286 名前:名も無きAAのようです :2015/07/03(金) 18:44:39 ID:qG54qNvM0



〜近代的タイムマシンのようです(゚、゚トソン〜


「奥さん頑張って!もうすぐ赤ちゃんが生まれますよ」

明け方の分娩室にひどく狼狽した男の声が響く。

【+  】ゞ゚;)「だだだ大丈夫か!?!?私はどうすれば???」

|゚ノ;^∀^)「......もう、なに今にも泣き出しそうな顔しているのよ」

雨に打たれたかの様な大粒の汗を流し、憂いに滲んでいた瞳がふと私の顔を映し優しげなものに変わった。

【+  】ゞ゚;)「し、しかしだな......」

|゚ノ;^∀^)「ふふ、そんなに取り乱していては今から生まれてくる子に笑われてしまうわよ。でも、その......私もちょっと辛いので手を握って下さらない?」

目の前で微笑む女性は想像を絶する痛みを受けながらも私の心配をしているのか。

彼女の言葉が胸に溶け入る錯覚を覚えた瞬間、既に私は普段の落ち着きを取り戻している事に気がついた。

【+  】ゞ-)「君にはかなわないな。大丈夫だ、私が付いている」

嗚呼、私は生涯この女性と産まれてくる子どものために命を尽くすだろう。

と、柄にもない事を思い少々恥ずかしくなったが
それに応えるかの様に細く美しい指が私の手を強く握り返した。

287 名前:名も無きAAのようです :2015/07/03(金) 18:45:35 ID:qG54qNvM0

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「おめでとうございます。元気な女の子ですよ。」

【+  】ゞ゚)「良くやったぞ。レモナ」

|゚ノ ^∀^)「ありがとうあなた。おはようトソンちゃん。産まれてきてくれてありがとう」

朝の陽ざしと共に部屋を満たした産声は私たち家族を祝福してくれているようだった。

(-、-ン

288 名前:名も無きAAのようです :2015/07/03(金) 18:46:16 ID:qG54qNvM0
だ、大丈夫なの?

規則正しい電子音と不安定で消え入りそうな声が病室に響く。

ああ、心配するな。とても珍しい症状だか命に関わるほどではない。

でも......でも、こんな症状って......

声が詰まる。

私たちの子だ。この先困難な事が起こったとしても乗り越えられるぐらいの力はあるさ。

うん......

それに私たちも付いているだろう。そんな今にも泣き出しそうな顔をするんじゃない。全く、君が笑顔じゃなきゃトソンも心配するぞ。

.......

......ありがとうね。でもお互い様よ。

む?どういう意味だ?

ふふ、何でもないわ。

んん?


薬品の匂いが鼻に付くベットの上で緩やかな覚醒と睡眠を繰り返す中、家族の声だけが鮮明に頭に響いた。

(-、-トソ「.....」

どうやら私は生まれつき身体が弱かったようです。
もしかするとみんなみたいに外で遊んだり、お腹いっぱいご飯を食べたりできないのでしょうか?

それはとても悲しいけれどちっとも不安はありません。

ありがとね。お父さん、お母さん。

個室に残った規則正しい音だけが彼女を再び微睡みへと誘っていた。

289 名前:名も無きAAのようです :2015/07/03(金) 18:47:12 ID:qG54qNvM0
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「最近子供が誘拐されるニュースをよく耳にするのでお前らもなるべく2人以上で気を付けて帰るようにな。以上」

取り留めのないHRが終わり駆け足で部活動に向かう生徒達を横目に文庫本を開き目を落とす。

ペラ......ペラ......

紙と紙が擦れる音はなんと心地が良いのでしょうか。

ペラ......ペラ......

運動部の掛け声が窓の外を通り、私を現実世界に連れ戻す。

む、そろそろ私の友人がクラスに転がり込んでくる時間でしょうか。
彼女と一緒に帰るのはとても楽しいけれど今日は用事があるから断りを入れないと。

再び没入

ペラ......ペラ......

教室にパタパタと足音が飛び込む。
ミセ*゚ー゚)リ「トソン〜、一緒に帰ろ〜、あとご飯も〜」

ばたんと文庫本を閉じる。

(゚、゚トソン「ごめんなさいミセリ、今日は定期診断を受けに病院へ行かなければいけないの」

ミセ*゚ -゜)リ「そんなあ......今日こそモナー屋さんの限定スイーツを食べに行こうと思ったのに〜」

彼女は大袈裟に項垂れ、私の机にぐだっと突っ伏した。

モナー屋さんは、帰り道の途中にあるお昼からオープンするケーキ屋さんです。
近所ではとても評判が良く月に一度数量限定の特別なスイーツを販売する事で有名です。
今日は丁度昼前に授業が終わったのでもしかしたら間に合うかもしれませんね。

