- 737 名前：名も無きAAのようです ：2012/09/30(日) 19:42:15 ID:sXZAs6B20
「ほーんっと、お前って生きてる価値ないよな」
霞む意識の中、最期に見た景色は迫り来る同級生の靴底だった
ピピ ピピ ピピ ピピ
微睡んだ意識を引き上げるように、枕元で無機質な音をたててアラームが鳴る
ゆるゆると手を伸ばしスイッチを止めると、束の間の静寂が訪れた
鳥の鳴き声
車の走行音
通りの喧騒
表示された時間は７時１５分
('A`)「あーあー、また失敗か」
はぁ、と小さく吐いた溜め息は誰に届くわけでもなく早朝の空気に溶けていった
- 738 名前：名も無きAAのようです ：2012/09/30(日) 19:44:13 ID:sXZAs6B20
布団から立ち上がり、窓にうつったお世辞にも整っているとは言い難い自分の姿を見る
やはり、どこにも傷は見当たらない
確かに俺は殴られたのだ、同級生、それも数人ががりで
しかしどういうことであろうか
殴られて腫れ上がった頬や瞼も、身体中に散りばめられた色とりどりの痣もなく
ひしゃげた腕も、何本か折られた歯だって何事も無かったように存在している
いつからだろう、俺がこうやって人生をを繰り返すようになったのは
最初に死んだのは『今日』の午後だ、同級生のいじめに耐えられず昼休みに屋上から飛び降りた
その時の最期の記憶は視界いっぱいに広がるコンクリートの地面だった気がする
そう、確実に、絶対に俺はあの時死んだのだ。屋上からの墜落死、潰れたトマトのような死体になるはずだった、死んで楽にやるはずだったのだ
それなのにどういうことだろう、何故だか俺は死んでおらず無傷のまま『ここ』に存在している
二回目は窒息死だ
いじめの主犯格のプロレスごっこの末、ゲロが喉に詰まってそのまま死んだ
三回目は事故死
金がもう無いと言ったら道路に突き飛ばされてトラックに轢かれた
四回目になるともうなんか慣れてきたので逆に主犯格どもを殺そうと階段から突き落としたら袖を掴まれてしまい、仲良く一緒に死ぬはめになった
そっから殺し殺されまた死んで、記念すべき三十回目はついさっき、出来立てほやほやのなんかもう嫌になって逆らったら集団リンチの末に内臓破裂してゲームオーバーである
自殺しても無駄、殺そうとしても無駄、逆らっても無駄、無駄無駄無駄
攻略本もなければ仲間も武器も防具もアイテムも何もかんもありゃしない
あるのは『今日』までのセーブデータとゲームオーバーの記憶だけ
('A`)「無理ゲーじゃねえか」
そのまま後ろに倒れこみ、まだ体温の残る布団に身体を預けると燻っていた眠気がまた顔を覗かせた
- 740 名前：名も無きAAのようです ：2012/09/30(日) 19:45:18 ID:sXZAs6B20
あぁそうだ、このまま学校をサボって眠るのもありかもしれない。今までは学校を休むと後日暴力が何倍にもなって返ってくるので無遅刻無欠席だったが、どうせ死ぬんだ、登校することに固執する必要はない。
そう、ここに居れば安全なのだ。
ここは俺の部屋、俺の砦、俺だけの城、ここには暴力も陰口も死ぬ危険すら存在しない、最高の楽園。
カーチャンは早出だから今日は居ない筈、サボるのは余裕だ。
そうだ、最近は娯楽系統の事は何もしていなかったし１日中ゲームでもしようか、ネットでもいいけど、漫画を一気読みするのもいいかもしれない。
久々に幸せな気分を味わいながら俺は口元を緩ませて寝返りを打ち、窓の外へと視線を向けた瞬間
――――包丁を握り締めてこちらを覗く男と目が合った
- 741 名前：名も無きAAのようです ：2012/09/30(日) 19:48:48 ID:sXZAs6B20
(;'∀`)「…は？」
おいおいおい待て待て何だこの展開は、ここでこんな不審者がでるとか聞いてねーぞ
固まったまま動けない俺をよそに、その男は歪な笑みを浮かべたままゆっくりと包丁を振り上げる。
いやいや近所に家いっぱいあるだろ今日は俺はハッピータイムを過ごすつもりなんだよふざけんな何で俺なんだよ空気読めよお前いや何で包丁振りかざしてんだよいや止めろ止めろ止めろ、止めろよ、止めろって
(゜∀゜)「あひゃー」
バリン！
俺の心の呼び掛けも空しく不審者は掛け声というには気の抜ける言葉を呟きまるで割って当然、というように何の躊躇いもなく激しい音を立てて窓をぶち割った。
キラキラと朝日を反射させながら尖ったガラス片が俺の身体中に降り注ぐ。
何だか幻想的だなぁ、なんてどこか他人事のように感じながら
同じくギラギラと輝くイっちゃった顔で凶器を翳す男へと乾いた笑みを向けた
(;'∀`)「ハハッ、マジ無理ゲー」
ザシュッ！
('A`)エンドロールは流れないようです
ゴキブリが絶滅したら投下
戻る
