185 名前:One More Kiss Moonlight Againのようです :2013/12/22(日) 23:26:32 ID:XRl2n1jU0
ξ゚听)ξ「ちょっと、手くらい繋ぎなさいよ」

(´<_` )「ん、すまん」

不躾な彼女のお願いに素早く対応する。
そうしないとすぐに機嫌を悪くするからだ。

ξ゚听)ξ「まったく、気が利かないんだから」

(´<_` )「そんなもんだよ、俺は」

ξ゚听)ξ「まあね。私も知ってて言ってるんだし」

言葉の冷たさとは逆に、握った手は冷えた外気を跳ね除けるほど暖かい。
これだけ暖かいと、彼女の方は冷たく感じてるんじゃないかと不安に思う。
しかし、そんなこと億尾にも出さずに、丁度いい強さで握り返してくれる。

186 名前:One More Kiss Moonlight Againのようです :2013/12/22(日) 23:27:51 ID:XRl2n1jU0
少しどころじゃない寒さに、体が震える。

ξ゚听)ξ「この寒さもいつまで続くのかしらね」

(´<_` )「そりゃあ冬の終わりだろうよ。まさか明日には急に30度になっていることもあるまい」

ξ゚听)ξ「……あのさぁ」

そう言って彼女の口はまた閉じた。
なにか言いたいようだが、言葉が出てこないようだ。
だが、出されるのも時間の問題、それならば俺が出させないことにする。

187 名前:One More Kiss Moonlight Againのようです :2013/12/22(日) 23:29:02 ID:XRl2n1jU0
ξ-(   )「……んっ」

ξ゚听)ξ「……あんた、ね……」

強引に唇を塞がれたことに納得がいっていないようだが、静かになるならそれでいい。
心なしか、少しだけ顔の辺りが暖かくなったような気もする。
気がする、だけだろうが。

また少しだけ、体が震えた。
華奢な指を潰さないように、軽く握り直す。

(´<_` )「ほら、月。丁度真正面だ」

俺らの行路を照らしてくれるかのように、目の前に月がいた。
まるで二つ存在するかのような、そのくらいの明るさで。
彼女は真っ直ぐな眼で月を見て、呟いた。

ξ゚听)ξ「本当。さっきのも見られてたのね」

見られていた。
月には人間も兎もいないけど、確かに見られているような、そんな光を放っている。

188 名前:One More Kiss Moonlight Againのようです :2013/12/22(日) 23:30:14 ID:XRl2n1jU0
(´<_` )「だとしたら、恥ずかしいな。今更ながら」

ξ゚听)ξ「本当今更。ほら、行くわよ」

そう言って彼女は少しだけ俺の腕を引っ張った。
何かを期待している、そんな急かし方をしていた。

ダウンジャケットを突き刺すような冷たい空気が充満する中で、発色の良い月は煌々と俺たちを見ていた。
障害物も何もなく、邪魔する人も何もなく、ただ二人だけが存在する空間を見て、二人の重なった足音を聞いて。
全てが見られていた。

アパートの階段を登って、部屋の前まで来る。月の光は、屋根に遮られて直接は届かない。
そこで、俺達は安心してもう一度だけキスをして、部屋の戸を開けた。

189 名前:名も無きAAのようです :2013/12/22(日) 23:31:28 ID:XRl2n1jU0
おしまい。
元ネタは柳原幼一郎さんの「One More Kiss Moonlight Again」という曲から。




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