117 名前: ◆eOod7XM/js :2015/07/02(木) 23:17:19 ID:iXQQEy.Y0
【BAR Dokuo】


( ‘∀‘)「あら? 『マティーニ』が無くなっちゃったわ」カラン

( ・∀・)「今日はペース早いですね? お代わりをお作りしましょうか?」

( ‘∀‘)「う―ん、そうね。マティーニもいいんだけど……」

( ・∀・)(このお客さんは僕でもレシピを覚えているようなメジャーなカクテルしか頼まないから楽なんだよな―)

( ‘∀‘)「あ、そうだ。ねえ、モララー君の一番好きなお酒って何か教えてよ」

(;・∀・)「え? 僕の好きなお酒ですか? う〜ん……一番っていうと悩んじゃうな―」

( ‘∀‘)「悩むって事はそんなに色々あるのかしら?」

( ―∀―)「そうですね―結構ありますね。『イェーガーマイスター』に『ウニクム』に『ウーゾ』」

118 名前: ◆eOod7XM/js :2015/07/02(木) 23:18:10 ID:iXQQEy.Y0
( ・∀・)「他にも『パスティス』や『スーズ』に『ベネディクティン』……どれも甲乙つけがたいですね」

( ‘∀‘)「なんか知らないお酒ばっかりね―。ねえねえ、モララー君。君の好きなお酒、私も飲んでみたいな? このBARに置いてあるかしら?」

( ・∀・)「本当ですか? ウチの店に置いてある物となると……」

( ・∀・)「では、こちらなんかいかがでしょうか?」スッ

( ‘∀‘)「あら? 随分と綺麗な緑色ね―! 何ていうお酒かしら?」

( ・∀・)「はい! この酒はハーブ系リキュールの金字塔とも言える存在。その名も……」







( ・∀・)+「『シャルトリューズ・ヴェール』です!」



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119 名前: ◆eOod7XM/js :2015/07/02(木) 23:19:59 ID:iXQQEy.Y0





【糞ったれBAR NEETのようです】


     【OPEN】






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120 名前: ◆eOod7XM/js :2015/07/02(木) 23:22:27 ID:iXQQEy.Y0
川д゚川「……んでぇ? かの有名な薬草リキュールを一口飲んだお嬢さんの感想はぁ?」

(;―∀―)「顔をしかめて思いっきり咳き込んでました」

川;д川「だろうなぁ……せめてトニック割りで出してやりゃあ良かったのによぉ」

(;―∀―)「気まずい雰囲気になっちゃうし、オーナーからも怒られるし。やっぱりヘコんじゃうよ」

川д川「つ―かハーブ系リキュールに全く興味無いやつに何でよりによってシャルトリューズの緑(ヴェール)を勧めるかねぇ? せめて黄色(ジョーヌ)の方だろぉ?」

(;・∀・)「黄色は甘くて蜂蜜っぽいけど、何か薬草リキュール! って感じがしないんだもん……」

川д川「だからこそ初心者に売ってつけなんじゃねぇかぁ。ちったぁ考えろぉ、糞ったれぇ」

(;―∀―)「オーナーにも似たような事を言われたよ。はぁ……」

121 名前: ◆eOod7XM/js :2015/07/02(木) 23:23:14 ID:iXQQEy.Y0
川д川「……」

川д゚川(こいつが失恋以外でここまでガッツリ落ち込むのも珍しいわなぁ)

(;・∀・)「あぁ、駄目だ。気分転換しなきゃ……ミルナ、僕にシャルトリューズ飲ませてよ。ロックね」

川д川「色はぁ?」

( ・∀・)「もちろん緑で」

川д川「了解っとぉ」

122 名前: ◆eOod7XM/js :2015/07/02(木) 23:24:16 ID:iXQQEy.Y0


【シャルトリューズ・ヴェール】


リキュールを愛するものならその名を知らぬ者はいない薬草系リキュールがある。
ラ・グランド・シャルトリューズ修道院が作り出した傑作の名は『シャルトリューズ・ヴェール』
アルコール度数は55°、エキス分は23°。

口に入れた瞬間に四散するその風味は130という途方も無い数の薬草が踏み出すハーモニー。
薬草系リキュールには味が似かよったものが多数あるが、このヴェールに関しては正に別格、別物である。

カクテルとしては『エメラルド・アイル』などで有名だが、まずはこの美酒をストレートかロックで舐めて欲しい。
そしてその薫りと共に、リキュールの果てしない歴史に思いを馳せてくれたら幸いだ。

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123 名前: ◆eOod7XM/js :2015/07/02(木) 23:25:31 ID:iXQQEy.Y0
( ―∀―)「……ふぅ」チビ

