん……」 

( ,,^Д^)(゚;;-゚#) 「あ」


( ,,^Д^)(゚;;-゚#)


(;,,^Д^)(゚;;-゚#)

(゚;;-゚#) 「起きた。おはよう」

36 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:32:18 ID:BwRLmA9U0


(;,,^Д^) 「……おはようございます。えっと、ここは……」

(゚;;-゚#) 「保健室。……汗すごいよ」

(;,,^Д^) (よかった……本当によかった……あの世とか言われたらどうしようかと……)

 起床即幽霊のインパクトは、ちょっと色々と凄まじいものがある 僕覚えました
 言った後、そういえば他に人がいたら僕は錯乱独り言野郎になってしまうのでは、と危惧したものの
 どうも、今の保健室には先生も誰もいないらしく とりあえず一安心

( ,,^Д^) 「……えっと、いつの間に学校に?」

(#゚;;-゚) 「さっき。サッカー、途中から見てた」

( ,,^Д^) 「あ、そうなんですか……いや、なんというかまあ、お見苦しいところを……」

(#゚;;-゚) 「ううん。よかった」

( ,,^Д^) 「……よかった、って……」

(#゚;;-゚) 「なんだか、久しぶりに見た気がするけど……」

(#゚;;-゚) 「学校だと、みんな、いつも通りみたいで。なんか、よかった」

( ,,^Д^)

37 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:32:57 ID:BwRLmA9U0


( ,,^Д^) 「……、……」

(;,, Д ) 「……」

( ,, Д ) 「……さん……ヶ月、経ちましたから、ね。まあ、そろそろ、皆、立ち直るでしょう」

(#゚;;-゚) 「うん。そうかもね」

(;,, Д ) 「……」


 あまり感情を表に出さない 何を考えているかわからない 生きてた時から、そうでしたけど
 今、幽霊として、僕の目の前にふわふわと浮いているでぃさんは 
 別に、何を言うわけでもなく 僕を、誰かを、責めるでもなく ずっと、無表情でした


 だから、僕にはわかりません
 だから、僕にそう見えたのは、気のせいだったのかもしれません



 言葉、声色、表情 すべてが
 「白々しいことを言うな」と、そう伝えているように見えたのは

38 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:34:12 ID:BwRLmA9U0





 事故なのか、自殺なのか





 普段が、普段でしたから
 でぃさんの死は、それ自体よりも、その死がどんなものであったのか
 誰もが、そこを気にしていたように思いますし


 事故、ということで決まったときの あの
 みんなが、ホッとしたような あの空気――――



(#゚;;-゚) 「最初に」

( ,,^Д^) 「え?」

(#゚;;-゚) 「教室、行ってみたんだけど、体育だったから、誰もいなくて」

39 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:34:43 ID:BwRLmA9U0



(#゚;;-゚) 「しばらく、廊下とか、あちこちうろうろしてたけど。ほんとに、誰も見えてないみたい」

( ,,^Д^) 「……そうなんですか。教室……」

( ,,^Д^) 「……」

 ソーサク高校の席替えは、月に一度行われます
 でぃさんが死んだ六月、でぃさんの席は教室の一番後ろ、一番隅 廊下側の、一番後ろにありました


 隅の、都合のいい位置にあったからでしょうか でぃさんの席は、空席のまま残されるなんてことはなく
 生徒なのか、教師なのか、誰の発案なのか 
 誰が持ち出したのかもわからないうちに、いつの間にか、教室から撤去されていて
 6×6で一クラス36個あったはずの席は、今では角が欠けて、35個になっています

40 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:35:12 ID:BwRLmA9U0


( ,,^Д^) 「どうしてでしょうね。僕にだけ見えるの」

(#゚;;-゚) 「……言っちゃダメって言われてるから」

( ,,^Д^) 「……ということは、でぃさんにはその理由がわかってるんですか?」


(#゚;;-゚)


(#゚;;ー゚) 「さあ?」

( ,,^Д^)

( ,,^Д^) (今の、もしかして笑ってました……?)

 思えば、笑顔のでぃさんというのに、僕は見覚えがありません
 ちょうど、今みたいな表情ばかり、見ていたような気がして

41 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:35:41 ID:BwRLmA9U0

 場の流れからすると、たぶん笑っているのだろうけど
 傍から見ると、笑っていると思っていいのか判断しかねる、そんな微妙な表情を


 初めて見たのは、たしか―――
 ――初めて、話しかけたとき 





―――――――――

42 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:36:28 ID:BwRLmA9U0


< ぃいいしやぁぁ〜〜〜〜きぃいもぉぉ〜〜〜〜おいもぉぉ〜〜〜〜〜〜〜

< ぃぃぃいいいしやぁぁぁぁ〜〜〜〜きぃいもぉぉぉぉぉ〜〜〜〜ぉおおいもぉぉ〜〜〜〜〜〜〜



<_プー゚)フ 「なあ、なんなのこの挑発的なサイレン? 夕方の高校前でんなもん鳴らしていいと思ってんの?」

( ,,^Д^) 「たまにそのへん回ってるのは知ってましたけど……このへんにも来るんですね、あれ」

<_プー゚)フ 「腹をすかせた高校男児を大量に押し込めたこの監獄の前で! あんな音鳴らしていいと思ってんの!?」

(゚、゚トソン 「ついでだから私も聞きましょう。勉強こそが仕事であるはずの高校男児が、あんな点で許されると思っているのですか?」

<_;プー゚)フ 「――あんなサイレン聞かせながら!! 補習なんて名目で長時間監禁することが許されると思ってんの!?」

(゚、゚トソン 「では、タカラくん。この《数U・B/共に一桁》くんはしばらく拘束させていただきますが、君は帰るなら気を付けて。そろそろ日も暮れてきます」

<_;プー゚)フ 「いやだああああ! タカラー! タカラー! 助けて!」

(゚、゚トソン 「さあ、行きますよ《数A/去年:2学期:中間/零》くん。君との一年越しの因縁にもいい加減決着をつけねばならない」

<_;プー;)フ 「たからぁー!! せめて俺のぶんの焼き芋確保するくらいはしといてぇー…….......」

( ,,^Д^)ノシ

43 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:37:09 ID:BwRLmA9U0


( ,,^Д^) 「……とは言ったものの、めっちゃ人気ですね」

 平和だなあとは思いますが、同時にここって田舎なんだなあとも実感する、このサイレン
 焼き芋屋の軽トラは校舎の裏門のあたりに停まっていましたが
 2階の窓から見渡しただけでも、この、すごい人だかり

( ,,^Д^) 「すいませーん。焼き芋、えーっと……2つもらえますか」

爪'ー`)y‐ 「兄ちゃん運いいね。ちょうどラスト2つだよ」

( ,,^Д^) 「お、ほんとですか?」

爪'ー`)y‐ 「ほんともほんと。せっかくだからラスト記念だ、2本目は50%引きで売ってやろう」

 もともと、そんな大量に売ってるわけじゃないんでしょうけど
 僕がたどり着くころには、ほとんど壊滅状態でした 高校生というのは飢えてるんです

( ,,^Д^) (……エクストには元の値段で請求してもいいかもしれませんね……なんせ数学一桁ですし……)

( ,,^Д^) (……あ)

44 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:37:51 ID:BwRLmA9U0



(#゚;;-゚) テクテク


( ,,^Д^) 

    (#゚;;-゚) テクテク

( ,,^Д^) (……まだ帰ってなかったんだ……)



<ん? ああ、すまんね嬢ちゃん。もう売り切れなんだ

<元気があっていいねー、ここの生徒は……いや、本当にすまんね。だからこのオッサンにそんな顔見せないでくれ



( ,,^Д^)


  (゚;;-゚#) テク...テク....


( ,,^Д^)

45 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:38:21 ID:BwRLmA9U0


(;,,-Д-) 「……」

 ……同じ日の放課後、だったんですよ
 例の、打球直撃の日の

( ,,^Д^) 「……あの」

(゚;;-゚#) テク...

(#゚;;-゚)  ?

( ,,^Д^) 「あ、えーっと……」

( ,,^Д^) 「……」

(#゚;;-゚)

( ,,^Д^)っ 「……その、焼き芋、食べます? 僕で、最後だったみたいなんで……」

(#゚;;-゚)

(#゚;;-゚) 「……なんで?」

(;,,^Д^) 「……なんッ……で!?」

46 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:38:51 ID:BwRLmA9U0



 それ言われると辛いっていうか、そこ気にするんだっていうか
 初めての会話がこれかよ、っていうか

( ,,^Д^) 「いや、どうも僕で最後だったみたいなんで。2つ買ったんですけど、なんか、悪いことしたかな、って」

(#゚;;-゚) 

(#゚;;-゚) 「……ありがとう」

( ,,^Д^) 「あ、はい……」

 まあ、でぃさんは思いのほかあっさりと、焼き芋を受け取ってくれました
 その後すぐ、彼女は自分の財布を取り出すと――

(#゚;;-゚)っ 「はい」

( ,,^Д^) 「え?」

(#゚;;-゚)っ 「手。出して」

( ,,^Д^) 

( ,,^Д^) 「……ああ、いや、別にいいですよ? どうせ、そっちは割り引いてもらったやつですし」

(#゚;;-゚)っ

47 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:39:17 ID:BwRLmA9U0



(#゚;;-゚)っ ???



( ,,^Д^)


( ,,^Д^) (あ、この人こんな顔するんだ……?)

 なんでしょう、支払いを断ったときの彼女の顔は、どうも
 「どうしようこいつ何言ってんのか心底理解できない」とでも思ってるのかな、って感じの
 結構、おもしろいものでした

(#゚;;-゚)っ

(#゚;;-゚)っ ふるふる

(#゚;;-゚)っ 「ダメ」

( ,,^Д^) 「ダメ、って」

(#゚;;-゚)っ 「いいから。手、出して」

(;,,^Д^)っ 「おわ」

48 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:39:48 ID:BwRLmA9U0


 が、そんなおもしろい顔とは裏腹に、でぃさんはわりと力強く
 僕の手を強引に取ると、小銭を2枚、無理やり握らせ 満足そうにうなずきました

(#゚;;-゚) 「うん」

( ,,^Д^) (……や、まあ、変に断るのも、それはそれでアレですけど……)

( ,,^Д^)っ (わりと、律儀な人なんですかね) チャリンチャリン

 手の中の100円玉2枚を眺めつつ、そんなことを……
 ん?

( ,,^Д^) 「いや、どっちにしろ200円もしてないですよ? 一本100円でしたから……」

(#゚;;-゚) 「……おじいちゃん」

( ,,^Д^) 「はい?」

(#゚;;-゚) 「おじいちゃんが、言ってた」

( ,,^Д^) 

(#゚;;ー゚) 「なんの……なんの、見返りも、なしに。食べ物を、分けてくれる人は、大事にしなきゃならないって」

( ,,^Д^)

49 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:40:21 ID:BwRLmA9U0


( ,,^Д^) 「……それは……立派な、おじいさ」

(#゚;;-゚) 「死んじゃったけど」

( ,,^Д^) 

(;,,^Д^) 「……え?」

(#゚;;-゚) 「おじいちゃん。もう、ずっと前に」

( ,,^Д^) 「……そう、ですか……」

(#゚;;-゚) 「……じゃ。ありがとう」

( ,,^Д^) 「……あ、はい、じゃあ……」

   (#゚;;-゚) テクテク....


( ,,^Д^)  ポカーン.....

 
 ……というのが、僕とでぃさんの、ファーストコンタクトというやつに、なるわけでして……
 なんというか、まあ
 去りゆく彼女の背中を、呆然と見送るしかありませんでした

50 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:40:52 ID:BwRLmA9U0


( ,,^Д^) (大事に……大事に。大事に? 大事に??)

( ,,^Д^) (……買収?) チャリンチャリン

( ,,^Д^)

( ,,^Д^) (わからん……)



―――




( ,,-Д-)


     △
    (#゚;;-゚)  ?
     ( ∪∪
     )ノ


(#゚;;-゚) 「どうしたの?」

( ,,^Д^) 「……いえ」

51 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:41:15 ID:BwRLmA9U0


 変わった人だな、と 受け取った小銭を見て、思ったことを 今でも、まだ、覚えていました
 ほとんど一年経った今でも
 死んでしまった、今になっても 


( ,,^Д^) 「……調べてみましょうか」


(#゚;;-゚)

(#゚;;-゚) 「調べる?」

( ,,^Д^) 「道連れを探せって言われたんでしょう? でも、自分がどういうふうに死んだのか、それはまだ思い出せない」

(#゚;;-゚) コクリ

( ,,^Д^) 「……思い出すのは辛いことだって、神様も言ってたそうですけど。
       何があったのかわかんないと、誰を連れていくかも、決まりませんよね」

(#゚;;-゚) 「うん。私も、ちゃんと思い出したい」

( ,,^Д^) 「じゃあ、僕が付き合います」

( ,,^Д^) 「ものに触れる生きた人間がいたほうが、都合がいいかもしれません。他に見える人もいないですし」

52 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 22:41:42 ID:BwRLmA9U0




(#゚;;-゚) 





(#゚;;ー゚) 「うん」





 相変わらず、笑っているのか、そうでないのか、判断に困る表情を浮かべて
 でぃさんは、頷いてくれました

54 名前: ◆CfAS2UW3uU :2016/04/03(日) 23:28:31 ID:BwRLmA9U0


 ……と、いうわけで
 見えないのをいいことに、授業中、教室の中を自由に飛び回るでぃさんに心を乱されつつも
 どうにか放課後を迎えた僕が、帰り道にまず向かったのは―――





(#゚;;-゚)

( ,,^Д^)

55 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 23:29:08 ID:BwRLmA9U0

(#゚;;-゚) 「……あ、わかった」

(#゚;;-゚) 「お祓い?」

(;,,^Д^) 「違いますよ!?」


 ……訂正します
 帰り道に、まず向かおうとした場所は、当のファイナル橋なのですが
 その途中に通りがかった神社の前で、僕たちは一旦立ち止まっていました
 せっかくだからというか、なんというか でぃさんが興味を示したようで……


( ,,^Д^) 「……だいたいですね、あなた神様に言われて戻ってきてるんでしょう? そんな人神社で祓えるんですか。神の社と書いて神社ですよ」

(#゚;;-゚) ウーン...

(#゚;;-゚) 「試してみないと、わかんないと思う」

(;,,^Д^) 「試してほんとに祓われちゃったらどうする気なんですか……」

56 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 23:29:40 ID:BwRLmA9U0


(#゚;;-゚) 

(#゚;;-゚) 「お祓い、してもらえれば……」

( ,,^Д^) 「?」

(#゚;;-゚) 「道連れとか、いなくても、成仏できるのかなって。思ったんだけど」

( ,,^Д^) 

( ,,^Д^) 「……というか、でぃさん的にはそもそもどうなんです?」

(#゚;;-゚)  ?

( ,,^Д^) 「……道連れにしたいほど、憎い人間、……誰か、いるんですか?」

(#゚;;-゚) 

(#゚;;-゚) 「死んだときのこと、まだ、はっきり思い出せないのに。憎いとか、そういうのは、別に」

( ,,^Д^) 「……なんにせよ、そこをはっきりさせるところから……ですか」


 もし仮に、誰かの陰謀が裏にあって それにハメられて死んだのだとしても
 そいつが誰なのかわかってなければ
 死んだときの記憶がなければ、呪い殺すも何もないですよね

57 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 23:30:22 ID:BwRLmA9U0


( ,,^Д^) (いや呪い殺すって改めて思うと物騒な話してんな……)

( ,,^Д^) (……)

( ,,^Д^)



( ,,^Д^) 「それ以前に……に、ついては……」



(#゚;;-゚) 「?」

( ,,^Д^)

( ,,^Д^) 「いえ、なんでもありません」


.........

