- 825 名前:名も無きAAのようです :2014/06/05(木) 22:42:33 ID:OnO9sIsY0
- 俺はその二人の馴れ初めを、あまり詳しく知らない
内向的で、他人を拒絶し続けたニダーを変えたのは、間違いなく姉御だ
だが、彼女がどうやって奴を変えたのかは、当の本人に聞いても答えてはくれなかった
たまに、あの二人が並んで歩いているのを見ると
とてつもなく大きく、重く、強いものに感じる
それは例えば、軍港で見る護衛艦の大きさと迫力であったり
年月を重ねても崩れない古城の石垣のような逞しさと分厚さであったり
鍛え上げられた真剣の美しさと鋭さであったり
ちっぽけな俺では太刀打ちできそうに無い。思わず、そんな気分にさせられる
あの頃の『自分』より強くなったとは言え
『この二人には、いや、一人でも、絶対に敵に回したくない』
そう思えた
そして今、改めて思う
(メA )
<ヽ`∀´>「…」
『この男とは、戦ってはいけない』と
- 826 名前:名も無きAAのようです :2014/06/05(木) 22:44:09 ID:OnO9sIsY0
『マーケティング・レンタルコミックス』
.
- 827 名前:名も無きAAのようです :2014/06/05(木) 22:46:10 ID:OnO9sIsY0
- ―――――
―――
―
月曜日
病院銃撃事件の犯人逮捕から一夜開け、通常通り学校が再開された
しかし、安心する世間とは裏腹に、事件の当事者達はさらに警戒を強めていた
('A`)「浦風でました」
( ^ω^)「マジかよやべえな」
从 ゚∀从「警戒強めろ」
朝の2-Mの教室では、一人を除いていつも通りのメンバーが集まっていた
( ・∀・)「ニュース見たけど、完全に別人だったね」
('A`)「もうちょっと似せる努力しろよと」
(-@∀@)「登校中に目立った異変は無かったけど、油断は出来ないよね…」
从 ゚∀从「で、ノコノコ学校に来て、お前らはどうするつもりなんだ?」
捕まった犯人は明らかな偽者であり、襲撃者側が素直クールに関する情報を得る時間がたっぷりとあった
学校再開は『罠』だと判断出きる状況で、ドクオとブーンが出した結論は
('A`)「正直、ここいらが限界だと思うんだ」
- 828 名前:名も無きAAのようです :2014/06/05(木) 22:47:42 ID:OnO9sIsY0
- いくらマッチョで変態だからと言っても、ドクオもブーンも平凡な男子高校生
勝利の女神を匿うにも、限界がある
('A`)「だから、いっそ虎穴に入ってしまおうかと」
『逃げる』のを止め、『攻める』ことを選択したのだ
从 ゚∀从「捕まるってことか?」
('A`)「まぁそうなるな」
( ^ω^)「捕まってエロ同人が如くエロいことさせられるお」
(;・∀・)「ちょ…君ら状況わかってんの?」
('A`)「うん」
(;・∀・)「うんじゃないよ…相手は拳銃持ってて、阿部さんが撃たれたんだよ?捕まったら何されるか分かったもんじゃないんだよ?」
('A`)「何をされようが…」
('∀`)「ムカデ人間にされるよかマシさ!!」
( ^ω^)「せやな!!!!」
(;-@∀@)「絶望の底が深すぎて危機感が薄れてる…」
(;・∀・)「現実!!これ現実だから!!フィクションっぽいけど現実!!」
从 ゚∀从「…まぁ、落ち着けよ。このバカどもの話、もうちょっと聞こうぜ」
- 830 名前:名も無きAAのようです :2014/06/05(木) 22:50:15 ID:OnO9sIsY0
- ('A`)「すまねえな、ハイン」
从 -∀从「いいから、続き」
ハインは手を振って話を促した
('A`)「まず、俺らには取引材料がある。『しょーちゃんの居所』だ。こいつは奴さんがたが喉から手が出るくらい知りたがってること」
( ^ω^)「対し、俺らの知りたい情報は『しょーちゃんの帰還』と『姉御の復活』の方法、そして『勝利の女神を呼び出した目的について』だお」
从 ゚∀从「取引材料っつったな、つまり…」
('A`)「ああ、『情報のトレード』を持ちかける」
从 -∀从「しょーちゃんの身柄を引き渡すのか?」
('A`)「場合による」
从 ゚∀从「病院で、言ってたことと随分食い違っているな」
从 ゚∀从「『拳銃ぶっ放す連中に大事な友達を渡せるか』ってセリフ、嘘だったのか?」
('A`)「言っただろ、ここいらが限界だと」
( ^ω^)「逃げ続けてもいずれ詰む、国外逃亡なんて大それたことなんて出来ねえ。だったら、和解に持ち込むしかねえだろ」
从 ゚∀从「…で、『場合が場合』だとしたら、どうする?」
('A`)「…」
('∀^) ニタァ…
ドクオが見せた悪魔的笑み!!
全員がその狂喜に見覚えがあった!!
ボディコンテスト前、ラグビー部が訪れ、理不尽な要求を吹っ掛けてきたあの時!!
('∀^)「『合法的』にこいつをぶち込める時が、訪れるだけだ。楽しみだな」
ドクオが鞄から取り出したのは、プラスチック製の『特徴的な形のおしゃぶり』だ
それを、ラグビー部に見せた何倍もの量を、手のひらから溢れかえるほどごっそりと
- 831 名前:名も無きAAのようです :2014/06/05(木) 22:52:07 ID:OnO9sIsY0
- 从;゚∀从「っ…相変わらずおめーの頭はバグってんな」
('∀∩ スッ…
('A`)「納得してくれたか?ただのんきに交換するだけじゃねえって事を」
从;-∀从「納得はしてねえが理解したよ…お前が楽しんでるってことをな」
('A`)「とんでもねえ、こうして冗談でも飛ばさねえとプレッシャーで逃げたしたくなるくらいだ」
(;・∀・)「因みに、しょーちゃんの居場所は?」
( ^ω^)「ヒ・ミ・ツ」
从 ゚∀从(おおかた店長のとこだろ…変なことしてなきゃいいがな)
校内放送が朝礼の開始を告げ、ドクオは席を立った
掴み取ったおしゃぶりをポケットに突っ込んで
('A`)「お前らはシラを切りとおせ…痛い目見るのは、俺らだけでいい」
体育館へ向かった
( ^ω^)「……」
从 ゚∀从「…おめーは、何考えてんだよ」
( ^ω^)「別に」
- 834 名前:名も無きAAのようです :2014/06/05(木) 22:53:28 ID:OnO9sIsY0
- ―――――
―――
―
/ ,' 3「えー…」
全校生徒が既に体育館に集まった中、朝礼の挨拶をするはずの荒巻校長は今だ室内に残っていた
いや、『残らざるを得なかった』
/ ,' 3「旧友に出会えた喜びを分かち合いたいところなのだが…」
/ ,' 3「そんな無粋な物を突きつけられては、笑い声一つもあげられんのう」
<゚Д゚=>「じゃあ黙ってろやジジイ」
『頭に銃口を突きつけられている』この状況では
/ ,' 3「やだ銃持ってる若者こわい…タマ縮み上がるわ…」
「いやスマンな、私の部下が」
/ ,' 3「そう思ってるならこのアホをクビにして居酒屋の予約でもしろや」
/ ,' 3「稲荷よ」
爪'ー`)y‐「…」
稲荷と呼ばれた老人は、ふてぶてしく葉巻の煙を吐いた
- 835 名前:名も無きAAのようです :2014/06/05(木) 22:54:32 ID:OnO9sIsY0
- 爪'ー`)y‐「お互い歳を取ったもんだな荒巻よ。最後に会ったのは…」
/ ,' 3「ウェイウェイウェイ、思い出話がしたいのなら仕事終わりにしてくれないかの?大企業『稲荷コーポレーション』の会長様とは違って、有象無象クラスの高校の校長だ。貧乏、暇なしなんじゃよ」
爪'ー`)y‐「有象無象などとんでもない。恐ろしく訓練された学生達じゃあないか」
/ ,' 3「教育と言え。うちは兵士を育てているわけでは無いのだ」
爪'ー`)y‐「クックック…そうは言ってもだな荒巻、事実私の部下が、良い様にあしらわれたのだよ。なぁ?義虎」
<゚Д゚#=>「ムカつくこと思い出させんでくださいよ…引き金が軽くなっちまう」
/ ,' 3「やめろよ?絶対撃つなよ?ただでさえグロいジジイのグロなんてみたくないじゃろ?」
爪'ー`)y‐「相変わらずで何よりだよ荒巻。銃口を向けられて尚、その飄々とした態度…尊敬に値する」
/ ,' 3「お前の態度は腹立つわー…何が目的じゃ?金…なわけないか」
爪'ー`)y‐「何だと思う?」
/;,' 3「ま、まさか…ワシのこの熟れきった身体!?やだ…この歳にして新境地開拓!?」
<゚Д゚;=>「キモいんだよ!!マジでぶっ殺すぞ!!」
/ ,' 3「ごめ、つい」
爪;'ー`)y‐「ハハハ、ハズレだよ荒巻」
/ ,' 3「当たらずも遠からずといったところかね?」
爪;'ー`)y‐「いや、当たってないし遠すぎる」
- 836 名前:名も無きAAのようです :2014/06/05(木) 22:57:09 ID:OnO9sIsY0
- / ,' 3「ワシが身を差し出す程度なら幾らでもしてやるがね…流石に生徒に手を出すと言うのなら容認できんな」
爪'ー`)y‐「何、取って食おうと言うわけじゃあ無いさ…話は変わるが、お孫さんは元気かね?」
/ ,' 3「……」
荒巻校長は、素直クールの祖父だ
学内でその事を知っているのは、阿部さんとニダーを含むごく少数の人物だけ
彼女の両親よりも近くにいる肉親だ
しかしながら、彼も多忙であり、つい先日まで中国の姉妹校に出張していた
クールが倒れたことは阿部さんから聞いていたものの、詳しいことはまだわかっていない
だが、この街で起こった病院銃撃事件に加え、阿部さんの負傷
そして入院していたはずの孫の行方が消えたことと、旧友のとんでもない訪問
/ ,' 3「貴様、何をしでかした?」
ここまでピースが揃えば、嫌でも彼の目的が『素直クール』だということが見えてくる
爪'ー`)y‐「クク、いやいや、まだ何もしでかしちゃあいないさ」
紫煙を肺いっぱいに吸い込んで、ゆっくりと満足そうに吐き出す
校長室の天井が、うっすらと白く霞む
爪'ー`)y‐「『まだ』ね」
/ ,' 3「…『老害』という言葉が似合うようになったの、稲荷」
爪'ー`)y‐「そんな言葉を吐くような若者よりは、この国に尽くしていると思うがね」
- 837 名前:名も無きAAのようです :2014/06/05(木) 22:58:39 ID:OnO9sIsY0
- 爪'ー`)y‐「荒巻よ…私もな、『あの戦争』を共に生き残った仲間にこんな真似をするのは心苦しいのだよ」
荒巻校長は『どの口がほざく』と言わんばかりに盛大に鼻を鳴らした
爪'ー`)y‐「手荒な真似はしない、無事に帰すと約束する」
爪'ー`)y‐「お前の孫、『素直クール』を私に預けてはくれないか?」
/ ,' 3「…」
『お願い』ではないことは、後頭部に突きつけられた銃口が物語っている
荒巻はその奇行から変人の扱いをされているが
『漢であれ』という理念を掲げる学校の校長なだけあって、例に漏れず『漢』らしい内面を持つ
当然、可愛い孫が危険に晒されるくらいなら、頭を撃ち抜かれた方がマシという考えでいるが
しかしそれはあくまで、『孫の居場所』を知っていた場合に限る
/ ,' 3「そうは言ってものう…無い袖は振れぬのじゃ」
爪'ー`)y‐「…はて?」
/ ,' 3「『知らぬ』と言うとるのだよ稲荷。孫の居場所はワシにもわからん」
稲荷の余裕の笑みが僅かに引きつった
それを見て、今度は荒巻が憎たらしく思えるほどの笑顔を向ける
/ ,' 3「それでお前さんの性欲が納まるのなら、拷問でもエロ同人みたいなことでもなんでもするが良い。だが、いくら教師とは言え知らぬことを教える事は出来ん」
爪;'ー`)y‐「…」
/ ,' 3「アテが外れたの稲荷。さぁどうする?ワシを連れ去って強姦するか?それとも、諦めてゲイバーにでも繰り出すか?」
- 838 名前:名も無きAAのようです :2014/06/05(木) 23:00:08 ID:OnO9sIsY0
- 爪;'ー`)y‐「クク、いや済まなかった。どうも私は気を急いてしまう性格でね。お前を訪ねれば簡単だと思ったんだが」
/ ,' 3「おととい来やがれバーカwwwwwww」
稲荷は疲れを覆い隠すように皺だらけの顔を手で拭った後、短くなった葉巻を灰皿へ押し付け立ち上がった
爪'ー`)「それでは、別の者に聞くとしようか」
/ ,' 3「別の者…?」
老年の者とは思えないほど、背筋が伸びた立ち姿
その顔には再び、余裕の笑みが戻っていた
爪'ー`)「何、今度は彼女の『友達』に尋ねようと思ってね」
/ ,' 3「稲荷、貴様…」
『生徒にまで手を出すのか』、怒りを露わに立ち上がろうとした瞬間
全校生徒が集まる体育館から、怒号と悲鳴が聞こえた
/;,' 3「ッ!?」
爪'ー`)「ああ、安心しろ。子どもに銃なんて向けんさ。『痛い目を見ない』保障は無いがね」
/;,' 3「性根まで腐りきったか稲荷!!」
爪'ー`)「私が?腐った?いやいや、とんだ勘違いだ荒巻」
シガーケースから新たな葉巻を取り出し、咥えて火を付ける
- 839 名前:名も無きAAのようです :2014/06/05(木) 23:01:06 ID:OnO9sIsY0
- 爪'ー`)y‐「この国が腐ったのさ。お前含め、全てな」
/;,' 3「なんじゃと…?」
爪'ー`)y‐「それでは、御機嫌よう我が戦友。次会う時は『新しい日本』で」
/;,' 3「待て!!」
退室しようとする稲荷を引きとめようとするが、依然突きつけられる銃口が立ち上がる事を許さなかった
<゚Д゚=>「動くんじゃねえよ」
/;,' 3「…!!」
爪'ー`)y‐「その男は暫く置いておくよ。まぁ撃つなんてことは無いだろうが、言葉には気をつけたほうが良い」
校長室に荒巻と、抑えの役割を荷った義虎を残し稲荷は去った
その頃、体育館では
(●α●#)「騒ぐんじゃねえぞガキ共ォ!!」
(ナ●β●)「先公共もだ!!」
グラサン、黒スーツの、模範的とも言える格好をしたヤクザの集団が
全校生徒と教員を取り囲んでいた
- 840 名前:名も無きAAのようです :2014/06/05(木) 23:02:16 ID:OnO9sIsY0
- (;'A`)(オイオイ、マジかよ…)
ドクオは中学校時代の痛い妄想を思い出していた
『学校がテロリストの集団に占拠される』系の、アレだ
正しく今、この状況が、その妄想の通りになってしまっている
(;'A`)(携帯…うわ、案の定圏外だ…妨害電波でも発してんだろうな…至れり尽くせりじゃねえか)
|#(●), 、(●)、|「おいなんだ貴様ら!!ここをどこだと思っている!!」
教員も黙ってみているわけにはいかない
阿部さんと並ぶ体格の持ち主、日本史教師兼ラグビー部顧問の立石が近くのヤクザの胸倉を掴んだ
|;(●), 、(●)、|(重っ…!?)
大の男を造作も無く投げ飛ばす立石が、襟から伝わるそのヤクザの『異常なほどの重さ』に驚いた瞬間
彼の手首が明後日の方向に曲がった
|;(●), 、(○)、|「ぐぎっ…」
骨の折れる音が、体育館に反響する
ヤクザは、立石の手首を掴んだまま、『片腕』で背後にある舞台へと放り投げた
180近い立石の体が宙に浮き、壇上に叩きつけられる
(//‰ ゚)「…」
現実離れした出来事に、その場にいる人々が静まり返る中
彼を投げとばしたヤクザは、乱れた襟も正さず、『休め』の体勢を取った
- 842 名前:名も無きAAのようです :2014/06/05(木) 23:04:11 ID:OnO9sIsY0
- (#゚∀゚)「てめえ!!先生に何しやがる!!」
当然、恩師を傷つけられたラグビー部の連中は黙っていない
整列した生徒の群れを掻き分け、そのヤクザへ報復しようとする
(#●α●)「それ以上動くんじゃねえ!!!!」
それに対し他のヤクザ達は
近くにいた女子生徒や比較的体の小さい生徒を引き寄せ、首に刃物を押し当て人質に取った
(#●α●)「てめえらの身勝手な行動で他の生徒が死んでもいいのか!?」
(#゚∀゚)「くっ…そが…」
怒りで身を震わせるが、人質にされた生徒達の脅えた表情が、ラグビー部の爆発を抑え付けた
(ナ●β●)「いいか良く聞けガキ共!!今から名前を呼ぶ奴は十秒以内に前に出ろ!!それ以外の連中はそこでジッとしてろ!!」
(ナ●β●)「欝田!!内藤!!高岡!!上条!!木原!!神裂!!サッサと出て来い!!」
- 844 名前:名も無きAAのようです :2014/06/05(木) 23:06:02 ID:OnO9sIsY0
- 全校生徒の視線が、一斉にドクオ達へと集まる
('A`)「…」
その目はどれもこれも、『今度は何をやらかした?』という疑問を投げかけていた
ドクオは、目立つように両腕を上げる
('A`)「俺が欝田だ。あんた等のお目当てはわかってるぜ」
(ナ●β●)「欝田か!!よし、前へ!!その他の連中も名乗りを上げろ!!」
( ^ω^)「その必要は無い藤ホライゾン」
呼応するように、ブーンも手を上げ前へ進む
( ^ω^)「何も全員集めなくても、俺らがいれば充分間に合う…無駄は省いたほうがお互いの為じゃね?」
(#●α●)「てめえが決めることじゃねえ!!サッサと…」
(●℃●)「待て、こいつら…」
一人のヤクザがスマートフォンの画面と、二人の顔を交互に見合わせる
そして、合点がいったように頷き
(●℃●)「こいつらだけで良いようだ。連れて行くぞ」
手首を手錠で拘束し、複数のヤクザと共に体育館から連れ出した
- 851 名前:名も無きAAのようです :2014/06/08(日) 23:25:49 ID:wktvu1Do0
- 2-Mのメンバーは
(;-∀・)「…」
(;-@∀@)「…」
从 -∀从「…」
言われたとおり、『シラを切った』
二人の邪魔をしてはいけない、今回は役に立てそうも無いと考えたからだ
不安と緊張に押しつぶされそうな中で、二年生は
『ある重要な事』に気付けなかった
ノハ;゚听)「…」
唯一気付いたのは、意外にも一番年下である彼女
ヤクザ達が挙げた名前の中で、一つ抜けているものがあったのだ
ノハ;゚听)「な、何で…」
「ニダー先輩の名前が無かったの…?」
.
- 852 名前:名も無きAAのようです :2014/06/08(日) 23:27:56 ID:wktvu1Do0
- ―――――
―――
―
('A`)「…で、俺達はどこに連れて行かれるんですかね?」
( ^ω^)「ハッテン場に決まってんだろ言わせんな恥ずかしい」
('A`)「ケツが疼くな」
(#●D●)「黙って歩け!!」
ドクオ達はヤクザ五人に取り囲まれながら、人のいない静かな廊下を歩かされていた
人数分の足音と、手錠の音が響く
(●℃●)「これからボスに会ってもらう。そこで洗いざらい吐いて貰うぞ」
('A`)「ボスねえ…神社の伝説をマジに信じるようなアホに、お前ら良く着いていけるな」
( ^ω^)「サンタさんもいるって信じてるんじゃね?」
(●f●ナ)「減らず口を叩くんじゃあない!!」
後方のヤクザが警棒を振るう
二人の背中に衝撃と痛みが走り、膝を着いた
(●f●ナ)「サッサと立たんか!!」
(;゚A`)「っつ…」
跪いたドクオの髪を掴み、無理やり立たそうとする
容赦ない暴力に彼は
(;'∀`)「へ、へへ…」
『笑った』
(●f●ナ)「貴様…何が可笑しい!?」
(;'∀`)「『何』が、可笑しいかって…?へへ、そりゃあお前…」
- 853 名前:名も無きAAのようです :2014/06/08(日) 23:29:24 ID:wktvu1Do0
- (;'∀`)「『たった五人』で俺らを支配してる気になってるお前らが滑稽でたまんねえんだよ…なぁ、相棒」
( ^ω^)「全くもって、その通りだお」
(●f●ナ#)「なんだと…?これでもまだ、同じことが言えるか!?」
ヤクザは再び警棒を振り上げる
ドクオの顔は今だ、笑ったままであった
その時、一人のヤクザがある事に気付いた
(●D●)(あれ…?あいつ、どうして…)
(●D●)(『ケツに鎖を挟んで』――――)
破裂音、同時に、手錠の鎖が千切れる音
('∀`)「アホめ」
自由になった左腕で、警棒を振るう腕を掴んだ
(●f●ナ;)「なっ…!?」
(#'A`)「いよいしょお!!!」
そして、右拳でヤクザの頬を殴り抜ける
口から折れた奥歯を吐き出し、半回転しながら廊下へと倒れた
- 854 名前:名も無きAAのようです :2014/06/08(日) 23:30:24 ID:wktvu1Do0
- (#●D●)「この野…」
(#^ω^)「ほいよぉ!!」
背を向けたドクオに殴りかかろうとしたヤクザの膝裏を、ブーンが蹴る
膝関節への衝撃により、自分の意思とは裏腹に肩膝を着いてしまう
(#'A`)「らぁ!!」
体勢が崩れたところを、ドクオの後ろ回し蹴りが顔面を襲う
グラサンが弾け飛び、壁に頭を叩きつけ失神した
(#'A`)「後ろ!!」
(#^ω^)「はいよぉ!!」
続けて、ブーンの背後から羽交い絞めにしようとしたヤクザの顔に、反り返って頭をぶつける
(;メE●)「ぎゃあ!!」
グラサンが割れ、鼻から血を流しながら数歩下がったヤクザの股間を、ブーンの踵が蹴り上げる
男の急所に強烈なダメージを与えられたヤクザは、股間を押さえながら蹲った
(#^ω^)「行け!!」
(#'A`)「おおよ!!」
腰を曲げたブーンを、馬飛びの要領で飛び越える
そのままの勢いで、近くにいたヤクザに殴りかかった
- 856 名前:名も無きAAのようです :2014/06/08(日) 23:31:53 ID:wktvu1Do0
- (;●H●)「ガキがッ!!」
真正面からのドクオの攻撃を回避する
(;゚A`)そ「おお!?」
避けられるとは思ってなかったドクオは、大きく体勢を崩した
(#●H●)「くたばれ!!」
ヤクザは懐からドスを取り出し、ドクオに突進する
(;゚A`)「しまっ…」
抜き身の刃物が、ドクオの服を貫いた
(;●H●)「!?」
『服だけを』、貫いた
('A`)「なんて、言うと思ったか?」
ドスはドクオのケツに挟まれ、ピクリとも動かない
(;●H●)「な、何者だてめえら!?」
( ^ω^)「『マッチョマン』だよ」
ヤクザの問いかけにブーンが応じると同時に
ドスの刃が、粉々に砕け散った
- 858 名前:名も無きAAのようです :2014/06/08(日) 23:33:37 ID:wktvu1Do0
- (;●H●)「ひえっ…!?」
(#'A`)「よいしょおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」
刃が欠けたドスを手に呆然とするヤクザを抱え上げ、スープレックスの要領で投げ飛ばす
頭から地面に激突し、そのまま動かなくなった
( ^ω^)「だからこそ、世の中のドブさらいに適してるのさ」
('A`)「レオーネ乙」
(;●℃●)「…」ジリッ
三(;●℃●) ダッ!!
('A`)「おっと、逃がさねえぜオッサン」
逃げようとしたヤクザの襟を掴み、止める
(;●℃●)「頼む!!見逃してくれ!!俺はただ金で雇われただけの…」
('A`)「だから?」
(;●℃●)「はっ?」
('A`)「金で雇われた…だから、何?その説得で、見逃してもらえると思ってるの?」
( ^ω^)「おめでたい脳みそだお」
ドクオのポケットから、『半透明のプラスチック』が落ちて転がり、ヤクザの靴にコツリと当たる
(;●℃●)「…」┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛┣゛
ヤクザには、少し変わった形をしただけのプラスチックが何故か
- 859 名前:名も無きAAのようです :2014/06/08(日) 23:34:34 ID:wktvu1Do0
『とてつもなく、禍々しく見えた』
.
- 860 名前:名も無きAAのようです :2014/06/08(日) 23:36:09 ID:wktvu1Do0
- ('A`)「さぁ…」
('∀^)「お仕置きの時間だよ、ベイビー」ニコォ…
(;●℃●)「ヒッ…」
その日、唯一無傷だったヤクザは
『絶望の底』を体験してしまった
【ドクオお仕置き中…】
【ドクオお仕置き中…】
- 872 名前:名も無きAAのようです :2014/06/15(日) 00:29:56 ID:EaRFAVT20
- (lii A )「おえええええええええええええ!!!!!」ビチャビチャビチャビチャ!!
( ^ω^)「…吐くくらいなら」
(;^ω^)「最初からすんな!!!!!!」
完成したムカデ人間(ライト)を前に盛大に嘔吐するドクオ
その顔には、かのマッドドクターや、映画に狂信した男が、かつて浮かべた満足感など微塵も張り付いていなかった
(lii'A`)「今、はっきりと、わかった…オボォ」ゲロビチャ
(;^ω^)「きったねえな…何が?」
(lii'A`)「トム・シックス監督は変態」
(;^ω^)そ「そんなもん最初からわかりきってたことだろうがお!!アホかお前!!」
(lii'A`)「『食事シーン』を拝まなかっただけ、うっぷ、まだ小破と言ったところか…」
(;^ω^)「小破どころか撃沈してるっつの…どうすんだよこれ…」
(●℃●)「」
( ^ω^)「死んでね?」
(lii'A`)「バカ言うなよ…ケツに短くてちょっと太い管入れただけで人が死ぬわけねえだろ…」
( ^ω^)「いや社会的及び精神的に」
(lii'A`)「ちょっと何言ってるかわかんない」
( ^ω^)「わかれよ状況的に」
- 873 名前:名も無きAAのようです :2014/06/15(日) 00:32:14 ID:EaRFAVT20
- ('A`)「よぉし、慣れた」
( ^ω^)「慣れんな」
('A`)「さて、こいつら全員レイプ目だし…ちょっくら失敬しますか」
ドクオは床に乱雑に落ちてるズボンからヤクザ達の携帯や財布を引き抜いていく
どうしてズボンが落ちているのか、一々説明しなくてもご理解戴けるだろう
( ^ω^)「この手際の良さ…さっきまでゲロ吐いてた奴とは思えんお」
('A`)「せやろ?切り替えの早い漢だからな」
( ^ω^)「ハイターやマーティンだってムカデ人間を前にこんなあっさりしねえよ」
('A`)「意識がはっきりしたら分離出来るんだから軽いもんだろ…」
( ^ω^)「それこいつらの目を見て同じこと言えんの?」
('A`)「お…免許書と」
( ^ω^)「スルーかてめえ」
('A`)「…」
( ^ω^)「…どうした?何が見つかった?メロブのポイントカード?」
('A`)「いや…」
ドクオは免許書と共にもう一枚、カードを見せる
(;^ω^)「が…」
(;^ω^)「『学生証』…?」
VIP市内にあるFラン大学の、学生証であった
- 874 名前:名も無きAAのようです :2014/06/15(日) 00:33:57 ID:EaRFAVT20
- ('A`)「他の連中も、未成年か成人して間もない奴らばかりだ。道理でおかしいと思ったぜ…『弱過ぎる』。いくら俺らがマッスル&ガイでも、本業のヤーさんがこんなあっさり倒れるとは思えねえし」
( ^ω^)「学園都市のチンピラ並みのザコさだったお…そりゃ上条さんも活躍するわ…」
('A`)「それに見ろ」
ムカデ人間最後尾の片腕を掴み、捻り上げる
バランスを崩し、尻から離れた頭がゲロの池にダイブしたが、ドクオは気にせず話を続ける
('A`)「これ、なんだかわかるか?」
男の腕には、痛々しい傷跡
ブーンはこの傷に見覚えがあった
(;^ω^)「『注射痕』、かお」
保険室の前に貼られている、麻薬の恐さを生々しく伝えるポスター
それに載っていた麻薬の注射痕と瓜二つであった
('A`)「ムカデ先頭のこいつ、さっき『金で雇われただけの…』と言ってたよな?俺は最初、ただの命乞いかと思ってスルーした」
('A`)「だがこれには続きがあった。『金で雇われただけの学生だ』と、しかも、『ヤク中』のオマケ付きと来た。この二つが何を導き出すか…」
(;^ω^)「…黒幕は最初から、こいつらに学校襲撃の罪を押し付ける気でいた」
('A`)「だろうな…筋書きはこうだ。『ヤク中の大学生が集団でラリって高校襲撃、「金で雇われた」などと意味不明な供述を…』」
(;^ω^)「頭がパーな連中に何言わせても効力を持たないと踏んだのかお…大学生っつっても、まだ学生だお?そんな奴らに…」
('A`)「確かにやり方は汚えが、同情の余地はねえ。完全な自業自得だ」
ドクオは腕を離すと、頭を掴み上げもう一度『尻と繋ぎ合わせる』
('A`)「これもいい罰になるだろうよ。トム・シックス監督は常人かどうかはさて置き、鬼才だと思うわ」
( ^ω^)「いやだからってムカデ人間を正当化して良い理由にはならないからな?」
- 875 名前:名も無きAAのようです :2014/06/15(日) 00:34:58 ID:EaRFAVT20
- ('A`)「さて、肝心のボスだが…」
「酷いことするんだね」
('A`)!!( ^ω^)
背後からの女性の声に、二人同時に振り返った
(*゚∀゚)「やっ、久しぶり」
(;^ω^)「…」
(;'A`)(誰や…)
その声に、顔に、ブーンは病院での騒動を思い出す
( ^ω^)「…デートのお誘いに来た、ワケじゃないみたいだね」
(*゚∀゚)「残念ながら、ね」
('A`)「ちょ、ブーン?知ってる人?俺と言う漢がありながら浮気してたの?」
(*;゚∀゚)))「えっ…キミらそういう関係…?」
( ^ω^)「…」
('A`)「…」
(*;゚∀゚)「否定なり公定なりしてよ…」
- 876 名前:名も無きAAのようです :2014/06/15(日) 00:37:44 ID:EaRFAVT20
- ( ^ω^)「俺らを捕まえに来たってんなら、回れ右してとっとと家に帰れ。この第二のマーティンにムカデ人間にされるぞ」
('A`)「いや、流石にもういいわ、飽きた。次は武器と人間くっつけるわ」
( ^ω^)「この第二のヴィクター博士に武器人間にされるぞ」
(*゚∀゚)「んー、いや、その役目は後ろの『彼』に任せるよ」
(;^ω^)「後ッ…!?」
女が指差す方向へ、またもや二人同時に振り返る
その先には
(;'A`)
ただ人気の無い廊下が伸びていただけ
彼女の行動が『ブラフ』だと気付いたのは
(;'A`)(やられた)
窓ガラスが破られた瞬間のことだった
突き出した腕がドクオの頭を掴み、飛び込んできた勢いのまま押し倒す
ブーンは突き飛ばされ、ドクオの体の上に人の形をした『モノ』がのしかかるが、その重さは
(;'A゚)(重ッ…!!)
人の比では無かった
- 877 名前:名も無きAAのようです :2014/06/15(日) 00:40:26 ID:EaRFAVT20
- (;^ω^)「っ…こいつ…!!」
(//‰ ゚)「…」
ガラスの破片で切った額から流れ出る血を拭いながら、ブーンは立ち上がる
突入してきたのは、立石を軽々と投げ飛ばしたヤクザ
その表情は彫刻のように動くことなく、しかし、ドクオを押さえつける腕だけは万力のような力強さがあった
(#^ω^)「ウラァ!!」
こちらを見向きもしないヤクザの顔面に、拳を見舞う
苦痛に顔を歪めたのは
(;^ω^)「ッ!?」
ブーンの方であった
- 878 名前:名も無きAAのようです :2014/06/15(日) 00:41:31 ID:EaRFAVT20
- (;^ω^)(堅…過ぎる!?)
(//‰ ゚)
まるで岩石を殴ったかのような感触
ブーンの拳からは血が垂れ出した
それでも尚、ヤクザの表情、体勢は動くことが無い
(#^ω^)「この野朗がッ!!」
それならばと、後頭部を狙った蹴りを放つ
しかしヤクザはそれを避けようともせず
(//‰ ゚)
なんと首を逸らし、後頭部で蹴りを迎撃
一見、無謀に思えるこの反撃は
(; ゚ω^)「があッ!?」
ブーンの足の甲を砕いた
- 879 名前:名も無きAAのようです :2014/06/15(日) 00:42:39 ID:EaRFAVT20
- ドクオはと言うと
(;'A゚)(クソッ…マジで動けねえ!!)
首に押し付けられる腕は鉄柱のように堅く、微動だにせず
体にのしかかる人とは思えない重みに骨が音を立て軋む
(;'A゚)「うっ…あああああああ!!!!」バァン!!
尻の衝撃で体を浮かし、逃れようとするものの、その重みの前では焼け石に水
むしろ、下手に抵抗した分、更にヤクザの体が深くのしかかった
(;'A゚)「アガ…」
肺が圧迫され、呼吸が止まる
(//‰ ゚)
(;'A゚)(こいつ…)
酸欠と重圧の苦しみの最中、ヤクザの瞳がドクオを覗く
黒い、あまりにも暗いその目は
(;'A゚)(人間じゃ…な…)
- 880 名前:名も無きAAのようです :2014/06/15(日) 00:43:53 ID:EaRFAVT20
- 「そこまでだ、横堀」
制止の声でヤクザは
(//‰ ゚)
あっさりとドクオの体を放し、休めの体勢を取った
(;'A`)「ッハアアアア……」
重みから解放されたドクオは、大きく息を吸い込む
「流石の君も、『彼』には敵わないか」
(;'A`)「…アンタは」
今度の声に聞き覚えがあったのは、ドクオの方であった
【+ 】ゞ゚)「やぁ、高校生くん。元気そうで何よりだ」
(;'A`)「オッサン…」
(;^ω^)(誰や…)
(*゚∀゚)「オサムさん」
【+ 】ゞ゚)「引き上げるぞ、つー。目的は果たした」
- 881 名前:名も無きAAのようです :2014/06/15(日) 00:45:45 ID:EaRFAVT20
- (;^ω^)「ドクオ…さっきああ言っときながらお前だってしっかり浮気…」
(;'A`)「誤解だ、俺は二度と会いたくねえと突き放したのにこのオッサンが…」
【+ 】;ゞ゚)「あ、あの、そういう意味で会いに来たわけではないのだが…」
(*;゚∀゚)「アタシ恐いよオサムさん、マッチョのBLなんて見たくないよ」
(;^ω^)「…」
(;'A`)「…」
【+ 】;ゞ゚)「何故なにも応えようとしないのかね…?」
(;'A`)「オッサン、今…」
(;'A`)「『目的は果たした』と…」
【+ 】ゞ゚)「ああ、そのことなんだがね…来たまえ」
その呼びかけに、曲がり角から足音が聞こえる
一つは、ゆっくりではあるが、揺ぎ無く突き進む足音
もう一つ、足をもつらせながら歩く、抵抗の足音
(;'A`)「…」
(;^ω^)「嘘だろ、オイ…」
二人は、病院襲撃の夜の事を
帰りの車内でショボンが言った言葉を、思い出した
- 882 名前:名も無きAAのようです :2014/06/15(日) 00:47:34 ID:EaRFAVT20
- 【「気をつけたほうがいい」】
二人は今日、初めて知る
【「俺も昔、ああ言う目をした人間を何度か見てきた。そいつらはこぞって『何かをしでかした』」】
敵が敵として襲い掛かってくるよりも
【「水底に石を沈めるように、自分の中に『覚悟』を埋める。激しい覚悟じゃなく、『静』なる覚悟」】
最も恐ろしく、厄介なモノがあると言う事を
<ヽ`∀´>「…」
『味方が敵へと変わる』という事を
.
