921 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 14:22:00 ID:H9mWz/r60

≪1≫


 デミタスとシャキンの出会いは二十年ほど前に遡る。

 当時のシャキンは極めて内向的な子供だった。
 だがそれは第三者の認識であって、そういった気性の自覚は本人には微塵もなかった。
 周囲の子供より多少大人びているというだけで、半ば強制的に、彼は独りぼっちの寂しい子供というレッテルを張られていたのだ。

 当時のシャキンが子供らしからぬ雰囲気になったのは、彼の超能力が原因だった。

 全てを完全無効化する能力、 『完全五分(パーフェクト・ドロー)』 。
 子供シャキンにはこの超能力が扱いきれず、超能力が勝手に発動しては人の声など社会生活に必要なものを片っ端から無作為に無効化してしまっていた。
 結果、無という概念を常に身近に感じていたシャキンは、それに順応する為に言動や考えが大人びていったのだ。


(`・ω・´)(目が見えなくなったら、あぶないから立ち止まる)

(`・ω・´)(耳がきこえなくなったら、ノートにかいてもらう)

(`・ω・´)(ぜんぶなくなったら、じっとしてまつ)


 不規則に目や耳が不能になり、最悪の場合では五感すら消えてしまう危険な日常。
 小学校の登下校は毎日親の送り迎えが必須で、少しは超能力を抑えられるようになった小学校高学年まで、彼は不自由な生活を余儀なくされていた。

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922 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 14:22:42 ID:H9mWz/r60


 小学校高学年の頃、シャキンは親の都合によって人生初の転校を体験する。
 そこで彼は後生の腐れ縁、盛岡デミタスと出会うのだった。

 厳密には、デミタスと出会ったのは学校ではなく彼の自宅。
 デミタスはいわゆる不登校生徒で、シャキンが彼の家にプリントを持っていったのが出会いの発端だった。


 デミタスの超能力、『毒の姫君(ポイズン・メイデン)』もまた、子供には到底扱いきれない危険な能力だった。
 当時のデミタスは、光があれば勝手に吸収して毒を生み出してしまう大変な感じの子供だった。

 当然学校で毒を垂れ流す訳にもいかず、デミタスは必然的に不登校になった。
 シャキンと似たような生い立ちだが、二人の相違は超能力そのものに対する周囲からのイメージであった。

 シャキンの場合は無差別無効化という、言ってしまえば障害染みたものであり、周囲からの理解を得るのもそう難しくなかった。
 しかしデミタスの場合は毒。それが周囲に与えるイメージは極めて劣悪で、親も同年代の子も、デミタスを汚物のように取り扱っていた。


(´・_ゝ・`)(この世はクソッタレだ)


 必然的にグレた。
 性格がひねくれたのも、この頃の生活が原因だった。

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923 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 14:23:48 ID:H9mWz/r60


 ところが完全無効化能力のシャキンにはデミタスの毒がまったく効かなかった。
 グレたデミタスには逆にそれが腹立たしかったが、初めてまともに話せる相手として、シャキンとは特別仲良くなった。
 後日、シャキンが近くに居れば毒が無効化される事が判明。学校との相談の結果、デミタスも学校に行けるようになった。



 二人が超能力を十分に扱えるようになったのは高校入学からしばらく経った頃。
 それから間もなくして、今の二人を決定付ける事件が起きたのだった。


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924 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 14:24:45 ID:H9mWz/r60

≪2≫


 夏休み中盤でありながら補習地獄で夏休み気分をまったく謳歌出来ていない高校生が二人。
 盛岡デミタスはぐったりと椅子に掛けて天井を見上げたまま、大粒の汗を流しながら時間の経過を待っていた。

(;´・_ゝ・`)「くだらねぇー……なにが勉強だバカヤロー……」

(;´・_ゝ・`)「お前は楽そうでいいよなぁ……」

(`・ω・´)「超能力サマサマだ」

 シャキンは超能力のおかげで暑くない。とても快適。



( ^ν^)「……お前らよぉ」

 灼熱の補習室にはもう一人、監督役の教師が居た。
 『鵜入速人』は椅子に逆向きに座り、背もたれに肘をついて二人を眺めていた。

( ^ν^)「ただでさえ金にならねえ事で時間潰してんだからよぉ……。
      せめてこの時間が無駄じゃねえと思わせてくれよ……」

(# ^ν^)「いい加減、暑すぎてムカついてきた……」

(;´・_ゝ・`)「じゃあ帰れよ……俺らも帰れるし一石二鳥なんだが……」

( ^ν^)「お断りだ、ここ終わったら次は部活顧問の仕事なんだよ……」

(;´・_ゝ・`)「てめえサボりかよ、ゴミカス……」

( ^ν^)「罵倒すら満足にできねぇインテリバカが……」

(;´・_ゝ・`)「童貞インポハゲワキガハゲハゲハゲハゲハゲハゲ……」

( ^ν^)「悪口言えばいいってもんじゃねえよ……」

(;´・_ゝ・`)「お前の苗字ひらがなで書くぞ……」

( ^ν^)「コンプレックスには触れるな」


 ※鵜入(うにゅう) 声に出すとキツイ

例:( ^ν^)「うにゅ〜ですっ☆」

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925 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 14:25:46 ID:H9mWz/r60


 そのときチャイムが鳴り響いた。
 デミタスは歓喜の呻き声を上げて椅子から転がり落ちた。雑巾のように床を滑った。

(;´・_ゝ・`)「終わった〜〜〜〜」

( ^ν^)「何も終わってねえよ明日も補習だ。ざまあみろバーカ」

(;´・_ゝ・`)「これがいい年した大人のセリフかよ……オタサーの姫みたいな苗字しやがって……」

( ^ν^)「触れるなと言った」

(`・ω・´)「おい、帰りたいんだろ。さっさと片付けろ」

 先に帰る準備を済ませていたシャキンが冷ややかに促す。
 デミタスは重い腰を上げ、荷物をカバンに詰め始めた。

( ^ν^)「しかしお前も災難だな、こんな奴のお守りを何年も」

(`・ω・´)「今更ですよ、それに大した仕事でもないです」

( ^ν^)「仕事の時点で災難だ。良い社畜になれるぞお前は」

(´・_ゝ・`)「おっしゃ帰ろうぜ」

( ^ν^)「おぉ帰れ帰れ。そんじゃあまた明日な、お疲れさん」

(`・ω・´)「どうも」

(;´-_ゝ-`)「帰って寝よ……」

( ^ν^)「あぁデミタス、てめぇは後で職員室だ。夕方ぐらいに来い」

(;´・_ゝ・`)「分かってるよ、じゃあな……」

(`・ω・´)「……」

 デミタスとシャキンは補習室を出て、炎天下の中、岐路についた。

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926 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 14:26:28 ID:H9mWz/r60


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



(`・ω・´)「――順調なのか?」

(´・_ゝ・`)「ああ、順調に連鎖を組み上げてるところだ」

 あまりの暑さに耐えかねた二人は、少し寄り道してゲームセンターに退避していた。
 デミタスは椅子に座って筐体画面に集中している。
 画面上には、ぷよぷよとしたぷよぷよが規則的に積み上げられていた。

