- 168 名前:名も無きAAのようです :2014/03/09(日) 18:30:40 ID:tv9rkfP60
Place: 草咲市 須赤三丁目 31-1付近 薄暗いガード下
○
Cast: 内藤ホライゾン 津雲ツン 狂小屋アヒャ 子子子ギコ 子子子シイ
──────────────────────────────────
- 169 名前:名も無きAAのようです :2014/03/09(日) 18:32:27 ID:tv9rkfP60
ξ*゚听)ξ〜♪
黒いセーラー服の、若者にしては長いスカートを靡かせて、ツンは上機嫌に鼻歌を歌っていた。
腕に抱いているのは、何とも不気味なアニメキャラクターのぬいぐるみ。
巷では人気らしいが、僕はよく知らない。
女子高生と男子高校生は、同じ場所で生活しながら全く別の分化を築いて生きている。
学年が違えばなおさら。僕には分からぬ流行というのが、彼女生きている世界にはある。
( ^ω^) 先輩、それとるのにいくら使いました?
ξ゚听)ξ 二千円。
( ^ω^) 普通に雑貨屋で買った方がよかったんじゃないですかお?
ξ゚听)ξ 分かってないわね、ブーンは。私は「イトーイぬいぐるみ」が欲しかったんじゃなくて、
あのクレーンゲームのケースの中、潤んだ目でこっちを見ていたこの子が欲しかったのよ。
( ^ω^) はぁ。
つい気の無い返事を返す。
よくわからぬことであるけれど、クレーンゲームで取ったというのが彼女としては重要なのだろう。
「わかればいいのよ」とツン勝ち誇った笑みを浮かべた。
それが子供のようで愛らしく、まあいいかと、僕を諦めさせるのだ。
- 170 名前:名も無きAAのようです :2014/03/09(日) 18:33:38 ID:tv9rkfP60
ξ*゚听)ξ 〜♪
( ^ω^)=3
ぬいぐるみを抱く彼女、津雲ツンは僕の一つ年上だ。
同じ学校に通う彼女を僕は「先輩」と呼んでいる。
同じ学校に通う僕を、彼女は「ブーン」と呼ぶ。
小さい頃からのあだ名だ。
恥ずかしいのでやめてほしいと頼んだことが幾度とあったが、彼女はこの通り。
僕の頼みなど、聞いてくれたためしがない。
ξ*゚听)ξ 早くいきましょ、ブーン。暗くなっちゃうわ。
( ^ω^) ゲームセンターで時間を食ったのは、先輩じゃないですかお。
ξ゚听)ξ 細かいこと気にしない。
( ^ω^) はいですお。
ツンは、身長が低く、私服でいると中学生に間違われるほどだ。
故に、歩みは自然と僕の方が速くなる。
勝手に先に行くと、彼女はひどく怒るので、僕はゆっくりついていくのが常だ。
その上で急ぐとなるとこれがまた中途半端な速度になって、中々疲れる注文である。
僕たちは、線路のガード下に差し掛かった。
急なカーブの先、窪地のようになっているので見通しが悪く、人通りが少ない割によく事故が起きる。
立地のために昼間も暗く、いつも不気味な気配が漂っていた。
- 171 名前:名も無きAAのようです :2014/03/09(日) 18:35:19 ID:tv9rkfP60
黄色と黒のテープが張られたガードレールが歩道と車道を分けている。
その、僕らの行く歩道に、一人の男が立っていた。
薄手のようではあるが、コートを身に着け、帽子を目深に被っている。
いかにも、怪しい。
警戒心と緊張で、体が強張るのが自分で分かる。
だけれどツンは、全く怖気る様子なくずんずんと先へ行ってしまった。
慌ててついていく。彼女に何かあっては耐えられない。
( ゚∀゚ ) なあ、君たちちょっといいか。
男は、近づいた僕たちを見つけると、笑顔で声をかけてきた。
手にはポケットサイズの地図を持っている。
道を聞かれるのだろうな、とぼんやりと察した。
( ゚∀゚ ) 杭持ちの「正十字協会」へ行きたいんだけど、道わかるかな?
ξ゚听)ξ 十協?
( ゚∀゚ ) ああ、仕事で用があるんだけど、土地勘が無くてね。道に迷ってしまった。
なるほど。
地図をのぞき込むツンのすぐそばで、僕は少し感嘆する。
協会に行く、というのは、中々上手い理由だと思う。
- 172 名前:名も無きAAのようです :2014/03/09(日) 18:37:13 ID:tv9rkfP60
ξ゚听)ξ ここからだとちょっと遠いですよ。この道を……。
( ゚∀゚ ) え?どの道?