- 892 名前:名も無きAAのようです :2014/07/05(土) 00:53:36 ID:5kT/VzXA0
- 色の無い、温度も無い表情で
ニダーは二人の前に現れた
川;゚ -゚)「…」
勝利の女神を、引き連れて
(; A )「…」
(; ω )「…」
言葉も出ない二人を差し置いて
(*゚∀゚)「ああ、『答え』は出たんですね瓜畑さん」
<ヽ`∀´>「…」
【+ 】ゞ゚)「ボスにも今しがた連絡を入れた。長居は無用だ、行くぞ」
(//‰ ゚)
『敵』は淡々と引き上げようとしていた
( A )「待てよ…」
( ω )「待て…」
目も向けず去ろうとするニダーに
(#'A゚)(#^ω゚ )「「待て!!!!!!!」」
二人の怒りは爆発した
- 893 名前:名も無きAAのようです :2014/07/05(土) 00:55:16 ID:5kT/VzXA0
- (#'A`)「てめえ何やってんだニダー!!」
<ヽ`∀´>「…」
(#^ω^)「彼女を守るのがお前の役目だろうが!!」
<ヽ`∀´>「…」
(#'A`)(#^ω^)「「ニダー!!」」
【+ 】ゞ゚)「…応えないのか?」
<ヽ`∀´>「…」
川;゚ -゚)「痛っ…痛い…」
無表情、無関心を貫いていたニダーだが、女神を掴む腕はその限りでは無い
<ヽ`∀´>「…お前達が言う、『彼女』は」
<ヽ`∀´>「『素直クール』か?それとも…」
<ヽ ∀ >「『それ以外』か?」
(#'A゚) ビキッ
- 894 名前:名も無きAAのようです :2014/07/05(土) 00:57:14 ID:5kT/VzXA0
- (#゚A゚)「ニダアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」
その言葉を聞いた瞬間、ドクオの頭からは『説得』という選択肢が消し飛んだ
変わった
変わり過ぎ
変わり果てたニダーを戻すには、『会話』では軽すぎる、と
【+ 】ゞ゚)「横ほ」
<ヽ`∀´>「結構ニダ」
ニダーは女神をつーという女性に預け、一歩前に出た
(#'A゚)「オオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!!!」
<ヽ`∀´>「…」
ドクオの拳が、剣のように真っ直ぐ、ニダーの顔面へ向かう
<ヽ`∀´>
(#'A゚)
その『剣』は、容易く、まるで木の葉がつむじ風に舞い飛ぶように
着弾点から『逸れた』、いや
<ヽ`∀´>「…無駄」
『逸らされた』
- 895 名前:名も無きAAのようです :2014/07/05(土) 00:59:03 ID:5kT/VzXA0
- (#'A゚)「ッ!?」
ドクオの腕を掴み、踊るような足取りで引きずり回し、勢いを乗せたまま、捻る
体が宙に浮き、上下が逆転する
(#'A゚)(合―――――――)
投げ飛ばされたドクオは、脚から窓ガラスを突き破り外へ放り出され
生垣を折り潰しながら地面を転がった
(#^ω゚ )「てめええええええええええええええええ!!!!!」
<ヽ`∀´>「…」
次いで突進してきたブーンを迎え撃とうと、構えを取り直すが
(*゚∀゚)「はいよっと!!」
ブーンの顔面を、天井ギリギリまで跳躍したつーの両膝が襲う
(; ゚ωメ)「ぎあッ!!」
もんどりうったブーンは後頭部を強く打ちつけ、悶絶する
(*゚∀゚)「これで借りはッ!!」
着地したつーは脚払いの要領でブーンの側頭部を踵で蹴り飛ばす
(; ωメ)「ッ…」
続けざまの頭部へのダメージに、ブーンの意識は容易く事切れた
- 896 名前:名も無きAAのようです :2014/07/05(土) 01:00:12 ID:5kT/VzXA0
- (*゚∀゚)「ふーい、返しましたよっと」
【+ 】;ゞ゚)「容赦無いな…」
(*゚∀゚)「まーね、一回辛酸を舐めさせられてますから…って、あら?瓜畑さんは?」
【+ 】ゞ゚)「…」
その場から姿を消したニダーの行方を、オサムは顎で示した
(*゚∀゚)「…あーらら」
<ヽ ∀ >「…」
(;メA )
窓の外、這い蹲るドクオにトドメを刺そうと
迷いの無い足取りで向かっていた
(*゚∀゚)「あっちの方が余程容赦が無いじゃないですか」
川;゚ -゚)「ニダーさん!!」
<ヽ ∀ >「…」
勝利の女神の呼びかけにも反応しない
- 897 名前:名も無きAAのようです :2014/07/05(土) 01:01:48 ID:5kT/VzXA0
- (;メA )「ハァー、ハァー…」
<ヽ ∀ >「…」
(;メA`)「ハァー…」
ドクオは辛うじて立ち上がる
ニダーはその数歩手前で立ち止まり、再び構えを取った
(;メA`)「ハァー…」
<ヽ ∀ >「…」
<ヽ ∀ >「許されようとは、思っていない。許されなくても、構わない」
(メA`)「…そうかよ」
<ヽ ∀ >「だけど、友人として二言だけ言わせて欲しい」
(メA`)「…」
<ヽ ∀ >「『すまない』と『さよなら』」
(メA`)「…」
(メA`)「それを言わせないために…」
(#メA`)「お前を!!今ここで!!止めるんだよオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
<ヽ ∀ >「…」
<ヽ ∀ >「『無駄』」
.
- 898 名前:名も無きAAのようです :2014/07/05(土) 01:03:08 ID:5kT/VzXA0
- 『壮絶』
(*;゚∀゚)「…」
【+ 】;ゞ゚)「…」
:川; - ):「っ…」
悲鳴も、制止の声すらも失うほどの『暴力』
<ヽ ∀ >「…」
かつて『友』だった男の返り血を、拭おうともせず
ニダーはただ淡々と、廊下へと戻ってきた
<ヽ ∀ >「…これで」
<ヽ ∀ >「『邪魔者』は消えた。其方もすぐに、目的を果たせ」
【+ 】;ゞ゚)「あっ…ああ、もちろん…」
(*;゚∀゚)「…」
:川; - ):「…」
<ヽ ∀ >「…」
四人の足音が、学校から去った数分後
パトカーと救急車がけたたましくサイレンを鳴らしながら、学校の敷地内へと踏み込んできた
- 899 名前:名も無きAAのようです :2014/07/05(土) 01:05:04 ID:5kT/VzXA0
- ―――――
―――
―
(-A-)「…」
(-A-)「…ん」
「あっ」
('A`)「んん…」
「起きました!!皆さん、起きましたよ!!」
眠りから覚めたドクオが、蛍光灯の灯りの次に目にしたのは
定期的に液体を垂らす点滴。その次に
从 ゚∀从「…ドクオ」
額を優しく撫でてくる、紅髪の彼女
(;'A`)「ハイ…痛ッ!」
起き上がろうとすると、体に鋭い痛みが走った
『無理するな』とハインは言い、ナースコールを押した
(;'A`)「いや、大丈夫だ…なんとか…」
少しずつ体をずらしながら、上半身を起こした
- 900 名前:名も無きAAのようです :2014/07/05(土) 01:07:13 ID:5kT/VzXA0
- ('A`)「…俺は」
('A`)「なんだっけ…俺何言おうとしてたんだっけ…」
从 ゚∀从「知らんがな…何か食うか?」
('A`)「いや、ああ…いや…」
从;゚∀从「どっちだよ…」
('A`)「…」
(;'A`)「ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!]
从;゚∀从そ「わぁ!?」
(#'A゚)「ニダアアアアアアアアアアアアあの野郎オオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!どこ行きやがった!!!!!!」
从;゚∀从「ちょ、落ち着けって…」
(#'A゚)「これがおちんこついていられるかってんだ!!!!ニダーの野郎、しょーちゃんを」
从#゚∀从「いいから!!」
やや重めの拳の鎚が、ドクオの腹筋へと落とされる
(;'A゚)そ「アアン♥」
从;゚∀从「キッモ!!いいから」
腹に落とした拳を、今度は頬に添えた
从 ゚∀从「落ち着いて、順序だてて話せ。わかった?」
(;'A`)「あっ、ああ…悪い」
手の温もりと、真っ直ぐな視線に、ドクオの興奮は風船のようにしぼんでいった
- 901 名前:名も無きAAのようです :2014/07/05(土) 01:08:34 ID:5kT/VzXA0
- 「ちょっと待って今は入らない方がいい」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょう!!せいや!!」ドスッ
「アフン」ドサァ
「モララー!!」
「ヒート殿!!殿中でござる!!殿中でござる!!」
ノハ;゚听)「先輩!!」ガラッ
('A`)「あ、はい」
从;゚∀从「っ…」
甘い時間は一瞬にしてぶち壊された
( ^ω^)「よう相棒、またこっ酷くやられたな」
('A`)「いやお前人の事言え…全回復してる!?」
( ^ω^)「マッチョマンはみんな魔法使いさ」
('A`)「マッチョって凄い、改めてそう思った。所で、今日は何曜だ?」
ノハ;゚听)「水曜の朝ですよ…よかったぁー、前のように何日も眠り続けなくて」
('A`)「…丸一日、寝てたのか」
/ ,' 3「せやで」
('A`)「さよけ…」
('A`)「つーか今日平日じゃないですか校長。学校は?」
/ ,' 3「休校に決まってんだろJK…」
- 907 名前:名も無きAAのようです :2014/07/22(火) 22:57:10 ID:H8Ws2QZ20
- コールに呼ばれた医者に、ドクオの怪我の経過を診て貰い
息してないモララーが搬送された
(;-@∀@)「何故…不必要な犠牲が…」
( ^ω^)「悲しいね」
/ ,' 3「さてと、欝田君。病院の襲撃、学校の襲撃、どちらも君らが関与しているようじゃの」
丸椅子を引き寄せ、よっこらせという掛け声と共に着席し、荒巻は話を始める
('A`)「…まぁ、否定はしませんよ。世間ではどう扱われてるのかは知らないが、学校の連中ははっきりと俺らの名前を奴らの口から聞いた筈ですからね」
ノパ听)「世間では…」
ヒートが苦い顔をして、ドクオの知りたい事に答える
ノパ听)「『薬物中毒者の大学生サークルが、錯乱して起こした事件』だって取り扱われています」
ノパ听)「ドクオ先輩とブーン先輩、それと立石先生は…集団リンチで重傷と報じられました」
( ^ω^)「全く勘弁願いたいお。世間では俺らは『大学生ごときにボコられたかわいそうな被害者』扱いだ」
('A`)「そりゃ、情けないお話で…」
ノパ听)「それと、全く関係の無い場所で、男性が一人病院に運ばれました…」
(;'A`)「っ…」
その男性に、心当たりがあった
『彼女を隠せる場所』など、限られている
ドクオを病院送りにしたニダーが穏便な手段を使い、勝利の女神を連れて来たとは思えない
- 908 名前:名も無きAAのようです :2014/07/22(火) 22:58:51 ID:H8Ws2QZ20
- 从 ゚∀从「ま、心配すんな。オメーほどこっ酷くやられてねえからさ。店長は」
(;'A`)「…ショボンさん」
( ^ω^)「いや、こっ酷くどころかすげえ元気だぞあのオッサン。元気すぎて常にマジギレ状態」
【今のオッサン】
(#´゚ω゚`)「あああああああああああああ!!!!!!ふざけんなあのガキぜってえぶち犯す!!!!チクショオオオオオオオオオ!!!!!!この縄を解けええええええええええ!!!!!」ガッタガタタン!!!
(゚、゚#トソン「るせーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!大人しくしないと治らねえっつってんだろうがーーーーーーーーーーーー!!!!!!大人しく寝てろーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
N|;"゚'` {"゚`lリ(本当にうるさいな…)
【むっちゃ元気】
\ゼッテエブチオカスー!!/
(;'A`)「…マジで元気そうだな」
从 ゚∀从「阿部さんが睨み利かせてないと拘束具ぶっちぎって脱走しようとするからな」
(;'A`)「入院する必要ねえだろ…」
( ^ω^)「包帯グルグル巻きの変態親父が行方知れずの巨漢高校生をファックするために走りまわってりゃその日のうちにTwitterで祭り上げられてコラ画像にニコ動MADに何もかもネタにされちまうお」
(-@∀@)「今のインターネットの情報伝達速度は異常だからね」
/ ,' 3「それでは、教えてもらおうかの。キミに内藤君に、それからショボン君がボロボロにされた理由をの」
(;'A`)「…」
- 909 名前:名も無きAAのようです :2014/07/22(火) 23:00:04 ID:H8Ws2QZ20
- (;'A`)「どう説明していいものか……簡単に言うと『素直さんがヤバイことになって何か謎の組織に追われて俺らが匿ってた』ってのが前提の話なんですよ」
(-@∀@)「いや、簡単に言いすぎでしょ」
/ ,' 3「ああ、構わん。最近ボケ始まってて難しい話が理解できなくなってきとるからの」
从 ゚∀从「よく言うぜ…」
(;'A`)「そんで、何を考えてるのか知らねえがニダーがあちら側に着いて、隠し場所だった『サンフランシスコ』を文字通り『襲撃』。お嬢さんを連れ去って、わざわざご丁寧に俺らの前で『敵』として現れました。その結果このザマです」
/ ,' 3「ふむ…味方にして最高、敵にしても最高の相手じゃの」
(;'A`)「全く…その通りです。最高の味方が敵に回るとき、『最高難易度の敵』となる」
(;'A`)「体格と筋力だけじゃない。『技』も持っている。『合気道』だ」
( ^ω^)「お前と相性最悪だな」
(;'A`)「そうなんだよ…俺殴るかケツで挟むかしか能が無いから…」
/ ,' 3「……」
(;'A`)「技だけじゃない、『メンタル』も……」
ニダーの姿を思い出し、身震いを一つ
容赦の無い暴力の洗礼は、『友』に向けれるものではない
(;'A`)「…ああ、クソ、俺は止められなかった。あいつはこう言ったんだ、『すまない』『さよなら』とな」
ドクオは両手で顔を被い、大きく息を吸い込んだ
脳内でニダーの言葉が反響し、その度に
( A )「…ふざけやがって」
ドクオの怒りは膨らんでいった
( A )「何が『すまない』だ、『さよなら』だ。そんな薄っぺらい言葉と、ちゃっちい暴力で、俺を、俺達を突き放せたとでも、思ってんのか?」
( A )「知らねえんなら思い知らせてやる。わからねえんならわからせてやる…俺はな…」
(# A )「突き放せば突き放すほど燃える漢だって事をな…」
- 910 名前:名も無きAAのようです :2014/07/22(火) 23:02:11 ID:H8Ws2QZ20
- パンパン、と言う拍手の音で、ドクオはハッと顔を上げた
从 ゚∀从「一人盛り上がってるところ悪いが、今度はこっちのお話を聞いてもらおうか」
('A`)「…ああ、もちろんだ」
从 ゚∀从「よし、良い子だ。じゃあ校長、お願いします」
/ ,' 3「うむ、さて欝田くん。君以外の全員にはもう話したことなんじゃがな…」
/ ,' 3「『謎の組織』の正体は既にわかっておる」
(;'A`)「はっ…?」
意外な人物からの報告に、ドクオは呆気に取られ周りを見渡す
そこで立っている誰もが、驚きの表情をしていなかった
(;'A`)「…マジ、なんすか?」
/ ,' 3「マジもマジ、大マジじゃ。アラマキ、ウソツカナイ」
( ^ω^)「ドクオ、俺も最初校長から話を切り出されたとき、同じような反応をした」
( ^ω^)「そして詳しく聞いて、更に驚いたお。ドクオ、俺達は『最初からその答えを目にしたことがあった』んだお」
(;'A`)「…言ってる事が良くわからん」
/ ,' 3「それじゃあ、わからせてやるとするかの」
荒巻は一呼吸置いて、答えを口に出す
/ ,' 3「敵の親玉は、日本有数の大企業、『稲荷コーポレーション』会長。稲荷フォックス」
/ ,' 3「戦後の日本を立ち直らせた豪傑の一人であり、旧日本空軍に所属していた、元軍人じゃ」
- 911 名前:名も無きAAのようです :2014/07/22(火) 23:08:36 ID:H8Ws2QZ20
- (;'A`)「稲荷コーポ…?いや、それより旧日本軍?第二次大戦のですか?」
/ ,' 3「流石にそれ以前だとワシら死んどるわい」
(;-@∀@)「第二次でも相当ですよ?終戦から七十年近くたっているんですから。校長先生今幾つですか?」
/ ,' 3「100000000000000000000000000000000000万歳」
(;-@∀@)そ「小学生並みの返答!?」
( ^ω^)「こうして、新たな村学七不思議が作られていくのであった」
(;'A`)「えー…ちょっと意味わかんない…帰ってスラムダンク読みたい…」
ノハ;゚听)「現実逃避しないでください…」
(;'A`)「具体的に言うと山王戦アップ段階の『アイサツがわりだ』→『バチバチン』→『グッ』の流れを見たい…」
/ ,' 3「続けるぞい。そのウンコクソジジイが今朝、ワシの所に挨拶…とは名ばかりの脅迫をしてきたのじゃ」
从 ゚∀从「アンタもジジイだよ」
(;'A`)「脅迫…?」
/ ,' 3「ワシの瑞々しい体目当てだったらしい」
( ^ω^)「またホモか…」
('A`)「またホモか…いやなんでだよ。校長の体関係ねえだろ」
/ ,' 3「まぁ半分はそれで、もう半分は『素直クール』の身柄が目的じゃった」
(;'A`)「どうして先に重要な方を言わないの!?」
/ ,' 3「重要な方を先に言ったじゃろう」
(;'A`)「マジかよ先生…」
( ^ω^)「ジジイのホモとか誰が得するんだよ」
- 913 名前:名も無きAAのようです :2014/07/22(火) 23:12:04 ID:H8Ws2QZ20
(´・ω・`)「んっ?」
.
- 914 名前:名も無きAAのようです :2014/07/22(火) 23:13:24 ID:H8Ws2QZ20
- (;'A`)「つまり、黒幕が直接出向いてきたってことですか…」
/ ,' 3「奴の上がいるとは考えづらい。恐らくそうじゃろうな」
('A`)「しかし、黒幕の正体が明白ならリークするべきじゃないんすか?さっきも聞きましたが、ヤク中の馬鹿が起こした事件だと報道されているんですよね?」
/ ,' 3「…ま、映画や小説なんかでありがちな話じゃよ。ワシ如きの訴えでどうこう出来る奴ではない」
('A`)「なるほど…警察、マスコミは手中にあると」
( ^ω^)「真実の報道とは一体…」
(-@∀@)「オタクの偏見報道してる時点でお察しでしょ」
('A`)「…」
ドクオは、稲荷フォックスの『駒』を思い出す
拳銃をぶっ放すアホそうな男
冷静で謎多き長身の男
そして、ブーンをあっさりと倒した女と
『素直クールの為』だけに自分達を裏切ったニダー
(;'A`)「…」
加え、立石教員を片手で投げ飛ばし
ドクオとブーンの二人掛りで手も足も出なかった、超重量の男
:(; A ):「…」
体が、震えた
二月の寒さの所為では断じて無い
程よく暖房が効いた病室で、ドクオの体は凍えているかのように震えた
その姿に、周りにいる誰もが口を噤んだ
- 915 名前:名も無きAAのようです :2014/07/22(火) 23:14:24 ID:H8Ws2QZ20
- 言葉を掛けずとも
(-@∀@)「…」
その場にいる生徒達はわかっていた
ノパ听)「…」
『欝田ドクオ』という人間を
( ^ω^)「…」
『漢』という生物を
从 ゚∀从「…」
:(; A ):「…」
:(; A ):「ハ、ハハ…」
漏れたのは、笑い声だった
- 916 名前:名も無きAAのようです :2014/07/22(火) 23:18:24 ID:H8Ws2QZ20
- :(; A ):「いや、ダメだ、イケネエよなぁ、友達の、危機だってのに」
:(; A ):「だが抑えきれねえこの衝動……なんていったかこりゃあ…」
:(; A ):「クソ、ダメだ。頭が上手く働かねえ……」
( ^ω^)「相棒」
:(; A ):「…なんだ?」
掛けるのは、いつもの言葉
生き方を変えた時、ライバルや因縁の過去を乗り越える前に、交しあった合言葉
( ^ω^)「『やってやろうぜ』」
( A )「…」
震えが止まり、胸中に渦巻いていた熱が、波紋の様に広まっていく
その熱は全身に力を漲らせ、拳を堅く結ばせた
('A`)「おうよ」
声量こそ無いものの、気迫の篭った返事でそれに応えた
- 917 名前:名も無きAAのようです :2014/07/22(火) 23:20:01 ID:H8Ws2QZ20
- 从 ゚∀从「そうこなくっちゃな、さすが俺のノパ听)「アタシもやってやります!!!!先輩の間違いを正すのも、後輩の役目ですから!!!」
从;゚∀从「ああ……うん」
(-@∀@)「もちろん僕もさ。今ここに居ないけど、天国のモララーもきっと同じ気持ちだよ」
(;・∀・)「勝手に殺さないでくれよ!!!!僕元気だよ!!!!!」
タイミングよく復活したモララーが病室のドアを勢い良く開けながら入ってきた
(;・∀・)「ニダーくんも素直先輩も、もちろんしょーちゃんも!!!まとめて救ってやろうじゃないか!!!!!」
('A`)「お前ら…」
(;'A`)「恥ずかしくない?そんなセリフ言って…」
从 ゚∀从「おめーが言うな」
( ^ω^)「お前が言うな」
/ ,' 3「…」
彼らの姿を見て、荒巻は口角を僅かに上げた
荒巻が父、村人学園創始者の『荒巻やらない夫』が、酒の席で語った『漢達の姿』がそこにはあった
/ ,' 3(ま、教育者としてはどうかと思うがの…)
子どもが『戦場』へ向かうなら、止めてやるのが『親心』だ
しかし、子どもが戦いを望むなら、『志』や、『友情』や、『愛』の為に戦いに赴く覚悟があるなら
背中を押してやるのもまた大人の役目である。荒巻親子の教育論であった
/ ,' 3(そして、事を成し、無事に家に帰るために援助を惜しまないのも役目である、と)
荒巻は片手を挙げ、ワイワイと盛り上がる一行の注意を引いた
そしてその口から、『素直クール』及び、『稲荷フォックス一味』の拠点と
反撃の手筈を語り始めた――――――
- 928 名前:名も無きAAのようです :2014/08/27(水) 23:39:48 ID:BobLCydM0
- 松千代市、某所
<ヽ`∀´>「…」
【+ 】ゞ゚)「どうだね、ここからの景色は」
どこよりも高い場所から、夜の帳が降りた街を見下ろし
その場所よりも遥か上空の満月を見上げた
<ヽ`∀´>「…大した城ニダ」
さして興味が無さそうな声で応え、続ける
<ヽ`∀´>「だが、無意味ニダ」
【+ 】ゞ゚)「無意味とは?」
<ヽ`∀´>「どれほど堅牢で強固な城でも、彼らは風のように侵入し、炎の如く暴れまわる」
【+ 】ゞ゚)「『彼ら』…は、もう君の手で始末したのでは?」
<ヽ`∀´>「…」
【+ 】ゞ゚)「…まぁ、何があろうとこの城は落ちない。『建物』だけが、力ではない」
【+ 】ゞ゚)「我々の目的も君の目的も、問題なく果たされるさ」
<ヽ`∀´>「……」
彼の言いたいことは、理解出来る
しかし、『肯定』は出来なかった
完膚なきまでにドクオを痛めつけたニダー自身ですら、『絶対に来ない』なんて言い切れなかった
<ヽ`∀´>「…そう願いたいニダ」
変わり映えしない景色に見切りをつけ、ニダーは階下へと向かった
- 929 名前:名も無きAAのようです :2014/08/27(水) 23:44:29 ID:BobLCydM0
- 【+ 】ゞ゚)「…」
【+ 】ゞ゚)「何をそんなに不安に思っているか知らんが…」
【+ 】ゞ゚)「勝てないさ、誰も。『勝利の神』には」
満月は白く輝いていた
―――――
―――
―
<ヽ`∀´>「…気分はどうですか?」
川 ゚ -゚)「…」
行儀良く椅子に座り、入室したニダーに目もくれず、景色を眺め続けている
扉は外から開かない。窓は防弾強化ガラス。もちろん、開くことは無い
部屋と言う名の監獄で、勝利の女神はずっとそう過ごしていた
<ヽ`∀´>「もうすぐ、計画を実行するそうです」
川 ゚ -゚)「…」
<ヽ`∀´>「あと少しだけ、お付き合いください」
勝利の女神は応えない
<ヽ`∀´>「…」
ニダーは設備されてるミニキッチンへ向かい、お湯を沸かした
川 ゚ -゚)「…」
- 930 名前:名も無きAAのようです :2014/08/27(水) 23:45:48 ID:BobLCydM0
- <ヽ`∀´>「どうぞ、お口に合うか」
正規の手順で淹れた紅茶を、彼女の前に差し出した
川 ゚ -゚)「…」
窓の外から目を外し、目の前の芳しい香りを立てる飲み物へ向けた
スタンダートな、市販のダージリンだった
川 ゚ -゚)「…」
ソーサーを持ち上げ、カップを口へ運び一口含んだ
川 ゚ -゚)「…お上手」
<ヽ`∀´>「光栄です」
短いやり取りの後、カップを机に置き、顔をニダーへと向けた
川 ゚ -゚)「素直さんにも、こうしてお茶を?」
<ヽ`∀´>「ええ。最も、彼女は紅茶よりコーヒーの方が好みでしたが」
川 ゚ -゚)「それでは、何故私にお茶を?」
<ヽ`∀´>「…私は、紅茶の方が好きなので」
川 ゚ -゚)「あべこべなのですね」
<ヽ`∀´>「…ええ、対照的な程に」
- 931 名前:名も無きAAのようです :2014/08/27(水) 23:47:34 ID:BobLCydM0
- 川 ゚ -゚)「…それでも、彼女のことを愛しているのでしょう?」
<ヽ`∀´>「…」
ニダーは勝利の女神から目を逸らし、外の景色を眺めた
<ヽ`∀´>「綺麗な言葉ですが、結局は『執着』と『依存』でしかありません」
<ヽ`∀´>「……取り戻すために、友を裏切ることも平気で成しえることが出来る。とても醜い感情です」
川 ゚ -゚)「……裏切ったのは、友だけでは無いでしょう」
音も無く紅茶を啜り、一呼吸置いた
川 ゚ -゚)「ご自身も、含まれているのでは?」
<ヽ`∀´>「…」
表情に変化は無いが、堅く拳を握り締めたのを勝利の女神は見逃さなかった
川 ゚ -゚)「少しだけ、昔の話を聞きました。貴方は昔、誰とも関わろうとしなかった孤独な人だったと」
川 ゚ -゚)「そんな貴方を変えたのが、クールさん」
<ヽ`∀´>「…」
川 ゚ -゚)「何故、他人を拒絶していたのかは問いません。ですが、孤独に生きていた過去より、ドクオさんやブーンさんのようなお友達がいる今の方が、ずっと大切で尊いものでは無いですか?」
ニダーの目線は、外の景色から動かない
しかし、見据えているのは松千代の夜景ではなく、窓に映る自身の瞳であった
<ヽ`∀´>「…そんなこと、彼女の前では『塵』に等しい」
川;゚ -゚)「嘘!!」
勝利の女神はテーブルに両手を着き勢い良く立ち上がる
座っていた椅子は倒れ、半分ほどに減った紅茶がカップから僅かに飛び出し、クロスに染みを作った
- 932 名前:名も無きAAのようです :2014/08/27(水) 23:49:06 ID:BobLCydM0
- 川;゚ -゚)「貴方は先ほど、言いましたよね!?『友をも平気で裏切る、醜い感情』だと!!」
川;゚ -゚)「本当にドクオさん達の事をどうでも良く想っているのなら、そんな言葉は出ない!!愛を、『醜い』などと言うはずが無い!!」
<ヽ ∀ >「…」
ニダーの表情に、僅かに変化が生じる
真一文字に結んでいた唇を、ほんの少しだけかみ締めた
川;゚ -゚)「心に罪悪感があるのでしょう!?後悔も、自己嫌悪も!!」
<ヽ ∀ >「…」
川;゚ -゚)「どれだけ冷酷に振舞っていても、仲間を、自身を裏切る痛みに耐え切れるはずが無い!!」
<ヽ ∀ >「……れ」
川;゚ -゚)「もう、自分を追い込まないでください……!!」
<ヽ∩∀ >「黙って…ください…」
喉奥から搾り出したような、小さな声だった
握り締めた拳は、力の込めすぎで震えていた
唇からは薄く血が流れ出て、一滴、二滴と床に赤い水玉を作った
<ヽ∩∀ >「私には、彼女しか…素直クールが居ないと、私が、わた…」
最早、言葉にすらならなかった
『私』『彼女』『素直クール』
この三つを、しどろもどろに繰り返す
- 933 名前:名も無きAAのようです :2014/08/27(水) 23:50:26 ID:BobLCydM0
- 川 ゚ -゚)「ニダーさん」
勝利の女神は、ニダーの拳を両手で優しく包んだ
そこでニダーは初めて、彼女の両目を見据えた
川 - )「素直さんを元に戻すためなら、私が自らの身を切ります。稲荷さんの指示にも従います。どんな責め苦も請け負います」
川 ー )「だから、もうこれ以上ご自身を苦しめないでください」
<ヽ; ∀ >「……」
ニダーの鉄仮面は既に剥がれ落ち、今にも泣き出しそうな顔をしていた
勝利の女神は微笑を崩さず、顎に流れる血をそっと指で拭った
「お邪魔ですかね?」
出入り口側から聞こえた声に、二人は反応する
(*゚∀゚)「良い雰囲気なところ悪いけど、時間なんで」
ノックもせず、ドアを開けた音も立てずに
『つー』と言う名の女性がニヤつきながら二人を見ていた
<ヽ`∀´>「…了解しました」
ニダーの顔は瞬時にして元の無表情に戻り、勝利の女神の手を振りほどき唇の血をサッと拭い取った
(*゚∀゚)「神様、悪いけどここからは瓜畑さんのエスコートは無しで。つまらない奴だけど、こいつが付添い人だから」
ドアの向こう側には
(//‰ ゚)「…」
ドクオとブーンを圧倒したヤクザが直立不動で待機していた
- 934 名前:名も無きAAのようです :2014/08/27(水) 23:51:57 ID:BobLCydM0
- 川 ゚ -゚)「わかりました」
勝利の女神は最後にニダーを一瞥し、部屋から退出
ヤクザと共に指定された場所へと向かった
(*゚∀゚)「あの、さぁー…瓜畑さん?」
<ヽ`∀´>「なんでしょう?」
(*゚∀゚)「疑うワケじゃあ無いんですが、ひょっとして懐柔されたりしちゃってます?」
つーの両腕は後ろに回っていた
答えによっては、そこから彼女の『得物』が現れるだろう
<ヽ`∀´>「まさか」
(*゚∀゚)「そう?でもなぁー…」
彼女は今だ意地の悪いにやけ顔を保ったまま、ニダーへ近づく
(*゚∀゚)「あんなシーン見せ付けられちゃ、信用に関わりますよねー?」
<ヽ`∀´>「…覗き見は、あまり良い趣味とは言えないかと」
(*゚∀゚)「…」
顔は笑っている、が
ニダーの顔を覗きこむ目は猜疑に満ちていた
(*゚∀゚)「ま、古今東西、失った信用は働いて返すって決まってる物ですからね」
<ヽ`∀´>「…何が言いたいのですか?」
(*゚∀゚)「んー?お友達、ここに来ちゃった、みたいな?」
<ヽ`∀´>「…」
- 935 名前:名も無きAAのようです :2014/08/27(水) 23:53:50 ID:BobLCydM0
- 驚きはしなかった。寧ろ、『予想通り』ではあった
『素直クールを取り戻す』。稲荷にとって、そして稲荷側に付いたニダーにとって
『欝田ドクオと内藤ホライゾン』は最も厄介な存在だった
だからニダーは、勝利の女神を引き渡した後も、彼女の護衛としてこの場にいるのだ
堅牢な城を築こうとも、兵をいくら束ねようと、熾烈な勢いで突破し
四肢が捥げようとも敵を撃破する漢達
<ヽ`∀´>「…わかりました」
立ち向かえるのは、自分しかいない
だからニダーはこの場にいるのだった
(*゚∀゚)「ん、お願いしますね♪」
<ヽ`∀´>「…」
返事はせず、速やかに部屋を出た
先ほどの勝利の女神の言葉が脳裏をチラつくが、目をきつく閉じ、開き、強制的にシャットアウトした
迷いを持ったまま勝てる相手ではない。ニダーの最優先はいつだって
『素直クール』一点に尽きるのだから
.
- 936 名前:名も無きAAのようです :2014/08/27(水) 23:55:54 ID:BobLCydM0
- 「さて」
市内に新しく出来たショッピングモール、『オーカ』
その足下から、まるでダンジョンタワーのような建物を、二人の漢が見上げていた
('A`)「答えを目にしたことがあるって、こういう事だったのか…」
( ^ω^)「木曜朝のテレビが、勝利の女神事件の手がかりと行き着く先を映してるとはNE!!」
('A`)「誰向けの説明?」
( ^ω^)「しらん」
('A`)「適当!?まぁいいや…いっちょ暴れますか」
( ^ω^)「おうともよ相棒」
('A`)「「やってやろうぜ」」(^ω^ )
.