私は立ち上がり、飾り気のないスクールバッグを肩に掛けた。
急な動きに対応できずに机に突っ伏したまま顔だけ上げた彼女の姿はとても可笑しくて笑ってしまった。

(゚、゚トソン「ふふ、何時迄も突っ伏してないで、行きますよ。」

_人より身体は弱いけれど_

290 名前:名も無きAAのようです :2015/07/03(金) 18:48:26 ID:qG54qNvM0
ミセ*゚ー゚)リ「ん?どこ行くの?」

(゚、゚トソン「決まってるでしょう、モナー屋です。」

ミセ;゜ー゚)リ「え、ちょっと待って、待ってってば〜。ねぇ病院は.....って足はっや。」

(゚、゚トソン「私はまだその限定スイーツ食べたことないんですよ!今月も売り切れの絶望を味わえと?」

ミセ;゜ー゚)リ「分かった、ゼェゼェ......分かったってば、ゴホ.....ゴホ.....だから止まって〜」

トソンとは対象的なぬいぐるみやストラップのついたスクールバッグが呼吸に合わせてじゃらじゃらと揺れる

(゚、゚#トソン「早くしなさい、そんなんじゃ限定スイーツは売り ミセ#゜ー゚)リ「どんなスタミナしとんねん!?」


_よ、弱いけれど……?_

291 名前:名も無きAAのようです :2015/07/03(金) 18:50:02 ID:qG54qNvM0

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お昼時駅前のモナー屋さんには案の定行列が出来ていました。
表向きはケーキ屋さんだけれどパンや珈琲なんかも取り扱っていて店の一角は買った商品を暖かい内、冷たい内に
食べられる様にテーブル並べてあり、限定スイーツの日ではなくても昼時にはなかなか賑わっているです。

(゚、゚トソン「もう結構並んでますね…」

行列の最後尾に並びつつ店中から漂ってくる鼻腔をくすぐるバターと砂糖の香りに胸を躍らせた。
パンの焼ける香りは素晴らしいですね。
この匂いを世界中にばら撒けば全世界は平和になるのでは無いでしょうか?
我ながらアホな事だとは思いながらも
アホのあの子なら共感してくれるのでは?
と思い、振り向くと、

ミセ,, −)リ「ゼェ...ゼェ..ゼヒッ...コヒュー...コヒュー...ガハッ....」プルプル

(゚、゚;トソン「ど、どうしたんですかミセリ?散歩後の老犬みたいな息して。周りの人ドン引きですよ?」

ミセ#゜ー゚)リ「誰のせいだと思っとんのじゃ!!」

_人より食べられる量も少ないけれど_

292 名前:名も無きAAのようです :2015/07/03(金) 18:51:19 ID:qG54qNvM0
(゚、゚*トソン「それにしても楽しみですねぇ」

限定スイーツ。一体どんなものなんでしょうか
ショートケーキ、ティラミス、モンブラン、チーズケーキ
私の頭の中は今甘い妄想に征服されています。
月に1度の限定品と言うくらいだから、もしかしたら全てのケーキを......

ミセ*#゜ー゚)リ「おい無視やめろ」

(-、-トソン「全く......何キロくらい食べてやりましょうか」

ミセ;゜ー゚)リ「バケモノか」

むう、可憐な女子高生をバケモノ呼ばわりとは何事か。

_す、少ないけれど?_

293 名前:名も無きAAのようです :2015/07/03(金) 18:52:06 ID:qG54qNvM0


(゚д。##トソン「おいいいいいいい、私の直前で売り切れてんじゃねえか!ああああああ私は今ッ!暗い海よりも
深い「絶望」の中にいるッ!」ガルルルル

ミセ;゜ー゚)リ「ト、トソンちゃんお願い落ち着いて、み、みんな見てるから......」


_とても元気に育ちました_


......ふ、普段は私も大人しいんですよ?

295 名前:aaの目がずれるけれど気にせずやっちゃおう :2015/07/03(金) 18:53:12 ID:qG54qNvM0

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規則的な電子音に促され覚醒する。

よく思い出せませんが何か懐かしい感覚ですねえ、こういうのをデジャブと言うのでしょうか?

