- 105 名前:ξ゚听)ξ愛は眩しいようです :2013/12/30(月) 21:06:30.75 ID:/Hkn/Q9x0
- ガチャ
ξ゚听)ξ「ブーン」
( -ω-)「……その声はツンかお?」
ξ゚听)ξ「ええ、そうよ。よくわかったわね」
( -ω-)「お前の声を何年聞いていると思ってるんだお」
ξ゚听)ξ「くせえ」
( -ω-)「すまんお」
ξ゚听)ξ「……今度、温水洋一の声マネして来ようかしら」
( -ω-)「やめとけお。ハゲが伝染るお」
- 106 名前:ξ゚听)ξ愛は眩しいようです :2013/12/30(月) 21:08:36.00 ID:/Hkn/Q9x0
- ( -ω-)「……いいのかお?」
ξ゚听)ξ「何が?」
( -ω-)「今年も残すところあと僅か」
( -ω-)「忘年会とか色々あるんじゃないかお?」
ξ゚听)ξ「いいわよ。そんなの」
ξ゚听)ξ「あのバカ共とわいわいやっても時間を空費するだけよ」
( -ω-)「馬鹿やれるからこその友達だお」
ξ゚听)ξ「放置プレーしてあげてんのよ」
( -ω-)「……今ごろ、君の友達が寂しくて泣いてるかもしれんお」
ξ゚听)ξ「だとしたらいい気味ね」
( -ω-)「かわいそうだお」
ξ゚听)ξ「…………」
- 108 名前:ξ゚听)ξ愛は眩しいようです :2013/12/30(月) 21:10:39.37 ID:/Hkn/Q9x0
- ξ゚听)ξ「さっきからうじうじウジウジと……あんた何が言いたいのよ」
( -ω-)「わからないのかお」
ξ゚听)ξ「わからないわよ」
( -ω-)「じゃあ言うお」
( -ω-)「……もう、僕のところには来なくていいお」
ξ゚听)ξ「……はあ、冗談で言ってるわけ?」
( -ω-)「本気だお」
ξ゚听)ξ「意味がわからない。あんた、私のこと嫌いになったの?」
( -ω-)「違うお。好きだお」
ξ゚听)ξ「じゃあなんで」
( -ω-)「……嫌なんだお」
- 109 名前:ξ゚听)ξ愛は眩しいようです :2013/12/30(月) 21:13:02.42 ID:/Hkn/Q9x0
- ( -ω-)「僕の眼が見えなくなって早三年。
君は毎日のようにここへやって来るお」
( -ω-)「そして年末、クリスマスといった行事の日は必ず休みを取って、
僕の元で一日を過ごす」
ξ゚听)ξ「別に暇だから来てやってんのよ」
( -ω-)「嘘だお。現に、忘年会があると言ったお」
ξ゚听)ξ「だから、それは」
( -ω-)「もういいんだお」
( -ω-)「君はさっき、それをわいわいやるだけで時間の無駄と言ったおね」
( -ω-)「確かに今は君の言う通りかもしれないけど、数年経てば
懐かしい思い出として話のタネになるってトーチャンが昔言ってたお」
- 111 名前:ξ゚听)ξ愛は眩しいようです :2013/12/30(月) 21:15:35.97 ID:/Hkn/Q9x0
- ( -ω-)「対してこっちはどうだお?」
( -ω-)「ぽつぽつと話をするだけで後には何も残らない……」
( -ω-)「ひょっとするとこうして二人で過ごす時間は…」
ξ゚听)ξ「やめてよ」
ξ゚听)ξ「あんたと過ごした日々がその実、
空っぽで、虚しいものだったなんて……」
ξ )ξ「そんなわけないじゃない……」
( -ω-)「…………」
( -ω-)「テレビ、見なくなったおね」
ξ )ξ「見たい番組が無いのよ……」
( -ω-)「気、遣うなお」
ξ )ξ「そんなんじゃない」
- 114 名前:ξ゚听)ξ愛は眩しいようです :2013/12/30(月) 21:17:38.79 ID:/Hkn/Q9x0
- ( -ω-)「でも君は外の世界を見ることができる」
ξ )ξ「……ええ」
( -ω-)「それはつまり、最新の僕の───と言っても、大して代わり映え
しないだろうけど───姿を脳に焼き付けられるってことだお」
( -ω-)「だけど、僕の中のツンは三年前のあの日のまま……」
ξ )ξ「…………」
( -ω-)「でも、やがてその記憶も薄れていき……そして」
ξ )ξ「いい加減にして」
- 116 名前:ξ゚听)ξ愛は眩しいようです :2013/12/30(月) 21:19:42.90 ID:/Hkn/Q9x0
- ξ#゚听)ξ「あんたいつからそんなに弱々しくなったのよ! 男でしょ!」
( -ω-)「怖いんだお……声は聞こえるのに、顔が思い出せなくなる日が来るのが」
ξ#゚听)ξ「あたしが嫌でも思い出させてあげるわよ!!」
( -ω-)「無理だお」
( -ω-)「だって今も、君の怒る顔を拝むことすらできない」
ξ#゚听)ξ「…………」
バシィッ
( -ω(#)「……頬を打つきれいな手の平を見ることも叶わないんだお」
ξ# )ξ「ッ……」
- 117 名前:ξ゚听)ξ愛は眩しいようです :2013/12/30(月) 21:21:48.71 ID:/Hkn/Q9x0
- ( -ω(#)「それでも君は僕の傍に居続けようと言うのかお」
ξ#゚听)ξ「当たり前じゃない!」
ξ#゚听)ξ「医者がさじを投げても!