58 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 23:30:50 ID:BwRLmA9U0


 ファイナル橋の上、……は、工事中のため、入れないので

( ,,^Д^) 「さて……」

 橋を、遠目に眺めつつ 話を切り出すことにします

( ,,^Д^) 「……それなりに流されたみたいですから、発見された場所は、もう少し先だったらしいですが」

( ,,^Д^) 「あなたは、この橋から落ちた。警察の捜査では、そういうことになったそうです」


 少し前、でぃさんは近くのスーパーまで買い出しに出ていたらしく
 その買い物袋が、橋の上に残されていたとか、たしかそんな話でした
 ……そのため、事故なのか、突発的・衝動的な自殺なのか、そこで結構揉めたようですが……


 その日は、風も強く 橋の柵は低く、そして雨が降っていたから滑りやすい 
 加えて、当時の彼女に自殺するような動機は――ない、と そういうことに、なった……


( ,,^Д^) 「……という感じで、僕たちには伝わっています。もちろん僕は警察じゃないので、
       実際は、もっと他の証拠とか、そういうものがあったのかもしれませんが……」

59 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 23:31:40 ID:BwRLmA9U0


(#゚;;-゚) 「……うん」

(#゚;;-゚) 「そう、橋……。この橋だった……気がする」

( ,,^Д^) 「……何か、思い出せませんか?」

(#゚;;-゚) 「……」

 と、聞いてみても
 でぃさんには、いまいちピンと来ていないようでした

( ,,^Д^) 「……ふーむ」

( ,,^Д^) 「もう少し近づければ……と、言おうにも。今、工事中なんですよね」

( ,,^Д^) 「……デカい川の、デカい橋のわりに、柵が低いってのは、前々から言われてましたけど。
        でぃさんの一件で、本格的に取り沙汰されるようになったとかで」

(#゚;;-゚)

60 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 23:32:11 ID:BwRLmA9U0


( ,,^Д^) 「……といっても、いや、あれですね。でぃさんなら工事とか関係ないですか、そういえば。飛べるんですし」

(#゚;;-゚) 

( ,,^Д^) 「別に、僕にとり憑いてるとか、僕から離れられないとか、そういうルールがあるわけでもないんですし……」

(#゚;;-゚) 

( ,,^Д^) 

(#゚;;-゚) 

(;,,^Д^) 「……え、いや、ないんですよね? そういうのじゃないんですよね??」

(#゚;;ー゚) 「……どうなんだろうね?」

( ,,^Д^) 


  【メモ】
   でぃさんはこう見えて冗談が言える。


 死んでから判明したお茶目な一面、そういうことにしておきます そういうことにさせてください

61 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 23:32:55 ID:BwRLmA9U0


(#゚;;-゚) 「でも、どっちにしても、あんまり意味はないと思う」

( ,,^Д^) 「え?」

(#゚;;-゚) 「この橋は、朝も見てたけど。べつに、何も、思い出しそうなことはなかったから」

( ,,^Д^) (ああ、そういえば……)

( ,,^Д^) 「……っていうか、そうだ。朝は普通に離れてたんだから、とり憑いてるわけがないじゃないですか。びっくりさせないでくださいよ」

(#゚;;-゚) 「……実際の怨りょ……幽霊というものは、おまえが抱いているイメージよりずっと自由に呪……動けるものだ、って、神様言ってたよ」

( ,,^Д^) 「これは本当に真剣なお願いなんですけど、わかりづらい冗談は控えてくれると嬉しいです」

(#゚;;ー゚) 

..........

62 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 23:36:40 ID:BwRLmA9U0

( ,,^Д^) 「しかし……ううん」

( ,,^Д^) 「橋から、手掛かりが得られないとなると……次、どこ行きます? スーパーとかですか?」

(#゚;;-゚) 「……たぶん、行ってもしょうがないと思うけど……」

( ,,^Д^) 「……うーん」

( ,,^Д^) (橋から落ちて死んだ。買い物の帰りに。橋から……)

( ,,^Д^) 

(#゚;;-゚) 

( ,,^Д^) 「……なんか、他によさそうなとこ、あります?」 

(#゚;;-゚) 「特には」

( ,,^Д^) 「ですかー……」

 はい、二手目にしてどんづまりです
 ちょっと神様、いるんだったらなんかヒントとかくれないんですか、と、神社のほうに怨嗟の念を……

63 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 23:37:56 ID:BwRLmA9U0

 ……あ、神社といえば


( ,,^Д^) 「……えっと、じゃあ、ちょっと野暮用というか……僕の、個人的な用なんですけど」

( ,,^Д^) 「少し、時間取ってもらっても、いいですか?」

(#゚;;-゚) 「きみの好きなようにしてくれれば」

( ,,^Д^) 「ありがとーございまーす。えっと……」


......

64 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 23:40:11 ID:BwRLmA9U0





(#゚;;-゚) 「やっぱり、お祓い?」

(;,,^Д^) 「違いますって。そういえば、近くまで来てたなって思い出したんで……」


 本日2回目、自鏡神社 
 地元の人じゃないと読めないこの名、どうも「みずがみ」って読むそうです
 「水神」が転じたとか聞いたような聞かなかったよな……というのは、どうでもよくて

65 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 23:41:01 ID:BwRLmA9U0


 民俗学的にどんな価値があるのかは知りませんが、普段はロクに人もいやしない、さびれた神社
 境内まで上がった僕は、とりあえず、いつものように 軒下を、覗き込んでみます


( ,,^Д^) 「……やっぱり、いませんね」

(#゚;;-゚) ?

( ,,^Д^) 「ああ、えっとですね。ここ、捨て猫だか野良猫だかわかんないですけど、とにかく猫が居着いてるんですよ」

( ,,^Д^) 「……いや、居着いてるみたいだったっていうか……ううん」

(#゚;;-゚) 

( ,,^Д^) 「……ちっちゃいのが一匹いましてね。まだ子供みたいで、ちょいちょい面倒見てたんですけど、最近見ないもんで」

(#゚;;-゚) 

( ,,^Д^) 「……飼えないのに、あんまりよくないってのはわかってるんですけどね。どうしてもというか……」

( ,,^Д^) 「……まあ、最近見かけないんで、ちょくちょく見に来てるんですよ。近くまで来たんで、ついでにと思って」

66 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 23:41:57 ID:BwRLmA9U0

 でぃさんは、何も言ってなかったんですけど
 視線が、どうも非難のように見えて 
 どうも、言葉尻が言い訳じみたものになってしまいます……

(#゚;;-゚) 「……なんで?」

( ,,^Д^) 「え?」

(#゚;;-゚) 「前から、気になってたんだけど。なんで、そういうことするのかな、って」

( ,,^Д^) 

( ,,^Д^) 「なんで、と、言われましても……(前から?)」

(#゚;;-゚) 「べつに、猫にエサあげても、恩返しとかしてくれるわけじゃないでしょ。猫、好きなの?」

( ,,^Д^) 「……ジブリでは猫の恩返しが好きです」

(#゚;;-゚) 「猫、好きなの?」

( ,,^Д^) (スルー)

67 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 23:42:24 ID:BwRLmA9U0

(#゚;;-゚) 

( ,,^Д^) 「……まあ、好きといえば、好きですけど」

(#゚;;-゚) 「なんで?」

( ,,^Д^) 「なんで」

(#゚;;-゚) 「なんで、好きなの?」

( ,,^Д^) 

( ,,^Д^) 「……」

( ,,^Д^) 「……かわいい、から……です、かね……」

 我ながら、クソみたいな回答だなって思いました
 いや、でも、なんで猫が好きかって……そんなこと聞かれてもですね……

(;,,^Д^) (気高さを感じるとか……? 気ままな生き方に憧れる……? いや、そういうのもなんかしゃらくさいような……)

(#゚;;-゚) 「そう」

 まあ、この話はそこで終わったのですが……。

68 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 23:46:23 ID:BwRLmA9U0

 ほんとに、ちょっとした用事だったので
 終わると、なんともいえない、気まずい感じの空気が、ただよいまして……

( ,,^Д^) 「……すいません、付き合わせちゃって。他に、どこか行きたいところとか、あります?」

(#゚;;-゚) 

(#゚;;-゚) 「どこかっていっても。他に、関係ありそうなところって、ある?」

( ,,^Д^) 「……戻ってきましたね……」

 二手目どんづまりからゲーム再開です
 どうしたものかと頭を書きつつ、とりあえず神社からは出ようと鳥居をくぐると



从 ゚∀从


( ,,^Д^) (……ん?)

69 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 23:47:10 ID:BwRLmA9U0

从゚∀从


( ,,^Д^)


从゚∀从


从;゚∀从 「……!」


 階段の下に、人影――を、見たのですが
 目が合った瞬間、なにか 驚いたような顔をして 走り去ってしまいました


( ,,^Д^) (……今のって……)

(#゚;;-゚) 「どうしたの?」

( ,,^Д^) 「あ、いえ、ちょっと……」



..............

70 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 23:49:04 ID:BwRLmA9U0


 結局、なにも思いつかなかったので 今日はもう帰ることになりました


( ,,^Д^) 「ただいま帰りましたー……」

(#゚;;-゚) オズオズ

 ……なぜか、というか しょうがなく、というか
 とりあえず、でぃさんも一緒に

( ゚д゚ ) 「おう、おかえり」

( ,,^Д^) 「あれ? いたんですか、父さん」

( ゚д゚ ) 「おう。たまには家族そろった夕食にしようと上司ぶん殴って定時退勤キメたら母さんが寄り合いだった痛恨の父だよ」

( ,,^Д^) 「お察しします」

( ゚д゚ ) 「痛み入る」

71 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 23:49:54 ID:BwRLmA9U0

( ゚д゚ ) 「晩飯はそこにロールキャベツあるから」

( ,,^Д^) 「え、ロールキャベツ。父さんそんなの作れましたっけ」

( ゚д゚ ) 「ふ。我が家のシェフは母以外にもいたということよ」

( ,,^Д^) 「本当は?」

( ゚д゚ ) 「母さんが寄り合い行く前に作っといてくれたらしい」

( ,,^Д^) 「なるほど」



( ゚д゚ ) 「……すまんな」 モグモグ

( ,,^Д^) 「?」 ムシャムシャ

( ゚д゚ ) 「いや、母さんが遅くなるなら、おまえも家に女の子のひとりやふたり、連れ込むチャンスだったろうになって」

( ,,^Д^) 

( ,,^Д^) 「何言ってんですか」

(#゚;;-゚) ?  フヨフヨ

 一応解説しておくと、今の間はべつに「こいつ何言ってんだ」という感情をマジで父に抱いたわけではなく
 「や、もう連れ込んでます」と答えるべきなのか、一瞬の迷いが生じただけです

72 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 23:50:34 ID:BwRLmA9U0

( ゚д゚ ) 「ま、そりゃそうか……。ちょっと遅くなるくらいじゃあな。母さんも父さんも両方一晩まるごと家空けるくらいじゃないと無理か」

( ,,^Д^) 「この話続くんですか?」

( ゚д゚ ) 「次の結婚記念日まで待ってくれ」

( ,,^Д^) 「旅行は別に好きにしてくれていいですけど……」

( ゚д゚ ) ムシャムシャ

( ,,^Д^) モグモグ


( ゚д゚ ) 「で、実際のところどうなんだ。誰かそういう人はいるのか?」

( ,,^Д^) 「まだこの話続くんですか?」

( ゚д゚ ) 「いやあ、父さんの把握しているおまえの恋愛事情は小学校の頃から更新されてなくてな……。高岡さんとこの娘さんとはどうなんだ? 高校でも仲いいのか?」

( ,,^Д^) 「……微妙です」

( ゚д゚ ) 「そうかあ、まあそんなもんか……。あそこも、大変らしいしな」

73 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 23:52:20 ID:BwRLmA9U0


( ,,^Д^) 「……? 大変?」

( ゚д゚ ) 「離婚するらしい」

( ,,^Д^) 

( ,,^Д^) 「……ハインの、今のお父さんって、たしか……」

( ゚д゚ ) 「ああ、再婚だ。……覚えてたのか、おまえが……中学のときだったか?」

( ,,^Д^) 「……たしか、そのくらいです」

( ゚д゚ ) 「……まあ、うまく行ってないとは聞いてたがな。俺も詳しいところは知らん」

( ,,^Д^) 「……」

 ……他人の家庭の事情、というやつを
 他人の家族の、口から聞くのは どんな気分なんだろうと

(#゚;;-゚) フヨフヨ

 少し、気になる食卓でした

74 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 23:53:21 ID:BwRLmA9U0
........


(#゚;;-゚) 「やさしいんだね、きみのお母さん」

( ,,^Д^) 「……へ? お母さん?」

(#゚;;-゚) 「ごはん、作っててくれた」

( ,,^Д^) 「ああ、そういう……」

 いや、てっきり「タカラくんのお父さん、結構アレな人なんだね……」とか言われるかと思ってたので
 母さん、ですか

(#゚;;-゚) 「……お父さんもいい人だと思うよ?」

( ,,^Д^) 「……へっ? あ、ああ、ええ」

(#゚;;-゚) 「わたしのお母さんは、よく言ってたから」

( ,,^Д^) 「……?」

75 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 23:54:09 ID:BwRLmA9U0




(#゚;;-゚) 「産まなきゃよかった、って」




( ,,^Д^) 

( ,,^Д^) 「……そう、ですか」


<タカラー? 風呂沸いてるけどどうするー?

(^Д^,, ) 「……父さん先でいいですよー!」

<マジか! つまり父はまだイケるということだな!

<『父さんの後はなんか脂とかホコリとか浮いてそうで……』なんて言われないフレッシュな四十路ということだな!


( ,,^Д^) 


(^Д^,, ) 「……やっぱり僕が先入っていいですかー!?」


<わかったー! 父はしばらく泣くから多少の長風呂は許すぞー!

76 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 23:55:19 ID:BwRLmA9U0


( ,,^Д^) 「……というわけですので、ちょっとここで待っててもらえると」

(#゚;;-゚) 「うん。わかった」


<ひぐッ……落ち着け……息子で……息子でよかったと……もし娘がいたら耐えられなかった……あれが娘の台詞だったら耐えられなかった……そう考えるべき……


( ,,^Д^)

(#゚;;-゚) 

(#゚;;-゚) 「いいお父さんだと、思うよ」

( ,,^Д^) 「……ありがとうございます」




―――――

77 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 23:55:53 ID:BwRLmA9U0


 なんの偶然か、わかりませんが

( ,,^Д^) 「あ」

(#゚;;-゚) 

( ,,^Д^) 「……よろしくお願いします」

(#゚;;-゚) 「……? よろしく」

 焼き芋の件の翌月、僕はでぃさんの隣の席になりました
 だから、というかなんというか


(#゚;;-゚) 「……あ」

( ,,^Д^) 「?」

(#゚;;-゚) 「……」

(゚;;-゚#) チラ

o川*゚ー゚)o 「それでさー」

ζ(゚ー゚*ζ 「えー?」

78 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 23:56:49 ID:BwRLmA9U0


(゚;;-゚#) 「……」

( ,,^Д^) 

( ,,^Д^) 「……あの」

(#゚;;-゚) …?

( ,,^Д^) 「教科書、忘れたんだったら、見ます?」

(#゚;;-゚) 


 あれ以降、僕はでぃさんと少し話をするようになりました



ミ,,゚Д゚彡 「はい、では今日の総合学習はグループごとに分かれてディベートをすることに……」


         【議題:目玉焼きにはソースか醤油か】


( ,,^Д^) 「……」 ← ソースグループ

<_;フ´ー`)フ 「……んでこんな心底どうでもいい討論やんなきゃなんねーの……?」 ←ソースグループ

79 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 23:57:20 ID:BwRLmA9U0


(-_-) 「議題じゃなくて、討論することそのものが大事って先生言ってたでしょ」 ←醤油グループ

<_プー゚)フ 「にしたってクソすぎんよ」 ←個人的には塩派

(#゚;;-゚)  ←醤油グループ

( ,,^Д^) 「……えっと、でぃさん」 ←個人的には醤油派

<_プー゚)フ ! 

(-_-) !? ←そもそも目玉より玉子焼き派

(#゚;;-゚) 「……?」 

( ,,^Д^) 「なにか、意見あります?」

(#゚;;-゚) 

(#゚;;-゚) 「……完熟か、半熟かのほうが、よかった」

<_プ−゚)フ

(-_-)

( ,,^Д^) 「あっはは。僕は半熟のを割って食べますねー」

(#゚;;-゚) 


...........

80 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 23:57:41 ID:BwRLmA9U0


(#゚;;-゚) 「……あ」 バッタリ

( ,,^Д^) 「おや」 バッタリ

(#゚;;-゚) 「……」

( ,,^Д^) 「……」

( ,,^Д^) テクテク

(#゚;;-゚) テクテク....

( ,,^Д^) (……もしかして、帰る方向一緒……?)