(`・ω・´)「ニュー先生との話だ。お目当ての能力者は見つかったのか?」

(´・_ゝ・`)「それか。まぁ見つかるには見つかるんだが、やっぱ俺の方が強すぎて全然ダメだ」

(`・ω・´)「そうか……気の長い話になりそうだ」

(´・_ゝ・`)「はなっから俺はやる気ねーよ。あいつが勝手に俺を連れ回してるだけだっての」

(´・_ゝ・`)「おいシャキン見とけ――起爆っ」

 画面上のぷよぷよとしたぷよぷよが、デミタスの一手で連鎖を始めた。
 連鎖は瞬く間に伸びていき、画面の殆どを埋めていたぷよぷよは、最終的に10連鎖分の邪魔ぷよとして相手プレイヤーに送りつけられた。

(´・_ゝ・`)「……つまんね」

 デミタスは連鎖の完成を見届けると、席を立ってフラフラとどこかへ歩いていった。

(´・_ゝ・`)(世の中つまんねー事だらけだ……正気を保つので精一杯だぜ……)

 それからも、二人は日が落ちる頃までゲームセンターで時間を潰した。

(´・_ゝ・`)「じゃあな」

(`・ω・´)「ああ」

 デミタスはシャキンと別れ、ニューとの約束のために学校に戻っていった。

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927 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 14:27:52 ID:H9mWz/r60

≪3≫


 デミタスの超能力『ポイズン・メイデン』は言わば爆弾だった。
 今でこそ辛うじて制御できているが、それが何を切欠に暴走するかは誰にも分からない。
 毒の能力が制御不能であるという事は、本人にとっても誰にとっても危険極まりない状態なのだ。


 デミタスの担任であるニューは、彼の超能力の不安定さを誰よりも危険視していた。
 学校側に直訴し、デミタスとシャキンを一般クラスから引き離したのもニューである。

 わざわざ二人の為に特別クラスを設けた目的は二つ。
 デミタス自身が超能力を制御出来るよう訓練させる事。
 そして、彼の超能力に改悪形態を作り出す事だった。

 結論から言うと、以上二つの項目は今でも達成出来ていない。
 ニューが二人の担任になって既に二年。成果と呼べるものは何も無い。
 せいぜいデミタスの成績が最悪から普通になった程度で、超能力自体に大した変化はないままだった。

 そんな中、ニューが思いついた行動は実力行使だった。

 デミタスをボコボコにして戦闘不能寸前にまで陥れ、トラウマを植えつけて超能力を使えないようにする。
 それは、超能力者に起こりうる現象として 『ブラックアウト』 と名付けられている現象だった。
 現象の内容は、強い心的外傷、生死を彷徨う重症などを切欠に超能力が使えなくなるというもの。

 ニューはそれを狙い、夜な夜なデミタスを街に連れ出しては、彼をより強い能力者と戦わせていたのだった。

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928 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 14:29:46 ID:H9mWz/r60


 学校でニューと落ち合ったデミタスは、そのままニューの車に乗り込んで夜の街に出発した。
 窓に差し込んでいた夕日は徐々に暗闇に染まっていき、街灯ばかりがデミタスの顔を照らすようになった。
 いよいよ景色を眺めるのも飽きてくると、デミタスは運転席のニューに渋々話しかけた。

(´・_ゝ・`)「徒労だと思うぞ。随分と長い間、俺に手間暇かけてるけどな」

( ^ν^)「徒労なんて言葉はな、結果を出せなかった人間の負け惜しみなんだよ。
      周囲の人間に『お前は無駄な努力をした』って思われたくない奴の、そういう言葉だ」

(´・_ゝ・`)「知らねぇよ……。大体な、なんでわざわざ弱くなる必要があるんだよ」

( ^ν^)「お前が弱いからだ。化けの皮は若いうちに捨てておけ」

 運転しながら、ニューはデミタスを横目に一瞥した。

( ^ν^)「細かく言えば、お前は精神と超能力の強さが釣り合ってない。
      強すぎる能力を扱うには、それと同等以上の精神力がなけりゃ駄目だ」

(´・_ゝ・`)「……そんな脆いハートしてねぇけどな、少なくともお前より」

( ^ν^)「そうやって。すぐ人と比べる」

(´・_ゝ・`)「揚げ足取りか?」

( ^ν^)「他人が居なけりゃ自分の立ち位置も分からねぇガキは山ほど居る。
      いちいちガキ同士馴れ合って、人を小馬鹿にしながら、自分は違うと唱え続ける……そんなクソガキだ」

(´・_ゝ・`)「……国語のセンセは話が長くて堪んねぇな……」

( ^ν^)「くだらねぇ生き方をすんなって話だ。常識に怯えきった思考停止バカ大学生にはなんなよ」

(´・_ゝ・`)「大学生か、くだらねぇ……」

( ^ν^)「……俺はお前のそういう所を見込んでるんだ」

(´・_ゝ・`)「くだらねぇ事は大嫌いだ、言われるまでもねぇ」

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929 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 14:30:29 ID:H9mWz/r60


( ^ν^)「今日も前と同じ場所をうろつく。寄り道はナシだ」

(´・_ゝ・`)「あのラブホだらけの所か……イカ臭くて気分が悪くなる」

( ^ν^)「こないだ倒した奴が何人か強いのを集めてくれたそうだ。
      今日こそズタボロに負けて来い」

(´・_ゝ・`)「あいよ……」

 デミタスは視線を外に戻し、ガードレールの上に忍者を走らせ始めた。
 今日こそとは言うが、彼は今日も自分が負ける事は無いと予感していた。

 何か理由や自信があっての予感ではない。
 それはただの直感であり、本人にしか分からない絶妙な感覚だった。
 そして、デミタスの予感が外れた事は一度も無い。

 ニューは適当なコインパーキングに駐車して車を降りた。
 デミタスが後に続いてくるのを確認し、呼び出された場所へと歩き出す。

 二人は道中で少しだけ言葉を交わしたが、そこに無駄な言葉は何も無かった。
 必要最低限に凝縮された言葉は、二人の間に十分な信頼関係がある事の証明だった。


 ニューの案内で到着したのは人気のない高架下の空き地だった。
 そこには四人の男が戦意をむき出して待ち構えていたので、彼らが今日の相手なのはすぐに分かった。

( ^ν^)「行って来い」

(´・_ゝ・`)「……」

 デミタスが四人の男達に向かって歩いていくと同時に、周囲の街灯が激しく点滅し始める。
 やがて街灯は音を立てて炸裂し、周囲に暗闇が満ちたその瞬間、戦いは始まった。

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930 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 14:31:12 ID:H9mWz/r60

