123 名前:1/9 :2013/02/08(金) 20:34:17 ID:osyAY5Z2O

 人間とは一人一人が違うものである。


ξ゚听)ξ「ああっ、私はこの世で一番不幸な女だわ!」

 外見は勿論のこと、性格から思想、物事の好みまで、ありとあらゆる面において違いが生じる。

ξ;;)ξ「身寄りもいない天涯孤独……信じられる人間なんか誰もいない!
      なんて寂しいの……寂しい……」

 多少似通うところはあっても、人が違えば、結局それは「別の人」だ。

ξ;;)ξ「誰か、代わってほしいくらい……!」

 だから、その人の代わりなど、世界のどこを探したって見付からない──筈、なのだが。



(-@∀@)「んー……」

(-@∀@)「……ええと、ね。ごめんなさい。今回は不合格ってことで、ね」

ξ;;)ξ「は?」



 この世には、「君の代わりはいくらでもいる」なんて言葉が蔓延っていたりする。


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124 名前:2/9 :2013/02/08(金) 20:35:10 ID:osyAY5Z2O

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ξ#゚听)ξ「見る目のない糞どもが!!」

 ビルを出るなり、ツンが怒鳴る。
 ぎょっとした幾人かの通行人が振り返ったが、ツンに睨みつけられるや、
 そそくさとその場を去っていった。

 しばし息巻いていたツンは、不意に溜め息を吐き出すと、とぼとぼと歩き出した。

ξ゚听)ξ「はあ」

 ──彼女は小さな劇団に所属する、しがない「役者」だ。

 舞台公演と、たまにドラマに出演──エキストラ以外の仕事が来たことはないが──する他は、
 適当にアルバイトなどをして生計を立てている。



 ドラマの主役オーディションに行き、惨敗したこの日。

 彼女は、少年に声をかけられた。



(*^ω^)「お姉さん、女優さんだお」

ξ゚听)ξ「へ?」

(*^ω^)「ヴィップ劇団の人だおね! 前に舞台を見たお!
       テレビでも何回か見てるお? どれも脇役中の脇役だったけど」

ξ;゚听)ξ「よ、よく覚えてるわね、そんなの」

125 名前:3/9 :2013/02/08(金) 20:36:26 ID:osyAY5Z2O

(*^ω^)「さっき、お姉さんが出てきたビル、新番組のオーディションやってたおね?
       お姉さん、オーディション受けたのかお?」

ξ゚听)ξ「……ええ。君、子役か何か? 君もオーディションに来てたの?」

(*^ω^)「まさか! 僕がドラマに出るだなんて、そんな、役不足だお……。
       僕はただ、テレビや舞台の役者さんを見るのが好きなだけで……」

ξ゚听)ξ(……そういう場合は、『役者不足』って言うのよ)



 ツンのファンだと名乗る小学生、ブーン。

 彼から渡された一枚の紙が、全ての始まりだった。



(*^ω^)「じゃ、そういうわけだから、お姉さんの気が向いたら来てくださいお!」

ξ;゚听)ξ「ちょっ、ちょっと待ってよ、何なのよこれは!?」

(*^ω^)「お姉さんにぴったりな『役』をあげられる筈だおー! さよならー!」



【●内藤プロダクション

 TEL:○○○−○○○○
 〒:美符三丁目アパートシベリア205号室

 月・水・金・土曜日受付  11時〜18時】

ξ;゚听)ξ(……プロダクションって)

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126 名前:4/9 :2013/02/08(金) 20:37:39 ID:osyAY5Z2O

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( ;ω;)「ちょwwwwwほんとに来たのかおwwwwwwwwww
       売れない役者(笑)は見境ないわーwwwwwwwwwwwwwww」

ξ゚听)ξ

( ;ω;)「小学生の話鵜呑みにしてwwwwwwwwwwぷふーwwwww」

(´・ω・`)「自分で呼んどいて、ずいぶん失礼な扱いするよね」

ξ゚听)ξ「ねえ。私が昨日見た、ピュアでシャイで熱心なキュートボーイはどこに行ったの」

(´・ω・`)σ ( ;ω;)ヒーwwwwwヒーwwwww

ξ゚听)ξ「違うわ。こんな、客人を見ただけで小一時間笑い転げるガキなんか知らないわ」

( ;ω;)「昨日のは演技だっつのwwwwwwwwww嘘wwwwwファンとか嘘wwwww」

ξ゚听)ξ「帰るわ」

( ぅω;)「あ、待った待ったwwwww……www……、……」

( ^ω^)「……はあ。よし。
       ツンさん、たしかに僕はあなたのファンじゃないし応援もしてないし正直どうでもいいとしか思ってないお」

ξ゚听)ξ「もうマジで帰るわ」

( ^ω^)「でも──あなたにぴったりの役を与えられる、というのは嘘じゃありませんお」

127 名前:5/9 :2013/02/08(金) 20:38:12 ID:osyAY5Z2O



( ^ω^)「……ようこそ内藤プロダクションへ。
       ここには日々、様々な悩みを抱えた『依頼人』がやって来ますお」


( ^ω^)「あなたの仕事は、その依頼人に『成りきって』、悩みを解決してあげること」


ξ;゚听)ξ「……は……?」


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128 名前:6/9 :2013/02/08(金) 20:39:41 ID:osyAY5Z2O

