- 144 名前:名も無きAAのようです :2013/05/24(金) 18:13:49 ID:Hgu/7QOo0
-
( ,,゚Д゚)「お前が、でぃか」
雨に濡れて吸えなくなった煙草を地面に放って、男はそう言った。
緩慢に顔を上げた少女は、虚ろな瞳で男を見上げた。
( ,,゚Д゚)「今日からお前を守ることになった。ギコだ」
青い果実のようです
- 145 名前:名も無きAAのようです :2013/05/24(金) 18:16:01 ID:Hgu/7QOo0
- (#゚;;-゚)「ギコさんはどうして私を守るの」
少女がそう問うと、男は咥えていた煙草を口から離して深く息を吐いた。
外は未だに雨がざあざあと降っている。
( ,,゚Д゚)「それが、俺に課せられた使命だからだ」
(#゚;;-゚)「……?」
少女は片耳を失って久しい頭を傾げて、訳が分からないとでも言うようにきょとんとしていた。
その様子を横目で見た男はくつりと喉奥で笑う。
煙草を床に落とし、靴で踏み躙る。
先ほどまで紫煙を出していた煙草はあっという間に塵屑と化した。
- 146 名前:名も無きAAのようです :2013/05/24(金) 18:17:35 ID:Hgu/7QOo0
- ( ,,゚Д゚)「ほら」
男が歌うように言い、自分が着ていた黒いスーツのジャケットを少女に投げた。
突然のことに受け止めることもできなかった少女を、すっぽりとジャケットが覆う。
真っ黒になった視界に驚いて、慌ててジャケットを剥がそうとした少女の片耳に。
……、……
僅かな音が、聞こえる。
( ,,゚Д゚)「でぃ」
男が名を呼ぶ。
低く、どこか甘さを帯びている男の声が、
- 147 名前:名も無きAAのようです :2013/05/24(金) 18:19:08 ID:Hgu/7QOo0
- ( ,,゚Д゚)「お遊びの時間だ」
凶暴に、唸った。
男は少女に言うなり、腰のホルダーにあった銃を引き抜いて扉に三発撃ち込んだ。
襤褸ビルの、古びた木製のドアには簡単に穴が開いた。
貫通した先で呻き声と、重いものが落ちるような音がした。
少女は突如響いた銃声に身を固くするばかりだった。
ジャケットを剥がそうとしていた手を止めて、ひたすら唇をきゅっと結ぶ。
視界を失った少女にとっては、今の銃声が男のものか相手のものかも分からなかったからだ。
動かなくなった黒い小さな存在を見て、男は思わずといったように吹き出した。
そうしてその後おかしそうに続く笑い声を聞いて、少女は男の無事を知ると同時にじわりじわりと羞恥が湧き上がってくるのを感じる。
- 148 名前:名も無きAAのようです :2013/05/24(金) 18:21:03 ID:Hgu/7QOo0
- ( ,,^Д^)「おまっ、急に……電池切れたみたいだな」
(*゚;;-゚)「だっ、だって……!」
( ,,゚Д`)「あー怒るな怒るな、俺が悪かった」
もぞもぞと動いて、少女はやっとジャケットから脱出した。
目に差し込んでくる薄暗い明かりと、それに照らされた男が腹を抱えて笑っている様を見てかっと顔を赤くする。
(#゚;;-゚)(だって怖かったのに!)
心の内ではそう思っても、まだ会って一時間も経っていない相手にそうぶちまけるのは避けたいと少女は思った。
- 149 名前:名も無きAAのようです :2013/05/24(金) 18:22:09 ID:Hgu/7QOo0
- 自分だったら、と少女は考える。
自分だったら。会って一時間も経っていない相手に、突然ヒステリックに叫び散らされたら嫌だと思う。
だがそれを考えると、突然腹を抱えるくらい笑われることはどうなのだという結論に至って、少女は更に起き上がった怒りを鎮めようと奮闘した。
(#゚;;-゚)(きっとこの人は最低な人なんだ!)
そう考えて少女は納得することにした。
( ,,゚Д゚)「ところででぃお嬢さん、真っ赤な顔をしているところ悪いんだが」
男の方へと顔を向けようとした少女は、次の瞬間。
体を襲った浮遊感に、小さく悲鳴を上げた。
- 150 名前:名も無きAAのようです :2013/05/24(金) 18:23:07 ID:Hgu/7QOo0
- ( ,,゚Д゚)「ちょっと揺れるけど、我慢しろよ」
男は少女を脇に抱えたまま、襤褸ビルの窓枠に足を掛けて。
雨が降る外へと、飛び降りた。
(#゚;;-゚)「……っ」
信じられない出来事に悲鳴さえ上げることを忘れた少女の耳に、銃声が飛び込んでくる。
身を捩って視線を遣れば、さっきまで自分達の居た部屋が発砲されているのが見える。
焦ったように部屋に駆け込んだ、悪人面の男達がきょろきょろと部屋を見回して罵声を吐く。
その中でも歳を食った、老人にも近い男が、こちらを振り返った。
窓枠に身を乗り出して、男がこちらに叫ぶ。
- 151 名前:名も無きAAのようです :2013/05/24(金) 18:26:07 ID:Hgu/7QOo0
-
/ ,' 3 「逃げるかッ、ギコ!!」
雨音が強いはずの外でも、その男の言葉ははっきりと落ちるこちらに届いた。
少女が自分を抱える男に呼びかけようとした時、どうしようもない浮遊感が不意に消える。
下を見れば床があって、男が着地したのだと分かった。
( ,,゚Д゚)「逃げねーよ、俺は!」
頭上で男が声を張り上げる。
( ,,゚Д゚)「守るもんができたから守る、それだけだ!」
- 152 名前:名も無きAAのようです :2013/05/24(金) 18:28:30 ID:Hgu/7QOo0
- / ,' 3「必ず、捕まえるぞ――『蒼天の使者』!」
( ,,゚Д゚)「……古いんだよ、その名前は」
小声で吐き捨てると、脇の少女を抱え直して男は走り出した。
ざあざあと雨音が煩かった。
―
男は屋根から屋根へと、軽々と隙間を飛び越えて走っていく。
それに揺られるがままに、少女は男の脇に抱えられている。
( ,,゚Д゚)「でぃ。どこへ行こうか」
- 153 名前:名も無きAAのようです :2013/05/24(金) 18:30:01 ID:Hgu/7QOo0
- (#゚;;-゚)「……あなたが連れて行くんでしょ」
( ,,゚Д゚)「駄目だぞ、そうやって大人の言いなりになるの」
(#゚;;-゚)「じゃあ、言ったらそこに連れてってくれるの」
( ,,゚Д゚)「行かないな」
(#゚;;-゚)「でしょ?」
少女は溜息を吐いた。
溜息の音を聞いた男は、走っているなど微塵も感じさせぬ調子で声を発する。
( ,,゚Д゚)「何も考えなくていいさ、俺が全部やってやる。守ってやるから」
- 154 名前:名も無きAAのようです :2013/05/24(金) 18:32:21 ID:Hgu/7QOo0
- (#゚;;-゚)「……じゃあお願いすることにする。でも、えっと、ギコ」
「ん?」男は控えめに腕を叩いてくる少女に気付いて、足を止めた。
(#゚;;-゚)「私、歩きたい。お嬢様みたいなことは性に合わないから」
( ,,゚Д゚)「……それは悪かったな」
青い果実のようです 終わり
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