彼女が目を覚ますと両親が神妙な面持ちで覗き込んだ。

ああ、そうですか、私はやっぱり私は人より身体が弱かったのですね

いつ倒れたかは思い出せませんが病院に運ばれたのでしょう

身体中が痛み、心臓の鼓動が大きく響いている気がします。子供の頃にモナー屋さんに着くのが待ちきれず全力疾走して思いっきり躓いてアスファルトに滑り込んだ時の痛みに似ているかもしれません。


【+  】ゞ゚)「落ち着いて聞いてくれトソン」

優しい父の声。

【+  】ゞ゚)「君の症状は現代の医学では治療方が確立されていないんだ。」

(゚、゚トソン「そうですか......」

【+  】ゞ゚)「だが安心しろ、私が何十年かかっても治療法を見つける」

【+  】ゞ-)「だから......だから......」

母は部屋の隅で顔を手で覆い肩を震わせている。

父の顔が曇る。

寡黙だけれど誰よりも優しかった父のそんな顔は初めて見ました。

2人とも、そんな今にも泣きそうな顔をしないでください…...私まで......悲しくなってしまいます。




「しばらくの間、眠っていてくれないか?」




最近のニュースを丁度見ていた私は直ぐにピンときました。

(-、-トソン「私は......」

296 名前:aaの目がずれるけれど気にせずやっちゃおう :2015/07/03(金) 18:53:54 ID:qG54qNvM0


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我々の現代よりも少し発展した未来。
車はより安全になり新幹線はより早くなったが
医学や科学は行き詰まり
未来に全てを託す投げやりなコールドスリープ技術だけが世間を賑わせ絶賛されていた。

目覚めるのは何時になるのか分からない。

その一睡は一生の眠りになるかもしれない。

目覚めた時時代に取り残されるかもしれない。

それは娘を生かしたいと言う親のエゴであり大切な娘を殺すと言っても過言ではないと分っていても



それでも......


それでも......


それでも彼女は生きることを望んだんだ

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297 名前:名も無きAAのようです :2015/07/03(金) 18:54:39 ID:qG54qNvM0

コールドスリープカプセルの中って意外と広いんですね。
保護服を着て睡眠薬と諸々の薬を飲んで横になりカプセルから噴出される冷気と保護液に身を委ねるだけ。
入る前に受けた説明だとこれで理論上1000年は眠る事が可能だそうです。
私には詳しい事は分かりませんがきっとこれが医学と科学の結晶というものなのでしょうか。

【+  】ゞ゚) 「そろそろだな......」

(゚、゚トソン「はい......」

|゚ノ ^∀^)「もう、二人ともそんなに暗くならないの。何も一生の別れじゃないんだから。」

あれから2日後、母はとても落ち込んでいましたがすっかり元気になったようです。
とても心配でしたが良かったです。

|゚ノ ^∀^)「トソンちゃんとはしばらく会えなくなっちゃうけれど良い夢見て待っててね。」

(゚、゚*トソン「ふふ、ありがとう、お父さん、お母さん。じゃあこれから眠るね。」

【+  】ゞ゚)「ああ、おやすみトソン。」

9

目を閉じる瞬間大切な友人の姿が浮かんだ。

…ごめん…ミセリの事忘れてました…

(゚、゚;トソン「あ!お父さんごめんバタバタしてて忘れてた。私の友人のミセリにまだお別れ言ってなかった。私が眠ったら彼女に、何時か一緒にブーン屋の限定ケーキを食べようって伝えて欲しいの。」

【+  】ゞ-)「ッ‼......ああ、必ず伝えるよ。安心しろ。」

あ、これは言わない方が良かったかもしれません。お父さんは一瞬とても悲しい顔をしてしまいました。
子供の成長は早いですからね......私が起きた時、もしかしたらミセリは大人になってるかも......しれないですね。
あ......でもあの子はアホだから......もしかしたら私の事忘れちゃってる......かもしれません...ね....
それは....それは......とても....や....だ.......な.....


一筋の涙が頬を伝った。

298 名前:名も無きAAのようです :2015/07/03(金) 18:55:37 ID:qG54qNvM0
深く落ちていく意識の中、私は残酷なタイムマシンが低い声で唸り始める音を聞いた。

母は、糸が切れたように膝から崩れ落ちカプセルに手をついた。

|゚ノ ;∀;)「あ......あ、あああああああああああああああああああああトソンちゃん!トソンちゃん...やだ、嫌だよう。」

我が子との距離はたった30cm。涙と声はガラスに阻まれ、永遠に触れることができないかの様に感じられた。

(-、-トソン

心配させまいと化粧で隠していたはずの隈で黒くなった目元と、涙で赤く腫れた頬を、溢れる涙がぐしゃぐしゃに汚した。
父は何も言わず母の肩を抱き寄せるが涙は止まることはなかった。

【+  】ゞ゚)「必ず、助けるからな」

自分の言葉がもう我が子に届かない事を知りつつも呟かずにはいられなかった。

トソンの涙の跡は既に結晶となり保護液の中に溶けていった。

299 名前:名も無きAAのようです :2015/07/03(金) 18:56:26 ID:qG54qNvM0


(-、-トソン



(゚、゚トソン「......」パチッ


近代的タイムマシンのようです(゚、゚トソン 〜おわり〜


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