男が地図を差し出して、ツンはそれに指を伸ばしました。
二人が重なる様に、地図を覗き込みます。
僕は、鞄をちらりと見下ろしました。
ξ゚听)ξ 今いるところが、ここだから……。
( ゚∀゚ ) うんうん。
熱心に、ツンの説明を聞いている、などということは、無かった。
男の、地図を持つのとは逆の手が、ツンと僕の死角から、ツンの首へ振るわれた。
鋭い爪。人間の物ではない。
この男は、吸血鬼。
( ゚∀゚ ) ありがとなァ!
狂気の笑みを見た。
その瞬間に、僕のスイッチは確かに切り替わる。
( ;゚∀゚ ) ?!
男の手は、大きく空振り。
爪で切り裂かれるはずだったツンの体は、低く地面に伏せている。
それだけでなく、ツンは男の右足を掴んだ。
見計らうまでも無く、僕は鞄に手を入れ、中身を握って振り抜いた。
- 173 名前:名も無きAAのようです :2014/03/09(日) 18:38:22 ID:tv9rkfP60
( ; ∀ ) ガッ!!
鞄から飛び出したのは、鉄製の、手斧。
先端に備わった鈍色の刃が男の胸元に食い込み、鎖骨のあたりを割り砕く。
ツンが足を掴んで居たので、男はなす術なく後ろに仰け反って倒れた。
後頭部を打ったのだろう。硬い音が、ガード下に反響する。
ξ゚听)ξ ちょっとブーン、イトーイに血がついたらどうするの。
( ^ω^) そこですかお、問題。
鞘代わりにしていた鞄を捨て、僕は斧を両手で持つ。
小ぶりで扱い易いとはいえ、片手ではコントロールが効かず、パワーも乗らない。
おかげで一撃で仕留めるつもりが、中途半端なところを砕くだけに終わってしまった。
( ;゚∀゚ ) てめェ、まさかァ!
ξ゚听)ξっy=━ 遅いっつー。間抜け。
ツンがスカートの内側に隠していた銃を抜いて、両手で構える。
発砲。唇をかみしめて耐えているが、反動が辛いのだ。
二発打ったところで手をプラプラとほぐし始めまる。
( ;゚∀゚ ) こんな、ガキがァ?!
ツンの放った弾丸は男の血に弾かれた。
竹とんぼのような状態に形を変えた血が、クルクルと三つ、飛翔している。
見た目は玩具のようだが、銃弾を弾いたのだ。侮れない。
男はそのまま機敏に距離を取る。やはり、いまいち浅かった。
- 174 名前:名も無きAAのようです :2014/03/09(日) 18:39:25 ID:tv9rkfP60
僕はポケットからスプレーを取り出し、斧と服に吹きかけた。
この程度の量であれば、これで血の機能を停止させられるはずだ。
試作段階の品なので、あまり信用するべきではないけれど。
( ;゚∀゚ ) だが、残念!俺をそこらの雑魚と一緒にするなよ!
斧に着いた血がうぞうぞと動き半端に刃の形になったが、そのままぽとりと地面に堕ちる。
男の顔を見るに、斧に着いた血を操って奇襲するつもりだったんだろう。
なるほど、中々役に立つ。
( ;゚∀゚ ) あ、あれェ?!
ξ゚听)ξ ブーン、アレなにやってんの?
( ^ω^) きっと其処らの雑魚と一緒にしてほしいんですお。
シャツのボタンの2つ目を外して、僕が前へ。
ツンは自分のカバンをごそごそと探ってる。別の銃を探しているんだ。
だから、整理整頓は普段からちゃんとしておくようにと言っていたのに。
( ;゚∀゚ ) 何をしたかしらねえが、だが俺にはこの『ブラッドレッドスライサー』があるぜ!!
ξ゚听)ξ (うわだっさ) ボソッ
( ^ω^) (大天福さん未満のセンスですお) ボソッ
- 175 名前:名も無きAAのようです :2014/03/09(日) 18:42:30 ID:tv9rkfP60
しかし、敵の周囲を飛び回る刃というのは中々厄介だ。
真正面から切り込めば、囲まれて刻まれてしまう。
なら、やるべきことは決まっている。
( ^ω^) 先輩。ありましたかお?