川д川「なぁんかヤケにヘコんでるじゃねぇかぁ?」

( ―∀・)「いやぁ、何か少し悲しくなっちゃってねぇ。色々考えちゃってさ」

川д川「あぁん?」

( ・∀・)「いや、ほらさ。自分で言うのも変な話かもしれないけど、僕ってスクールの頃から天才バーテンダーって言われてたでしょ?」

川д川「だなぁ。実際のところお前の作るカクテルは童貞のオッサンやヒートよりも美味い訳だしなぁ」

( ・∀・)「うん、ありがとう。でもさ、結局のところ僕の持ち味ってそれだけなんだよね」

川д川「あぁん?」

124 名前: ◆eOod7XM/js :2015/07/02(木) 23:26:33 ID:iXQQEy.Y0
( ・∀・)「話だって上手くない。レシピもなかなか覚えられない。アドリブでもカクテルは作れない。おまけに空気も読めない」

( ―∀―)「オーナーやヒートさんはともかく、最近はトソンちゃんだって出来ている事が僕には出来ていないんだ。もちろん、出来ない僕が悪いんだけどさ」

川д川「……」

( ・∀・)「これでも努力はしているんだ。でもなかなか成果がでない」

( ・∀・)「ならせめて僕に出来る事を増やしてみようと模索して……それでカクテル作り以外の僕の長所を探していたんだ」

川д川「それがぁ、薬草系リキュールに対する知識と情熱ってかぁ?」

( ・∀・)「うん。やっぱり好きものなら覚えたくなるし、どんどん知りたくもなるじゃない? だから僕は誰にも負けるつもりは無いってぐらいに知識を深めたつもりでいたんだ」

川д川「まあ『イェーガーマイスター』の名前が分からなかった頃と比べりゃ雲泥の差だわなぁ」

125 名前: ◆eOod7XM/js :2015/07/02(木) 23:27:47 ID:iXQQEy.Y0
( ・∀・)「それなりに頑張ったからね―。だからこそ、僕はお客さんにも美味しいハーブリキュールを飲んで貰おうと思ったんだけど……」

( ―∀―)「失敗しちゃったよ……ハァ」チビチビ

川;д川「ヘコみ過ぎだっつうのぉ。お前なぁ、そんな事でグチグチぬかしてたら世のバーテンダーに呪われるぞぉ?」

( ―∀・)「……何でさ」チビチビ

川д川「カクテルが上手く作れる『だけ』。だなんてよぉ。バーテンダーっつぅのは美味い酒作ってなんぼの世界だろうがぁ。お前はその時点で圧倒的に有利じゃねぇかぁ」

川д川「普通の奴はなぁ、カクテルも下手でレシピも覚えてなくて、客とも上手く話せなくて……っつう最低ラインから始まるんだぁ。オッサンもヒートもそっから経験積んで今があるんだろうがぁ」

川д川「なのにお前はカクテルの技術は初っぱなから完スト。しかも飲んだことも作ったことも無い物ですら勘だけで最高の品質に仕上げるだぁ?」

川д゚川「性能ぶっ壊れのチートキャラにも程があるってんだ糞ったれがぁ」

127 名前: ◆eOod7XM/js :2015/07/02(木) 23:28:33 ID:iXQQEy.Y0
( ・∀・)「……」チビチビ

川д川「焦ることは無ぇだろうがぁ。お前は一応まだ見習いなんだしよぉ? これからの努力次第でどうとでもなるだろうよぉ」

川;д゚川(まあ、一切の努力を捨て去ったニートが言える台詞じゃ無ぇんだけどよぉ)

( ・∀・)「これから、か……」

( ―∀―)「……」

( ―∀―)「……」

川#д川「あ―あ―辛気くさいのは終わりだ終わりぃ! 俺も酒飲むぅ!」ゴトッ

( ・∀・)「あ、ミルナは黄色を飲むの?」

川д川「おう。俺は甘党だからなぁ」

128 名前: ◆eOod7XM/js :2015/07/02(木) 23:29:18 ID:iXQQEy.Y0


【シャルトリューズ・ジョーヌ】


通称、リキュールの女王。
シャルトリューズ修道院にてブルーノ・ジャケ修道士に開発された黄色(ジョーヌ)のシャルトリューズはアルコール度数40°、エキス分は33%。

最大の特徴は緑(ヴェール)とは比べ物にならないようなソフトな口当たりとまろやかさ。
そしてハニーの甘味だ。
この味は数多の薬草系リキュールマニアの舌だけではなく、リキュール初心者をも虜にすることだろう。

カクテルにも幅広く使われており、初心者はまずトニック割りから試してみては如何だろうか?