- 941 名前:名も無きAAのようです :2014/09/07(日) 00:48:43 ID:TNQNrIdw0
- 話は数時間前の、ドクオの病室へ遡る
(;'A`)「内通者がいる…だって?」
/ ,' 3「左様」
つい先刻まで意識が無かった為、荒巻の話を聞いていないドクオの為に再度説明をしていた
(;'A`)「いやでも今さっき警察もマスコミも動けないって」
/ ,' 3「うん、だから別組織。地球防衛軍みたいなやつ。まぁまぁ信頼出来るとこだから安心して」
(;'A`)「ええ〜…話が突拍子も無さ過ぎ〜…」
从;-∀从「耐えろ。んで、もう開き直れ…」
/ ,' 3「まー、奴さんの規模が規模だから、内通者側ももの凄く徹底してスパイ活動してたんじゃがな、もう目的も何もかも割れた今、突入してなんやかんやしてしまおうとしとるらしい」
(;'A`)「大事なとこ曖昧じゃねっすか…」
/ ,' 3「それでじゃの。お主らも友人を取り返しに向かうのなら、それに便乗すれば良くね?って話」
(;'A`)「!!」
脳の要領の半分を映画と漫画にファックされているドクオは、それ以上を聞かずとも察した
('A`)「地球防衛軍カッコカリがドンパチ始めたら、それに乗じて姉御を取り返せって事か…」
( ^ω^)「そういうこったお。ありがてえじゃねえか、『渡りに船』ってやつだお」
/ ,' 3「あまり期待するでないぞ?なんでも、あちらも今ゴチャついてて想定の数の半分も出ないらしいからの」
('A`)「逆境上等ッスよ。むしろ、『そうでないと燃えない』」
( ^ω^)「その通りだお。流石だぜ相棒」
- 942 名前:名も無きAAのようです :2014/09/07(日) 00:50:24 ID:TNQNrIdw0
- (;・∀・)「ほんっとにこの二人は…」
(-@∀@)「まぁまぁ、らしいと言えばらしいじゃないか」
('A`)「そんで、内通者ってのは?」
/ ,' 3「ごめ、言えぬ」
('A`)「なんで?」
/ ,' 3「ギリギリまで情報漏えいを防ぐ為と…あと、どうも気まずいらしいのぉ」
(;'A`)「気まずいだぁ?何しでかしたんすかそいつ…」
/ ,' 3「それは追々の…さて、神裂ちゃん。例の物を彼らに」
ノパ听)「はい!!」
ヒートは背負っていたバッグをドクオの体の上に乱暴に置いた
(;'A゚)そ「んあああああああああああああああああ!!!!!!」ビクンビクン
ノハ;゚听)「あっ!!ごめんなさい!!怪我してたんですよね!!」
( ^ω^)「見て気付けよ…」
从 ゚∀从「気付かないくらい元気に見えるってこったろ…気にすんなヒート」
(;'A゚)「いや……結構いっぱいいっぱい…」
/ ,' 3「やれやれ、今からそんな調子じゃあ先が思いやられるの…」
- 943 名前:名も無きAAのようです :2014/09/07(日) 00:52:43 ID:TNQNrIdw0
- ―――――
―――
―
('A`)「こちら突入班、聞こえますかマッチョ」
『こちらバックアップ班。普通『どうぞ』だよね?どうぞ」
右耳に差し込んだインカムの調子は良好
ドクオとブーンは突入班、その他はバックアップ班として素直クール奪還へ向け始動した
( ^ω^)「マッチョマッチョマッチョ?マッチョマッチョマッチョ、どうぞ」
『いや何言ってるか全然わかんねえよ。日本語喋れ』
(*'A`)「ああん耳元でそんな囁きかけられるとンホホゥ」
『キモっ…いいか、そろそろなんとか防衛軍とやらが突入を始める。おめーらは騒ぎに乗じて先輩…しょーちゃんを奪還して保護班と合流。そのままトンズラする』
『いいか、「逃げる」んだぞ?特にドクオ!!お前は怪我が完全に治ってねーんだから無茶すんじゃねーぞ!!』
('A`)「わかったわかった、ちゃんと従いますよ」(無茶しないとは言ってない)
『僕らはこうして後方で指示することしか出来ないけど…頑張ってね、二人とも!!』
( ^ω^)「任せとけよアサピー。俺らにこんなこんなよくわからんモール、日本ブレイク工業並みにぶち壊して俺タワーのステージにしてやっから」
『うん、未来の話は止してね?二月の段階でそのゲームの話DMMトップにも載ってないから』
('A`)「よし、そんじゃあ一度切るぞ。オーバー!!」ブッツ
( ^ω^)「お前オーバーって言ってみたかっただけだろ?」
('A`)「うん」
- 944 名前:名も無きAAのようです :2014/09/07(日) 00:53:48 ID:TNQNrIdw0
- 稲荷コーポレーションが経営するショッピングモール『オーカ』
円柱の形をしたその建物は、高層ビル並みの高さを誇り、軒を連ねる小売店舗数は千を超える
その巨大さから、『日本のドバイ・モール』とまで呼ばれているほどだ
('A`)「そんな大層なもんがこの街におっ建つなんて可笑しな話だと思ったが…その裏にゃもっと可笑しな話が隠れてたとはな」
( ^ω^)「この不景気にどんだけ金持ってんだよ…」
ドクオとブーンは身に着けていたヘルメットや防弾ジャケットを脱いでいく
インカムと共にヒートに渡された物だが、二人にとっては邪魔にしかならなかった
('A`)「やっぱこれじゃねえとな…」
開放感溢れるビキニ・パンツ姿の筋肉モリモリ、マッチョマンの変態があっという間に出来上がる
( ^ω^)「おら、これは持っとけ」
('A`)「うおっとと…これは…」
ブーンから投げ渡されたのは、勝良神社で貰った『勝ち目を呼び込むお守り』だった
( ^ω^)「験担ぎだお。クソの役にも立たないと思うが、損も無いだろ」
('A`)「全くだな…お?」
( ^ω^)「始まるみたいだな」
姿は見えないが、人の気配を察する
正確な数まではわからないが、それぞれが『玄人』の動きをしていると感じ取れた
- 945 名前:名も無きAAのようです :2014/09/07(日) 00:55:38 ID:TNQNrIdw0
- ('A`)「荒巻校長が言ってたこと、ガチだったんだな…」
( ^ω^)「世界って何があるかわっかんねえお…」
('A`)「ところで」
( ^ω^)「なんぞ」
('A`)「この戦の第一刃に相応しいのは、俺らだと思わねえか?」
( ^ω^)「…」
ドクオはケツを叩き、ある一点を見つめる
シャッターが下ろされた『オーカ西出入り口』だ
( ^ω^)「やれるの?」
('A`)「見てなって」
(#'A゚)「ふんぬ!!!!!!!!!!!!」
爆 発 す る ケ ツ
は じ け 飛 ぶ シ ャ ッ タ ー
鳴 り 響 く 警 報
突 然 の 事 態 に 焦 り 始 め る 玄 人 た ち
('A`)「うん、良し」
( ^ω^)「良しじゃないが」
そ れ を 尻 目 に 堂 々 と 侵 入 す る 問 題 児
斯くして、『素直クール奪還作戦』が開始された
- 946 名前:名も無きAAのようです :2014/09/07(日) 00:58:09 ID:TNQNrIdw0
- 某所、なんかよくわからん道端に止めたアイスクリーム屋さんのトラックの中
そう、やはり秘密部隊の作戦指揮を執るなら、『アイスクリーム屋さんのトラックの中』
从;゚∀从「…おい、今の音」
(-@∀@)「やっちまいやがったねあれは」
从; ∀从「騒ぎに乗じてドサクサに紛れて助けろっつってんのに…」
从#゚∀从「騒ぎ起こしてどーーーーーーーーーーーすんだーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「ハーッハッハッハ!!」」
从#゚∀从「何笑ってんだオッサンーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」
(;-@∀@)「ハインさん落ち着いて!!」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「いやぁ、スマンスマンwwwww」
荒巻が言う『地球防衛軍』とやらの作戦本部長は、短くなったタバコを灰皿に押し付けながら謝った
ジャケットの肩口には『S.H.I.E.L.D.』とメタルロゴが施されていた
_、_
( ,_ノ` )「さすが『鉄狸』の…おっといけねえ。いやぁ、おもしれえボウズだなと思ってな」
(-@∀@)「鉄…?それよりも、良いんですか?僕らみたいな高校生が作戦に加わって」
_、_
( ,_ノ` )「なぁに、知らねえオッサンが指示出すよりダチ公がやった方があちらさんもやり易いだろ」
从#゚∀从「指示出しても言うこと聞かなきゃ意味ねえけどな!!」
(-@∀@)「ほんとにね」
- 947 名前:名も無きAAのようです :2014/09/07(日) 00:59:45 ID:TNQNrIdw0
- Ω「隊長、作戦遂行部隊が『あいつらやべえ、俺らどうすりゃいいんですか』と」
_、_
( ,_ノ` )「構わず突っ込めっつっとけ!!!!高校生に遅れを取ってんじゃねえぞってな!!」
(;-@∀@)「指示がフランクすぎる!!大丈夫ですか!?」
_、_
( ,_ノ` )「なぁに!!こういうのは出たとこ勝負よ!!ガーと行ってバッとやるのがウチのやり方さ!!」
从;゚∀从「おいこれ俺ら乗っかる船間違えたんじゃねえの…?」
(;-@∀@)「でも校長も『信頼できる組織』って言ってたし……あっ、校長自体信頼出来ない…」
从;゚∀从「……」
(;-@∀@)「……モララーとヒートちゃん、何してるのかなぁ」
从;゚∀从「さぁ……」
その頃
( ・∀・)「あの、僕らなんでこんな重装備で…」
J( 'ー`)し「燃えるでしょ?今からあの戦場の中に突っ込むのよ?」
( ・∀・)「いやいやいやいや…」
(・∀・ )「いやいやいやいや……」
( ・∀・ )「いやいやいやいや………」
- 948 名前:名も無きAAのようです :2014/09/07(日) 01:01:58 ID:TNQNrIdw0
- (;・∀・)「いやいやいやいやいや!!!!!僕ら後方支援って聞いてたんですけど!!!!!!」
J( 'ー`)し「だから、後方支援じゃない。先行部隊突入後、我々後行部隊が侵入。『神降ろし』のプラグラムをファッキング。そして無力化」
(;・∀・)「ハッキングですよね!?それ僕ら必要ですか!?」
J( 'ー`)し「見ての通り人手不足でね!!チェリーボーイの手も借りたいくらいなのさ!!」
( ・∀・)「あっ、童貞では無いです」
J( 'ー`)し「あっそう。さぁ行くよケツの穴引き締めなぁ!!」
ノハ#゚听)「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおっしゃあああああああああああ!!!!!!!」
(;・∀・)「ヒートちゃんノリノリだな!!!チクショウ!!行くしかねえのか!!」
Ω「なぁに心配すんなアンちゃん!!君らにゃ指一本触れさせねえからよ!!」
( ・∀・)「わぁとても頼もしい。ただ数が絶望的」
J( 'ー`)しΩ←全後行部隊
( ・∀・)ノパ听)←助っ人高校生
(;・∀・)「四人って!!!!!言うね!!!!!」
Ω「HAHAHA!!四人もいれば上等さ!!君らの友達なんてたった二人でぶっこんでいったんだからな!!」
(;・∀・)「アレと一緒にしないでください!!」
Ω「おっと!!そうこうしてる間にお嬢さん方はお先に行っちまいやがったぜ!!俺らも続くぞ!!ヒャッホウ!!」
(;・∀・)「あーもう!!行くよ行きますよ!!チクショウ!!ウオオオオオオオオオオ!!!!!!」
- 949 名前:名も無きAAのようです :2014/09/07(日) 01:02:50 ID:TNQNrIdw0
( ・∀・)「ところで、神降ろしのプログラムって何ですか?」
Ω「そんなこと、俺が知るか!!!!!!!!」
.
- 950 名前:名も無きAAのようです :2014/09/07(日) 01:04:06 ID:TNQNrIdw0
- ―――――
―――
―
('A`)「…あれだけマッスルぶちかまして」
('A`)「これだけ静かなのも可笑しな話だ……」
モール内は薄暗く、非常口案内灯の緑色の光だけが照らしていた
大規模な計画が行われるにしては、やけに静かであり、人の気配が無かった
( ^ω^)「しかし、広いお」
('A`)「これだけ広くて暗かったら…チンチン出しても」
( ^ω^)「お前……これから尻Assだって時に、チンチン丸出しで締まると思うか?」
('A`)「どうせ文章だから見えねえよ」
( ^ω^)「一理あるな」
「一理ある、じゃないよ」
聞き覚えのある声に、二人は足を止めた
( ^ω^)「…会いたかったぜ」
( ^ω^)「『つー』さんよ」
(*゚∀゚)「…」
- 951 名前:名も無きAAのようです :2014/09/07(日) 01:05:37 ID:TNQNrIdw0
- (*゚∀゚)「冗、談、じゃあないよ」
脚のホルスターに巻いたクナイを引き抜き、迫る
薄暗い空間の中でも、眼光だけは鋭く光っていた
(*゚∀゚)「二回も三回も、手間を取らせるね君達は」
('A`)「おう、それが持ち味だ」
( ^ω^)「惚れてもええんやで?」
(*゚∀゚)「生憎、しつこい男はタイプじゃない。瓜畑さんに釘を刺したけど、彼はもう使い物になるのかすら定かじゃない」
('A`)「…」
(*゚∀゚)「ここで、死んでくれない?」
( ^ω^)「断る」
一歩前に出たのは、ブーンだった
( ^ω^)「俺達は前に進む。誰に言われようと、何に阻まれようと、全力で目的を果たす」
( ^ω^)「殺される気も、死ぬ気も毛頭無い。邪魔をするなら」
( ^ω^)「『かかってこい』」
構えを取る
両拳では無く、掌を向けて
柔道でも空手でもない、ブーン独特の構えであった
- 953 名前:名も無きAAのようです :2014/09/07(日) 01:13:58 ID:TNQNrIdw0
- ( ^ω^)「行け、相棒。ひたすら昇れ」
('A`)「…」
制止も、激励の言葉も掛けなかった
('A`)「『上』で会おうぜ」
ただ一言、信頼の言葉だけを返し
全力疾走で止まったエスカレーターを駆け上がった
(*゚∀゚)「…」
つーは、その姿をただ見ているだけ
( ^ω^)「止めないのかお?」
(*゚∀゚)「必要ないからね。彼一人で何か出来るってワケでもないし」
( ^ω^)「…一つだけ言っとくぞ、ねーちゃん」
ブーンの足が、僅かに動く
つーはそれを見て、逆手に持ったクナイを体の前に構えた
( ^ω^)「俺の相棒は……」
(#^ω^)「ド変態野郎だッ!!」
(*゚∀゚)「っ…だから何さ!!」
突っ込んできたブーンに対し、つーは自慢の俊足でその脇をすり抜け、すれ違い様にわき腹を斬った
(*;゚∀゚)(浅いッ!!)
踏ん張りのブレーキを掛け、低身を保ったまま振り返る
肉を斬った感触は無く。傷は皮だけに留まっていた
- 954 名前:名も無きAAのようです :2014/09/07(日) 01:15:00 ID:TNQNrIdw0
- ( ^ω^)「そしてこの俺も…」
背中を見せたままのブーンの傷口が一瞬にして塞がれる
『マッスル・キュアー』。ブーンにだけに許された、肉体の範疇を越えた『超回復』
( ^ω^)「ド変態の一人だ…さぁどうする?お前らの血管に入り込んだのは、『殺人ウイルス』だ。常人如きに止めることが出来るかな?」
(*#゚∀゚)「抜かせ!!」
再び、高速でつーが奔る
狙いは、肩甲骨の間。心臓だ
(*#゚∀゚)「ああああああああああああああ!!!!!」
怒りの雄たけびと共に、クナイを突き立てようとする
( ^ω^)「…」
ブーンには、『スタイル』があった
それは母、『内藤ママイゾン』から受け継がれた、『肉体のエンターテイメント』
- 955 名前:名も無きAAのようです :2014/09/07(日) 01:16:30 ID:TNQNrIdw0
- ( ^ω^)「『ホライゾン』」
左腕が、斜め上へと上がる
次の瞬間、それが断頭台の刃の如く振り下ろされた
(#^ω^)「『チョップ』!!」
振り向き様に放たれた手刀に、つーは咄嗟に顔と首をガードする
(*; ∀゚)「グッ!!」
ガードして尚、体に響く衝撃、ダメージ
前進の推進力は殺され、つーの体はフロアを転がる
( ^ω^)「…これが、内藤家一子相伝の『スタイル』」
( ^ω^)「『プロレス』だお」
(*;-∀゚)「っつ……女子に、プロレス仕掛けるなんて…見下げ果てた男だね」
( ^ω^)「ああ?殺す気でいる奴に何ナマ言ってんだオラ」
( ^ω^)「立てよ『ニンジャ』。プロレスの真髄、特と味わえや」
(*#゚∀゚)「ほんっとに…ムカつく男だね君は!!」
ブーンの戦いが本格的に始まろうとしている時
もう一つの因縁が、激突しようとしていた
- 956 名前:名も無きAAのようです :2014/09/07(日) 01:18:37 ID:TNQNrIdw0
- ('A`)「…」
<ヽ`∀ >「…」
('A`)「…始める前に、言いたいことあるか?」
<ヽ`∀´>「…出来れば、引き帰して欲しい」
('A`)「ハッ、ヤダね。俺はしょーちゃん助けて稲荷とやらのクソジジイをケツで挟んでパァンする」
<ヽ`∀´>「…そう、か」
('A`)「他に何か?」
<ヽ`∀´>「…」
ニダーは、座っていたベンチから立ち上がり、上着を脱いだ
('A`)「ああ、そうかい…」
ドクオはケツを二回、高らかに鳴らした
('A`)「行くぜ…『押し通る』」
<ヽ`∀´>「『ねじ伏せる』」
.
- 964 名前:名も無きAAのようです :2014/09/10(水) 22:44:00 ID:4E6iti3Q0
- (#'A`)「オオッ!!」
<ヽ`∀´>「…」
突進に備え、合気道の構えを取る
ドクオの戦い方は、良く言えば『真っ直ぐ』。悪く言えば『単純』
ニダーの『合気道』やブーンの『プロレス』のように、特定のスタイルは無く
基本的な突き、蹴りと、尻での攻撃が殆どだ
警戒すべきはもちろん『尻』
爆音と閃光を放ち、鉄ですら断ち切るそれは最早『兵器』と言っても過言では無い
だが、彼がそれの威力を十二分に発揮できるのは、相棒の『ブーン』が居てこそ
閃光を食らわせるには敵に『背』を見せる必要がある。しかしそれは余りにも隙が大きい
そして最大の威力を持つ『挟み込み』は、敵の動きを封じ、制限できる『サポート』がいなければ、成功する確率が低くなる
<ヽ`∀´>「…」
ニダーと言えども、ドクオとブーンと言う阿形吽形と戦うのは相当な骨だ
ブーンがつーを相手にしているのは、彼にとっては僥倖だった
『ドクオが一人であり』、『特定のスタイルを持たず』、『尻は使えない』
これだけの条件が揃い、初めて
ニダーは『油断』をした
(#'A`)「…フッ!!」
ドクオは僅かに、右へステップフェイントを入れる
それは、指摘せねばわからぬほど、些細なものであったが
<ヽ;`∀´>「!!」
『反応が良い』ニダーを騙すには充分なものであった
- 965 名前:名も無きAAのようです :2014/09/10(水) 22:45:35 ID:4E6iti3Q0
- <ヽ;`∀´>(だが!!)
体は反応したが、頭は今だ冷静だった
どのポイントから攻撃が来ても迎え撃てるよう備える
しかし、ドクオは予想外の行動に出た
<ヽ;`∀´>「なっ…」
攻撃は『せず』
ニダーの体を『抜いた』
(#'A`)「っだらっしゃあああああああああああああああ!!!!!!」
そして、そのまま上階への道を走り進む
<ヽ;`∀´>「クソッ!!」
ドクオにとってニダーは『通過点』
重要なのは『勝利の女神救出』と言う目標
<ヽ;`∀´>(『単純』と侮った!!)
『ドクオ』なら、幾度と無く奈落に突き落としても、更に高く這い上がるあのドクオなら
真っ先に自分の撃破を優先すると『思い込んでいた』
その結果が招いた油断。そして
<ヽ;`∀´>(このポジションはマズイッ!!)
背を追うニダーへ向き合っているのは、あの『尻』
いつ閃光と爆音が襲ってきてもおかしくは無い
最低限の対処として、ニダーは片目を閉じる。そして、一刻も早くドクオの進撃を止めようと疾走のスピードを上げた
- 966 名前:名も無きAAのようです :2014/09/10(水) 22:47:33 ID:4E6iti3Q0
- (#'A`)「…」
ドクオが一度、チラリと後ろを振り返る
それを見たニダーは、反射的に腕で目を覆った
次の瞬間、尻から炸裂する閃光と爆音
瞼の裏にまで薄く光が届いたが、視界に問題は無い。耳はモロに音の攻撃を受け、高い耳鳴りに支配された
<ヽ`∀´>(まだ、やれ―――)
目を防いだ、一瞬の隙を突き、ドクオの逃走は止まっていた
代わりに繰り出されていたのは
(#'A`)「ルォォ!!」
左足の『後ろ回し蹴り』
<ヽ;`∀´>「ッ!!」
体を後ろに反らし避けるには『近すぎる』
腕でガードするには、蹴りの速度が『速すぎる』
結果として、ニダーは上半身を屈め蹴りを避けた
そのまま疾走の勢いを活かしタックルを喰らわせようとするが
そこにある筈の『ドクオの右の軸足』が、浮いていた
<ヽ;`∀´>(しまっ…)
(#'A`)「ルオラッ!!」
ニダーの側頭部に、ドクオの二撃目となる『右回し蹴り』が炸裂した
- 968 名前:名も無きAAのようです :2014/09/10(水) 22:49:12 ID:4E6iti3Q0
- <ヽ; ∀ >「…!!」
左後ろ回し蹴り、からの、遠心力を利用した右回し蹴り
通常時ではニダーに通用すらしないであろう大技が、見事に決まった
(#'A`)(……『軽い』ッ!!)
かに見えた
<ヽ;`∀ >(今、飛んだ…)
蹴りが当たった瞬間、ニダーは体を大きく傾け蹴りの衝撃を和らげた
しかし、逃がしきれなかった衝撃も多く、一瞬ながら意識が途絶えた
(#'A`)「ッ…ルォ!!」
右足が地面に着くと同時に、今度は腹を狙った中段蹴り
しかし今度は
<ヽ;`∀ >「『捉えた』」
体へと辿り着く前に、ニダーの両手に捉えられてしまった
(;'A`)(そう簡単には―――)
<ヽ#`∀´>「ぬん!!」
ドクオの足首を掴み、力任せにぶん投げる
高そうな服を着てポーズを取っているマネキンが鎮座するショーウインドウに体ごと突っ込んだ
(; A )(い、かねえか…畜生…)
- 969 名前:名も無きAAのようです :2014/09/10(水) 22:50:30 ID:4E6iti3Q0
- <ヽ`∀´>「『忘れていた』。君がどれほど周りを驚かせ、相手を打ち破ってきたか」
ニダーは反省をする
二度勝利したことから、彼はドクオの事を『単純な相手』だと高を括っていた
しかしドクオは『元々は弱かった』。それ故に、数多くの敗北から『学習』をする
二度の負けから、ニダーの性格や戦闘パターンを組み立て、勝利へのロジックを作り出していた
それが今の一撃。反応が良く、真面目で、ドクオの切り札を知るニダーへの勝ち筋だった
<ヽ`∀´>「さっきの蹴りは…慢心が招いた罰として、甘んじて受けよう」
<ヽ`∀´>「だが、もう容赦はしない。そして、三度立ち上がる気力すらも残さない程に打ちのめしてやる」
(; A )「…」
『初撃必殺』
ドクオが対ニダーを想定して打ち出した最善策
これまでの戦いでハッキリしているのは、『実力差』
持久戦では先ず勝ち目が無い。持ち込むなら『ド短期戦』。それも、あっという間に終わるほどの、刹那の戦い
もちろん、おいそれと応じてくれる相手ではない。騙し、不意を突き、初めて通じる一撃に、勝算を懸けた
しかし、脆くもその策はたった今破られた
(; A )「……ク」
だからこそドクオは
( A )「ハ…ハハ…」
更に『燃えた』
- 980 名前:名も無きAAのようです :2014/09/17(水) 23:01:00 ID:Vle.duOU0
- ( A )「ベラッベラ、ベラッベラ、と」
( A )「良く喋るじゃねえか…ええ?ニダー」
顔の上に乗ったマネキンの片腕を放り投げ、ドクオは立ち上がる
('A`)「喋る暇があったら追撃かまして来るかと思って待ち構えていたが……どうやらちょいと甘くなったみてえだな」
<ヽ`∀´>「…」
('A`)「『彼女』に何か唆されたかい?」
<ヽ`∀´>「……」
ニダーは答えない
しかし、その心境は揺らいでいるとドクオは予想していた
先ほど、つーが言った『使い物になるかわからない』という言葉
どんな意図を持ってその言葉を吐いたのかは解らないが、彼女はニダーをそう評価しざるを得なかった『何か』を目撃した筈だ
そしてその『何か』とは、十中八九『勝利の女神』によってもたらされたものであろうと
('A`)「フゥン!!」パァン!!
体に刺さった細かなガラス片を、尻の衝撃で取り除き
('A`)「むん!!」ビシッ!!
その傷口を、カーズ宜しく筋肉の引き締めで塞いだ
- 981 名前:名も無きAAのようです :2014/09/17(水) 23:03:51 ID:Vle.duOU0
- ('A`)「ハン、姉御姉御っつって暴走してる割には、ブレブレじゃねえか中途半端が」
<ヽ`∀´>「…」
('A`)「それともただの尻軽か?母性溢れるしょーちゃんに惚れでもしたか?」
<ヽ ∀ >「…う……」
(#'A`)「ああ!?しっかり喋れよ優柔不断野郎!!ウジウジと情けねえ面しやがって!!ええ!?」
ニダーの糸が、プッツリと切れた
<ヽ#`∀´>「違うッ!!」
否定の叫びと共に、ドクオに殴りかかる
怒りに満ちた表情は、般若のそれと変わりない
('A`)「…」
今まで『受け』の戦いをしていたニダーが、初めて見せた『攻め』
ドクオは言の葉によって、『戦いペース』を掴んだ
ニダーを怒らせることで、『合気道』というスタイルを奪い、『殴り合い』に持ち込むことで勝率を上げたのだ
だが、これだけでは決定打にはならない。スタイル無くしても、二人の間には大きな実力差がある
『+α』があって、初めて同じ土俵に立てる
- 982 名前:名も無きAAのようです :2014/09/17(水) 23:05:59 ID:Vle.duOU0
- 西川の戦い以降、ドクオとブーンの二人はただ日常を浪費していたわけではない
次の脅威に向けて、新たな強さを手に入れようと肉体の鍛錬と研究を続けた
求めたのは、相打ち覚悟で放つ『必殺技』ではなく
絶望に屈せず、相手を圧倒する為の『必勝技』
二人が出した結論は、それぞれの『特徴』の新しい使い道だった
ドクオは、特定のスタイルを持っているワケではない
しかし彼にはただ一つ、誰にも真似出来ないものを持っていた
『尻』
危機を脱し、脅威を打ち倒してきたこの尻に、ドクオは更なる可能性を求めた
そして手にしたのは、『破壊力』でも『目くらまし』でも無く、前へ前へと進む『推進力』
( A )「…」
<ヽ#`∀´>「ッ!!」
ドクオは、拳を中段に構えた
ニダーの拳は既に、ドクオの顔面へ向かっている
( A )「…」
- 983 名前:名も無きAAのようです :2014/09/17(水) 23:07:08 ID:Vle.duOU0
- (#'A`) パァンッ!!
尻を引き締めた時に生じる、『衝撃』『爆発』を、前進の為の『エネルギー』として使用
距離として『一歩分』、超スピードで『前に出る』だけの技術
ただ、それだけの技術で
(#'A゚)「ルオオッ!!!!」
<ヽ; ∀ >「ゴッ!?」
ドクオはニダーの拳を掻い潜り、腹に全力の一撃を加え
二メートル近い巨体を後退させた
<ヽ; ∀ >(今…のは…?)
ニダーの目には、傍にいたドクオの姿が、尻の破裂音と共に一瞬にして消え
気がつけば懐に潜り込まれ攻撃をされたように見えただろう
それくらい、ドクオの『一歩』は速かった。人が助走も無しに出せる速度ではなかった
('A`)「…今のが、俺が編み出した『必勝技』」
('A`)「一度は絶望し、ハインを救うことを投げ出そうした俺が、『二度と絶望しない為』に得た新しい力」
('A`)「『漢前体操』が内の一つ、『疾風怒濤』!!」
<ヽ;`∀´>「…」
スピードが上がると言うことは、単純破壊力も増すと、痺れと痛みが色濃く残る腹筋が証明していた
『単純』、故に『強烈』。正に、ドクオそのものを体現する技
- 984 名前:名も無きAAのようです :2014/09/17(水) 23:09:31 ID:Vle.duOU0
- ('A`)「存分に、殴り合おうぜ…なぁニダー?」
『+α』は埋めた
後はただ
(#'A`)「互いが納得するまでなァ!!」
<ヽ#`∀´>「…」
削り合うだけだ
一方
(メ; ω )「…」
(*゚∀゚)「…しぶといね、君」
ブーンは苦戦を強いられていた
- 985 名前:名も無きAAのようです :2014/09/17(水) 23:11:10 ID:Vle.duOU0
- (メ; ω )「女って、こええなぁ…」
『マッスル・キュアー』を以ってしても、追いつけない彼女の『速さ』
回復スピードよりも、彼女の斬撃が遥かに上回る
ブーンの全身に刻まれた傷と、つーのクナイから滴る血が物語る
(*゚∀゚)「バケモノの君に言われたくないね」
ブーンの攻撃がヒットしたのは、振り向き様に放ったチョップのみ
そもそも、ブーンの『プロレス』と言うスタイルは、『殺し合い』に向いてはいなかった
(*゚∀゚)「斬っても斬ってもすぐに治る……どんな体してんのさ?」
(メ;^ω^)「マッスルの神様にファックされたんだお言わせんな恥ずかしい」
(*゚∀゚)「あっそ」
クナイを持ち直し突進する
(メ#^ω^)「だおッ!!」
ラリアットで迎撃するが
(*゚∀゚)「『遅い』」
つーは体操選手のように跳躍で避け、空中で宙返りし肩を切り裂く
(メ; ω^)「ッつ!!」
(*゚∀゚)「『触れもしないスピードには、どんな攻撃も通じない』…だっけ?」
着地をし、新しい血で濡れたクナイを弄ぶ
(*゚∀゚)「ノロマな『プロレス』なんかで、この私を捉えることが出来ると思う?」
(メ; ω^)「…」
- 986 名前:名も無きAAのようです :2014/09/17(水) 23:12:33 ID:Vle.duOU0
- ブーンは応えた
(メ^ω^)「『出来る』」
(*#゚∀゚)「…」
その自信が、つーを更に苛立たせる
(*#゚∀゚)「まだ……斬られ足りないみたいだね」
(メ^ω^)「プロレスラーはタフさが売りだ。攻撃受けてなんぼの『エンターテイメント』」
(メ^ω^)「もっとやる気出せよ『速いだけのねーちゃん』。その俺のチンコよりも小せえ刃物でファックして見せろ」
(*#゚∀゚)「ほざけ……マゾ野郎ッ!!」
怒りが速さを増幅させる
クナイの手数も更に増える
(メ; ω )「グッ…」
対して、ブーンが出来ることは、両腕で急所を守りながら
ほんの僅かな隙に反撃らしき動作をするだけだった
- 987 名前:名も無きAAのようです :2014/09/17(水) 23:14:31 ID:Vle.duOU0
- 正直な話
ブーンは『ノロマなプロレス』と言う言葉に、反論出来なかった
プロレスとは、攻撃を受けることが前提の『エンターテイメント』
『一方試合なんて誰が見たいか、客が求めているのは逆転劇だ』
元レスラーの、母の言葉を思い出す
だったら、その逆転劇で『勝利』するまで
(メ^ω )「『漢前体操』」
.
- 4 名前:名も無きAAのようです :2014/09/28(日) 02:45:41 ID:KgedJn6w0
- 西川と対決したあの日以来、最も大きな変化があったのはブーンだった
その最たるものが、『マッスル・キュアー』の使用制限の解除
鳥岡に負わされた致命傷を、院長の手腕と自身の治癒力により回復し、死の淵から舞い戻った事で『堰が外れた』
マッスル・キュアーの原理は、『前倒し』だ。怪我を瞬時に治す為に、限られた『命』というエネルギーを、自然治癒に比べ多く消費する
『治せば治すほど、寿命は縮まる』という、矛盾を孕む能力だ。故に、使用は負担の少ない『軽傷』に限られた
しかし、今後は違う。『リミット』が無くなってしまったのだから、能力を、命を、際限なく消費出来てしまう
ブーンはこれを、受け入れた
ドクオは、昔から無茶をする人間だ。それは誰よりも長い時間を共にしたブーン自身が一番分かっている
だからこそ、時にはニダーやクールのような『ストッパー』が必要であるし
時には自分のような、共に危機に立ち向かう『相棒』が必要なのだ
西川との戦いで、ドクオの命を救うより前に、ドクオに命を救われていた
首を圧迫され、意識が朦朧とする中、自分より更に深いダメージを追っていたドクオに
そして、ブーンが立ち上がるより先に、ドクオは命を削って西川を倒した
ブーンは今でも思う
あの時、自分が最後まで立っていれば、ドクオはあれほどの無茶をせずに済んだのでは無いかと
共に、最後まで戦えていれば、背後からの凶襲に不覚を取らずに済んだのでは無いかと
鍛えても鍛えても、まだ足りない『何か』を、補う必要があった
自分に足りない『何か』とは何か
その答えは、相棒が持っていた
『限界を超えること』
ハインが公園で暴力を受けていた時、『恐怖』という限界を超えて立ち向かったのはドクオだ
学園祭、『常識』という限界を超えて、尻で鉄バッドを捻じ切ったのもドクオだ
ブーンを救い、怒りの絶頂にあった西川を、『限界を超えて』倒したのはドクオだ
ならば自分も、限界を超えようと考えた
そこで初めて、自分は相棒と対等になれると確信した
ただし、『対等』で終わるつもりは無かった
どうせ目指すなら、更なる高みへ
自身の力を、『筋肉の力』を以ってして
『指輪』など無くとも、『アルファベットを模した武器』が無くとも
『人は自らの力で限界を超える』ことを証明し、相棒の背中を追い越すために
- 5 名前:名も無きAAのようです :2014/09/28(日) 02:46:52 ID:KgedJn6w0
(メ^ω )「『粉骨砕身』」
.
- 6 名前:名も無きAAのようです :2014/09/28(日) 02:47:39 ID:KgedJn6w0
- (*;゚∀゚)「ッ!?」
ブーンの体の異変に、つーは思わず距離を取り観察した
傷だらけの体から立ち上る『熱気と蒸気』。二月の冷えた空気には、それがはっきりと浮かび上がる
(メ^ω )「……」
(*;゚∀゚)「…一体」
疑問を投げかける前に、ブーンは行動を起こしていた
人工大理石で出来た床が『砕け散る』まで踏み込み、突進する
そのスピードは、今までの比ではなかった
(*;゚∀゚)そ「ちょッ!?」
猛スピードで迫るラリアットを、上半身を反らし躱す
直後に、その右腕が産んだ猛烈な風圧が顔と髪にぶつかった
(*;゚∀゚)(はっや…!!)
行き場を失ったラリアットは、軌道上にあった柱へ激突
轟音と共にコンクリを砕き、中の鉄柱を外気に晒した
(*;゚∀゚)「は……え?」
(メ^ω^)「…」
(メ#^ω^)「痛えじゃねええええええええかああああああああああああああああ!!!!!!」
(*;゚∀゚)そ「し、知らないよーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
- 7 名前:名も無きAAのようです :2014/09/28(日) 02:50:09 ID:KgedJn6w0
- 諸説あるが
人は自らが持つ筋力の、凡そ20%程度しか使用していない
100%の力を発揮すると、筋肉そのものや骨などにダメージが生じる為、脳が肉体にリミッターを掛けているからだ
しかし、このリミッターは特定の状況下で解除されることがある
『火事場のクソ力』という言葉があるように、生命の危機に晒された時、人は『限界を超えた』力を発揮する
もちろん、危機を脱すればダメージが残るであろう
アドレナリンで抑え込んでいた痛みは蘇るだろうし、数日間、ひょっとすればもっと長い間、筋肉痛に犯されるかもしれない
だが、『治る』とすれば
『火事場のクソ力』によって傷ついた肉体を、瞬時に治すことが出来たなら
人は、100%の力を『常に引き出せる』のではないか
これが、ブーンの『限界突破』
傷つくたびに治し、治したそばから傷つき、また治す
文字通り『骨を粉にし、身を砕きながら』戦う能力
(メ# ω )「ああ痛え…めちゃくちゃ痛えお畜生め…」
床が砕けるほど踏み込んだ脚は、縦に薄く割れ
柱を壊した右腕の骨には、皹が入る
だがその傷も、瞬く間に治り
体から熱気と蒸気がまた立ち上った
(*;゚∀゚)「バ…」
つーは、今度は軽口ではなく本気で
(*;゚∀゚)「『バケモノ』め!!」
目の前の『怪物』を恐れた
- 8 名前:名も無きAAのようです :2014/09/28(日) 02:52:10 ID:KgedJn6w0
- もちろん、この技はかなりのハイリスクを有する
全身には常に激痛が走り、傷の回復の為にかなりの体力を消耗する、まさに諸刃の剣の能力
(メ# ω )「バケモノ上等、相棒が輪をかけた変態野郎だ。俺も狂わずにはいられねえ…ところで、姉ちゃんよ」
(メ# ω^)「『息が上がっているみてえだな?』」
(*;゚∀゚)「ハッ!?」
指摘されて始めて、つーは自分の呼吸が乱れている事に気付く
苛立ちを乗せた猛攻撃によるスタミナの減少と、ブーンの異変による精神の乱れ
思っていた以上に早く、『疲れ』の色が見え始めた
(*;゚∀゚)「だから何だって言うのさ…」
それでも、つーは自身のスピードに格段の自信があった
『粉骨砕身』で限界を超えたブーンの攻撃は、ほぼ不意打ちと呼んで良いものだろう。それを、寸でとは言え避けた
(*#゚∀゚)「君が幾ら速く強くなろうと、私には絶対に追いつけないよ!!」
(メ ω^)「……かもな」
ブーンは拳を二回叩き合わせた
(メ^ω^)「だが俺は、『絶対〜出来ない』なんて聞いちゃうと、余計に燃えるタチなんでね」
(*#゚∀゚)「ッ…!!」
- 9 名前:名も無きAAのようです :2014/09/28(日) 02:54:11 ID:KgedJn6w0
- つーは下唇をかみ締めた
傷だらけで血まみれで、命まで狙われているというのに
『どうしてこうも楽しそうにしているのだろう』
(*#゚∀゚)「…」
つーは右腕を二回振る
袖の中でバネが作動し、そこから飛び出してきた『ステッキ』が右手に納まった
それを、一度大きく振ると、先端から銀色の刃が特殊警棒のように伸びた
長さは60センチほど、切れ味と強度はこれまで使っていたクナイの比ではない
この武器の製作者は『アダマンチウム合金製の刃だ』と言っていたが、その金属が一体何なのかはつーは知る由も無い
重要なのは、この刃は確実に、ブーンの肉体を貫けると言う事だ
(*#゚∀゚)「これも、受けてみなよ『プロレスラー』」
(メ^ω^)「…」
(メ^ω^)そ「えっ、やだよ。それ当たったら死んじゃうやつじゃん」
(* ∀ )「…」
熱気を帯びる体の一箇所が、スッと冷えた
その箇所目掛け、刃の切っ先が迫る
(メ;^ω^)(アカン)
体を捻り、更にバックステップで距離を取る
- 10 名前:名も無きAAのようです :2014/09/28(日) 02:55:40 ID:KgedJn6w0
- (メ;^ω^)(肝が冷えるとはこの事か!!)
ブーンの『心臓』があった位置で、刃が空気を切り裂き啼いた
次いで、首筋を狙い薙ぐ
(メ;^ω^)「わお!!」
首の皮がほんの僅かに切り裂かれる
(* ∀゚)「…」
(メ;^ω^)(受けたら死ぬ!!死ぬ奴やこれ!!)
クナイとは比べ物にならない切れ味
そして、先ほどとは別人に見えるほどの
(* ∀゚)
(メ;^ω^)(この冷酷さ!!)
少しでも気を抜けば、即『やられる』
急所の『冷え』を指針に、ブーンは紙一重の回避を繰り返した
(* ∀゚)「…」
(メ;^ω^)(『粉骨砕身』がなけりゃ…躱すこともままならないお!!)
大きく距離を離して、体勢を立て直したい所だが
つーは依然として、刃が届く必殺範囲を維持し続ける
- 11 名前:名も無きAAのようです :2014/09/28(日) 02:56:38 ID:KgedJn6w0
- (メ;^ω^)(こんな時…)
『相棒』ならどうするか
絶望的な状況と膠着、この二つの打破を
(メ;^ω^)(どうするんだお…ドクオ!!)