ξ゚听)ξ おっけーおっけー。あったわ。
ツンが拳銃の代りに取りだしたのは、銃身を切り詰めたショットガン。
小さな銃ですら手を痺れさせる彼女に使えるのかと疑問に思われるかもしれないけれど、
むしろ、だからこそ散弾であるほうが扱えるのだ。
僕の脇を抜けて、ツンが突撃した。
銃は腰元に、抱えるように持っている。
散弾ならば狙いを定める必要性が他のよりも低いから、体全体で耐衝撃出来るのだ。
男はツンの銃を見てぎょっとした。
銃把にヘンテコなキーホルダーがついていることを除けば、拳銃よりも威圧感を感じるのは当然だろう。
必然的に、血のプロペラはツンヘ。3つあるうちの、2つが彼女を襲う。
狙い通りではあるんだけど、急がなければツンが刻まれてしまう。
僕は斧を振りかぶり、思いっきり投擲した。
- 176 名前:名も無きAAのようです :2014/03/09(日) 18:44:46 ID:tv9rkfP60
( ;゚∀゚ ) へっ?!
斧を、殴りつける武器だと思いこんでいたのだろう。
男は回避も防御もできず、間抜けな声と入れ替えに斧刃を受け止めた。
位置は心臓。直接で無いとはいえ、確かな手応え。
骨が砕け肉の潰れる音が反響する。
ツンに飛ばされた2つの刃は、制御を失ってアスファルトとガードレールを抉った。
中々の切れ味。人体に触れれば容易く刻まれてしまう。
恐ろしい。幸だったのは、使っていたのが間抜けな吸血鬼だったということか。
バカとハサミは使いようという言葉があるけれど、バカにハサミを持たせても役には立たないようだ。
ξ゚听)ξ ほっ
辛うじて立っている男に、一切の減速無くツンが接近する。
そして急ブレーキと同時、抱えていたショットガンを片手に持ち替え突き出し、銃口を男の頭へ。
( ;゚∀゚ ) あっ
男の声は、銃声と散弾に飲まれた。
飛び散る脳漿と骨片。頭の三割ほどが吹き飛ぶ。
脳幹が残っているのでまだ殺しきれていない可能性もあるけれど、ツンならちゃんとやるだろう。
ξ;゚听)ξ いったぁ〜もうマジ無理。
手をプラプラとさせながら、瀕死の男に近づくツン。
今度はちゃんと両手を添えて、腰元から散弾を放つ。
砕けた肉片と骨が、飛沫となって舞い散った。
これで終い。周囲を見渡して、ついついため息が出てしまう。
諸先輩方であれば、もう少しスマートに出来たかもしれない。反省は多い。
- 178 名前:名も無きAAのようです :2014/03/09(日) 18:46:28 ID:tv9rkfP60
ξ;゚听)ξ ブーン、連絡ー。
( ^ω^) ハイですお。
僕が処理班へ連絡する間、ツンは使った武器の片づけをしていた。
相変わらず雑だ。備品は丁寧に扱ってと言っているのに。
ポケットから仕事用に与えられた携帯端末を取り出し、処理班の番号を探す。
いかんせん登録している番号が多いので、中々見つけられない。
何より、普段使いの物とは異なるので、余計に扱い難く感じてしまう。
(*゚ー゚) あらあら、これはまた随分派手に散らかったのね。
戦後処理で油断しきっていた僕とツンはその時酷く驚いていた。
ガード下は薄暗く、確かに見通しがいいとは言えない。
だからと言って、気付かないはずがないんだ。
肩に手を触れられるほどの距離に、人が近づいてきていたことに。
ツンは咄嗟に銃を構えた。
僕は、背後数歩の距離にいたその人から飛びのき距離を取る。
美しい人だった。
妖艶さを持ちながら、どこか幼い少女のようで。
赤みがかった頬には、右にだけえくぼが出来ている。
散切りにした、女性にしてはあまり長くないが、優しい風に吹かれさらさらと靡いた。
正直を言えば、僕は見とれてしまっていたのだ。
彼女が、吸血鬼であると理解しながらも。
- 179 名前:名も無きAAのようです :2014/03/09(日) 18:47:57 ID:tv9rkfP60
(*゚ー゚) ちょとだけ、待ってもらえる?