≪4≫



 ガードレール上に忍者を疾走させながら、デミタスは小さく言った。

(´・_ゝ・`)「毎回思うんだけどよ」

( ^ν^)「おう」

(´・_ゝ・`)「こんな面倒なマネせずに、お前が俺の相手すりゃよくねえか」

( ^ν^)「今日も無傷で完勝して、気分が良くなってるのか?」

(´・_ゝ・`)「そんなんじゃねえよ……ただそう思っただけだ」

( ^ν^)「俺が相手、なぁ……」

 赤信号を前にして車を停止させると、ニューはその続きを口にした。

( ^ν^)「やっぱ俺は駄目だ。お前と同じでな、手加減が上手く利かん」

( ^ν^)「そんなのがまともにやりあったら絶対どっちか死ぬ。だから駄目だ」

(´・_ゝ・`)「……お前の方は、精神力と超能力で釣り合い取れてるのか?」

( ^ν^)「平和に生きてられるくらいにはな」

 信号が変わり、車が再発進して動き出す。
 じっくりとハンドルを切り、ニューはデミタスの家に車を走らせる。

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931 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 14:31:53 ID:H9mWz/r60


( ^ν^)「……俺も昔、お前みたいになってた頃がある」

( ^ν^)「何度戦っても自分の限界が見えない。
      止まるに止まれない……。昔の俺は、そんな感じで毎日暴れ回ってた」

( ^ν^)「言っちゃなんだが、俺でも結構良いところまで行けたんだぜ?
      八仙郷って知ってるか? 武神と互角っていう馬鹿強い連中が居る所だ」

(´・_ゝ・`)「ほーん」

( ^ν^)「具体的に言うとだな、そこの総師範代を引っ張り出すまで俺は行けた。
      でもまぁ、やっぱ本物の強者には勝てなかった……」

 デミタスは反射的にニューの方を見た。

(´・_ゝ・`)「負けたのか?」

( ^ν^)「負けた。そりゃあもうズタボロにな。だが、得る物は十分にあった」

( ^ν^)「望まずに強さを手に入れた奴ってのは、やっぱり本物には勝てない。
      師範代と戦ってほぼ死んだ俺は、そう理解した。俺は本当には強くないんだと、そこで初めて思ったんだ」

 それから少しすると、車はデミタスの見慣れた道に出た。
 窓から夜空を見上げると、住んでいるマンションがすぐ近くに見えてきていた。

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932 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 14:32:34 ID:H9mWz/r60


 ニューは車をマンションの前に停めた。
 デミタスは無言で車を降り、ニューに背を向けた。

( ^ν^)「……デミタス」

(´・_ゝ・`)「なんだよ」

( ^ν^)「お前の能力は、お前が思ってる以上に怪物染みてるんだぜ。
      だからお前はきっと……俺の時よりもヤバイ『本物』に目を付けられる」

( ^ν^)「……早いとこボロ負けして身の程を知れ。
      強い力を欲しがってる人間に出会う前にな」

 デミタスは振り返って言った。

(´・_ゝ・`)「じゃあお前が相手しろ。口先だけなら、誰だって最強になれるんだぜ」

( ^ν^)「口だけで結構。俺は今の生活が好きなんだ」

(´・_ゝ・`)「……大人の言いそうな事だぜ……」

 吐き捨てるように言い残し、デミタスはマンションへと歩いていった。


( ^ν^)「……」

( ^ν^)「……今年中に相手が見つからなけりゃ、その時にはな……」

 デミタスには聞こえないように、ニューは静かにそう呟いた。

.

933 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 14:34:36 ID:H9mWz/r60


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



(;´・_ゝ・`)「あっつ……」

(`・ω・´)「快適なんだが」

( ^ν^)「勉強しろ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

 灼熱の補習室にはデミタスとシャキン、そしてニューの三人が居た。
 先日と同じような光景。ぼんやりとした曖昧な日常が、今日もまた少しずつ過ぎ去っていく。

(;´・_ゝ・`)「なにが勉強だよ……早く帰らせろ……」

(`・ω・´)「あとたった三時間で終わりだぞ。やったな」

( ^ν^)「そうだそうだ。しかも運が良い事に、今日この後は自習にする予定だ」

 ニューがそう言うと、デミタスは途端に目を輝かた。

( ^ν^)「シャキン、お守り頼んだぞ。最後にこのテストやらせといてくれ」

(`・ω・´)「分かりました」

(´・_ゝ・`)「……」


(´・_ゝ・`)「……シャキン、今日だけは俺が飯奢ってやる。コイツ消えたらどっか行こうぜ」

(`・ω・´)「そうだな。学食にでも行くか」

(´・_ゝ・`)「学校出る方向で頼む」

(`・ω・´)「俺は勉強してるから勝手にどっか行け」

(´・_ゝ・`)「……」

 デミタスは押し黙り、わざとらしく溜め息を吐いて机に向かった。

( ^ν^)「扱いが上手いな、参考になる」

(`・ω・´)「慣れです」

.

934 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 14:35:23 ID:H9mWz/r60


 ニューは教鞭を置き、カバンを持って教壇を下りた。

( ^ν^)「じゃあまぁ後は適当にやって帰れ。
      明日明後日も補習だからな、忘れんなよ」

(´;_ゝ;`)「先生、忘れたらごめんなさい……」

( ^ν^)「家庭訪問されたいなら忘れていいぞ、忘れた分だけ教養を叩き込んでやる」

(´・_ゝ・`)「さっさと消えろよ痛いペンネーム苗字ハゲ……」

( ^ν^)「……シャキン」

 ニューはデミタスの悪口を無視し、シャキンの耳元に口を寄せた。

( ^ν^)「明日俺が来なかったら、しばらくの間デミタスを足止めしておけ」

( ^ν^)「このバカを止められんのはお前だけだ、頼んだぞ」

(`・ω・´)「……」



 ニューは居直り、教室のドアを開けた。

( ^ν^)「そんじゃあな! 俺は涼しい部屋で楽しく過ごさせてもらうわ!」

(´・_ゝ・`)「自主性のない子供に何かを強要するのは暴力だと思う……」

 デミタスの小言を背に受けながら、ニューは二人の前から姿を消した。



 その文字通り、ニューは今後一週間、彼らの前に現れなかった。


.

935 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 14:38:09 ID:H9mWz/r60

≪5≫



( ^ν^)「……さてと……」


 暑苦しい補習室を脱出すると、ニューはすぐさまネクタイを緩めて袖をまくった。
 愛車に乗り込み、そのまま今日の目的地に向かう。

 ニューは、今日は昨日よりも更に遠い場所に行こうとしていた。
 行動の理由は、昨日倒した連中が言っていた、とある噂だった。

 噂の中身は“めっぽう強い能力者が手当たり次第に能力者を半殺しにして回っている”というもの。
 もし本当にそれだけ強いのが居るのなら、その男を警察が確保する前に利用しておきたい。
 今日彼が一人で噂の人物に会いに行くのは、その人がデミタスの相手に丁度良いかを試す為だった。

 目標が現れる各ポイントと、各ポイント間の行動ルートは既に想定してある。
 よほど運が悪くなければ、今日の午前一時の段階で、ニューは噂の人に遭遇する。

( ^ν^)(……まさか、俺より強いのが出てきたりしてな)

 鼻を鳴らして笑い、ニューは隣県某所にまで続く長いドライブに集中した。
 そして彼が最終的に行き着いたのは、法の影すら存在しない、裏社会への入り口であった


( ^ν^)(可愛い生徒の為ならば、だ)

