241 名前:名も無きAAのようです :2014/08/03(日) 11:59:17 ID:.6xPr4Go0







川 ゚ 々゚)「ふりーらんすゆーふりーらんすみー♪」

川 ゚ 々゚)「ふりーらんすわーるどふりーらんすふぁっくゆー♪」

川 ゚ 々゚)「ふりーらんすぼーいふりーらんすがーる……♪」





.

242 名前:名も無きAAのようです :2014/08/03(日) 12:00:10 ID:.6xPr4Go0
夏は暑い。

蝉の鳴き声があまりにも姦ましいものだから窓は締め切った。
そのせいで熱気はますます室内に込もっていたのだが、あの鳴き声よりはマシだろう。
今朝、着替えたばかりのTシャツはまだ1時間も経って居ないというのに、じっとりと身体中にへばりついてくる。

エアコンもぶっ壊れ、扇風機すら無い我が安アパートに対抗する意味も込め、せめて少しでも暑さから逃れまい。とスウェットのボトムを随分前に脱ぎ捨てたのだが、結局のところ下着の方まで汗でぐちょぐちょになりやがったので意味は無かった。

こんなことなら初めっから服なんて着るんじゃ無かった。
どうせ外に出る用事なんかないのだから。
そんな事を考えながらジョルジュは本日3度目の溜め息を漏らし、ひたすらに右手でウチワの往復運動を続けていた。

243 名前:名も無きAAのようです :2014/08/03(日) 12:01:26 ID:.6xPr4Go0
川 ゚ 々゚)「ふりーらんすわーるどふりーらんすふぁっくゆー♪」


拷問的な暑さにすっかり蹂躙されきっているジョルジュの表情は、誰が見ても分かる程にげんなりと疲れきっていた。
その額から首筋にかけてはまるで豪雨にでもうたれたかのような汗の筋が無数に重力で垂れ下がっている。
そんな状態にも関わらず彼の視線はある一点に向けられており、眉間に汗の滴を含んだシワを作りながらも、目の前で調子外れの歌を歌う阿呆を睨み付けていた。


( ゚∀゚)「おい、うるさい」


こんな台詞を先程から、もう何度も言ってみたのだが、目の前で歌う阿呆は聞き入れようとはしない。

それどころか、やがて立ち上がり、くるくるとその場で回りながら歌い始める始末だ。

244 名前:名も無きAAのようです :2014/08/03(日) 12:02:21 ID:.6xPr4Go0
恐らく、本人はさながらバレリーナのように美しい回転運動を披露しているつもりなのだろう。
だが、目の前で見せ付けられているジョルジュからすれば調子に乗った酔っぱらいが千鳥足になりながらその場をくるくると回っているようにしか見えなかった。
ただでさえ間の抜けな歌声がぐわんぐわんと妙な抑揚をつけながら響き渡る。
その上、本人曰く自慢のセミロングの黒髪が遠心力に任せて広がるものだから溜まったものではない。


川 ゚ 々゚)「ふりーらんすゆーふりーらんすみー♪」


うだる熱気。
響く阿呆の歌。

ジョルジュは、とりあえず右手にもったウチワをくるくると回転する友人の頭に投げつけた。
スコ―ン。と少し気持ちいい音が響いたと同時に、うみゅう。とよく分からない悲鳴のようなものが響く。
やがて目の前の友人は大袈裟に頭を抑えうずくまった。
そして恨みを込めた、無駄にじっとりとした視線をこちらに寄越して来た。

245 名前:名も無きAAのようです :2014/08/03(日) 12:03:33 ID:.6xPr4Go0
ジョルジュはもう一度「うるさい」と言った。
最大限の嫌悪を込めた彼の声も目の前の阿呆には届かないようで、両手をバタバタさせ「ひどいひどい」と喚き始めながら、瞳をこれでもかと細めてじいっとこちらを見つめてきた。

その表情の真意がジョルジュには一瞬分からなかったが、ああ。なるほど。精一杯睨み付けてるつもりなのか。と理解すると、今度はもう少し大きな声でもう一度「うるさい」。と言っておいた。


川# ゚ 々゚)「酷いよジョル。くるくるが、せっかくクルクルしてたのに」

( ゚∀゚)「クルクルしてんのはテメエの頭で充分だろうが。うるさいんだよ、暑苦しい」


ジョルジュがそう吐き捨てながら、気だるげに身体を乗りだし、阿呆をしとめたウチワを拾い上げると、友人。素直くるうはジョルジュの隣にしっとりとくっついてきた。

246 名前:名も無きAAのようです :2014/08/03(日) 12:04:28 ID:.6xPr4Go0
川 ゚ 々゚)「でもくるくるは暑くないよ?ほら。くるくる、汗かいてないもん」