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129 名前: ◆eOod7XM/js :2015/07/02(木) 23:30:14 ID:iXQQEy.Y0
川*д川「蜂蜜の味がいいねぇ。濃厚に甘いっつぅのに意外とサラサラしてるのも悪くねぇ」チビチビ

( ・∀・)「甘いの好きだねー。緑は嫌いなの?」

川д川「いやぁ好きだぜぇ? 口に入れた瞬間にあんなにストレートに薬草の風味が、爆発するみてぇに拡がる酒もなかなか無ぇからなぁ」

(* ・∀・)「だよねだよね―! この複雑でいて繊細。それにまろやかな甘味と独特の臭みがたまんないよ!」ゴクゴク

川д川(まあ、薬草系リキュールが嫌われやすい原因はその臭みがほとんどなんだけどなぁ)

(* ・∀・)「ぷはぁ! 美味かった! 次は何を飲もうかな―?」カラン

川д川「何でもどうぞぉ? 大体の銘柄は揃ってやがるからなぁ」

( ・∀・)「……一体この家には何千本の酒があるのさ?」

川д川「さぁ? 消費量も多いしぃ、一々数えて無ぇしなぁ」

(# ・∀・)「この勝ち組ニートめ……『ベネディクティン』頂戴、ロックで」

川д川「あいよぉ」

130 名前: ◆eOod7XM/js :2015/07/02(木) 23:31:09 ID:iXQQEy.Y0


【ベネディクティン DOM】


シャルトリューズにも劣らない名声を勝ち取ってきたリキュールがある。
ベネディクト派修道院にて開発された『ベネディクティンDOM』のことである。
アルコール度数は40°、エキス分は34.56%。

一時はフランス革命の影響で絶滅しかけたベネディクティンだが、とある商人によって製法記録が発見されて復元に至ったという逸話がある。
使用しているハーブやスパイスの数は27種類で、ドッシリとした丸みと濃厚な甘味が特徴。

ちなみにDOMとは「Deo Optimo Max-imo」の略。
つまり、「至善至高なる神に捧げる」という意味。


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131 名前: ◆eOod7XM/js :2015/07/02(木) 23:32:02 ID:iXQQEy.Y0
( ・∀・)「……」チビチビ

(* ・∀・)「いやぁ、このドロドロの甘さにスパイスの辛さ。そしてゴムを口に含んだような独特な臭みがたまりませんな―」チビチビ

川д川「『ベネディクティン』は俺も好きだぁ。甘いからなぁ」

( ・∀・)「……ミルナって『ベイリーズ』や『カルーア』もストレートで飲む人?」

川д川「?? 当然だろぉ?」ゴクゴク

(;・∀・)(うげぇ……)

川д゚川「俺の中で『ドランブイ』『ベネディクティン』『アイリッシュミスト』は薬草系リキュールのスリートップだからなぁ」ゴクゴク

(;・∀・)「そりゃあんた全部甘いもの。僕でさえそこらへんはロックで飲むのになぁ」チビチビ

川д川「まぁロックやらトニック割りも美味いけどなぁ」

( ・∀・)「まぁね……っと、ご馳走さま」チビチビカラン

132 名前: ◆eOod7XM/js :2015/07/02(木) 23:33:11 ID:iXQQEy.Y0
川д川「ペース早ぇなぁ? 明日は休みかぁ?」

( ・∀・)「うん、だから今日は沢山飲もうと思ってね。あっ、そうだミルナ! バニラアイスある!?」

川д川「カクテルの材料用に1キロのやつは常備してるぜぇ。食うかぁ?」

( ・∀・)「うん! それからビターズ頂戴!」

川;д川「……おいちょっと待てぇ。この話の流れでビターズってお前ぇ」

(* ・∀・)「もちろん『アンゴスチュラ・ビターズ』だよ!!」

133 名前: ◆eOod7XM/js :2015/07/02(木) 23:33:52 ID:iXQQEy.Y0


【アンゴスチュラ・アロマティック・ビターズ】


通称、アンゴスチュラ・ビターズ。
ビターズの代表格で、これがないと作れないカクテルが無数にあることからバーカウンターに並べられる必須アイテムである。
アルコール度数は44.7°、エキス分は9%。

もともとはアンゴスチュラ町の病院で軍人のための健胃強壮剤として造られたもの。
ラムをベースに、ゲンチアナなどの数種のハーブが独創的な薫りと苦味を産み出す。

ちなみに販売当初は製作者の名前から「ドクター・シーゲルツ・アロマティック・ビターズ」という商品名だったとか。


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134 名前: ◆eOod7XM/js :2015/07/02(木) 23:34:50 ID:iXQQEy.Y0
( ・∀・)「お皿に乗っけたバニラアイスに……」