家族があんたのことを諦めても!」
ξ#゚听)ξ「あたしが奇跡でもなんでも起こしてあげるから!」
ξ )ξ「だから……がんばりなさいよ……」
( -ω(#)「……そうかお」
( -ω(#)「なら一つ、条件があるお」
ξ# )ξ「何よ」
( -ω(#)「テレビの横の引き出しを開けてくれお」
ξ# )ξ「引き出し……?」
ξ# )ξ ガララッ
ξ )ξ「!」
- 118 名前:ξ゚听)ξ愛は眩しいようです :2013/12/30(月) 21:23:52.28 ID:/Hkn/Q9x0
- ( -ω(#)「あったかお?」
ξ゚听)ξ「これは……」
( -ω(#)「スケッチブックと絵描き道具一式だお」
ξ゚听)ξ「じゃなくて」
( -ω(#)「……僕が画家を志望していた頃のものだおね」
ξ゚听)ξ「なんで……」
( -ω(#)「昨日、カーチャンに持って来させたんだお」
ξ゚听)ξ「…………」
- 121 名前:ξ゚听)ξ愛は眩しいようです :2013/12/30(月) 21:25:54.99 ID:/Hkn/Q9x0
- ξ゚听)ξ「で、あたしは何をすればいいの?」
( -ω(#)「今から数時間後に見えるであろう、
初日の出を描いて持ってきてほしいんだお」
ξ゚听)ξ「何それ? 簡単じゃ」
( -ω(#)「ただし」
( -ω(#)「僕の眼にもきっちり見えるような美しい絵を、だお」
ξ゚听)ξ「!」
- 123 名前:ξ゚听)ξ愛は眩しいようです :2013/12/30(月) 21:28:33.69 ID:/Hkn/Q9x0
- ξ゚听)ξ「何よそれ……そんなの無理に」
( -ω(#)「僕のためなら、奇跡でもなんでも絶対に起こす」
( -ω(#)「───今し方、君がそう宣言したお」
ξ゚听)ξ「ッ!」
( -ω(#)「やっぱ無理かお?」
ξ゚听)ξ「……いいじゃない」
ξ゚听)ξ「やってやるわよ」
( -ω(#)「…………」
ξ゚听)ξ「でも一つ言わせて」
( -ω-)「お?」
ξ゚听)ξ「これはあんたのためじゃない」
ξ )ξ「あたしがあんたと一緒に居たいからやるのよ!」
バタンッ
( -ω(#)
( -ω(#)「どっちもデレじゃないかお……」
- 126 名前:ξ゚听)ξ愛は眩しいようです :2013/12/30(月) 21:30:37.28 ID:/Hkn/Q9x0
- ξ゚听)ξ(とは言ったものの)
ξ゚听)ξ(絵心の無いあたしがどうやって描けばいいのか)
ξ゚听)ξ「…………」
ξ゚听)ξ(とにかく、天気予報をチェックして、現地に向かうことね。
話はそれからだわ)
ξ゚听)ξ スタスタ
「ツンさん」
ξ゚听)ξ ピタッ
ξ゚听)ξ「……あんたは」
(´・ω・`)「お久しぶりです」
- 128 名前:ξ゚听)ξ愛は眩しいようです :2013/12/30(月) 21:33:46.69 ID:/Hkn/Q9x0
- ξ゚听)ξ「ショボンだっけ?」
(´・ω・`)「そうです」
ξ゚听)ξ「何、お見舞い?」
(´・ω・`)「そんなところですね」
ξ゚听)ξ「話ならあたしが伝えといてあげるわよ?」
(´・ω・`)「いいです。自分で伝えるので」
ξ゚听)ξ「そう、じゃあね」
ξ゚听)ξ スタスタ
(´・ω・`)「ああ、そうだツンさん」
ξ゚听)ξ イラッ「何よ?」
- 131 名前:ξ゚听)ξ愛は眩しいようです :2013/12/30(月) 21:35:50.13 ID:/Hkn/Q9x0
- (´・ω・`)「聞くところによると、経過は通院時からほぼ横ばいだそうじゃないか」
ξ゚听)ξ「みたいね」
(´・ω・`)「……一つ、言わせてもらうけど」
(´・ω・`)「この先、何年掛かろうと彼の視力が戻る可能性は限りなくゼロだ」
(´・ω・`)「ならばもう」
