- 169 名前：名も無きAAのようです ：2013/07/05(金) 00:04:30 ID:pMAZDaew0
- （ ＾ω＾）「大丈夫だお、息をゆっくり吐くお」
从；ﾟ∀从「お、おう」
ハインはいつの間にか止めていた息をゆっくりと吐き出した。
頭の奥はじんわりと熱を持っている。
一気に情報を詰め込まれて、処理しきれていない部分もある。
だが、背後に佇む男の存在を一度認識すれば――
（ ＾ω＾）「僕が、絶対に勝てるようにさせてみせるお」
早く情報を理解して、この男の望むとおりにならねば、と。
自然とハインは、そういう気持ちにさせられた。
从 ﾟ∀从ゴールデンタイムラバーのようです
- 170 名前：名も無きAAのようです ：2013/07/05(金) 00:06:05 ID:pMAZDaew0
-
（ ＾ω＾）「じゃあ、ルールを復唱するお。
武器は何を使ってもOK。一対一であるなら特に禁止事項も無し。
勝利条件は相手を戦闘不能にすること。戦意喪失から殺害まで、これも特に制限なし」
从 ﾟ∀从「大丈夫だ」
腰に携えたレイピアが重く感じる。
男に確認されるルールを口の中で繰り返す度、気分は沈み落ち込んでいった。
从；ﾟ∀从（……本当に、）
本当に、できるのか？
心の中で、問い続ける自分がいる。
そして、それを掻き消すように「勝ってみせる」と叫び続ける自分もいる。
どちらにせよ、不安であることには違いない。
そう思って自嘲するように一人で笑うと、男の手が視界の端で伸びた。
ぽん、と。両肩を優しく叩かれる。
それに驚いて、ハインは弾かれるように顔を上げた。
- 171 名前：名も無きAAのようです ：2013/07/05(金) 00:07:56 ID:pMAZDaew0
- （ ＾ω＾）「大丈夫だお」
いつも優しい笑みを浮かべ、目を細めていた男の瞳の色を、そこで初めて知った。
ハインから見て右の瞳は永く生きた樹を思わせる琥珀。
左の瞳は深海を思わせる碧。
どこまでも透き通るその二つの瞳が、ハインを真っ直ぐ見つめている。
（ ＾ω＾）「できるお。君なら」
从 ﾟ∀从「……ああ」
不思議だ、とハインは微笑んだ。
あんなに不安だったのに、今はもう晴れ晴れとした気持ちで心が澄み渡っている。
体さえ軽いような気がした。
男の瞳には、自然と納得できてしまうような不思議な力があった。
- 172 名前：名も無きAAのようです ：2013/07/05(金) 00:09:08 ID:pMAZDaew0
-
从 ﾟ∀从「やってやるさ！」
勇ましく、一歩を踏み出す。
途端カッと襲い掛かる日の光に、ほんの少しだけ目を細めた。
悲鳴とも歓喜ともとれるような、そんな耳障りな大量の声が耳に飛び込んでくる。
ハインは口元を歪めると、腰に差していたレイピアを抜き放った。
―
ミ,,ﾟДﾟ彡「……気の毒になあ」
相対する青年が、ハインを見てそう言った。
同情と、それと隠しきれない優越感を含んだそれにハインは「は？」と不快も露わに聞き返した。
無礼だと憤慨してもいいくらいのハインの態度を、青年は気にするでもなく軽く首を振ると肩を竦めた。
ミ,,ﾟДﾟ彡「お前、まだ子供だろう。ここが何か理解してるのか？」
从 ﾟ∀从「……何が言いたいんだよ」
ミ,,ﾟДﾟ彡「こんな殺し合いをメインに楽しまれてるようなとこにのこのこやって来て、よっぽどの死にたがりに見える」
- 173 名前：名も無きAAのようです ：2013/07/05(金) 00:10:02 ID:pMAZDaew0
- マイクなんてものは付いていない。
だから観客は何を話しているか――むしろ会話しているなど思っていない――全く関係なく、これから繰り広げられるであろう死闘に意味の無い声を上げ続ける。
ハインは嘗められているなと思いながら、表情は興味無さげに、視線は青年の腰に遣っていた。
クラシカルなデザインをしたホルダーだ。
そして、ホルダーがあるなら必然的に――銃が入っている。
从 ﾟ∀从（銃は厄介だな。開始早々近接戦に持ってってさっさとケリ着けるか）
（ ）「それでは」
突如聞きなれない女の声が割り込む。
だが、ハインと青年はその声に見向きもしないまま、互いを見つめている。
女の声に観客は水を打ったように静かになった。
- 174 名前：名も無きAAのようです ：2013/07/05(金) 00:11:09 ID:pMAZDaew0
- じっと黙って、沈黙が破られるのを待っている。
（ ）「戦闘を開始します」
その声と同時に動いたのはハインだった。
後ろ脚に溜め込まれていた力で地面を蹴り上げると、その凶暴なスピードでもって青年との距離を半分にまで詰めた。
从 ﾟ∀从（いける！）
青年はやっとグリップに手をかけたところだ。
青年が銃をホルダーから抜き、構えて、照準を合わせて引き金を引くことと、ハインが走ってレイピアを突き出すことを比べればハインの方が圧倒的に速い。
一歩、また地面を強く蹴る。
青年の銃を持つ腕めがけてレイピアを突き出した――はずだった。