『('A`)「どうするもこうするもねえだろ」』
頭の中のドクオは答える
『(#'A`)「マッスルかませ!!」』
『答え』の体を成していない、だが
(メ^ω^)「流石相棒!!」
充分すぎる答えだった
- 12 名前:名も無きAAのようです :2014/09/28(日) 02:59:31 ID:KgedJn6w0
- 『粉骨砕身』は、全身の筋力の力を100%引き出す
文字通り『全身』だ。腕であろうと足であろうと、骨を支え、体を動かす『肉』であるなら
(メ^ω^)
殴り返す必要は無い、蹴り返す必要も無い
大振りのモーションは要らない
(メ^ω^)「ワッ」
親指と、中指を、力強く合わせる
それを、攻撃を繰り返すつーの耳元へ近づけた
(メ#^ω^)「ッショオィ!!!!!!」
『指パッチン』、ただし通常の比ではない
指の筋力の100%を以って放たれた音は、つーの鼓膜を激しく揺らした
(*;-∀゚)そ「ッ!?」
つまりは、ドクオが尻でいつもやっていることの応用だ
つーの刃の軌道がぶれ、鳩尾ではなく脇腹を貫いた
(メ#^ω^)「ナイスマッチョォォォーーーーーー!!!!!!」
ダメージを無視し、指パッチンをかました手でつーの顔面を鷲掴み、床へ投げつけた
(*; ∀ )そ「うあッ!!」
後頭部と、背中を強かに打ちつけ、悶絶する
(メ;^ω゚ )そ「やべえすっげ痛……ッ!!」
刃は背中まで貫通していた
刺されたのは二度目だが、意識がはっきりしている分、激痛が景気良く伝わる
- 13 名前:名も無きAAのようです :2014/09/28(日) 03:01:44 ID:KgedJn6w0
- (メ;^ω゚ )(それだけじゃねえ……こいつは…)
『粉骨砕身』の作用に拠るものか、激痛が一向に治まらない
マッスル・キュアーが発動しっぱなしなのだ。傷が付くたびに治してしまう
つまり、異物が刺さっている場合、『治り次第また傷がつく』
これの繰り返しに陥り、新鮮な痛みがいつまでも続くのだ
(メ;^ω゚ )「なんで一生に二回も……刺されなきゃいけねえんだ…おおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
回復し続ける強靭な肉体から、無理やり刃を引き抜く
斬れ味が良かったのが唯一の救いであろう。綺麗に肉を斬りながら取り除くことが出来た
(メ;^ω゚ )「まな板の上の…鯉も!!」
(メ;^ω゚ )「てめえでてめえを捌かねえだろうよ…なぁ、ねえちゃんよ…」
刃を床に突き刺し、更に柄の底を踏みつける
引き抜けない位置まで、深く突き刺さった
(*; ∀ )「…ッ」
ミンチ
(メ;^ω゚ )「今の攻撃は…全力じゃねえ…つーか全力でやったら普通に『木っ端微塵』だからな…」
(メ;^ω゚ )「だが立つのもままならねえ筈だお…そのまま寝とけば、これ以上追撃しない…」
(*; ∀ )「……嘗め、るなよ」
立ち上がる。が、先ほどの冷たさは消えた
脚は産まれ立ての小鹿のように震えている
- 14 名前:名も無きAAのようです :2014/09/28(日) 03:03:42 ID:KgedJn6w0
- (メ^ω^)「…」
刺された傷は塞がったが、その影響で『粉骨砕身』のリミットが訪れた
体に帯びる熱と蒸気が霧散する
(メ^ω^)「そうかお……」
再び拳を二回叩き合わせる
(*#゚∀゚)「何なんだ…どうして邪魔するんだ!!」
近くにあったクナイを拾い、突進する
しかし、先ほどまでのスピードは無かった
(*#゚∀゚)「『いつも』そうだ!!私の目的には常に邪魔が付きまとう!!『今回』は今までで一番!!可能性があるのに!!」
(メ^ω^)「…」
既に、通常状態のブーンでも攻撃を避けられるほどに
(*#゚∀゚)「鬱陶しい!!鬱陶しい!!鬱陶しい!!私に!!何の恨みがあって!!阻んでくるんだ!!」
(メ^ω )「恨み?」
右腕でクナイを払う
容易くつーの手を離れ、フロアを跳ねた
- 15 名前:名も無きAAのようです :2014/09/28(日) 03:06:30 ID:KgedJn6w0
- (*#゚∀゚)「チィッ!!シッ!!」
頭狙いのハイキックを放つ
(メ^ω )「違えんだお……」
それも腕で払いのけ、そして
(メ#^ω^)「惚れたからに決まってんだろォォォオオオオオオ!!!!!」
(*;゚∀゚)「はっ…?」
この場において、かなり場違いな事を口走った
- 16 名前:名も無きAAのようです :2014/09/28(日) 03:09:08 ID:KgedJn6w0
- (メ#^ω^)「貰ったアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」
(*;゚∀゚)「ッ!?しまっ…」
呆けた隙を突き、右腕を首に絡ませ背後に回る
そして左上腕を掴み、左手で頭を押し気管を絞める
格闘技において、脱出不可能と称される『サブミッション』
『裸締め』、またの名を『スリーパーホールド』
(*; ∀ )「カッ……」
(メ^ω^)「どうだ?捉えたぞ。『ノロマなプロレス』で」
(*; ∀ )「ッ…」
(*; ∀ )(私としたことが…こんな馬鹿な手で…)
腕を掴むが
病院でブーンの拘束を解けなかったつーが、筋力も体重も遥かに劣る『ニンジャ』が
『プロレスラー』の全力から逃れることは出来なかった
(メ^ω^)「…次に目を醒めて、色々終わった後は」
(メ^ω^)「お茶でもご一緒してくれお」
(*; ∀ )「……」
気を失った事を、伝えるかのように
つーの全身から、力が抜けた
- 17 名前:名も無きAAのようです :2014/09/28(日) 03:10:43 ID:KgedJn6w0
- (メ^ω^)「…」
技を解き、つーの体を抱え上げ、近くのベンチへと寝かせる
(メ^ω^)「……」
そしてブーンは暫く考え込み、顔を上げ
(メ^ω^)「あっ」
偶然近くにあったアウトドアショップの扉へと向かった
(メ^ω^)白「亀甲縛り…やり方…」
とんでもなく不純な拘束方法を検索しながら
(メ^ω^)(…『いつも』、『今回』、か)
(メ^ω^)(一体この姉さんは、何と戦ってるのかね…)
- 37 名前:名も無きAAのようです :2014/11/03(月) 23:55:19 ID:jmaeHhBs0
- アウトドアショップから手ごろな細縄を拝借したブーンの耳元で、コール音が鳴った
(;^ω^)そ「うおっ!?ああ、インカム着けてたんだっけ…」
すっかり存在を忘れていた通信機に指を添え、通話状態にする
間を置かず、聞き覚えのある怒鳴り声が耳を劈いた
『このバカ野郎ーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!』
(; ゚ω☆)そ「ほんぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
『ハインさんマイク近い!!ブーンの鼓膜死んじゃう!!』
『ああ!?殺しちまえばいいんだよ!!どうせ後で生き返る!!』
(;^ω^)「ドラゴンボールでも持ってんのかよお前……」
耳の奥に耳鳴りを残しながら、ブーンはなんとか応答する
『作戦無視して派手に侵入したのはお前らが超弩級のバカ野郎だからもう良いとしても、報告だけはちゃんとしろ!!こっちは無線連絡とGPSでしか状況把握できねえんだから!!』
( ^ω^)「わり、取り込んでたんだお」
『…で?』
( ^ω^)「で?」
『状況だ状況!!今!!どこで!!何してんだ!!』
(;^ω^)「何カッカしてんの…?カルシウム足りてねんじゃね…?」
『〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!!!』
『ブーン、隣にいる僕の事も考えて。ハインさん阿修羅みたいな顔になってるから』
( ^ω^)「ヒロインの顔じゃねえお…3Fフロアでちょっとバトってた。ドクオは先に上に向かってるが…」
『…が?』
( ^ω^)「……」
- 39 名前:名も無きAAのようです :2014/11/03(月) 23:57:36 ID:jmaeHhBs0
- モール内に、破裂音が薄く響く
『銃声』ではない、聞きなれた音だ
( ^ω^)「どうやら、俺より無茶してるようだお」
(#'A゚)「お」
<ヽ#`∀´>「お」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!」
二人分の咆哮と共に拳が交差する
間も無く、互いの顔面に衝突し、体の重心を大きくぶらせた
- 40 名前:名も無きAAのようです :2014/11/03(月) 23:59:25 ID:jmaeHhBs0
- (# A )「ブッ…」
<ヽ# ∀ >「アガ…」
そのまま、重力に従うかのように上半身が落ちて行くが
(#'A゚)「ルァア!!」
<ヽ#`皿´>「ギッ!!」
気力で踏ん張り、再び拳を構える
(#;'A゚)「ハァー、ハァアー…」
<ヽ#;`∀´>「フッ、フゥウー…」
打ち合った数など覚えていない
ただ、目の前の相手が倒れるまで、殴り続けるだけだ
(#'A`)「ペッ!!」
ズタズタになった口の中に溜まった血を吐き出す
(#'A`)「『ねじ伏せる』には…随分と軽い拳じゃねえか、ニダー」
<ヽ#`∀´>「フゥウー…」
ドロリと流れ出た鼻血を手の甲で拭った
<ヽ#`∀´>「その程度で『押し通る』気か?笑わせる」
ドクオは
(#'∀`)「言うじゃねえか…」
笑った
- 41 名前:名も無きAAのようです :2014/11/04(火) 00:00:59 ID:9Ca0nBuY0
- 西川との戦いでは感じなかったもの
『高揚感』
邪悪さの無い、真剣な魂のぶつかり合い
否が応でも、感情が昂ぶる
(#'∀ )(クッソ…どうしてだ…)
ドクオの目的は、ニダーを倒すことでは無い
それはドクオ本人が一番良くわかっていることだ
しかし、わかっていても抑えきれない。『勝ちたい』という欲を抑えることが出来ない
(#'∀ )(冷静になれ……勝負を急ぐな……目的を思い出せ!!!)
<ヽ#`∀´>「ふんッ!!」
僅かにニダーから意識を反らした一瞬に、顔面にねじ込むように拳を叩き込まれる
痛みと脳への衝撃が、ドクオの正気を戻した
(# A )「おぶっ……」
<ヽ#`∀´>「おおッ!!」
頭を抱え、腹に膝蹴りを放つ
(# A )∴「ゲボォ!!」
蹲った所に、ボールを蹴る様にドクオの顔面を蹴り飛ばす
- 42 名前:名も無きAAのようです :2014/11/04(火) 00:01:51 ID:9Ca0nBuY0
- (# A )「ゲハッ!!ゴホ!!」
フロアを転がり、飾ってあった観葉植物の大きな鉢にぶち当たる
最早、ドクオの顔面から血が流れ出てない穴は無かった
(# A )(全く……骨が折れるぜ……どいつも、こいつも…)
クールとニダー、どちらもここぞと言うときに頼りになる存在だ
それを救う立場となると、なんと手の掛かる事か
(# A )(絶対に敵に回しちゃいけねえ相手と戦うってのは…しんどいもんだぜ…)
<ヽ#`∀´>「フッ!!」
トドメと言わんばかりに、ニダーの足の裏が迫る
(# A )(…)
(#'A゚)「どぅらッ!!!!!!」
踏みつけのタイミングに合わせ、尻を突き上げる
<ヽ;`∀´>「ッ!?」
足は押し戻され、膝間接に激痛が走る
尻餅を突きそうになる所を、数歩後ずさり持ちこたえた
- 44 名前:名も無きAAのようです :2014/11/04(火) 00:03:27 ID:9Ca0nBuY0
- (# A )「だけど…だが、それでこそ…!!」
(#'A゚)「乗り越え甲斐が…あるってもんだ!!!!」
♪Black sabbath - War Pigs
<ヽ;`∀´>「…」
落とせば落とすほど、痛めつければ痛めつけるほど
ドクオの眼に宿る戦意の炎は更に燃え上がる
<ヽ`∀´>(『ダメだ』)
ニダーは考えを改めた
『ねじ伏せる』程度では、この漢は止まらない。止められない
かつて、ドクオとブーンを追い詰めた『敵』は、こんな温い気持ちで対峙したわけが無い
<ヽ`∀´>(『殺す気』で、挑まなければ)
ニダーは息を深く吸い込み
<ヽ#`∀´>「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!!!!」
吼えた
(#'A`)「…出し切ろうぜ」
ドクオはそれに応えるかのように、尻を二回鳴らした
(#'A゚)「ニダアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!!!!!!!」
- 45 名前:名も無きAAのようです :2014/11/04(火) 00:04:24 ID:9Ca0nBuY0
- ドン、とお互い深く一歩踏み込む
加え、ドクオからは破裂、いや、『爆裂音』が鳴り響く
(#'A゚)「ルオアッ!!!!」
初手、ヒットしたのは『疾風怒濤』を使ったドクオの拳撃
ニダーの拳はドクオの耳を掠め、空を切った
<ヽ;`∀ >「ッ…」
頬骨に嫌な軋みが走り、ニダーは頭を反らした
ドクオは次いで、左拳を胴に叩き込もうと構える
<ヽ#`∀´>「ギッ…!!」
ニダーは空ぶった拳でドクオの後頭部を掴み、反らした頭を
<ヽ#`∀´>「ニダッ!!!!!」
顔面へ叩き込んだ
(;'A゚)「つぁッ…!!」
<ヽ#`∀´>(もう一撃ッ…!!)
もう一度頭を反らし、頭突きの追撃を放つ
- 46 名前:名も無きAAのようです :2014/11/04(火) 00:05:26 ID:9Ca0nBuY0
- (#'A゚)「ルオオ!!!!!」
ドクオはその頭突きを頭突きで返す
頭蓋骨同士がぶつかり合う鈍い音と共に、二人は反動で離れた
(#'A゚)「シィッ!!」
ドクオは間髪入れず尻を鳴らしニダーへタックルを仕掛ける
<ヽ#`∀´>「グッ!!」
腰に組み付かれたニダーは、数メートル後ろへと下がったが、倒れこむことなく踏ん張った
組んだ両手をハンマーのようにドクオの背中へ落とす
(;'A゚)「ゴハッ!!」
ニダーの腰に絡む両腕が緩んだ隙に、ドクオの腹を抱え持ち上げパワーボム宜しく地面へと頭から叩きつける
( A゚)(やべっ…)
視界が歪む。何度も経験した『気を失う』感覚
( A゚)「あっ…」
それに伴い、ドクオの体から力が抜けていく
ニダーは勝機だと言わんばかりに、ドクオの体を高く持ち上げた
<ヽ#`∀´>「終わりだッ!!!!」
- 47 名前:名も無きAAのようです :2014/11/04(火) 00:06:28 ID:9Ca0nBuY0
- ( A゚)(終わり?)
地面へと近づく僅かな間に、ニダーの言葉が反響する
( A゚)(終わり…終わり?ここで負けて、それで終わり?)
その言葉が、敗北よりも受け入れ難いその言葉が
ドクオの意識を醒ました
(#'A゚)「終わってたまるかあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
<ヽ;`∀´>「ッ!?」
ニダーは咄嗟の判断でドクオの体を手放し、離れる
次の瞬間、閃光と爆音と衝撃破によって、ニダーの体は吹き飛び、床を転がった
<ヽ;`∀´>「ぐっ…」
痛みや驚きよりも先に、ニダーは『危なかった』と感じた
あのまま技を解かずにいれば、『尻』の攻撃をモロに喰らっていただろう
そうすれば、再起不能は免れなかった
(#'A゚)「ハァーッ!!」
受身を取ったドクオは、後転の要領で体勢を立て直す
それを見てニダーも、よろめきながら立ち上がる
- 53 名前:名も無きAAのようです :2014/11/09(日) 00:58:27 ID:bMOTt0iQ0
- (# A )「『負ける』のはいい。敗北からも多くを学べる。『逃げる』のも悪かねえ。まだ立ち向かえるチャンスがある」
(#'A゚)「だが『終わり』だけは!!!!絶対に認めねえ!!!!受け入れねえ!!!!」
<ヽ ∀ >「…」
ニダーは天を仰ぎ、深く息を吸った
今一度、彼は全てを忘れようとした
そして最後に残った『一つ』だけを最優先とし、再びあの感覚と共に戦おうとした
<ヽ ∀ >「…彼女しか、いない」
『それ以外は、些細なこと』
<ヽ#`∀´>「ウリにはッ!!!!彼女しかいないッ!!!!始まりも終わりも!!!!彼女がいなければ意味が無い!!!!!」
お互いが、拳を構えた
(#'A゚)「なら!!!!その想いで俺を!!!!殺してみせろッッッ!!!!」
<ヽ#`∀´>「終わりを拒絶すると言うならば!!!!ウリを乗り越え続けてみせろッッッ!!!!」
全身全霊を懸けた、最後の一撃で
己の想いを貫く為に
- 54 名前:名も無きAAのようです :2014/11/09(日) 00:59:52 ID:bMOTt0iQ0
(#'A゚)
「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!!」」
<ヽ#`∀´>
.
- 55 名前:名も無きAAのようです :2014/11/09(日) 01:01:47 ID:bMOTt0iQ0
- 一際大きな爆裂音が鳴る
更なる加速を乗せた、全力の『疾風怒濤』
だがニダーはそれを『読んだ』
速さに『慣れた』とも言えるだろう。顔に迫る高速の左ストレートを上半身と顔を僅かに捻り避けた
(#'A゚)(『ウィービング』ッ!!)
『ボクシングの防御テクニック』。ニダーが最後に見せた『切り札』だった
<ヽ#`∀´>(『勝ったッ!!』)
切り札であるが、半分は賭けに近い勝負だった
ニダーは一つのテクニックとしてボクシングという『スタイル』を身に付けているものの、付け焼刃と言える程度の練度であった
それに加え、ドクオの攻撃はボクサーのパンチを凌駕するスピードだ。五分五分すらも怪しい綱渡りだった
だがニダーはその賭けに『勝った』
後はドクオを再起不能にするだけ
最後の攻撃は、拳では無く『掌底』
胸に強烈な一撃を見舞い、心臓を止める
表では無く、『体の内』に狙いを定めた
正真正銘、ドクオを『殺す』為に
<ヽ#`∀´>「これでッ…!!!!」
右腕を、真っ直ぐ放った
- 56 名前:名も無きAAのようです :2014/11/09(日) 01:02:27 ID:bMOTt0iQ0
『バァン!!!!!』
.
- 57 名前:名も無きAAのようです :2014/11/09(日) 01:04:24 ID:bMOTt0iQ0
- <ヽ ∀ >「」
その音は、まるで目覚まし時計のように、ニダーを我に返させた
だが正反対に、ニダーの意識は遠のいていく
<ヽ ∀ >(な…ん、で……)
黒く染まり行く視界の中、彼が目にしたのは
(# A )「…」
『右拳』を突き上げるドクオの姿
<ヽ ∀ >(連続…で…)
ニダーはほんの一瞬前の出来事を思い返す
自分が掌底を放とうとしたその時、ドクオの右アッパーが顎を貫いたのだ
『尻』が放つ爆音と共に
(# A )「漢前体操、『百足連弾』」
『疾風怒濤』の連続使用。これがドクオの切り札
(# A`)「『疾風怒濤』が単発限りの技と侮ったな」
<ヽ ∀ >
宙に浮いたニダーの体は、鈍い音と共に地面へと墜ちた
今度こそ急所にまともに喰らった彼は、それ以上何も出来なかった
- 58 名前:名も無きAAのようです :2014/11/09(日) 01:06:22 ID:bMOTt0iQ0
- ( A )「……ッッッ」
『勝った』
血液の流れに乗るかのように、その実感がドクオの体中を駆け巡り
腹から喉へ、『勝ち鬨』が昇っていくが
(; A )「ッ!!」
雄たけびとして飛び出す前に、グッと飲み込んだ
(; A )「…『知ってるさ』」
(; A )「お前がだたの尻軽じゃねえって事も、しょーちゃんに惚れたワケじゃねえって事も」
<ヽ ∀ >「」
(; A )「だから、俺はお前にこれ以上何も言わねえ。『正しい』も、『間違っている』も、俺が決められるもんじゃねえ」
(; A )「もう一度立ち上がって、テメーの『漢』を通せニダー。まだ今の行動が正しいと信じて俺達を止めようとするなら、何度でも相手してやる」
(; A )「だが逆に、気が変わったなら…」
(; A )「俺ら全員、歓迎するぜ。『頼れる兄貴が帰ってきた』ってな」
ドクオは先にある階段へ向かって歩み始める
荒れたフロアに、覚束ない足音が響き、それが小さくなると
:<ヽ ∀ >:「ぐっ…ヒグッ…」
誰にも聞かれることの無い、かみ殺した嗚咽が流れ出した
- 70 名前:名も無きAAのようです :2014/12/21(日) 01:08:17 ID:GISDntpw0
- ―――――
―――
―
('A`)「…」
最上階に辿り着いたドクオの口から漏れたのは、意外にも
('A`)「ほう…」
『感嘆』のため息だった
フロアの真ん中、台座の上に飾られている豪勢な花瓶には
二月だと言うのに見事な花を咲かせる紅桜の枝が差されていた
その桜を、大きな天窓から覗く『満月』が、幻想的な光で彩を添えている
「美しいだろう?呪われた地に咲く桜だとは思えないほどだ」
('A`)「……」
渋みがあるが、少し嗄れた声
('A`)「…アンタが、主犯かい」
声の主は葉巻の紫煙を纏いながら、ドクオの前に現れた
爪'ー`)y‐
('A`)「…稲荷フォックス氏」
名前を呼ばれた稲荷は、存分に煙を吸って、吐く
口元には余裕のを表すかのように笑みを浮かべていた
- 71 名前:名も無きAAのようです :2014/12/21(日) 01:09:58 ID:GISDntpw0
- 爪'ー`)y‐「しかし、非常識ではないかね?」
稲荷はソファーとテーブルのある場所まで杖を突きながら歩き、座った
爪'ー`)y‐「ふー…閉店時間はとっくに過ぎているのだよ?翌朝の開店時間まで待てなかったのかね?」
('A`)「ああ、そりゃあうっかりしてたぜ。なんせここ二、三日ずっと寝てたから時間の感覚が狂っちまったようだ」
爪'ー`)y‐「クク…それは災難…」
('A`)「しょーちゃんはどこだ?答えろ、挟むぞ」
ドクオの問いに、稲荷は葉巻をもう一吸いし、揉み消し
吐き出しながら、ソファーに深く持たれかかり、両手を組んで答えた
爪'ー`)「少し待ってくれないか?直にお色直しした主賓が登場する…まぁ座って待ちたまえよ。少し話しでもしよう」
荒巻は向かいのソファーに座るよう促す
ドクオはいかがわしい表情を浮かべ、少し悩んだ後、それに応じた
('A`)「正直な所、あんたらの目的が全うであるなら……極端な話、世界征服を狙う悪の組織に立ち向かう為だとか、宇宙人の侵略から地球を守る為だとか。そういう目的で勝利の女神の力を借りたいって話だったなら、俺もここまで苦労せずに済んだ」
爪'ー`)「ほう?」
皺だらけの顔が、愉しそうに歪む
('A`)「しかし予想通りと言うかなんと言うか……そんな事を考えていた俺が馬鹿だと思えるくらいのド悪党っぷりを見せ付けてくれたなオイ。ご丁寧にバイトまで雇って学校襲いに来やがって」
爪'ー`)「大義の前には多少の無茶と犠牲が必要だ。それに、別に誰かが死んだワケでも無かろう?」
('A`)「そういうところが既にド悪党だっつってんだよジジイ。大義名分を振りかざす奴にロクな連中はいないって知ってるか?」
爪'ー`)「初耳だ」
('A`)「だろうな……聞く耳なんて持って無さそうだ」
- 72 名前:名も無きAAのようです :2014/12/21(日) 01:11:45 ID:GISDntpw0
- ('A`)「で、結局あんたはどういう目的でこんな酔狂始めちまったんだ?」
爪'ー`)「聞きたいかね?」
('A`)「そりゃ当然。神社の伝説を真に受けるバカの話なんざ、一生に一度聞けるか聞けないかだからな」
爪'ー`)「クック、全く図々しい小僧だ。オマケに口の利き方もなってないときた」
('A`)「生憎、悪党に尽くす礼儀は持ち合わせてねえんでな」
稲荷は喉の奥をクククと鳴らし、シガーケースから二本目の葉巻を取り出し、咥えた
爪'ー`)y‐「私はこの国が嫌いだ」
癖か習慣か、風など一つも吹いていない室内で、稲荷は左手で壁を作り、葉巻に火を灯した
その手が下げられ、顔が露わになった時には、既に笑みは消えていた
爪'ー`)y‐「私は戦争経験者でね…戦場に立ち、戦い、そして終戦を迎えた…」
稲荷は立ち上がり、窓へと向かう
ドクオはその場を動かず、ただ話だけに耳を傾けた
爪'ー`)y‐「それがどういうものか、想像できるか?国が人を殺すように仕向け、人が人を殺し、残された者は多大なる悲しみを背負う」
('A`)「……」
爪'ー`)y‐「誰もがこう言うだろう。『戦争はいけないことだ』『絶対に繰り返してはいけない』と。しかし、立場が違う社会が複数ある以上、争いと言うものは避けられん」
爪'ー`)y‐「どれだけ綺麗ごとを並べてもな…」
- 74 名前:名も無きAAのようです :2014/12/21(日) 01:13:52 ID:GISDntpw0
- 葉巻の吐息を間に置いてから、稲荷は話を続けた
爪'ー`)y‐「だが私は、戦争に対して否定的な意見を持たない。古くから、それこそ歴史書が誕生する以前から、戦争は人と国を変えてきた」
爪'ー`)y‐「『成長』とも、言い換えることが出来るな……『どの時代でも、戦いは大きな成長を促す』。私の恩師の言葉だ」
('A`)「良いお言葉だな。カーネギー名言録に乗せたいくらいだ」
爪'ー`)y‐「だが、戦争に置いて『一つだけやってはいけない事がある』。わかるかね?」
('A`)「……さぁな」
爪'ー`)y‐「『敗北』だ」
眉間に皺が寄る
彼が初めて見せた渋い顔だった
爪'ー`)y‐「戦争にどれだけのリスクとコストが掛っていると思うね?特に重いのが、人の命だ」
爪'ー`)y‐「それをこの国は、惜しみなく使った。『馬鹿げた兵器』まで開発し、効力の薄い特攻までさせた」
('A`)「……」
爪'ー`)y‐「決して、決して犬死させてはいけない命だった……決して負けるわけにはいかない戦いだったのだ」
('A`)「……」
ドクオは、何となくだが稲荷の目的が読めてきた
('A`)「第三次大戦でも、おっぱじめようってのか?」
爪'ー`)y‐「『第三次』?いいや、違う。私の戦争はまだ終わっていない」
- 75 名前:名も無きAAのようです :2014/12/21(日) 01:15:20 ID:GISDntpw0
爪'ー`)y‐「戦友の魂を無駄にしない為。この日本を戦勝国とし、正しく導く為に」
爪'ー`)y‐「彼女の、勝利の女神の力を以って、『第二次世界大戦』にケリを着ける」
.
- 76 名前:名も無きAAのようです :2014/12/21(日) 01:18:47 ID:GISDntpw0
- ('A`)「……B級映画でも、観てる気分だ。それも、実は生きていたヒトラーが何かする系の」
話を聞き終えたドクオは、ソファーから立ち上がる
('A`)「良くわかった。アンタが飛び切りの狂人で、極右な、クソ野郎だってことをな」
('A`)「まさか友達救う行程で、ついでに世界まで救うことになるとは思わなかったぜ…そろそろ待ちぼうけた」
シンと静かなフロアに、逞しいケツの音が二度響き渡る
('A`)「出せよ…最後の切り札って奴をよ…」
爪'ー`)y‐「……」
稲荷が再び愉しそうな笑顔を浮かべると同時に
フロアの隅にあるエレベーターが到着を知らせるランプを灯し
階段からは、一人分の足音が昇って来た
爪'ー`)y‐「『来た』ようだな」
('A`)「…ああ、『互い』にな」
- 77 名前:名も無きAAのようです :2014/12/21(日) 01:20:36 ID:GISDntpw0
- 【+ 】ゞ゚)「皆さんお揃いで」
(//‰ ゚)「…」
エレベーターからは、長身の男が二人と
川;゚ -゚)「…」
白装束を着た、勝利の女神
対し、階段からは
( ^ω^)「待たせたな」
ドクオと同じく、刺客を打ち倒したブーンが登場した
爪'ー`)y‐「役者は揃った。終わらせようか、村人学園の若獅子達よ」
('A`)「俺らが作るこの先の『未来』から、ご退場願おうか。クソジジイ」
勝利の女神を巡る、長い、長い一週間が
あと少しで、終わろうとしていた
- 81 名前:名も無きAAのようです :2014/12/22(月) 00:08:09 ID:VYa3Gc9U0
- ―――――
―――
―
从 ゚∀从「…着いたっぽいな」
繋ぎっぱなしのブーンの通信機から聞こえる会話から、二人が目的地に到着したと伺えた
ドクオからの応答は無いが、GPSのマークが動いていることから無事が確認できた
(-@∀@)「インカム、どこかに落としたのかな?」
从 ゚∀从「壊したんじゃねえの……多分、あいつの相手はニダーだ。体より先に、機械の方がぶっ壊れるだろ」
(;-@∀@)「……あのさ、ブーンもドクオも上に着いた……けど」
確かに二人は、立ちふさがる刺客を乗り越えた。しかし
(;-@∀@)「『この先』……戦えるの…?」
从 -∀从「…」
『最高難易度の敵』を相手にしたドクオが、余力など考えて戦った筈がない
それは、また別の敵を相手にしたブーンも同じことだろう
全開で戦い、全身に傷つき、全力で前に進み、その果てに力尽きる。その可能性を、アサピーは危惧した
だがハインは、一寸の迷いもなく応えた
从 ゚∀从「『戦える』」
と
- 82 名前:名も無きAAのようです :2014/12/22(月) 00:09:47 ID:VYa3Gc9U0
- (-@∀@)「……ゴメン、信じるよ」
从 ゚∀从「……おう」
澱みない物言いに、アサピーの不安が霧散した
事実、二人に救われた『彼女』が言うのだ。説得力も増す
だが、また新たな不安が意外な場所から湧いて出た
_、_
(;,_ノ` )「……おかしい」
从 ゚∀从「何がだオッサン?」
(;-@∀@)「ハインさん敬語使おうよ…」
_、_
(;,_ノ` )「遂行部隊からの応答がない…GPSも途中から動きがない…」
从;゚∀从「まさっ……ヒート達は!?」
_、_
(;,_ノ` )「安心し…いや、安心出来ねえな。動きはある……」
_、_
(;,_ノ` )「『ダーティ・マム』、応答しろ」
唯一動きのあるハッキングチームに呼びかける
『こちらダーティ・マム。なんだい?』
_、_
( ,_ノ` )「現状報告を」
『順調だよ…順調すぎて、逆に不気味になるくらいさ』
_、_
(;,_ノ` )「…」
隊長は胸ポケットから『Chikubi』という銘柄のタバコを取り出し、火をつけた
_、_
(;,_ノ` )y━・~「嵌められたか?」
『かもしれないね…どこからか情報が漏れたか、あるいは…いや、あり得ないね、それは』
- 83 名前:名も無きAAのようです :2014/12/22(月) 00:11:42 ID:VYa3Gc9U0
- _、_
(;,_ノ` )y━・~「引くか?」
『いいや、それは出来ないね。何より猶予がない』
『作戦は続行するよ。所で、坊やたちは?』
_、_
( ,_ノ` )y━・~「『上』に着いた。やる気だぜ…」
『…いいねえ、こっちも滾るよ。と、そろそろ作戦地域だ。切るよ』
通信終了。尚も不安は色濃く残る
_、_
( ,_ノ` )y━・~「フー…」
Ω「まさか、『ヒドラ』の仕業では?『一部戦力提供』の代わりに、情報の横流しを…」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「なんとも言えんな…だが奴らは本部にかなり『根』を張っていた。ありえんとは言い切れん」
从 ゚∀从「オッサン、全然状況読めないんだけど」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「『スパイ』だよ。それもかなり性質の悪い、な」
『Chikubi』の先が、ジリジリと燃える
苦虫を噛み潰した顔で、ミルク色の煙を吐き出した
_、_
(;,_ノ` )y━・~「迂闊だったぜ……もしかすると俺たちは、『誘導』されたのかもしれねえ」
(;-@∀@)「『誘導』?」
_、_
(;,_ノ` )y━・~「奴らは『戦力』の最終調整の為に、俺らを『演習相手』に選んだのかもしれねえ。だとすると突入部隊は…」
从;゚∀从「な、なぁ…さっきから言ってる『戦力』って、一体何ことだ?」
_、_
(;,_ノ` )y━・~「それは…」
- 84 名前:名も無きAAのようです :2014/12/22(月) 00:13:25 ID:VYa3Gc9U0
_、_
(;,_ノ` )y━・~「運転手ッ!!!!!!出せ!!!!!!!!」
.
- 85 名前:名も無きAAのようです :2014/12/22(月) 00:17:26 ID:VYa3Gc9U0
- 隊長が叫んだ瞬間、衝突音と共にトラックの屋根が『二箇所』凹んだ
(;-@∀@)「あわわッ!!」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「ガキ共!!伏せてな!!!!」
サイドホルスターから『コルト・ガバメント』を引き抜き、凹みに向かって発砲
もう一人の隊員も、『M93R』のフルオートで弾を見舞う
トラックは急発進し、乗っていた全員が大きく体勢を崩す
機器の下に潜り込んでいたハインは派手に頭をぶつけた
从; ∀从「ッ〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
Ω「振り切りましたか!?」
_、_
(;,_ノ` )y━・~「いや、もう一体乗ったままだ!!」
撃ちつくした拳銃のマガジンを落とし、新しい物を差し込む
その僅かな間に、屋根に取り付いた『何か』は弾丸が通った『穴』に指を差し込み、剥がそうとする
_、_
(;,_ノ` )y━・~「冗談じゃねえぜ!!ターミネーターかっての!!」
(;3∀3)「め、メガネメガネ…」
_、_
(;,_ノ` )y━・~そ「この緊迫した場面でベタなことやってんじゃねえ!!!!!」
「う、うわあああああああああ!!!!」
_、_
(;,_ノ` )y━・~「どうし――――」
運転手の叫びのワケを問う暇も無く
トラックは横転し、横へと滑り、道路に線を引きながら、数十メートル進んだ先で止まった
その背後からは、得物を狙う肉食獣の眼のように、『赤い光』が四つ、ゆっくりと迫っていた
- 169 名前:名も無きAAのようです :2015/01/17(土) 01:20:28 ID:mYm1HUGA0
- ―――――
―――
―
J( 'ー`)し「マズイね」
通話を終えた『ダーティ・マム』は胸ポケットから電子タバコを取り出し、咥えた
先端のLEDが安っぽい火の光を演出し、口から煙を模した水蒸気を吐き出す
J( 'ー`)し「どうやら、上手いこと動かされたみたいだよ」
( ^ν^)「先行部隊とも連絡が付きませんしね…」
バックアップ部隊、もう一人の隊員は板ガムを口にする
( ^ν^)「ん?」
『いるかい?』と、差し出したガムを、モララーは緊張した面持ちで首を振って遠慮した
ノパ听)「辛いですか?」
( ^ν^)「コーヒーガムだから甘いよ」
ヒートは礼儀正しく『いただきます』と言い、ガムを貰う
味の評価は
ノハ;゚〜゚)「香りつきの消しゴムみたい…」
と、酷いものであったが
- 170 名前:名も無きAAのようです :2015/01/17(土) 01:21:56 ID:mYm1HUGA0
- (;・∀・)「どうするんですか?」
J( 'ー`)し「無論、任務続行よ」
ソードオフを施した『レミントンM870』を構えなおす
J( 'ー`)し「『虎穴に入らずんば』ってね……何にせよ、『真相』は掴まなきゃならない」
(;・∀・)「ひえー…」
( ^ν^)(俺は榛名派なんだよなぁ…)
J( 'ー`)し「ここから先は慎重に、かつ大胆に攻めるわよ!!」
ノパ听)「はい!!」
( ・∀・)「お兄さん、僕ら本当に大丈夫ですかね?」
( ^ν^)「大丈夫さ!!多分!!」
(;・∀・)「やだ!!超不安!!」
J( 'ー`)し「シッ…」
右拳を突き上げ、前進を止める
J( 'ー`)し「アソコだよ…」
( ・∀・)(言葉のイントネーション…)
ダーティ・マムが指差す先
場所はフードコート、『武内P』という名前のクレープ店だった
( ・∀・)(アイドルをマスターしてそうな店だな…)
- 171 名前:名も無きAAのようです :2015/01/17(土) 01:23:20 ID:mYm1HUGA0
- ( ・∀・)「えっ、あの、クレープ店ですよね?」
( ^ν^)「おっもしろいだろ?アレの内部にメインコンピューターがあるんだぜ?」
ノパ听)「なるほど!!木を隠すなら森の中ってワケですね!!」
( ^ν^)「うん、全然違うね」
J( 'ー`)し「突入前に、ガキ共」
振り返り、二人の肩に手を乗せる
その力強さに、思わず身に力が入る
J( 'ー`)し「成り行きで連れて来ちまったが、戦場ではガキも大人も関係ない」
J( 'ー`)し「この先で何が起こるかは分からない。守ってやれる保障も出来ない」
J( 'ー`)し「もしもの時は躊躇わず、渡した『それ』を使いなさい。ただし、使いどころは考えな。『一度限り』の物だから」
『それ』とは、突入前に渡された『銀の腕輪』
拳を対象に向け、手首を下に曲げるとワイヤーが発射され、電気を流す『ワイヤー針タイプ』のスタンガンだ
ノハ;゚听)「や、やります!!」
(;・∀・)「…」
二人の顔が険しくなり、更に覚悟を深めた事を確認すると
J( 'ー`)し「さぁ、行くよ」
( ^ν^)「イエス、マム」
ショットガンを向け、クレープ店への突入を開始した
- 172 名前:名も無きAAのようです :2015/01/17(土) 01:25:54 ID:mYm1HUGA0
- ―――――
―――
―
川;゚ -゚)「話が……違うじゃないですか……」
この階に、ドクオとブーンがいる『異常』に、勝利の女神は声を震わせる
川;゚ -゚)「私が稲荷さんに従えば、皆さんを無傷で帰すと約束したはずです!!」
爪'ー`)y‐「約束では無く、『善処』だ。それに、彼らは侵入者であり、計画の邪魔になる者達だ。制圧には、力による圧力が必要なのだよ」
一切悪びれず、稲荷が応える
その態度に、ドクオがフンと鼻を鳴らした
('A`)「ハン、最初から守る気もねえ約束をまぁ…政治家に向いてるんじゃねえかアンタ」
('A`)「しょーちゃん、覚えてるよな?『戦の神を降ろすために必要な物』を」
厄土に咲く桜
ブラッドムーン
夜空を突く槍
月を映す盾
そして、『供物』
川;゚ -゚)「は、はい。ですが、『その役目』は稲荷さん本人が…」
('A`)「ハッ、そんなワケねーだろ……何故俺らを今の今まで泳がせ、始末しなかったのか…」
- 173 名前:名も無きAAのようです :2015/01/17(土) 01:26:53 ID:mYm1HUGA0
- ('A`)「大方、俺らを『生贄』にして、美味しいところは自分で持ってこうってハラだろうぜ」
( ^ω^)「悪党らしい小物っぷりだお」
川;゚ -゚)「…」
勝利の女神の顔が青ざめる
ドクオの言った事に、合点がいったのもあるが何より
稲荷が『ニダー』を呼び込んだ理由を予想できてしまったからだ
:川; - ):「ニダーさんを……ドクオさんとブーンさんが来なければ……ニダーさんを生贄にするつもりだったんですか……?」
爪'ー`)y‐「憶測だけで物を語るのは感心しないな…『私には一切その気は無いが』」
爪'ー`)y‐「もし彼が『自ら志願してきたのなら』それに応える必要はあっただろうな」
人を、『善』も『悪』もまとめて信じた勝利の女神は
初めて『裏切り』を経験した瞬間だった
:川; - ):「な…なんてことを…!!」
他人を平気で犠牲にする稲荷に対する『怒り』と
ドクオ達が来なければ、良い様に利用される所だった『恐怖』が
勝利の女神の体と奥歯を振るわせた
- 174 名前:名も無きAAのようです :2015/01/17(土) 01:28:55 ID:mYm1HUGA0
- ('A`)「…相棒、どう思う?」
( ^ω^)「どう思うもねえお」
( ^ω^)「胸クソ悪ィ」
('A`)「同感だ」
漢達は、勝利の女神に向かって一歩前進した
('A`)「ぶち壊すぜ。文字通りな」
( ^ω^)「おうよ、相棒」
- 175 名前:名も無きAAのようです :2015/01/17(土) 01:29:45 ID:mYm1HUGA0
- 【+ 】ゞ゚)「勇ましいのは大いに結構だが」
オサムは勝利の女神を桜の台座の近くにある椅子に強引に座らせる
手すりから拘束バンドが飛び出し、手首を固定した
【+ 】ゞ゚)「今の君達に『やれる』のかね?」
(//‰ ゚)「…」
『ヤクザ』が前に出る
たった一人でドクオとブーンを無力化した強敵が、再び立ちはだかる
('A`)「…」
( ^ω^)「…」
【+ 】ゞ゚)「察しの良い君のことだ、欝田くん。こいつの正体はつかめているのでは無いかね?」
('A`)「……重さも、硬さも、人じゃあねえ。だとしたら答えは一つだろ」
('A`)「ロボット…いや、『ターミネーター』と言った方が適切か。とにかく、そういう類のモンだろ」
オサムは一つ手を叩き、『素晴らしい』と声を挙げる
【+ 】ゞ゚)「私の作った最高傑作…自律学習型バトルロイド『横堀』」
( ^ω^)「名前ダサいな…」
ブーンのツッコミを無視し、自らの発明に陶酔しきった顔で説明を続ける
【+ 】ゞ゚)「人工鋼性筋肉に特殊合金の骨格!!世界中のアスリートのデータを搭載し、更に対象の動きを読み、学習し、対応する!!」
【+ 】ゞ゚)「戦えば戦うほど強くなる究極の戦士!!フフフ、さっきまでの君達の戦いも取り込み、更に揺ぎ無い強さを得た!!あの日、病院で君達を殺さなくて正解だ!!」
- 176 名前:名も無きAAのようです :2015/01/17(土) 01:31:06 ID:mYm1HUGA0
- 【+ 】ゞ゚)「対する君達は、全力を出し切ってここに来た…満身創痍と言っても過言では無い」
【+ 】ゞ゚)「学校で戦った時、横堀に手も足も出なかった君達が、そんな状態で勝てる道理があるとでも?」
('A`)「…」
( ^ω^)「…」
オサムの言うことは確かだった
全力を、手の内を全て曝け出し戦って、二人はここに辿り着いた
彼の作った『横堀』の性能が事実だとしたら、勝ち目は限りなく薄い
だが、そんなことは二人には関係が無かった
状況が違うのは、相手も同じだ
あの時は『不意を突かれた』。こうして対峙していたなら、どう転んでいたかわからない
ドクオとブーンが誇る『強さ』を、敵はまだ知らない
- 177 名前:名も無きAAのようです :2015/01/17(土) 01:31:49 ID:mYm1HUGA0
- ('A`)「知らねえんなら教えてやる」
( ^ω^)「わからねえならわからせてやる」
ドクオは尻を鳴らし
ブーンは拳を叩き合わせた
('A`)「俺達は、一人でも『最強』」
( ^ω^)「二人なら」
(#'A`)「「『無敵』だッ!!!!!」」(^ω^#)
.