くるうは気の抜けるような笑顔でジョルジュに笑いかけた。
確かにその顔には汗の一滴も見当たらなかった。

ほんの一瞬だけ、こいつには体温が無いのでは無いかと疑ったジョルジュだったが、しっとりと自身の右腕にまとわりついた白い両腕の体温を感じると、その考えを即座に却下した。
そして手に持ったウチワを垂直にくるうの脳天に叩き落とすと「暑いから離れろ」と面倒くさそうに言った。

隣からはまた、うみゅう。と悲鳴らしきものが響き、また先程の無駄にじっとりとした視線がジョルジュの右頬らへんに、これでもかと注がれている。
その視線すらも、なんだか嫌な温度を纏っているようで、ジョルジュはシッシッと左手でくるうを追い払うジェスチャーをして見せた。
拗ねたような顔でジョルジュの事を見上げるくるうは抗議の声をあげた。

247 名前:名も無きAAのようです :2014/08/03(日) 12:05:34 ID:.6xPr4Go0
川# ゚ 々゚)「ジョル酷いよ。くるくるはジョルに構って欲しいだけなのに」

( ゚∀゚)「俺は野郎と引っ付く趣味なんかね―んだよ」

川 ゚ 々゚)「でも、くるくるは可愛いよ?くるくるは多分そこら辺の女の子より可愛いんだ。ハインちゃんよりも、多分可愛いぞ」

( ゚∀゚)「タコ。ハインの方がまだマシだったわ」


嫌悪の視線を注ぐジョルジュに対し、くるうはしっかりと彼の右腕にしがみつき、訴えるような、甘えるような、よく分からない表情をしてみせた。

唇を軽く尖らせ、上目でジョルジュのことを見詰めてる辺り、恐らく、少しでも自分の事を可愛らしく見せようと必死なのだろう。と何となく理解は出来た。
だが、その仕草すらもジョルジュにとっては暑苦しい障害にしかならなかったので、無理矢理にくるうの小さな身体をぐいっと押し退けた。

248 名前:名も無きAAのようです :2014/08/03(日) 12:06:44 ID:.6xPr4Go0
隣からは無言の抗議を続けるくるうの視線を感じたが、そのまま無視してウチワの往復運動に戻った。
そしてまた肩を小さく上下させながら溜め息を吐いた。


川 ゚ 々゚)「4回目だよ」

( ゚∀゚)「あ?」

川 ゚ 々゚)「溜め息。4回目。くるくるがジョルのお家に来てから、4回目だよ」

( ゚∀゚)「知るか。お前が暑苦しいから溜め息も多くなるんだろうが」


ジョルジュはくるうの声を遮るようにTシャツの裾をめくり上げ顔中を覆い隠し、額の汗を拭う為に顔に擦り付けた。
彼の視界が少々黄ばみがかった白い生地に支配される中、その耳に「違うよ」と小さな声が響いた。

249 名前:名も無きAAのようです :2014/08/03(日) 12:07:32 ID:.6xPr4Go0
隣に居た筈のくるうはいつの間にかジョルジュの目の前にいた。
Tシャツから解放された視界に、すぐさま四つん這いのくるうが居たものだからほんの少しだけジョルジュは内心驚いていた。


川 ゚ 々゚)「くるくるのせいじゃないの、知ってるもん」


距離にして、おおよそ10センチ程度。

陶器のように白い肌や無駄に大きい二重の瞳。
整った鼻筋や紅でも塗ったかのような柔らかそうな唇。
目の前のくるうの顔のパーツ全てが、何となくジョルジュには普段よりも美しく感じられた。
なるほど、こういう見かけの奴だからこそ、ホモみたいになっても不思議は無いのか。と妙な事を考えていた。

250 名前:名も無きAAのようです :2014/08/03(日) 12:08:37 ID:.6xPr4Go0
川 - 々-)「2ヶ月前からね。ジョルはいっぱい溜め息吐くようになったの」

川 ゚ 々゚)「ハインちゃんと別れてから、ジョルは
元気が無くなったの」





閉めきった窓の外から蝉の鳴き声が小さく響いた。
しっかりと自分を見つめる、くるうの責めるような視線から逃げるようにジョルジュは目を反らした。
そして小さな声で、「偶然だろ」と吐き捨てるように言った。

251 名前:名も無きAAのようです :2014/08/03(日) 12:09:56 ID:.6xPr4Go0
川 ゚ 々゚)「くるくるは知ってるもん。ジョルがハインちゃんの事をね。すっごく、すっごく大事にしていたの、知ってるんだ」