 車を適当な所に停めると、ニューは躊躇わずに路地の奥に進んでいった。
 時間にはまだ余裕がある。情報収集も兼ねて、ニューはまず手近なバーに足を踏み入れた。

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936 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 14:41:03 ID:H9mWz/r60


( ^ν^)「おお……」

 店に入った途端、ニューは思わず感嘆の声を漏らした。
 赤い絨毯、赤い壁、赤い照明と、店内はとにかく全体的に真っ赤だった。

( ^ν^)(これ、マジか)


ミセ*゚ー゚)リ「――いらっしゃい」

 そう言ってカウンターの下から現れたのは、これまた髪と服装を赤色に染め上げた若い女性だった。
 ニューは彼女の手招きに従い、カウンター前の黒い席に腰掛けた。

ミセ*゚ー゚)リ「……」

( ^ν^)「……とりあえずビール」

ミセ*゚ー゚)リ「……ビールね、ちょっと待ってて」

 彼女は冷蔵庫を開けてビールを探し始めた。
 目の前で揺れる彼女のケツを、ニューは死ぬほど血眼になって目に焼き付けた。

( ^ν^)「……良い店だな。貸切っていうのが尚良い」

ミセ*゚ー゚)リ「普段なら客いっぱいなんだけどね……。
     最近は例の噂のせいで、客が遠のいてるの……」

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937 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 14:44:13 ID:H9mWz/r60


ミセ*゚ー゚)リ「今日は貴方で十人目。
      サービスするから、めいっぱい私の仕事に貢献してね」

( ^ν^)「ビールは、あっちのサーバー使うんじゃないのか?」

ミセ*゚ー゚)リ「……あっそうか。そりゃそうね」

( ^ν^)「グラスはそこの冷えたので頼む」

ミセ*゚ー゚)リ「りょーかい。この調子でもっと注文してくれる?」

( ^ν^)「生憎、持ち合わせが少ないんだ。悪いな」

 彼女は笑いながらグラスを取り出し、血生臭い冷蔵庫を閉めた。
 グラスにビールを注ぎ、それをニューの前に置く。

( ^ν^)「……ところで、なんか臭いを消せるものは無いか?
      この店、真っ赤でいいんだが……どうにも換気が出来てないっぽいぞ」

ミセ*゚ー゚)リ「換気? ……ふぅん。お兄さん、面白いね。いいわ、もうちょっと続けましょう?」

( ^ν^)「誘惑すんなよ……鼻の下が伸びちまう。
      あと実はビール苦手なんだ。適当なジュース出してくれ」

 彼女はニューの注文を受けると、ビールを片付けて代わりにビンのジュースを差し出してきた。
 ニューはそれを受け取り、蓋を開けて直にジュースを一気飲みした。
 鼻腔に停滞していた血の臭いが、ほんの少しだけ和らいで消えた。

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938 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 14:48:13 ID:H9mWz/r60


ミセ*゚ー゚)リ「今日は何の用なの? こんな所に。私に用かな?」

ミセ*゚ー゚)リ「……そうだと嬉しいなぁ……」

 彼女は舌なめずりした。


ミセ*゚ー゚)リ「私、強い人を探してるの。とびきり強い人」

( ^ν^)「店の位置が悪い。捗らんだろう」

ミセ*゚ー゚)リ「んーん。強い人は結構どこにでも居るの……でも、みーんな期待外れ」

ミセ*゚ー゚)リ「……その点、お兄さんはちょっと魅力的かも?」

(; ^ν^)「……」

 彼女はフワリと身を乗り出し、ニューの目の前に顔を寄せた。


ミセ*゚ー゚)リ「――やっぱり。お兄さん、凄く強いのね」

ミセ*゚ー゚)リ「……今日一番かも」

( ^ν^)「……そいつは光栄だな」

 ニューは目を逸らし、ポケットに片手を忍ばせた。

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939 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 14:48:53 ID:H9mWz/r60


ミセ*゚ー゚)リ「ちょっと特別な良いハナシがあるんだけど、聞いてくれる?」

ミセ*゚ー゚)リ「……って、もったいぶる事でもないの。
      私と友達になってほしいの。まずは交換日記から始めたいな」

( ^ν^)「……断ったらどうなる」

ミセ*゚ー゚)リ「さっき言ったとおり、今日の十人目にするだけよ?
      でも、もしかして……。貴方だったら、私から逃げ切れたりするのかしら?」

(; ^ν^)「ッ!!」

 瞬間、悪寒を感じたニューは跳ねるように席を立ち、彼女を視界に収めたまま壁際に退避した。
 椅子が血塗れの床を転がり、やがて、店内全ての物が動きを止める。




(; ^ν^)「……虚勢張りも限界だ。そろそろ人の血肉も耐え切れん」

ミセ*゚ー゚)リ「あら、綺麗だとは思わない?
      あれだけ私と茶番できるんだもの。私と貴方、きっと感性が似てる筈よ」

ミセ*゚ー゚)リ「ねえ、お友達になりましょうよ。
      今なら記念にお風呂ご一緒してあげる。この返り血を落とすの、手伝ってくれない?」

 カウンターに肘をつき、彼女は油断しきった状態でニューに話し続けた。

 ニューは彼女の問い掛けには何一つ答えなかった。
 彼は、この状況が既に窮地である事を自覚していた。

.

940 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 14:49:42 ID:H9mWz/r60


(; ^ν^)(……コイツはヤバイ。それだけがハッキリと分かる……)

(; ^ν^)(まともに相手したら俺かコイツ、どっちかが死ぬ。それで多分、死ぬのは俺の方だ……。
      デミタスなんかにゃあ荷が重過ぎる……論外もいいとこだ……!)

 ニューはポケットに隠し持っていたペンライトを点け、超能力を発動した。


ミセ*゚ー゚)リ「……そう、お断りなのね」

ミセ*゚ー゚)リ「でもいいの。私、男を追うのは結構好きよ?」

( ^ν^)「俺は女から逃げ切るのが得意だ」

ミセ*゚ー゚)リ「……最ッ高」

 彼女が身をよじって言うと同時に、店内の照明がふっと消えた。
 闇の中、赤色に輝く双眸がニューに視線を向ける。


ミセ*゚ー゚)リ「今日は――」

( ^ν^)「――長い夜になりそうだ、だろ」

ミセ*゚ー゚)リ

 彼女は狂気染みて口角を吊り上げ、それ以上を語らなかった。


.

941 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 14:51:46 ID:H9mWz/r60


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




(´・_ゝ・`)「……なんかよぉ」

(`・ω・´)「……」

(´・_ゝ・`)「暇だよなぁ……」

 ニューが消えて一週間が経過していた。
 その頃にはニューが残した宿題も全て片付き、夏休みの宿題も殆ど終わっていた。
 補習室は相変わらず高温を保っていたが、部屋に吹き抜ける風はいつもより冷たく感じられた。

 デミタスは保冷バッグに山盛り詰め込んできたアイスを取り出し、口に運んだ。

(´・_ゝ・`)「……何度も聞いてるけどよぉ、お前なんか聞いてねえのかよ」

(`・ω・´)「他の教師が言うには有給消化中らしい。そう何度も答えた」

(´・_ゝ・`)「……三回目くらいで思ったんだが、お前もうちょいマシな嘘をつけよ。
      まぁ、お前の嘘なら何か意味があるんだろうが……」

(`・ω・´)「とにかく知らん。知らんものは知らん」

(;´・_ゝ・`)「意地の張り方が馬鹿っぽいんだよ……」

.