- 178 名前:名も無きAAのようです :2015/01/17(土) 01:33:24 ID:mYm1HUGA0
- (#'A`)「『漢前ッ!!!!!!』」
(#^ω^)「『体操ォォォーッ!!』」
漢前体操のコンセプトは、『限界突破』
それは肉体、攻撃強化に限った話ではない
『体力の限界』をも、越える
(#'A`)(#^ω^)「「『漢根性論』!!!!!!」」
ドクオの尻が爆発音を鳴らし
ブーンの体から蒸気が上がる
【+ 】;ゞ゚)「なっ…どこにそんな余力が!!」
疲れや痛みは、人体の放つ『危険信号』だ。この苦しみがあるからこそ、運動に対して『制止』が利く
だが時に、この制止を『無視』して運動を続けることがある。『続けなければならない』時がある
人は、苦しみを無視し動き続けるエネルギー源を、『根性』と呼んだ
そう、何てことは無い
二人は空になった体力を、『根性』で補っているだけなのだ
(//‰ ゚)「…」
臨戦態勢に入った二人を見て、横堀が構えを取る
横堀の戦闘スタイルは『カウンター』だ。相手の動きをコンピューターで読み取り、瞬時に解析し、最善の迎撃を放つ
ホール内に設置された監視カメラと赤外線センサーで、二人の『漢前体操』の動きも既にインプット済みだ
- 179 名前:名も無きAAのようです :2015/01/17(土) 01:35:29 ID:mYm1HUGA0
- (#'A`) バァン!!
『疾風怒涛』と
(#^ω^)
『粉骨砕身』による同時突進
(//‰ ゚)「…」
横堀のコンピューターに狂いは無い。既に最善の一手を選択済みだ
だが、ここで彼にとって予想外の出来事が起きた
(#^ω^)
しつこい様だが、『粉骨砕身』は全身の筋肉の力を百パーセント引き出す
指であろうと、つま先であろうと、表情筋に到るまで、『全身』だ
つまり
(#^ω゚ )「オラァ!!」バァン!!!!
単発ではあるが、『疾風怒濤』を
『百パーセントの力を引き出した尻によるブースト』を使うことが出来る
ドクオと同じく『尻を鳴らし、光らせ、高速で一歩前進』出来るのだ
- 203 名前:名も無きAAのようです :2015/01/25(日) 00:37:20 ID:iALGyviQ0
- 横堀が計測したブーンの最高速度を越す『一歩』
迎撃が間に合わず、鋼鉄の顔面に拳が衝突する
(//‰ ゚)「…」
体勢が僅かにぶれるが、次の攻撃に備えようとする
コンピューターに狂いは無い。ブーンの追撃を完璧に予測し、対応を算出する
だが
(#'A゚)「ルオオッ!!」バァン!!
体勢が完全に立て直されるより先に、ドクオの一撃が見舞われる
そして間髪入れず
(#^ω^)「だおォッ!!」
ブーンの攻撃、そして
(#'A`)「ルオラッ!!」バァン!!
ドクオの攻撃
絶え間ない波状攻撃が、横堀を襲う
- 204 名前:名も無きAAのようです :2015/01/25(日) 00:38:59 ID:iALGyviQ0
- 殴る
殴る殴る
殴る殴る殴る殴る殴る
(//‰ ゚)
一つの狂いを、立て直す間も無く
二人の拳が横堀を穿つ
点では無く、線のように繰り返す攻撃
一寸の隙も与えず、一度の反撃も許さない
(#゚A゚)「ルオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」
(# ゚ω゚ )「だおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
攻撃は更に激しさを増す。だが、二人に狂いは無い
以心伝心の間柄だからこそ可能な連携
(//‰ ゚) ビキッ!!
歪んだ首筋から異音が鳴る
重い体が、一歩引き下がった
(#゚A゚)「ルオラァ!!!!!」バァン!!!!!
疾風怒濤の一撃で、もう二歩引き下がる
距離が開き、横堀が反撃の構えを取ろうとするが
(# ゚ω゚ )「だおらぁ!!!!!」バァン!!!!!
ブーンの飛び蹴りでまた体勢を崩され、後ろへ下がり
(//‰ ゚)「!!」
展望ガラスへと追い込まれた
- 205 名前:名も無きAAのようです :2015/01/25(日) 00:41:03 ID:iALGyviQ0
- (#゚A゚)「まだッ!!!!!」
(# ゚ω゚ )「まだァァァァァァァ!!!!!!」
連撃が再開される
(//‰ ゚)「!!」
『凌ぎ切れない』と判断した横堀は、咄嗟にガードを取る
二人のスタミナも限界値に近い。凌ぎきれば勝てるとコンピューターは判断を下した
猛烈な攻撃を繰り返しているが、横堀の破壊には程遠い
ダンプトラックの衝突にも耐えるボディだ。『人の身』が壊す事など不可能に近い
ただしそれは、『横堀』に限る話である
『ピキ』と、何かがひび割れる音
その音は、横堀に拳がぶつかる度に響く
【+ 】;ゞ゚)「マズいッ!!横堀!!その場を離れろ!!」
背後の強化ガラスが、徐々にひび割れていく
(//‰ ゚)「!!!!」
『産みの親』の指示を瞬時に聞き取った横堀は、ガラスから離れようと足を動かす
(# ゚ω゚ )「動くんじゃねえッ!!!!」
浮かそうとした右足を、ブーンが踏みつける
崩れたガードの隙間を縫って
(#゚A゚)「ドラァッ!!!!!」
ドクオの拳が顔面を打つ
- 206 名前:名も無きAAのようです :2015/01/25(日) 00:42:52 ID:iALGyviQ0
- (//‰ )「」
バチッ、と横堀から電流が漏れ出すが
そんな事など意に介さず、二人は殴り続けた
重い体が、ガラスへと圧し掛かっていく
皹は、横堀を包むほど大きなものへと進行していた
(#゚A゚)「漢前体操ッッッ!!!!!」
あと一撃で、決定打となる
(# ゚ω゚ )「『極技』ッ!!!!!!」
二人は同時に拳を振りかざした
横堀にとって、それは大きな隙だった
(//‰ ゚)「!!」
向かってくる二つの拳を受け止めようと、掌をかざす
ダメージは蓄積されているが、コンピューターは今だ勝算をたたき出している
手始めに、この二人の拳を掴んで握りつぶし―――――
- 207 名前:名も無きAAのようです :2015/01/25(日) 00:44:09 ID:iALGyviQ0
横堀の『頭脳』は、そこまで計算して『途切れた』
.
- 208 名前:名も無きAAのようです :2015/01/25(日) 00:45:20 ID:iALGyviQ0
(#゚A゚)(# ゚ω゚ )「「「『一 蓮 托 生』ッ!!!!!!!」」
.
- 209 名前:名も無きAAのようです :2015/01/25(日) 00:47:00 ID:iALGyviQ0
- 二人の熱い拳は、冷たい鉄の掌を『貫き』
横堀の体を、勢いよく『押し出した』
(//‰ )「」
強化ガラスが割れる音と共に、横堀は冷たい空気の元へと投げ出される
重力に従い墜ちて行く中で、彼が最後に見たものは
割れたガラスの破片
砕け散った両腕と
(# A )(# ω )「「〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッッッ!!!!!!」」
(#゚A゚)(# ゚ω゚ )「「う お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お ッ ッ ッ ッ ! ! ! ! ! !」」
獣のような勝ち鬨を上げる、二人の漢の姿だった
- 210 名前:名も無きAAのようです :2015/01/25(日) 00:49:06 ID:iALGyviQ0
- 一瞬の、格闘技に例えるならば、1ラウンド無いくらいの、本当に早い『決着』だった
オサムが持つ『技術』と『科学』への自身は、二人の『常識はずれ』によって、宣言通り
【+ 】;ゞ゚)「バカな…ありえない…」
『ぶち壊された』
(;'A゚)「ッッッ…ハァッ!!!!!」
(;^ω゚ )「痛っつ…ゲハッ!!!」
勝利によるアドレナリンの放出も、長くは保たなかった
一気に疲労と筋肉への痛みが押し寄せる
(;'A`)「ハァッ、ハァ…」
(;^ω^)「ブフー、ブフー…」
二人は、血と汗とその他色々な汁が流れ出る顔を見合わせた後
(;'∀`)「ハァッ、ナイスマッチョ、相棒…」
(;^ω^)「ング、ナイスマッチョ…」
ニヤリと笑い、互いの拳を突き合わせた
- 211 名前:名も無きAAのようです :2015/01/25(日) 00:51:00 ID:iALGyviQ0
- (;'A`)「フーッ、フー…さて、お宅の切り札は水銀燈(ジャンク)にしてやった」
(;^ω^)「こんな時に水銀党員まで敵に回すなお」
(;'A`)「勝利の女神…返してもらおうか…」
眼前の敵は全て倒した
爪'ー`)y‐「フ…」
だが、稲荷に不安の色は何一つ見えない
川;゚ -゚)「ドクオさん!!ブーンさん!!」
勝利の女神は、安堵どころか、更に焦りを見せ
川;゚ -゚)「『まだです』!!!!!」
と、叫んだ
- 212 名前:名も無きAAのようです :2015/01/25(日) 00:53:22 ID:iALGyviQ0
- (;'A`)「『まだ』……ッ!?」
ドクオが、勝利の女神の警告を『理解』した瞬間
二人の体は地に伏せられた
同時刻
(;・∀・)「ど、どう言うことですか…!?」
メインコンピューター室の隠れ蓑となっていた『武内P』内部では、不測の事態が起こっていた
数多くのディスプレイが並び、スパコンが不気味な音を鳴らす室内で
< Дメ=>「」
病院内で発砲し、阿部さんの脚を撃った男が一人
傷だらけで残されていた
- 213 名前:名も無きAAのようです :2015/01/25(日) 00:56:13 ID:iALGyviQ0
- J(;'ー`)し「息は?」
(;^ν^)「辛うじて。ですが、危険な状態には変わりありませんね」
J(;'ー`)し「チッ…全部あちらさんの掌の上ってワケかい…ニュッ、ガキ共と共に先に脱出しな。そいつの救助が最優先だ」
(;・∀・)「説明してください!!こいつは敵じゃないんですか!?何故助けるんですか!!」
モララーは実際、義虎に追われた身だ
更には拳銃で狙われ、発砲もされた。当たらなかったとは言え、相当の恐怖だった
だからこそワケが分からなくなる。『何故この男を助けるのか』
答えは単純だった
J( 'ー`)し「こいつは我々のスパイよ。それも、『単純で短絡的』な、鉄砲玉として使いやすい男を演じる変わった奴さ」
J( 'ー`)し「コードネームは『ヒール・フール』。馬鹿な悪党って意味だね」
ノハ;゚?゚)「え、う…なら、どうして…」
J( 'ー`)し「『撃ったのか』って?とことん役柄を演じるからさ。邪魔が入れば排除するし、敵が逃げりゃ追いかける。そこまで演るからこそ『信じ込ませる』ことが出来るのさ」
(;・∀・)「…『気まずい』って、そう言うことだったのか……」
病院で阿部さんが取った行動は、義虎にとってハプニングだった
『倒される』ワケにも行かず、下手に躊躇いを見せるワケにも行かず
彼が出来る最大限の『演技』の為に、『脚』を撃ちぬいたのだ
ノハ;゚?゚)「だからって…」
J( 'ー`)し「ああ、許されることじゃないね。でも綺麗だけじゃ、世界は救えないのよ」
(;-∀・)「っ…」
J( 'ー`)し「罵倒も悪態も、後で存分に聞いてやる。だから今は…」
(;^ν^)「ッ!!カーチャンさん!!」
- 214 名前:名も無きAAのようです :2015/01/25(日) 00:57:24 ID:iALGyviQ0
- < Дメ=>「…」
義虎が隊員の袖を掴み、何かを伝えようとか細い声を出す
ダーティ・マムは耳を口元へと近づけた
J( 'ー`)し「何があった?」
< Дメ=>「…」
『逃げろ』
先ずは一言、続けて
『奴らは』
最後に
- 215 名前:名も無きAAのようです :2015/01/25(日) 00:58:08 ID:iALGyviQ0
『一人じゃない』
- 225 名前:名も無きAAのようです :2015/03/08(日) 23:55:46 ID:kjR5lB0A0
- ―――――
―――
―
軋む体の上には、身に覚えのある『重み』
いや、それ以上のモノが圧し掛かっていた
(;'A゚)「嘘だろ…」
(;^ω゚ )「こいつ…ッ」
(//‰ ゚)
突き落としたはずの、横堀
傷一つ無いその機械人形が
(//‰ ゚)(//‰ ゚)
二体
(//‰ ゚)(//‰ ゚)(//‰ ゚)
三体と、次々と二人の上へ積みあがる
爪'ー`)y‐「誰が、『横堀は一体だけだ』なんて言ったのかね?」
実に愉しそうな顔をして、二人を見下ろす
その後ろには、更に多くの横堀が集まっていた
- 226 名前:名も無きAAのようです :2015/03/08(日) 23:57:50 ID:kjR5lB0A0
- (;'A゚)「最初から…遊んでたってのか…」
爪'ー`)y‐「人聞きが悪いな欝田くん?侵入者を取り押さえたまでだ。セキュリティのレベルを上げてな」
(;^ω゚ )「てめえ……ぐぅ!!」
圧し掛かる横堀の数は、十を越えた
限界を超え、疲弊しきった体では、最早押しのけることも出来ない
息をすることですら困難な状態であった
【+ 】;ゞ゚)「やれやれ…君達には毎度驚かされる…だが、今回ばかりはおしまいの様だ」
川;゚ -゚)「やめてください!!」
爪'ー`)y‐「何を馬鹿な事を!!」
悲鳴にも似た女神の訴えを、稲荷は笑い飛ばす
爪'ー`)y‐「錠前を掛けた城に入り込んだ子鼠を捕まえて、逃がすような真似をしろと?ハハッ、やはり神は慈悲深い」
爪'ー`)y‐「だが私は神でも無ければ神父でもない。一介の経営者だ。それ故に、盗人に対して容赦はしない」
稲荷は取り押さえられている二人に近づき、杖の先をドクオの頭へと落とす
(;'A゚)「ガッ…!!」
爪'ー`)y‐「然るべき報いを、与えねばならんのだよ……私の邪魔をした、『全てに』」
- 227 名前:名も無きAAのようです :2015/03/08(日) 23:59:40 ID:kjR5lB0A0
- (;^ω゚ )「てめえまさか……ハイン達にも……!!」
爪'ー`)y‐「怨むなら己の迂闊さと無力を怨みたまえ。荒巻の教え子達よ」
(#'A゚)「ふざけッ…!!!」
荒巻が杖を退けると、代わりに横堀が頭を押さえつける
二人の姿は山のように折り重なった横堀に隠れ、遂に見えなくなった
爪'ー`)y‐「何、喜びたまえ…君達は新たな『大日本帝国』の、最初の礎となるのだ。君達の尊い犠牲が平和への第一歩となる」
川;゚ -゚)「平和…何が、平和ですか!!」
川;゚ -゚)「貴方の自己満足の為に、何人の人が不幸になりました!?何人の人が、命を落としました!?」
爪'ー`)y‐「…」
稲荷の顔から、憑き物が落ちたかのように笑みが消えた
川;゚ -゚)「貴方は、戦友の魂を無駄にしない為と言いました!!ですが、今行っている行為は、その方々に顔向けできるものですか!?」
川;゚ -゚)「この世にはない力を得て、再び戦争を起こすことが、魂を無駄に」
爪'ー`)y‐「黙れ」
稲荷は、杖を着いているとは思えないほどの速度で女神との距離を詰める
そして、固定されている右手に、葉巻の先端を押し付けた
川; - )「ウウッ!!」
爪'ー`)「これは、貴様の責任でもあるのだぞ?女神よ…貴様が微笑む相手を間違えなければ、こんなことにはならなかった…」
爪'ー`)「だから私が、貴様の間違いを正してやるのだ……神だからと言って、知ったような口を叩くな」
- 228 名前:名も無きAAのようです :2015/03/09(月) 00:02:40 ID:UaMyhOGA0
- 川; - )「ッ……」
火傷の痛みが、恐怖と涙を煽る
しかし女神は気丈に振舞った
川;゚ -゚)「戦争に……正誤などありません……ただ、『絶対に終わらせなければならなかった』……これだけは、間違いないこと…」
爪 'ー`)「…」
川;゚ -゚)「そしてもう一つ……間違い無い事があるとするならば……」
涙が浮かぶ瞳で、目の前の老人を睨め付け
川;゚ -゚)「『勝利』は、『私』は…」
川;゚ -゚)「貴方のような『クソ野郎』に、絶対に微笑まないと言うことです」
毅然と言い放った
- 238 名前:名も無きAAのようです :2015/03/29(日) 23:37:50 ID:aKGMFYxs0
- 爪#'ー`)「貴様ッ!!」
激昂した稲荷が頬を打つ
川; - )「ッつ…」
爪#'ー`)「お友達共々、イラつかせてくれる…その減らず口もここまでだ」
爪#'ー`)「始めるぞ。小娘から『勝利』を抜き取るぞ」
【+ 】ゞ゚)「了解いたしました」
荷を持った横堀達が、準備に取り掛かる
オサムには、タブレット端末が手渡された
女神の真正面には、『盾』が乗った台が置かれる
川;゚ -゚)「それ、は…」
磨き上げられた盾は、上空から降り注ぐ月明かりを鏡のように映し、女神を照らした
【+ 】ゞ゚)「『血膜』展開」
タブレット端末を操作すると、天井部が血のように赤く染まり始めた
淡く白い月明かりも、濃く赤い光に変わる
すると、連鎖反応するかのように、彼女の体に異変が起きた
川; - )「あぐっ…!!」
白装束の一部分が焦げ始める
腹から、胸にかけて服が燃え、その下にある『紋章』が外気に晒された
- 239 名前:名も無きAAのようです :2015/03/29(日) 23:39:01 ID:aKGMFYxs0
- 【+ 】ゞ゚)「成功です。後は仕上げを」
爪'ー`)「フフフ…おい」
ドクオとブーンの上に積もった横堀の山が崩れ
中から四肢をそれぞれ一体ずつの横堀に拘束され、手も足も出ない二人が曝け出された
(#'A゚)「ハァー!!ハァー!!」
(#^ω゚ )「ブフー!!ブフー!」
爪'ー`)「ほう、まだそんな眼が出来るか。それでこそ生贄に相応しい」
爪'ー`)「さて、伝説通りなら生贄は『一人』だけで良い筈だが…そうだな」
稲荷が意地の悪い笑みを浮かべる
爪'ー`)「先に相棒を売った方を助けてやろう」
裏切れば、どちらか一方が助かるという『提案』
稲荷はこの二人に、『二通り』の反応を期待した
一つは、先ほどまでの威勢を捨て、『相方を殺して自分だけは助けろ』と命乞いをする姿
一つは、互いを思いやり『俺を殺して相方だけは助けろ』と自らを犠牲にする姿
どちらにせよ、『敗北宣言』には変わりなく、稲荷の支配欲と優越感を存分に満たすことが出来る
(#'A゚)「…」
(#^ω゚ )「…」
だが、二人の目の色は、変わる事は無かった
- 240 名前:名も無きAAのようです :2015/03/29(日) 23:40:57 ID:aKGMFYxs0
- (#'A゚)「ほざいてろ、息がくせえクソジジイ」
(#^ω゚ )「こいつら全員ぶっ壊したら次はてめえだお」
爪 ー )「」
怒りで気が遠くなったのは、これが初めてだった
【+ 】;ゞ゚)「ボ、ボス…?」
爪 ー )「…セ」
【+ 】;ゞ゚)「は…?」
爪#'Д゚)「殺せェェェェエエエエ!!!!このクソガキ共を!!」
【+ 】;ゞ゚)「はっ、はい!!」
(//‰ ゚)「」
空気さえも切り裂いてしまいそうなほど鋭い『槍』を手に持った横堀が、二人の前に立つ
切っ先が、ドクオの背中へと向けられた
- 241 名前:名も無きAAのようです :2015/03/29(日) 23:42:38 ID:aKGMFYxs0
- (#'A`)(絶対絶命ってか…)
威勢を張るが、今のドクオに抵抗する術は無かった
槍が高く掲げられる様を、見ていることしか出来ない
(#'A`)(クソが…最後に出来ることが『神頼み』とはな…)
パンツの中に入れたお守りを意識する
(#'A`)(何の神でもいい。死神だろうが邪神だろうが、トイレの女神様だろうがなんだっていい)
(#'A`)(今ここが、『デカイ勝負所』だ。ここで勝てないと、全てが無駄になる!!姉御がニダーに託した賭けも、ニダーの姉御に対する想いも!!)
(#'A`)(勝ち目を呼び込むってんなら、今ここで、俺達にッ……!!!!)
(#'A゚)「勝ち目をッ!!勝機を呼び込みやがれェェェーーーー!!!!!!」
(//‰ ゚)「」
槍が、ドクオの背中に、『心臓』がある位置へと
真っ直ぐに振り下ろされた―――――
- 242 名前:名も無きAAのようです :2015/03/29(日) 23:43:40 ID:aKGMFYxs0
『世話の焼ける』
.
- 243 名前:名も無きAAのようです :2015/03/29(日) 23:44:43 ID:aKGMFYxs0
- カメラのフラッシュのように、フロアが一瞬、強烈な白い光に包まれる
【+ 】;ゞ゚)そ「ッ!?」
目を覆ったオサムは最初、ドクオが尻から放つ『いたちの最後っ屁』かと思った
しかし、光に伴う強烈な破裂音はせず、代わりに金属音のような甲高い音が聞こえた
続けて、重たい衝撃音
(//‰ )「」
【+ 】;ゞ゚)「ばっ…!?」
二人を抑えていた横堀、槍を持った横堀が一体残らず吹き飛ばされていた
【+ 】;ゞ゚)「何が…ハッ!!」
ドクオ達の真上の天井に、異変が起きていた
ガラスの一部分が焼け溶けていたのだ
【+ 】;ゞ゚)「まさかッ…」
( A )「」
( ω )「」
勝利の女神とは違う、シンプルな『拳』の形をした『紋章』が
二人の背中に刻まれていた
- 244 名前:名も無きAAのようです :2015/03/29(日) 23:45:42 ID:aKGMFYxs0
- ―――――
―――
―
( ^ω^)「…」
白い空間だった
( ^ω^)「どこ、ここ」
ブーンは記憶を整理する
オーカに乗り込み、つーと戦い、横堀を倒し、そして捕らえられ―――――
( ^ω^)「で、なんか白い所」
上から下まで、真っ白な
現実離れした空間に立っていた
( ^ω^)「あー、これ死んだのか。俺死んだのか」
半ば諦めに近い納得をし、ふと隣を見る
(;'A゚)「…」
( ^ω^)そ「うわぁお前いたの?」
凄まじく複雑な表情をしたドクオが、汗をボタボタと流していた
(;'A゚)「あ…ある…」
( ^ω^)「え?何が?」
(;'A゚)「『俺はここに来たことがある』」
( ^ω^)「は?」
(;'A゚)「来る……あいつが来る!!!!!」
- 245 名前:名も無きAAのようです :2015/03/29(日) 23:46:56 ID:aKGMFYxs0
- 「ヘイ、そこのムキムキ☆ボーイズ」
後ろから男の声がして、二人は同時に振り返った
- 247 名前:名も無きAAのようです :2015/03/29(日) 23:53:50 ID:aKGMFYxs0
- (;'A゚)「…」
( ^ω^)「…」
(´・_ゝ・`)「ふん」ムッキィ…
( ^ω^)「何あれ」
(;'A゚)「神だよ…」
(´^_ゝ^`)「待たせちゃって、ごめんね?」デミッ☆
( ^ω^)「ま…」
「まど神様…?」
.
- 255 名前:名も無きAAのようです :2015/03/31(火) 23:07:28 ID:ewMHG8v20
- (´・_ゝ・`)「いやーいやー久しぶり。元気してたドックン?」ベタベタ
(;'A`)「うわっ、キモいから触るんじゃねえ」
(;´・_ゝ・`)「ええ〜…それが恩神に対する態度〜?」
( ^ω^)「おい詳しく説明しろよ何だよこの状況。こええよ」
(´・_ゝ・`)「あれ?わかんない?」
( ^ω^)「なんでわかると思えるんだよ悪夢にしてもタチ悪いわ」
(´^_ゝ^`)「何?勃ちが悪い?若いのに難儀なことだね。僕が治療してあげようか?」
( ^ω^)「それ以上近づいたら武器人間のセルゲイと同じ目に遭わすぞ」
(;´^_ゝ^`)「頭蓋骨切断して脳に直接電極ブッ刺して電流流す気かよぉ〜…高校生の発想じゃねえ〜…」
('A`)「ブーン、このキモいハゲのオッサンがマッスルの神様だ。神様を自称する何かだ。俺が長いこと寝てるときに誠に遺憾ながら世話になっちまったオッサンだ」
(;´^_ゝ^`)「言い直してんじゃねえ〜…マッスルの神だっつってんだろうが」
( ^ω^)「マジかよ信じがたいわ…こんなのが…」
(;´^_ゝ^`)「いい加減にしろよ僕なんかした?」
( ^ω^)「大丈夫?後ろの穴とか」
('A`)「わからん…もしかしたら無意識下でなんかされてるかも…」
(;´^_ゝ^`)「なんもしてねえよされたくなかったらちょっと黙って話聞けよ」
(;'A`)「聞いた今の…?こんないたいけな男子高校生にナニかするつもりらしいぜ…?」
(;^ω^)「怖っ……これだからハゲは……シネ…」
(;´^_ゝ^`)「ハゲは関係な…おい今死ねっつった?」
- 256 名前:名も無きAAのようです :2015/03/31(火) 23:08:52 ID:ewMHG8v20
- (´・_ゝ・`)「さて、始めましてだね内藤ホライゾンくん。ここは『9秒前の白』と言う空間だ」
( ^ω^)「ローゼンじゃねえか…」
('A`)「俺も最初そう言ったなぁ…オッサン、あんた神ってんなら今の状況がどうなってんのかわかってるよな?」
(´・_ゝ・`)「モロチンだ。勝利の女神ちゃんが世話になったね」
('A`)「現実世界での最後の記憶が正しければ、俺は神頼みをした。『勝機を呼び込め』と」
('A`)「…アンタが、『勝機』で間違いないか?」
(´・_ゝ・`)「…」
マッスルの神は、何もない空間に腰掛ける
指を鳴らすと、二人の目の前に『お守り』が現れた
(´・_ゝ・`)「『条件が整っていた』」
( ^ω^)「条件?」
(´・_ゝ・`)「神を降ろす条件がね。『赤い月の光』は、神の通り道。そして桜は目的地までの道標」
(´・_ゝ・`)「あの神主はほんといい仕事したよ…お守りの中には例の桜の『枝』が入っていた」
('A`)「そんなモンが……いや、だが生贄が必要じゃないのか?」
(´・_ゝ・`)「ぶっちゃけ天界でも緊急事態だったからね。半分ごり押しで君達の意識下へと降りてきた」
(´・_ゝ・`)「彼女は向こうでも最高クラスの力を持つ神だ。悪意のある人間の手には決して渡ってはいけない代物」
( ^ω^)「…どうすんだお。いや、『どうしてくれるんだお』?」
(´・_ゝ・`)「僕の力を一部、君達に『貸す』」
- 257 名前:名も無きAAのようです :2015/03/31(火) 23:09:52 ID:ewMHG8v20
- (;'A`)「力を、貸すだと?」
(´・_ゝ・`)「ああ、彼女の力に比べれば微々たる物だが、それでも絶望を打ち払うには充分だ」
(´・_ゝ・`)「『神』になれ。欝田ドクオ、内藤ホライゾン」
('A`)「…」
( ^ω^)「…」
二人は顔を見合わせ、マッスルの神に向き直り
拳を、突き出した
('A`)「救えるなら」
( ^ω^)「戦えるなら」
(´・_ゝ・`)「それでこそ、漢だ!!」
- 258 名前:名も無きAAのようです :2015/03/31(火) 23:11:01 ID:ewMHG8v20
- (´・_ゝ・`)「それじゃあ、僕の体を両端から力いっぱい引っ張れ!!」
('A`)「おう!!」
( ^ω^)「痛くすんなよ!!」
ドクオは右から、ブーンは左から
マッスルの神の腕を引っ張った
(´・_ゝ・`)「最後にいくつか忠告だ!!一つ、力を過信するな!!二つ、敵の戦力は今だ甚大だ!!そして最後に…」
(´・_ゝ・`)「『勝ち方は一つじゃない』!!頭に叩き込んどけ!!」
('A`)「わかった!!」
( ^ω^)「つーかこれ引っ張る意味って何!?」
(´・_ゝ・`)「そんなこと、決まってるじゃないか!!おほっ♥キタキタキタァ!!」
マッスルの神の肉体が輝き始める
その輝きは体の正中線から二分され、左右のドクオとブーンへと流れ込んでいく
(;´^_ゝ^`)「やめて!!ほむらちゃん!!私が…私が…」
:(*´^_ゝ^`):「裂けちゃうううううううううううううううううううううううう!!!!!!!」ビクンビクン
(;'A`)「お…」
「お前それ言いたかっただけ――――」
二人の視界が、白い光に染まっていった
- 285 名前:名も無きAAのようです :2015/05/11(月) 23:16:35 ID:0CFLopzw0
- ―――――
―――
―
横堀の群れは、最上階から一階まで及んでいた
从;゚∀从「…」
トラックから這い出たハイン達を取り囲む赤い光は全て、機械人形達の視線
内からでは気がつかないが、その光はオーカの全ての窓から見えていた
_、_
(;,_ノ` )「チッ…ヘビーじゃねえかこの状況」
八方を取り囲む敵を前に、渋沢は新しいタバコに火を着けた
从;゚∀从「詰んでるんじゃね…」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「どうかな…だが、俺ァ嫌いじゃねえ。こういうピンチはな」
(;3∀3)つ-@-@「メガネあった!!!!!」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「良かったなボウズ、さて…」
指の骨をバキリと鳴らす
敵の大軍を前に、渋沢は不敵に笑った
_、_
( ,_ノ` )y━・~「『ダーティ・ダディ』と呼ばれた俺だ…やっぱバックアップより前線がお似合いだぜ…」
- 286 名前:名も無きAAのようです :2015/05/11(月) 23:17:40 ID:0CFLopzw0
- 从;゚∀从「戦る気かよ…」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「こんなお膳立てされて燃えねえ漢はいねえってもんよ」
从;-∀从「ハァ…」
ハインは右拳を左手にバチンと合わせた
_、_
( ,_ノ` )y━・~「おいおい、お嬢ちゃんが出るまでも」
从 ゚∀从「るせえ、馬鹿二人が命削って戦ってんだ。俺だって」
(;-@∀@)「ぼ、僕も!!お、お、男だ!!」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「フ…いいねえ、いいぜ。その若さ」
三人に続き、他の隊員たちも立ち上がり各々気合を入れる
_、_
( ,_ノ` )y━・~「それじゃあ、一丁暴れて…」
煙を大きく吸い込み、まだ半分以上残っているタバコを指で弾く
赤く火が着いた葉が床を舞い、渋沢はそれを踏み消した
_、_
( ,_ノ` )「や―――」
渋沢の言葉は、上階からの轟音に遮られた
- 287 名前:名も無きAAのようです :2015/05/11(月) 23:18:25 ID:0CFLopzw0
- 从;゚∀从「うおっ!?」
同時に建物自体がぐらりと揺れる
その場にいたほとんどの人が片膝を着き、アサピーは尻餅をついた
(;-@∀@)「いたた…何なの!?」
从;゚∀从「俺が聞きてえよ!!」
その異変は、機械人形にも変化をもたらした
赤い瞳が全て上階へと向けられる
_、_
(;,_ノ` )「ッ…!!」
渋沢は身構えたが、一体として見向きもせず
蜘蛛が這うかのように上へと移動を始めた
从;゚∀从「どうなってんだおい…」
_、_
(;,_ノ` )「上ってこたぁ……まさか!!」
Ω「隊長!!」
横転したトラックの中から、無線を持った隊員が這い出てくる
_、_
(;,_ノ` )「どうした!?」
Ω「入電です!!通信は生きてました!!」
_、_
(;,_ノ` )「誰からだ!!」
Ω「それが…今ここに居るはずの無い…」
Ω「『鉄狸』及び『狂猿』から!!間も無く航空支援を行うと!!」
_、_
(;,_ノ` )「なん…だと!?」
- 288 名前:名も無きAAのようです :2015/05/11(月) 23:19:50 ID:0CFLopzw0
VIP市内の上空では
羽音を響かせ、『AH-1 コブラ』がオーカへと駈けていた
( "ゞ)「やれやれ、一仕事終えて落ち着く暇もありゃしない」
操縦桿を握るのは、『狂猿』のデルタ
从´ヮ`从ト「組織に巣食う蛇を駆除したかと思ったら…まさか地元にダニが住み着いてるとはね〜」
後部座席でバレットM82のコッキングレバーを引き、弾丸を装填したのは『鉄狸』のたぬ
( "ゞ)「しかもまた息子が巻き込まれてると来た。彼はトラブルに愛されてるね」
从´ヮ`从ト「あら〜?愛されてるのはトラブルだけじゃあ無くってよ〜?」
从´ヮ`从ト「愛する我が子を危険に巻き込んだ代償ってのを、きっちり受けてもらおうじゃない〜」
( "ゞ)「フ…では、急ごうか。先ほどの閃光も気になるしね」
ドクオが知らない、最強の両親がもうすぐ到着しようとしていた
.