(#゚;;-゚) テクテク


 なんだかんだで、時々一緒に帰ったりも、するようになったりして
 ちょっとずつですが、会話をするようになりました


 ……ちょっとずつ、だったんです
 そんなに、ガッツリ話し込んだわけでは、なかったんです

81 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 23:58:21 ID:BwRLmA9U0
 … … …



(#゚;;-゚) ヨロヨロ

( ,,^Д^) 「……えっと、袋、持ちましょうか? 途中まで、ですけど」

(#゚;;-゚) 「……別に、いい」 フラフラ

( ,,^Д^) (……) 

 帰り道、でぃさんは時々スーパーに寄ると、大きな買い物袋を抱えて出てくることがありました
 袋から飛び出した長ネギなんかを見る限りでは、夕飯の材料のように思われたのですが

( ,,^Д^) 「持ちますよ、やっぱり」 ヒョイ

(#゚;;-゚) 「あ」

( ,,^Д^) テクテク

(#゚;;-゚)

( ,,^Д^) 「……料理とか、するんですか?」

(#゚;;-゚) 

(#゚;;-゚) 「……うん」

82 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 23:59:05 ID:BwRLmA9U0



( ,,^Д^) テクテク

(#゚;;-゚) 「お母さん、よく言ってるから」

( ,,^Д^) 「ふむ」


(#゚;;-゚) 「誰のおかげで食べてけてると思ってるんだー、って」


( ,,^Д^) 

 ……ここで、預かってたレジ袋を取り落とさなかったのは 
 我ながら、よく耐えたと思います

83 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 23:59:25 ID:BwRLmA9U0

(#゚;;-゚) 「お父さんが、いなくなってから、かな……」

( ,,^Д^) 

(#゚;;-゚) 「……おじいちゃんが、生きてたころは。食べ物は大事なんだって、人間食べなきゃ死ぬんだって、よく言われた。
      だから、確かにそうだな、って。私は、お母さんのおかげで食べていけてるんだから」

(#゚;;-゚) 「料理の手間くらいは、私がやらないと、ダメなんだなって。なるほど、って……」

                    (゚;;-゚#)
( ,,^Д^)

(゚;;-゚#) 「どうしたの?」

( ,,^Д^)

( ,,^Д^) 「……ああ……いえ……」


 ……ガッツリ、話し込んだわけでもないのに
 さらりと、なんでもないことのように飛び出す、その台詞から
 見えてくるものが、いろいろと、多すぎて―――



――――――

84 名前:名も無きAAのようです :2016/04/03(日) 23:59:54 ID:BwRLmA9U0




(#゚;;-゚)     ( ,,-Д-)   ブオオオオオオ         |洗面所|

(#゚;;-゚)     ( ,,^Д^)   ブオオオオオオ.....        |洗面所|

(#゚;;-゚)    (^Д^,, )   ブ......              |洗面所|


(^Д^,, ) 「……えっと、何してるんです?」

(#゚;;-゚) 「鏡、見てた」

 風呂上がり、僕が髪を乾かしている間、でぃさんはずっと
 ずっと、洗面所の鏡を見つめていました

(#゚;;-゚) 「……映らないけど。私は」

( ,,^Д^) 「まあ、幽霊ですしね……」 


(#゚;;-゚)  ジーーーーー   |鏡|


( ,,^Д^) 「……あの、ところで」

85 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 00:00:32 ID:6XMG5Ti20


(#゚;;-゚) ?

( ,,^Д^) 「えーと、もう夜も遅いですけど……」

(#゚;;-゚)

( ,,-Д-) 「……」

( ,,-Д-) 「……いえ。やっぱりなんでもないです」

(#゚;;-゚) 「そう」      |鏡|


 ……今晩、ずっとここにいるつもりなんですか? と
 聞こうと、思ったんですが

 それは、遠回しに『出ていけ』と伝えるも同然 そんな気がして
 そしてそれは、半分くらい『自分の家に行かなくていいのか』と、そう伝えることにもなりそうで

86 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 00:01:35 ID:6XMG5Ti20



                ( ,,^Д^)          |鏡|

(#゚;;-゚)           (^Д^,, )          |鏡|

               ( ,,^Д^)          |鏡|


( ,,^Д^)        |鏡|

 後ろを向けば、そこには、確かに でぃさんが、ふわふわと浮いていて
 けれど、鏡に映るのは僕ひとり


( ,,^Д^)


( ,,^Д^) 「僕が、見ているのは……」


(#゚;;-゚) ?


( ,,^Д^) 「……なんでも、ないです」



 ..............

87 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 00:03:11 ID:6XMG5Ti20

 ――と、いうわけで
 豆電球の薄闇の中、部屋の隅で控えめに浮いているでぃさんの視線を感じつつも(幽霊は寝ないらしいです)、どうにか眠りについた翌日


( ,,^Д^) 「……調べてみようとか、自分で言っといてなんなんですけど」

( ,,^Д^) 「これ以上、見に行くとこ……心当たりとか、あります?」

(#゚;;-゚) ウーン.....

(#゚;;-゚) 「特には」

(;,,^Д^) 「ですよねー……」

 自殺でもなければ、他殺でもなく、事故死とも言いがたい
 神様が言ったらしい、その言葉
 未だ工事中のファイナル橋を横目に見ながら、僕たちは登校していました

88 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 00:03:49 ID:6XMG5Ti20

( ,,^Д^) 「えっと、不謹慎だったら申し訳ないんですが」

(#゚;;-゚) ?

( ,,^Д^) 「……一見、事故死のように見える死の、その裏に隠された陰謀、真相……とか。
       そういうのを、突き止めろ……思い出せって言われたのかなあと、そう思ってたんですよ。話聞いたときは」

(#゚;;-゚)

(#゚;;-゚) 「私も。でも……」

(#゚;;-゚) 「……私が、ひとりで死んだだけだと……思うんだけどな」 ウーン....

( ,,^Д^) 「……」

(#゚;;-゚) 「……ちょっとずつ、思い出してきてる。溺れた覚えはあるの」

( ,,^Д^)

( ,,^Д^) 「あるんですか」

(#゚;;-゚) 「うん。苦しかった」

(;,,^Д^) (……反応、しづらい)

89 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 00:04:53 ID:6XMG5Ti20

..........


 学校に着いてからも、授業はほとんどうわの空でした

( ,,^Д^) (……幽霊は普通人間には見えない、それを利用してひとり見つけろ……)

( ,,^Д^) (……そっちの方面から行ってみるべきですか?)

( ゚∋゚) 「『国境の長いトンネルを抜けると、そこは――』……この一文は、知ってる人も多いんじゃないかと思う。これは――」

( ,,^Д^) (ところで、でぃさんどこ行ったんでしょう)

 でぃさんは、3時間目くらいまでは、ぼうっと教室の隅のほうに浮かんでいましたが
 よっぽど暇だったのか、4時間目になると、教室の壁をすり抜けて、どこかへ行ってしまいました いや っていうか壁抜けできたんだ……

( ,,^Д^) (……なんで、僕にだけ見えるのか)

( ,,^Д^) (……)

( ,,^Д^) (……まあ……理由なんて……)


..................

90 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 00:05:49 ID:6XMG5Ti20


 ……と、いうわけで、です
 昼休み、僕はふたつ隣のクラスまで足を運ぶことにしました


( ,,^Д^) 「あ、素直さん。ハイン、いますか?」

o川*゚ー゚)o 「ハイン? ハインは……」

o川*゚ー゚)o 「……いないよ、今は」

( ,,^Д^) 「そうですか……」

 まあ、収穫はなかったんですけど

( ,,^Д^) (……どこ行きゃいいんだろう……)

(#゚;;-゚) 「……高岡さん、探してるの?」 スィーッ

(;,,^Д^) 「おわ……!! 急に出てくるのやめてくださいよ……」

( ,,^Д^) 「……ハインは、まあ。ちょっと聞きたいことがありまして」

(#゚;;-゚) 「だったら、さっき歩いてるの見た」

(;,,^Д^) 「え!? いや、見たってそんな」

91 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 00:07:06 ID:6XMG5Ti20


(#゚;;-゚) 「さっきの授業中、暇だったから校舎の外フラフラしてたら、見た」

( ,,^Д^) 「(あ、やっぱり暇だったんですね……)見たっていうと、どのあたりで?」

(#゚;;-゚) 「体育館のほう、行ってたと思う」

( ,,^Д^) 「ふむ……」


 ……とは言ったものの、体育館には見慣れた顔しかいませんでした


( ´_ゝ`) 「あれ、どした? おまえも参加か?」

( ,,^Д^) 「いえ、僕は別に……あの、ハイン見てません?」

( ´_ゝ`) 「高岡……? 見てないが。なんで?」

( ,,^Д^) 「なんでと言われると……まあ、いろいろ」

 エネルギーの有り余った男子たちが、Tシャツ姿でバスケに興じていただけで
 ぴしゃり、と体育館の戸を閉めて、さんさんと照る太陽の下 ひとり、腕を組む僕

92 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 00:08:09 ID:6XMG5Ti20

( ,,^Д^) (……)


「いたよ、高岡さん」 
      ヌッ  (#゚;;-゚)(;,,^Д^) !?
                  「おわぁ!?」


(^Д^,,;) 「だっ、から変にビビらせるのやめてくださ……」

(#゚;;-゚) 「こっち。裏」

(;,,^Д^) 「……」

 すぃー、と涼しげにフロート移動するでぃさんを、小走りに追いかけます
 向かう先はどうやら、体育館の裏手――

(#゚;;-゚) 「ほら。あそこ」

( ,,^Д^) 「あそこ、って……」


( ,,^Д^)


 体育館の外周沿いに歩いて、角からひょっこりと顔を出した僕が、目にしたもの
 それは――

93 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 00:08:33 ID:6XMG5Ti20

( ,,^Д^)


( ,,-Д-) 

( ,,-Д-) 「……あの。でぃさん」

(#゚;;-゚) 

( ,,-Д-) 「……ずっと、言おうと思ってたことが、あるんですけど」

(#゚;;-゚)  「……?」

( ,,^Д^) 「でぃさんは、道連れを探しているんですよね。地獄へ連れていく道連れを」

(#゚;;-゚) 「……うん」

( ,,^Д^) 「……」

( ,,^Д^) 「……じゃあ……」

94 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 00:09:03 ID:6XMG5Ti20



( ,,^Д^) 「僕を、連れて行ってもらえませんか?」



(#゚;;-゚) 

(#゚;;-゚) 「どうして」

( ,,^Д^) 「……いや、まあ、それは……」



从 ゚∀从 「――何見てんの?」


( ,,^Д^) 「……」

95 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 00:09:33 ID:6XMG5Ti20


( ,,^Д^) 「……なんせ、僕……これから……」


( ∵)

( ´ー`)

( <●><●>)



(;,,^Д^) 「……死ぬかも……しれないんで……」



(#メ..A#メ#)



 ――――トンネルを抜けると、そこは魔窟であった。


 ガラの悪い男子二人と、なぜか私服の男子ひとり(目力がすごい)
 計三人の男子が、ズタズタになった人間サンドバッグを取り囲んで、立っていました
 三人とも、拳から血を流しているように見えます 練習熱心ですね


 ……いや、まあ、殴った本人の血じゃ、ないですよね……

96 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 00:10:23 ID:6XMG5Ti20


( ´ー`) 「なにこいつ? 知り合い?」

从 ゚∀从 「あー、D組のやつだよ。どーでもいー」

 そして、その三人+サンドバッグ一個を、遠巻きに眺めているハイン
 ……遠巻きに眺めている、と、思うんですが 気のせいですかね
 ハインの右こぶしと、あと靴のつま先にも、どうも、赤黒いものがこびりついているように見えますね……


(#メ..A#メ#) 「……ぅ……」

(;,,^Д^)

 いたたまれなくなって目を逸らすと、ちょうど 物言わぬサンドバッグ氏と、視線がかち合いました
 いや、まぶたがめちゃくちゃ腫れてたので、あんまり目が合った実感はないのですが――

(;,,-Д-) 

( ,,-Д-) 「あー、えっと、ですね」

( <●><●>)

( ,,^Д^) 「やめろ! ……とまでは言いません! ですから、今日のところは一旦お開き、くらいのところで手を……」

97 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 00:11:00 ID:6XMG5Ti20







( ,, Д ) ズシャァ

( ∵) 「なあ、ほんと何なのこいつ?」

从 ゚∀从 「中学んときのバカだよ」

( <●><●>) 「金、持ってる?」

从 ゚∀从 「そこそこ持ってると思う」

 完全にサンドバッグ追加納入の流れでした あ、鼻血……
 鼻っ面を抑えてうずくまる僕に、まず、最初に近づいてきたのは

从 ゚∀从 「おまえ、何なの? いまさら正義の味方気取り?」

 意外なことに、というか 好都合なことに、というべきか ハイン

98 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 00:12:06 ID:6XMG5Ti20


( ,,^Д^) 「……」

( ,,-Д-)

( ,,-Д-) 「……いやあ……正義、ってわけじゃ、ないんですけど……」

( ,,^Д^) 「……3か月前の……あれが、結構、こたえたもんですから」

从 ゚∀从


( ´ー`) 「3か月? なんだそれ」

( ∵) 「わかんね」


 しばらく見ない間に、ハインは随分と目つきが悪くなっていました
 明らかに眼光が鋭くなっていて、眼の下のクマもひどい

99 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 00:12:49 ID:6XMG5Ti20


 ……そんな目に、何が見えているのか
 ほとんど、勘ではあるんですけど 昨日、神社で見たとき、気になったこと――
 確かめたいことがありました

从 ゚∀从 「……何言ってんだ、おまえ」

( ,,^Д^) (――でぃさん!)

从 ゚∀从 「?」

 小声で、でぃさんに呼びかけます 確かめたいのは、ただひとつ
 ――ハインに、彼女が見えるかどうか

 ……その、合図のつもりだったんですが



    \パン!/


(;,,^Д^) 「!?」

100 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 00:13:09 ID:6XMG5Ti20

( ´ー`) 「あ? なんだ今の……」



    \パン!/                         \メキ......../
              \パン!/ 
  \ミシッ.../
                                   \パン!/
    \パン!/
            \パン!/              \パ―――゚ン!/


( ´ー`)

( ∵) 「……え、なにこの音。どっから鳴ってんの? は?」


 \パン!/               \パン!/
           \ガァン!!!/      
  \パン!/       \パン!/
                        \コロス...../
 \パン!/
                \シネ..../         \ドンドンドン/


(;,,^Д^)

(;,,^Д^) (……ら、ラップ現象……?)

101 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 00:13:43 ID:6XMG5Ti20


( ;<●><●>) 「え……な、なんですかこれ。心霊……心霊現象!?」

从 ゚∀从 「心れ……」

从 ゚∀从

从;゚∀从 「―――――!!」

( ,,^Д^) (!)

 ふっと、僕のほうを見たハインが 一瞬
 一瞬、なにか信じられないものを、見たような表情を――

(#゚;;-゚) 「今のうち」

(;,,^Д^) 「お……っ! あ、はい!」 ダッ


 ――浮かべたのですが、僕のほうもわりとそれどころではなくて それどころではなく顔面が痛くて
 後ろから聞こえたでぃさんの声に従うまま 必死に身を起こして、その場から逃走しました


..........

102 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 00:14:15 ID:6XMG5Ti20

 で、どこまで逃げたでしょう
 無我夢中にひたすら走って、校舎の中へ戻り、階段を駆け上がって
 ……自分でもなぜこんなところに来たのかわかりませんが、とりあえず僕は屋上のドアを蹴り開けると、そのまま大の字にぶっ倒れました


(;,, Д ) 「……はー、はー、はー……」

(;,, Д ) 「……あ、危なかった……」

(#゚;;-゚)

(;,, Д ) 「……あれ、やったの、でぃさん、ですか……」

(#゚;;-゚) 「うん。やってみたら、できた」

(;,, Д ) 

(;,, Д ) 「やってみたら」

(#゚;;-゚) 「うん」

(;,, Д ) 「……世に言う心霊現象も、案外、そのくらい気軽な感じで、起こってるのかも、しれませんね……」

103 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 00:15:18 ID:6XMG5Ti20

 それだけ言って、僕はしばらく呼吸を整えることに専念しました
 どうにかサンドバッグ二号は回避できましたが、そういえば、一号の彼はあの隙に逃げ出すことができたのでしょうか

( ,, Д )

( ,, Д ) 「……でぃ、さん」

 ?