942 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 14:54:05 ID:H9mWz/r60


 デミタスは扇風機の前に行き、カッターシャツの胸元をつまんだ。
 体表近くの空気が入れ替わり、汗ばんだ体に冷たさが広がっていく。

(´・_ゝ・`)「俺とアイツが何やってるかは知ってんだろ?」

(`・ω・´)「強敵探しか。それがどうした」

(´・_ゝ・`)「アイツが消えた理由は、多分それだ」

(`・ω・´)「……」

 シャキンは顔を上げてデミタスを見た。

(´・_ゝ・`)「俺に丁度いい相手を探してたら、予想外の大物に当たって大事故……」

(´・_ゝ・`)「十分ありうる話だろうな。しかも、今現在は誰にもアイツの所在が分からない」

(´・_ゝ・`)「……案外死んでるかもな」

(`・ω・´)「……俺を煽ってるつもりか?」

 シャキンの言葉に対して、デミタスは意地悪く笑って反応した。

(´・_ゝ・`)「先に断っとくが……俺は何もしないぞ。
      もし俺の考えが当たりなら、そんな奴を前にして生き残れる保障はない」

(´・_ゝ・`)「もちろん、アイツが生きてる保障もないな。
      仮に生きてたとしても必ず面倒事に巻き込まれてる。俺まで巻き込まれるのはゴメンだ」

(´・_ゝ・`)「俺はこのまま適当に過ごして、あとちょっとの夏休みが終わるのをボーっと待つつもりだよ」

.

943 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 14:55:23 ID:H9mWz/r60


(`・ω・´)「……言いたい事は分かった。俺に代わりに行って来いって話だな。
      何があっても生き残れる俺なら、確かに大丈夫かもな」

(´・_ゝ・`)「行くなら気をつけて行けよ。
      無効化を無効化する能力者が相手になるかも」

(`・ω・´)「お前こそ、俺を尾行するなら気付かれないようにしろよ」

(´・_ゝ・`)「……決まりだな。言い訳も十分作れた」

 シャキンは席を立ち、デミタスの前に行った。


(`・ω・´)「俺はお前を止めろと言われたが、俺自身が動くのは止められていない」

(´・_ゝ・`)「俺はお前の後を付けていくだけ。別にアイツを探しに行く訳じゃない」

 言い終えると二人は揃って微笑み、戦闘を想定した最低限の用意をして学校を出た。
 まずはシャキンが先行して歩き、彼を見逃さないギリギリの距離にデミタスがつく。

 二人は最初にニューが住んでいるアパートに向かった。
 バス代をケチったので徒歩だったが、徒歩でも夜になる前には到着出来そうだった。


(´・_ゝ・`)(……クソッタレ、俺だって今の生活が気に入ってんだ)

(´・_ゝ・`)(何にもしないまま、いつの間にか全部ブッ壊れてましたなんて冗談じゃねえ……)

 デミタスはやさぐれた心でそんな事を考えながら、じっとシャキンの背中を睨んだまま歩き続けた。


.

944 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 14:56:03 ID:H9mWz/r60

≪6≫


 太陽が沈みきる寸前、二人はようやくニューのアパートに辿り着いた。
 早速部屋に乗り込もうと、デミタスが勇んで歩き出す。

(`・ω・´)「……」

(´・_ゝ・`)「……どうした」

 しかしシャキンはアパートを眺めているばかりで、デミタスの後を追おうとはしなかった。
 考えがまとまったのか、シャキンはやや間を置いてからデミタスの声に応えた。

(;`・ω・´)「……俺一人で行く」

(´・_ゝ・`)「……ここまで来てか。そっから何が見えてる」

 シャキンの超能力『完全五分(パーフェクト・ドロー)』――その改悪形態である『ディープドロー』。
 既に後者の超能力を発動させていたシャキンは、アパート周辺に張られていた結界を見透かしていた。
 デミタスには極普通のアパートが見えていたが、彼にはもっと別の景色が見えていたのだ。


(;`・ω・´)「……敷地の境界線が入り口になってる。
      そこから先は、異空間みたいな所に繋がってる……」

(´・_ゝ・`)「……異空間……」

 デミタスは虚ろに呟いた。

(;`・ω・´)「とっくに戦闘が始まってる。辺り一面が瓦礫の山だ」

(;`・ω・´)「あんなの、化け物が暴れまわってるとしか思えん……」

.

945 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 14:56:44 ID:H9mWz/r60


(´・_ゝ・`)「……問題ねぇな」

 シャキンの怯懦を一蹴し、デミタスは道路の街灯から光を吸収した。

(´・_ゝ・`)「場所が別空間でむしろ好都合だ。俺も全力で戦える」

(´・_ゝ・`)「シャキン、お前の方こそ居残ってろよ。
      自分が戦力にならないの、自覚してるだろ」

 肩越しに嘲笑を見せてから、デミタスは平然と歩いていって敷地の境界線を跨いだ。

(;`・ω・´)「……盾にはなる!」

 シャキンはそう言い、デミタスを追って異空間に飛び込んだ。


.

946 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 14:58:39 ID:H9mWz/r60


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 ニューは廃墟の陰に潜み、遠くで自分を探している少女を様子見していた。
 二人の戦闘が始まってから丸々一週間。
 異空間に存在していた町一つ分を再現した模型は、既に跡形も無く崩壊しきっていた。


ミセ*゚ー゚)リ(やっぱり最初にやりすぎちゃったな。これじゃあ探すにも手間が掛かる……)

ミセ*゚ー゚)リ(でもまぁ、この空間から抜けるには私を倒すしかない――)

 少女、ミセリはその考えを嘲笑った。

ミセ*゚ー゚)リ(――って、そう考えちゃうよね普通。悪いけど、私じゃ空間から出してあげられないの)

ミセ*゚ー゚)リ(お迎えが来るまで残り三週間、じっくりやりましょう……)

 ミセリは周囲をぐるりと見回し、ニューの居場所を思案した。


ミセ*゚ー゚)リ(……流石にもう射程は把握されちゃってるか。半径20メートルには居ない)

ミセ*゚ー゚)リ(お兄さんの能力は遠距離攻撃が出来ないみたいだから安全だけど、いい加減、場を動かさないとね)


.

947 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 14:59:25 ID:H9mWz/r60


ミセ*゚ー゚)リ「お兄さ〜〜〜〜〜〜ん!!」

 ミセリは口元に両手を当て、大声でニューを呼んだ。

ミセ*゚ー゚)リ「そろそろ出てきてくれなきゃまた暴れ回るよ〜〜〜〜〜〜!!」


ミセ*゚ー゚)リ「五秒数えッ――」

 そこまで言い、ミセリは視界の端にニューの影を見つけた。
 ニューはこちらを目視しながら走っていたが、決してミセリに接近しようとはしない。

ミセ*゚ー゚)リ(最大威力は出せないけどッ)

 ミセリは上唇をペロリと舐め、走るニューに人差し指を向けた。
 すると周囲を埋め尽くしている瓦礫が一斉に浮遊し、大群をなして彼女が指差す方向へと飛んで行った。


(; ^ν^)「クソッ!」

 ニューは慌てて進路を変え、崩落したビルの後ろに逃げ込んだ。
 その直後、ビルが瓦礫の直撃を受けて粉々になって崩落した。
 土煙が上がる最中、ニューは姿を眩ませるために再度陰に身を隠す。

(; ^ν^)(状況も、相性も、あの女も、何もかも最悪過ぎるだろ……)

 息を殺し、ニューは現状を整理し始めた。

.

