108 名前:名も無きAAのようです :2013/02/07(木) 00:26:11 ID:cfaLSCf.0

川 ゚ -゚)『親愛なる故郷の妹達へ。

     元気にしているだろうか。私は今、遠き北極海に浮かぶ船の上からこの手紙をしたためている。
     船は現在氷と吹雪に阻まれ、洋上で絶賛立ち往生中だ。
     幸いにして燃料や食料は大量にあるしいざとなればすぐ救助も呼べるから遭難の危険は無いが、どうにも時間が余って仕方がないのが現状というわけだ。

     なので今日は、先日私が聞いたある人物の体験を記そうと思う。
     この不毛であらゆる生物の存在を拒むかのような最果ての地で、私はある人物との出会いを果たした。
     これから記す物語は、彼女が今わの際に私達に語ったものだ。それが真実であるかどうかはさておき、どうか聞いて貰いたい。

     ある科学者と――――いや、私はあえて彼らのことをこう呼びたいと思う。悲しいすれ違いから悲劇の主人公となってしまった、ある《親子》の物語を。』

109 名前:名も無きAAのようです :2013/02/07(木) 00:28:10 ID:cfaLSCf.0

从*゚∀从「は、はは……! やった! 成功だ!! 私はついにやったんだ!! あははははは!!」

《親》の名は、ハインリッヒ高岡。
最先端の自然科学を修めた彼女は、胸の内に途方も無い野心を抱いていた。

それは、『自らの手で生命体を、万物の霊長たる人間を創りだしたい』。つまり、『人間の創造主となりたい』というものだった。

从*゚∀从「さぁ、目を開けてくれ……愛しい《我が子》よ」

彼女は狂気をも孕んだ実験を繰り返した末、ついに実験に成功する。

十一月の或るもの寂しい夜のこと。
誰も知らない研究室の中で、《子》は死体を繋ぎ合わせたその身体に命を与えられた。

しかし。

(//‰ ゚)「…………」

命を与えられた《子》は素晴らしい体力と知性、そして確かな人間の心を持っていた。

だが、ただひとつ。その容貌は、余りにも醜かった。

从 ゚∀从「……違う」

从; ∀从「違う……! 私が、私が創りたかったのは……! 怪物め。あぁ、私はなんてことを……っ!!」

その姿を見た彼女は、自らの行為が神をも恐れぬ冒涜的行為だったと恐怖した。

そして自らが創った人造人間を『怪物』と呼び、その存在を否定した。

110 名前:名も無きAAのようです :2013/02/07(木) 00:30:16 ID:cfaLSCf.0

(//‰ ゚)「…………」

(//‰ ゚)「…………なん、で……?」

名前さえ与えられなかった『怪物』は、姿を消した自分の造り主を追い求めた。


(//‰ ゚)「あの、すみません……」

(;^Д^)「う、うわぁぁぁぁぁっ!! バケモノだ!! バケモノが出た!!」

(;ФωФ)つ┏「近付くでない! それ以上一歩でもこっちに来たら撃つのである!!」

(//‰ ゚)「…………」

『怪物』は造られた存在ではあったが、普通の人間となんら変わらぬ、繊細で清らかな心を持っていた。

だがその醜さは、それが人間の世界に受け入れられることを許さなかった。

111 名前:名も無きAAのようです :2013/02/07(木) 00:32:07 ID:cfaLSCf.0

(//‰ ゚)「……やっと、見つけた」

从;゚∀从「なんで……ここに、お前が……? どうして……どうやって生き延び、辿り着いた……?」

幾多の困難を経て、『怪物』は再びハインリッヒを見つけ出す。

(//‰ ゚)「私の願いはただひとつ。私の生涯の伴侶となり得る、私と同種の……『怪物』を、もう一人造ってほしい。
     それさえしてくれれば、私は二度と人の世界に姿を現さないと約束します」

それだけが、苦しみの果てに『怪物』が求めた、たったひとつの願いだった。

从 ゚∀从「……はん。お断りだね」

だが、やっと出会った造り主は『怪物』のその願いを拒否した。

从 ゚∀从「お前みたいな出来損ないのバケモノをもう一人? 冗談じゃない、バケモノは一人でも多すぎるんだよ。
      お前は在ってはならない存在だ。これ以上バケモノを増やすことなんて出来るものか」

(//‰ ゚)「…………」

『怪物』は、絶望した。

从 ゚∀从「……仮にも、私はお前を創った人間だ。ここでお前を殺すのはしのびない。
     どこか遠く、遥か人里離れた場所で永遠に暮らしてくれ。準備に金が入り用ならある程度は用意する」

(//‰ ゚)「…………」

そして、全てを憎悪した。

112 名前:名も無きAAのようです :2013/02/07(木) 00:34:05 ID:cfaLSCf.0

  _
(  ∀ )

从 ー 从

从; ∀从「父さん、母さんっ!! ウソだろ……? なんで、なんでこんな……っ!!」

(´・ω・`)「目撃証言では、ツギハギだらけの怪物のような生き物が家に入っていくのを見たと……。にわかには信じ難いですが……」

从; ∀从「!!」

(´・ω・`)「……まぁ、月の出てない雪降る夜のことです。なにかの見間違いかと……」

从; ∀从「…………アイツだ……」

憎悪の果てに、『怪物』は殺人者となった。

从 ゚∀从「…………甘かった。私が、アイツを殺さないといけないんだ」

そして、互いが互いの存在を滅ぼす為の追跡劇が始まった。

113 名前:名も無きAAのようです :2013/02/07(木) 00:36:20 ID:cfaLSCf.0

数多の出来事の果てに、両者は北極圏の荒涼たる雪原で最後の邂逅を果たす。


(//‰ ゚)「……あの後、私はずっと貴女に問いたかった」


(//‰ ゚)「私は、貴女の『作品』でしかなかったのですか?」


(//‰ ゚)「私は科学者としての仕事の『成果』で、そこに私という独立した人格としての『他者』の存在を、認めてはくれなかったのですか?」



(//‰ ;)「…………ねぇ、《お母さん》。愛そうとしないのに――――何故、私をつくった?」












原作:メアリー=シェリー著・『フランケンシュタイン、或いは現代のプロメテウス』(1818年)



    (//‰ ゚)ハインリッヒ氏と被造物のようです



俺が北極点に到達できたら投下開始


戻る inserted by FC2 system