ξ゚听)ξ「諦めないわよ」
(´・ω・`)「しかし……」
ξ゚听)ξ「最初からあんたに治療費は求めてないし、嫌ならもう払わなくていい」
(´・ω・`)「そうかい……」
(´・ω・`)「でもね」
(´・ω・`)「人間、諦めが肝心だよ」
- 132 名前:ξ゚听)ξ愛は眩しいようです :2013/12/30(月) 21:38:16.73 ID:/Hkn/Q9x0
- ξ゚听)ξ スタスタ
ξ゚听)ξ(よく言えるわよ)
ξ゚听)ξ(あんたがアツアツの油揚げを両手に携えて公道を暴れ回らなければ……)
ξ゚听)ξ(ブーンがあたしを庇って撥ねた油が大量に目に入らなければ……)
ξ゚听)ξ(こんなことにはなってなかったのよ……)
ξ゚听)ξ「ってこんなとこで時間食ってる場合じゃなかったわ。急がないと」
ツンは車を走らせた。
彼女の住む地域は曇りの予報が出ていたため、長距離移動をする必要があったのだ。
道中、渋滞に苛立ちを募らせながらも東へ走らせること半日。
ツンは遂に目的の場所に辿り着いた。
そこはとある県の穴場として知られる海岸だった。
嘗て、ブーンが絵を描くのに利用し、付き添いだったツンは覚えていたのだ。
- 135 名前:ξ゚听)ξ愛は眩しいようです :2013/12/30(月) 21:40:19.25 ID:/Hkn/Q9x0
- しかし、
ξ゚听)ξ「ウソよ……」
ξ゚听)ξ「さっきまで晴れてたでしょ……」
ポタポタ…
ξ゚听)ξ「しかも雨まで降り出して……」
ザーッ…
ξ゚听)ξ「何よ、そこまでする必要なんてないじゃない」
ξ゚听)ξ「…………」
ξ゚听)ξ「だったら───」
- 137 名前:ξ゚听)ξ愛は眩しいようです :2013/12/30(月) 21:42:22.47 ID:/Hkn/Q9x0
- ( -ω-)「静かだお……」
( -ω-)「…………」
( -ω-)(少し意地悪だったかお?)
( -ω-)(……でも、いいんだお)
ダッダッダッ
( -ω-)「……お?」
ガチャ
「ブーン!!」
( -ω-)「……出来上がったのかお?」
「ええ、とびっきりのものがね」
( -ω-)「じゃあ見せて───」
- 139 名前:ξ゚听)ξ愛は眩しいようです :2013/12/30(月) 21:44:37.74 ID:/Hkn/Q9x0
-
彡⌒ミ ピカーッ
ξ゚听)ξ「どう?」
(;゚ω゚)「うおおおおおお眩しィーーッ!!」
( ゚ω゚)「───お?」
彡⌒ミ テカテカ
ξ゚听)ξ「……ブーン?」
( ゚ω゚)「み……見えるお」
( ゚ω゚)「ツン……それが君の……」
彡⌒ミ キラリ
ξ゚听)ξ「ええ、これがあたしの答え」
( ゚ω゚)
( ;ω;) ブワッ
- 142 名前:ξ゚听)ξ愛は眩しいようです :2013/12/30(月) 21:47:13.33 ID:/Hkn/Q9x0
- ( ;ω;)「君は……」
彡⌒ミ
ξ゚听)ξ「あんたのせいなんだからね」
( ;ω;)「おっ……」
彡⌒ミ
ξ゚听)ξ「これが今のあたし」
彡⌒ミ
ξ゚听)ξ「しっかり頭に焼き付けてよね」
( ;ω;)「君は馬鹿だお」
彡⌒ミ
ξ゚听)ξ「そうね」
( ;ω;)「でも」
( ;ω;)「その眩しさごと君を愛すると誓うお」
彡⌒ミ
ξ゚听)ξ
彡⌒ミ
ξ゚ー゚)ξ「ありがとう」
おしまい
- 143 名前:ξ゚听)ξ愛は眩しいようです :2013/12/30(月) 21:49:40.66 ID:/Hkn/Q9x0
- 消化したお題
>>64-66
スケッチブック 油揚げ ハゲたξ゚听)ξ
油揚げの使い所悩んだよ
シリアス期待した人はすまんかった
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