( ,, Д ) 「……」

 ……恨んでは、いませんか、と
 聞こうとしたのに、どうしても
 どうしても、その先を言うことが、できなくて……



――――――――

104 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 00:15:56 ID:6XMG5Ti20



 何がきっかけだったのか、僕にはわかりません
 もしかしたら、理由なんてなかったのかも たまたま機嫌が悪かっただけ、とか
 ただ、覚えているのは

 明確に、空気が悪くなったのは、たしか――修学旅行の、班決めだったこと


<_フ´ー`)フ 「ニータ校は東京行くらしいんだよな。俺もディズニーとか行きたかったー」 デローン

(-_-) 「ファイナルは北海道らしいから、イメージはあんまり変わんないね」

<_フ>ー<)フ 「やだやだやだー! 俺も男女混合ディズニーで甘いひと時を過ごしたいー!」

(-_-) 「ナイトスキーは女子誘ってもいいって言ってたじゃない。誰か誘えば?」

<_フ´ー`)フ 「サシで誘えるレベルの人はいないから班に賭けてたのー……」

(-_-) 「んなこと言うやつは結局どこ行ってもダメだと思うよ」


 僕ら、ソーサク高校の修学旅行は、毎年長野でのスキー研修と決まっていまして
 ……これが、男女別だったんですね

105 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 00:16:23 ID:6XMG5Ti20


(^Д^,, ) 「……」 チラッ


(#゚;;-゚) ポツーン


 ……遠足か何かであれば、まだしも
 修学旅行、それも男女別となると、さすがにどうしようもなくて


ミ,,゚Д゚彡 「……」


ミ,,゚Д゚彡 (なあ、高岡)

从 ゚∀从 「ン? なに先生」

ミ,,゚Д゚彡 (……でぃ、おまえの班に入れてやってくれないか)

从 ゚∀从 (……えぇー……?)

ミ,,゚Д゚彡 (えーって言うな、えーって)

从 -∀从 (……あーあー、はいはい。わかったわかった)

106 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 00:16:52 ID:6XMG5Ti20

从゚∀ 从 「……おーい、でぃ。でぃさーん?」

(#゚;;-゚) ?

从゚∀ 从 「班。あたしらんとこ、来る?」

(#゚;;-゚)

(#゚;;-゚) 「うん」

从 ゚∀从 「はい、了解。せんせー、決まったよ」


( ,,^Д^) 「……」



 ……ハインは、まあ 多少ガラが悪くはあっても なんだかんだと、クラスでそこそこ良い位置にいたので
 女子の中でも、中心的な位置にいた生徒でしたから 先生も、それに任せたんでしょう

 ホームルーム終了、ギリギリのタイミングになって、でぃさんはハインの班に拾われ
 とりあえず、これで収拾はついたと そう言わんばかりに
 チャイムの音とともに、先生は教室を出ていきました

107 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 00:17:13 ID:6XMG5Ti20

(-_-) 「……で? タカラは?」

( ,,^Д^) 「……はい?」

(-_-) 「いや、ナイトスキー。誰か誘ったりすんの?」

<_フ´ー`)フ 「こいつにそんな相手いるわけないじゃーん。俺にすらいないのに……」

<_プー゚)フ 「……いや、あれか。でぃさん?」

( ,,^Д^)

( ,,^Д^) 「はい?」

<_プー゚)フ 「や、最近わりと話しかけてるみたいだから」

(-_-) 「あ、そーいえば……。この前、一緒に帰ってるの見たね」

<_プー゚)フ 「……あー。狙ってたりすんの?」

( ,,^Д^) 「……いや、別に、そういうわけでは……」

108 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 00:17:49 ID:6XMG5Ti20





从 ゚∀从 「あー。マジ災難」




( ,,^Д^)


o川*゚ー゚)o 「まーまー」

从 -∀从 「修学旅行でまで貧乏クジかよ。なんであたしばっかこうなんのかね」

o川*゚−゚)o 「ちょっとちょっとー。一応あたしもいるんですけどー?」

从 ゚∀从 「……はぁ」 チラリ

(#゚;;-゚)

109 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 00:18:09 ID:6XMG5Ti20


从 ゚∀从 「……いーかげん、自覚してほしいんだけどなァ。みんなから、嫌われてる、ってさ」


(#゚;;-゚) 

o川*゚ー゚)o 「さすがにやめたげなよー。かわいそーでしょ、聞こえてなかったみたいだからいいけど……」 ヒソヒソ

从 ゚∀从 「いーや。あーいうのは聞いてないフリして実際は全部聞いてるやつ。そーいうとこが一番ウザい」

从 ゚∀从 「っていうか、あいつ修学旅行行けんの? ちゃんと金払えんの?」


(#゚;;-゚) 


<_プー゚)フ 「……」

(-_-) 「……ふぅ」

( ,,^Д^) 


―――――――――

110 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 00:18:37 ID:6XMG5Ti20



(#゚;;-゚) 「……どうしたの?」

( ,,^Д^) 「……いえ。なんでm……」


<キーン、コーン、カーン、コ――――――ン………


( ,,^Д^) 


( ,,-Д-)っ■ 「……5時間目、パスしていいですかね……」

 スマホで時間を確認すると、ちょうど5時間目が始まったところで
 ついでに、メールも一件……

( ,,^Д^)っ■

 メー……ル?

114 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:17:45 ID:6XMG5Ti20


 ……呼び出されて向かった神社の、鳥居のあたりに
 ハインは、ひとりで立っていました

( ,,^Д^)

从 ゚∀从 「……んだよ?」

( ,,^Д^) 「いや、……」

( ,,^Д^) 「……何してんですか?」

从 ゚∀从

从 ゚∀从 「別に。なにもしてねえ」

( ,,^Д^) 「なにもしてねえって……」

从 ゚∀从 「……うるっせえな。そこの猫みてーな銅像がブサイクだなあって見てただけだろうがよ」

115 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:18:19 ID:6XMG5Ti20

( ,,^Д^) 「(銅……?)……ネコ?」







( ,,^Д^)

( ,,^Д^)「……こういうの、ふつう狛犬って言うんじゃ……」

从 ゚∀从 「あ? 犬?」

116 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:18:43 ID:6XMG5Ti20

从 ゚∀从 「……」





从 ゚∀从 「……犬では、ねえだろ、まあ」

( ,,^Д^) 「……」

从 ゚∀从 「……」


 神社の階段をのぼりながら
 そんな、雑談ともいえない雑談を交わします

117 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:19:20 ID:6XMG5Ti20


从 ゚∀从 「しかし、まさか通じると思ってなかった。おまえ、メアドずっと変えてねーのな」

( ,,^Д^) 「……」

( ,,^Д^) 「なんで、メールなんか――」




<ウゥ―――――z__________ゥゥウウウウ―――――……..........



从 ゚∀从 そ  ビクッ

( ,,^Д^) 「おわっ」



<前の車、車を左側に寄せて止まりなさい。前の車止まりなさい、道路の左側に車を寄せて――……

118 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:19:51 ID:6XMG5Ti20


从 ゚∀从

( ,,^Д^) 「……信号無視でも、したんですかね」

从 -∀从 「……ちっ」

( ,,^Д^) 「……なにビビってんですか。ガラでもない」

从 -∀从 「うるせー、よッ」 ガスッ

 照れ隠し(?)に、ハインが足元の石を蹴り上げると
 それは、なぜか鳥居のほうへ飛んでいって――


ガスッ


从 ゚∀从

( ,,^Д^) 「……直撃ですか。バチ、当たりますよ」

从 ゚∀从 「……うるせえよ」

 境内まで、登ってくると 敷かれた砂利を踏みしめながら
 ハインは、ゆっくりと振り返りました

119 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:20:14 ID:6XMG5Ti20


从 ゚∀从 「……で?」

( ,,^Д^) 「で、って……」

从 ゚∀从 「おまえ、何しにきたの?」

( ,,^Д^)

( ,,^Д^) 「何、って、呼んだのそっちのほうじゃ……」

从 ゚∀从 「いいよ、いちいちそーいうの。昼休みの話。他にねーだろ」

( ,,^Д^) 

( ,,-Д-) 「……」

 何を、どこまで話せばいいか
 どこから、話せばいいのか いまいち、考えがまとまらなくて

120 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:20:34 ID:6XMG5Ti20


( ,,^Д^) 「……こっちが聞きたいですよ。何してたんですか、あれ。あのガラの悪い方々は?」

从 ゚∀从 「トモダチに決まってんだろ? 見てわかんねーかな、そのくらい」

( ,,^Д^) 「去年は、もう少しソフトな感じでしたから」

从 ゚∀从 「去年も、言ったと思うんだけど?」

( ,,^Д^) 「……」

( ,,^Д^) 「……ええ。言ってたかもしれませんね」

121 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:20:55 ID:6XMG5Ti20





――――――――――




( ,,^Д^) バシャバシャ

 授業と授業の合間の、ちょっとした休憩時間
 別になんてこともなくて、ちょっとトイレに行っただけ、だったんですが


<ハハハハハハハハハ…….......

( ,,^Д^) (……?) フキフキ

 隣の女子トイレから、妙に甲高い声が聞こえてくることがありました
 ……1回目は、いつでしたかね

( ,,^Д^) ヒョコッ

122 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:21:19 ID:6XMG5Ti20



从 ゚∀从 スタスタ

( ,,^Д^) (……)


 だいたいの場合 まず、ハインと、その他女子の何人かが、トイレから出てきて
 その、少し後に――


|;;#゚;;-゚| 「……」


 びしょ濡れのでぃさんが出てくる、というパターンでした


(;,,^Д^) 「あ……」

|;;#゚;;-゚| スタスタ

(;,,^Д^) 「……」



 … … …

123 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:21:49 ID:6XMG5Ti20

 … … …



(゚、゚トソン 「私は今、悩んでいます。自分が、この先教師を続けていていいのか。とても困っています」

<_プー゚)フ 「俺も困ってます。とても困ってます」

(゚、゚トソン 「何度……何度、補習を受けさせても、次のテストになるとまたこうして劣悪な点を取る……」

(゚、゚トソン 「もはや、私の美貌に魅せられ、私の補習を望んでいるとしか考えられない。私は、教師としてどうあるべきなのか……」

<_;フ>ー<)フ 「……タカラぁー! 俺もうこの先生やだよぉー!! 助けてくれぇぇー……」 ズルズル

( ,,^Д^)ノシ


(^Д^,, ) (……しばらく終わんないでしょうし、今日はひとりで帰りますか……) スタスタ

(^Д^,, )

124 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:22:12 ID:6XMG5Ti20


(#゚;;-゚)


(゚;;-゚#) 三 (#゚;;-゚) キョロキョロ

(#゚;;-゚) 「……」


( ,,^Д^) (……あっ)

( ,,^Д^) (……靴……片方しか……)


(#゚;;-゚)


( ,,^Д^)


( ,,^Д^) 「……あの」

(#゚;;-゚)

(#゚;;-゚) ?

( ,,^Д^) 「……さが、すの……」

(-_-) 「――あ、タカラだ。エクスト……」

(-_-) 「は……」


(#゚;;-゚)


(-_-;)

125 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:22:38 ID:6XMG5Ti20


(;,,^Д^) 「……え、っと。エクストは、補習です。数学の」

(-_-;) 「あ、そう……。で……」

(-_-;)


(#゚;;-゚)


(;,,^Д^) 「……」

(-_-;) 「……帰ろ、っか。うん」

(;,,^Д^) 「……」

(;,,^Д^) 「そう……です、ね……」



(#゚;;-゚)



   …………

126 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:23:04 ID:6XMG5Ti20

   …………




 ……そう、たしか、去年もでした
 たしか、去年も、この神社で……ハインと、ばったり会ったんです
 学校からの、帰り道に  それで――――


( ,,^Д^) 「ハインは……その」

( ,,^Д^) 「でぃさんのことが、嫌いなんですか?」

从 ゚∀从 「嫌い? ……」

从 -∀从 

从 ゚∀从 「……べつに。嫌いではねーよ」

( ,,^Д^) 「……じゃあ、どうして」

127 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:23:30 ID:6XMG5Ti20


从 ゚∀从 「イラつくだけだよ。見てて」

( ,,^Д^) 「……そんな理由で……」


从 ゚∀从 「おまえだって、うぜーって思うとき、あるんじゃねーの?」


( ,,^Д^)


从 ゚∀从 「つきまとわれてるらしいじゃん、最近」


( ,,^Д^)

( ,,^Д^) 「つきまと、われてるって、そんな……」

从 -∀从y 「……優しくするだけしてやんのはいいけどよ。見てらんねーんだよなあ……」

从 -∀从y‐ シュボッ

( ,,^Д^) (……煙草)

从 -∀从y‐~~

128 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:23:53 ID:6XMG5Ti20


从 -∀从y‐~~ 「……どっちだっけ? アレルギーなの」

( ,,^Д^)

( ,,^Д^) 「……は?」

从 -∀从y‐~~ 「ペニサスさんと、ミルナさん。猫アレルギーなの、どっちだったっけ」

( ,,^Д^)

( ,,^Д^) 「……母さんの、ほうです」

从 -∀从y‐~~ 「中学んときだよな。おまえが猫拾ってきたの」

( ,,^Д^)

从 -∀从y‐~~ 「飼えもしねえくせに、エサやって、遊んでやって、懐かれて……」

从 -∀从y‐~~ 「……犬でもねえのにさあ、家までついてきたんだよな。そうだよ、元飼い猫。捨て猫。段ボールごと、おまえがここまで持ってきたやつ」

( ,,^Д^) 

从 ゚∀从y‐~~ 「あれ死にかけてたのなんでだっけ? 風邪? 栄養失調だっけ?」

( ,,^Д^) 

从 ゚∀从y‐~~ 「見てらんねえって言ったのは、おまえだよ」

129 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:24:32 ID:6XMG5Ti20


( ,,^Д^) 「……元気に、してますか?」


从 -∀从y‐~~ 「死んだ。高校上がる前に」


( ,,^Д^)


( ,,^Д^) 「そう、でしたか」

从 ゚∀从y‐~~ 「……知らねーんだもんなあ。見にも来ねえんだから」


( ,,^Д^)


从 ゚∀从y‐ 「17だぜ、あたしら。いい加減にしようや。テメーのことくらい、テメーでどうにかできなきゃ話になんねー」

从 ゚∀从y‐ 「この歳でああいう振る舞いしかできねーんなら、目つけられる理由はあるってことだよ」

(;,, Д ) 

(;,, Д ) 「……それ、でも」

从 -∀从 「また、あたしが後始末かよ?」

(;,, Д ) 「……」



―――――――――

130 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:26:05 ID:6XMG5Ti20

―――――――――



( ,,^Д^) 「……去年は、あそこまでひどくなかったでしょう。血が出るとこまでは行ってなかった」

从 ゚∀从 「あたしもいろいろ進化するってことかな」

( ,,^Д^) 「……進化」

从 ゚∀从 「なに? やっぱ正義に目覚めた系? 急に――」

从 ゚∀从 「……って、ああ、そうだ。3か月前って、あれか。あいつ死んだんだっけ!」

( ,,^Д^)
 
从 ゚∀从 「って言われてもな。あれ事故って言ってなかった? クラス変わってからは、あたし別になんにもしてないし」

( ,,^Д^) 「……まあ、そうですね」

 そう
 三年になってから、ハインは僕及びでぃさんとは違うクラスになりましたし、それ以降は
 ターゲットが、あのサンドバッグ君に変わったという ただ、それだけの話だとしても
 でぃさんがいじめられることは、なくなった、それは事実です

131 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:26:35 ID:6XMG5Ti20



 事実です、が
 どこか、敬遠してしまうような
 どこか、距離を置いてしまうような

 そんなオーラを彼女に纏わせたままなのも、また、事実


( ,,^Д^) 「……申し訳なかったとか、思ってないんですか」

从 ゚∀从 「だから、事故だろ? 警察が言うんならそれで間違いねーんだろ。ちゃんと調べてから言ってんだろうし」

( ,,^Д^) 「……だから」

从 ゚∀从 「……なに? 自殺ってことにしたいの? は、なんで変な時間差つけんだよ」


(#,,^Д^) 「……事故だったとしても!」


从 ゚∀从 「おまえさ」

132 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:26:56 ID:6XMG5Ti20





从 ゚∀从 「それ、誰に言ってんの?」





( ,,^Д^)



从 ゚∀从



<……ニャーゴ



从 ゚∀从 「!」

(^Д^,, ) 「ん?」



( ФωФ) ……ナーゴ


(^Д^,, ) 「あ……」

133 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:27:18 ID:6XMG5Ti20


 空気が、凍った 次の瞬間
 神社の軒下から聞こえてきた、小さな鳴き声――

 猫、でした


从 ゚∀从 「……まーだ猫いんのかよ、この神社。っていうかアレ? もしかしておまえまだエサやったりしてんの?」

(^Д^,, ) 「……」


( ФωФ) ……


 軒下から、こちらをうかがっているものの 近づこうとはしない猫
 それが癇に障ったのか、ハインは足元の砂利を拾い上げると、それを力いっぱい――


从 ゚∀从 「……愛想ねえなあ。ムカ、つく、猫――」

从 ゚∀从 「――っと!」

134 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:27:46 ID:6XMG5Ti20




 ガコン!