彼女は、ためらいの一つ無く、僕に近づき、手から携帯端末を抜き取った。
僕は動かなかった。いや、動けなかったのだ。
金縛りだ。体が石のようにいうことを聞かず、首から下がどこかに消えてしまったようですらある。
ξ#゚听)ξ ブーン!下がりなさい!!
ツンが、女性の頭に狙いを定める。
僕は彼女の命令に従って、咄嗟に飛びのいた。不思議と、体が動いた。
金縛りは恐らく、吸血鬼の持つ暗示の力を応用した物だったのだろう。
こちらの意志が勝てば破ることはできる。
虚しいのは、自分の意志でなく、ツンの命令が切っ掛けだったということだろうか。
ξ#゚听)ξっy=━ こんの!
射線から僕が外れた瞬間に、サイレンサー付きの銃口が火を噴いた。
くぐもった、行き場を失った空気が鳴らす汚い音。
ツンは、貧弱ではあるけれど、射撃の腕前は中々だ。
放たれた銃弾は、確かに女の眉間を軌道にしている。
しかし。
- 180 名前:名も無きAAのようです :2014/03/09(日) 18:48:38 ID:tv9rkfP60
(*゚ー゚) 慌てない慌てない。
(,,゚Д゚) 最近の杭持ちは、挨拶もできねえのか。
これまた唐突に現れたもう一人の男。
女の脳を穿つはずの銃弾は、彼の手に収まっている。
(*゚ー゚) ギコさんありがとう。
(,,゚Д゚) 子供とはいえ、武器を持った相手だ。迂闊をするなよ。
男の手から銃弾が落ちた。
僅かに血がついている。
少し安心した。無傷であったらいくらなんでも銃の存在意義が無い。
とはいえ人間の僕たちで言う、針で間違って指を刺した、程度の傷でしかないんだけれど。
ξ#゚听)ξっy=━ なめんな!
(,,゚Д゚) ……。
男の姿が消えた。
目にも留まらぬ速さで、ツンヘ間合いを詰めたのだ。
僕の頬を風が撫でる。すぐ傍を通ったはずなのに、全く反応が出来なかった。
振り返る。既に、男がツンの背後に回り、手刀を振り下ろすところだった。
- 181 名前:名も無きAAのようです :2014/03/09(日) 18:49:55 ID:tv9rkfP60
首元を叩かれ、ツンが白目を剥いてグラついた。
男はすかさずその体を支える。手から落ちた銃が、硬い反響を生んだ。
( ;^ω^) 先輩!!
(,,゚Д゚) 少し寝て貰っただけだ。案ずるな。
( ;^ω^) ……。
確かに息はあるようだ。
でも、白目を剥いて気絶しているのを見て、案じないなんてことはできない。
どうしようもできない僕を尻目に、男は吸血鬼の死体をのぞき込んでいた。
僕らよりも、こっちが目的だったと言わんばかりだ。
(*゚ー゚) ギコさん、どうですか?
( ;^ω^) (ギコ……ギコ?)
(,,゚Д゚) 顔が吹っ飛んでて判別がつかんな……。
(*゚ー゚) もっと上手に殺さなきゃ。ね、新人くん
( ;^ω^) (ギコ……そうか!)
- 182 名前:名も無きAAのようです :2014/03/09(日) 18:51:36 ID:tv9rkfP60
男の名前と、その尋常でない強さにつながる資料が、頭の中に眠っていた。
子子子(ねこし)ギコ。脅威度B。
血刑は不明だが、高い身体能力を利用した徒手空拳による戦闘は、吸血鬼の中でも群を抜く。
純粋な戦闘に置いては、AA相当であるとされるが、吸血鬼の集団を自治し、
人間に不要な害を与える吸血鬼を粛清するなど、人間に対し友好的な態度を貫いているため
脅威度は数段控えた値に設定されている。
となると、もう一人女性は、子子子シイ。
彼女については名前と、ギコの伴侶または身内らしいということ以外は判明していない。
体感するに、今僕が再びかけられたような、暗示の能力に長けてるようだ。
(,,゚Д゚) まあ、狂小屋に違いは無いだろう。
ギコは、指に着いた吸血鬼の血を嗅いで眉間にしわを寄せる。
ご明察。僕らが狙い、罠にかけて仕留めたこの男は狂小屋(きちがいごや)アヒャ。
脅威度はギコに同じくBとされているものの、その力の差は現状を見れば明らかだ。
(*゚ー゚) そっか。ね、あなた名前は内藤くん?津雲くん?