青年の姿が、視界から消えた。
从；ﾟ∀从「――、え？」
- 175 名前：名も無きAAのようです ：2013/07/05(金) 00:12:15 ID:pMAZDaew0
- がくん、と前に進もうとした足が止まる。
次の瞬間には、逆方向に体が投げ出されていた。
ミ,,ﾟДﾟ彡「甘いんだよ、ガキが」
背中を強く地面に打ち付ける。
硬い石に容赦なく滑りながら打ち付けられて、呼吸が止まり、ずっと嫌な音と共に皮膚が激しく擦れた感覚がした。
背中からの衝撃を受け止めた後は、鳩尾だ。
鳩尾に重い痛みが走って、遠くなりかけた意識を背中の痛みで繋がれる。
何が起こったのか、全く分からなかった。
ミ,,ﾟДﾟ彡「銃持ってたから近接戦が苦手だとでも思ったか？ そんなわけねーだろうが」
青年の靴音が聞こえる。
地面に寝転がっているからかごつ、ごつと耳に響くその音はミリタリーブーツのようだった。
- 176 名前：名も無きAAのようです ：2013/07/05(金) 00:13:20 ID:pMAZDaew0
- ミ,,ﾟДﾟ彡「近接戦が得意だから銃を持ってきたんだよ。長所しか磨かねえなんて馬鹿がすることだ。短所も補わねえと生き残れねえ。
覚えたか、ガキ」
まあ、その必要もねえだろうがな。
かちゃり、と音がする。
痛みに歪めた瞳を動かせば、青年がハインの眉間目掛けて銃口を向けていた。
ぐ、と唇を噛む。
从 ﾟ∀从（まだだ）
諦めるもんか！
ハインは睨み付けるように青年の動きをつぶさに観察した。
青年はそんなハインを見て、「じゃあな」と無感情な別れを告げた。
- 177 名前：名も無きAAのようです ：2013/07/05(金) 00:14:26 ID:pMAZDaew0
- 青年の人差し指が伸びる。
確認するように一、二度触って、引き金にかかった。
く、と人差し指が曲がる。
力が込められ、
从 ﾟ∀从（今だ！）
从 ﾟ∀从「っああああああ！！」
ミ;,ﾟДﾟ彡「！？」
ハインは叩き付けるように叫ぶと、力無く投げ出していた右腕を持ち上げて、持っていたレイピアを突き出した。
成功するかは分からなかった。
あまり狙いを定められることを期待せずに、全力で突き出したレイピアの先が、
奇跡的にハインの狙い通り、銃口に突き刺さる。
- 178 名前：名も無きAAのようです ：2013/07/05(金) 00:15:24 ID:pMAZDaew0
- そのまま発砲すれば、暴発とまではいかないがレイピアが発砲の衝撃で粉々に割れるだろう。
そしてその破片が自分の方に飛ぶ可能性が、ゼロとは言い切れない。
一瞬のうちに巡った思考は、結果、青年の行動を止めることになった。
ハインは痛む体に鞭打って、飛び起きると青年の懐に潜り込んだ。
地面を踏みしめ、体を捻って――渾身の右拳を、青年の顎目掛けてぶつけた。
ミ;,ﾟДﾟ彡「っぐ――」
女の、ましてや子供の力であっても、呆けていた青年にとっては少なくないダメージになる。
顎に衝撃を受けたせいでふらついた体を、ハインはすかさず胸倉を掴んで地面に押し倒す。
あとはもう勢いだ。
- 179 名前：名も無きAAのようです ：2013/07/05(金) 00:17:05 ID:pMAZDaew0
- 地面に倒れた青年の上に立ち、ハインの左足は青年の右肩を、右足は喉元に当てられている。
青年の左手は銃を握ったままだ。
从 ﾟ∀从「ッ」
瞬間的に、ハインは息を止める。
それを合図にしたかのように、観客がワッと湧いて暴力的な歓声がその場を支配した。
ミ,,ﾟДﾟ彡「……どうした。さっさと、殺せよ」
喉に足を乗せられている青年は、若干の苦しさを感じながらそう言った。
体重を乗せられれば、首の骨は折れるだろう。
そう覚悟を決め、目を閉じた時だった。
从 ﾟ∀从「つまり、戦いを放棄したってことでいいんだな？」
ミ,,-Дﾟ彡「……は？」
- 180 名前：名も無きAAのようです ：2013/07/05(金) 00:19:23 ID:pMAZDaew0
- 上から降ってきた声に青年は素っ頓狂な声を上げる。
一体何を、と思っている間にも喉の圧迫感が消えて肩の重みも消えてしまう。
从*ﾟ∀从「うし。勝った」
ミ;,ﾟДﾟ彡「ちょ……っと待て！？」
从 ﾟ∀从「なんだよ。言っとくけど」
从 ﾟ∀从「殺さないぞ、オレは。これからもずっと」
ミ;,ﾟДﾟ彡「……はああ！？」
二度目の声を上げた青年からすいと視線を逸らしたハインは、顔を上げる。
ξ ﾟ⊿ﾟ)ξ「戦闘を終了します」
そう宣言した、女を見上げて。
- 181 名前：名も無きAAのようです ：2013/07/05(金) 00:20:50 ID:pMAZDaew0
- 从 ﾟ∀从「そっから引きずり降ろしてやるよ、せいぜい待ってろ」
敵意を剥き出しに、そう呟いた。
从 ﾟ∀从ゴールデンタイムラバーのようです・終わり
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