( ;ФωФ)  ナ"ッ"!?


ミ シュッ


 投げた、のですが 見事にハズレ
 しかも、変な跳ね方をした石が、賽銭箱にオールインするというミラクルまで見せてくれました


|軒下|<……


从 ゚∀从 「あー……。っちゃー」

( ,,^Д^) 「……ほんとに、バチ当たりますよ」

从 ゚∀从 「……かもね。どーも、猫には嫌われるんだよなあ。高校上がってから、さ」

( ,,^Д^) 

 嫌味のつもりなのか、なんなのか
 それだけ言い捨てると、ハインは歩き出し

135 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:28:32 ID:6XMG5Ti20

从 ゚∀从 「じゃ、タカラ。また、明日――」

从 ゚∀从 「……って、明日も会えると思っていいのか? ん?」

( ,,^Д^) 「……」


 ニタニタと、笑いながら 去っていきました



( ,,^Д^)


( ,,-Д-) 「……でぃさん」

(#゚;;-゚)  ヌッ

( ,,^Д^) 「……すいません。聞き苦しい話を」

(#゚;;-゚) 「いいよ、別に。私は、気にしてないから」

 その台詞を言う表情は、いつも通りのものでしかなくて
 本当に、気にしてなさそうで

( ,,^Д^) 「見えてるかどうか、聞こうと思ったんですけど……。結局、聞けてませんね」

(#゚;;-゚) 「……ううん。たぶん、見えてないと思うから」

( ,,^Д^) 「……でしょうね」

 会話の間、ずっと、でぃさんはここにいました
 でも、ハインには、視線を向ける様子すら、見られなくて

136 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:28:55 ID:6XMG5Ti20




( ,,^Д^) (……)


< ニャーゴ……


( ,,^Д^) 



(^Д^,, ) 


( ФωФ) ナーゥ....


 おそるおそる、と言った感じで
 さっき軒下にいた小さな猫が、僕の足元に駆け寄ってきました

137 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:29:26 ID:6XMG5Ti20



( ,,^Д^) 「……」 ナデナデ

( *ФωФ) ナー......


(#゚;;-゚)


 黙って、その背を撫でている僕を
 でぃさんは、じっと見つめていて、そして――

138 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:29:47 ID:6XMG5Ti20







(#゚;;-゚) 「……よかったね、見つかって」







( ,,^Д^)





( ,,^Д^) 「……はい?」




(#゚;;-゚) ?


( ,,^Д^) 「……見つかった、って」

(#゚;;-゚)

(#゚;;-゚) 「……世話してたけど、最近見てなかった、って。昨日も、この神社で……」

139 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:30:12 ID:6XMG5Ti20










( ,,^Д^) 「この猫がそうだって、言いましたっけ?」











(#゚;;-゚)



( ФωФ) ナーオ?



 言ってから
 言ってから、そう不自然なことではないかもしれない、と 自分で思い直しました

140 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:30:49 ID:6XMG5Ti20




( ,,^Д^) 『……ちっちゃいのが一匹いましてね。まだ子供みたいで、ちょいちょい面倒見てたんですけど、最近見ないもんで』



 模様とか、品種とか、そういう特徴への言及は、ありませんでしたけど
 まず、小さいし 僕に、自分からすり寄ってくる懐き方
 この猫がそうなんだと、推測するくらいの材料はあった――

 そういう答えが、返ってくるものだと


(#゚;;-゚) 「……言って、なかったけど。でも……」





(#゚;;-゚) 「その猫、前に一回、溺れてたことあったでしょ?」





( ,,^Д^) 「……え?」

141 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:31:19 ID:6XMG5Ti20


(#゚;;-゚) 「……溺れ……」




(#゚;;-゚) 「……」





(#゚;;-゚) 「……そうじゃなくて。それじゃなくて……」







( ФωФ) ?





(#゚;;-゚)

142 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:31:41 ID:6XMG5Ti20














(#゚;;-゚) 「この猫が、溺れてた」











(#゚;;-゚) 「あの日。あの川で」

143 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:32:03 ID:6XMG5Ti20









 でぃさんが、パチンと ……幽霊ですから、実際にそんな音がしたわけじゃないですけど
 そのくらい勢いよく、手を叩きました



(#゚;;-゚) 「あの日、あの日は、……冷蔵庫に何もなくて、何やってるのって、お母さんが叫んで、……それで、買いに行った。台風だったけど」


(#゚;;-゚) 「で、ファイナル橋を渡る途中で……この猫が、流されてるのが、見えて」


(#゚;;-゚) 「助けなきゃって、思ったから。私は、そのまま、飛び込んで……」



( ,,^Д^)



( ,,^Д^) 「……え」

(;,,^Д^) 「え、じゃあ、その……」

144 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:32:37 ID:6XMG5Ti20






(;,,^Д^) 「……川に落ちた猫を助けるために、自分も飛び込んで、それで溺れ死んだ……?」






(#゚;;-゚) 「うん。そう」


(#゚;;-゚) 「思い出した……。そうだ、そうだった。猫がいたんだ」


( ,,^Д^)


(;,,゚Д゚) 「そっ、……そ、それ、それ!」

(;,,゚Д゚) 「事が、事なら、それ……笑い話ですよ、それ……!!」

(#゚;;-゚) 「……そう、かも」

(;,,^Д^) 「……」

(;,,^Д^) 「……なのに、ほんとに死んじゃったもんだから……笑えもしない……」

145 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:33:09 ID:6XMG5Ti20


(#゚;;-゚)


(;,,^Д^)


 ……こんなところで、死の真相が?
 こんなところから、こんな真相が?

 随分と、混乱していましたが、しかし
 しかし、それでも――


(;,,^Д^) 「……いや、いや、でも。答えになってない」

(;,,^Д^) 「それは、別に……この猫が、僕の世話してる猫だとわかってた、っていう理由には……ならないんじゃ」

( ФωФ) ?


 ……記憶の混同とか、そういうのでしょうか
 この猫が溺れてるのを見たとかそういうのは、今、今になって思い出したことが、口をついて出ただけで
 別に、僕の質問への答えではないとか、そういう……

146 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:33:44 ID:6XMG5Ti20

(#゚;;-゚) 「……あ、そうだった。そういう話だった……」



(#゚;;-゚) 「……うん。それは、ずっと前から知ってた。2年のときから」



( ,,^Д^)



(#゚;;-゚) 「見てた、から。きみが、この猫と遊んでるところ」



( ,,^Д^)







从 ゚∀从 『おまえだって、うぜーって思うとき、あるんじゃねーの?』






从 ゚∀从 『つきまとわれてるらしいじゃん、最近』






( ,,^Д^)


(;,,^Д^) 「え……?」

147 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:34:23 ID:6XMG5Ti20


(#゚;;-゚) 「……一緒に、帰ってるときじゃなくても。たまに、帰りに、見かけること、あったから。そのときに……」


(#゚;;-゚) 「この人、猫にも優しいんだなって。思ってた」



( ,,^Д^)





 ―――自殺、他殺、事故死、どれにも当てはまらないようで、




 ――――――その、どれにも当てはまる。





( ,,^Д^)


( ,,^Д^) 「……じゃ、あ」

148 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:35:40 ID:6XMG5Ti20





( ,,^Д^) 「でぃ、さんは、この猫が、僕が世話をしている猫だと、知っていて……」




( ,,^Д^) 「……その猫が溺れているのを見て、助けようと、飛び込んで、死んだ……?」



(#゚;;-゚) 「うん」


( ,,^Д^)



 それは


 それは――――




(#゚;;-゚) 「私も」

(#゚;;-゚) 「私も、何かしなくちゃならないのかなって、思ったから」

149 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:36:14 ID:6XMG5Ti20



( ,,^Д^)



(#゚;;-゚) 「私は、きみに何もしてないのに、きみはどうして、わたしに優しくしてくれるのか」


(#゚;;-゚) 「ずっとわかんなくて、怖くて、だから……」


(#゚;;-゚) 「きみが世話してる猫が、ここで溺れてるの見たとき」


(#゚;;-゚) 「私が助けなくちゃならないんだ、って」


(#゚;;-゚) 「そうじゃなきゃダメなんだ、って思った。何か、返さなきゃって」




( ,,^Д^)


(;,,^Д^) 「……やさ、しく」


(;,,^Д^) 「優しく、って……」

150 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:36:45 ID:6XMG5Ti20


―――――――



( ,,^Д^) 「あ」

(#゚;;-゚)  「……あ」


( ,,^Д^)

(#゚;;-゚) 


(#゚;;-゚) 「……今日は、」

(#゚;;-゚) 

(#゚;;-゚) 「……」

( ,,^Д^)

(;,,^Д^) 「……今日、は、その……エクストと、帰るんで、その……」

(#゚;;-゚) 

(#゚;;-゚) 「わかった」


 …………

151 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:37:05 ID:6XMG5Ti20

 …………


(#゚;;-゚)   【ゴミ箱】

(#゚;;-゚)   【ゴミ箱】

(゚;;-゚#).....  「……」 テクテク



( ,,^Д^)


....( ,,^Д^) テクテク

 ( ,,^Д^)  【ゴミ箱】

 ( ,,^Д^) 

 ( ,,^Д^) (お弁当……)

 (^Д^,, )


(゚;;-゚#).........   テクテク


 ( ,, Д ) 「……」




  ……一番
  一番、そうしなきゃならなかった時に、僕は――



――――――――

152 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:37:41 ID:6XMG5Ti20


(;,,^Д^) 「僕は、……僕は、そんな……」

(;,, Д ) 「そんな……」


 ウザがってたのか、っていうと たぶん、それは微妙に違うと
 ハインは、的を外していると  無いも同然の自分の名誉にかけて、誓えます
 
 変に庇うと、僕まで危うい立場に立たされるかもしれない―― と
 ……まったく、思わなかったわけではないですが それがメインではなかったとも、誓えます
 



 でも、ハインのその言葉に
 ほんの少し、頷いてしまったのは、事実で




(#゚;;-゚) 




 ……どこかが
 ……どこかが、壊れている人なんだ、と そう感じていたのは、事実で


 そこに、重みを感じていたのも、事実で――――

153 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:38:19 ID:6XMG5Ti20



(;,, Д )


(;,, Д ) 「……誰かを」


(;,, Д ) 「誰かを、助けることに……いちいち、理由なんて、いらないでしょう」


 『助ける』なんて言葉、正直、使いたくはなかったんですけど
 他の言葉も、思いつかなくて


(;,, Д ) 「優しくったって、……優しくったって、僕は、あんなの、……あんなの……」


( ,, Д ) 「……同情、ですよ」


( ,, Д ) 「……ただの、同情ですよ。それこそ……それこそ、途中で逃げ出すくらい」

154 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:39:10 ID:6XMG5Ti20


( ,, Д ) 「途中で、面倒に、嫌に、なって……自分勝手に逃げ出したくらい、薄っぺらな同情ですよ。それが」



( ,,^Д^) 「……それが、そんなに不自然ですか?」



(#゚;;-゚) 


(#゚;;-゚)  「……なにかを、してもらうなら。必ず、なにか見返りがないといけないって、思うけど」




(#,,^Д^) 「――――そんなものばっかじゃないでしょう!」





(#゚;;-゚) ビクッ

(;,,^Д^) 「ッ……」



(;,, Д ) 「……そんな……世の中、そんな……そんなことばっかじゃ、ないでしょう。例外だって、いくらでもある」

155 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:39:48 ID:6XMG5Ti20


(#゚;;-゚)


(#゚;;-゚) 「たとえば?」


( ,,^Д^)

( ,,^Д^) 「たとえば、って……」



( ,,^Д^) 「……」




( ,,^Д^) 「……たとえば、そう、」


( ,,^Д^) 「親、子」



(#゚;;-゚)



( ,,^Д^)

156 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:40:12 ID:6XMG5Ti20






 ――――親が、子を愛するのは。
 それは、見返りを求めない、無償の愛としか、言えないもの――――





 たとえばと聞かれて、絞り出した答えは
 何を、どう間違っても 彼女にだけは、絶対に
 間違っても、でぃさんに対して言っていい内容では、ありませんでした





( ,,^Д^)


(#゚;;-゚)


( ,,^Д^) 「……いつも、一人で」

157 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:40:52 ID:6XMG5Ti20



( ,,^Д^) 「寂しそうでは、なかったけど、それが、逆に、痛々しくて」



( ,,^Д^) 「そんな人に、ちょっと良くしてあげたいと思うのが、そんな……」



( ,, Д ) 「その程度のことが、そんなに不自然でしたか?」


(;,, Д ) 「……その程度のことにまで、見返りがないといけませんか?」


 何度も、何度も、繰り返し 同じようなことばかり言っていました
 もう、なにもかも、ぐちゃぐちゃで 言いたいことが、なかなか出てこなくて
 これだと思う言葉を選ぶのに、何度もつっかえなければなりませんでした


( ,, Д ) 「その程度の、ことにまで……」


( ,, Д ) 「その程度のことにまで、何か、何か返さなきゃならないって、そんなふうに思うほど……不自然なことなんですか?」

158 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:41:24 ID:6XMG5Ti20



(#゚;;-゚)




(#゚;;-゚) 「不自然かは、知らないけど」




(#゚;;-゚) 「今まで、そんなことしてくれた人、きみだけだったから」



( ,,;Д;)



 自分で言うのもなんなんですけど
 僕は、どうして泣いていたんでしょう


 同情なのか、罪悪感なのか


 わかりません
 わかりませんけど、しばらく、涙は止まりませんでした


.........

159 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:42:00 ID:6XMG5Ti20


.........


(#゚;;-゚)

( ,, Д ) 

(#゚;;-゚) 「……え、っと」

(#゚;;-゚) 「……でも、生きてたんなら、よかった」

(#゚;;-゚) 「私は、溺れちゃったけど……段ボール、結構もったのかな」

( ,, Д ) 

( ,, Д ) 「……段ボール?」

(#゚;;-゚) ?

( ,,^Д^) 「……段ボールに、入ってたんですか?」

(#゚;;-゚) 「うん。ほとんど潰れかけてたけど」

( ,,^Д^) 「……」

160 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:43:19 ID:6XMG5Ti20


( ФωФ) ニャー?