- 293 名前:名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:20:01 ID:uRKwg8jY0
- 一方、ダーティ・マム率いる突入班サイドも
J( 'ー`)し「退いた…?」
横堀が撤退するという異変に見舞われていた
(;・∀・)「も、もしかして、ドクオくん達が勝ったんじゃ…」
<゚Д゚=;>「違う…ぐぬっ…」
モララーの期待は、すぐさま否定される
義虎は隊員が差し出した手を借りず、PC機材に背もたれながら立ち上がる
<゚Д゚=;>「横堀は…危険度が高い障害を優先的に排除するシステムが組み込まれている…見ろ」
キーボードを数回叩くと、ディスプレイに監視カメラの映像が映し出される
何百体もの横堀が、黒いうねりを作り出しながら上階へと向っていた
ノハ;゚听)「こ…これ全部…?」
<゚Д゚=;>「ゾッとするだろ…このロボット共を兵士として、稲荷は世界に戦争を仕掛けようと計画していた…」
<゚Д゚=;>「既に察しているとは思うが、今回の作戦は奴らにとって横堀の性能を試す演習に過ぎない…誤算があるとすれば」
<゚Д゚=;>「我々の戦力が余りにも少なすぎたことと、『予想外の人物』が乱入した事だろう…」
- 294 名前:名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:20:56 ID:uRKwg8jY0
- ( ・∀・)「ドクオくん達…ですね」
<゚Д゚=;>「ああ……クソ、ダメだな。最上階のカメラは機能していない」
横堀の集団が目指してるであろう最上階の映像は、ノイズが掛かっていて確認することが出来ない
<゚Д゚=;>「だがこの隙は僥倖だ…ここから横堀の指令ネットワークをジャミング…ぐっ…!!」
(;^ν^)「大丈夫ですか!?」
膝から崩れ落ちた義虎を隊員が支える
口の端から血が流れ出て、キーボードを濡らした
(;^ν^)「無理ですよ!!今すぐ脱出しないと、命にかかわりますよ!!」
<゚Д゚=;>「構うか…!!」
震える拳を机に押し付け、齧り付くように再び立ち上がる
<゚Д゚=;>「勇敢な一般人を傷つけた俺が…この程度で退却できるか…!!」
(;・∀・)「っ…」
ノハ;゚听)「…」
- 295 名前:名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:21:37 ID:uRKwg8jY0
- J( 'ー`)し「…ニュッ、アンタはここで『ヒール・フール』と共にネットワークにハッキングを仕掛けな」
(;^ν^)「カーチャンさん!!」
J( 'ー`)し「男が覚悟決めたんだ、首に縄括ろうとも無駄さ。だろう?」
<゚Д゚=;>「ええ、そうですとも」
J( 'ー`)し「フフン。さぁ、行くよガキ共」
(;・∀・)「い、行くって、どこへ?」
ノハ;゚听)「まさか…」
J( 'ー`)し「決まってんだろう」
カーチャンはショットガンを上へと向け、楽しそうに笑う
J( 'ー`)し「上で何が起こってるのか、見学といこうじゃないか」
- 296 名前:名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:22:35 ID:uRKwg8jY0
- ―――――
―――
―
最初の、一呼吸で
新鮮な空気と共に、『魂』が身に舞い戻る力強い感覚を掴む
二呼吸目で
焼けたように熱い背中から、液体とも、気体とも言えない『エネルギー』が、体を巡り始めた
体の上に、重さは感じられない
立ち上がろうと、床に手を着いた
瞬間、耳に届いたのは粉砕音
目を横にやると、ただ着いただけの掌の下で、小さなクレーターが出来ていた
続いて、目線を前にやる
【+ 】;ゞ゚)
爪;'ー゚)
驚きで目を見開く、黒幕達と
(//‰ ゚)
フロアを覆いつくすほど大量に集った機械人形の赤い視線
川; - )
今だ苦悶の表情を浮かべている、勝利の女神
- 297 名前:名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:23:41 ID:uRKwg8jY0
- 【+ 】;ゞ゚)「横堀ッ!!今すぐ始末するんだァァァーーーーーーーーッ!!!!!」
命令と共に、先ほどの数倍の量の横堀が飛び掛る
今度は押さえ込む為ではなく、確実に『生贄』とする為に
クレーターを作った掌を握り締める
鋼鉄の拳の雨は、すぐそこまで迫っていた
( A )「邪」
( ω )「魔」
二人はそれを
(#'A゚)(#^ω゚ )「だオラァッ!!!!!」
拳の一振りで、まとめて振り払った
- 298 名前:名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:24:48 ID:uRKwg8jY0
- (//‰ )「!!」
まともに当たった横堀は、パーツをばら撒きながら砕け散る
その余波を喰らったものも、周りを巻き込みながら窓ガラスをブチ破り外へと投げ出された
【+ 】;ゞ゚)「あ…」
その圧倒的な力に、開いた口が塞がらなくなる
一撃、たったの一撃で、形勢が逆転した
('A`)「…」
( ^ω^)「…」
立ち上がった二人は、顔を見合わせ
そして辺りをもう一度見返す
(//‰ ゚)
横堀の大群は、数を増やす一方だ
様子を見るかのように、二人を取り囲む
('A`)「……クッ」
( ^ω^)「……フハッ」
二人は笑い、大きく息を吸い込んだ
- 299 名前:名も無きAAのようです :2015/05/23(土) 23:27:11 ID:uRKwg8jY0
(#'A゚)
か か っ て こ い ! !
(#^ω゚ )
♪ANTHEM - BLAST
- 455 名前:名も無きAAのようです :2015/10/24(土) 01:26:55 ID:0BlU/LWI0
- 全方位から横堀が一斉に二人に襲い掛かる
(#'A`)「ブーンッ!!」
(#^ω^)「任せとけッ!!」
ブーンは上半身を大きく捻る
ドクオは身を屈め、クラウチングスタートの姿勢を取った
(#^ω^)「ホライゾンッ…」
両腕を広げ、唸りを上げながら回転する
(#^ω^)「ダブルラリアットォッ!!!!」
周囲の横堀をまとめてなぎ払うそれは、さながら竜巻の如し
人工皮膚の下にあるカラクリ仕掛けの内臓が、雨のように降る中
(#'A`)「疾風…ッ」
(#'A`)「怒涛ッ!!」ド ォ ン ! !
砲撃のような尻の音を上げ、筋肉の塊が勢いよく飛び出し
(#'A`)「ドォルァッ!!」
突き出した手刀で、前方の横堀三体の頭をまとめて貫いた
- 456 名前:名も無きAAのようです :2015/10/24(土) 01:27:58 ID:0BlU/LWI0
- 【+ 】;ゞ゚)「クソッ!!一体作るのに幾らすると思っているッ!!」
オサムはタブレットを激しくタップし、命令を送る
階下からは際限無く横堀が湧き出てくる。しかし
(#^ω^)「だおら!!」
(#'A`)「ルオオッ!!」
まるで紙人形のように、次々と粉砕されていく
【+ 】;ゞ゚)「チィッ!!」
爪'ー`)「……」
悪戦苦闘するオサムの肩に、稲荷の手が置かれる
【+ 】;ゞ゚)「何ですか!!」
『それどころではない』と言いたげに、オサムはタブレットから目を離さず乱暴に答えた
稲荷はオサムの耳に口元を近づけ、そして
爪'ー`)「良いぞ、そのまま続けさせろ」
と、囁いた
【+ 】;ゞ゚)「はっ…?」
耳を疑う言葉に、タブレットを叩く指が止まる
正気を疑い、稲荷の顔を見返す
先ほどまでの憤怒は消え、いつもの不敵な表情へと戻っていた
- 458 名前:名も無きAAのようです :2015/10/24(土) 01:30:30 ID:0BlU/LWI0
- 爪'ー`)「そのまま奴らを遊ばせていろ……いいな?」
【+ 】;ゞ゚)「し、しかし、生贄が無くては計画が…ッ!?」
オサムはそこで、稲荷の意図を理解した
この場に置いてもう一人、『予備』がいる
タブレットのアプリケーションを監視カメラ映像を映し出すものへと変更する
【+ 】;ゞ゚)「ハ、ハハ…」
横堀の波の中で一人、傷だらけの体を引き摺り昇ってくる男が一人
その表情はハッキリと伺えず、どういった意図で向ってくるのかは知る由も無いが
爪'ー`)「やはり彼を呼んで正解だったようだな」
『生贄』の思惑など、稲荷にとってはどうでも良いことであった
【+ 】;ゞ゚)(だが…!!)
それでも、オサムの焦りは無くならない
徒手空拳で横堀を破壊された時は『自信』を砕かれた
だが、『数』さえ揃えてしまえば、相手が『人間』であるならば抑えこむ事が出来るという『制圧力』は残っていた
しかし現在、目の前ではその力も、四肢をもがれて動かなくなる機械人形と同じように意味を成さなくなりつつある
【+ 】;ゞ゚)(クソ…あれだけコストと技術を詰め込んで、できる事が『時間稼ぎ』とはな…)
だが同時に、湧き上がる『高揚感』があった
あらゆる人間のデータ、能力を詰め込んだ最高傑作『横堀』だが、それはあくまで『人間』の枠を越えていないものであった
しかし今、『人間を越えた二人』が、拳と共に新たな情報を横堀に叩き込んでいる
そのパワーやスピードは、横堀を統合化するデータベースへと送り込まれ、更なる改良へと繋がるのだ
- 459 名前:名も無きAAのようです :2015/10/24(土) 01:31:43 ID:0BlU/LWI0
- (# ゚ω゚ )「おおおおおおおおおおお!!!!!!!」
ブーンが横堀の胸部に出来た亀裂に両手を突っ込み、縦に引き裂くと
(#'A゚)「ルアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」バァン!!
ドクオは尻の爆発を利用し飛び上がり、膝蹴りで頭を飛ばす
(#^ω^)「切りがねえお!!」
(#'A`)「ったくだ!!」
互いの背後に迫っていた横堀を、二人同時に肘で迎撃
怯んだ隙をつき、頭を掴んで叩き合せる
二人の掌に挟まれ拉げた二体の横堀は、派手に音を立て崩れ落ちた
【+ 】;ゞ゚)「クソッ…もっと多くの横堀をッ…!!」
新たに指示を送ろうと、タブレットをタップした瞬間
けたたましく鳴り響く警戒音と共に、『ALERT』の文字が表示される
【+ 】;ゞ゚)「ッ!?」
オサムの視界の端で、一つの大きな影が動いた
横堀の戦闘音、破壊音に紛れ、聞こえてくるのは『羽音』
病院から脱出する時に聞いたその音の正体は
建物の周りをぐるりと旋回する、『AH-1 コブラ』だった
- 460 名前:名も無きAAのようです :2015/10/24(土) 01:33:17 ID:0BlU/LWI0
- 「さぁて」
そのコクピット後部から、対物ライフルのロングバレルが顔を覗かせると
从´ヮ`从ト「ショーターイム♪」
穏やかで楽しそうな声を掻き消す銃声と共に、12.7mm弾が発射された
- 469 名前:名も無きAAのようです :2015/10/31(土) 00:45:26 ID:KTp6/fkc0
- 一つ、二つ、三つ
弾丸は性格に横堀の頭を破裂させる
【+ 】;ゞ゚)「ここに来て新手かッ!?」
『重火器の脅威』を認知した横堀達は、勝利の女神と二人を中心にすぐさま『ドーム』を組んだ
対物ライフルの銃弾なら、急所に当たらない限り数発は耐えることが出来る
例え破壊されても、そのまま防護壁として活用できる
横堀は無類の機動力と胆力を誇るが、その性能を引き出すために余計な武装などは一切排除していた
中、遠距離の攻撃手段は、海外からの輸入と自社製造による火器に頼られるが、配備には到っていない
爪'ー`)y‐「焼け石に水だな……」
新たな脅威を前にしても、稲荷の余裕は崩れない
爪'ー`)y‐「槍を」
(//‰ ゚)「…」
槍を持つ横堀は、その切っ先を
川; - )
『彼女』へと向けた
紋章は、淡く青白い光を纏っていた
- 471 名前:名も無きAAのようです :2015/10/31(土) 00:47:20 ID:KTp6/fkc0
- 从´ヮ`从ト「じれったいわね〜」
本来ならば、コブラに搭載されている機銃で掃射すべきなのだが
万が一、その場で戦う息子達や囚われているクールに流れ弾が当たってはいけない
『鉄狸』は新しいマガジンを装填し、標的をドクオ達に群がる横堀に定めた
从´ヮ`从ト「……?」
スコープの向こう側、敵とドクオ達より更に奥に、鉄狸の視線は一つの人影を捉えた
横堀の大群が素通りしていく中で、その人影はゆっくりと、と言うより
覚束ない足取りで、『ドーム』へと足を進めて行く
从;´ヮ`从ト「あら、あらら…?」
( "ゞ)「なんだ、どうし……」
操縦席の『狂猿』も、遅れてその姿を目にする
(;"ゞ)「待て……やめろ!!止まるんだ!!!」
(;"ゞ)「ニダーくん!!!!!」
<ヽ ∀ >
- 472 名前:名も無きAAのようです :2015/10/31(土) 00:53:00 ID:KTp6/fkc0
- 既に、ニダーにはハッキリとした意識は残っていなかった
稲荷の事や、大群となって最上階へと集まる横堀や、それを蹴散らすドクオとブーン
目の前で行われている壮絶な戦いは
<ヽ ∀ >
まるで、人ごみの雑踏のように感じられた
頭の中ではこの数日間、自らに放たれた声が、想いが、延々とループする
「あなたの目的は『素直クール』の奪還で、それ以外は些細な事に過ぎない。そうでしょう?」
「彼女を守るのがお前の役目だろうが!!」
「本当にドクオさん達の事をどうでも良く想っているのなら、そんな言葉は出ない!!愛を、『醜い』などと言うはずが無い!!」
「もう一度立ち上がって、テメーの『漢』を通せニダー」
<ヽ ∀ >
『彼女』を見失い、我を忘れ、敵に翻弄され、友に拳を向けた
そんな浮き足立っていた自分を、『彼女の姿をした別人』が、間違っていると諭し
誤った道を愚直に突き進もうとした自分を、『誰よりも強い友』が、力尽くで引き止めた
そして今一度、自分自身の『漢』とは何かを思い出した
- 473 名前:名も無きAAのようです :2015/10/31(土) 00:54:17 ID:KTp6/fkc0
- <ヽ ∀ >(そうだ、自分は……)
川 ゚ -゚)
<ヽ ∀ >(あの強く、冷たく、それでいて優しい彼女の……)
川 ゚ー゚)
<ヽ ∀ >(『雨傘』に、なりたかったんだ……)
彼女に降りかかる危険や、煩わしさを、自らが引き受ける『傘』に
例えそれで壊れてしまっても、消耗品でも構わない
ただ、『素直クール』を守れるだけで、自分の『漢』は意味を為せる
ニダーには、稲荷の事や、大群となって最上階へと集まる横堀や、それを蹴散らすドクオとブーン達の戦いが、雑踏にしか感じなかった
彼の目線はただ、『槍の先を向けられている素直クール』だけを見つめていた
棒のような足に、力が漲った
ボロボロになった『傘』は、最後の仕事を成す為に飛び出した
- 474 名前:名も無きAAのようです :2015/10/31(土) 00:56:15 ID:KTp6/fkc0
- (;'A゚)「■■■■■―――――――!!!!!!」
(;^ω゚ )「■■■■――――――!!!!!!」
何も聞こえなかった
(//‰ ゚)
何も見えなかった
ニダーの意識は、ただ『守らねば』という想いにのみ支配されていた
川; - )
鋭く尖った槍が、ゆっくりと動き出す
彼女の体を貫こうと――――――
<ヽ ∀ >「アアア……」
体の奥底から、雄たけびが湧き上がる
<ヽ#`∀´>「ニダアアアアアアアアア ア ア ア ア ア ア ! ! ! ! ! ! ! ! !」
大きく踏み込み、クールを抱きかかえるように間に入った瞬間
爪'ー`)y‐「勝った」
- 475 名前:名も無きAAのようです :2015/10/31(土) 00:58:00 ID:KTp6/fkc0
冷たい鉄が、背中の皮膚と筋肉を突き破り、心臓を貫いた
.
- 476 名前:名も無きAAのようです :2015/10/31(土) 00:59:06 ID:KTp6/fkc0
- <ヽ`∀´>「」
川; -゚)「ニ……さ…」
<ヽ`∀´>「ごめん」
<ヽ ∀ >∴ ゴプッ
- 481 名前:名も無きAAのようです :2015/11/08(日) 00:43:26 ID:6zNWWD1k0
- 血飛沫が、紋章へと降りかかり、体の内部へと吸い込まれていく
川 - )「ア……」
体に纏う青白い光が
川 Д )「ア゙ ア゙ ア゙ ア゙ ア゙ ア゙ ア゙ ア゙ ア゙ ア゙ ア゙ ア゙ ア゙ ア゙ ア゙ ア゙ ア゙ ア゙ ア゙ ! ! ! ! ! ! !」
金切り声と共に、上昇気流と轟音を巻き上げ天へと昇る
赤い膜を張っていた天井は衝撃波で割れ、ガラスの雨が降り注いだ
- 483 名前:名も無きAAのようです :2015/11/08(日) 00:44:56 ID:6zNWWD1k0
- ヘリからその光を見た、欝田夫妻は
(;"ゞ)「……」
到着の遅れと
:从 ヮ 从ト:「……」
息子の親友を止める為の『引き金』を引けなかった事を悔やみ
階下から上を見上げていたバックアップ隊は
_、_
(;,_ノ` )「……ありゃあ」
从;゚∀从「っ…行くぞ!!アサピー!!」
(;-@∀@)「うん!!」
_、_
(;,_ノ` )「おい待て!!突っ走るんじゃあ…ああクソ、行くぞお前ら!!」
その光の正体を確かめに
- 484 名前:名も無きAAのようです :2015/11/08(日) 00:46:25 ID:6zNWWD1k0
- 轟音と衝撃を、建物内部で受けた突入隊も
J( 'ー`)し「…友達の仕業かい?」
(;・∀・)「いえ、二人ともバケモノですけど、こんな大それた……」
ノハ;゚听)「あの、これ!!血痕が!!」
J( 'ー`)し「上に続いてるね…行くかい?」
(;・∀・)「もっ、もちろん!!」
ノハ;゚听)「早くっ!!」
同じく、最上階で何が起こっているかを見極めに
モニターで映像を見ていたコンピュータールームでは
(;^ν^)「間に合わ……ッ!!」
<゚Д゚=;>「まだだッ!!ハッキングは完了した!!横堀の攻勢対象を『稲荷』へと切り替える!!」
兵力を乗っ取り、機械人形に首謀者を排除させる命令を下した
- 485 名前:名も無きAAのようです :2015/11/08(日) 00:47:38 ID:6zNWWD1k0
- 【+ 】;ゞ゚)「……」
機械人形の主は、目前の現象に気を取られ、タブレットのアラートにも
別組織に乗っ取られた駒にも気付かなかった
(//‰ )
乗っ取られた駒は、文字通り『目の色』を変え、一斉に『稲荷』の方向へと向く
爪'ー`)「ハハ、ハハハハハ!!!!」
戦況の変化に目もくれず、稲荷はニダーに突き刺さる槍を握った
- 486 名前:名も無きAAのようです :2015/11/08(日) 00:49:59 ID:6zNWWD1k0
- (゚A゚)「」
二人には、光も
( ゚ω゚ )「」
音も、周りの行動も
何も頭に入ってこなかった
<ヽ ∀ >
槍に貫かれ、崩れ落ちる友の姿だけが
(#゚A゚)「」
(; ゚ω゚ )「」
誰よりも純粋に、素直クールを救いたかった漢の姿だけが――――
.
- 487 名前:名も無きAAのようです :2015/11/08(日) 00:51:20 ID:6zNWWD1k0
- (#゚A゚)「稲荷いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!!」
勝利の女神―――素直クールを救うという目的は黒く塗りつぶされた
ただ『殺す』、友を殺した男を殺す。守る為に培った力を、殺す為に振るう
『疾風怒濤』により、尻から放たれた真っ直ぐな光が、『光線』が、後方にいた横堀達をまとめて貫く
だが、最早ドクオにとって後ろや、周りのことなど些事にもならなかった
ただ、目の前にいる『仇』に拳を叩き込み、叩き込み、叩き込み、跡形も無くなるまで殴り続けなければならないという、殺意にのみ支配されていた
(#゚A゚)「ガ ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ッ ! ! ! ! ! !」
加速に、更に加速を加える
稲荷に到るまでの、僅かな距離で、最大の破壊力を出す為に
神が降りた体、筋肉に軋みが走るが、意に介さない
相殺覚悟の必殺の右拳を、稲荷の頭に向け放つ―――――
が
爪 ー )「『弱い』」
- 489 名前:名も無きAAのようです :2015/11/08(日) 00:54:00 ID:6zNWWD1k0
- その拳は、稲荷を包む『青白い殻』によって防がれた
(#゚A゚)「ッ!!!!」
拳骨が砕ける音が、ドクオと稲荷の耳に響く
腕の筋肉が縦に裂け、肘の骨が皮膚を突き破り飛び出した
今のドクオには、岩だろうと鉄骨だろうと破壊できる力がある
だが、その『殻』には、物質と言う枠を越えた『強度』を持ち備えていた
しかし、『殻が硬いから』と『右拳が砕けたから』という
(#゚A゚)「それが――――――」
(#゚A゚)「どうしたァッ!!!!!!!!!」
『それだけの理由』で、ドクオの勢いが止まるはずが無かった
殻が硬いなら砕くまで、右腕がダメなら左腕で
(#゚A゚)「ルオラアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!!」
二撃目を放つその直前
爪 ー )「喧しい」
稲荷が、指を鳴らした
- 490 名前:名も無きAAのようです :2015/11/08(日) 00:55:34 ID:6zNWWD1k0
- (; A )∴
青白い閃光と共に、体が八方に引きちぎれそうなほどの強い衝撃を受ける
先ほどまで怒りに満ちていたドクオの意識が、一瞬にして失神へと持っていかれるほどに
(; ゚ω゚ )「ドクオッ!!!!!!」
ドクオとは違い、ニダーの死亡を受け入れられず呆然としていたブーンは
吹き飛ばされたドクオの姿を見て我に返り、受け止めようと動く
(; ゚ω゚ )∴「ゴブッ!?」
抱えるようにドクオの体を受け止めたブーンだが、稲荷の放った閃光の余波まで止めきることが出来ず、体が宙に浮いた
そのまま次々と、横堀の群れを巻き込みながら後方へと飛ばされ、建物を支える支柱の一つに激突する
:(; ゚ω゚ ):「ガ……」
:(; A ):「オゴ……」
床に落ちた二人は、すぐに立ち上がることが出来ず蹲る
ブーンの献身により、ドクオは外に投げ出されずに済み、失神から覚めることが出来たが
傷ついた右腕の筋肉が弾け飛び、肘の間接部が皮一枚で繋がっている状態だった
ブーンは、ドクオほどの痛々しい重傷は無いものの、ダメージは深刻であった
ドクオと柱に挟まれたことにより、内臓を圧迫されたことに加え
胸骨、腰骨、背骨、頭蓋後頭部にそれぞれ皹が入った
- 491 名前:名も無きAAのようです :2015/11/08(日) 00:57:19 ID:6zNWWD1k0
- :(; A ):「フッ、フッ」
ドクオは浅く息を繰り返しながら、ボロボロの右腕を見た
肘から先の感覚は無く、裂けた傷口からは粉砕骨折した橈骨が顔を覗く
しかし、幸いなことに二人は現在『神』としての力が与えられていた
:(; A ):「フーッ、フーッ」
『マッスル・キュアー』を超える自己治癒力が働き、傷口が蒸気を上げて塞がっていく
その様子も、見ていて気持ちの良いものでは無い。それ以前に――――
:(; A ):(か……勝てねえ……)
稲荷の一撃に、先ほどまでの怒りも殺意も、呆気なく砕かれてしまった
代わりに塗り替えられたのは、強大な力に対する『恐怖』
爪'ー゚)「あ、あああ、ああああああ」
ニダーが『生贄』とされてしまった以上、『神を呼び込む』儀式は完遂されてしまったのだろう
『勝利の神』の力を取り込んだ稲荷の体は、徐々に若々しさを取り戻していく
ハッキングされた横堀が、今度は稲荷を脅威として認識し襲い掛かるが
殻に触れた途端、砂塵となって掻き消えていく
- 492 名前:名も無きAAのようです :2015/11/08(日) 00:59:29 ID:6zNWWD1k0
- (; A )(こんなもん……どうしろってんだ……)
全力の攻撃は届かず、指を鳴らされただけで満身創痍まで追い込まれる
機械人形を粉々にしていた自分の力が虫けらのように思えた
(;^ω )「ドクオ」
傍らのブーンが、ドクオの肩を掴んだ
(; A )「……」
ドクオはその声にすぐに応えられるほど回復しきれていなかった
それを察してか、ブーンは言葉を続ける
(;^ω )「やるしかねえお。勝てる勝てないじゃねえ、ここで俺らがやらねえと」
(;^ω )「他の連中まで、犠牲になっちまうお」
(;'A )「ッ!!」
今、この場所に来ている友の顔が脳裏に浮かぶ
皆、クールとニダーを救いたい一心で、二人に付き合ってくれた
(;'A )(そうだ……その通りだ!!ビビってる場合じゃねえ!!)
勝てなくとも、せめて
皆が逃げる時間くらいは稼げるはず
- 493 名前:名も無きAAのようです :2015/11/08(日) 01:00:51 ID:6zNWWD1k0
- (#'A )「ブーン……」
恐怖を、戦意で抑え込む
右腕は今だ痛々しいが、拳が握れる程度にまで回復した
(#'A`)「最後まで……付き合ってくれ」
( ^ω^)「勿論だ」
ブーンはドクオに肩を貸し、支えながら立ち上がった
(#'A`)「フーッ……フンッ!!」
『仕切りなおしだ』と言わんばかりに、高らかに尻を二回鳴らし
(#^ω^)「おおッ!!」
ブーンは拳を二度叩き合せる
(#'A`)「死ぬぞ、ブーン」
(#^ω^)「おうよ」
筋肉に、『決死の覚悟』という鎧を身に着け、悪意に満ちた『勝利の神』に向かい踏み出した
- 507 名前:名も無きAAのようです :2015/11/13(金) 00:30:04 ID:plPWM9Og0
- 爪゚ー゚)「フハッ!!フハハハハハ!!!!力が、力が漲る!!!!!!」
稲荷の姿は、最早二十代と言って差し支えない若々しさに変貌を遂げていた
皺だらけだった皮膚は張りと瑞々しさが蘇り、華奢だった体は逞しさを増す
爪゚ー゚)「これが『神』か!!今!!私は!!この時を以って!!」
爪゚ー゚)「『支配者』としての力を手に入れたッ!!!!」
『素直クール』の体から立ち上っていた光の柱は、狼煙のように細くなっていき
反比例するかのように、稲荷の体には青白い光が増す
川 - )「」
クール自身にも、燻るような淡い光が残ってはいるが、風前の灯のような儚いモノであった
爪゚ー゚)「この力があれば……ッ!!」
右手をなぎ払う
(//‰ )
青い閃光が横堀の上半身を一瞬にして溶かした
爪゚ー゚)「兵力など不要!!財も、詭弁も、大義ですらも!!この力の前では無意味!!!」
爪゚ー゚)「世ェ界よッ!!!!!跪くが良いッ!!!!この新たなる支配者!!!!」
- 508 名前:名も無きAAのようです :2015/11/13(金) 00:32:02 ID:plPWM9Og0
爪゚ー゚)「『勝利の神』、フォックスにッ!!!!!」
.
- 509 名前:名も無きAAのようです :2015/11/13(金) 00:32:55 ID:plPWM9Og0
- (#'A`)「ッッッルアアアアアアアアアアアア!!!!!」
(#^ω^)「おおおおおおおおおおおおおッッッ!!!!!」
二人の背中に刻まれた『拳の紋章』が、呼応するように一際輝きを放つ
爪゚ー゚)「んー?」
迫り来る二人の漢を前にして、フォックスはつまらなそうな視線を送る
放った拳は、案の定『殻』に防がれ、二人の腕を傷つけた
爪゚ー゚)「ハァー……近頃の若造は学習をしない」
稲荷は、撫でるようにドクオの頬を叩く
(;'A゚)「ギッッッ!!!!!」
それだけで、ドクオの首が千切れ飛びそうな衝撃に見舞われる
返す手で、ブーンの右腕を払いのければ
(; ゚ω゚ )「おおおおおおおおおお!!!!???」
肘が逆方向に折れ曲がり、内側からパクリと皮膚と肉が割れた
- 510 名前:名も無きAAのようです :2015/11/13(金) 00:35:00 ID:plPWM9Og0
- 爪゚ー゚)「貴様らはタダでは殺さん。散々コケにしてくれた礼を、その体にたっぷりと……」
その時、『殻』で小さな爆発が起こる
稲荷がその方向に目をやると、滞空していたヘリから、絶えずマズルフラッシュが光っているのが見えた
鉄板を容易く貫く弾丸が、殻に触れただけで頼りなく砕け散っていた
爪゚ー゚)「ふん……今となってはS.H.I.E.L.D.など蝿も同然よ」
羽虫を叩き潰すかのような気持で、稲荷は手をヘリに差し伸ばす
右手に青い光が徐々に溜まっていき、バチリと紫電が音を立てる
爪゚ー゚)「堕ち―――」
横堀をも溶かしたエネルギーを、ヘリへ向け撃ち放とうとした瞬間
(#゚A゚)「ラァッ!!!!」
(# ゚ω゚ )「だぁおッ!!!!」
またしても、二人による『無駄な抵抗』が始まった
爪#゚ー゚) イラ…
神となり、無限の力を手に入れ、悦に浸っていた稲荷に苛立ちがつのり始める
それは、気持ちの良い眠りを、蚊の羽音で妨げられたような『鬱陶しさ』によるものだった
- 511 名前:名も無きAAのようです :2015/11/13(金) 00:36:34 ID:plPWM9Og0
- (#'A゚)「さっさと逃げろォッ!!!!!」
ホバリング音や、自らの放つ打撃音に負けないくらい
この建物にいる、友人にも聞こえるくらいの、大きな叫び声を出す
爪#゚ー゚)「くだらん……」
爪#゚Д゚)「くだらんッッッ!!!!!」
この期に及んで
自らが、避けられぬ死を前にして
他者の為に、命を捧げる
爪#゚Д゚)「無駄だ!!無駄無駄!!無駄なことで――――」
その行為が、献身が、稲荷の苛立ちを燃え上がらせる
爪#゚Д゚)「私の邪魔をするんじゃあ無いッ!!!!」
エネルギーを放つことなく霧散させた稲荷は、怒りに従うまま二人の首を締め上げた
爪#゚Д゚)「お前らが時間を稼ごうと!!今更命乞いをしようと!!お前らの友人も家族も!!学校もこの街ですらも!!」
(;'A゚)「……ッ」
(; ω )「オッ……」
爪#゚Д゚)「殺す!!全て殺す!!一つの例外も無く、殺す!!」
爪#゚Д゚)「全ては貴様らの所為だ!!私をッ!!苛立たせた!!貴様らの行い全てのッ!!!!」
- 512 名前:名も無きAAのようです :2015/11/13(金) 00:37:57 ID:plPWM9Og0
- 爪#゚∀゚)「後悔して死ね!!怨まれて死ね!!蔑まれ死ね!!死ね死ね死ね死ね死ね……」
二人の首を掴む指が、徐々にその力を増していく
抵抗をするも、成す術は無い。決死の覚悟をしたからと言って、報われるとは限らない
『ああ、死ぬんだな』
稲荷の狂った笑いを、どこか遠くに感じながら、ドクオはぼんやりと思った
(; A )(これが……『無念』……か……)
稲荷を倒せなかったことでは無く、周りの人間に対しての謝罪の念だった
両親、友人、協力者
そして、愛する女性と
一緒に死ぬ相棒に
何より
(; A )(ニダー……悪い……)
最後まで自身の想いを通したニダーと
( A )(ごめんな……姉御……)
救うことが叶わなかった、クールに対して―――――
- 513 名前:名も無きAAのようです :2015/11/13(金) 00:38:42 ID:plPWM9Og0
.
- 514 名前:名も無きAAのようです :2015/11/13(金) 00:39:24 ID:plPWM9Og0
その場にいる三人は、気付いていなかった
.
- 515 名前:名も無きAAのようです :2015/11/13(金) 00:40:18 ID:plPWM9Og0
素直クールの紋章の中に、ニダーの血が吸い込まれ続けていることに
.
- 516 名前:名も無きAAのようです :2015/11/13(金) 00:41:48 ID:plPWM9Og0
- ―――――
―――
―
『ぴちょん』
顔に落ちた水滴で、目を覚ます
いや、覚ました筈なのだが、どうもここには灯りが無いようで
目を開こうが閉じようが、そこには闇しか広がっていなかった
だが、それにしては妙にくっきりと、自分の姿だけは見える
顔に付いた水滴を拭ってみると、それは血だった
懐かしい
血を見てそんな思いを抱くのは、やはり可笑しな話だろう
それと同時に、たまらなく愛おしく感じた
『ぴちょん、ぴちょん』
血の雫は、また一つ二つと降って来る
私を深い眠りから覚まそうとしているかのように、『ぴちょん』、また一つ
右手を、雫が落ちてくる上へと、伸ばした
『蜘蛛の糸』のように、赤い血が真っ直ぐ、その手へ落ちて来る
まるで、深く谷底に横たわる私を、救い上げるかのように
その血をぐっと握り締めた私は―――――
.
- 517 名前:名も無きAAのようです :2015/11/13(金) 00:44:15 ID:plPWM9Og0
- 最初に異変に気付いたのは、稲荷だった
爪#゚ー゚)「ッ!?」
前触れ無く大きな鼓動がしたかと思えば、体が後方へと『引っ張られた』のだ
(; A )「っゴハッ!!」
(; ω )「っっ!!」
手から離れた二人は、息を吹き返す
そして、彼らもまた異変に気がついた
『赤黒い光』が渦を巻いているのだ
爪;゚ー゚)「なん……だ、あれは……?」
強風に押し出されるような、強い引力を感じる
だが、足元の瓦礫や横堀の残骸を見ても、あれに引っ張られているようには見えない
ただ、『稲荷』だけが、その引力を受けていた
爪;゚ー゚)「ま……まさか……」
稲荷は自分の両手を見て思案する
神の力は確かに宿った。しかし、これは本当に『百パーセント』の力なのだろうか
もしも、もしも全て引き出せてないとしたら、残りの力はどこへ行ったのか
それが、『素直クール』の体に残っていたとしたら―――――
- 518 名前:名も無きAAのようです :2015/11/13(金) 00:48:36 ID:plPWM9Og0
♪Turmion Kätilöt- Rehtori
.
- 520 名前:名も無きAAのようです :2015/11/13(金) 00:49:54 ID:plPWM9Og0
- 「やれやれ、だ」
渦の中心に人影が映る
「私を救う程度のことに、これだけの手間を取るとはな……」
(;'A゚)「……」
(;^ω゚ )「……」
ドクオとブーンにとってそれは、とても懐かしい声だった
高圧的で、冷酷。だが、この世の何よりも頼れる女性の、力強い声
「だが、まぁ……信じてはいたぞ」
光の渦が、一気に払われる
そこには
- 521 名前:名も無きAAのようです :2015/11/13(金) 00:51:46 ID:plPWM9Og0
川 ゚ -゚)「私を呼び覚ますのは、お前達以外にないとな」
稲荷の光とは対照的な、赤黒い光を纏い
彼らにとっての『勝利の女神』が、いつものような毅然な態度で立ち上がっていた
- 527 名前:名も無きAAのようです :2015/11/15(日) 02:01:53 ID:GDQSN31o0
川 ゚ -゚)「……」
手に纏う赤いオーラを、ひらりと弄ぶ
体に刻まれた円の紋章の中では、ニダーの血が渦を巻いていた
爪;゚ー゚)「……」
口を開こうとした稲荷だが
川 ゚ -゚)「お前か?」
クールがそれを遮った
視線の先には
<ヽ ∀ >
ニダーの、変わり果てた姿
川 ゚ -゚)「お前か?」
クールはもう一度、稲荷へと問う
声色は無機質で、何の感情も込められていないように聞こえる
少なくとも、クールをよく知らぬ稲荷にとってはそう聞こえていた
(;'A`)
(;^ω^)
だが二人にとっては、バカをやってはクールに何度も諌められた二人にとっては
その声に孕む、無色な『怒気』が、身に突き刺さるように感じ取れた
- 528 名前:名も無きAAのようです :2015/11/15(日) 02:04:47 ID:GDQSN31o0
- (;'A`)「姉御、ニダーは……」
川 ゚ -゚)「お前か?」
ドクオを無視し、三度問いただす
爪;゚ー゚)「……だったら、なんだ?」
クールがどういう人間かは、勿論調査済みだ
冷静なように見えて、その実は激情家。友情を重んじる性格と
しかし、そのように聞いていた女が、ニダーの死を前にして
川 ゚ -゚)「……」
『眉一つ動かさない』
神に選ばれた女だ。只者である筈が無い
しかし、それでも、彼女はまだ子供だ。女子高生だ
爪;゚ー゚)「だったら……」
だからこそ、不気味だった
キリストの像や、仏の像に、『悔い改めよ』と無言の圧を掛けられている様であった
それを意識した瞬間、稲荷は憤怒した
爪#゚ー゚)「どうした小娘ェッ!!!!!」
何故、神である自分が圧されているのかと
- 530 名前:名も無きAAのようです :2015/11/15(日) 02:07:47 ID:GDQSN31o0
- 稲荷の周りに、無数の光の球体が浮かぶ
球体は粘土のようにぐにゃりと形を変え、『プロペラ機』へと変体する
爪#゚ー゚)「『神風』ッ!!」
エンジン音の如き唸りを上げて、特攻機がクールへ向い発射された
川 ゚ -゚)「……」
(;^ω^)「姉御!!」
クールは避けることも、防ぐこともしなかった
間も無く、プロペラ機はクールに到達、着弾
青白い爆炎が広がり、爆発音がフロアに響き渡る
窓ガラスは全て粉々に吹き飛び、横堀の残骸が溶けて消えた
爪#゚ー゚)「……」
爪#゚ー゚)「やはりか」
川 - )「……」
ドクオが受けた何倍ものエネルギーを受けたクールだが
数歩後方によろめき、肌を焦がす程度にダメージが納まっている
額からは、血が一筋流れ出て、顎を伝い床に痕を残す
爪#゚ー゚)「忌々しい。搾りカス如きが……私と同じ『世界』に立つか」
クールも『勝利の女神』の力を継承している証明となる
爪#゚ー゚)「だが!!」
しかし、稲荷は手ごたえを感じていた
攻撃を防ぐ『殻』が無い。それだけで大きなアドバンテージとなる
- 531 名前:名も無きAAのようです :2015/11/15(日) 02:10:25 ID:GDQSN31o0
- 爪#゚ー゚)「所詮カスはカスのようだ。そこにいる『お友達』と、さして変わりはない」
爪#゚ー゚)「そのまま眠っていればいいものを……いいや、貴様を責めはせん。取りこぼした私のミスだ」
川 ゚ -゚)「……」
爪#゚ー゚)「だが、このまま放っておくのも後味が悪い……半殺しにした後、貴様の中に残った神の力を……?」
稲荷は、目の前の風景に違和感を覚え言葉を詰まらせた
クールの足下にある
<ヽ ∀ >
ニダーの体が、『少しも動いていない』ことに
クールの傍に横たわりながら、爆炎の影響を受けていない。何故か
その疑問は、よく目を凝らすと解決した
『赤黒い殻』が、ニダーを守るように覆いかぶさっているのだ
爪;゚ー゚)「バカな……!!」
先ほどまでの優位性が、消えていくのを感じる
自分を守る為の盾を、死体に使うクールの心境が稲荷には理解出来なかった
- 532 名前:名も無きAAのようです :2015/11/15(日) 02:12:21 ID:GDQSN31o0
- クールは、その殻を見て始めて
川 ゚ー゚)「フッ……」
僅かに感情を見せ、そして
:川 ー ):「クッ……ククク……」
口元に手を添え、腹に腕を回し
川 ^∀^)「ハハハハハ!!!!ハハハハハハ!!!!」
これまで見せたことの無い、大きな笑い声を上げた
爪;゚ー゚)「何が可笑しい……ッ!!」
怒りと困惑を含んだ稲荷の怒鳴り声に、クールは目元に浮かんだ涙を指で拭いながら応える
川 ゚∀^)「ハー、ハー!!滑稽なのさ!!馬鹿馬鹿しいのさ!!」
川 ゚∀^)「私のジジイと肩を並べて、戦争を生き抜いた老人が!!」
川 ゚∀^)「殻に閉じこもって!!鼻くそみたいな攻撃を飛ばす!!」
:爪# ー ):「ッ……」
川 ゚∀^)「私の何倍も生きて!!喧嘩の仕方を知らないとは!!ハハッ、ハハハハハ!!」
川 ゚∀^)「可笑しくて可笑しくて、笑い死にしてしまいそうだ!!これが狙いなら、大したものだなご老体!!神より道化がお似合いだ!!」
- 533 名前:名も無きAAのようです :2015/11/15(日) 02:14:08 ID:GDQSN31o0
:爪#゚゚Д゚゚):「黙あああああああああああああああああああああれええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!」
.