948 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 15:00:21 ID:H9mWz/r60


(; ^ν^)(アイツの超能力、今んとこ確認しただけで三種類もありやがる。
       この空間を作った能力、周囲のものを操作する能力、デタラメに物をブッ壊す能力……)

(; ^ν^)(例外的に複数の能力を持つ事は可能だが、
       基本的に超能力は一人一つが常識で法則の筈だ……)

(; ^ν^)(そこから考えるに、アイツの能力には必ず『コピー能力』がある。
       だが、コピー能力には必ず重い制約か発動条件があるもんだ……)

(; ^ν^)(戦い始めて一週間、最初に接近戦をして以降、俺はこの距離をずっと保ってる。
       つまり距離や言葉は発動条件じゃないって事だが……)

 ニューは生唾を飲んで決断した。

(; ^ν^)(……発動条件を潰せば勝てると思って一週間だ。この案はもう駄目だ、捨てる)


(; ^ν^)(単純に認めよう。アイツは複数の能力を持ってる)

(; ^ν^)(だったら生き残るには接近戦に持ち込んで、即、殺すしかない。
       操作能力による瓦礫弾幕を潜り抜けての接近か……危険だな)

 陰からわずかに顔を出し、ミセリの挙動を観察する。

(; ^ν^)(戦わずに逃げる道もある。が、そろそろ食料も光源も底をつく。
       持久戦は望めない。早々に決着をつけねえとな……)

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949 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 15:01:02 ID:H9mWz/r60


(; ^ν^)(捨て身とまではいかねえが、大怪我覚悟だ――!)

 ニューは弾けるように地面を蹴って走り出し、両腕を大きく振って疾走した。
 一瞬してからミセリが気付き、再び周囲の瓦礫が空に浮かび上がる。

ミセ*゚ー゚)リ「そう来なくちゃっ!!」

 嬉しそうに笑う彼女とは反対に、ニューは直撃寸前のギリギリの所で彼女の攻撃を避けていた。

 それは、前方向から幾多のマシンガンに撃たれ続けるような攻撃だった。
 瓦礫の弾丸を避けてもその先には別の弾丸が来ており、それを回避しても、また別の弾丸が行く先に待ち受けている。
 三次元的に大きく動いても、彼女がちょっと念じれば弾丸の軌道は変化し、ニューを即座に捉えてしまう。

 直撃は時間の問題。
 それから数秒と経たずして、瓦礫の弾丸はニューの右足を撃ち貫いた。

(; ν )「ぐうっ!」

 右足の感覚を失ったニューは前のめりになって地面に倒れた。
 その間にも怒涛の攻撃は止まない。彼は反射的に両手と左足を使い、自分の体を近くの物陰に放り込んだ。
 次いで瓦礫の弾丸が遮蔽物に激突する。彼が隠れた物陰には、瞬く間に巨大な風穴が開いた。

ミセ*^ー^)リ(これで死んじゃったらつまんないなぁ〜〜〜〜〜〜)

 ミセリはニッコニコで物陰を指差しながら、周囲の瓦礫を一分もの間発射し続けた。
 大小入り混じった数百個の瓦礫が一点集中して撃ち出された結果、その地点周辺にはポッカリと空白地帯が出来上がった。
 空まで粉塵が舞い散る中、ミセリは悪路をぴょんと跳ねて進み、ニューの死体を確かめにいった。

.

950 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 15:01:51 ID:H9mWz/r60



ミセ*゚ー゚)リ「……接近して正解、だったかな?」



( ^ν^)「……何をもって正解とするか、によるな」

 ミセリが行った場所に死体はなく、代わりに全快のニューが立っていた。
 期待通りと言わんばかりに、ミセリは恍惚の表情を見せた。

ミセ*゚ー゚)リ「ブッ潰れたトマトみたいになってると思ったのに、どうして生きてるの?
       ああ、本当……私、予想外とか意味不明とか、本当に好きなの……」

( ^ν^)「こんだけ戦ってて、俺の能力も想像できなかったのか?」

 ニューは服についた埃を払い、ふてぶてしく腰に手を当てた。


ミセ*゚ー゚)リ「何となくは。でも詳細までは分からないわ」

ミセ*゚ー゚)リ「例えば――」

 ミセリはニューを指差した。小さな石ころが一つ、ニューに向かって飛んで行く。
 小さいとはいえ石ころの速度は十分で、当たれば痣では済まない程の威力がある。
 だが、石ころはニューの体にぶつかると、その瞬間に粉々に砕け散った。当のニューは顔色一つ変えていなかった。

ミセ*゚ー゚)リ「――この距離だと、貴方には一切の攻撃が通じない。
       これは最初の戦闘でも同じ。だから何となく、『敵に近いほど強くなる能力』と想像してた」

( ^ν^)「ほう」

ミセ*゚ー゚)リ「でも違うみたい」

ミセ*゚ー゚)リ「さっき私に向かって走り、徐々に接近してきた時の貴方に変化は無かった。
       だから何となく、私の想像は間違いだと分かった」

.

951 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 15:03:02 ID:H9mWz/r60


ミセ*゚ー゚)リ「次に私はこう考えた。
      貴方の能力は『敵から一定距離内に居ると無敵になる能力』なんじゃないかと……」

ミセ*゚ー゚)リ「……でもまだ推理の余地はある。
       少なくとも貴方が何かの条件下で無敵になるのは確定だから、次にこう考えた」

ミセ*゚ー゚)リ「一体、何に対して無敵になる能力なのか……」

 彼女は両手を後ろに回し、微笑んで言った。

ミセ*゚ー゚)リ「それはまだ分からないわ。でももう、この時点で決定事項が一つ」

 途端、彼女の表情は一変して冷たくなった。

ミセ*゚−゚)リ「私、貴方が仲間にならないなら絶対に殺すわ。
       これだけ強い人間が野放しだなんて、不安でしょうがないもの」


( ^ν^)「それはお互い様だ。お前みたいなのは病院に入れても無駄だしな」

( ^ν^)「正義も何も関係ねえ。死ぬべき、殺すべき人間は、一秒一瞬でも早く死ぬべきだ」

ミセ*゚ー゚)リ「正義? ……ふふっ、そうね。正義の味方じゃ私の相手は出来ないわ」

ミセ*゚ー゚)リ「そうだわ、改めて自己紹介でもしましょうか。勝手にするけど、いい?」

 ニューが鼻を鳴らすと、ミセリはくるっと一回転してスカートを摘み上げた。

.