 どこから来た猫かは、知りません
 元を辿れば、河原の段ボールに入っていた捨て猫なのかもしれません

 けど、僕がこいつと遊んでいたのは、きまって神社の軒下
 こいつの住処は、神社の軒下  僕が、高2のときから、ずっと


 猫が、川で溺れるというのが どのくらい、”ありえる”ことなのかは、知りませんが 
 猫が、ひとりで段ボールに入って、ひとりで川に流されて、溺れる
 それは、さすがに”ありえない”ことだと そう言って、いいのではないでしょうか


( ,,^Д^)


( ,,-Д-) 


 ――するべきこと

 ――――したいこと

 ―――――しなくてはならないこと


 たぶん、どれも――――

161 名前:名も無きAAのようです :2016/04/04(月) 03:43:53 ID:6XMG5Ti20



( ,,-Д-)



( ,,^Д^) 「調べて……みましょうか」




(#゚;;-゚)





(#゚;;ー゚) 「うん」

167 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 08:42:04 ID:XfK0Q/LI0


 気を遣ってくれたのか その日の夜、でぃさんは部屋の外にいてくれたのですが
 どちらにしろ、眠ろうにも眠れるような精神状態ではありませんでした

( ,,^Д^) 「……はよございまーす……」

( ´д` ) 「おう、おはよう」

( ,,^Д^)

( ,,^Д^) 「どうしたんですか、父さん」

( ´д` ) 「眼力を使い果たした」

( ,,^Д^) 「一体何が」

( ´д` ) 「……聞いてくれるか、情けない大人の話を」

 
 ……だから、朝っぱらからそういう話を聞きたい気分では、なかったんですけど
 父さんも、ずいぶん疲れ果てているようだったので……

168 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 08:42:37 ID:XfK0Q/LI0


( ´д` ) 「……父さんの大学時代の後輩がな、足を……太ももを怪我したとかで。少し前から、入院している」

( ,,^Д^) 「太もも…?」

( ´д` ) 「どう見てもグッサリ刺された傷だと医者は言うのだが、その後輩はタマネギ切ってる最中に奇跡的な転び方をしたと言い張った」

( ´д` ) 「挙句、見舞いに行った私に『もう少しマシな言い訳はないだろうか』と相談してくる始末」

( ,,^Д^) 「……」

( ´д` ) 「医者も、お情けで入院させてはくれたが、明らかに怪しんでいるようだったからな……。そこで、私が全眼力をもってそいつを問い詰めた」


( ´д` ) 「……援助交際だと」


( ,,^Д^) 


( ,,^Д^) 「……んな田舎でも、そんな話、あるんです、ね」

( ´д` ) 「女子高生相手に、……その、妙な薬を使っての行為を、強要したところ。隠し持っていたナイフでぐっさりやられて、その隙に逃げられたそうだ」

( ´д` ) 「どこになんと言ったものかわからなくて、『嘆かわしい』としか言えんかったよ」

169 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 08:43:02 ID:XfK0Q/LI0



('、`*川 「……お父さん」

( ´д` ) 「……すまん。高校生相手にするような話ではなかった」

( ,,^Д^) 「……はあ……」


<ピンポーン


('、`*川 「あ、はーい……誰かしら。こんな早くから」


( ,,^Д^) 「で、どうしたんですか、それ」

( ´д` ) 「今日のところはまだ何もしていない。だがまあ、あの調子だといずれ明るみに出るだろうな」

( ´д` ) 「先輩として、この手で告発するか。流れに任せるか……」

('、`*川 「タカラ、あんたにお客さんよ」

( ,,^Д^) 「……僕に?」

(#゚;;-゚) フワフワ

170 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 08:43:45 ID:XfK0Q/LI0




( ,,^Д^) 「……誰ですかね……」 ガチャッ


o川*゚−゚)o


( ,,^Д^) 


o川*゚−゚)o 「あ……その、おはよ」


( ,,^Д^) 「……おはようございます」


.................


 ……なぜ僕の家を知っていたのかは知りませんが 
 まあ、去年クラス一緒でしたし ハインとも、仲よかったみたいですし そのへんでしょう

 というわけで、今朝の登校はなぜか僕と素直さんとでぃさんの3人組になりました
 まあ、素直さんには見えてないみたいなんですけど

171 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 08:44:08 ID:XfK0Q/LI0


o川*゚ー゚)o 「……タカラってさ、ハインと中学同じなんでしょ?」

( ,,^Д^) 「……中学っていうか、小学校から」

o川*゚−゚)o 

o川*゚−゚)o 「……あの、さ」

o川*゚−゚)o 「ハイン……なんとか、してあげてくれないかな」

( ,,^Д^)

o川*゚−゚)o 「……最近、ほんとにおかしいんだよ。あの子」

( ,,^Д^) 「……そうですかね。去年から、結構キてたような気がしますけど」

o川*゚−゚)o 「そうじゃなくて! ……あの頃も、そりゃ、あれだったけど」

o川*゚−゚)o 「最近は、ほんとに……怖いの。見てて」

( ,,^Д^) 「……怖いって」

o川*゚−゚)o

172 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 08:44:41 ID:XfK0Q/LI0




o川*゚−゚)o 「あのままだと、いつか……いつか、鬱田くん、死んじゃうよ」


( ,,^Д^)


 鬱田って、誰ですか――と、聞かなくても
 ああ、あれのことかと 補完できてしまったのが つまり
 今のハインが異常であると、僕も理解しているという そういう証拠になるのでしょう


o川*゚−゚)o 「……ワカッテマスって人、知らない?」

( ,,^Д^) 「さあ……」

o川*《●》<●>)o 「こう、ギョロ目の人なんだけど……」

( ,,^Д^)「知ってる気がしてきました」

(#゚;;-゚) ウンウン

o川*゚ー゚)o 「何回も、謹慎食らってる人で。今も、ファイナルの二年生か誰かボコボコにしたとかそんなので、停学中らしいんだけど」

( ,,^Д^) (あ、だから私服……?)

o川*゚−゚)o 「……ナイフとか、普通に持ち歩いてる人なんだよ。最近、そういう系の人と、つるんでるみたいで」

173 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 08:45:12 ID:XfK0Q/LI0


( ,,^Д^) 「……最近って、具体的にいつごろなんです?」

o川*゚−゚)o 

o川*-−-)o 「えー、っと……」

o川*゚−゚)o 「……夏休み入る、ちょっと前くらい。たぶん」

( ,,^Д^) 「ふむ」

o川*゚−゚)o 「鬱田くんだってそうだよ。そのくらいまでは、ハインだって、殴ったりとか、カツアゲとか、そんなことはしてなかった」

( ,,^Д^)


 ……『そんなことは』、してなかった。




 でぃさんにしたのと、同じ程度のことしか、していなかった――と?



( ,,-Д-)

o川*゚ー゚)o 「……どうしたの?」

( ,,^Д^) 「……いえ。なんでも」

174 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 08:45:55 ID:XfK0Q/LI0


 ……機嫌というか、精神状態というか、その あまり、良くはなかったのですか
 ギリギリのところで、口には出さずに済みました


o川*゚−゚)o 「……幼馴染なんでしょ、タカラ。昔から、仲良かったって聞いたよ」

( ,,^Д^) 「……まあ、そうですけど」

o川*゚−゚)o 「昨日、聞きに来たのも……そういうことじゃないの?」

( ,,^Д^) 「……そういうこと、って」

( ,,^Д^) 「……」


 幼馴染、とは言いましたけど
 ……ハインのお母さんが、再婚するとか、しないとか そういう話が、あったころから
 ハインは、露骨に荒れだして


o川*゚−゚)o 「……じゃ。ここで」

( ,,^Д^) 「……ええ、はい」


 『家庭の事情』という、キラーワードの力も、あって
 気付けば、いつの間にか、疎遠になっていました


 ……それで、なんとかしてやってくれ、と 言われても
 ――どうすればいいんでしょう?

175 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 08:46:35 ID:XfK0Q/LI0


( ,,^Д^) 「……」

(^Д^,, ) クルッ

(#゚;;-゚) 「……あれ」

(#゚;;-゚) 「学校、行かないの?」 フワフワ

(^Д^,, ) 「……いまいち、行く気がなくなりました」 スタスタ

(^Д^,, ) 「ので――――」




 … … …

176 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 08:46:56 ID:XfK0Q/LI0


( ФωФ) ナーゴ

(#゚;;-゚)  ニャー

( ФωФ) ?

(#゚;;-゚)  ウニャー

( ФωФ)

(#゚;;-゚)  ニャー......

(ФωФ ) .......

(#゚;;-゚) 

( ,,^Д^) (ФωФ ) ニャーゴ


( ,,^Д^)


(#゚;;-゚) 


( ,,^Д^) 「……こう、霊的な存在って、動物ともコミュニケーション可能みたいな……そんなイメージ、ないです?」

(#゚;;-゚) 「ごめんなさい」

( ,,^Д^) 「……いえ、こっちも無茶振りでした」

177 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 08:47:24 ID:XfK0Q/LI0



 ……調べてみるとは言ったものの、手掛かりもクソもないんですよね この猫本人しか
 学校サボってまで来た神社が、再びの二手目どんづまり 
 お気楽そうに喉を鳴らす猫を見つつ、頭を抱えます


( ,,^Д^) (段ボールの現物を探す……いや探して何がどうなる……)

( ,,^Д^) (目撃証言を当たる……? 誰に?)


(ФωФ ) バシャバシャ


 そもそもでぃさんが見えているのかどうかすら不明な、この猫
 僕が頭を抱えている横で、猫は 神社の隅の方にある、小さな池――
 そこで泳いでいる鯉と、なにやら戯れていました


 と、そのとき

「……ああ! またおまえか!」


( ФωФ) ?

(#゚;;-゚) ?

178 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 08:47:44 ID:XfK0Q/LI0



( ;・∀・) 「ダーメだダメだダメだ! 鯉空も鯉は雨上がりのようにも食われたんだ! これ以上は許さないからな!」

( ;・∀・) 「鯉われたいだけは守り通して……」


( ,,^Д^)


( ;・∀・)


( ・∀・) 「タカラ君?」


 本殿の奥から、慌てて飛び出してきた人影
 和装に、なぜか花束を抱えた 妙に若々しい、その姿――


(#゚;;-゚) 「……住職、さん?」

( ,,^Д^) (……神主です。ここ神社なんで) ヒソヒソ


 この神社の、神主でした

179 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 08:48:05 ID:XfK0Q/LI0


( ・∀・) 「や、なんか妙にひさしぶりな気がするね。いつ以来? 3……2か月くらいか?」

( ,,^Д^) 「いつ、というか……神主さんも、久しぶりですよね。最近、見なかったですけど」

( ・∀・) 「ふむ……まあ、最近は神社サミットがあるからね、どうしても神社を空けがちになる。それと被ってたんだろう」

( ,,^Д^) 「神社サミット」

( ・∀・) 「うむ」


 神主という役職が、どういうものか どのくらい偉いものなのか 具体的には知らないのですが
 それにしたって、どう贔屓目に見ても30代のこの神主
 昔から、まあ、いろいろと  謎の多い人でした


(#゚;;-゚) フワフワ


 ……謎の多い人だし、なにより神職なので ちょっと期待してたんですが
 どうも、この人にも、でぃさんは見えないようです
 いや、見えたとしても、この人でぃさんのこと知らない気がするんですけどね

180 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 08:48:36 ID:XfK0Q/LI0



( ・∀・) 「で、君はどうしたんだい? 学校は? 君もサボり?」

( ,,^Д^) 「……まあ、はい」

( ・∀・) 

( ,,^Д^)

( ・∀・) 「いつかのハイン君みたいだね。ひどい顔をしているよ」

( ,,^Д^) 「……そうですか?」

( ・∀・) 「うむ。ここは自鏡神社、疑わしいなら鏡でも見てきたらどうだろう? 本殿には私用の姿見もある」

( ,,^Д^) 「……」

( ・∀・) 「この世で一番のイケメンを聞いたらあなたですあなた様ですだからもう割らないでとちゃんと答えた優れもの……ん?」


( ;ФωФ) ナーゴ.......


 ……猫にまで、心配されるような顔、ってことでしょうか
 池で遊んでいたはずの猫まで、僕の足元に寄ってきて 
 物悲しげな声で鳴きながら、僕の足に、身体を擦りつけてきます

181 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 08:48:58 ID:XfK0Q/LI0


 そんな様子を見た神主さんは、どっこいしょ、とオッサン臭い声を上げ
 花束を小脇に抱えて、その場にしゃがみ込むと 猫に向かって手を出しました


( ・∀・)っ 「……こいつもね、しばらく見ないからどこへ行ったのかと思ったら、少し前ガリガリに痩せて戻ってきたんだよ。
チッチッチッチ...  どこまで遠出してたんだ、って聞いても答えてくれないんだがね」

( ФωФ) ツーン

( ・∀・)っ 「そのくせ愛想のなさは変わってないし……。誰の鯉のおかげで復活できたと思ってるんだ」

( ,,^Д^) 「……」

( ,,^Д^) 「……あの」

( ・∀・) 「なんだい?」

( ,,^Д^) 「その、いつかのハインみたいな顔、って……」

( ・∀・) 「? そりゃ……」

( ・∀・) 「……ああ、そうか。いなかったね、君は」

 どっこいしょ、とまた言って
 神主が、立ち上がりました

182 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 08:49:29 ID:XfK0Q/LI0


( ・∀・) 「君が拾った猫じゃなかったかな。ハイン君が猫を飼ってたのは、知ってるよね?」

( ,,^Д^) 「ええ。……でも、僕たちが、高校に上がる前くらいには」

( ・∀・) 「そう。その猫だがね、僕が埋葬したんだ。僕と、ハイン君が」

( ,,^Д^)

( ,,^Д^) 「埋葬?」

( ・∀・) 「高校に上がる前くらい……うん、まだソーサク中の制服着てた気がするね。
       ……車にでも轢かれたのかな。血だらけの、ボロボロになった猫を連れて、ここまで来たんだ」

( ,,^Д^)

( ・∀・) 「ひどい顔だったよ。からっぽで。悔いだけがそこにある。そんなものは中身と言えない、空の顔だった」

( ,,^Д^) 「……そう、だったんですか」

( ・∀・) 「今でも、時々お参りに来るよ。っていうか、今朝来た」

( ,,^Д^)

( ,,^Д^) 「今朝?」

( ・∀・) 「うん。わりと朝早くに」

183 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 08:50:01 ID:XfK0Q/LI0


 色とりどりの花束を、突き出して
 神主が、ゆっくりと言いました


( ・∀・) 「……といっても、なんだ。君らが中学のころだから……3年くらい前になるのかな?
       さすがに、そのくらい前の話だから。最近は、そんなに見かけることもなかったんだけど……」

( ・∀・) 「……急にどうしたんだろうね。改めて思うと」

( ,,^Д^) 「……」

( ・∀・) 「……いや、急ってほど急でもないか。ちょっと前にも一回……いつだっけな……雨降ってたのは覚えてるけど……」

( ・∀・) 「……ま、いいや。とにかくそういうわけで。僕はこれからこの花を処理して、そのあと大学に行く予定でね。
       またしばらく神社を空けるから、遊び場にする分には好きにしていいけど、その猫が鯉を食べないように……」

( ,,^Д^) 「大学? って、何するんですか」

( ・∀・) 「よくぞ聞いてくれた」


 それを待っていた、と言わんばかりに
 バサリと音を立てて、神主は花束を振りかざしました


( ・∀<)=☆ 「これからはネオ神主の時代。知り合いが大学の教員をやってるんだ、民族学の。
         その伝手で招いてもらえてね、この自鏡神社の話をすることになった。手始めに、自鏡の名の由来!」

184 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 08:50:24 ID:XfK0Q/LI0


( ,,^Д^)


( ・∀・) 


( ・∀<)=☆  バチコーン


( ,,^Д^)


( ・∀<)=☆  バチコーン


(;,,-Д-) 「……えっと、水神……水の神と、ひっかけてるんでしたっけ」

( ・∀・) 「よーしよしよしよぉ〜し。この場でプレ講義といこうか」

185 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 08:50:44 ID:XfK0Q/LI0


( ・∀・) 「そう、元は水の神。というところでまず考えてみてほしいのだが」

( ・∀・) 「水と、鏡というのはね。もともと、そう遠いイメージじゃない」

( ,,^Д^) 「……?」

( ・∀・) 「ほら、そこ」


( ФωФ)っ  バシャバシャ

(#゚;;-゚)


( ・∀・) 「そう、あのように……」

( ;・∀・) 「……いや待った! 鯉に手を出すなァ―――!!」

( ,,^Д^) (えぇ……)


 池に手を突っ込んで、鯉にちょっかいを出そうとしている猫
 (と、どうもこの話に興味がないらしく、それをぼんやり眺めているでぃさん)(ぶっちゃけ僕も興味はない)
 ……を、指さして  それから怒鳴りつけた後で   神主が続けます

186 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 08:51:16 ID:XfK0Q/LI0


( ;・∀・) 「……水面をのぞき込めば、そこには自分の顔が映るだろう?
       水は、鏡にもなり得る……というか、水面こそが最古の鏡なんだ」

( ,,^Д^) 「……まあ、そうですね」

( ・∀・) 「そして、鏡の前に立つなら、そこに映るのはいつだって自分。
       己の姿を、己自身の目で見る――それを最初に可能としたのは、水の神の権能なのさ」

( ,,^Д^) 「……はあ」

( ・∀・) 「鏡というのは、己の姿を映すためのもの。”みず”からを見る、か”がみ”。
       ほら、水神が自鏡になるのも、そんなにおかしくないだろう?」

( ,,^Д^) 「いや、そんな言葉遊びみたいな……」

( ・∀・) 「そんなものだよ、昔の人って」



( ・∀・) 「で、ここからなんだけど……『茶碗の中』ってお話、知ってるかい? ラフカディオ・ハーンの」

( ,,^Д^) 「……えーっと、外国の人の小説は、そんなに」

( ・∀・) 