- 534 名前:名も無きAAのようです :2015/11/15(日) 02:17:05 ID:GDQSN31o0
- 怒りのままに跳躍し、満月の夜空へと浮上する
プロペラ機の何倍もの光の球体が現れ、蠢き、形を変える
川 ゚∀゚)「ハー、ハー……おい、バカ二人」
ようやく笑い終えたクールは
稲荷を目で追いながら、ボロボロのドクオとブーンに声を掛けた
(;'A`)「おっ、おう!!」
(;^ω^)「なんだお!!」
川 ゚∀゚)「私が帰ってきた『程度』で、腹の虫が収まるか?」
(;'A`)「…」
(;^ω^)「…」
乱暴な口調だ。自信に満ちた横顔だ。悪魔のような笑みだ
この場において、これほど恐ろしく、これだけ頼れる女は他にいない
二人の心に、また火が燃え上がる
死に向う絶望戦ではなく
生き残り、再び日常を勝ち取るための希望の戦
風向きが、変ったのだ
('∀`)「んなわけッ!!」
( ^ω^)「ねえおッ!!」
二人もまた笑い、夜空を見上げた
川 ゚ー゚)「フフン、よろしい。それでは……」
- 535 名前:名も無きAAのようです :2015/11/15(日) 02:17:53 ID:GDQSN31o0
川 ゚ -゚)「取り戻そうか。何もかも」
♪BOOM BOOM SATELLITES ‐ KICK IT OUT
- 548 名前:>>1 :2015/11/16(月) 01:43:32 ID:WxA7Ty9U0
- 爪#゚゚Д゚゚)「『桜花』ッ!!!!」
スクリューを抜いた魚雷に、翼を付けた形状
特攻兵器を模したエネルギー体が、一斉に降り注ぐ
川 ゚ -゚)「悪趣味だな……」
そう呟き、クールは右手に赤いエネルギーを集中させる
現れたのは、500円玉大の『コイン』だった
それを、ピンと親指で弾く
回転をしながら舞い上がったコインは、真っ先に落ちてきた『桜花』に触れると
川 ゚ -゚)「広がれ」
波紋のように広がり、稲荷が放ったエネルギー体をまとめて吸収した
爪#゚゚Д゚゚)「猪口才なッ!!」
稲荷は構わず、断続的に『桜花』を放つ
赤い波紋は三人を守り続けているが、端の方から徐々にその色を失っていく
(;'A`)「姉御!!」
川 ゚ -゚)「慌てるな」
それも全て見越しているかのように、クールは余裕を見せた
川 ゚ -゚)「熱い相手は……」
再びコインを生成する。枚数は三枚に増えた
川 ゚ -゚)「『クール』に対処しないとな」
- 549 名前:>>1 :2015/11/16(月) 01:45:44 ID:WxA7Ty9U0
- その三枚を重ね、弾く
上へと昇る軌跡をカメラで写したかのように、三枚それぞれが順序良く宙を舞う
川 ゚ -゚)「1」
人差し指を立てる
一枚目が波紋に到達すると色を増し、青いエネルギー体を吸収せず『跳ね返した』
爪#゚゚Д゚゚)そ「ッ!?」
下へ放った筈の『桜花』が反射するのを見て、思わず稲荷は面食らう
殺す気で放った攻撃だ。当たれば死ぬことは無いにせよ、多少手こずることになる
エネルギーを『殻』へと回し、更に防御を磐石のモノにする
跳ね返った『桜花』の中に、『二枚目のコイン』が混ざっていることも知らずに
川 ゚ -゚)「2」
続けて中指を立てる
『桜花』に雑ざり上昇するコインが、閃光を放つ
その赤い火種が、青いエネルギー体を誘爆し、夜空に花のような絵を描いた
爪#゚゚Д゚゚)「ぐおっ!?」
『殻』に守られていながらも、爆発の衝撃と轟音は稲荷の体を大きく揺らす
大きな反撃に、稲荷は自分の咄嗟の判断が間違っていなかったことに安堵の息を漏らした
『勝利の神』となった自分を殺せるのは、同じ『勝利の神』である自分の力以外に無いのだ
- 550 名前:>>1 :2015/11/16(月) 01:47:28 ID:WxA7Ty9U0
- クールに残された力も、当然ながら同種のモノである
しかし、吸収した割合は自分の方が遥かに多いと確信していた
『勝利』対『勝利』。矛盾の生じるこの戦い
殺しあっているのだ。『ドロー』などといった安っぽい判定などありえない
なら、勝負を分かつのは当然『神としての力量』
その差は小細工如きでは覆せない
爪#゚゚Д゚゚)「相手が悪かったな……ッ!!」
今度は、跳ね返せないほどの攻撃を――――
両腕に意識を集中する
そして
爪#゚゚Д゚゚)
視界に、『三枚目のコイン』を捉えた
爪;゚゚Д゚゚)そ「ッ!?」
そのコインは、爆発することなく高く、高く舞い上がる
- 551 名前:>>1 :2015/11/16(月) 01:48:19 ID:WxA7Ty9U0
- 川 ー )「3」
ニヤリと笑い、薬指を立てた
コインは一瞬にして膨張。ある物に姿を変える
爪#;゚゚Д゚゚)「」
月光を遮る、巨大な『それ』は
川 ∀ )「『ロード』……」
稲荷に『回避』する暇も与えず
川 ゚∀゚)「『ローラーだッ!!』」
頭上へと落下した
- 552 名前:>>1 :2015/11/16(月) 01:50:09 ID:WxA7Ty9U0
- 爪#;゚゚Д゚゚)そ「うおおおおおおおおおおおお!!!!????」
轟と音を立て、鉄輪を模したエネルギーの塊が迫る
咄嗟に形の為していない球体を数発放つが、呆気なくかき消される
川 ゚ー゚)「ブッ潰れろ」
巨塊が、殻に接触する
二つのエネルギーが激しくぶつかり合い、紫色の火花を散らした
爪#;゚゚Д゚゚)(『重いッ!!』)
無敵を誇っていた、神のシェルターが軋みを上げた
回避も破壊も適わず、全神経を防御へと集中させることしか出来ない
ロードローラーは、形を削りながらも少しずつ、稲荷を地へと押し込んでいく
爪#;゚゚Д゚゚)「ぐ……ぐっ、これ、しきぃ……!!」
支えきれないと判断した稲荷は、両手でローラーを押さえ込む
高熱が殻越しに稲荷の手を焼き、青白いオーラに陰が混ざる
川 ゚ -゚)「お取り込み中、申し訳ないが」
クールの呼び声の後に、『金属を弾く音』
稲荷の背筋が凍りついた
川 ゚ー゚)「追加の」
首を傾け、下を覗く
ロードローラーとはまた別の車両が
川 ゚∀゚)「『タンクローリー』だ」
立ち昇る龍の如く、迫ってきていた
- 553 名前:>>1 :2015/11/16(月) 01:51:44 ID:WxA7Ty9U0
- 爪#;゚゚Д゚゚)「素直オオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!」
『殻』の下部にタンクローリーが衝突し、振動を与える
上下からの巨大なエネルギー体に挟まれ、内部には蒸気のような熱が籠った
『パキ』
爪#;゚゚Д゚゚)「ッ!?」
陶器の欠片を踏んだような音に、心臓が跳ね上がる
ロードローラーの接触部に僅かな皹が入っていた
その皹は、下からの押し上げによって、徐々に広がっていく
爪#;゚゚Д゚゚)「ん、ぎ、ぎぎぎぎぎいいいいいいい!!!!!」
殻は自己修復を行うが、皹が広がる速度が勝っていた
川 ゚∀゚)「もう一つオマケだ」
タンク部が風船のように破裂し、中から幾千本の『ナイフ』が飛び出す
蜂のように飛び回る刃物たちは、鋭い切っ先を向けて全方位を囲う
爪#;゚゚Д゚゚)「あ……」
川 ゚∀゚)「貴様はチェスや将棋で言う……」
クールは手の平を夜空へ掲げる
爪#;゚゚Д゚゚)「待ッ……!!」
川 ゚∀゚)「『詰み』(チェック・メイト)にはまったのだ」
- 554 名前:>>1 :2015/11/16(月) 01:53:42 ID:WxA7Ty9U0
- グッと握り締めたのを合図に
稲荷を中心とし、一つに集まるかのように射出された
爪#;゚゚Д゚゚)「ッ!!」
ナイフは殻に衝突するたびに、小さく、それでいて力強く弾け散る
前後左右からの断続的な衝撃と揺さぶりによって、殻は徐々に脆くなっていく
爪#;゚゚Д゚゚)「小娘ッ……如きにいいいいいいいいいいい!!!!!!」
殻の欠片が一つ、稲荷の顔へ落ちたのを皮切りに
立体パズルを崩すかのように、崩壊し始めた
爪#;゚゚Д゚゚)「おがああああああああああああああああああ!!!!!??????」
顔面に、ロードローラーの鉄塊が
背中からは、タンクローリーのフロントが
二つのエネルギー体が、稲荷の体を挟み込み固定する
川 ゚∀゚)「……」
握り締めた手を、再び開くと
上空のエネルギーが光を放ち始め―――――
川 ゚∀゚)「『BOMD!!』」
真っ赤な満月のような爆発に包まれた
- 555 名前:>>1 :2015/11/16(月) 01:55:11 ID:WxA7Ty9U0
- (;'A`)「すっ……げえ……」
まさに圧倒、まさに圧勝
(;^ω^)「つーか死んだだろこれ……」
哀れみすら感じさせるほどの、『暴力』
端から見ていた二人は、ただポカンと口を開けて空を仰ぐ
川 ゚ -゚)「いや」
それでもクールは、一切の油断を見せず上空をにらめつけていた
川 ゚ -゚)「この程度で終わられては、『面白くない』」
稲荷を焼き尽くしたエネルギーが、徐々に霧散していく
その中心には、人影
爪メ◎皿゚)「……」
皮膚は黒く焼け焦げ、左腕と右脚が消し飛び、右目の水分が蒸発し
唇が無くなり歯をむき出しにしている稲荷
大ダメージを与えたことには変わりない。だが
爪メ゚皿゚)「『盾』が……無くなったから、なんだ?」
風船を膨らますかのように、右目の回復が始まり
消し飛んだ腕と脚はすぐさま再生される
- 556 名前:>>1 :2015/11/16(月) 01:56:24 ID:WxA7Ty9U0
- 爪メ゚ー゚)「まだ私には、この回復能力と、無限大のエネルギーがある」
爪゚ー゚)「貴様には、無いようだなぁ……?素直クール」
川 ゚ -゚)「……」
クールは答えないが、額の傷と火傷が治っていないことが、回復能力が無い証明になる
だったら、じわりじわりと痛めつけながら殺してしまえば良い
此方はどんな致命傷を受けても治ってしまうのだ。持久戦なら分がある
爪゚ー゚)「少し驚いたが、私を殺すには到らなかったようだ。うう〜ん、残念。お嬢ちゃん」
爪゚ー゚)「さて、それではお返しと、お、お?」
稲荷が攻勢に移ろうとした瞬間、体のバランスが崩れるのを感じた
左側が、下に引っ張られているような
川 ゚ -゚)「回復能力が無いから、なんだ?」
そして気付く。クールの手にある、『紐状のエネルギー』が
自身の『左足』に、結び付けられていることに
川 ゚ -゚)「そんなもの無くとも、貴様は殺せる」
爪;゚ー゚)「チィッ!!」
稲荷は刃状のエネルギーを飛ばし切断を図るが
グイと引っ張られまたバランスを崩し、刃はあらぬ方向へと飛んでいった
- 558 名前:>>1 :2015/11/16(月) 01:59:30 ID:WxA7Ty9U0
- 川 ゚ -゚)「回復能力があるから、なんだ?」
クールは紐を引っ張り続け、稲荷を下へ下へと引きずり込む
川 ゚ -゚)「そんなものがあろうとも、死ぬまで貴様を殴り続ければ良い」
床を一歩、踏みしめると
そこから蛇のように無数の紐が現れ、勢いよく伸びていき
爪;゚ー゚)「ググッ!?」
両手両足、そして首を縛り上げた
川 ゚ -゚)「いつまで私を見下しているつもりだ。腹立たしい」
川 ゚ -゚)「喧嘩と言うのは、同じ土俵で……」
両腕に、力を込める
川#゚ -゚)「殴りあうモノだろうがッ!!」
そのまま一気に、上空の稲荷を自身が立つフロアへと、引きずり込んだ
- 566 名前:>>1 :2015/11/17(火) 23:18:44 ID:bTCJSPck0
- 爪;゚Д゚)「おおおおおおおおおお!!!???」
四肢を束縛された稲荷は、成す術も無く建物内へと落下する
せめてもの抵抗として、エネルギー弾を放とうとするが
爪;゚Д゚)「!?」
赤黒い紐状のエネルギーと相殺され、煙のように消えていく
爪;゚Д゚)(せめて受身をッ!)
しかし、その判断も無意味だと気付いた
(#'A`)
(#^ω^)
落下位置では、拳を握り締め待ち構える二人の若獅子の姿
怒りに燃える表情が、急速に迫る
(#'A`)「歯 ァ 食 い し ば れ ェ エ エ エ エ エ エ エ エ ! ! ! ! ! ! ! 」
(#^ω^)「ク ソ 野 郎 オ オ オ オ オ オ オ オ オ オ ! ! ! ! ! ! ! ! 」
爪;゚Д゚)「待っ……」
一瞬の懇願は、聞き入れられることなく打ち抜かれる
その顔面に、今まで『殻』によって防がれていた鉄拳が、ようやく牙を剥いた
爪; Д )∴「ゴ…」
歯が砕け、鼻骨がぐしゃりと潰れる
頬骨は陥没し、両目玉が圧迫され飛び出そうになった
『痛い』
エネルギー弾による攻撃とは違う、『生の痛み』が全神経を駆け抜ける
- 567 名前:>>1 :2015/11/17(火) 23:20:50 ID:bTCJSPck0
- (#'A`)「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」
(#^ω^)「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
雄叫びと共に、更に拳を押し込み殴りぬける
爪; Д )∴「パァッ!!」
稲荷はまたも落下するかのように、真横へと吹き飛んだ
爪; Д )「ッッッ!!!!」
途切れそうになる意識をなんとか繋ぎとめたが、頭を貫いたダメージは深刻だった
半分飛び出した目玉が見る視界は左右を往復し、思考を定めることが出来ない
爪; Д )(早……切り……反撃……ッ!?)
かなりの速度で飛ばされていた稲荷の体が、ブレーキを踏んだかのように減速し、空中で止まる
縛られている手足首が、ギリリと音を立て、その後
張ったゴムが、縮んでいくかのように、稲荷の体を『オーカ』へと引き戻す
爪; Д )「すな……」
川 ゚ー゚)「まさか、一撃で終わるとでも思ってたのか?」
五本の紐を片手で掴み、クイと引き寄せながらクールは冷笑を浮かべた
彼女の前には、腰を落とし攻撃の構えを取るドクオとブーン
爪; Д )「あ……」
- 568 名前:>>1 :2015/11/17(火) 23:24:00 ID:bTCJSPck0
- (#'A゚)(#^ω゚ )「「もいっぱああああああああああああああああああああああああああああああああつッ!!!!!」」
爪; Д )∴「ごるぱあああああああああああああああ!!!!????」
再び鉄拳が炸裂し、体中の骨が砕ける
稲荷の体はまたもや外へと投げ出され、引き戻される
その度に
(#'A゚)「ルオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
二人の漢による
(#^ω゚ )「だおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
波状攻撃に見舞われた
爪;メ Д )(バカな……私は……勝利の……神……)
押し出しと引き戻しのペースは上がっていく
回復も反撃も許さない、容赦ない拳の嵐が稲荷の肉体と意識を穿ち続ける
爪;メ Д )(勝利は…約束され………こんな……クソカス共に……)
攻撃を受ける度、青白いオーラにノイズが入り、光力を失っていく
相反し、クールの持つ赤黒いオーラは、燃え上がるような光を放つ
川 ゚ -゚)「トドメだ」
紐をグイと引き切ったクールが、二人の間を抜け一歩前に出た
- 569 名前:>>1 :2015/11/17(火) 23:26:50 ID:bTCJSPck0
- 爪メ Д )「こんな……」
全てが順調に進み、神の力を手に入れ、世界を掌握する矢先
その第一歩が、『素直クール』により破綻まで追い込まれている
爪メ Д )「こんな……」
己に対するプライドが
長年積み上げた野望が
若造に弄ばれる屈辱が
爪#メ Д )「こんなッ!!!!!」
稲荷に、敗北を許さなかった
爪#メ゚゚Д゚゚)「こ ん な 結 末 認 め る か ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ! ! ! ! ! 」
消えかけていた青白いエネルギーが、背中から噴出する
もやのように空気中に広がったそれは、『オーカ』すらも凌駕する大きさの
『大戦艦大和』へと、姿を変えた
爪#メ゚゚Д゚゚)「『一億総特攻』ッッッ!!!!!!!」
最後に放つ、玉砕覚悟の攻撃
桜紋を掲げた巨大な艦首が、何もかもを押し潰さんと迫り来る
- 570 名前:>>1 :2015/11/17(火) 23:28:13 ID:bTCJSPck0
- クールは一歩も怯むことなく対峙した
川 - )「……お前の敗因はたった一つ」
目を瞑り、右拳を握り締める
これだけ巨大ならば、狙いを定める必要は無い
クールは、今の稲荷に対して疑問を持っていた
何故、そんなに激怒しているのか
川 - )「たった一つの……ッ」
ただ、自身の計画が破綻しただけで
ただ、邪魔が入っただけで
ただ、ボコボコに殴られただけで
何をそんなに怒る必要がある?
川# - )「シンプルな答えだ……」
声が震えた
今まで押し殺してきた感情が、心の奥底を通じ、拳に伝わる
脳裏には、一人の男の姿
<ヽ ∀ >
稲荷の悪意に弄ばれた、『漢』の姿
- 571 名前:>>1 :2015/11/17(火) 23:29:07 ID:bTCJSPck0
貴様の粗末な『怒り』など、到底及ばないほど
私は、怒るに値する陵辱を受けたというのに
.
- 572 名前:>>1 :2015/11/17(火) 23:30:08 ID:bTCJSPck0
川#゚Д゚)「無 駄 ァ ッ ! ! ! ! ! ! 」
.
- 573 名前:>>1 :2015/11/17(火) 23:32:22 ID:bTCJSPck0
- 艦首に放つ拳一閃
紋章から船尾まで、一筋の赤い光線が奔り、稲荷を貫いた
爪#;メ Д )∴
大和の形をしたエネルギーは、経年劣化した粘度細工のように、ひび割れながら崩壊する
爪#;メ Д )「ク……ソ…カ……ス…が……」
稲荷もまた、力なく地へと落下していき
バンジージャンプを終えた後のように、赤い紐に支えられたまま、宙ぶらりんになった
その紐を通じ、稲荷の体から『勝利の神』の力が吸い上げられていく
爪メ Ж )
若々しい姿は、再び急速に老い始め
枯れ木のようにやせ細った老人へと戻った
川 ゚ -゚)「……」
抜け出たエネルギーは、蛍の如く光を放ちながらクールの体へと吸い込まれていく
その幻想的な風景を見ながら、彼女は
川 ゚ -゚)「『てめーは私を怒らせた』」
決め台詞を言い放った
- 580 名前:名も無きAAのようです :2015/11/22(日) 01:30:05 ID:tqnefPDI0
- ―――――
―――
―
敵は討ち、素直クールは戻った
目的は果たした
( A )「……」
( うω;)「……」
それでも、彼らに笑顔は無い
<ヽ ∀ >
代償は、大きかった
余りにも、大き過ぎた
川 ゚ -゚)「……」
川 ゚ -゚)「馬鹿だな……こいつは……」
クールは横たわるニダーの頭を膝元に乗せ、額を撫でた
先ほどまでの赤黒いオーラは、群青へと変っていた
( A )「そんな事……言わねえでくれよ……」
ニダーと拳を交わしたドクオは、悲しみと後悔と、それよりも深い『ニダーへの尊敬』を抱いていた
友を殺そうとしてまでクール救いたいと願った想いと、自身が死んでも彼女を守りたかった想い
彼は、最初から最後まで、自分の『漢』を突き通した
( A )「かっこよかったんだぜ……最後まで……」
( A )「褒めてやってくれよ……最高の漢だったって……」
- 581 名前:名も無きAAのようです :2015/11/22(日) 01:31:19 ID:tqnefPDI0
- ドクオの言葉を、クールは
川 ゚ -゚)「フン」
『鼻で笑った』
( A )「……」
( A )「なぁ……なんでアンタ、そんなに落ち着いてられるんだよ……」
きつく握り締めた拳から、血が流れた
彼女のその行為が、ニダーを侮辱したかのように思えて
( A )「死んだんだぞ……ニダーが……ッ」
( A )「アンタを庇って……ッ」
川 ゚ -゚)「……ああ」
(# A )「『ああ』じゃあねえだろッ!!!!」
冷淡な返事に、血が昇ったドクオは掴みかかろうとする
( ;ω;)「ドクオッ!!」
それを、ブーンが羽交い絞めにして止めた
川 ゚ -゚)「……」
(# A )「フーッ、フーッ……」
- 582 名前:名も無きAAのようです :2015/11/22(日) 01:32:41 ID:tqnefPDI0
- 川 ゚ -゚)「これは推測だが」
いつも通りのクレバーな口調で、二人に語りかける
川 ゚ -゚)「神の力が『槍』を経由したのが幸いしたのだと思う」
( A )「は……?」
川 ゚ -゚)「私の中から奪われた勝利の神の力は、一度槍に伝わり稲荷へと継承された」
川 ゚ -゚)「しかし、奴にとって誤算が二つほどあった。一つ目は」
呆ける二人を余所に、クールは人差し指を立てる
川 ゚ -゚)「本来の持ち主である『勝利の神』が、力の持ち出しを拒んだこと。これにより、四分の一ほどが私の中に残った」
川 ゚ -゚)「もっと賢く、誠意を以って『騙せば』、全て持って行けたのかも知れないな。まぁ、老害の傲慢さでは到底無理な話か」
川 ゚ -゚)「しかし、大部分は奴の手に渡った。そこで二つ目の誤算だ」
中指を立てる
川 ゚ -゚)「私の中から、『勝利の女神』の人格が抜けた。よって、長い眠りから覚めることが出来た」
川 ゚ -゚)「神の力を四分の一残した、私をな」
( A )「っ、今はそんな話」
川 ゚ -゚)「いいから、聞くんだ。ここからが重要だ」
- 583 名前:名も無きAAのようです :2015/11/22(日) 01:34:48 ID:tqnefPDI0
- 川 ゚ -゚)「神の力は大きく分けて二種類。『神通力による攻撃』と、『殻による守りと超回復』だ」
川 ゚ -゚)「稲荷はその二つを使いこなしてたが、私はどうだ?」
クールはたった一撃だが、稲荷の攻撃を受けた
( うω^)「……治ってないお」
ドクオやブーンですら回復が終わっていると言うのに、クールは今だ薄らと血を流している
そもそも、稲荷が見せた『殻』を、彼女は最初から纏ってはいなかった
川 ゚ -゚)「恐らく、稲荷が奪えたのは四分の二…つまり半分だけだったのだろう」
川 ゚ -゚)「そして私の中に残ったのは、『神通力』のみの四分の一……では、残りの『殻と回復』の四分の一はどこへ消えたのか?」
(;'A`)「ッ!!」
クールは攻撃を受けた。本来、彼女を守るはずだった『殻』は
『ニダー』を守っていた
彼女はそれを見てから、初めて『笑った』
(;'A`)「稲荷は……槍に触れてから『神の力』を得た。っつーことは……」
最初に見せたその感情の答えが、ドクオの頭に昇った血を冷まして行く
川 ゚ー゚)「全く……こいつはどんな口説き方をして、『彼女』を手篭めにしたのだろうな?」
体を貫いた『槍』が、残っているならば
稲荷と同じ条件が整っていたと言える
- 584 名前:名も無きAAのようです :2015/11/22(日) 01:36:08 ID:tqnefPDI0
- 川 ゚ー゚)「見ただろう?稲荷の姿を。あれだけの爆発と、お前らの攻撃を受けて尚、死ぬことなく再生を繰り返していた」
川 ゚ー゚)「なら、『心臓を貫かれた程度』で、死ぬとは思えない」
その時
<ヽ ∀ >「」
死んだと思われていたニダーの口から
<ヽ ∀ >「……ク………」
微かな息と友に、小さな声が漏れた
川 ゚ー゚)「『生きている』んだよ。再生と回復を繰り返しながら」
(;'A゚)「」
(;^ω゚ )「」
目の前で起きている、この日一番の『奇跡』に言葉を失った二人に
クールはもう一度、今度は優しい声で、ハッキリと
川 ゚ー゚)「ニダーは、『生きている』んだ」
頭の隅々にまで染み込ませるように、伝えた
- 585 名前:名も無きAAのようです :2015/11/22(日) 01:37:27 ID:tqnefPDI0
- (;^ω゚ )「……じゃ、じゃあ」
不安や怒り、悲痛や絶望だらけだった、この長い一週間
(;'A゚)「ぜ……全部、解決……って、こと?」
その終わりに、全てを払拭する
(;^ω゚ )「ハッピー、エンドで……いいってこと?」
ある感情が、じわじわとこみ上げる
もうひと声掛けられるだけで、弾ける炭酸水のように吹き上がるその感情は
川 ゚ー゚)「大変だったのだろう?フフ、苦労を掛けた」
川 ゚ー゚)「『そうだ』。私は戻り、ニダーも無事。何もかも元通りだ」
(* A )「お……」
(* ^ω^)「おお……」
「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおっしゃあああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」
『歓喜の声』となって、月夜に響き渡った
長く、長く響き渡った
- 586 名前:名も無きAAのようです :2015/11/22(日) 01:39:18 ID:tqnefPDI0
- (*;A;)「うわああああああああああんもおおおおおおおおおお先に言えよおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
(* ;ω;)「バカーーーーーーーーーー!!!!!バカーーーーーーーー!!!!!おおおおおおお!!!!!」
抱き合いながら稚拙な罵倒を吐き出す二人を、微笑みで返したクールは
川 ゚ー゚)「さて、姦しい奴らが上がってくる前に……」
ニダーに刺さる槍を、ゆっくりと抜き始めた
<ヽ ∀ >「ッ……」
回復はしていても、痛みはあるのだろう
ガクンと痙攣をしたニダーを
川 ゚ -゚)「我慢しろ。大丈夫だから……」
優しく囁きながら、傷口を押さえ動かしていく
稲荷の力も、殆どクールへと吸収されたのだろう。額の傷口は治り
槍に貫かれ空いたニダーの体の穴も、急速に閉じていく
川 ゚ -゚)「ふう……」
完全に抜けた時には、出血も殆ど無く
穴の空いた服から覗く体も、瘡蓋一つ無く元通りになっていた
川 ゚ -゚)「ふー……」
クールはもう一度、深いため息を吐き、ニダーの血で濡れた槍を転がした
- 587 名前:名も無きAAのようです :2015/11/22(日) 01:42:08 ID:tqnefPDI0
- やや遅れて
<うわあああああああああああああ!!!!
(*;A;)「!?」
( ;∀;)「生きてるーーーーーーーーーー!!!!」
(;-@∀@)「二人ともーーーーーーーーーーー!!!!」
村人学園のメンバーが
ノハ;;)「先輩ーーーーーーーーーー!!!!!!」
从;゚∀从「ドクオ、ブーン!!!!」
階下から駆けつけた
( ;∀;)「もうなんか爆発音とか振動とかで生きてる心地しなかったよおおおおおおおお!!!!!」
(*;A;)「うわあああああああごめえええええええええええん!!!!!!俺も今回ばかりは死んだかと思ったあああああああ!!!!」
感極まって抱きついてきたモララーを嫌がりもせず、ドクオは泣きながら抱きつき返す
ブーンは腰が抜けて立てず、アサピーからしきりに心配されていた
- 588 名前:名も無きAAのようです :2015/11/22(日) 01:43:15 ID:tqnefPDI0
- ノハ;;)「グールぜんばあああああああああああ!!!!!」
川 ゚ー゚)「うおっと…心配かけたな、ヒート」
ノハ;;)「ああああああああああああああ!!!!!」
飛びついてきたヒートを受け止めたクールは、優しく頭を撫でた
:川; ー ):「し……締まってる、極まってる……」
ノハ;;)「びええええええええええええええ!!!!」
从;=∀从=3「フゥー……一件落着、ですか先輩?」
:川; ー ):「ああ、そうだな……」
:从; ∀从:「そりゃ、良かった……良かっ……」
声に湿っぽさが混じり始めたハインに、クールは息が出来ないまま両手を広げた
:从う∀从:「……ヒートの後で失礼します」
:川; ー ):「そうしてくれると助かる……」
そんな、泣いて喜ぶ子供達を眺めながら
J( 'ー`)し「全隊員に告ぐ、後始末の時間だよ」
_、_
( ,_ノ` )「首謀者、『稲荷』と協力者、『オサム・ハマー』『不知火つー』の確保を急げ」
大人達は、警戒を解かず任務を遂行していた
- 589 名前:名も無きAAのようです :2015/11/22(日) 01:44:41 ID:tqnefPDI0
- (;うA`)「そ、そうだ!!横堀は!!あとあのオッサン!!」
渋沢の言葉を聞いたドクオは、モララーを引っぺがし周りを見渡す
波のように押し寄せていた横堀だが、今はスクラップだけとなり
階下の無傷の機体も、銅像のように停止している
J( 'ー`)し「安心しなボウズ。横堀のシステムサーバーは今の所こっちが握ってる。そうそう向こうの手に返らないよ」
(;'A`)「そ、そうなんスか……いや、あのオッサンもここにいたんだけど!!」
ドクオは辺りを見渡す
このフロアの戦いに置いて、オサムだけが生身の人間だった
横堀がまとめて消し飛ぶほどの激しさで、ただの人間が生き残れるはずが無い
(;^ω^)「ま、まさか死んだ……?」
悪党であろうとも、巻き添えで死んでしまっては後味が悪い
ドクオとブーンの浮かれていた熱が、急速に冷めていった
川 ゚ -゚)「ああ、あいつ……」
対し、クールは冷静だった
川 ゚ -゚)「人間だったのか?」
(;'A`)「は?」
(;^ω^)「え?」
- 590 名前:名も無きAAのようです :2015/11/22(日) 01:46:12 ID:tqnefPDI0
- 川 ゚ -゚)「私もチラリと横目で見ただけに過ぎないんだが、あいつもロボットだった気がするんだが……」
_、_
(;,_ノ` )「おいおい、そりゃ本当か嬢ちゃん?」
川 ゚ -゚)「確定は出来ないが、恐らく死体を捜しても出てこないと思うぞ。ロボットだったとしても、このフロアに居たなら溶け消えただろうしな」
(;'A`)「いやでも、横堀とは違ってちゃんと喋ってたし……」
J( 'ー`)し「ありえなくは無いね。あれだけの技術力だ。安全地帯から自分の傀儡をコントロールしてても可笑しくない」
(-@∀@)「あ、なんか踏んだ」パキ
(;-@∀@)「ってぎゃあああああああああああああああああああ顔おおおおおおおおおおおおおおお!!!!!????」
(;'A`)「顔!?ちょっと見せろ!!」
アサピーが踏んだ物、それは
( ゞメ)
文字通り、面の割れたオサムの『顔』だった
血の代わりに付着していたのは、潤滑油とも燃料とも取れない透明の粘液
その場にいたオサム・ハマーが人間では無い事を証明していた
_、_
( ,_ノ` )y━・~「チッ……腰抜け野郎だったか……」
タバコを二本咥えた渋沢は、忌々しげに火を付ける
その内の一本を、『ダーティ・マム』に渡した
J( 'ー`)しy━・~「用意周到とも言えるね……ふぅー……」
- 591 名前:名も無きAAのようです :2015/11/22(日) 01:47:43 ID:tqnefPDI0
- 『容疑者稲荷、確保しました。これより日本支部へ連行します』
J( 'ー`)しy━・~「くれぐれも慎重に運びな。死にかけのご老体だ。罪を償う前にくたばらせんじゃないよ」
『了解』
一方、殆どの生気を失った稲荷を回収したという無線連絡が入る
それを聞いたドクオは、意外そうな顔をした
('A`)「生きてんのか……てっきりぶっ殺したのかと思ったぜ」
川 ゚ -゚)「私がクソ野郎に楽な道を歩ませると思うか?」
('A`)「それでこそ姉御だ」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「あんたらも遠路遥々ご苦労だった。後はこっちに任せてくれ」
渋沢がインカムに話しかけると、オーカの駐車場に着陸していたヘリが飛び立ち
最上階を二回ほど旋回し、飛び去っていった
( ^ω^)ノシ「おー、無事でなによりだお」
('A`)「つーか良くきのこったなアレ」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「ウチの誇る最高の操縦士と狙撃手だからな。死なれちゃ困る。お互いにな」
('A`)「は?」
J( 'ー`)しy━・~「アンタ」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「おっといけねえ」
- 592 名前:名も無きAAのようです :2015/11/22(日) 01:50:09 ID:tqnefPDI0
- 川 ゚ -゚)「あ」
ノハう;)「?」
川 ゚ -゚)「ヤバい、眠たくなってきた」
从;゚∀从「え?」
(;・∀・)「え?」
(;-@∀@)「え?」
( ^ω^)「あれ?そう言えば俺も……」
('A`)「え……って、お前」
('A`)「ハゲてね?」
彡⌒ミ
( ^ω^)「え?」
ブーンの背中にある拳の紋章が、再び輝きを放つ
対し、ドクオの紋章は徐々に色が薄れつつあった
彡⌒ミ
(;^ω^)「えええええええ!?いやちょっと待っておええ気持ち悪――――――」
彡⌒ミ
( ω ) カクーン!!!
(;・∀・)「うわあ気絶した!!!」
(;'A`)「うわ何超絶体重い!!!」ガクーン!!!!
紋章が完全に消えたと同時に、ドクオは膝を着き、ブーンは気を失う
- 593 名前:名も無きAAのようです :2015/11/22(日) 01:50:58 ID:tqnefPDI0
- 彡⌒ミ
( ω )「……」
彡⌒ミ
( ω )「ヘイ、そこのフレッシュ☆ボーイズ」
(;'A`)「えっ、ちょ……いや、まさか……」
声はブーンだったが、まるで別人のように感じる
唖然とする面子を余所に、ドクオだけがその正体を察していた
彡⌒ミ
( ^ω^) 「マッスルしてるかい?」
/ `ニニ´彳 `` ー 、
_,ノ´、, ,..>、リ,. -- 、. ヽ--、
/  ̄´ {-_,. -、 、,' ヽ
/ 〃,.. 'r _,.. 、}>、.. r-{.