川 ゚ 々゚)「ジョルはね、真面目過ぎちゃったんだよ。だからね、きっと、ハインちゃんもジョルも疲れちゃったんだよ」

( ゚∀゚)「ホモの癖に知った口聞くなよ」

川 ゚ 々゚)「ホモじゃないよ。ただ好きな人がジョルなだけだし」

(;-∀-)「それをホモっつ―んだよ」


むう。と不満げな声をあげる、くるうの視線は未だにジョルジュから離れなかった。
やがて猫のようにゆっくりと四つん這いのまま近づくと、あぐらをかくジョルジュの膝の上にすっぽりとおさまった。
不快な表情を隠そうともせずに暑い。とぼやくジョルジュだったが、今度はその
身体を無理に押し退けようとはしなかった

252 名前:名も無きAAのようです :2014/08/03(日) 12:11:39 ID:.6xPr4Go0
川 ゚ 々゚)「くるくるはね。ジョルの事大好きなの」

( ゚∀゚)「おい、ホモ。キモいぞ」

川 ゚ 々゚)「だからね、ジョルには幸せになって欲しかったの。だからねジョル、もう前に進もう?」

( ゚∀゚)「無視すんなよ」

川 ゚ 々゚)「ジョルは真面目で一途だから、今は何も見えないかもしれない。でもね、それじゃつまらないよ」

( ゚∀゚)「……」

川 - 々-)「もっと自由になろうよ。色々楽しんで、色々愛して、色々キスして、色々セックスして」

川 ^ 々^)「上手く言えないけど、色々見て、色々感じて。その方が気持ちいいし、楽しいと思うの」

253 名前:名も無きAAのようです :2014/08/03(日) 12:12:40 ID:.6xPr4Go0
ジョルジュはくるうが何を訴えたいのか理解は出来なかった。やはりくるうはどこまでも阿呆なのだ。

ただ、それでも、何となく、感じる事は出来た。
つまり、今、彼の膝の上で見つめてるこの友人は。


( -∀゚)(慰めてんのか。一応)


暑さはひかない。
それどころか膝の上に居座るくるうのせいで、ますます汗の量が増えていた。
調子外れな歌を撒き散らし、どこまでも空気の読めない阿呆な存在。
ただ、ジョルジュの心は軽くなっていた。
それは間違い無く、くるうのお陰なのだろう。


川 ゚ 々゚)「だからね。先ずは手始めに」

254 名前:名も無きAAのようです :2014/08/03(日) 12:13:54 ID:.6xPr4Go0




川 *- 3-)「くるくるとあつ―いチューを……」




ふざけた発言をしながら唇を近づけるくるうの脳天に、ジョルジュは容赦なくウチワを叩き落とす。
ついでにそのまま膝の上から無理矢理押し退けた。
くるうはふぎゃあ。と間抜けな悲鳴をあげながら床の上をごろごろと転がっていった。





前言撤回。こいつのお陰では無いと思う。

255 名前:名も無きAAのようです :2014/08/03(日) 12:17:04 ID:.6xPr4Go0
川# ゚ 々゚)「むう!酷いよジョル!!」

( ゚∀゚)「うっさいホモ野郎。とっとと帰れ」

川# ゚ 々゚)「ひ―ど―い!!統治国家はセクシャルマイノリティ―に優しくなるべきだ―!!」

( ゚∀゚)「日本は統治国家じゃね―だろ。タコが」

川; ゚ 々゚)「うえ!?あれ?じゃあ日本政府??……とにかく、せめてジョルはくるくるに優しくなるべきだ!」

( -∀゚)「うるせ―な。おら。ウチワにでも優しくしてもらえ」

川 #> 々<)そ「ふぎゃあ!また投げたな!?酷すぎるぞジョル!!」




ジョルジュはすっかりぐちょぐちょになったTシャツを脱ぎ捨てると、立ち上がり窓を開けた。
窓越しに聞こえていた蝉の鳴き声が大音量で室内に響き渡る。


( ゚∀゚)「暑いな」


相変わらず夏は暑い。
ただ、それでも窓を閉めきった時と比べればその暑さも幾分かはマシになった。

256 名前:名も無きAAのようです :2014/08/03(日) 12:18:15 ID:.6xPr4Go0
川 ゚ 々゚)「ふりーらんすゆーふりーらんすみー♪」

川 ゚ 々゚)「ふりーらんすわーるどふりーらんすふぁっくゆー♪」

川 ゚ 々゚)「ふりーらんすぼーいふりーらんすがーる……♪」





いつの間にか再会した、あの間の抜けた歌声
に合わせるように、一際大きく蝉が鳴いた。

阿呆とデュエットでもしてるのだろうか。
そんな下らない事を考えていたジョルジュの顔は、いつの間にか今日の空模様のように晴れやかになっていた。


戻る




inserted by FC2 system