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(*・∀・)「衣装・メイクはこの俺モララーと!」

(*゚ー゚)「しぃにゃんにお任せ!」

(*・∀<)「どんな素材だろうと、依頼人そっくりに仕上げてやるぜ!!」(>ー゚*)



(´・ω・`)「台本なら僕の仕事だよ。
      最高にハッピーエンドなシナリオを書いてあげよう。
      ……依頼人にとってハッピーエンドなだけであって、他の人がどうなるかは知ったこっちゃないね」



('、`*川「演技指導は私が。
     依頼人本人すら気付かぬような細かい癖、仕草、言葉遣いを完璧に把握して教えてさしあげますね。
     ……ちょっと、スパルタですけれど」





ξ;゚听)ξ(こんな優秀なスタッフ達をまとめてるなんて……ブーン君って、どれだけ凄い子なの……!?)

( ^ω^)「で、僕はお菓子とか食いながら指示出すんでー頑張ってくださーい」

ξ゚听)ξ「おい」

129 名前:7/9 :2013/02/08(金) 20:40:40 ID:osyAY5Z2O

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   川 ゚ -゚)「……私の代わりに、プロポーズを断ってきてくれないか」



     ────【第一話:赤ずきんちゃん】────





川;゚听)(やっべええええええええメイク落ちてきてる!!)

ミ*,,゚Д゚彡「クー。俺達はいずれ結婚する運命なんだ。だから……もう、いいよな? な?」

川;゚听)(そして23年間の人生の中で初めて男に押し倒されているぅうううう!!
     ケダモノだ!! 狼だ!!)

ミ,,゚Д゚彡「……あれ、クー、何か……顔、変わってないか」

川;゚听) ギクー

ミ,,゚Д゚彡「目が大きくなったような……」

川;゚听)「そっ……」



川;゚ー゚)「そ、それは……ほら! あなたのことを、よーく見たくって☆」

ミ*,,゚Д゚彡「クー……!!」

川; )(うわああああああい煽っちゃったぁあああああああああい!!!!!)

130 名前:8/9 :2013/02/08(金) 20:42:00 ID:osyAY5Z2O

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   ミセ;゚ー゚)リ「お願い! 私の代わりにパーティーに行って、長岡グループの跡取り息子をオトしてきて!」



     ────【第二話:シンデレラ】────




  _
(#゚∀゚)「おい! あんた、さっきから何なんだ!!
     人の皿落とすわ話の邪魔するわ頭突きしてくるわ、スーツにワインぶちまけるわ!!」

ミセ;゚听)リ「すっ、すみません! すみません! わざとじゃないんです!」

从'ー'从o川*゚ー゚)o クスクス……

ミセ;#゚听)リ(あのアマ共の仕業か……!!)


 |・ω・`)「僕の台本が無駄になりやがった……」
 |;・∀・)「あのドレス高かったのに!」
 |;゚ー゚)「早くメイク直せっつってんだろ!!」
 |*' ,`)「あらあら、『癖』を演じるの忘れてますね……せっかく教えたのに」
 |^ω^)「任務失敗、なんて結果に終わったら、どうしてくれようか……」


ミセ;゚听)リ(背後から凄まじい殺気……!?)ゾクッ

131 名前:9/9 :2013/02/08(金) 20:43:36 ID:osyAY5Z2O

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悩めるOL、社長令嬢、人妻にアイドル、果ては美青年!

幾人もの人間を演じていくツンだが、次々と発生するトラブル、トラブル、またトラブル!

果たして彼女の運命は!? ブーンは何者なのか!?

そして『たぶらかし』という小説とドラマの存在を知り、俺はそっと書き溜めをやめた──





ξ゚听)ξ代役はここにいるようです





ξ゚听)ξ「あんた、そんだけ演技上手いなら子役やったら?
      ドラマや映画に引っ張りだこよ、きっと」

( ^ω^)「まさか。この僕がドラマなんかに出るなんて──……役不足だお」

ξ;--)ξ「……役不足、ね。……うん、まあ、正しいわ」



今春、未公開


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