( ・∀・) 「あ、うん、そう……。最近は習わないのかな……うん……」

( ・∀・) 「……民俗学なら歴史学部か文学部か……なら知ってるよな小泉八雲……? うーん……?」 ブツブツ

(;,,^Д^) 「えっと、で、それはどういう……」

187 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 08:51:46 ID:XfK0Q/LI0


( ・∀・) 「ああ、うん。えっと、ざっくり言うとあれだ。お茶碗に汲んだ水の中、その水面に幽霊が映るってお話なんだけど」

( ・∀・) 「”幽霊”と”鏡”って、2つのパターンがあるだろう?」

( ,,^Д^)

( ,,^Д^) 「幽霊と、鏡……」


( ・∀・) 「幽霊は、たしかに目の前にいるのに。でも、鏡を見ると、そこには映っていない」

( ・∀・) 「その逆。鏡には、たしかに映っているのに。実際に振り返ってみても、そこに幽霊はいない」


( ・∀・) 「鏡に映らない幽霊と、鏡にだけ映る幽霊。……ホラーだと、どっちも見るじゃない」


( ,,^Д^) 


 ……思いのほか、タイムリーな話なのですが
 『僕の場合は前者ですね』なんて、言い出すわけにもいかず

188 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 08:52:17 ID:XfK0Q/LI0



( ・∀・) 「そしてこの土地、この神社には、ひとつの伝承が残っている……幽霊による、殺人者への復讐」

( ・∀・) 「自鏡なんて名乗ってるんだ、気にならないかい? ……この幽霊は、どちらなのか」

(;,,^Д^) ゴクリ


 ……いや、答えは知っているんですが 知っているんですが、それでも
 いつの間にか、話に聞き入っている自分がいました


( ・∀・) 「……その前に、この神社の話を少ししておこう。ここは水神を信仰する神社、だから修行にも鏡を使う」

( ,,^Д^) 「……」

( ・∀・) 「ちゃんとした鏡が手に入りづらくて、そのまま水を使った時代もあった。なんであれとにかく己を見つめる、それがこの神社の教えでね」

( ・∀・) 「鏡の前で、ひたすら考える。そうすることによって、洗い出す。
       そうすることによって見出すのさ。己自身の――」

<prrrrrrr

( ・∀・) 「……失礼」

189 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 08:52:51 ID:XfK0Q/LI0


【(・∀・ ) 「んだよ、今……え? 今から? いや、おまえ来週でいいって……
        え? 待て、今からって新幹線……え? マジで? 何? え、ちょ」  ブツッ


(・∀・ )


( ,,^Д^)


( ・∀・) 「……というような話に興味があるなら、次の神主の座は君のために空けておくけど、どうだろうか!」

( ,,^Д^) 「……はい?」

( ・∀・) 「って台詞で講義を〆ようと計画してるんだけどー、だけどー、あー……」

(・∀・; ) 三 「時間! 時間が! ありませんので!! あのバカが! じゃあねタカラくん! 鯉の保護よろしく!!」 ピュー

(:,,^Д^) 「あっ、ちょ……」


(:,,^Д^) 「……」


 わかるような、わからないような 
 そんな微妙な話だけぶちまけて、神主は消えてしまいました

190 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 08:53:23 ID:XfK0Q/LI0


(#゚;;-゚) 「話、終わった?」 ヌッ

( ,,^Д^) 「……終わったというか……ブチ切られたというか……」


 釈然としない気持ちでスマホを取り出して、時間を確認……
 ……すると、いくつか通知が来てました


(-_-)『まさかタカラもサボり?』

(-_-)『マジ系?』

(-_-)『今日エクストもいないんだけど サボるつもりなら図書館見てきて』

(-_-)『マジで漫画読んでるかも』


( ,,^Д^) 「……」

191 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 08:53:45 ID:XfK0Q/LI0


 既読を、つけるだけはつけておいて でも、返信はせず


(#゚;;-゚) 「……これから、どうする?」

( ,,-Д-) 「……」

( ,,-Д-) 「……考えてることは、あるっちゃ、あるんですけど……」


 ……ひさしぶりに、”メール”を、打つことにしました




――――――――――

192 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 08:54:05 ID:XfK0Q/LI0



从 ゚∀从


( ,,^Д^)


 呼び出したハインが、神社に来るまで
 日が、とっぷり暮れてしまって 月が出るくらいの
 そのくらいの時間が必要でした


从 ゚∀从 「……いや、ああは言ったけどさ」

从 ゚∀从 「まさか、ほんとに今日も会うことになるとは、思わねーじゃん、まあ」

( ,,^Д^) 「ですね。僕も、あんまり思ってませんでした」


 月明かりの下で見るハインの顔は、目は 昨日よりも、いっそうひどくて
 気のせいか、頬もこけているように見えました


从 ゚∀从 「で? なんのつもりだよ」

从 ゚∀从 「あー、なに。あれ? 意趣返し? 的な、そういう?」

( ,,^Д^) 「……聞きたいことがあるって、言ったでしょう」

193 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 08:54:25 ID:XfK0Q/LI0


从 ゚∀从 「ああ。それが何かって話」

( ,,^Д^)

从 ゚∀从 「まさかとは思うけどよ、昨日の今日で、なんであんなことするんですかぁ〜、いじめなんかやめましょうよぉ〜、……っつー話では、ねーよな?」

( ,,^Д^)

( ,,-Д-) 「……」

( ,,-Д-) 「いろいろとあるんですけど。めいっぱい絞るなら、聞きたいことはひとつですね」

从 ゚∀从 「へえ。で? それは?」

194 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 08:54:52 ID:XfK0Q/LI0






( ,,-Д-) 「君には、何が見えているんですか?」

195 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 08:55:16 ID:XfK0Q/LI0


从 ゚∀从

从 ゚∀从 「……は?」


( ,,^Д^) 「伝わらないなら、もう少しいろいろと聞かなくちゃならないんですが」


从 ゚∀从


( ,,^Д^) 「離婚が決まったの、いつですか?」


从 ゚∀从


从 ゚∀从 「……何?」


( ,,^Д^) 「……これも伝わらないなら、付け加えて聞きます。一番、わかりやすいやつ」


从 ゚∀从

196 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 08:55:48 ID:XfK0Q/LI0


( ,,^Д^) 「僕が、……僕らが、僕が、拾ったあの猫」







( ,,^Д^) 「あの猫の、死因は?」






从 ゚∀从





( ,,^Д^) 「車にでも轢かれたみたいにボロボロだった……って聞きましたから。病死では、なかったんでしょうけど」

197 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 08:56:13 ID:XfK0Q/LI0







( ,,^Д^) 「やったのは、車ですか? 君ですか?」








从 ゚∀从


( ,,^Д^)


从 ゚∀从


从 ゚∀从 「……んで」

198 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 08:56:35 ID:XfK0Q/LI0

从 ゚∀从 「なんで、そういうこと、聞く?」


( ,,^Д^)


从 ゚∀从


( ,,-Д-) 「……」

( ,,-Д-) 「まあ、ほとんど勘というか、憶測みたいなもんなので。失礼なこと、言う自覚はあります」

( ,,^Д^) 「でも、これをもうちょっとかっこいい言い方すると、幼馴染の絆――というか。
       昔馴染だからこその分析……みたいな、そういうことになるので。聞くだけは、聞いてほしいんですけど」

从 ゚∀从



( ,,^Д^) 「弱いものを殴ってないと、耐えられない人って。いると思うんですよ」

199 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 08:57:00 ID:XfK0Q/LI0


( ,,^Д^) 「……人というか、環境というか」


从 ゚∀从


( ,,^Д^) 「……あの猫拾ったのと、君のお母さんが、再婚したの。どっちが前で、どっちが後でしたっ」

从 ゚∀从 「今かよ?」


( ,,^Д^)


从 ゚∀从

从 ゚∀从 「……んにも、しなかったよ、おまえは」

从 ゚∀从 「なんにも聞いてくれなかったよ、おまえは。あんときは」


从 ∀从 「……今聞くのか。今?」


 ハインの身体は、震えていました
 落ち着きなく、震えていました

200 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 08:57:37 ID:XfK0Q/LI0

( ,,^Д^) 「……エスカレートしてったんじゃないかな、って思ってるんです。僕は」

( ,,^Д^) 「うまく行かない家庭の中で。3年間で、少しずつ」


( ,,^Д^) 「最初は、飼ってた猫に当たって。殺すところまで、行ってしまった」



( ,,^Д^) 「次は、おとなしいクラスメイト。猫から人間にクラスアップです」



( ,,^Д^) 「……で、それでも耐えきれないくらいの負荷が、ストレスがかかって。また、猫を殺そうとした。……運よく死ななかったみたいですが」



 ……代わりに、でぃさんが死ぬことになった――とは
 今、言うことでは、ないのでしょう  が


( ,,^Д^) 「……それでも治まらない」


( ,,^Д^) 「それでも、まだ、耐えられない」


从 ゚∀从

201 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 08:58:22 ID:XfK0Q/LI0


( ,,^Д^) 「どこにも行き場がなくなって、エスカレートするしかなくて」


从 ゚∀从 「……に、言ってんだ」


( ,,^Д^) 「まあ、仮説ですらない、稚拙なストーリーですよ。だから、もうちょい待とうかとも、一瞬考えました。鬱田くん、でしたっけ?」


从 ゚∀从


( ,,^Д^) 「待とうかな、とも思いましたよ」










( ,,^Д^) 「彼が、死ぬまで。待とうかな、と」

202 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 08:58:45 ID:XfK0Q/LI0









从 ゚∀从っ=lニフ







( ,,^Д^) 



 突き出されたハインの手に、握られていた、ひと振りのナイフが

 月の光に照らされて、きらめいていました



从 ゚∀从っ=lニフ 「黙れよ」



 その手は、刃先は、カタカタと 小刻みに、震えていて
 けれど、目だけは、据わっている

 真っ黒なクマ、落ちくぼんだ瞳 その中心で
 眼だけが ナイフを映した、眼 だけが
 ギラつく光を、放つ――――

203 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 08:59:09 ID:XfK0Q/LI0



( ,,^Д^) 


( ,,-Д-)


( ,,-Д-) 「……じゃあ、最後にひとつだけ」



 震える手、定まらない焦点
 隠し持っていた、ナイフ



从 ゚∀从っ=lニフ



 たぶん
 たぶん、僕にそう言われることが
 一番、嫌なことだろうと、思って――



( ,,-Д-) 「ハイン」

204 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 08:59:33 ID:XfK0Q/LI0




( ,,-Д-) 「―――病院か、警察、行きませんか?」





从 ゚∀从っ=lニフ


从 ゚∀从っ=lニフ 「……おまえ」


从# ∀从っ=lニフ 「………おまえ…………ッ!!!!」



 これに関しては、推測どころかほとんど妄想でした、から
 変態のオジサンから手に入れたのか、それとも悪いオトモダチに、そういう伝手があったのか
 ルートは、知りませんけど、でも 当たったのは、当たったみたいでして―――


( ,,^Д^) 「……やっと」

( ,,^Д^) 「やっと見つかったと、同類かと思った相手が、この状態なんですもん……」

205 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:00:05 ID:XfK0Q/LI0


( ,,^Д^) 「……そんなものにまで、すがるほど……」


.... 从# ∀从っ=lニフ .... 


( ,,^Д^) 


(^Д^,, ) 「……」 チラ


(#゚;;-゚)


 これじゃ、僕までそういう人みたいに思えてくるじゃないですか、と
 そう言おうかと、思ったんですが
 たぶん、それはどうでもいいのでしょう



 見えているのが、本物の幽霊であろうと
 頭がおかしくなって見た、単なる幻覚であろうと
 クスリで脳がぶっ壊れて見えた、お花畑であろうと



 たぶん、大事なのはそこじゃない

206 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:00:37 ID:XfK0Q/LI0


(-Д-,, )

(-Д-,, ) 「……でぃさん」

(#゚;;-゚) ?

( ,,^Д^) 「答え合わせは、要りません」

(#゚;;-゚)

(#゚;;-゚) 「なに、を――」



从# ∀从っ=lニフ  ハァー....ハァー.......



( ,,^Д^) 「……」


( ,,^Д^) 「……ハイン」


从# ∀从っ=lニフ

207 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:01:05 ID:XfK0Q/LI0


( ,,^Д^) 「パトカーのサイレンにすくみ上がるのは、警察が怖いからですか?」


从  ∀从っ=lニフ 


( ,,^Д^) 「神社の鳥居に傷をつけて、罰が当たると怯えるのは、神様が怖いからですか?」


从  ∀从っ=lニフ  「……あ?」


( ,,^Д^) 「どうして、それが怖いんですか?」


从  ∀从っ=lニフ 



( ,,^Д^) 「やましいことが何もないなら、怖がることもないんですよ。そんな聖人がいるかどうかは知りませんけど、ね」

208 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:01:30 ID:XfK0Q/LI0



( ,,^Д^) 「……何が怖いって、罪ですよ」


从  ∀从っ=lニフ 


( ,,^Д^) 「見ているのは、警察じゃない」

( ,,^Д^) 「見ているのは、神様じゃない」


(#,,^Д^) 「見えているのは―――――幽霊じゃない!!」


从  ∀从っ=lニフ 「……やめろ」

209 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:01:59 ID:XfK0Q/LI0


( ,,^Д^) 「いわば、それ自体が鏡。――怯える理由がそこにあるから!」


( ,,^Д^) 「それだけの罪が自分にあると、それだけのことを自分はしたと、」


(#,,^Д^) 「――報いを、受けるだけのことを、したと! そう、自覚しているから!」



( ,,^Д^) 「そこに見るのは、自分のしたこと、自分の負う罪……」



(#,,^Д^) 「己自身の、背負う、業!」


从; ∀从 「うるっせえよ!!」


 境内の砂利を、勢いよく蹴り上げ
 落ちていた石を、拾い上げて、投げる


 僕に向かって、ではなく

210 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:02:32 ID:XfK0Q/LI0


 何も無い、虚空


(;#゚;;-゚)


 でぃさんすらいない、何も無い場所に向かって

 ハインは、無我夢中で石を投げていました




从; ∀从 「おまえの……おまえの、顔見るたびに、なんで、……なんで! おまえの、猫だろうがよ!! おまえが拾ってきたんだろ!?」


从; ∀从 「うるっせえんだよ!! ニャアニャアニャアニャア、って……見てやったのはあたしだろうがよ!」


从; ∀从 「世話してやった! 守ってやった!! あたしが守らなきゃ死んでた!」


从; ∀从 「……わからせてやった、だけだろうがよ……守って、やってたんだ、って……!!」


从; ∀从 「……墓だって、作ってやっただろうがよ!! んでだよ!! んで、今になって……」



( ,,^Д^)

211 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:03:09 ID:XfK0Q/LI0



( ,,-Д-)



(;,,-Д-) 


(;,,-Д-) 「……なんで」


(;,,-Д-) 「なんで、猫が、見えて……」

(;,,-Д-) 「猫に、悪いことをしたと、思えて……」


(;,,^Д^) 「――どうして!」


(;,,^Д^) 「どうして、見えないんですか!!」

212 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:03:35 ID:XfK0Q/LI0



(;#゚;;-゚)



从 ∀从っ=lニフ 「―――――うるっせえええええええええええええ!!!!!」



 あくまで、事故だから、関係ないと
 関係ないことで死んだ、その時点で それまでに自分がしたことは、すべて清算されたのだと
 そう思っているからでしょうか?
 あくまで他人事だと、そう思っているからでしょうか?



 サンドバッグの彼を、もしも殴り殺してしまったら でなければ、自殺させてしまったとしたら
 あるいは、刺しどころが悪くて、援助交際のおっさんを、もし、殺してしまっていたとしたら



 そんなことになったとしたら、それなら、ハインにも見えるんでしょうか?
 霊体になって戻ってきた彼らを、ハインは見ることができるんでしょうか?

213 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:04:15 ID:XfK0Q/LI0








 そこまで行かなきゃ、ダメなんでしょうか?








 そこまで行っても見れなかったら、もう、どうすればいいんですか?