/、 _,..イ´ ト. ´ i ´ }
/ ゙ー'´ }ヘ _,..ノヘ`ー- ...ィ! ', ハ {
,' ,' リヾニ=ニ´ ,. ‐'' h ー 、 ハ リ ノ}
,'八 , / \ミヽ、ヽ. |! } 彡N ', ハ
} (.,/ ∨ ヽ('' ´`` /´`'!,∨ ! ,.' i
,ハ', ii { 入__ _ノ.__,ノ | ∨ ,{
i : v リ /、 { ゚ ´,| | |, }
{ Y, ,' ィ‐‐-ミ、_`', リ } ,' ヽ
iヽ ! ,' : ハ`ヽ、..__,/-',〉-‐‐y ,}
}. ∨ ./ ノ / ∨' ,. _,./ ! `''"i ', {ノ'′
', `ヽ_,..{,' ノ i /´ 、 ヽ、.__ ,〉 ト,)
', r‐ヤ ' 人ノ >‐‐イ / ` }
ヽ、∨ /`ヽ、 / ハ , /
y' ,' ; / `{ ,/-‐ /
i i' /' ,/ ,.. ´
i ,リ /-'" ,. '´
- 594 名前:名も無きAAのようです :2015/11/22(日) 01:52:32 ID:tqnefPDI0
- (;'A゚)「……」
从;゚∀从「……」
(;・∀・)「……」
ノハう;)「?」
彡⌒ミ
( ^ω^)「私の願いは、全ての魔女を消し去ること」
彡⌒ミ
( ^ω^)「本当にそれが叶ったんだとしたら、私だって―――――」
彡⌒ミ
( ^ω^)「もう絶望する必要なんて、無い!!」デミッ☆
(;-@∀@)「ま…」
「まど神様……?」
- 601 名前:>>1 :2015/12/02(水) 03:00:17 ID:HixaAeIc0
- 彡⌒ミ
( ^ω^)「いやー、皆お疲れぇい。ほんと大変だったでしょ?巻き込んじゃって、ゴメンね?」
(;゚A゚)「相棒がクソハゲに支配されたああああああああああ!!!!!!!」
彡⌒ミ
(;^ω^)「手ぇ貸してやってもこの扱いかよぉ〜。ほんと神様やめたくなりますよぉ〜」
川 ゚ -゚)「アンタも、同類か?」
彡⌒ミ
( ^ω^)「どうも、始めまして」
('A`)「禿げまして?」
彡⌒ミ
( ^ω^)「ちょ、黙れお前。マッスルの神様です。今はブーン君の体を借りてお話しているよ。サイン欲しい?」
(;-@∀@)「い、いえ……いりません……」
从;゚∀从「神様って何でもありだな……」
(;・∀・)「ま、まぁ……日本には八百万も神様がいるって言うし……」
彡⌒ミ
( ^ω^)「さて、素直クールさん。最後にもう一度、眠って貰えないかな?」
川 ゚ -゚)「……」
川 ゚ -゚)「いいだろう。別れの挨拶くらい、交わしたいだろうしな」
- 602 名前:>>1 :2015/12/02(水) 03:02:53 ID:HixaAeIc0
- 体の紋章から、ニダーの血が抜けて床へと流れ落ちると、クールは一度ガクンと頭を垂れた
替わりに、群青色の光りがぼうと灯る。冷たげな色とは裏腹に、温もりも兼ね備えていた
川 - -)「……」
川 ゚ -゚)「……」
『彼女』が最初に目を合わせたのは
:<ヽ ∀ >:「……」
その温かい群青に目を眩ませた、膝元のニダー
<ヽ ∀ >「……ご、めんな…さ……い……」
川 ゚ -゚)「……」
神は、その謝罪に何も答えず
ただ、ニダーの頬に流れた涙を拭い、微笑を返した
川 ^ー^)「……」
<ヽ ∀ >「……」
<ヽ。∀ > ポロッ
ニダーは再び目を閉じて、安らかな寝息を立て始めた
- 603 名前:>>1 :2015/12/02(水) 03:03:59 ID:HixaAeIc0
- 川 ゚ー゚)「……ドクオさん、ブーンさん。それと、皆さん」
川 -ー-)「ありがとう、ございました」
('A`)「よせやい。俺らは結局、役に立たなかった」
('A`)「アンタを救ったのは、ニダーと姉御だ。礼なら、その二人に言ってやんな」
( ・∀・)「僕らに至っては何一つ出来てないしね」
从;=∀从「なんか、から回ってばっかだったしな」
J( 'ー`)しy━・~「情け無い事にね」
_、_
( ,_ノ` )y━・~「いやぁ、アッハッハ」
川 ゚ー゚)「そんな事はありません。二人を本気で救おうと、皆さんが働きかけてくれたから……私は救われました」
川 ゚ー゚)「本当に、ありがとうございます……」
(;'A`)「俺は別に……だぁあ!!むず痒い!!」
从 ゚∀从「胸張りなって。何にせよ、オメーらの頑張りは無駄じゃなかったってことだよ」
ハインが労いの意味を込めて、ドクオの背中を叩くと
(;'A゚)そ「ひぎぃ!!」
ダメージの蓄積からか、ドクオは叩かれた勢いのまま地面へと突っ伏してしまった
- 604 名前:>>1 :2015/12/02(水) 03:07:11 ID:HixaAeIc0
- 从;゚∀从「あっ、ごめん!!お前もうボロボロだった!!」
:(;'A゚):「ダイジョウブ……ゼンゼン、ダイジョウブ……」
ノハ;゚听)「全然大丈夫じゃなさそうです先輩!!」
彡⌒ミ
( ^ω^)「いやー、神の力ってごっついけど、体力もごっつい削るからね。暫くちんちんも勃たなくなるよ」
:(;'A゚):「それは困る……」
( ・∀・)「どうせ使わないでしょ」
:(;'A゚):「使わないけど……」
从;=∀从「バカ」
彡⌒ミ
( ^ω^)「結局、過ぎた力なんて長続きしないもんなんだよ。稲荷は勝利の女神ちゃんの力で、世界征服(笑)とか企んでたみたいだけど」
彡⌒ミ
( ^ω^)「一晩で体力を使い切って、自滅するのがオチだったろうなぁ」
_、_
(;,_ノ` )y━・~「おいおい、ってことは放って置けば勝手に終わってたってか?」
J( 'ー`)しy━・~「だとしても、だろう?」
彡⌒ミ
( ^ω^)「モロチン。たった一晩だけでも被害は計り知れないモノになっただろうね。ドクオ君とブーン君が体を張ってくれたお陰で、最小限で済んだんだ」
彡⌒ミ
( ^ω^)「僕が手を貸したとは言え、キミらの功績は多大だよ。さすがマッスルだ」
:(;'A゚):「アンタに褒められてもあんまり嬉しくない」
彡⌒ミ
( ^ω^)「お前らに足りないものは素直さだってハッキリわかるわ」
- 605 名前:>>1 :2015/12/02(水) 03:09:12 ID:HixaAeIc0
- 彡⌒ミ
( ^ω^)「さて、そろそろお別れの時間だ」
マッスルの神が、手を翳すと
瓦礫に埋もれていた『鏡』が独りでに浮き上がり、真上に浮かぶ月と向き合う
月光は柱となり、天へとの架け橋となる
(;-@∀@)「も、もう!?まだ、ニダーくんが寝ているのに!!」
ノハ;゚听)「ちゃんとお別れが言えるまで、待ってもらうことは出来ないんですか!?」
彡⌒ミ
( ^ω^)「キミらの気持ちもわかるんだけどね。火は火、水は水であるように、神には神として居なきゃいけない場所があるんだ」
彡⌒ミ
( ^ω^)「火は水の中では燃え上がらない。水は火の中では流れない。あるべき場所へ還らないと、消えてしまう事だってあるんだ」
:(#'A゚):「そこをなんとかしろよハゲ!!!!!!!!」
彡⌒ミ
( ^ω^)「親にお願いの仕方とか教えてもらってないの?」
:(;'A゚):「ハゲ……ハ……」
:(;A;):「ハゲ……ボケ、と、友達、なんだぞ……しょーちゃんは……」
泣きながらドクオは立ち上がろうとするが、既に足腰は役に立たない
从;゚∀从「お、おい……」
:(;A;):「そ、そりゃ……てめーらにも都合ってモンがあるだろうさ……けど、けどさぁ!!」
:(;A;):「このままサヨナラなんて、寂しすぎるだろ!!ハゲ、クソぉ…ハゲ……ウンコハゲ……」
そのまま蹲り、咽び泣いてしまう
彡⌒ミ
( ^ω^)「いや泣きてーのは僕だよ。そんなんになっても的確に僕の心抉るねキミ」
- 606 名前:>>1 :2015/12/02(水) 03:12:00 ID:HixaAeIc0
- 川 ゚ -゚)「ヒートさん、ニダーさんをお願いできますか」
ノハ;゚听)「は、はい!!」
ニダーの頭を、ヒートへと預けた勝利の女神は
ドクオの元へと歩み寄り、跪いて肩に手を置いた
川 ゚ -゚)「私は、私は幸せ者です。他ならぬ私の為に、涙を流す人達に出会えて」
川 ゚ -゚)「私だって、皆さんとのお別れは寂しい。でも、これ以上クールさんにご迷惑を掛けるわけにはいきません」
:(;A;):「うう〜……」
ドクオ自身、自分の要求がただの我侭だと自覚していた
それでも、短い時間だが、共に困難に立ち向かった友人と別れるのは辛かった
人間なら、『さよなら』の後に『またね』が通じる
だが神は、人の手には決して届かない場所へと還る神とは再会など出来ない
川 ゚ー゚)「大丈夫、私は神様です。いつだって皆さんを見守っています」
彡⌒ミ
( ^ω^)「僕も見守tt从 ゚∀从「テメーちょっと黙れ」はいごめんなさい僕はウンコハゲです」
:(うA;):「……ああ、ああ!!」
『受け入れられない現実から、目を背けてはいけない』
受け入れて、乗り越えて、愚直に進む強さを、ニダーから教わった
- 607 名前:>>1 :2015/12/02(水) 03:13:56 ID:HixaAeIc0
- :(;'A`):「マッチョは……最後まで、漢でいないとな……」
もう一度、力を振り絞り立ち上がろうとする
从 ゚∀从「頑張れ」
ハインはドクオに肩を貸し、支えになる
从;=∀从「おっも……っしょぉ!!」
:(;'A`):「悪いな……」
選んだ別れは、『せめて最後は堂々と』
立ち上がったドクオは、涙でグチャグチャになった顔を、笑顔に変えた
('∀`)「楽しかったぜ。しょーちゃん」
川 ゚ー゚)
:川 ー ):
:川 ;ー;):
涙を流したのを皮切りに、紋章が消え始める
群青の光が、月明かりの柱に吸い込まれ、天へと昇る
- 608 名前:>>1 :2015/12/02(水) 03:15:05 ID:HixaAeIc0
- 从 ゚∀从「じゃあな、しょーちゃん。ありきたりな言葉だが、絶対に忘れない」
川 ;ー;)「」(ごめんなさい)
彼女は、最後に
( ・∀・)「ステキな神様だったよ。クール先輩に負けないくらいの、魅力的な女性さ」
川 ;ー;)「」(皆さんは、私のことを)
大切な事を一つ、彼らに伝えなかった
(-@∀@)「優しい神様だってこと、覚えておくよ」
川 ;ー;)「」(この一週間を)
余りにも残酷で、伝えることが出来なかった
ノハ;;)「クール先輩とニダー先輩のこと!!ありがどう!!しょーちゃん!!」
川 ;ー;)「」(忘れてしまう)
天界への帰還後、この騒動が『無かったこと』になると
今回の騒動は、稲荷が起こしたテロ事件として、書き換えられる
『神の存在』は、人に知られてはならないのだ
- 609 名前:>>1 :2015/12/02(水) 03:19:56 ID:HixaAeIc0
- だが、残酷であると同時に『救い』でもあった
別れの悲しさや、寂しさを引き摺らずに済み、そして何より
<ヽ ∀ >
ニダーの裏切りや暴走も、彼らの中から無かったことになる
川 ;ー;)「」
だが、人は学ばねばならない
犯した過ちを悔い、改め、償い、前に進まなければならない
だから、彼女は最後に一つだけ、ズルをした
ニダーの記憶に、『自責の念』だけは残るように、小さな細工を施したのだ
川 ;ー;)「」(貴方はこれから、苦しみ、悩み、自分を責めるでしょう)
川 ;ー;)「」(ですが、貴方が自分を許せなくても、友達はきっと貴方を許し、共に歩んでくれる筈です)
川 ;ー;)「」(これが、私に出来る精一杯の『救い』です。ニダーさん)
川 ;ー;)「」(貴方の温かさと優しさに、私も救われました。道は間違えてしまったけれど、その愛は、清く正しかった)
川 ;ー;)「」(どうか、どうかその愛で、クールさんとの幸せを掴んでください)
紋章が、完全に消え入ろうとする中
彼女は、声が出せなくなった口で
川 ;ー;) ありがとう
と伝え、天界へと還っていった
- 610 名前:>>1 :2015/12/02(水) 03:21:26 ID:HixaAeIc0
- ―――――
―――
―
( ^ω^)
( ^ω^)そ「えっ、俺だけハブ?ハブなの?」
ブーンの意識は、再び『9秒前の白』に存在していた
神が完全に憑依したブーンは、自己を何かしらの方法で維持する必要があったのだ
クールは『眠り』と言う形であったが、彼女とはまた別の方法で、自我を保っていた
( ^ω^)「ええー……酷くない?」
そこに
(´・_ゝ・`)「いやー、おまたせおまたせ。ちょっと世界の書き換えに手間取っちゃってさ」
役目を終えたマッスルの神が戻ってきた
( ^ω^)「えっ、世界の書き換えって何?恐い、ヘルヘイムでも侵食してきたの?」
(´・_ゝ・`)「いやそんな物騒なことになったら流石に手が出せないよ。今回の事件に『神の介入』が無かったことにしたんだ」
( ^ω^)「……どういう事だお?」
(´・_ゝ・`)「単純に、『稲荷が起こそうとした機械兵器による国家転覆計画を、君たちがS.H.I.E.L.D.と共に阻止した』という事になる」
( ^ω^)「じゃあ、しょーちゃんは……」
(´・_ゝ・`)「うん、皆の記憶から消えてなくなる」
(#^ω^)「ッ、そんなのって!!」
- 611 名前:>>1 :2015/12/02(水) 03:23:05 ID:HixaAeIc0
- 掴みかかろうとしたブーンをマッスルの神は手を突き出し制した
(´・_ゝ・`)「待つんだ。キミに、キミ達にとって大切なのはここからだ」
( ^ω^)「なんだと……?」
(´・_ゝ・`)「今回の出来事に関しての記憶を、キミとドクオ君にだけ残す」
(;^ω^)「はっ…?どうして俺達だけ…?」
(´・_ゝ・`)「僕の独断だ」
(;^ω^)「いやそういうこと聞いてるわけじゃなくて!!」
(´・_ゝ・`)「ハゲのままにされたくなければ落ち着きたまえ」
(;^ω^)そ「うわすっげえ恐い脅し!!」
マッスルの神は、ブーンの両肩を掴み、真っ直ぐに目を見つめた
(´・_ゝ・`)「いいかい?これから先……何年先になるかわからないが、今回の規模を遥かに超えた『脅威』が……」
(´・_ゝ・`)「この町から、目覚める」
(;^ω^)「な……そ、そんなモノ、俺達にどうしろと……」
(´・_ゝ・`)「キミ達だけじゃない。僕も一緒だ。これは僕とキミ達の、『完全に倒しきれなかった』、後始末になる」
(;^ω^)「い、意味がわかんねえ……俺とその脅威に、何の因縁があるんだよ!!」
(´・_ゝ・`)「時が来れば理解る、時が来れば話す……ただ、これだけは覚えておいてくれ」
- 612 名前:>>1 :2015/12/02(水) 03:23:58 ID:HixaAeIc0
(´・_ゝ・`)「キミ達が持つそれぞれの力は、『この為』に与えたという事を」
.
- 613 名前:>>1 :2015/12/02(水) 03:26:10 ID:HixaAeIc0
- ブーンの姿が、足下から消えていく
9秒前の白から、実体へと戻り始めたのだ
(;^ω^)「待て、待ってくれオッサン!!何故、何故俺達なんだお!!」
(´・_ゝ・`)「本来はキミだけの筈だった。でも……いや、僕にわからないことをキミに話すわけにはいかない」
(;^ω^)「は?ドクオは関係ないのかお!?」
(´・_ゝ・`)「いいや、キミ達は二人で一つの運命共同体だ。最早、どうすることも出来ない」
(;^ω^)「どうすることもって、何がだお!!答えろ!!ハゲ!!ウンコハゲ!!」
(´・_ゝ・`)「彼にこの事を話すか話さないかは、キミ次第だ。キミにこの長い苦悩を託すこと、本当に済まないと思っている」
(;^ω^)「だから事情を……ッ!!」
肩が消え、意識が遠のき始めた
(;^ω )「くっ……」
(´・_ゝ・`)「最後に、勝利の女神ちゃんにへの別れの言葉を聞こう。僕が代わりに、伝えておくよ」
(; ω )「…な、『泣かせてゴメン。また会おう』、と………」
(´・_ゝ・`)「わかった。確実に伝えよう」
デミタスが指先でブーンの頭を小突くと
その場から、ブーンの意識は完全に消え、元の居場所へと還った
- 614 名前:>>1 :2015/12/02(水) 03:28:52 ID:HixaAeIc0
- (´・_ゝ・`)「……」
「勝手な奴だ、キミは」
(´・_ゝ‐`)「自覚してますよ。だって、神ですから」
「良いのか?アレの消滅に手を貸せば、キミはキミとしての存在を完全に失ってしまう」
(´‐_ゝ‐`)「それが妥当でしょう。僕のケツを、何の関係も無い人間に拭かせるんだ」
(´^_ゝ^`)「物理的に拭いてくれるんなら、喜んでケツを差し出すんですけれどね!!」
「そうやって茶を濁すのは、悪い癖だ」
(´‐_ゝ‐`)「僕が消えることには何の後悔も無い。元々、人々の為に差し出した命だ。惜しくは無い」
(´ _ゝ `)「だが、あの二人を巻き込んでしまうのは……」
「……君には、神として重大な欠陥がある。人間に必要以上に情を持ちすぎている」
「時には使い捨てる冷酷さが無ければ、文化も歴史も作り上げることが出来ない」
(´ _ゝ `)「情?持ちますよそりゃ。元々は『人間』の僕だもの。みつを」
「儘ならないな……マッチョの神…いや、今はこう呼ぶべきかな」
- 615 名前:>>1 :2015/12/02(水) 03:29:53 ID:HixaAeIc0
「厄土に抗った英雄、『松千代デミタス』」
.
- 616 名前:>>1 :2015/12/02(水) 03:31:00 ID:HixaAeIc0
- (´ _ゝ `)「……懐かしい、名ですね。ですが、間違いが一つ」
(´ _ゝ `)「僕は、英雄なんかじゃない。いつだって、大切な者に後を任せて、先に退場する卑怯者だ」
「……キミも、早く天界へと戻るといい」
(´ _ゝ `)「……ええ」
(´‐_ゝ‐`)「……」
(´・_ゝ・`)「……だから、卑怯者なりに、他人を巻き込みながら、自分とのケリを着けるんですよ」
マッチョの神は指を鳴らし、9秒前の白から姿を消した
広大な白い空間は、静寂に包まれ
いらないもの、不必要なもの、世界の枠からはみ出し行き場を失ったものを
虚無という入れ物の中へと、ただ受け入れるのであった―――――
- 623 名前:>>1 :2015/12/04(金) 18:18:50 ID:rcxfxmgA0
- ―――――
―――
―
( ^ω^)「……」
('A`)「よう。三日眠った後の調子はどうだい、相棒」
( ^ω^)「体が動かねえ。あとすげえダルい」
('A`)「俺もだ。お互い、情けねえ姿だな」
( ^ω^)「違ぇねえ」
病室で目を覚ましたブーンは、事の顛末を
隣のベッドで横になっているドクオから聞いた
勝利の女神が帰還してから、翌朝までの記憶が、その場にいた全員に無く
彼女自身の記憶も、クールを除いた全員から抜け落ちていると
今回の騒動は、稲荷とオサムが共謀して起こそうとしたテロ計画を阻止したと言う形に書き換えられている事も聞き
『9秒前の白』でマッチョの神から聞いた話は、全て事実だと再確認したブーンは
( ^ω^)「そうか」
と、だけ呟いた
その様子を見たドクオは、怪訝な表情を浮かべる
('A`)「驚かねえのか?」
( ^ω^)「クソハゲに聞かされたからな」
('A`)「9秒前の白でか?」
( ^ω^)「ああ……しょーちゃんに関する記憶を、俺とお前にだけ残すってな」
- 624 名前:>>1 :2015/12/04(金) 18:20:20 ID:rcxfxmgA0
- ('A`)「俺らだけに?そりゃまた一体、どうして?」
( ^ω^)「どうしてって……」
言い澱み、ブーンは考える
この先、いつになるかはわからないが、これを越す脅威の襲来
それを、ドクオに話すべきか否か
( ^ω^)「……」
('A`)「……ブーン?」
( ^ω^)「なんか、頑張ったご褒美とか言ってたお」
('A`)「なんだそりゃ?」
( ^ω^)「さぁな。クソハゲの考えてることなんざ、わかんねえお」
結果、この事は腹に仕舞いこむことにした
ドクオにまでこの長い不安を抱える必要は無い。背負い込むのは自分だけで良いと判断を下した
('A`)「ま、それもそうか……」
( ^ω^)「ニダーは?」
('A`)「あいつもすっかりしょーちゃんの事を忘れてるが、『自分が何かしでかした』ってのは覚えているみたいでな」
( ^ω^)「大丈夫なのかお?」
('A`)「大丈夫、とは言い難いな……色んな人に頭を下げに行ってるが、肝心の謝罪される側はあいつが何をしたのか覚えてないから困惑してる」
('A`)「だが……姉御が付いてる。悪いようにはなんねえさ。きっと立ち直る」
( ^ω^)「そうだな……あっ」
('A`)「どうした?」
- 625 名前:>>1 :2015/12/04(金) 18:22:15 ID:rcxfxmgA0
- ( ^ω^)「その……『つー』とか言う女が捕まったって話は……?」
('A`)「……くのいち女なら目下捜索中、だそうだ」
( ^ω^)「そう、か」
('A`)「随分と気に掛けるな。そういやお前、『あいつらそんなに悪い奴なのか?』とか言ってたが……」
( ^ω^)「気の迷いだお。忘れろ」
('A`)「……惚れでもしたか?」
( ^ω^)「帰ってミリ姫してえ」
(;'A`)「誤魔化し方が雑なんだよ……え?マジ?悪党だぞ?」
( ^ω^)「そそる」
(;'∀`)「ハッ、ハハ……大した漢だぜ、俺の相棒は。どこに惚れたんだ?」
( ^ω^)「顔と体。ぶっちゃけ思い出しただけでも勃つ」
ドクオは唖然とすると、その後すぐに大声を上げ笑った
(;'∀`)「ハーッハハハハハ!!おまっ、それ!!いてて、最低だろ!!」
( ^ω^)「おっおwwwwいて、いてえ!!傷に響く!!」
(;'∀`)「いつつ……そんな最低野郎のお前に、一つプレゼントだ」
( ^ω^)「?」
(;'∀`)「引き出しを開けてみな」
- 626 名前:>>1 :2015/12/04(金) 18:25:01 ID:rcxfxmgA0
- 二つのベッドの間にある戸棚に手を伸ばす
引き出しの中にはメッセージカードが一枚入っていた
( ^ω^)「……」
(;'∀`)「ったくよぉ……深夜に窓から侵入してきたら、お礼参りにでも来たのかと思って身構えたぜ」
そこには、喫茶店の名前だけが書かれていた
( ^ω^)「これ、は……」
(;'∀`)「くのいちからさ。『彼とデートの約束をした。待ち合わせ場所』とだけ言ってサッサと消えちまった」
( ^ω^)「ハッ、ハハ……」
『笑い』とはまた違う感情で、顔がにやける
まさか、こんな形で再会の機会を与えられるとは思っていなかった
('A`)「捕まるリスクもあるだろうに、わざわざ渡しに来たところを見ると、脈はあるかもしれねえな」
( ^ω^)「リークしようとか、考えなかったのかお?」
('A`)「そりゃ考えたさ。だが、ズタボロ二人をこの場でぶっ殺すならそうしただろうし、それに……」
('A`)「お前をご要望だったから、全部お前に任せようって思ったのさ」
( ^ω^)「……お前、最高だお」
('A`)「だが、罠かもしんねーぞ。お前だけに報復する為のハニートラップかもしれねえ」
( ^ω^)「罠なら踏み抜く、殺す気なら相手してやる。そうやって一歩ずつ距離を詰めてやるお」
('∀`)「ハッ、度胸あり過ぎだろお前」
( ^ω^)「相棒が女に対してヘタレだからな。これでバランスが取れる」
また、一際大きな二つ笑い声の後に、傷の疼きに呻く声が続いた―――――
- 627 名前:>>1 :2015/12/04(金) 18:26:48 ID:rcxfxmgA0
- ―――――
―――
―
それから、時が経って
阿部さんが松葉杖を着きながら学校に復帰した頃
卒業の季節が訪れた
<ヽ;`∀´>「ほ、本当にやるニカ?」
卒業式が終わり、場所は学校のリング
その上には、ニダーと
('A`)「だって姉御のご要望なんだもん仕方ないじゃない」
ロープにもたれ掛かり、指貫グローブを嵌めるドクオの姿
川 ゚ -゚)「私はお前がドクオに負けたというのがどうしても信じられん。確かめる必要がある」
ノハ*><)「ニダー先輩、ファイト!!」
ニダー側のセコンドには、クールとヒートが立ち
( ^ω^)「ファイナルラウンドまで立って男を証明しろドクオ」
从 ゚∀从「骨は拾ってやるから」
('A`)「いや俺負ける前提?本当に勝ったんだよ?」
ドクオ側には、ブーンとハイン
- 628 名前:>>1 :2015/12/04(金) 18:28:40 ID:rcxfxmgA0
- そして、客席の最前線に
( ・∀・)「どうですかアサピーさん。この勝負どう転びますか?」
(-@∀@)「いやー、ニダーくんは恐らくこの学園最強でしょうが、ドクオくんにはそれを覆せるだけの爆発力がある。わかりませんねえ」
モララーとアサピー
( ゚∀゚)「1ラウンドKOだーっ!!瓜畑ー!!大したことねえぞそんな奴ー!!」
( ´_ゝ`)「はい張った張った!!もうすぐ締め切りだよ!!」
(´<_` )「オッズはニダー1.5ドクオ10だ!!」
/ ,゚ 3「ドクオに今月の小遣い全賭けじゃああああああああああああああ!!!!!」
(;゚д゚ )「校長!!賭け事はご法度です!!!校長!!!!校長ーーーーーー!!???」
話を聞いて駆けつけた観客の盛り上がりも最高潮だ
(#'A`)「長岡ァ!!リング上がれボゲオラァ!!アップ代わりに相手してやるぜ!!」
(#゚∀゚)「おう上等じゃねえかサイコ野郎!!卒業生代表としてテメーに拳の祝辞送ってやらぁ!!」
ミ,;=Д=彡「はいはいどうどう長岡さん」
ニダーは、周りの熱気を感じながら
『これは逃げられない』と、腹を決めた
<ヽ;`∀´>「はぁー……」
- 629 名前:>>1 :2015/12/04(金) 18:30:46 ID:rcxfxmgA0
- 実況と解説席には
ミセ*゚ー゚)リ「さぁー、いよいよ始まるよ!!打撃投げ極め技なんでもありのフルラウンド勝負!!実況は私、初春ミセリと!!」
( ^Д^)「大田原プギャー!!そして解説にはこの方!!阿部先生です!!」
N| "゚'` {"゚`lリ「やらないか」
放送部の二人と、怪我が治りつつある阿部さんが
(-_-)「両者、中央へ」
審判を務める引田の指示で、二人はリング中央で向かい合う
('A`)「乗る気じゃ無さそうだな?」
<ヽ;`∀´>「そっちはノリノリニダね」
('A`)「まぁな。こういう形でお前と拳を合わせられるんだ。燃えねえ筈がねえだろ」
<ヽ;`∀´>「そうニダか」
('A`)「それに……お前だってどうせ負ける気なんて微塵もねえんだろ?」
『あの時』とは、状況が違う
何故なら、ニダーの後ろには
川 ゚ー゚)
『彼の勝利の女神』が微笑んでいるからだ
- 630 名前:>>1 :2015/12/04(金) 18:33:16 ID:rcxfxmgA0
- <ヽ`∀´>「……情けない姿だけは、見せるわけにはいかないニダ」
ニダーの目の色が変ったのを見て、ドクオは口角をつり上げた
今回は、湧き上がるこの高揚感を抑えなくても良い。存分に、『喧嘩』を楽しめる
('∀`)「そりゃ、お互い様だ。残念だが、手ェ抜いて姉御を喜ばせる気は毛頭ねえぜ?」
<ヽ`∀´>「当然ニダ」
('∀`)「そんじゃ、ニダー……」
二人は、軽く拳をぶつけ合い挨拶を済ませると
('∀`)「『やってやろうぜ』」
<ヽ`∀´>「『やってやるニダ』」
それぞれのコーナーへと戻り、ゴングを待ち
('A`)「見てろよ」
从 ゚∀从「おうよ」
それぞれの勝利の女神と
<ヽ`∀´>「卒業祝いニダ」
川 ゚ -゚)「ああ、楽しませろ」
短く言葉を交わした
- 631 名前:>>1 :2015/12/04(金) 18:35:29 ID:rcxfxmgA0
- ('A`)「……」
<ヽ`∀´>「……」
軽快なゴングの音が鳴り響くと
「ニダァッ!!」<ヽ#`∀´> ('A`#)「ルァアッ!!」パァン!!
声援を後押しに、二つの拳が交差した――――――
- 632 名前:>>1 :2015/12/04(金) 18:36:50 ID:rcxfxmgA0
『マーケティング・レンタルコミックス』
(´・_ゝ・`) 「EDだぞ?泣けよ」
/ `ニニ´彳 `` ー 、
_,ノ´、, ,..>、リ,. -- 、. ヽ--、
/  ̄´ {-_,. -、 、,' ヽ
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/、 _,..イ´ ト. ´ i ´ }
/ ゙ー'´ }ヘ _,..ノヘ`ー- ...ィ! ', ハ {
,' ,' リヾニ=ニ´ ,. ‐'' h ー 、 ハ リ ノ}
,'八 , / \ミヽ、ヽ. |! } 彡N ', ハ
} (.,/ ∨ ヽ('' ´`` /´`'!,∨ ! ,.' i
,ハ', ii { 入__ _ノ.__,ノ | ∨ ,{
i : v リ /、 { ゚ ´,| | |, }
{ Y, ,' ィ‐‐-ミ、_`', リ } ,' ヽ
iヽ ! ,' : ハ`ヽ、..__,/-',〉-‐‐y ,}
}. ∨ ./ ノ / ∨' ,. _,./ ! `''"i ', {ノ'′
', `ヽ_,..{,' ノ i /´ 、 ヽ、.__ ,〉 ト,)
', r‐ヤ ' 人ノ >‐‐イ / ` }
ヽ、∨ /`ヽ、 / ハ , /
y' ,' ; / `{ ,/-‐ /
i i' /' ,/ ,.. ´
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♪サンボマスター - 青春狂騒曲
- 633 名前:>>1 :2015/12/04(金) 18:37:57 ID:rcxfxmgA0
- CAST
('A`) ドクオ
( ^ω^) 内藤ホライゾン
川 ゚ -゚) 素直クール
川 ゚ 々゚) 素直くるう
<ヽ`∀´> ニダー
从 ゚∀从 高岡ハインリヒ
( ・∀・) モララー
(-@∀@) アサピー
ノパ听) 素直ヒート
- 634 名前:>>1 :2015/12/04(金) 18:38:45 ID:rcxfxmgA0
,イ;:;:;' ノ' ヾ ゞ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
{;:;:;! '::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
. ' 乂.! ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
. : ヾト、 ___ \::::::::::::::::::::::::::::::::::: 阿部高和
. ,: ,ィf伝三ニニ==、 ヽ:::::::::::::::::::' ⌒ヽ
ヽ`""´___ ,. '::::::::::::::::'( ' ヽ
. :. ' ーt テ'" ':::::::::::' 〉 ヽ
,:' / \ '::::::' ノ !.;'
,: ./ ` ':::: ' ./::
: / ヾ! 、 イ:::::
:. ( ; { ;:::::
: ,.ー- ._ ' 彡:
. { .f ヽ / ;:;
::. 乂.._..、 - ' イ :.
.: _ -‐ ´_,. -―'--- 、 ,..:::::::: :.
. f"_ -‐ ´ l { ) ,..::::::::::::::: ヽ
ー- -‐  ̄ ヽ ,...:::::::::::::::::::::
乂 _ ノ / ヽ /
ヽ ̄ { ) 、 /'
v(´^ω^`)v ショボン
/ ,' 3 荒巻スカルチノフ
- 635 名前:>>1 :2015/12/04(金) 18:40:12 ID:rcxfxmgA0
- 【+ 】ゞ゚) 棺桶死オサム
(*゚∀゚) つー
<゚Д゚=> ギコタイガー
(//‰ ゚) サイボーグ横掘
爪'ー`)y‐ フォックス
爪゚ー゚) じぃ
- 636 名前:>>1 :2015/12/04(金) 18:40:56 ID:rcxfxmgA0
- _、_
( ,_ノ` ) 渋沢さん
J( 'ー`)し カーチャン
( ^ν^) ニュッ
从´ヮ`从ト 狸娘
( "ゞ) デルタ関ヶ原
( l v l) 宗男
- 637 名前:>>1 :2015/12/04(金) 18:42:22 ID:rcxfxmgA0
- ( ´∀`) モナー
ζ(゚ー゚*ζ デレ
(゚、゚トソン トソン
*(‘‘)* ヘリカル沢近
(;;・∀・;;) 黒マララー
( ´_ゝ`) 兄者
(´<_` ) 弟者
( ゚д゚ ) こっちみんな
( ゚∀゚) ジョルジュ長岡
ミ,,゚Д゚彡 フサギコ
|(●), 、(●)、| ダディクール
ミセ*゚ー゚)リ ミセリ
( ^Д^) プギャー
(-_-) ヒッキー
セリフのみ出演 シラネーヨ
モブ オリジナルAA
- 638 名前:>>1 :2015/12/04(金) 18:43:12 ID:rcxfxmgA0
- デミタス
(´・_ゝ・`) 「まどマギ最新作と聞いてオチンポ落ち着いていられないよ」
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_,ノ´、, ,..>、リ,. -- 、. ヽ--、
/  ̄´ {-_,. -、 、,' ヽ
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,'八 , / \ミヽ、ヽ. |! } 彡N ', ハ
} (.,/ ∨ ヽ('' ´`` /´`'!,∨ ! ,.' i
,ハ', ii { 入__ _ノ.__,ノ | ∨ ,{
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{ Y, ,' ィ‐‐-ミ、_`', リ } ,' ヽ
iヽ ! ,' : ハ`ヽ、..__,/-',〉-‐‐y ,}
}. ∨ ./ ノ / ∨' ,. _,./ ! `''"i ', {ノ'′
', `ヽ_,..{,' ノ i /´ 、 ヽ、.__ ,〉 ト,)
', r‐ヤ ' 人ノ >‐‐イ / ` }
ヽ、∨ /`ヽ、 / ハ , /
y' ,' ; / `{ ,/-‐ /
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i ,リ /-'" ,. '´
- 639 名前:>>1 :2015/12/04(金) 18:45:38 ID:rcxfxmgA0
- 使用楽曲
♪Black sabbath - War Pigs
♪ANTHEM - BLAST
♪Turmion Katilot - Rehtori
♪BOOM BOOM SATELLITES ‐ KICK IT OUT
♪サンボマスター - 青春狂騒曲
執筆期間
2014/01/24〜2015/12/04
公開
( ^ω^) ブーン系創作板のようです
- 640 名前:>>1 :2015/12/04(金) 18:49:32 ID:rcxfxmgA0
- まとめ
グレーゾーン −ブーン系小説まとめ−
元ネタ
ムカデ人間
劇場版 とある魔術の禁書目録/エンデュミオンの奇蹟
執筆
>>1
- 641 名前:>>1 :2015/12/04(金) 18:50:19 ID:rcxfxmgA0
.
- 642 名前:>>1 :2015/12/04(金) 18:51:31 ID:rcxfxmgA0
- ―――――
―――
―
松千代市、郊外
昭和の香りが色濃く残る喫茶店にて
( 'α`)「はい、スペシャルチョコレートパフェね」
( ^ω^)「おっほwwwwwやべえwwwwwww」
化粧の濃いウエイターに礼を返し
運ばれてきたパフェを頬張った
( ^ω^)「うめえwwwwwwww」
「甘党かい?」
( ^ω^)「……」
背後で、誰かが話しかけてきた
聞き覚えのある声だった。一度は殺されそうになった、危なくて美しい女の声
「私もたまに同じモノを頼むよ。美味しいよね」
( ^ω^)「ああ、うめえお」
ブーンは紙ナプキンを数枚取り、ホイップクリームが付いた口元を拭った
- 643 名前:>>1 :2015/12/04(金) 18:52:41 ID:rcxfxmgA0
- ( ^ω^)「それで、お姉さん。ガキのお誘いに乗ってくれる気になったのかお?」
「勘違いしないでよね。『将を射んと欲すれば先ず馬を射よ』って奴だよ」
( ^ω^)「ハッ、甘く見られたもんだお」
「甘いのは苦手?」
( ^ω^)「見りゃわかんだろ」
パフェグラスを指でチンと弾く
( ^ω^)「大好きだよ」
背後の女は、クスリと笑った
「それじゃ、色々と聞かせて欲しいな。君や、お友達の事を」
( ^ω^)「……ああ、たっぷり聞かせてやるよ」
今は、背中合わせの関係だが
いつの日か、『モノ』にしてやる
ドクオの恋とはまた違う、ギラギラとした興奮の炎を宿しながら
ブーンにとって初めての『デート』が始まった―――――
- 644 名前:>>1 :2015/12/04(金) 18:53:37 ID:rcxfxmgA0
『俺達の勝利の女神のようです』
END
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