( ・∀・)「苦くてスパイシーなビターズをほいほいっとな」ピッピッ

川;д川「えぇ――……合うのかぁ? それぇ?」

(* ・∀・)「これが意外と美味しいんだって! ミルナも食べる?」シャクシャク

川;д川「遠慮するわぁ。俺はバニラアイスにはウィスキーかラム酒って決めてるんだよぉ」

( ・∀・)「ラム酒はともかくウィスキーってどうなの?」シャクシャク

川д川「割りとメジャーだぜぇ? 俺はバーボンしかかけねぇけどなぁ」

( ・∀・)「ふぅん。今度やってみよ―」シャクシャク

川д川(まあラム酒に関しては完璧にヒートの受け売りなんだけどなぁ)

(* ・∀・)「美味しい美味しい。やっぱり薬草系リキュールは最高だね!」シャクシャク

川д川「まあ、そこまで好きならよぉ。客にも美味い酒を出したくなるのは必然だわなぁ」

135 名前: ◆eOod7XM/js :2015/07/02(木) 23:35:47 ID:iXQQEy.Y0
(;・∀・)「う―ん……やっぱりお客さんにはトニック割りで提供するのがベターなのかな―?」

川д川「自分であれこれ考えるのも悪くは無ぇけどなぁ。オリジナリティを出してぇ気持ちは分からなくも無ぇしぃ?」

(;・∀・)「結局はオリジナルか……度数が強く無くて薬草系の臭みもある程度抑えられて」

(;―∀―)「どんな人でも美味しく味わって貰えるレシピ……そんなのあるのかな―」

川д川「そこはお前の発想次第だからなぁ。何とも言えないわなぁ」

(;・∀・)「は―……薬草系リキュールはこんなに美味しいのに! ストレートもロックもトニックも!」

(;―∀―)「おまけにこんな風にバニラアイスにも……」

( ―∀―)「……」

( ・∀・)「……あ」

136 名前: ◆eOod7XM/js :2015/07/02(木) 23:36:36 ID:iXQQEy.Y0
川д川「あぁん?」

( ・∀・)「……ねえ、ミルナ。このアイスって何の為に買っておいたやつなんだっけ?」

川д川「?? さっき言ったじゃねえかよぉ。このアイスはカクテルの材料の為に備蓄を……」










川д゚川「あ」



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137 名前: ◆eOod7XM/js :2015/07/02(木) 23:37:25 ID:iXQQEy.Y0
…………………………………………

…………………………………

…………………………

…………………

……………

………



138 名前: ◆eOod7XM/js :2015/07/02(木) 23:38:44 ID:iXQQEy.Y0
【BAR Dokuo】


( ・∀・)「こちら、僕からのサービスです」

( ‘∀‘)「あら? なんだか見たことの無いカクテルね……何がベースなの?」

(* ・∀・)「ふふふっ……それは飲んでからのお楽しみです」

( ‘∀‘)「?? まあサービスなら頂くわね」

( ‘∀‘)「」チビ

( ‘∀‘)そ「……!!」

( ・∀・)「いかがでしょうか?」

(* ‘∀‘)「美味しいわ! こんなまろやかなデザートカクテルなんて久々よ! 何を混ぜているの!?」

( ・∀・)+「これはですね、先日オススメしたシャルトリューズと同じタイプの黄色のものに、バニラアイスクリームとビターズ。さらに隠し味に……」




('A`)(……)

('A`)(……うん)

('A`)(モララーも何となく一皮向けたかな?)

139 名前: ◆eOod7XM/js :2015/07/02(木) 23:41:18 ID:iXQQEy.Y0
(* ‘∀‘)「美味しいわ! このカクテルのベースになっているリキュールも気になるわね」

( ・∀・)「シャルトリューズ・ジョーヌですね。試してみますか?」

(* ‘∀‘)「ええ、是非お願いするわ」

(* ・∀・)「かしこまりました。ただいまハーフショットでお持ちします」






(* ・∀・)(酒として考えるんじゃなくて、あくまでメインはアイスクリーム! リキュールはとりあえずソースとして考えちゃえば)

(* ・∀・)(苦手な人でも何となく敷居が低くなる筈だよね!)

(* ・∀・)(ミルナに感謝だな……フフン)



(* >∀・)b(やったね!!)

140 名前: ◆eOod7XM/js :2015/07/02(木) 23:41:59 ID:iXQQEy.Y0







     【CLOSE】







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