214 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:04:42 ID:XfK0Q/LI0







――― ― ―― ―――― ― ― ――――――― ― ――― ――

215 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:05:08 ID:XfK0Q/LI0




从; ∀从っ=l■フ



(#゚;;-゚)









(;#゚;;-゚) 「た、から、く」


(;,, Д )


从; ∀从

216 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:05:34 ID:XfK0Q/LI0

从; ∀从 「おまえに」

从; ∀从 「おまえに、わかるかよ」

从; ∀从 「家帰ったら、金あって、母さんも、父さんも、優しくて、高校出たら、大学だって行って」

从; ∀从 「あたしは……」

从;゚∀从 「あたしは!」



(;,, Д ) 「……」 



从;゚∀从 


从; ∀从 「なんで」

从; ∀从 「なん、で……なんで、いっつも!」

从; ∀从 「……んでだよぉ……!!」 ダッ

217 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:06:03 ID:XfK0Q/LI0



(;,, Д ) 「……、……」

 血まみれのナイフを握りしめて、神社の階段を駆け下りるハインの 背中を
 気持ち悪いくらい、だばだば、血が、あふれ出る腹を、押さえつつ 眺めて 思った、のは

 刃物で、刺されたりした、ときは 抜くと、そこから血があふれ出てきて、死ぬので
 刺したままにしといたほうが、いい、と

 水のたっぷり入ったビニール袋に、鉛筆を突き刺しながら説明していた、小学、だか、中学だかの、理科の先生……


 ……あ、これ走馬燈だ

(;#゚;;-゚)

(;#゚;;-゚) 「なんで」

(;#゚;;-゚) 「……なんで、こんな」

(;,, Д ) 「……ま……ちょ、っと、煽ったとこは、ありま、すよね……」

(;#゚;;-゚) 「なんで?」


 でぃさんは、なんというか、おろおろしていました
 まあ、彼女は幽霊ですので ものに触れない、幽霊ですので……
 特に、できることも、ないとは 思うのですが

218 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:06:46 ID:XfK0Q/LI0


(;,, Д ) 「……ころした、人は、地獄行きって、言ってた、……ん、でしょ……?」

(;,, Д ) 「……じゃあ、かくじつに、じご、く、行けるように……して、やろう、って」

(;,, Д ) 「……悪いこと……したと、思えて、ないなら……も、……どうにも……」

(;#゚;;-゚) 「やめて。しゃべらないで」


 ……うそ、ですね、これ
 だって、どっちかというと、


(;,, Д ) 「……ついでに、ぼくも、じ……く、に、行ければ、それで……」


 こっちの、ほうが―――


(;#゚;;-゚)

219 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:07:19 ID:XfK0Q/LI0


(;#゚;;-゚)




(;#゚;;-゚)





(;#゚;;ー゚)





(;,, Д )

 ……ああ、また
 また、この、微妙な表情


 ……なんで、今?

220 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:07:41 ID:XfK0Q/LI0



(;#゚;;-゚) 「……ずっと、わかんなかった」

(;#゚;;-゚) 「私は、きみに何もしてあげられないのに。なんの見返りもないのに」

(;#゚;;-゚) 「どうして、きみは、私に優しくしてくれるんだろう、って」


 それは、もう、説明したでしょう
 ただの同情だ、って


(#゚;;-゚) 「わかんなくて。本当に、わからなくて……誰も、そんなことしてくれる人、いなかったから」

(#゚;;-゚) 「だから、きみが話しかけてこなくなったとき、私」

(#゚;;-゚) 「……安心、したの」


(;,, Д )

221 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:08:09 ID:XfK0Q/LI0




(;,, Д ) 「あ……ん……?」


(#゚;;-゚) 「もしかしたら、きみはすっごく、神様みたいに優しい人なのかもしれないって、怖かったから……」

(#゚;;-゚) 「だから、それをやめたとき、あのとき……」

(#゚;;-゚) 「……ああ、この人にもなにか、暗いところ……後ろ暗いところがあったんだ、って」

(#゚;;-゚) 「ホッとしたの」


(;,, Д )


(#゚;;ー゚) 「……安心、したのに……」




 ――――ずっと、

222 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:08:31 ID:XfK0Q/LI0











(#゚;;-゚) 「きみだけが、見えてた」








 ずっと、後悔していました





(#゚;;-゚) 「罪を犯したと自覚してるやつが、悪いことをしたと思ってるやつが」

(#゚;;-゚) 「自責の念で、震えてるやつが。必ずいるはずだから。そいつに思い知らせてやれ、って。そう言われて、来てみたのに」

223 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:08:52 ID:XfK0Q/LI0



(#゚;;-゚) 「……よりにもよって、きみだったから」




(;,, Д )



 しょうがなかったんだ、と でぃさんの側にだって、目を付けられる理由はあったんだ、と
 都合よく、矛先を転嫁させたり


 何もしないよりは、一時でも優しくしたんだから、それは善行だし 周りのやつらのほうが、ずっと悪いんだし
 僕は、別に、悪いことをしたというほどじゃないと
 そんな、謎の理屈をつけたり


 どうにか、納得しようとして、納得しきれなくて そんなころに
 そんなころに、目の前に現れた彼女を、見たら


 祟りに来たんだって、思うじゃないですか

224 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:09:17 ID:XfK0Q/LI0



(#゚;;-゚) 「ほんとに。……ほんとに、わかんなくて。なんで」

(#゚;;-゚) 「何もしてあげられないのに。私が死んでからも、ずっと、私のこと、引きずってて。
       死んじゃったら、ほんと、それこそ、なんにも返せないのに。私には、何も……」

(#゚;;-゚) 「……何も、ないのに、ここまで」


(#゚;;-゚) 「……ここまで……」




(#゚;;-゚) 「……私なんかの、ために、地獄まで、行くって」




(#゚;;-゚) 「私……」


(#゚;;-゚) 「私、だけに……」


(# ;;- ) 「……わたし、だけを」

225 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:09:42 ID:XfK0Q/LI0







(# ;;ー ) 「……わたし、だけの―――――」







(;,, Д )



 ――――正直に、言って
 怖かったです


 今まで、ずっと 笑ってるのか、そうでないのか
 曖昧な表情ばかり浮かべていた彼女の――

226 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:10:09 ID:XfK0Q/LI0






(# ;;ー ) 





 ――恍惚とした
 壮絶な、笑み





( ,, Д ) 「……」



 ……それはもう、ほとんど、

 呪いの、ようで



( ,, Д ) 



 ――最期に、見るには、ふさわしいのかも、しれないと――




―――――――――――――――

227 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:10:42 ID:XfK0Q/LI0



―――――――――――――――



ザァァァァァァ......................


从 ∀从 


( ФωФ)  ……?


从 ∀从 


( ФωФ) ニャーゴ


从 ∀从 ヒョイ


( ФωФ) ナ?


从 ∀从 スタスタ


( *ФωФ) ナー……? ナー! ナーゴ!

228 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:11:09 ID:XfK0Q/LI0


从 ∀从  テクテク


从 ∀从  テクテク


从 ∀从  テ……


从 ∀从 


( ФωФ)

( ФωФ) ナー……?


 … … …

229 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:11:31 ID:XfK0Q/LI0


 … … …




从 ゚∀从 「……は? おまえんち飼えないの?」

(;,,^Д^) 「……すいません。まさか母さんがアレルギーだとは……」

(^Д^,,;) 「……」


(=ΤωΤ) ニャーオ.....


(-Д-,,;) 「……」


从 ゚∀从 

从 -∀从 「……っとにもう、おまえは……」

从;-∀从 「……わーったよ。あたしが飼う」

( ,,^Д^) 「え?」

230 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:11:54 ID:XfK0Q/LI0


从 ゚∀从 「ま、猫一匹くらいどうにかなるだろ。アレルギーとか、そういうのはねーし」

(*,,^Д^) 「……ありがとうございます!!

(*゚ω゚) ニャー!

从 ゚∀从 「あー、はいはい。……おまえ、ほんっとに変わんないね」

( ,,^Д^) 「? 僕ですか?」

从 ゚∀从 「おまえだよ。小学校から、ずっとそうじゃねえか」

从 ゚∀从 「なんかあるたびに、あたしがあんたを守ってやってる気がすんだけど」

( ,,^Д^) 「守って……って、いや、さすがにそれは……」

( ,,^Д^) 「……」

从 ゚∀从 「さすがに? なに?」

(;,,^Д^) 「…………」

从 -∀从 「バぁ―――カ」



 … … …

231 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:12:17 ID:XfK0Q/LI0

 … … …




从 ∀从 「……っは」

从 ∀从 「……。今、もう、家に……あいつ、いるんだから」

( ФωФ) ナ…?

从# ∀从 「―――飼えねえんだよ どっちにしろよォ!!!」


( ;ФωФ) ナ"ッ!?


从 ∀从 「うるせえよ!!」

( ×ω×) ブギャッ

从# ∀从 「戻れねえんだよ!! 飼えねえから! また、飼えれば、戻れるかって、飼えねえんだよ!! もう、よぉ!!」 ゲシゲシ


( :#メω(メ)) ブギュッ、グ、ガッ

232 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:12:41 ID:XfK0Q/LI0


从 ∀从 「……、……………!!」 

( :#メω(メ)) グ...

从 ∀从 「………〜〜〜〜〜っそがよぉ!!」 ザバァ


<グ、ゴ.....


<ナ"ッ"!?


<ナッ...ニャー! ニャーオ! ニャゴ、ニャ、ニャー......


<ニャ…........


<............




――――――――――――――――

233 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:13:07 ID:XfK0Q/LI0


――――――――――――――――







( ,,^Д^)







( ,,^Д^)


( ´∀`)っ■  ピッ              プツン>


(´∀` )


( ,,^Д^)

234 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:13:33 ID:XfK0Q/LI0


( ,,^Д^) (おじいちゃん。怖そうな顔……)


(´∀` ) 「いかにも僕が神様でここがあの世だが。どうかしたか」


(;,,゚Д゚) (……いたんだ……!! 現物いたんだ……!!)


( ´∀`) 「……で?」

(;,,^Д^) 「はいっ!?」

( ´∀`) 「悪いことをしたと、そう思っているか?」

( ,,^Д^) 「……はい」

( ´∀`) 「だから、あんなマネをした?」

( ,,^Д^) 「……はい」

( ´∀`) 「あれが自分にふさわしい裁きだと?」

( ,,^Д^) 「……それは……」

  _, ,_
( ´∀`) 


(;,,^Д^)

235 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:14:00 ID:XfK0Q/LI0


( ´∀`) 「……あの子は、気にしていなかったよ。気にするだけの心が、育たなかった」

( ,,^Д^)

( ´∀`) 「だがな。相手が気にしていないから、自分の行いは罪ではないのだと。そう少しでも考えるなら、今すぐ地獄に堕ちてもらう」

( ´∀`) 「あんな有様の、あの子に。誰も手を差し伸べなかった時点でそれは罪だし、差し伸べた手を引っ込めるのは、ともすればより悪い」

( ,,^Д^) 「……はい」

( ´∀`) ハァ.....

( ´∀`) 「……だがなぁ……。あの子が、当事者が、それを罪だと考えていないのも、また事実……」

( ´∀`) 「挙句、あんな身勝手な真似が、裁きになるなどと……」 ブツブツ

( ,,^Д^) 「……」

( #´∀`) 「……微妙過ぎる! なぜ毎度こう……!!」 ブツブツ

( ,,^Д^) 

( ,,^Д^) 「……えっと、その」

( ´∀`) 「なんだ?」

( ,,^Д^) 「でぃさんは……その、どうなったんですか? 地獄には……」

236 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:14:31 ID:XfK0Q/LI0



( ´∀`) 「それを僕に問えるつもりでいるのか?」

( ,,^Д^) 「え」

( ´∀`) 「それ以上を僕に聞くつもりか? ただの人間風情が? 僕にあれこれ質問を?」

(;,,^Д^)

( ´∀`) 

( ´∀`) 「……なぜあの子が……こんなやつを……」

(;,,^Д^)

( ´∀`) 「……もう一度言うが、おまえは罪人だ。この僕が言う。おまえのしたことは罪だ」

( ,,^Д^) 「……はい。わかっています」

( ´∀`) 「自覚があれば罪は軽減されると?」

(;,,-Д-) 「……」

237 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:14:57 ID:XfK0Q/LI0

( ´∀`) 

( #-∀-) 「……おまえを、このまま返さねばならんなど……そんなことが……」

(;,,-Д-)

(;,,^Д^) 「……?」

( ,,^Д^) 「……返す? って……」





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

238 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:15:26 ID:XfK0Q/LI0





( ,,-Д-)



( ,,^Д^)






( ,,^Д^)


( ,,^Д^) ポカーン....

239 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:15:52 ID:XfK0Q/LI0


ガチャン


(^Д^,, )

('、`*川

('、`*川 「た、か」


(;、;*川 「――――タカラ!!」




 … … …


 
 ……どうも、こう、なにか
 奇跡、というか……そういう系の何かが、起きたようです


<_プー゚)フ 「いや、ヤバかったらしいぞ、マジで。ナースさん信じられないって言ってたもん」

(-_-) 「……? いや、信じられないってのはそれ違うでしょ?」

<_プー゚)フ 「え? マジ? 何が?」

240 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:16:19 ID:XfK0Q/LI0


(-_-) 「いや、エクストが『食事でも……どうですか?』って言ったときの話でしょ、信じられないって言われたの」

<_プー゚)フ 

<_プー゚)フ  「マジ? え、あれそういう流れだったの……?」

(-_-) 「マジ」

<_プー゚)フ 「信じらんねー……」

( ,,^Д^) 「見舞いに来てする会話がそれってほうが信じらんないですよ僕には」


 見つけてくれたのは、エクストだそうで
 僕からの返答がその日一切なかったことを、ヒッキーとラインで話していて
 で、夜、なぜか無性にジョギングがしたくなって、なぜか無性に神社のほうまで行きたくなって、
 そこで、血まみれの僕を発見し、119番通報と


<_プー゚)フ 「……わりとマジで信じらんねえよ。俺も」

(-_-) 「なんなんだろうね。ほんとに霊感?」

<_プー゚)フ 「いや、ほんとにただの気まぐれ……気まぐれ……だったはずなんだけどな……? アレー……?」


 … … …

241 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:16:51 ID:XfK0Q/LI0

 … … …


( ,,^Д^) テクテク


 命に別条がなく、わりと早くに目が覚めたこと それは、わりと本当に奇跡的だったらしいです
 どのくらい早かったかというと、退院はまだできないとはいえ、病院内を一人で歩き回れるくらいには、僕が回復しているのに対し
 僕を刺したことが判明して捕まったハインの処分が、まだ決まっていないくらい


( ,,^Д^) カツカツ


 そんなわけで
 そこそこ回復して、そこそこ動けるようになったのに、まだ退院できない僕は
 あまりに退屈を持て余していたので、なんとなく、病院の屋上に出ていました


( ,,-Д-) 「ふー……」


 空は、雲一つなく、真っ青
 そろそろ秋もいいところですが これだけ晴れていると、まださすがに暑いです

242 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:17:14 ID:XfK0Q/LI0


( ,,-Д-)



 ――さて。



――――
 (#゚;;-゚)
――――



 見返りのいらない、無償の愛
 その存在を、親にさえ、教えてもらえなかった彼女が
 初めて、手に入れたもの


 自分だけのもの
 自分だけに、自分だけのために、向けられた感情
 自分だけが独占することを許された、そんなもの

243 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:17:44 ID:XfK0Q/LI0



 愛なんて ましてや、無償の愛なんて、そんな、そんな……
 そんなものを、向けたつもりは、ないのですが



 初めて受け取ったその思いを その感情を、彼女は、どう噛み砕いたのか
 日頃、まともに笑みを浮かべることすらなかった彼女が浮かべた――




 (# ;;ー )




 ――とても凄絶な、あの笑顔

244 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:18:06 ID:XfK0Q/LI0



 でぃさんは、どこへ行ったのか
 今どこにいるのか

 結局、神様には聞けませんでした



 ――――でも。



( ,,-Д-)



 もはや、呪いと言っていいほどに、凄まじく、恐ろしく―――そして、美しかった、あの笑みを
 忘れることなんか、できません



 ――だって、ほら

245 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:18:37 ID:XfK0Q/LI0



――――――――――――――――――――――――





( ´∀`) 「これだけは覚悟しておけ。僕は神だ、おまえは常に見られている」




( ´∀`) 「……おまえが、一時でも、たとえ一時でも、自分の罪を忘れようものなら」




( ´∀`) 「その瞬間、僕は必ずおまえを地獄に落としてやる―――」




( ´∀`) 「――必ずだ」





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246 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:18:58 ID:XfK0Q/LI0







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247 名前:名も無きAAのようです :2016/04/05(火) 09:19:18 ID:XfK0Q/LI0










――――――――――――    彼には、見えているようです。 (^Д^,, )


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