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昔々、ある所にデュエルキングがいました。
彼は10年もキングの座を守り続けた凄いデュエリストです。
そのキングは皆から尊敬され、美人の妻と父親にも劣らないデュエルの才能を持つ息子を持ち、幸せに暮らしていました。
だが、悲劇が起きた。
キングはある男にデュエルを挑まれました。
そのデュエルは断る事ができませんでした、何故なら妻を人質に取られていたからです。
キングは男とのデュエルに敗れ、二度と帰らぬ人になりました。
死体は残りませんでした。残っていたのはデッキと衣類だけでした。
妻の心は壊れ、息子の心は闇の中に閉ざされました。
数年後、キングの息子は中学を卒業してデュエルアカデミアに進学していきました。
心が壊れたキングの妻は必至に止めました、キングの様にデュエルに息子が殺されるからと思ったからです。
だが、母を振り切り、少年はアカデミアに行きました。
少年には目標があったからです。
それは、全てのデュエリストを血祭りに上げ、デュエルモンスターズというものを壊してやろうというものでした。
そう、少年の心もとっくの昔に壊れていたのです。
父を殺したデュエリストの事を考えれば考えるほど憎しみが増していき、溢れ出す憎しみは、やがて、その対象は父を殺したデュエリストだけではなく、
全てのデュエリスト、そして、デュエルモンスターズに乗り移っていったのです。
デュエルアカデミアに入学した少年はデュエリスト狩りを行いました。
彼はキングの息子です、キングの血に加え、小さい時からデュエルキングにデュエルを教わっていたのです。
並の教育を受けてきたデュエリストなど相手になるはずがありません。
そんな少年の前に一人の少女がデュエルを挑みました。
少女はとても強く、少年はじわりじわりと追い込まれていきました。
そして、ついに少年の場、手札は全て0になってしまいました。
勝負を諦めた少年、少女は言いました、
「お前はデュエリストとデュエルモンスターズを憎んでいるのかもしれない、だが、お前のデッキはきっとお前の事が大好きなんだ。
カードをドローしてみろ、答えはそこにある」
少年はカードをドローしました。
それはかつて、少年が最も愛したカードでした。
究極宝玉神レインボー・ダーク・ドラゴン。
何故か分からないが涙が出てきました。
溢れ出る涙は少年の憎しみなど非にならないほどでした。
少年は思い出しました。
自分はデュエルモンスターズが大好きだったという事を。
少年はレインボー・ダーク・ドラゴンを召喚し、攻撃しました。
少女はにっこりと笑って言いました、
「だが、それとこれとは別だ」
リバースカードが発動します、聖なるバリア-ミラーフォース-
レインボー・ダーク・ドラゴンは破壊され、少年の敗北が確定しました。
少年は唖然としました。
デュエルが終了し、少女が少年に近づいてきました。
少女は少年に手を差し伸べ、
「これで私とお前は仲間だな」
少年は首を傾げました。
「デュエルしたんだから私とお前はもう仲間だろう?」
どう言う理屈でしょうか、疑問に思いつつも少年はその手を握りました。
デュエリスト狩りが原因でクラスは最低ランクのオシリスレッドに落ち、その寮で相部屋となった少年。
その出会いは両者にとって大きな出会いでした。
この出会いによって後に、少年は最もキングに近くて遠い男と呼ばれることになる。
少女と友人と共に過ごした学園生活で少年の心に変化が起きた、それは今までに無かった事だ。
心を閉ざしていた自分を救ってくれた少女。
彼女に対する自分の想いが恋だと知るのにはずいぶんと時間がかかった。
少年は少女に想いを伝えた。
少年の想いは伝わった、だが…
少女も、キングを殺した男に恨みを持つものだったのだ。
彼女は言った、
「すまない、私が君に近づいたのはあの男に一歩でも近づくためだったんだ」
少女は泣いて謝った。
何で彼女が泣きながら自分に謝っているのかが少年には分からなかった。
彼女もまた、少年に恋心を抱いていた。
だが、少年の想いに答える事はできない、なぜならば。
少女は既に後一歩の所まで来ていたのだ。
そう、キングを殺した男の正体まで。
そして覚悟していたのだ。
死を。
数ヵ月後、彼女は行方不明になった。
その5日後にアカデミアの森の中で少女のデッキと衣類が見つかった。
少年は少女の部屋であるメモを見つけた。
それを見た彼は───
???「男の話はここまでだ
メモには何か書いてあったのか、それを見た少年がどうなったのかについてだが…」
???「それは自身の目で確かめるといい」
続く
予告
仲間の協力でイリーガルデュエリストの四天王を全て倒し、謎のパーツを全て集めたモララー。
ついにモララー、そして彼の運命の歯車が回り始める。
第十話「ボス」
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