952 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 15:04:18 ID:H9mWz/r60


ミセ*゚ー゚)リ「――自称『絶対悪』。通称はミセリ。
      所持する超能力はおよそ四つ」

(; ^ν^)「よッ……!?」

 ミセリは指を四本立て、超能力の解説と共にその内の一本を折り曲げた。


ミセ*゚ー゚)リ「まず一つ。半径20メートルの物質を全て意のままに操作できる能力。
      名前は 【一つ残らず木偶人形(ワンサイド・アウトサイダーズ)】 。貴方とは今までこれで戦ってきたわ」

 さらにもう一本指を折り曲げ、彼女は言葉をつないだ。
 彼女には、自分の超能力を語ることに何の抵抗もないようだった。


ミセ*゚ー゚)リ「次は 【逆転可能定理(アドバンテージ・アブソーバー)】 。
      これは説明が難しいんだけど、要は逆転出来る能力。
      でもそもそも負けないから、使う機会は本当に少ないの」

 続けて三本目を折り曲げる。


ミセ*゚ー゚)リ「三つ目が 【愚劣化二番煎じ(インスタント・ミニチュアパロディ)】 。
      複数の能力って所で察してると思うけど、コピー能力よ。
      ただし本物の超劣化版しか作れないから、殆ど役に立たないわ」

 最後の指を折り、彼女は微笑んだ。


ミセ*゚ー゚)リ「四つ目、 【Breaking The Rules】 。
      文字通り、いわゆる世の中の常識から抜け出す能力。複数所持はこっちが理由」

 彼女はスカートを摘んでいた指をパッと放した。


ミセ*゚ー゚)リ「以上で自己紹介はおしまい」

ミセ*゚ー゚)リ「……どう? 魅力は感じてくれた?」

.

953 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 15:05:23 ID:H9mWz/r60


(; ^ν^)「……」

 ニューは押し黙って考えていた。
 この女の言う事が本当なら勝ち目は全くない。
 しかも今居る空間の能力について何も言わなかったという事は、外に別の能力者が待機しているという事だ。
 仲間が居る可能性がかなり高い。仮に空間を出られたとしても逃げ切るのは困難だろう。

 少なくとも元の生活に戻る事は、今の彼には想像出来なかった。

(; ^ν^)「……仲間になれ、だったな」

ミセ*゚ー゚)リ「そのとおり。あ、鎌をかけたつもりだった?」

(; ^ν^)「何が目的で行動してる。お前は一体……」

ミセ*;゚ー゚)リ「う〜〜〜〜〜ん……」

 ニューの質問に彼女は目を泳がせた。

ミセ*;゚ー゚)リ「私にもよく分からないの。ただ、強い人を集めろって言われただけなの」

(; ^ν^)「……お前が、仲間のリーダーじゃないのか……?」

ミセ*゚ー゚)リ「リーダーだよ? でももう一人居て、基本その人が指示を出すの。
      私、特に目的とか何とかってものがないから、とりあえず彼に従ってる感じ」

ミセ*゚ー゚)リ「一応言うと、私よりその人の方がブッ飛んで強いよ。だから一緒に居るの」

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954 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 15:06:17 ID:H9mWz/r60



ミセ*゚ー゚)リ「――さて」

 彼女はハッキリと言い、会話を区切った。


ミセ*゚ー゚)リ「これだけ聞かれて全部答えたんだから、良い返事を期待してもいいわよね?」

ミセ*゚ー゚)リ「返事はそうね……自己紹介をしてちょうだい。
      あと、今後どうやって私を倒すつもりだったかも教えてほしいな」

(; ^ν^)(……こいつに出会ったのが俺でよかった。
      デミタスを見たら、こいつは間違いなくアイツに飛びついてきた……)

 デミタスはその思考を最後に、頭の中に渦巻いていた葛藤を捨て、開口した。


(; ^ν^)「……名前はニュー。能力は【マニュアルデストロイヤー】。
      思考して行われたもの全てに対して、無敵になる能力……」

ミセ*゚ー゚)リ「あーだから私が近づいた時はあんな余裕だったんだ。
      右足が戻ったのもそれが理由? 強いね〜〜〜〜それで?」

(; ^ν^)「……接近戦で丸め込んで、隙あらば殺すつもりだった……」

ミセ*゚ー゚)リ「それは無理だったね。死にかけたら二つ目の能力で逆転だもの。
       嘘だと思う? なんならやってみる?」

 そう言うとミセリは挑発的に自分の体を指先でなぞり、馬鹿にするような調子で言った。


ミセ*゚ー゚)リ「どうせさぁ〜〜〜〜〜〜〜このまま私が後ろ向いたら隙ありで攻撃する気なんでしょお〜〜〜〜?????」

ミセ*゚ー゚)リ「決め台詞は『――ちょうど今みたいにな』とか? それで倒せたらカッコイイかも???」


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955 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 15:07:47 ID:H9mWz/r60




(; ^ν^)「……ハァ……。いや、もういい……好きにしてくれ……」


 一矢報いる内心すら暴かれ、ついにニューは両手をあげてミセリに降伏した。
 その姿を見るなり、ミセリは満足そうに頬を緩ませた。

ミセ*゚ー゚)リ「仲間になってくれるのね、嬉しいわ」

ミセ*゚ー゚)リ「もう一人のリーダーに電話するから、適当に休んでてね?」

(; ^ν^)「あいよ……」

 ニューは地面に腰を落とし、半ば思考を放棄していた頭をゆっくり回転させた。


( ^ν^)(まあ、命捨ててまで戦う理由はねえしな……)

( ^ν^)(ったく、これからどうなるんだかな……。
      何にせよ人殺しの仲間だ、ロクなもんじゃねえ……)

( ^ν^)(……まあ、世間のしがらみから解放されるって考えりゃ、俺の性分には合ってるか)

( ^ν^)(逃げ出すタイミングも、まあ、あるんじゃないかな……)


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956 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 15:09:12 ID:H9mWz/r60



 その時、何者かに電話をしているミセリに異変が起きた。
 彼女は手に持っていた携帯電話を地面に落とし、ガタガタと全身を痙攣させ始めた。


ミセ;゚ー゚)リ「……えっ……」

 異常に震える自分の手を見下ろし、彼女は玉の汗を流した。

ミセ; ー )リ「なにッ……これッ……!」

 言葉を詰まらせながら言い、彼女は地面に倒れて意識を失った。
 ニューは彼女に駆け寄り、その症状から直感すると同時に怒声を放った。



(# ^ν^)「――どうして来やがった!!」

 ニューの声が響き渡っていく。
 程なくして、遠くの瓦礫の上に人影が二つ現れた。

 デミタスとシャキンは、まったく悪びれる様子もなくニューに近づいてきた。


(´・_ゝ・`)「ここまでやるべきか悩んだが、殺すだ何だと物騒だったからな」

(´・_ゝ・`)「サリンもVXガスも辺り一面にぶちまけてやった。
      あんたも能力解除すんなよ。即死するぞ」

(`・ω・´)「とりあえずここを出ましょう。俺なら多分、出口が作れる筈です」

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957 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 15:10:29 ID:H9mWz/r60



