- 961 名前: ◆3sLRFBYImM :2015/12/13(日) 19:36:07 ID:rR00NBjg0
- ■13 - ナナシとの生活 -
三日月島を出た( ゚д゚ )は、目を覚ました (#゚;;-゚) に見放されて以来、
あてもなく大陸西部を放浪していた。
島を出たことのない無知さゆえに、アイスキャニオンへと迷いこんだこともある。
大陸戦争前は "生きた氷塊" を運び、[空の城]と往復することで金銭を稼いだ。
大陸に戦禍が拡がるころに南西部へと移り住み、孤児院で ミ,,゚Д゚彡 や (*゚ー゚) と出逢った。
そんなミルナが、ナナシと暮らすようになって気付かされたことがある。
ミ,,゚Д゚彡 「ねえ」
( ゚д゚ ) 「ん?」
ミ,,゚Д゚彡 「どうしていつも苦しそうに眠るから?」
- 962 名前: ◆3sLRFBYImM :2015/12/13(日) 19:37:54 ID:rR00NBjg0
- 本人に自覚はなかったが、ミルナはすでにアサウルスに感染していた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
痛みがないせいで気付くのが遅かった。
パニックになり脚をいくら振り回しても、
赤ん坊を振りほどくことができない。
((; ゚д゚ )) 『くそぅ、離れろ! やめろ!』
地団駄を踏んでも、手で押し退けても、
赤ん坊の牙はミルナの皮膚を喰い破っていく。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
彼がなぜ蟻の尖兵にならなかったのか?
それは "生きたい願望" が他人よりも強いため、
僅かながら蟻化までに抵抗する時間があり、
さらには持ち帰った黒い槍が同族としてのカムフラージュを果たしていたせいだ。
※( ´_ゝ`)の場合は一撃で絶命したせいで蟻化しなかった。
もし手元に黒い槍がなければ、ミルナも蟻化しただろう。
- 963 名前: ◆3sLRFBYImM :2015/12/13(日) 19:38:36 ID:rR00NBjg0
( ゚д゚ ) 「心配かけてすまないな、俺は大丈夫だから…もう寝なさい」
ミ,,゚Д゚彡 「うん」
ナナシはよくミルナの顔色を窺った。
…捨てられて孤児に戻るのが怖いわけではない。
毎夜悪夢にうなされても、不平不満、愚痴というものを
ナナシの前で決して吐かなかったミルナを純粋に心配していた。
( ゚д゚ ) 「兄弟が欲しいか?」
ミ,,゚Д゚彡 「いらないから」
( ゚д゚ ) 「でも俺が仕事に行ってる間、寂しくないか?」
ミ,,゚Д゚彡 「ちゃんとここに帰ってくる?」
( ゚д゚ ) 「ああ、仕事こそ泊まりがけでもなければ必ず」
ミ,,゚Д゚彡 「じゃあ寂しくないから」
( ゚д゚ )
ミ,,゚Д゚彡 「きちんと待ってるから」
( ゚д゚ ) 「…」
「ありがとうな……」
- 964 名前: ◆3sLRFBYImM :2015/12/13(日) 19:39:58 ID:rR00NBjg0
- 当時、大陸戦争の終わりは見えず、激化の一途を辿っていた戦禍。
日に日に質素になる食事。
無骨な男の手料理など、彩りというものからは縁遠い。
ミルナは思った。
孤児院で過ごしていた方がよほどナナシの為だったのではないかと。
実際のところ、孤児院の仲間に馴染めなかったナナシの居場所は少なかった。
ナナシにとってはミルナが立派な育ての親と思えるほど、月日は流れ……――。
( ゚д゚ ) 「辺境にあるこの村も、もうすぐ巻き込まれてしまうかもしれん。
いざとなったら皆と避難するんだぞ」
ミ,,゚Д゚彡 「…………」
ミ,,゚Д゚彡 「帰ってくるから?」
( ゚д゚ ) 「約束する、……今までありがとう」
( ゚д゚ ) 「もし帰ってこられたら、今度こそ俺はお前に……」
こうしてミルナは戦争へと赴いた。
故郷を捨てた彼は、もはやナナシこそが心の拠り所だった。
彼は誰かのために自分を犠牲にしたかった。
少しでも早く戦争を終わらせるために。
ナナシが安心して生活できるように。
そして黒い槍を置いて発ったミルナは戦闘の最中、
アサウルスの感染が進行し、ついには還らぬ人となってしまった。
(了)
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