( ;^ω^) ……。
(*゚ー゚) 内藤くん、のほうか。私たちに名前を教えたくないのはわかるけど、なら、徹底しないとね。
にこりと無垢な笑顔を作りながら、シイは僕の胸をつつく。
学校指定の名札。白地のプラスチックに、黒で「内藤」と彫られている。
もどかしい。掌の上で踊らされているような居心地の悪さを感じる。
- 183 名前:名も無きAAのようです :2014/03/09(日) 18:52:34 ID:tv9rkfP60
(*゚ー゚) ありがとうね内藤君。アヒャは、ちょっと最近悪ふざけが過ぎたから、私たちも探していたの。
(,,゚Д゚) 俺たちは吸血鬼の間じゃ名が売れているからな。警戒されて中々捕まえられず、困ってたんだよ。
( ;^ω^)…… いつから、僕らを?
(*゚ー゚) えっと、四日前くらいかな。君たちを、アヒャの狩場で見かけて、そこで興味を持ったの。
僕らが丁度、狂小屋を狙って、出没地域をうろつき始めた頃だ。
(*゚ー゚)調べてびっくり。あなたたち、現役の高校生で杭持ちなのね。
杭持ちの情報は、できうる限り漏えいしないようにされている。
特に僕たちはいわゆる囮専門なので、なおさら厳しく管理されていなければならない。
少なくともそこらの吸血鬼が少し調べただけでわかるほど安易な扱いはされていないはず。
なのに、彼らにはわかってしまったのだ。
実力に見合わない脅威度も含め、もしかしたら杭持ちに何かしらのつながりがあるのか、と勘繰りを覚える。
(,,゚Д゚) んで、まあ。自分たちを疑似餌として奴をおびき出そうとするお前たちを、俺たちは餌として使おうと思ったわけだ。
(*゚ー゚) あなたたち、普段があまりに普通だから、ガセかと思っちゃった。
光栄だった。
僕たちは戦闘よりもそちらの訓練を重点的に行わされているので、それ以外に価値を認められてはいない。
- 184 名前:名も無きAAのようです :2014/03/09(日) 18:53:43 ID:tv9rkfP60
(,,゚Д゚) っつーわけで、此奴の死体はもらっていくぜ。
( ;^ω^) ま、待て!それはさせないお!
僕は、反射的に拳を構えた。
斧はさっき投げ、死体に食い込んだまま。
予備の杭は目立たぬよう脛に備えているので、取って斬りかかるには時間を食いすぎる。
とはいえ、この男相手に徒手空拳は無い。
間抜けすぎて自分にため息が出そうだった。
実際はため息の代りに脂汗がにじみ出た。
(,,゚Д゚) お前はいくらか賢そうだ。戦うまでも無く、分かるだろう。
そう、僕は絶対にこの人には勝てない。
完璧に隙をついた奇襲でも三割以下の勝率と予想する。
僕が弱すぎるんじゃない。ギコが強すぎるんだ。
(,,゚Д゚) 俺たちは、お前たちと無暗に敵対する気はない。ほれ、お姫様を連れてさっさと帰れ。
放り投げられたツンの体を、お姫様抱っこで受け止める。
ツンは、細くて軽い。といっても、投げら慣性のついたその体は、僕をよろけさせるのに十分な重さを持っていた。
片手とお尻を地面に突く。ツンは相変わらずの白目。
涎が垂れているが、拭いてやる余裕は無い。
- 185 名前:名も無きAAのようです :2014/03/09(日) 18:54:42 ID:tv9rkfP60
(*゚ー゚) じゃ、内藤君。少しそこで、目をつぶってじっとしていてね。
しいが僕の顔を覗き込んで、笑った。
その瞬間、瞼が急に重くなり、体が再び縛られたようにいうことを聞かなくなる。
また暗示だ。やはり、自分の意志では破れない。
抵抗虚しく、僕の体は瞼を閉じて、僕の意識を闇へ閉じこめた。
ギコさん、大丈夫?
気にするな。
はやくいきましょ。きっとみんな待ってるわ。
ああ
足音が遠のいていく。
必死でからだを動かそうとするが、やはり無理。
腕に抱えたツンの髪がふらふらと腕を撫でるばかりだ。
( ;^ω^) ……くそっ
やっと目を開けられたのは、数分ほど経ったのち。
そこにギコとしいの姿は無く、僕たちが仕留めた狂小屋の死体も綺麗に失せてしまっていた。
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