(; ^ν^)「ンな事どうでもいい! お前らだけでさっさと逃げろ!」

 ニューは慌てて叫び、手を大きく振って二人を追い払おうとした。
 ミセリが毒ガスに倒れた今でも、彼の中では大きな危機感が渦巻いていた。





ミセ*゚ー゚)リ「――言う相手、間違ってるんじゃない?」


 突然、ニューの目の前にミセリが現れた。
 かわりにデミタスとシャキンが姿を消し、ニューは呆気にとられて言葉を失った。

ミセ*゚ー゚)リ「あんまり急だったから。やっちゃった」

 彼女はニューの背後を指差した。
 それは一瞬前まで彼女が倒れていた場所。二人はそこに倒れ、全身を痙攣させていた。


(; ^ν^)「お前ら!!」

 ニューが血相を変えて二人に近づき、その肩を揺する。
 彼らに反応はなく、呼吸も困難になっているようだった。

 ミセリはニューの後ろに立ち、平然と話し始めた。


ミセ*゚ー゚)リ「これが二つ目、【逆転可能定理(アドバンテージ・アブソーバー)】。
      不利的状況を相手と全とっかえ出来る能力。傷とかも全部ね」

ミセ*゚ー゚)リ「だからサリン? VXガス? とかは、全部この子達に押し付けちゃった」

ミセ*゚ー゚)リ「もしかしてお知り合いだった? ごめんなさいね、ついうっかり」

ミセ*゚ー゚)リ「まあ即死技なんて仕掛けてくるんだもの、自業自得よねぇ?」

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958 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 15:11:15 ID:H9mWz/r60


(; ^ν^)「黙れッ!!」


 もっと入念に釘を刺しておくべきだった――。
 そして自分も、強さに自惚れて安易な行動を起こすべきではなかった――。


 ニューは自責しながら二人の名を叫んだが、反応は何も返ってこない。
 強力な毒ガスは数分で人を死に至らせる。二人に残された時間は後僅かだった。

 取り返しのつかない現実が、ニューの体からごっそりと活力を奪い取る。
 彼は頭を抱え込み、茫然自失となった。

 それからほんの少しの時が経つと、二人の体は完全に静止した。
 心臓の鼓動すら、完全に止まっていた。


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959 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 15:12:07 ID:H9mWz/r60



ミセ*゚ー゚)リ「あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜あっ」


ミセ*゚ー゚)リ「死んじゃったね。ね」


ミセ*゚ー゚)リ「誰のせいかな? 私? 責任感じちゃうなぁ〜〜〜ほんと」

 ミセリは地面の携帯電話を拾い上げながら言い、電話をニューに差し出した。


ミセ*゚ー゚)リ「はい。お兄さんに話があるんだって。ついでに何かお願いしたら?」

ミセ*゚ー゚)リ「この二人を生き返らせてくださいとか。多分出来るよ」

 何も考えず、ニューは電話を受け取った。
 相手の方が先に話し始めた。


「ニューと言ったな。君が我々に協力してくれるというのは、本当か?」

(  ν )「……一つ、条件がある」

「……可能な限り、叶えよう」


ミセ*゚ー゚)リ

 ミセリは貼り付けたような笑みを浮かべたまま、二人の会話が終わるのを待っていた。
 彼女には確信があった。ニューという男が、もう自分達の手から離れられないという確信が――。


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960 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 15:12:47 ID:H9mWz/r60


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 そこは夢の中だった。

 現実のような夢。

 もう夢の中でしか見られない現実。

 学校と、先生と、友達。

 それらが曖昧に点在していただけの、じんわりと過ぎていく現実。


「――強くなり続けろ」


 夢の最後を締めくくる言葉はそれだった。
 途端、全てが闇の中に消えていく。

 デミタスは夢の中で涙を流した。
 夢の中だからこそ、彼は自分の涙を許す事が出来た。

 夢も夏も青春も、全てが闇に消えていった。
 抗う術は何も無く、デミタスはただ、夢が続く限り涙を流し続けた。

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961 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 15:13:39 ID:H9mWz/r60

≪7≫


 翌日。

 二人は学校の自習室に来ると、しばらく何もせず、風が過ぎていくのをただ眺めた。
 ニューは今日も来ない。二人はそれを分かった上で、自然とここに来ていたのだった。


(`・ω・´)「……夢を見た。夢のない、現実の夢だった」

(`・ω・´)「……世の中を受け入れろ。夢の中で、先生にそう言われた……」


(´・_ゝ・`)「……泣き言なんか言うんじゃねえよ」

 デミタスは戒めるように言い、席を立った。


(´・_ゝ・`)「俺は奴を追う。あの馬鹿野郎をだ」

(`・ω・´)「……それならまたいつか、必ずあの女に会うぞ」

(´・_ゝ・`)「それまでに強くなる。俺は強くなり続ける……どこまでもだ」

(´・_ゝ・`)「大物気取りで行って、結局、俺は何も出来なかった……。
      忘れてたんだよ。自分がまだ、年端もいかねぇクソガキだってな……」

(´・_ゝ・`)「俺はもう十分幸せだった。
      普通の未来を投げ打ってでも、俺はそれを取り返したい」

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962 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 15:14:19 ID:H9mWz/r60


(`・ω・´)「……俺は一人じゃ何も出来ない。
      最強の盾ではあるが、何も出来ない」

(`・ω・´)「俺は……生まれて初めて強くなりたいと思った。
      だからもう『無傷の盾』は終わりなんだ。
      俺みたいなのは特に、傷つく事でしか前に進めないんだ……」


(´-_ゝ-`)「……お互い、やっぱまだクソガキだな」

 デミタスは素知らぬ顔で言い、溜め息をついた。

(`・ω・´)「仕方ないだろ。これから大人になってくんだ」

(´・_ゝ・`)「じゃあ取り合えず、学校辞めて外国に高飛びするか」

(`・ω・´)「……は?」

(´・_ゝ・`)「決まりだな。荷物は最小限にしろよ」


 後日、二人は夏休み最後の思い出作りという名目でパスポートを作り、八月の間に日本を発った。
 そして適当な所で行方を暗まし、二人は孤立無援の生活を開始した。
 何でも屋として日銭を稼ぐ日々……そんな日々が終わりを告げ、二人が荒巻スカルチノフに出会うのは、もう少し後の話だった。


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963 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 15:15:44 ID:H9mWz/r60


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 この世界のどこかに―― 一線を超えた超能力者の集団があった。

 彼らは来たる時に備え、気配を殺して仲間を集め続けていた。


ミセ*゚ー゚)リ「……結構集まってきたね」

「……いや、まだ足りない。これだけではtanasinnには遠く及ばないだろう」


( ^ν^)(tanasinnか。意味分かんねぇな……)

 一堂に会した十人程の仲間の一人として、ニューはそこに立っていた。
 集まった能力者が全員只者ではないのは雰囲気だけで容易に察知できた。

 彼らが本格的に動き始めるのは、今より更に十年以上経ってからの事。
 そのタイミングは、ちょうどミルナとドクオが出会った頃に一致していた。


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964 名前:名も無きAAのようです :2014/10/07(火) 15:16:25 ID:H9mWz/r60


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            番外編その1 「黄昏の海」

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